「UR」と一致するもの

interview with Silkie - ele-king


E王 Silkie
City Limits Volume 2

DEEP MEDi Musik/Pヴァイン(6/15発売予定)

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 「すべてのインタヴュアーがデトロイト・テクノから影響を受けているだろう? と訊いてくるんだけど......」と、ロンドンからやって来た25才のダブステッパーは言う。「僕は本当にデトロイト・テクノのことを知らなかったんだ。で、聴いてみたら、たしかに似ていると思ったけどね」
 このエピソードが彼の音楽的傾向を物語っている。シルキーを名乗るソロマン・ローズは、ダブステップに70年代ソウル/ファンクのフレイヴァーを注ぎこみ、2ステップ・ガラージのビートにそのメロウなフィーリングを混合する。それが2009年に〈ディープ・メディ・ミュージック〉からリリースされた『シティ・リミッツ・ヴォリューム1』だった。
 それはオリジナル・ダブステップの系譜からの一撃だったが、シルキーの音楽は、ときにロマンティックな都会の叙情主義ゆえに、この2年ものあいだじっくりと時間をかけながら、デトロイト・テクノやハウス・ミュージックのリスナーを巻き込んで、ジャンルを横断するような、より幅広い支持を得るにいたっている。

 この取材は彼がDBSのために来日した4月17日におこなわれている。福島第一原発の放射性物質の漏洩によってDJやミュージシャンの相次ぐ来日キャンセルのなかで、ロンドンからやって来たダブステッパーは意気揚々と渋谷を歩いて、そして居酒屋でビールを飲みながら話してくれた。

グライムというのはアーティストやオーディエンス同士のしがらみがあったり、音もアグレッシヴだし、けっこう大変なんだよ。発砲事件もたびたび起きているし、殴り合いの喧嘩なんか頻繁にある。それが嫌になっていたときに、友だちにダブステップのイヴェントに連れていかれて、あまりにもピースだったんでびっくりした。

『シティ・リミッツ・ヴォリューム1』がホントに好きなんですよ。

シルキー:それはどうもありがとう。

アルバムからはソウル・ミュージックというものを強く感じました。

シルキー:うん。(しばし沈黙)......それで質問は?

いや、ただ言ってみただけです。

シルキー:ハハハハ、オッケー(笑)。いつ質問が来るのかなーと思って、ついつい構えていたんだよ。

初めてだし、バイオ的なことを訊いてもいいですか?

シルキー:いいよ。2001年、15歳で音楽を作りはじめたんだ。最初はグライムから入った。当時のグライムのシーンはエキサイティングだったけど、メロディを受け入れるような感じはなかったけどね。

何がきっかけだったんですか?

シルキー:姉の影響でガラージを聴いたのがきっかけだったね。ガラージの熱が冷めかけた頃にグライムを聴きはじめて、ダブステップに関しては最初から聴きはじめたわけじゃないんだけど、急カーブを曲がるようにダブステップへといったね。

なぜグライムからダブステップへ?

シルキー:最初はホント、グライムにハマったんだけど、グライムというのはアーティストやオーディエンス同士のしがらみがあったり、音もアグレッシヴだし、けっこう大変なんだよ。発砲事件もたびたび起きているし、殴り合いの喧嘩なんか頻繁にある。それが嫌になっていたときに、友だちにダブステップのイヴェントに連れていかれて、あまりにもピースだったんでびっくりした。チーム同士のしがらみがないところも気に入ったし、それでダブステップのイヴェントに通うようになるんだ。そして自分で作ったテープを持っていって、自分の顔を売っていったんだよね。

ティンバランドやネプチューンズの影響は受けなかったの?

シルキー:ノー。ただまあ、グライムがいろんな音楽に影響されているものだから、直接ではないけど、知らないうちに影響されているかもね。

へー、ガラージやグライムの人たちはUSのヒップホップとR&Bからの影響が大きいでしょ。

シルキー:イエス、僕よりも年上の連中はみんなUSヒップホップからの影響を受けている。ただ、僕の世代になってくるとすでにUKガラージがすごく大きかったし、すぐにコマーシャルにもなった。だから僕の世代にとってのアンダーグラウンドはヒップホップとはまた別の音楽になったんだ。

え、最初からアンダーグラウンドだったんですか?

