「ele-king」と一致するもの

作品情報

『サクロモンテの丘~ロマの洞窟フラメンコ』
2017年2月18日(土)より、有楽町スバル座、アップリンク渋谷ほか全国順次公開

監督:チュス・グティエレス
参加アーティスト:クーロ・アルバイシン、ラ・モナ、ライムンド・エレディア、ラ・ポロナ、マノレーテ、ペペ・アビチュエラ、マリキージャ、クキ、ハイメ・エル・パロン、フアン・アンドレス・マジャ、チョンチ・エレディア他多数
日本語字幕:林かんな/字幕監修:小松原庸子/現地取材協力:高橋英子
(2014年/スペイン語/94分/カラー/ドキュメンタリー/16:9/ステレオ/原題:Sacromonte: los sabios de la tribu)

提供:アップリンク、ピカフィルム 配給:アップリンク 宣伝:アップリンク、ピカフィルム
後援:スペイン大使館、セルバンテス文化センター東京、一般社団法人日本フラメンコ協会

公式サイト
https://www.uplink.co.jp/sacromonte/

 エレクトロニックなクラブ系の音楽にとって、フラメンコといえば、チル・アウトの一要素として流麗なギターが使われる程度のことが多い。しかし映画『サクロモンテの丘』のフラメンコの音楽と踊りは、はるかに荒削りで強烈なものだ。歌詞のストレートなあけすけさはラップに負けず、手拍子(パルマ)と踊り手のステップ(サパテアード)と打楽器的なギターによるリズムは、ミニマルなダンス・ミュージックに通じ、ときにトランシーでさえある。
 映画が撮られたのは、スペイン南部アンダルシア地方のグラナダ。町の郊外のサクロモンテの丘の洞窟には古くからヒターノ(ジプシー)が暮らし、フラメンコで身を立てている。グラナダ出身の監督チュス・グティエレスは、その丘と住民に焦点を当てた。


チュス監督

「ドキュメンタリー映画を撮ったのはこれがはじめて。テーマに興味があって、身近なものだったので、何かが語れる自信はあったけど、企画の段階では、それが何なのか、まだわからなかった。映画を作るときは、信じるものを追求して撮るだけよ。サクロモンテの人たちにインタビューすることからはじめて、撮りながら作っていったの」

 フラメンコ・ダンサー/歌手/研究者のクーロ・アルバイシンを案内役に、映画は少しずつサクロモンテに暮らす人々の中に分け入って行く。世界中を旅して回った人もいれば、踊るために結婚生活を断念した人もいる。ヒターノではないのに踊りを教える人もいれば、大人顔負けのステップを踏む少年もいる。インタビューや歌や踊りに合わせて、登場人物の若いころの姿などの貴重なアーカイヴ映像も挿入される。

「フラメンコは若い人たちの力強い踊りを見るものと思われているけど、わたしが感動したのは、年配の人たちが体力の限界の中で表現している微妙な動き。若い人のような激しさはないけど、抑制された踊りの動きが、かえって新しく見えたりする。その人たちは、みんな見よう見まねでフラメンコを覚えた世代の人たち。マノレーテのように、アントニオ・ガデスの踊りを見て影響を受けた人もいる」

 実は1963年の洪水で丘の洞窟住居は大きな被害をこうむり、以後ヒターノたちの生活環境も変化を余儀なくされた。

「この映画の主役はフラメンコだけでなく、昔ここにあった共同体のゆくえでもある。往年のこの丘ではフラメンコが生活と密着していた。それがどうだったのかを知りたかった。いまの子供たちはそんな環境には暮らしていない。学校で先生について学んで、伝統を受け継いでいる」

水害で失われたものは大きかったが、伝統が時代の変化に対応しながら継承されている様子は、映画から伝わってくる。ところでサクロモンテのフラメンコはアンダルシアの他の地域のフラメンコと異なる特徴を持っているのだろうか。

「フラメンコはフラメンコね。本質にちがいはない。ただ、狭い洞窟の店で、舞台の上ではなく、同じ目線の高さで、目と鼻の先にいる客を相手に踊るから、その熱が伝わってくる。床はセメントで、舞台の板のようには響かないから、音を出すためのステップも激しい。ライヴの場面は身内のパーティのような形で撮ったので、みんな親密にリラックスした形で、楽しんで踊ってくれた。奔放に踊るフラメンコになったと思う」

 イベリア半島は、8世紀から15世紀までイスラム王国の支配下だった。グラナダは最後の王国が残っていたところだ。グラナダのイスラム建築の精華アルハンブラ(アランブラ)宮殿の姿も、丘の上の踊りの場面で遠望できる。イベリア半島に残ったアラブの音楽家たちが、フラメンコの成立に影響を与えたという説もある。

「イスパニア王国はイスラム王国と戦うとき、鍛冶屋だったヒターノを連れてきて武器を作らせたと言われています。踊りの場面を撮影したタブラオ(フラメンコ酒場)の壁に金属の調理道具が飾ってあるのもその名残。アラブの音楽はフラメンコにもきっと影響を与えたでしょう。いまも北アフリカの弦楽器バンドゥーラを使ってフラメンコを演奏する人がいるし、踊り手が額にアラブの貨幣をつけて踊ったりもする」

 両者の古い関係は文献では跡づけられなくて諸説あるが、交流がまったくなかったとは考えにくい。短絡は避けなければならないが、推測する楽しみは尽きない。
 海外でのイメージとちがって、「フラメンコはスペインでは外縁的な文化扱いされ、大切にされていない。優れたアーティストは国外に出ていってしまう」と監督は嘆いていた。でもインドに起源を持つヒターノたちがユーラシア大陸の西端でフラメンコの担い手になったように、文化のDNAは国境や民族を越えて繋がっている。「だからこの映画も日本まで来ることができたのだと思う」と語る監督の目はうれしそうだった。

予告編

interview with Jeff Mills - ele-king




Jeff Mills & Orquestra Sinfónica do Porto Casa da Música
Planets

U/M/A/A Inc.

TechnoClassical

(初回生産限定盤)

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Tower
HMV



(通常盤)

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Tower
HMV


 まず確認しておくべきことがある。ザ・ウィザード時代に高速でヒップホップをミックスし、その後URのメンバーとしてヨーロッパを震撼させ、ソロでミニマル・テクノのフロンティアを切り拓いたあのジェフ・ミルズが、なんと今度はクラシックに取り組んだ! という意外性が重要なのではない。彼が幼い頃からSF映画などを通してクラシックに触れてきたであろうことを想像すると、今回のオーケストラとの共作がこれまでの彼の音楽的志向から大きく外れたものであると考えることはできない(実際この10年、彼はオーケストラとの共演を何度も重ねてきた)し、そもそもジェフ・ミルズのルーツであるディスコやハウスがいわば何でもアリの、それこそロックを上回るくらいの雑食性を具えたジャンルであったことを思い返すと、今回のアルバムがエレクトロニック・ミュージックからかけ離れたオーケストラの生演奏とがっつり向き合っていることも、これと言って驚くには値しない。ポルト・カサダムジカ交響楽団との共同名義で発表された新作『Planets』は、あくまでもこれまでの彼の歩みの延長線上にある作品である。だから、ちゃんとグルーヴもある。

 とはいえ、ではこの新作がこれまでの彼の作品の焼き直しなのかと言うと、もちろんそんなことはない。アルバムを聴けばわかるように、このオーケストラ・サウンドとエレクトロニクスとの共存のさせ方は、以前のジェフ・ミルズ作品には見られなかったものである。徹底的にこだわり抜かれた細部のサウンドは、テクノ・ファンには「オーケストラでここまで表現できるのか」という驚きを与えるだろうし、クラシック・ファンにはかつてない新鮮な余韻と感歎をもたらすだろう。ホルストを踏まえた「惑星」というコンセプトにも、ジェフ・ミルズ独自の視点が導入されている。それに何よりこのアルバムには、黒人DJが白人ハイカルチャーの象徴たるオーケストラをコントロールするという文化的顛倒の醍醐味がある。

