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三田格   Mar 14,2016 UP

 『クラブ/インディ レーベル・ガイドブック』をつくっている時に、テクノやハウスの分野で多大なフォローを依頼した河村祐介が「このところロウ・ハウスからオールド・エレクトロに流れが変わってきた」という大胆かつ不敵な指摘をしていて、それにはまー、僕も一票だなと思った(18歳以上はみな一票)。DJオーヴァードーズが騒がれはじめたのももうだいぶ前だし、同じくダッチ・エレクトロのレゴヴェルトが第2のピークに突入してか らもだいぶ経っている。エレクトロがそのような単線のリヴァイヴァルであれば、細分化された趣味の一部にフィットする程度の波でしかないのかもしれないけれど、ピンクマンやセントラル・プロセッシング・ユニットといったレーベル、パウウェルやロブスター・ボーイ、そして、ベルリンからビンことジャーマン・グエンとトルコ系のウヌル・ウザー(『カシュミール』!)が新たに組んだトリートメントはベルリンでももっとも新しい傾向といわれ (詳しくは『クラブ/インディ レーベル・ガイドブック』p.144)、いわゆるヴィラロボス・タッチのミニマル・ハウスを柔軟にエレクトロに移し変えたものとなっている。DJとしての評価が鰻上りに高まっているビンはとくに、ここ数年、90年代後半にイギリスで起きたディープ・ハウス・リヴァイヴァルに関心があったそうで、ということは「リコズ・ヘリー」や『タイニー・リマインダーズ』の時期のアンディ・ウェザオールを通過しない わけがない。イージーにいえば、下品ではないエレクトロ。そう、トリートメントのデビューLP『LP』はオールド・エレクトロのさらに次を突いてきた(https://soundcloud.com/efd-tokyo/sets/treatment-untitled-02- treatment)

 アルビジョア十字軍によるカタリ派の大虐殺があった南フランスで4年に渡ってカタリ派の儀式「コンヴェナンザ」をテーマとしてきたアンディ・ ウェザオールもSSWに転身していたニーナ・ウォルシュとのタッグを前年から回復したせいか(ディープ・ハウスなどを聴かせるザ・ウッドレイ・リ サーチ・ファシリティ名義『ザ・フェニックス・サバーブ』)、90年代のテイストを織り込むような作風に戻っていることがわかる。トリートメント 『LP』と『コンヴェナンザ』を交互に聴いていると、若さと老練の両サイドから同じテーマを畳み掛けられているようで、肩の力が抜けたウェザオー ル&ウォルシュに驚くほど洗練されたビン&ウザーが同じ螺旋状の異なるポイントに位置しているようで、短時間の間に時間が伸び縮みしているような 安上がりの錯覚に陥ってしまう。もちろん『コンヴェンザ』にはスペシャルズやニュー・オーダーみたいなところもあるし(ヴォーカル・アルバムで す、念のため)、トリートメントはほとんどの曲がルーマニアン・ミニマルとオーヴァーラップするなど異なる面も多い。しかし、『LP』のクロージング・トラックなんてTLS『ザ・フィフス・ミッション』の未発表曲にしか聴こえないし。

 さらに、ここ最近でもっともエレクトロの可能性を感じさせてくれたのがよくも悪くもライアン・リー・ウエストによる3作め『ハウル(=遠吠え)』 だった。前作まではオルター・イーゴ“ロッカー”を思わせるエレクトロ(クラッシュ)にしか聴こえなかったリズムが4年も経つうちにポリリズム化し、ジュークのような16分刻みのベースを取り入れたり、全体にトライバル・ビートを強調しながらもメロディはクラシカルな重厚さを持たせるな ど、なんというか、ポスト・クラシカルとエレクトロクラッシュが出会ったような奇妙なサウンドに様変わりしていたのである(僕も最初はダブステップに聴こえたほど)。とてもエレクトロが原型にあるとは思えないし、様式性を求める人にはありえない展開としか言えず、物悲しいトーンはリスナーをえり分けてしまうだろう(IDMヴァージョンのキュアーというか、メランコリック・ヴァージョンのパウウェルというか。実際、ボーズ・オブ・カ ナダとはファン層が被るっぽい)。


三田格