シルキー:ホントにそうだった。まだガラージがアンダーグラウンドだった1998年、僕が13歳のときに聴きはじめたんだよね。最初はガラージも小さなシーンだったけど、それはあまりにも早く大きくなってしまった。そして嫉妬や人間関係のしがらみが出てきてしまった。

ロンドンのアンダーグラウンドはまずはラジオから?

シルキー:ああ、ホントにラジオの役割はでかいよ。とくに年齢が若いとクラブには行けないから、まずはラジオで聴いて、そしてレコード店に行く。僕がそうだったな。ラジオで音を聴いて、ビッグ・アップルにレコードを買いに行って、ベンガに会うっていうね(笑)。アンダーグラウンドの入口はラジオだし、みんなそこから入っていくんだよ。

ちなみに同世代というと?

シルキー:スクリームやベンガ、ジョーカーなんかだよね。マーラーは年上だから叔父さんに接するみたいな感じだけど(笑)、スクリームやジョーカーみたいな連中はホントに同世代って感じで接している。

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PCがあって、フルーティ・ループスを使って、そして親から盗んだスピーカーを使って(笑)、ベッドルームでとてもベーシックなセットで作りはじめた。実はいまでもそんなに変わらないんだ。自分の部屋で作っているという感じが好きだし。


E王 Silkie
City Limits Volume 2

DEEP MEDi Musik/Pヴァイン(6/15発売予定)

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作りはじめたときに目標とするプロデューサーはいた?

シルキー:とくにいないね。グライムやガラージに対する敬意はあったけど、自分がどうして音楽を作っていったのかと言えば、自分のなかには何かあるんじゃないかと信じていたわけで、そしてそれがシーンに貢献できるんじゃないかと信じていたからなんだよ。

最初の機材は?

シルキー:PCがあって、フルーティ・ループスを使って、そして親から盗んだスピーカーを使って(笑)、ベッドルームでとてもベーシックなセットで作りはじめた。実はいまでもそんなに変わらないんだ。自分の部屋で作っているという感じが好きだし。

最初にヴァイナルで作品を出すのは2003年? 初期の作風はガラージっぽい音だった思うんですが、それがダブステップに変化していくうえでパーティ以外の影響ってありました?

シルキー:基本的にはクラブからの影響だったね。最初はグライムのクラブに通っていて、ホントにグライムが好きだったんだけど、ただ音楽を聴いているだけなのに喧嘩になるようなところにうんざりもしていて、で、ダブステップの平和な雰囲気に惹かれていった。音楽を聴いて気持ちよくなれないと意味がないと思ったんだよね。

グライムって、やっぱそんな喧嘩ばっかだったんですね。

シルキー:ハハハハ、けっこう酷かったね。いまはだいぶ洗練されているのかもしれないけれど、初期のアンダーグラウンドだった頃のグライムのリリックというのはまったくの真実で、まあ、最悪の場合はパーティの最中に銃で人を撃ったりしていたわけだよ。洒落にならないくらい危ないシーンだった。

それであなたの音楽にはピースな感覚があるんですね。そうそう、あなたの音楽にはメロディがあるけど、以前、何か楽器をやっていました?

シルキー:ピアノは独学で少しやっていた。音楽理論はネットを見ながら勉強した。

音楽はあなたにとってどんな意味で重要だったんですか?

シルキー:僕はサッカーもやらないしコンピュータ・ゲームもやらなかった。僕には音楽しかなかった。他の子供たちがコンピュータ・ゲームをやっている時間に僕は部屋でずっと音楽を作っていたってだけだよ。

多くのダブステップのプロデューサーはシングルはたくさん出すけど、アルバムはあまり出さないですよね。そんななかであなたはわりと早くファースト・アルバム『シティ・リミッツ・ヴォリューム1』を出しましたよね。

シルキー:2003年が僕の正式なデビューだけど、実は2002年にもホワイトで1枚出しているんだよ。それは音楽を作りはじめて8ヶ月後に出した作品だった。そして2005年からしばらく作品を出さずにいて、それで2009年に『シティ・リミッツ・ヴォリューム1』を出しているんだよね。

コンセプトがあるアルバムですよね?

シルキー:つねにアルバムを作りたいと思っていた。そういう意味ではすべての曲には共通しているものがあると思う。

都市生活がテーマになっているんですか?