 本作を制作するにあたりジェフ・ミルズ本人は、クラシックでもエレクトロニック・ミュージックでもない第3のジャンルへと到達することを目指していたそうだが、彼は1999年の『ele-king』のインタヴューで非常に興味深い発言を残している。「かつて僕は、スコアを書ける人間に自分の音楽を書き取らせようとしたことがあった・でも彼にはそれが出来なかった。というのもそこには、彼が上手く当てはまるような言葉にカテゴライズ出来ない要素がたくさんあったから」。要するに、ジェフ・ミルズの音楽をエンコードすることなどできないということだ。今回『Planets』で編曲を担当したシルヴェイン・グリオットは、しかし、見事にその不可能を可能にしてしまったということになる。だがそこで新たな困難が生じてしまった。プレイヤーがそのスコアを完全には再現できないのである。すなわち、オーケストラはジェフ・ミルズの音楽をデコードすることができないということだ。ゆえに彼は「譲歩」を強いられるが、まさにその折り合いのつけ方にこそ「第3のジャンル」の片鱗が示されていると言うべきだろう。だからこそ彼は本作に2枚組という構成を与え、オーケストラ・ヴァージョンとエレクトロニック・ヴァージョンを並置したのである。ジェフ・ミルズはいまコード化の可能性と脱コード化の不可能性とのはざまで、自らの音楽を更新しようと奮闘している。何しろ彼はこの作品を、100年先の人びとへも届けようとしているのだ。




クラシックやエレクトロニックのどちらでもない第3のジャンルのような音楽にまで到達できれば、と思いながら制作したね。

今回の『プラネッツ』は、2005年の『ブルー・ポテンシャル』から始まり、10年以上にわたって続けられてきたオーケストラとのコラボレイションの集大成のような作品で、ジェフさんにとっても念願の作品だと聞いています。クレジットでは「作曲:ジェフ・ミルズ、編曲:シルヴェイン・グリオット」となっていますが、このアルバムはジェフさんが原曲を書き、シルヴェインさんが編曲して、それに基づいてポルト・カサダムジカ交響楽団が演奏をおこない、それを録音する、というプロセスで作られたのでしょうか?


ジェフ・ミルズ(Jeff Mills、以下JM):プロセスについてはいま言ったことで間違いないけど、編曲をする段階で編曲者のシルヴェインとすごくいろいろな話し合いを重ねたね。話し合いの内容は具体的なアレンジ方法というよりは曲のコンセプトについて、たとえば惑星がどういったもので構成されているかといったことについてで、物質的なことも含めて音として表現したいと思っていた。たとえば土星であれば、その輪の重要性や、あるいは輪が凄まじいスピードで廻っているということに関して、「それはテンポに反映するのがいいのではないか、ならば土星はいちばんテンポを早くしよう」というふうに、コンセプトや科学的な事実をどういった形で音に反映するかということを話し合った。その話し合いの後、シルヴェインが編曲し、また変更点を話し合うといったやりとりを何度もおこない、曲を完成させていったんだ。

ホルストの「惑星」は神話がもとになっていますが、ジェフさんは科学的なデータに基づいてシルヴェインさんと曲を作っていったのですよね。神話の場合だと、たとえば「マーズは戦の神なので曲を荒々しく」というふうに曲のイメージがなんとなく想像できるのですが、惑星の物質的な要素を曲に反映させる場合は、いまおっしゃったような「土星の輪の回転速度をテンポに反映させる」といったこと以外に、どういったパターンがあるのでしょうか。

JM:僕もホルストからの影響は受けているよ。どういうことかと言うと、(僕は)実際の神話をもとにしてはいないけど、ホルストがそういった考えをもとに作曲したというそのことに影響を受けた。惑星に対してどういう見方をするかということを勉強した。僕の場合は、科学的な事実に基づくとともに、「僕たちが惑星をどのように見ているか」ということに重点を置いている。たとえばネプチューン(海王星)やプルート(冥王星)のような太陽系の端にある星というのは、いまだにわからないことが多くあって非常にミステリアスなんだけど、自分たち人間がまだすべてを把握できていないというその事実を音として表現したんだ。もう少し具体的な例を挙げれば、ガスで構成されている惑星、天王星や海王星は表面がはっきりと識別できないので、曲の雰囲気を軽くしてみたり、逆に岩石でできているような惑星は足元があるので、しっかりとしたソリッドな雰囲気で曲作りをおこなった。

なるほど。科学的な事実に基づいているとのことですが、個人的にはこのアルバムを聴いていて、たとえば8曲目の“マーズ”からは戦のイメージを思い浮かべたり、10曲目の“ジュピター”からは神々しさのようなものを感じたりしました。それはあらかじめ聴き手がそういう神話を知ってしまっているためかなとも思ったのですが、神話ではないにせよ、ある程度はジェフさんも意識して、人間が持っている惑星のイメージや見方を曲に込めていらっしゃったと考えてもいいのでしょうか?

JM:君の言う通りで科学的な事実だけに特化したわけではなく、普段から影響を受けているSFであったり、宇宙科学はもちろんのこと、たとえば火星に関する映画であったり、実際の惑星の写真であったり、人間が蓄積してきたものすべてから影響を受け、作曲をおこなった。宇宙科学の話で言うと、今後人類が火星に行くかもしれないという段階に来ているので、そういったこともいろいろと考慮しながら曲を作ったよ。

今回のアルバムはポルトガルのポルト・カサダムジカ交響楽団との共同名義となっています。ジェフさんはこれまでも様々なオーケストラと共演されてきたと思うのですが、今回一緒にアルバムを制作したポルト・カサダムジカ交響楽団が他のオーケストラと違っていたところがあれば教えてください。

JM:ポルト・カサダムジカ・オーケストラとは『プラネッツ』を制作する以前に別の作品で共演したことがあったんだ。その際に非常に良い印象だったことと、そのコンサートが大成功だったこともあって、オーケストラのマネージャーからも「また何か一緒にやりたい」という話をもらった。そのときちょうど『プラネッツ』を制作していたので、こういう作品を制作しているという話と、一緒にレコーディングしてみないかという話を伝えたところ、今回の共同制作が実現したんだ。

6曲目“アース”を聴いていて、管楽器奏者の息継ぎ(ブレス)の音が効果的に使われているように感じました。またこの曲は他の曲とは違って唐突に終わり、すぐ次の曲に移りますよね。「地球」は私たちの住む星なので、やはりこの曲には他の惑星とは異なり何か特別な意味合いや思いが込められていたりするのでしょうか?

JM:アレンジャーとの話し合いの際に強調したことは、もちろん「地球」は僕たちがいちばん慣れ親しんでいる星なので、何かなじみのあるような音をシンプルな形で表現したいということだった。地球自体は太陽系の中でも比較的若い星であり、その若さというものを表現したかったし、地球はまだ進化し続けているので、はっきりとした結末を迎えるのではなく、アンフィニッシュな感じの曲作りをお願いしたんだ。曲自体の長さもあまり長くならないよう心がけた。僕がオリジナル・スケッチを制作した際は、わりとおとぎ話のような雰囲気を持たせ、子どものようなイタズラ感のある音作りをしたんだけど、それは地球がまだ若い星であることに注目したからなんだ。

少し「地球」での出来事についてお伺いしたいと思います。去年アメリカで大統領選挙がおこなわれ、デトロイトでは失業したりした貧しい人たちがトランプに票を入れたという話を聞きました。まさにいまそのトランプが大統領に就任して、さっそく中東やアフリカからの入国を禁止する大統領令を発しています。彼はこれからもそういった政策をどんどん実行していくのだろうと思います。ジェフさんは昨年末『ハフィントン・ポスト』紙のインタヴューで、人種差別に関して「もう手遅れだ」というようなことをおっしゃっていましたが、このトランプの時代に何か私たちにできるポジティヴなことは残されていると思いますか?

JM:イッツ・ア・メス(めちゃくちゃだ)! この先4年間ローラー・コースターのようにいろいろなことが起こるだろうね。大統領たる人物が自分の好き勝手なことを躊躇せず発言しているけど、発言の細かい内容がどうこうではなく、そのような事態になってしまっているというモラルの低下がいちばんの大きな問題だと思っている。国のトップに立つ人物がそのような行動をすることによって、みんなに(悪い)例を示してしまっている状況だ。まだ大統領が就任して日が浅いから、これからそれがどのように影響していくのかはまだはっきりとは見えていないけど、みんなの雰囲気がいままでとは少し異なっているような印象を抱いている。インターネットの力もかなり大きいと思うけど、個人個人が好き勝手なことを発言してもそれが許されるという状況で、ますます洗練とは逆の方向に向かってしまった。その結果がどのような形になって現れるのか、はっきりとは言えないけれど、今後しばらくはこのような状況が続いてしまうのではないかと思う。ポジティヴなことは考えられないね。


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僕が強調したかったのは「ミックスする」ということと「ミックスされた結果がどのようなものになるのか」ということなんだ。

ではまたアルバムについての話に戻りたいと思います。12曲目“サターン”の打楽器は、とてもテクノ的あるいはエレクトロニック・ミュージック的な鳴り方をしているように聴こえました。終盤から電子音が乱入してきますが、弦楽器がピッツィカートでそれと呼応・並走して、エレクトロニクスと生楽器との間におもしろい共存関係が成立していると思いました。16曲目の“ネプチューン”でもピッツィカートが電子音のように使われていますよね。今回このアルバムを制作するにあたって、オーケストラの奏でるサウンドをエレクトロニックなサウンドに「近づける」、「似せる」というような意図はあったのでしょうか?