シルキー:たしかにそうなんだけど......というか、僕は世界に出たいけど、ロンドンで暮らしている。ロンドンから出られないんだ。それが"シティ・リミッツ(都市の境界)"という言葉に繋がっているんだ。ロンドンから出られないことが音楽に影響を与えていることは間違いない。"コンクリート・ジャングル"をよく聴くと車の音や街中の音が入っている。すべての曲はロンドンという街から得たインスピレーションで作られれている。

出身はどこ?

シルキー:どこかの雑誌を読んだらサウス・ロンドンと書かれていたけど、ウェスト・ロンドンだよ(笑)。

ご両親の出身は?

シルキー:ジャマイカです。

それでレゲエの曲も入っているんですね。

シルキー:母親から音楽的な影響を受けたことはないんだけどね。彼女も家で音楽を聴いていたわけじゃないんでね。ジャマイカ系ということを抜きにして、ロンドンで暮らしていると自然にレゲエの音が耳に入ってくる。そこからの影響だよね。

それでは、あなたのソウルやファンクのフィーリングはどこから来ているんでしょう?

シルキー:それもいろいろだと思う。90年代のR&Bかもしれないし、ガラージからかもしれない。とくに意識はしていないんだ。

サックスの音が好きなのはなぜ?

シルキー:それはもう、ただその音が好きだとしか言いようがない。

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スティーヴィー・ワンダーとクインシー・ジョーンズはとくに尊敬している。作っていくうちに、何かいいなと思えるアーティストに出会うんだけど、そのひとりがスティーヴィー・ワンダーだったね。実は最近は古い音楽ばかり聴くようになっているんだ。音楽を作っていないあいだは音楽ばかり聴いている。


E王 Silkie
City Limits Volume 2

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ダブステップやガラージ以外で尊敬しているアーティストに誰がいますか?

シルキー:たくさんいるけど、スティーヴィー・ワンダーとクインシー・ジョーンズはとくに尊敬している。初期の頃はとにかくビートを作ることに専念していたんだ。それで作っていくうちに、何かいいなと思えるアーティストに出会うんだけど、そのひとりがスティーヴィー・ワンダーだったね。実は最近は古い音楽ばかり聴くようになっているんだ。音楽を作っていないあいだは音楽ばかり聴いている。母親のCDコレクションも聴いているほどだよ。

どんな音楽が好き?

シルキー:嫌いなジャンルはないよ。ヘヴィ・メタルがかかっていると音量を下げるくらいかな(笑)。

ダブステップも生まれて10年くらい経ちますが、あなたから見てシーンはどう見えますか?

シルキー:とても健康的に見えるよ。音楽的に前向きにどんどん展開しているでしょ。古い世代もがんばっているし、新しい世代もどんどん出てきている。ダブステップと呼べるかどうかわからないものまで出てきていることも良いことだと思う。UKではダブステップはすでにメインストリームの音楽だけど、いまでもアンダーグラウンドはしっかりしているし、全体的に良い流れだと思うよ。

あなたが嫉妬を覚えるほどのプロデューサーは誰?

シルキー:ハハハハ、嫉妬は覚えないなー。素晴らしい作品を聴けば、自分にもそれが作れるんじゃないかと励みにしているよ。

好きなプロデューサーは?

シルキー:クエストやベンガやジョーカーや......いや、止めておこう。身内を褒めるようで気色悪い(笑)。

『シティ・リミッツ』のシリーズは今後どうなっていくんですか? 今年に入って2枚のシングルを出していますよね。

シルキー:音楽的に言えば、変化するだろうね。PCのプラグインも変えるし、音も変える。

昨年はUKファンキーもすごかったし、UKのベース・ミュージックもいま頂点を迎えていると思います。こうしたシーンの動きは意識していますか?

シルキー:僕のなかの変化はシーンにともなうものっていうよりも僕個人のなかの変化だと思う。自分がどこかのシーンに属しているって感じでもないし。セカンド・アルバムの『シティ・リミッツ・ヴォリューム2』もほんとんど出来ている。日本では〈Pヴァイン〉から6月15日にリリースする予定だよ。

それは楽しみですね。

シルキー:ありがとう。2歳年を取った分だけ、音楽もよくなっていると思うよ(笑)。

最後に、お礼を言いたいんだけど、今回の福島第一原発の事故の影響で多くの欧米のDJやミュージシャンが来日をキャンセルしています。そんなかで来てくれてありがとう。

シルキー:たしかにまわりの友だちにも止められたんだけど、テレビのニュース番組で言っていることを信じるよりも自分で調べてみて、その結果、放射線の量もそんなに気にすることもないんじゃないかと思って。まあ、自分が空港まで歩くまでのリスクとそんなに変わらないんじゃないかと思ったんだよ(笑)。

 取材をした数週間後に、セカンド・アルバム『シティ・リミッツ・ヴォリューム2』が届いた。間が悪いというか、新作について訊けなかったのがホントに残念だ。新作には前作とは違った興味深い変化があるのだ。
 アルバムの1曲目に収録された"フィール"は2ステップのビートとダブの空間のなかを、美しいピアノとストリングスが繊細に交わっていくいかにも彼らしい叙情詩で、アルバムでも1位~2位を競うほどの素晴らしい曲だが、『ヴォリューム2』には前作以上にビートが強調されている。アルバムの中盤はとくにそれが顕著で、ダブステップのビートをさまざまな角度で展開しながら、彼のジャズ/ファンクのセンスが活かされている(たぶん......そのスジでも大いに騒がれるでしょう)。そして、それはUKベース・ミュージックのスリリングな冒険となっているわけだが......、それはときとしてカール・クレイグのようなメランコリーを見せ、ときとしてURのような力強いファンクを見せているという、デトロイティッシュなセンスもさらに際だっている。
 そして......それは放射線量を気にしながら暮らし、もはや軽々しく"アーバン・ソウル"などとは言えなくなった我々にはなおさらずしりと響くかもしれない。まさに我々はいま、"シティ・リミッツ"な状況にいるのだから......。
 とはいえ、まあ、シルキーは新作でも変わらずロマンティックである。アルバムの最後から2番目に収録された"Only 4 U"は、"コンクリート・ジャングル"の続編とも言える曲だ。浮かれ、舞い上がってしまうようなジャズ・ダブステップで、ファンはこういう曲を心待ちにしていたのだろうし、そしてシルキーはそのことよく理解しているかのように、期待に応えている!

Chart by JET SET 2011.05.23 - ele-king

Shop Chart


1

TIGER & WOODS

TIGER & WOODS GIN NATION »COMMENT GET MUSIC
冗談のつもりがあんまり売れるものだから本気になって(?)フル・アルバム発表という事態に発展した、Running Back関係者による匿名ユニット(ということでOK?)タイガー&ウッズ。最高傑作トラックが本家Running Backから正規(?)再発!!

2

BATTLES

BATTLES ICE CREAM »COMMENT GET MUSIC
Comemeの奇才Matias Aguayoがメイン・ヴォーカルに抜擢された注目作"Ice Cream"が限定12"カット。

3

V.A.

V.A. ENJOY THE SILENCE VOL.2 »COMMENT GET MUSIC
Mule Electronic発、『Enjoy the Silence』シリーズの第2弾が到着!国内外のトップ・クリエイター達の渾身のアンビエント・トラックを収録して好評を博したシリーズの第2弾。アナログLPの他、国内盤が先行していたCDもおまけで同封されているお得すぎる内容です!!

4

KOLOMBO

KOLOMBO WAITING FOR »COMMENT GET MUSIC
多岐に渡るスタイルで非常に精力的なリリースを重ねるベルジャン・デュオMugwumpの片割れOlivier Gregoire。今回は105bpmの美しいシンセポップ・ハウス。Michael Mayerリミックスもグレイト!!

5

NIGHT ANGLES

NIGHT ANGLES AERODYNAMOUR »COMMENT GET MUSIC
Nhessingtons, BANDJOらのコズミック~バレアリック良質作品で当店でも大きな注目を集めたスウェーデン発"Force Majeure"から、UKのビートメイカーNight AnglesがデビューEPをドロップ。

6

HARDROCK STRIKER

HARDROCK STRIKER MOTORIK LIFE »COMMENT GET MUSIC
DJ Sprinkles a.k.a. Terre Thaemlitzによるリミックスが素晴しいSkylax新作です!!SkylaxのオーナーHardrock Strikerによる09年以来となる新作が到着。先日のDommuneでの講義も素晴らしすぎた(続編、希望!!)テリコ先生によるリミックスがとにかく最高!!