JM:どちらかと言うとクラシカルな音とエレクトロニックな音がうまく融合して、区別がつかないような音像にしたいというのが最終的な目標だった。特に太陽から離れていった、太陽系の端にある惑星に関しては、そういったミクスチャーをより強調していくことを心がけている。むしろクラシックやエレクトロニックのどちらでもない第3のジャンルのような音楽にまで到達できれば、と思いながら制作したね。

なるほど。なぜこの質問をしたのかと言いますと、もし「近づける」ことが意図されていたのであれば非常に興味深いと思ったからです。実際は「似せる」ことではなく両者の区別がつかなくなることを意図されていたということですが、オーケストラ・サウンドをエレクトロニック・サウンドに「近づける」ことは、たとえば「人間がAIを模倣する」というような関係性に近いと思ったのです。一般的には機械やエレクトロニックなものは人間や自然を模倣して作られたものですが、それが逆転しているという関係性はおもしろいと思いました。もしそのような逆転があるとするならば、人類の未来のあり方としてそのような状況についてどのように考えますか?

JM:その考えはとてもおもしろいね。自分が考えていたのは2017年といういま人間が置かれている状況、つまり「ミックスされている」ことを表現したいということだった。人類が進化するにつれて性別や人種などいろいろなものが混じっていったということ。アメリカという国の成り立ちを踏まえても、「ミックス」という考え方を表現したかった。もうひとつ考えていたのは、与えられた情報をいかに有効活用するかということ。今回の『プラネッツ』に関しては科学的な情報を自分に取り込み、そこから何か新しいものを生み出すというような方法をとった。それは様々なことを伝える考え方で、僕が強調したかったのは「ミックスする」ということと「ミックスされた結果がどのようなものになるのか」ということなんだ。

細かい音を連続で鳴らすときに、エレクトロニクスの場合はひとつの音をすぐ止めることができると思うのですが、生の楽器の場合は構造上どうしても残響が生じてしまいますよね。アルバムを聴いていると両者のその差が揺らぎのようなものを形成しているように感じて、それはたとえば宇宙空間の無重力などを演出しているのかなと思いました。エレクトロニクスとオーケストラを共演させる際に最も苦心したこと、苦労したことは何ですか?

JM:揺らぎのようなものについてだけど、今回の作品では「旅」がメイン・テーマになっていて、宇宙は無重力空間だから、太陽から徐々に離れて太陽系の外に向かっていくということを止めることはできないんだ。そのため(演奏が)沈黙(サイレンス)する状態がないようにすべてが延々と繋がっているような曲作りをした。その際に浮遊感のようなものを演出するため、いろいろな工夫を施している。苦心したことに関しては、ひとつには楽譜を作っていく段階で、特に後半の“ウラヌス”、“ネプチューン”、“プルート”は譜面が難しくて、ミュージシャンが演奏するのに苦労した部分が多々あったこと。あまり難しくしすぎると(オーケストラのメンバーが)ミスなく演奏できないということが起こりえるので、そのあたりは多少の譲歩があった。そういう意味では、レコーディングだと1度きりのパフォーマンスと違って何度も演奏し直すことができるし、ポスト・プロダクションでそれぞれの音を多少調整することもできるから、レコーディングに関しては比較的スムースにおこなえたよ。もうひとつ、難しいというか大変だったのが、僕自身の楽譜というものがないから、自分で演奏するパートはもちろん、他のミュージシャンの演奏する音をすべて暗記して本番に臨まなければならなかったということだね。それに、(自分には楽譜がないので)決められた中である程度即興的に演奏しなければならなかったこともすごく苦労した。


いまこれを聴いてくれる人たちはもちろん、自分が100年前に作られたホルストの「惑星」を聴いていまでも楽しめるように、この『プラネッツ』も100年先に生きている人びとにも聴いてもらえるのであればいいなと期待しながら作ったんだ。

最終曲の“プルート”は終盤にノイズが続き、それが唐突に途切れて、その後15秒の沈黙(サイレンス)を経てトラックが終わりますよね。他方、ディスク2のエレクトロニック・ヴァージョンの方の“プルート”はフェイドアウトしていく終わり方です。オーケストラ・ヴァージョンの不思議な終わり方を聴いたとき、それまでアルバムの冒頭から旅を続けてきた人が急に宇宙という広大な空間に放り出されるような印象を抱きました。宇宙船なのか他のものなのかはわかりませんが、人類が自らの技術力に頼って最後の冥王星まで辿り着いた結果、難破してしまうようなイメージ、つまりある種のバッドエンドを想像したのですが、それは深読みでしょうか? なぜこのような形でアルバムを終わらせたのですか?

JM:“プルート”の終わりにあるノイズは、太陽系を出たところにカイパーベルトという宇宙の塵のようなもので構成されているリングがあるんだけど、それを塵=ホワイトノイズとして表現している。15秒のサイレンスについては、たしかに僕たちが実際に聴くことのできる形での音楽はそこで終わっているけれど、マスタリングの際に沈黙の部分を可能な限りレヴェルを高くして何度も何度もサイレンスを重ねることで、そこにじつは非常に高いレヴェルのサイレンスがあるようにしたんだ。もしもそこに沈黙ではなく音を配置したとしたら、スピーカーが飛んでしまうようなレヴェルの沈黙になっている。それはつまり、自分たちが知っている太陽系というものを出てしまった後は本当に未知の世界で、何がそこに潜んでいるのかわからないから、非常に注意しなければいけないという警告の意味があるんだ。なのでここで終わってしまった、ということではないね。

ジェフさんは先ほどこのアルバムは「ジャーニー」がテーマであるとおっしゃっていましたが、頭から順番に通して聴いてみると次々に惑星を訪れていくような映像が頭に浮かびます。そこで旅をしているのは一体誰、または何なのでしょうか? 人類なのでしょうか? それともたとえばボイジャー探査機に搭載された人類の情報を刻んだレコードのような、人の思いや願い、あるいはメッセージのようなものなのでしょうか?

JM:旅をしているのは基本的に人間だ。誰のためにこれを作ったのかということを説明すると、いまこれを聴いてくれる人たちはもちろん、自分が100年前に作られたホルストの「惑星」を聴いていまでも楽しめるように、この『プラネッツ』も100年先に生きている人びとにも聴いてもらえるのであればいいなと期待しながら作ったんだ。この作品はそういう未来を見据えた考えに基づいている。“ループ・トランジット”という、惑星と惑星の間を旅するというコンセプトのセクションが9つあって、その箇所は現在の人間の知識では基本的に無の空間として認識されると思うんだけど、いまの人間の能力では何も見えず、何も聴こえず、何もわからないだけであって、もしかしたら何百年も経った後にはそこに何かがあるということを人間が発見するかもしれないよね。そういったことが起こりうるということを期待しつつ作曲したんだ。

このアルバムはオーケストラのサウンドがメインになってはいますが、いくつかの曲からはいわゆる普通のクラシックの曲からは感じられないテクノやダンス・ミュージックのグルーヴが感じられました。それは意識して出されたものなのでしょうか? それとも自然と出てきたものなのでしょうか?

JM:僕のオリジナル(・ルーツ)としては、やはりグルーヴ(・ミュージック)から入っていったので、グルーヴについては入れ込めるところには可能な限り入れたいと思っている。アレンジャーのシルヴェインももともとジャズのピアニストなので、彼自身ファンキーなことはできるし、ふたりでできる限りそういった要素を入れることを試みたよ。

このアルバムはCD2枚組になっていて、2枚目には1枚目の楽曲のオリジナル・エレクトロニック・ヴァージョンが収録されていますよね。両者を聴き比べるとその違いが際立ったり、いろいろなイメージが膨らんだりしておもしろいのですが、なぜこのような2枚組という形態にしたのでしょうか? 『プラネッツ』というアルバムはオーケストラ・ヴァージョンだけでは完結しない、ということなのでしょうか? それとも2枚目はあくまでボーナスあるいは参考資料のような位置づけなのでしょうか?

JM:(2枚組にしたのには)『プラネッツ』という作品の全体像をみんなに把握してもらいたいという意図があった。オリジナル・エレクトロニック・ヴァージョンの方もボーナスという位置づけではなくて、作品に欠かせない存在だ。あえてオリジナルのトラックをみんなに聴いてもらうことで、「クラシカルなアレンジをすることでそれがどのような変化を遂げたのか、どの部分が取り上げられてどの部分が取り上げられなかったのか」ということをいろいろと考えてもらったり、評価してほしいという意図があるんだ。





Clap! Clap! - ele-king

 1990年、デリック・メイが「ザ・ビギニング」というシングルを出したとき、まさかそれが本当に「はじまり」だったなんて誰も信じちゃいなかった。ぼくもそうだった。『ブラック・マシン・ミュージック』を書いているときもまったく予想できなかったな。ドラム・マシンが、いずれはその多くが、アフリカのリズムすなわちパーカッションをプログラムされるようになるとはね。
 イタリア人ジャズ・ミュージシャン、クラップ!クラップ!は、ビートの蒐集家にしてアフリカン・パーカッション&アフリカ楽器の魅力ある音色の混合者、かつファンタジーの語り部である。彼は、ブリストルのレーベル〈ブラック・エイカー〉からの数枚のシングルにおいて、ベース+ジュークつまりハウスよりもテンポが速めの、電子音によるシャンガーン的アフリカン・パーカッションというコンビネーションの妙技を披露し、脚光を浴びた。
 そして、2014年のファースト・アルバム『タイー・ベッバ』では、リズムにさらに自由度を与え、ゆるめの曲も交えながら全体をある種ファンタジーに変換した。それはネガティヴな小林の精神を照らす光となり、現実からの逃避を手助けし、深夜帰りの病んだ気持ちに優しく作用したのである。ゆえに『タイー・ベッバ』は、アナログ盤のみのリリースだったのに関わらず評判となり、高まるニーズに応えるべく日本ではCD化され、クラブ系では近年のベストセラーの1枚となった……どころの騒ぎではない。ポール・サイモンの2016年のソロ・アルバムにトラックを提供するまでに至った。(ポール・サイモンはその昔『グレイスランド』で南アフリカのレディスミス・ブラック・マンバーゾを起用したぐらいで、それを考えれば……という向きもあるが、にしてもこれは限定で発表されたような真性のアンダーグラウンド・ミュージックなわけで)

 本作『ア・サウザント・スカイズ』はセカンドであり、大躍進後の最初のアルバムだ。前作同様、別の時間軸からの音楽であり、寒々しくも荒廃した世界の住人の心を温める音楽、夢への旅立ちを助ける音楽ではあるが、前作よりもぐっと洗練された作品となった。間口は広がり、ひと言で言えば聴きやすいアルバムだ。いくつか曲名を挙げるなら、“Hope”なる曲ではポップ・センスを、“Ode To The Pleiades”ではエレガントなダウンテンポを、“Lunar Ensemble”ではアフロ・ハウス・フュージョンとも呼べる展開を見せている。完成度は確実に上がっている。
 CDには各曲に付けられた物語が記されている。宇宙の神話、ひとりの女性の夢とアフリカの往復──そのファンタジーは、希望がことごとく揉み消されるこの現実への抵抗の表れであろう。重力も忘れて、この音楽に身を委ねることで現実の惨さを忘れることは、音楽ファン冥利につきる。なお、2曲目にフィーチャーされているボンゲジウェ・マバンドラは、日本盤リリース&来日もある南アフリカのシンガー・ソングライター。ほかはよくわかりませんので、わかり次第追って報告したいと思います。

AHAU - ele-king

作業中に聴いている音楽の中から

皆様こんにちは
1976年、神奈川生まれ東京在住。アーティスト活動をさせて頂いているAHAU(アハウ)といいます。
1996年から都内を始め関東周辺、最近では神戸や京都などで行われている音楽のチラシやフライヤー、グッズなどで関わらさせて頂いています。

現在、2月10日(金)から19日(日)まで神奈川県二宮町で行われている「第一回 湘南二宮 菜の花アートフェスティバル」に参加しています。
二宮駅北口徒歩1分にあるVRGI CAFEというカフェと保育室が一つになった素晴らしいお店でAHAU EXHIBITION「AHAU’S HEART」と題し作品展示を行っています。
額装作品、作品集、Tシャツ、マグカップ、ポストカードの販売も行っています。
お食事やコーヒー、お酒もありますので、ご休憩などに利用して頂けたら幸いです。
土日は11:00から17:00まで、平日は11:00からランチ終了まで営業しています。
最終日は1日在廊しています。参加を記念してイベントも用意させて頂きました。

入店された方全員もれなくオリジナルポストカードプレゼントいたします。
オーダー先着5名様に、オリジナルTシャツ、オリジナルマグカップ、作品集のどれでも一つプレゼントいたします。
オーダー100人目の方に、店内にある額装作品どれでも一つプレゼントいたします。
そのほか駅周辺の17カ所の会場では36組のアーティストの方々も趣向を凝らした様々な催し物を行っています。

ご来場の皆様に楽しんで頂けるようアーティストと地元商店街が一つになって盛り上げていきます。
二宮の美しい自然や風土、産物や歴史ある建造物も大変素晴らしいので、
東京駅から電車でも車でも1時間10分ほどなので、ぜひぜひ散歩やドライブに遊びに来てください。
よろしくお願いいたします。

AHAU

作品紹介:
https://www.instagram.com/explore/tags/ahaudesign/

展示:
2016.11「The Flyer 巡回展」BnA HOTEL Koenji(東京/高円寺)
2016.5「The Flyer」udo(東京/渋谷)
2015.9「ADVENTURE OF UNI」LIBRARY RECORDS(東京/東高円寺)
2015.3「ROOM」TERRAPIN STATION(東京/高円寺)
2012.11「ASSERTONESELF」THERME GALLERY(東京/都立大学)
2009.11「STROKE BOOK2」BE-WAVE(東京/新宿)
2008.2「STROKE BOOK」bonobo(東京/千駄ヶ谷)
2007.4「MUSIC VIEW」Cafe KING(現在Cafe FACTORY)(神奈川/鎌倉)

作品集:
2012.11「ASSERTONESELF」

湘南二宮町:
https://www.town.ninomiya.kanagawa.jp

場所:
VEGI CAFE & てんとう虫保育室
〒259-0123 神奈川県中郡二宮879-19
0463-68-0006

Clark - ele-king

 オウテカが『Confield』を出し、エイフェックスが『Drukqs』を出したまさにその年に、『Clarence Park』で鮮烈なデビューを飾ったクリス・クラーク。IDMの礎を築いた世代が路線を変更したり長い沈黙に入ったりした時期に、まるでその空白を埋めるかのような形で綺羅星のごとく現れたのがクラークである。当時日本では彼のことをRom=Pariが高く評価していたけれど、以降クラークはコンスタントに……うん、少しは休んでもいいのよと心配になるくらいコンスタントに作品を発表し続け、その成果もあってか、この国における彼の影響力はいまでも衰えていない。たとえば、先日戸川純とともにアルバムを制作したVampilliaも、リミックスという形でクラークとコラボレイトしている。
 そのクラークの新作が4月7日にリリースされる。『Death Peak』というタイトルや、「危険でおそろしい頂にたどり着き、あらゆるものが壊れた光景を眼下に見渡す」という本人のコメントから類推するに、来るべき彼のニュー・アルバムは、2016年という暗い世相を反映したものになっているのではないだろうか(昨年彼が国民投票の結果を嘆いていたことを思い出すべし)。
 ともあれ、いまは公開された新曲“Peak Magnetic”を聴きながら、「破壊を超えた先の絶景」とやらがいったい何なのか、ああだこうだと想像しておこう。

破壊を超えた先の絶景……
3年振り待望のスタジオ・アルバム『DEATH PEAK』完成!!!
新曲“PEAK MAGNETIC”を公開!