7

MR PRESIDENT

MR PRESIDENT NUMBER ONE »COMMENT GET MUSIC
70年代ソウル/ファンクなサウンドをスタイリッシュに展開して絶大な人気を誇るMr President。待望のアルバムは、込み上げ爽快ソウルから激ファンキー・インストまで、超充実の傑作です!!

8

MO KOLOURS

MO KOLOURS EP1:DRUM TALKING »COMMENT GET MUSIC
Paul White、Bullionらのリリースもある『One Handed』から新たな刺客!インド洋南西部に位置するモーリシャス島出身のパーカッショニスト=Mo KoloursによるデビューEP。土着的なパーカッションとヴォーカルのループが、スモーキーかつマッドな世界観を形成している力作!

9

ROMAN FLUGEL

ROMAN FLUGEL BRASIL »COMMENT GET MUSIC
前作"How to Spread Lies"は即完売、レジェンド・デュオAlter Egoの1/2、Roman Flugelが、お馴染みジャーマン音響ハウス名門Dialから再登場リリースです!!

10

AEROPLANE

AEROPLANE MY ENEMY (GREEN VELVET / REX THE DOG RMX) »COMMENT GET MUSIC
Eskimoの看板アーティストVito de Lucaによるソロ・プロジェクトAeroplane。昨年リリースしたデビュー・アルバム"We Can't Fly"から、Green Velvet & Rex The Dogによるリミックス・カットが到着。

aSymMedley - ele-king

 和泉希洋志は日本のエレクトロニック・ミュージックにおいてもっともユニークなひとりである。彼が1997年にロンドンの〈リフレックス〉から八角形のケースでリリースした「Effect Rainbow」は、IDMにおける異色のサイケデリックだったと言えるだろう。ゴムのようにねじられたビートはテクノと呼ぶにはオーガニックな感触があり、実験的だが生温かいのだ。小杉武久やフルクサスなどを通過したこの異才は、それからボアダムスの「スーパー・ゴー!!!!!」「スーパー・ルーツ7」、あるいはOOIOOに参加すると、2000年には〈チャイルディスク〉からアルバムを1枚発表して、その4年後には〈ピース・レコーズ〉からもアルバムをリリースしている。その活動はテクノとアヴァンギャルドのあいだを気まぐれに往復するようで、とにかく捉えどころがないのだ。アシンメドレー名義による本作『エイジ・オブ・サン・エッジ』は、和泉希洋志としては7年ぶりのアルバムとなる。
 それはこれまでの彼の、IDM/アンビエント・テクスチャーを応用した諸作とは少しばかり異なっている。先述したように和泉希洋志は、ひとつのスタイルを貫くというよりも、さまざまなスタイルを取り入れて、咀嚼し、掻き回すような、固有のスタイルを持たないスタイルの作り手だが、『エイジ・オブ・サン・エッジ』からはクラブ・カルチャーのざわめきを間近に感じる。今日の日本において重要なDJのひとり、アルツが主宰するレーベルからのリリースというのは、そのことと無縁ではないはずだ。要するにはここにはハウス・ミュージックのグルーヴがあるのだ。そしてこれはどう聴いても、ユートピアのダンス音楽である。

 "Artificial Tour"はトロピカルなフィーリングをもったアンサンブルが4/4のキックドラムを擁したハウスのBPMのなか、ゆっくりとうねる波のように変化していく。ベースは地面から伸びているが、ジャングルの上のほうから音符が降り注いでくるようだ。美しいピアノとパーカッションが素晴らしコンビネーションをみせる"Akashic Rain"もまた極楽浄土におけるスローテンポのダンストラックで、それはある種のドリーミーなフュージョン・ハウスとして"Prismatic Drms"や"Mirror in Lemuria"へと続いている。
 アルバムは、70年代のイーノを彷彿させるような、5曲目のアンビエント・トラック"Crystal Finite State Machine"からさらに深い茂みのなかに入る。アルバムの曲名には自然を喚起する――雨、水晶、オーロラ、大気、森、太陽――といった言葉が使われているが、和泉希洋志はある種のアニミズム(それはボアダムスにも共通するものである)をハウス・ミュージックのスタイルに変換しているように思える。アトモスフェリックな"Aurora Tones"から自然の精霊たちが踊っているような"Purple Low Air"へと、アルバムはまるで放射性物質によって汚れてしまった大地とは真逆のヴィジョンを強調している。"Fibonacci Forest"などはデリック・メイの〈トランスマット〉から出ていても驚かないようなトラックだが、しかしこのサイケデリアはアフリカニズムとはまた別のところから来ているように感じる。アーサー・ラッセルからヒントを得て、水中にいるような感覚をハウス・ミュージックに変換したカリブーの『スウィム』のようにコンセプチュアルなダンス・アルバムで、『エイジ・オブ・サン・エッジ』にはJ.G.バラードの『結晶世界』をユートピア小説として書き換えたような、奇妙なオプティミズムがあるのだ。
 クローザー・トラックの"Diffused Aura"は、熱帯雨林のスコールのようなノイズが鳴っている。みんながこの音楽を好きな理由がとてもよくわかる。

ZETTAI-MU Monthly Groundation in TOKYO & KYOTO - ele-king

 今年はベース・ミュージックがますます盛りあがりそうです。ダブステップ系の勢いも相変わらずですが、ハドソン・モホークやラスティーといったウォンキー系のリリースも控えているみたいだし、ホントに楽しみです。そんなわけで、日本のベース・ミュージックの総本山とも言える、KURANAKA 主宰の〈ZETTAI-MU 〉が東京と京都で開かれます!!
 震災後、海外からのDJの来日キャンセルが相次いでいますが、僕が東京でハウスで踊っていた大昔なんかは、外国人のDJがまわすなんて滅多にありえない時代でした。だからみんな日本人のDJを英雄視していました。いまでも、日本には良いDJがたくさんいます。今回の〈ZETTAI-MU 〉がもうひとつ興味深いのは、すべて日本で暮らしているDJでやっていることです。
 とりあえず低音好きは絶対に行こう! 踊って、瞑想しよう!


2011.5.27 (FRI)
ZETTAI-MU MONTHLY GROUNDATION in TOKYO @ AIR
"GRASP AT THE AIR"


O.N.O a.k.a Machine Live (THA BLUE HERB)
DJ BAKU (POPGROUP)
KURANAKA 1945 (Zettai-Mu)
DJ QUIETSTORM (中目黒薬局 / TIGHT)
GOTH-TRAD (DEEP MEDi / BACK to CHILL)
BLUE BERRY (BLACK SMOKER / SKUNK HEDAS)

@ AIR
Info tel: 03-5784-3386(AIR)
ADDRESS: 東京都渋谷区猿楽町2-11氷川ビル B1, B2
WEB SITE : https://www.air-tokyo.com/

OPEN/START. 22:00
¥3,000 Admission
¥2,500 w/Flyer
¥2,500 AIR members

https://www.zettai-mu.net/news/1105/0527_air/0527_air.html
https://www.air-tokyo.com/schedule/543.html


2011.6.3 (FRI)
ZETTAI-MU MONTHLY GROUNDATION in KYOTO @ WORLD


KODAMA KAZUFUMI (DUB STATION / MUETBEAT)
KURANAKA 1945 (Zettai-Mu)
O.N.O a.k.a Machine Live (THA BLUE HERB)
ナカムライタル (OUTPUT)
Light-One
and more act!

@ 世界WORLD
Info tel: 075 213 4119(WORLD)
ADDRESS: 京都市下京区西木屋町四条上ル真町97 イマージアムBF~2F
WEB SITE : https://www.world-kyoto.com/

OPEN/START. 22:00
¥2,500 ADV
¥3,000 DO

https://www.zettai-mu.net/news/1106/0603_world/0603_world.html
https://www.world-kyoto.com/schedule/2011/6/3.html

スーパーカー - ele-king

 紙ele-kingに掲載されていた2010年の彼のベストにはZsにOPNにマウント・キンビー、あるいは灰野敬二による静寂までもが並んでいる。それらを彼は「とんでもなくマニアックな表現や音がポップな形になった作品」だと説明している。OPNをポップだと表現する感性が間違っていないことは、アントニー・ハガティが"リターナル"を純然たる歌ものとしてカヴァーしていることが証明しているが、逆に言えば彼はマニアックなだけの、言い換えれば自分本位な音の実験に終始することにも不満を覚えているとも言える。