自身の名を冠した前作『Clark』から3年、サウンドトラック制作や舞台音楽、オーケストラへの楽曲提供など、〈Warp〉きっての多作家として活躍の場を広げ、さらなる進化を遂げたクラークが、自身の独創性を爆発させた待望の最新作『Death Peak』を携えシーンに帰ってくる。アルバム完成の発表と合わせて新曲“Peak Magnetic”を公開!

Clark - Peak Magnetic
https://soundcloud.com/throttleclark/peak-magnetic

“Peak Magnetic”では、ここ数年で最も明るく、アップビートなクラークを聴くことができる。そのほとばしるエネルギーこそ、彼の新たなサウンドを象徴している。
- Pitchfork

デス・ピーク(死の山頂)というタイトルは2016年の8月からずっと考えていた。完璧だと思ったよ。まるで呪文のように『デス・ピーク、デス・ピーク、デス・ピーク』と繰り返していた。この山の出発地点は、穏やかに蝶の舞う牧草地が広がっている。でも最後には危険でおそろしい頂にたどり着き、あらゆるものが壊れた光景を眼下に見渡すことになるんだ
- Clark

10代で〈Warp〉と契約を果たし、いまやレーベルの象徴的存在にまで成長したクラーク。前作『Clark』リリース後も、BAFTA(英国映画テレビ芸術アカデミー)にノミネートされた海外ドラマ・シリーズ『The Last Panthers』の劇伴や、革新的な作品の上演で知られるヤング・ヴィク・シアターで上演された作品『マクベス』の舞台音楽、さらにLAを拠点とするオーケストラ、エコー・ソサエティーへの楽曲提供など、そのサウンドはさらに進化を続けている。また「不健全で強迫神経症じみた人格を潜在的に備えていればいるほど、作品がより優れたものになる」と語るクラークの内なる狂気とのアンバランスさが、いまだ体験したことのないようなコントラストを生み出し、聴く者の聴覚を完全に支配する。また今作での新たな試みとして、自身が「最も完璧なシンセサイザー」と評する人間の声を、収録曲のほとんどに取り入れ、柔らかで美しいテクスチャーをもたらしている。

クラークのキャリア8枚目となる最新スタジオ・アルバム『Death Peak』は、4月7日(金)世界同時リリース! 国内盤にはボーナス・トラック“Licht (Pink Strobe Version)”が追加収録され、解説書が封入される。初回限定生産盤はデジパック仕様となる。iTunesでアルバムを予約すると公開された“Peak Magnetic”がいちはやくダウンロードできる。


label: WARP RECORDS / BEAT RECORDS
artist: CLARK
title: DEATH PEAK
release date: 2017/04/07 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-543 定価 ¥2,200 (+税)
初回限定生産盤デジパック仕様
ボーナストラック追加収録 / 解説書封入

[ご予約はこちら]
amazon: https://amzn.asia/2dFmhIQ
bartkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002147
iTunes Store: https://apple.co/2kVM3F6

TRACKLISTING
01. Spring But Dark
02. Butterfly Prowler
03. Peak Magnetic
04. Hoova
05. Slap Drones
06. Aftermath
07. Catastrophe Anthem
08. Living Fantasy
09. Un U.K.
10. Licht (Pink Strobe Version) *Bonus Track for Japan

ROCKASEN - ele-king


 ROCKASENは、DJ/プロデューサーのBUSHMINDの作品にもフィーチャーされている千葉出身のヒップホップ・グループで、2010年にリリースされ、評判となったファースト・フル・アルバム『WELCOME HOME』はいまでも日本語ラップ・シーンのなかで独特の個性を放っている。彼らの面白さはまず音楽的な幅広さにあるが、それはアメリカの物真似ではなく、彼自身の折衷主義によって成り立っている。独特の浮遊感があり、テクノやハウス・ミュージックの感覚もそこには含まれる。言葉は、自己主張するものではない。なにげない日常描写が彼らのリアルを伝達するが、どこかつねに半分夢の中なのだ。
 そして、その新作、つまりセカンド・アルバムは無料配信されることになった。これがまたROCKASENらしく、メロウで柔らかさのある、本当に心地良くポジティヴで、キャッチーでありドリーミーであり、クオリティの高い作品なのだ。アートワークも良いし、これが本当に無料でいいの?
 というわけで、この機会にぜひDLして聴いて欲しい。

ROCKASEN
Two Sides of
ASSASSIN OF YOUTH
配信開始日:2017年2月17日(金)
配信サイト:bandcamp(https://rockasen.bandcamp.com) / AWA / Apple Music / Spotify


01. Intro A *
02. Always There
03. Deez
04. Till Up
05. Dokomademo
06. Intro B
07. Good Catch
08. Hard Drive
09. Strain
10. Dot B

Produced & mixed by Bushmind
*Produced by Issac & Bushmind
Mastered by Naoya Tokunou
Artwork by Wack Wack

2017 DOMMUNE<02/14火>
■19:00-24:00 ele-king books Presents
戸川純歌手生活35周年バレンタイン5時間スペシャル
「戸川純全歌詞解説集」重版記念番組!「疾風怒濤きょうは晴れ」
LIVE:戸川純 with Vampillia 
DJ:テンテンコ(戸川純 PLAY ONLY) / BROADJ# BROADJ#2148
TALK:戸川純、宮沢章夫、三田格、野田努、Vampillia、おおくぼけい(アーヴァンギャルド)
テンテンコ、石塚BERA伯広(戸川純 / プノンペンモデル / VIDEO rODEO / 電車)

■約20年振りのメディアへの登場となる戸川純!歌手生活35周年記念番組!
ele-king books Presents DOMMUNE『疾風怒濤きょうは晴れ』
2016年に入って新たに3つのプロジェクトをスタートさせた戸川純。これまでのソロ活動に加えて、戸川階段、戸川純 avec おおくぼけい、戸川純 with Vampilliaと、それは多面的な方向性を示し、またしても多重人格的な動きになっている。さらには活動を再開させたTACOのライヴや年末に亡くなったピエール・バルーとも最後のデュエットを共にし、対バンの数も限りない。音楽だけでなく、蜷川幸雄に捧げた追悼文も大きな話題を呼び、初めて認めた短歌が年末の「歌壇100選」に選ばれるなど、文才も絶好調。年末には過去に書いた歌詞の解説集「疾風怒濤時々晴れ」もよく売れている。この度、DOMMUNEでは、そんな戸川純の歌手生活35周年を記念したバレンタイン5時間スペシャルを企画!!なんと、この番組は、戸川純自らの意思では十数年振りのメディアへの登場となる!!現在の活動について、音楽仲間や宮沢章夫らと語り尽くし、そして、なんと、歌手活動35周年記念盤「わたしが鳴こうホトトギス」を共に製作したVampilliaとライヴも実現!!!!史上空前のDOMMUNE5時間ブチヌキ戸川純スペシャル!!!超絶必見です!!!

「戸川純全歌詞解説集―疾風怒濤ときどき晴れ」 (ele-king books)
戸川純 with Vampillia「わたしが鳴こうホトトギス」

■2017 02/14 19:00-
● ENTERANCE : 2,500YEN
● OPEN : 18:50頃(第1部~第2部入れ替え無し! 番組途中入場OK! 再入場不可! BARあり!)
● 〒150-0011 東京都渋谷区東4-6-5 ヴァビルB1F / TEL : 03-6427-4533

Jacques Greene - ele-king

 いかにビッグになりすぎることなく成長するか。それが〈LuckyMe〉の野望である。すでにバウアーというスターを抱える同レーベルにとって、次にどんな手を打つかというのはきっと大きな問題だったに違いない。そんなかれらの手の内のひとつが、いま明らかになった。
 〈Night Slugs〉から巣立ち、これまで〈LuckyMe〉を軸に作品を発表してきたハウス・プロデューサー、ジャック・グリーン。レディオヘッドによるフックアップから5年半のときを経て、ついに彼のファースト・アルバムがリリースされることとなった。タイトルは『Feel Infinite』。一体どんなアルバムに仕上がっているのか、楽しみに待っていようではないか。

Jacques Greene
ジャック・グリーン待望のデビュー・アルバム
争奪戦必至のスペシャル・エディションで日本先行リリース決定!

〈Uno〉、〈3024〉、〈Night Slugs〉、〈LuckyMe〉といった気鋭レーベルからリリースしてきた諸作が高い評価を受け、『ピッチフォーク』の「Songs of the Decade」に選ばれた2011年の“Another Girl”、ハウ・トゥー・ドレス・ウェルをフィーチャーした2013年の“On Your Side”、2016年のクラブ・アンセム“You Can’t Deny”などヒットを飛ばしてきたジャック・グリーンが満を持してデビュー・アルバムをリリース!!

本作はクラブ・カルチャーの桃源郷的なアイデアがもとになっており、クラブによるクラブのためのクラブ音楽でる。いままでにレディオヘッド、サンファ、ティナーシェ、そしてシュローモといったアーティストとコラボ、またはリミックスをしてきたモントリオール生まれのジャック・グリーンが、2年以上の歳月をかけて制作した、キャリア史上最もパーソナルな感情表現に満ち溢れた作品。2016年にサプライズ・シングルとしてリリースしたソウルフルなテクノ・トラック“You Can’t Deny”や、ユーフォリックなキラー・チューン“Afterglow”などを筆頭にR&Bのヴォーカル・チョップは新しいクラブ・サウンドとしてグリーンの代名詞にもなったが、本作では原体験であるマスターズ・アット・ワークのディスコ文脈の影響を自らの作品に反映させ、2017年のハウス・ムードを予見する傑作がここに誕生した。また500枚限定の国内流通盤は世界に先駆け、3/17に先行リリース、ボーナス・トラックがDLできるスペシャル・カードが封入される。

Jacques Greene | ジャック・グリーン
モントリール出身、ニューヨークを経由し、現在はトロントを拠点とし活動するプロデューサー。〈LuckyMe〉をはじめ、〈UNO〉、〈Night Slugs〉といったレーベルからの諸作をリリース。『ピッチフォーク』「Songs of the Decade」に選ばれた2011年の“Another Girl”、ハウ・トゥー・ドレス・ウェルをフィーチャーした2013年の“On Your Side”、2016年のクラブ・アンセム“You Can’t Deny”などヒットを飛ばしてきた。さらには、レディオヘッド、ジミー・エドガー、コアレスなどへのリミックスの提供など、これまで数多くの作品を発表。2017年には待望の1stアルバム『Feel Infinite』をリリースする。

label: LUCKYME / BEAT RECORDS
artist: Jacques Greene(ジャック・グリーン)
title: Feel Infinite(フィール・インフィニット)
release date: 2017/03/17 FRI ON SALE ※日本先行発売

国内流通仕様帯付盤CD
BRLM41 / 解説書封入

[ご予約はこちら]
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002143

[Tracklisting]
01. Fall
02. Feel Infinite
03. To Say
04. True feat. How To Dress Well
05. I Won’t Judge
06. Dundas Collapse
07. Real Time
08. Cycles
09. You Can’t Deny
10. Afterglow
11. You See All My Light
+ DL CARD

Purity Ring - ele-king

 かつてヒップホップのビートとシンセ・ポップを共存させることで、ポピュラー・ミュージックに新しいスタイルをもたらしたピュリティ・リング。これまでに『シュラインズ』と『アナザー・エタニティ』の2枚のアルバムを発表しているかれらが、きたる3月6日に来日公演をおこなう。会場は渋谷のWOMBで、ピュリティ・リング単独としては今回が初めての来日となる。
 ダニー・ブラウンのアルバムに参加したりソウルジャ・ボーイをカヴァーしたりする一方で、ジョン・ホプキンスともコラボするなど、じつに横断的な活動をおこなってきたピュリティ・リングだが、かれらは2017年のいま、一体どんな方向へ進もうとしているのか? それは実際にライヴを体験した者にしかわからない……詳細は以下を。

デビュー・アルバムで世界を席巻!
英名門レーベル〈4AD〉の男女シンセ・ポップ・デュオ、
ピュリティ・リング初の単独来日公演決定!

カナダはアルバータ州で結成されたコリン・ロディックとミーガン・ジェームズによる男女シンセ・ポップ・デュオ。2011年にバンド、ゴブル・ゴブルに所属していたコリンが自身の制作した楽曲“Ungirthed”のヴォーカルをミーガンに依頼したことをきっかけにピュリティ・リングを結成する。結成1年後にはグライムスら新進気鋭のエレクトロニック・アーティストも多く所属する英名門レーベル〈4AD〉契約し、2012年にファースト・アルバムとなる『シュラインズ』でデビュー。『シュラインズ』は米音楽メディアの『ピッチフォーク』でベスト・ニュー・ミュージックに選出されるなど世界中で絶賛され、同年にはフジロック・フェスティバル'12への出演を果たしている。2015年3月にはセカンド・アルバム『アナザー・エタニティ』をリリース。内省的でメランコリックなサウンドであったファースト・アルバムとは異なり、ミーガンの透明感のあるヴォーカルを際立たせるポップでオープンなサウンドという新境地を開拓している。

東京公演
@Womb Live
2017年3月6日(月)
開場18:30/開演19:00
ADV ¥6,000(All Standing/税込/1 Drink別)
※当日は整理券番号順にご入場いただきます。Aliveでチケットを購入されますと、他プレイガイド様で購入されたチケットよりも早い整理番号でご入場いただけます。

AliveまたはiFLYERでの先行予約受付中
Alive: https://www.alive.mu/event/detail/25
iFLYER: https://iflyer.tv/PurityRingTokyo/

プレイガイドでの一般発売は12/22から
チケットぴあ: https://ticket.pia.jp/pia/event.ds?eventCd=1659446 (Pコード:319342)
e+: https://eplus.jp/

interview with Sampha - ele-king


Sampha - Process
Young Turks/ビート

R&BSoulElectronic

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 UKの新しい世代の男性シンガー・ソングライターのひとりであるサンファことサンファ・シセイ。詳しいバイオがなく(生年は1988年とも、1989年とも)、謎めいたところの多いアーティストであるが、ロンドン在住の彼は覆面アーティストとして知られるSBTRKT(サブトラクト)の作品にフィーチャーされたことで、2010年頃から注目を集めるようになった。ソロ・アーティストとしても作品をリリースする一方、ジェシー・ウェア、キャティB、FKAツイッグスなどの女性シンガーたち、ブリオン、コアレス、リル・シルヴァなどUKの気鋭のプロデューサーらと次々とコラボをおこなっていく。ドレイクはじめ北米のメジャー・アーティストとの共演もあり、2016年はカニエ・ウェスト、フランク・オーシャン、ソランジュのアルバムにも参加している。EPを出してはいるものの、アルバムは未発表であったそんなサンファが、遂に待望のファースト・アルバム『プロセス』を完成させた。今回はサンファに『プロセス』についてはもちろん、今までの音楽活動を振り返り、音楽を始めた経緯から、サブトラクトとの出会いなど、いろいろな方向から話を訊いた。インタヴューをしたのは2016年12月上旬で、ちょうどザ・エックス・エックスの公演に帯同して来日し、自身でもピアノ・ソロ・コンサートをおこなった後日のことだ。サンファにとってザ・エックス・エックスも、リミックスやカヴァーするなど昔から交流の深いアーティストなのだが、くしくも彼らの新作『アイ・シー・ユー』とともに、〈ヤング・タークス〉の2017年のスタートを切るのが『プロセス』である。ちなみにサンファは4度目の来日で、今まではサブトラクトとのツアーで来ていたのだが、今回がもっとも長く日本に滞在していたそうだ。



音楽とは自分のいた場所や経験した時間をドキュメントするものだと思うんだ。

サブトラクト、ジェシー・ウェア、ドレイクなどの作品にフィーチャーされたことで、あなたは2010年代の新たなシンガー・ソングライターとして注目されるようになりました。そもそも歌を始めたのは、どんなきっかけからですか?

サンファ・シセイ(Sampha Sisay、以下SS):記憶がある子供の頃からずっと、家の中で歌っていたね。小学校でも合唱団に入っていた。でも、ティーンエイジャーになるとトラック制作とかプロダクションのほうへ興味が移って、歌からは少し遠ざかってしまったんだ。トラックはMyspaceにアップしていたけど、当時はキッド・ノーヴァというコミックから名付けた名前でやっていた。まあ、アンダーグラウンドな覆面プロデューサー気取りで、そんなときにアップした曲をサブトラクトがたまたま見つけて、とても気に入ってくれたんだ。それで彼と連絡を取るようになり、一緒に曲を作り始めたというわけさ。そうして作った曲がラジオとかで流れて注目されるようになったけど、そこで僕は歌を歌っていたから、みなは僕のことをシンガーとして見ていたようだね。でも、そもそもはヴォーカリストを目指していたわけではなく、あくまでトラックメイカーとしてキャリアは始まっているんだ。それでプロダクションと歌を並行して進めていくようになり、今のスタイルに至っているよ。

あなたの歌にはスピリチュアルなムードを感じさせるものが多いです。合唱団にいたという話ですが、ゴスペル・クワイアや教会の聖歌隊などからの影響もあるのでしょうか?

SS:特別にゴスペルや教会音楽を意識したことはないけど、子供の頃からいろいろなことに疑問を持ち、親にもあれこれ質問するたちだった。「神様って本当にいるの?」とか言って困らせたり。そうして、その疑問に対する答えを見つけていく人生だったけど、そうした姿勢が僕の歌にも表われているんじゃないかと思う。そのあたりが君の言うスピリチュアルなムードに、ひょっとしたら繋がっているのかもしれないね。

ちなみに両親はアフリカのシエラレオネ出身だそうですが、あなたの生まれもシエラレオネですか?

SS:いや、僕の生まれたのはロンドンだよ。

神様についての話が出ましたが、宗教はアフリカの信仰だったりするのですか?

SS:神様がいるか、いないかの質問は5歳の頃で、宗教的なことというより、子供ながらの純粋な疑問だったね。僕の家庭はキリスト教だけれど、僕自身は特別に強い信者ではなく、どちらかと言えば特定の宗教に属しているわけではないんだ。いろいろな宗教には興味があって、それに関する本も読んでいるけれど、今も「神様とは?」「自分にとっての信仰とは?」と探し求めている途上にある。

スピリチュアルということにも繋がるかもしれませんが、あなたの作る曲、またあなたの歌声にはメランコリックなムードが通底していると感じます。それは何かあなたの人生体験からくるものなのでしょうか?

SS:確かにそれはあるね。音楽とは自分のいた場所や経験した時間をドキュメントするものだと思うんだ。たとえば、僕が17、8歳の頃に作った曲を聴き直してみると、とても光り輝いていたなと思うことがある。大人になりきれない、ナイーヴなところがある一方、ハッピーで多幸感に溢れている。やっぱり、その頃の自分の心の中を反映しているんだなと。その後、大人になっていろいろと経験をして……家を出て自立し、大学に通ったり……兄が大病を患って、母が癌になって亡くなったり……。人生における苦難や悲しみが、子供の頃とは違う、もっと現実的なものとなってきたんだけど、そうした経験が今の僕が作る曲には反映されていると思うよ。

ずっと音楽を作ってきて、最近は一般的なソウル・ミュージックだけに「ソウル」が存在しているわけではないことにも気づいたんだ。たとえば、ミニマルなテクノやハウス・ミュージックの中にも「ソウル」はあるんだなって。

あなたは歌と同時にピアノ演奏においても優れた才能を持っています。ピアノはどのように学んだのでしょう?

SS:中学の頃に3年ほどピアノのレッスンを受けたけど、あとは全て独学で学んだよ。僕が初めてコード・パターンを理解したのは、アル・グリーンの“レッツ・ステイ・トゥゲザー”を聴いたときだったな。

いまアル・グリーンの名前が出ましたが、ほかに影響を受けたシンガーや音楽家などはいますか?

SS:最初に影響を受けたのはマイケル・ジャクソンだね。それから7、8歳の頃はスティーヴィー・ワンダーやトレイシー・チャップマンをよく聴いていたよ。ティーンエイジャーになるとフランスのエールとかを聴くようになって、あとゼロ7やミニー・リパートンも好きだった。ほかにもトッド・エドワーズ、ダフト・パンク、ネプチューンズとか、いろいろだよ。その頃はグライムも聴き始めて、ラピッドとかはトラック制作の上でも影響を受けたな。

確かに、一昨日(2016年12月7日)に見たあなたのピアノ・ソロ・コンサートの雰囲気とかは、トレイシー・チャップマンを彷彿とさせるところがありましたね。でも、一方でグライムにハマっていたというのは意外ですが。

SS:うん、僕とグライムの結びつきが意外という意見は結構あるんだけれど、でも僕のiTunesには自作の曲もいろいろと入れてあって、実はその中にはグライムもいろいろとあるんだよ。それらはまだリリースしていないけれど、僕は13歳の頃からグライムを作っているんだ。今回のファースト・アルバム『プロセス』には、聴いてすぐそれとわかるグライムは入っていないけれど、たとえば“リヴァース・フォルツ”は最初グライムのイメージで作って、最終的にヒップホップ寄りのプロダクションに落ち着いたんだ。

それでは、いつかあなたの作ったグライムも聴けるかもしれないですね(笑)。ちなみに作曲はどのようにおこなっていますか? 多くの曲はピアノから生まれたメロディが軸となっているようですが。

SS:僕の場合、フリースタイルで作ることが多いね。歌いながらとか、ピアノを弾きながらとか。その場の思いつきで、自由にやるんだ。あと、ひとつの歌詞が思い浮かんだら、そこから広げて曲を作っていくこともある。でも、たいていは曖昧な状態の歌詞があって、その後にメロディをつけて、それをピアノで弾いてみるってことが多いかな。

あなたの曲のキーとなるものはソウルとエレクトロニック・サウンドです。このふたつの異なるルーツを持つ音楽は、あなたの中でどのように融合されていくのでしょうか? もちろん、過去にもスライやプリンスをはじめ、そうしたアプローチをおこなうアーティストはいますが、あなたの場合にはまた違った独自のアプローチがあるように思うのですが。

SS:先にも話したように、僕はもともとシンガーではなく、トラックメイカーだったわけだけど、多くの人の場合は逆のパターンが多いと思うんだ。歌うことから始まって曲作りをするようになるとか。そういった経緯があるから、僕は今もプロデュースという部分についてもとても楽しくやっていて、音をいろいろいじって遊ぶことが好きなんだ。自分にとって新鮮に響く音というものを、常に探し求めている。エレクトロニックなプロデューサー・ワークが、僕の中における音作りを支えていることは間違いない。君が言うソウルとエレクトロニック・サウンドの融合は、そうした背景が生み出しているんだろうね。でも、それはいつも意図的におこなわれるものでもなくて、試行錯誤を重ねていく中で偶然に生まれることもある。そうした実験の中から、いい音楽っていうのはできるんじゃないだろうか。サウンドをいろいろといじくって、トライ&エラーして、そうしてできたものに少し「ソウル」が足りないなと感じたら、ハーモニーやメロディをアレンジして、そうやって「ソウル」を加えていく。僕が思うところの「ソウル」とは感情ってことだけどね。でも、ずっと音楽を作ってきて、最近は一般的なソウル・ミュージックだけに「ソウル」が存在しているわけではないことにも気づいたんだ。たとえば、ミニマルなテクノやハウス・ミュージックの中にも「ソウル」はあるんだなって。今後はそうした方向性でも曲を作ることがあるかもしれないね。

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ある日、録音をそのままにして家を出て、帰ってきたら兄が「ごめん、パソコンのデータが全部消えちゃったよ」と謝ってきて、そんな具合に消えてしまった曲も多かったね(笑)。


Sampha - Process
Young Turks/ビート

R&BSoulElectronic

Amazon Tower iTunes

トラック制作からシンガーに進んだタイプとして、ジェイムス・ブレイクが思い浮かびます。ソウルや歌に対するアプローチについて、あなたとジェイムス・ブレイクには共通するところもあるように感じますが、どうでしょうか? ほかにもUKの同世代の男性シンガー、およびシンガー・ソングライターとして、サム・スミス、ジェイミー・ウーン、クウェズなどがいますが、彼らからは何か刺激を受けるところはありますか?

SS:ジェイムス・ブレイクもジェイミー・ウーンも、それからクウェズも、みな音楽はとても好きだよ。特にクウェズにはシンパシーを感じることが多くて、それは彼がマイスペースで最初に僕をフックアップしてくれたひとりでもあるからなんだ。2008、9年あたりだけど、クウェズとMyspaceで繋がって、その頃の彼が作っていたサウンドはとてもオリジナリティがあるものだった。当時はまだ面識がなかったので、実際に会ってそのサウンドと本人のキャラクターとのギャップに驚いたりもしたけれど、でも同じ黒人ということもあって親しくなった。彼は自分の繊細なところ、弱いところもさらけ出して曲を作るけれど、それはある種僕にも共通するところでもあり、そんなところで惹かれ合うんだろうね。彼と出会った頃、僕の周りにはラッパーとか、ハードな音楽を作っている人が多かったから、クウェズはその対極にあるようなタイプで、僕はとてもシンパシーを感じたし、自分のやろうとする方向性にも自信が持てたんだと思う。ジェイムス・ブレイクとは2010年に初めて会ったけど、彼と僕にも共通点は多くて、そうしたことについていろいろと語り合ったよ。僕たちのようなタイプのミュージシャンはあまり多くはないから、そうした点で共感できる存在だね。同じロンドンで育って、同じような音楽を聴いてきたという共通するバックボーンがあって、もちろんそれぞれ違うところもあるけれど、クウェズやジェイムス・ブレイクはじめ、君が挙げたアーティストたちからはシンパシーを感じ、影響を与え合う存在だと思っているよ。

サブトラクトとのコラボがあなたを飛躍させるきっかけになったと思いますが、彼との出会いについて改めて教えて下さい。

SS:うん、Myspaceを介してサブトラクトと出会ったわけだけど、その頃から彼はレーベルの〈ヤング・タークス〉に所属していて、そこに僕と共通の知り合いがいたんだ。その人を通じて実際に連絡を取り合うようになった。そして、サブトラクトが僕の音楽に興味を持ってくれて、一緒に音楽を作ろうよと言ってくれたんだ。その頃は既に僕もサブトラクトの音楽は知っていたし、とてもいい作品を作るプロデューサーだと思っていた。だから、一緒に曲作りができると聞いて、とてもワクワクしたね。実はサブトラクトのアパートは、僕が住んでる町から地下鉄で3駅先のところにあってすごく近かったから、その後お互いの家を行き来してよく一緒に曲作りをするようになった。もちろん音楽的にも気が合ったので、家でジャム・セッションを何時間でもやっていたよ。毎週火曜の午後を共同作業の日にして、その行きの電車の中で作曲をしたりしていたね。僕にとってあの時期は、アーティストとしての土台を形成する期間だったと思っている。彼との出会いからツアーにも出られるようになったし、世界のいろいろなヴェニューを見ることもできた。ラジオで僕たちの曲がオンエアされたりと、本当に実りの多い時期だった。

最初のEP「サンダンザ」(2010年)も、サブトラクトとのコラボを始めた頃の作品ですか?

SS:いや、あれはもっと前に作ったもので、17歳のときの作品だよ。大学受験の勉強をしなければいけない時期だったけれど、僕はそれが嫌だったから、ああやって曲を作っていたんだ(笑)。

今とは制作方法なども違っていたのでしょうね?

SS:当時は母親のWindows 2000を使っていて、そこに付いているウェブ・カメラのマイクで録音していたんだ。録音もWindowsのサウンド・レコーダーだったので、今とは比べものにならない低スペックのレコーディング環境だったよ。制作や録音のプロセスも違うけど、その頃はまだ本気で音楽をやろうとは思っていなかったから、バックアップもきちんと取っていなかったんだ。ある日、録音をそのままにして家を出て、帰ってきたら兄が「ごめん、パソコンのデータが全部消えちゃったよ」と謝ってきて、そんな具合に消えてしまった曲も多かったね(笑)。

2013年のEP「デュアル」はどのようにして生まれましたか? このEPは今回のあなたのファースト・アルバム『プロセス』へと至る原型のようなものだと思いますが。

SS:2012年にサブトラクトとツアーをしていて、その終わり頃にできた作品だよ。ツアーの合間に曲を作り貯めて、それらを最終的に自宅のスタジオで録音している。だから、そのツアーのリアクションだったり、その頃の心境などが反映されているね。

たとえばアフリカ音楽とインド音楽の共通点を見つけたり、アフリカ音楽と中国の音楽の類似点がわかったりとか、そうした発見があるから音楽って面白いんだ。

ファースト・アルバム『プロセス』について伺います。デビューから随分と時間が経ってのリリースとなりますが、それだけ長い時間をかけ、じっくりと準備して作り上げた作品ということでしょうか?

SS:EPを何枚か出したときは、そもそもアルバムを作ろうとは考えていなかったんだ。一般的にシンガーがEPやシングルをいくつか出すと、次はアルバムを期待されるだろ。僕は周りのシンガーがそうした状況に置かれ、プレッシャーを受ける場面をいろいろと見てきた。僕自身はまだその段階になくて、準備ができていないと思っていた。音楽的にもだけど、人間的にも未熟で、世界が見えていなかったと思う。でも、いろいろと経験を積んで、ようやくきちんとした作品が作れるかなと思うようになった。アルバムを出して、それをライヴで伝える術も身に付いたと思う。アルバムを出すと、それに対する批判を受けることがあるかもしれないけど、それをきちんと受け入れられるくらいに成熟したしね。

〈XLレコーディングス〉のロデイド・マクドナルドが共同プロデュースをしていますが、特に目立ったゲスト参加もなく、あなたひとりで集中して作ったアルバムのようです。それだけパーソナルな部分に向き合ったアルバムでしょうか? “ブラッド・オン・ミー”、“テイク・ミー・インサイド”、“ホワット・シュドゥント・アイ・ビー?”といった曲目にもそうした傾向は表れているように感じますが、何か個人的な体験などが反映されたところはありますか?

SS:“ホワット・シュドゥント・アイ・ビー?”はサブトラクトとのツアーの経験から生まれている。僕の人生で初めて家から離れ、ツアーに出かけるという体験だったけど、父親と離婚してシングル・マザーの母親を家に残して、自分の夢を追うために行ってしまっていいのかと、いろいろと悩んだ。この曲にはそうした自分の夢と母親への責任の間で葛藤する僕が表われている。“ブラッド・オン・ミー”にはヴィジュアル的なイメージがあって、「醒めない悪夢」とでも言おうか。自分を客観的に見たもので、それがインスピレーションとなっている。“テイク・ミー・インサイド”は人間関係、男女関係などにおいて、どれだけ自分の内面をさらけ出せるか、そうしたパーソナルな側面について歌った曲だよ。この3つの中で、もっとも個人的な体験に基づくのは“ホワット・シュドゥント・アイ・ビー?”だね。

“(ノー・ワン・ノウズ・ミー)ライク・ザ・ピアノ”もあなたの内面が映し出された曲で、あなたの歌声以上に美しいピアノの音色がそれを物語っています。ソロ・ライヴでもとても印象的に演奏していて、あなたのピュアなところが出た素晴らしい曲ですが、これはどのようにして生まれたのですか?

SS:母の家を出て、自立した生活を送るようになってから作った曲だけど、レコーディングの最中に母の癌が末期のステージに進行していることを聞かされた。それを知ってから、母の家に戻ってしばらく過ごしたんだけど、居間にあるピアノの前に座ったときに、ふとこの曲のタイトルが浮かんだんだ。ここで登場するピアノはほかのどんなピアノでもなく、母の家にある母のピアノ、僕が子供のときに弾いて一緒に育ったピアノなんだよ。その後、母は亡くなって、母はもうこの世にいないという事実、人生は無常であるという現実に僕も打ちのめされるけれど、そうした母がいたから、ピアノのある家があったから今の自分があると思い、この曲が生まれたんだ。

“コラ・シングス”はタイトルどおりコラの物悲しい響きが印象的です。“プラスティック 100℃”にもフィーチャーされていますが、アフリカの民族楽器であるコラを用いようと思ったアイデアはどこから生まれたのですか? あなたの両親の故郷であるシエラレオネに結び付いているのでしょうか?

SS:シエラレオネが直接結び付いているわけではないけど、ずっと昔に父がウオモサグリという西アフリカのアーティストのCDを買ってきてくれたことがあった。ウォラトンというマリの音楽の一種だけど、その影響が強いかな。そのアルバム自体はコラがそれほど使われてはいなかったけど、それがきっかけでアフリカの民族音楽をいろいろと調べるようになったんだ。アフリカ音楽には独特のリズムやメロディがあって、とても惹かれたんだ。そうした中でコラを知るようになって、YouTubeでいろいろと実演風景も見て研究したよ。実は“ホワット・シュドゥント・アイ・ビー?”のピアノ演奏もコラに影響を受けた部分があるんだ。ここではヤマハのDX-7というエレピを弾いているんだけど、コラに似せた音色となっているんだよ。僕はアフリカ音楽以外にも、世界のいろいろな民族音楽に興味があって調べているけれど、たとえばアフリカ音楽とインド音楽の共通点を見つけたり、アフリカ音楽と中国の音楽の類似点がわかったりとか、そうした発見があるから音楽って面白いんだ。

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