 スーパーカーの楽曲を中村弘二が再構築したアルバムを出すというこの企画を聞いたとき、彼にとってスーパーカーは過去のものになっていると勝手に思い込んでいたから、まずは驚き、次にいまの彼の知識と技術を動員してかつてバンドが鳴らしていた意味を解体するような音の実験を想像した。この第一弾は、IDMを取り入れて大胆な変化を遂げる『FUTURAMA』以前の、バンドがまだ「瑞々しいギター・ロック」と呼ばれていた頃の楽曲を対象としている。それらオリジナル・ヴァージョンは、ここ数年の中村弘二の音楽とはかなり遠いものである。
 が、左右のチャンネルにドラムが振り分けられた冒頭の"Walk Slowly"からそうした先入観は小気味良く裏切られる。中村弘二の巧妙な音の配置の実験やクラブ・ミュージックの手法の導入はあるのだが、しかしいしわたり淳治が書いた歌詞を分解するようなこともなければ、メロディを損なうこともない。多くの曲はiLLでみせたミニマリズムにもとづくサウンド・デザインを応用しているとはいえ、たしかにこれはスーパーカーなのだ。
 本作の聴きどころはアレンジと録音である。音数を絞りつつ反復と細かな音の出入り、それから生音とエレクトロニクスの配分にかなり意識を傾けているように思える。アンビエントのような音響空間を作っている"Drive"から、波の音が導入になっている"Dive"などはエレクトロニカへのアプローチが生かされ、"OOYeah"はエレクトロ・ハウス、"Wonderful World"はエレガントなシンセ・ポップに仕立てられている。"Trip Sky"では彼らしいサイケデリックなトリップ感が際だっているが、これ見よがしにサウンドの大胆さを強調することもない。謙虚で、奥ゆかしいアレンジに徹している。ミニマル・テクノ風の"Lucky"はオリジナルからもっとも遠いサウンドになっているが、その楽曲が放つフィーリング――この場合、思春期特有の憂鬱だ――自体は変わらない。彼がこの頃の自分たちの曲にいまどういう想いがあるのか僕にはわからないが、それはもはや彼(ら)だけのものではなくなった、ということに自覚的になっているのではないだろうか。ラストに収録されているデビュー・シングル"cream soda"も面白い。いま聴いてもなお甘酸っぱいバンドの思春期を代表するこの曲は、大きくアレンジを変えずに、よりノイジーな生々しさを際立たせている。やはりこの曲はノイジーなギター・サウンドがよく似合っていると思う。

 実験的とはいえ、レフトフィールドに振り切ることは敢えてやらずに、アルバムはあくまでもポップ・ミュージックとして成立している。結果として本作は、やや複雑な回路を持つアルバムになった。過去の楽曲を取り上げること自体が聴き手のノスタルジーを刺激するものであるし、とくにスーパーカーのように当時若い層から熱烈に支持されたバンドならなおさらだろう。が、中村弘二は原曲のムードは残しつつ音の冒険をしっかりコントロールすることで、ノスタルジーに回収されることを周到に避けているようだ。素材は古いものだが、音が過去を振り向いていない。それらの歌をかつてと同じように口ずさむことができるのは、世代的にスーパーカーを聴いてきた僕としてはやはり嬉しいものだが、ここでは懐かしさよりもその新しい姿に対する興奮が上回るのである。

Chart by JET SET 2011.05.18 - ele-king

Shop Chart


1

AME & AMAMPONDO

AME & AMAMPONDO KU KANJANI EP »COMMENT GET MUSIC
Henrik Schwartz、Dixonとのコラボ"I Exist Because Of You Versions"のヒットで知られる南アフリカのグループAmampondoが今度はAmeと組んで強力な新曲をリリース。Body & Soul全盛期のムードも彷彿とさせるグッド・アフロ・テックハウス!!

2

ESKARGOT MILES

ESKARGOT MILES TOUR OF JAMAICA / TAMPA RED »COMMENT GET MUSIC
リリース後即完売となった'06年リリースの『One Boy』に続く、The eskargot miles待望のアナログ7"シングル第2弾!内田直之(DRY&HEAVY他)をエンジニアに迎え、キング・オブ・カリプソことMighty Sparrowの人気曲"Tour of Jamaica"をオマージュ感たっぷりに歌い上げた、超傑作ヴォーカル・カヴァーを収録!

3

MAYER HAWTHORNE

MAYER HAWTHORNE NO STRINGS »COMMENT GET MUSIC
『A Strange Arrangement』に続く2ndアルバムからの先行カット(?)となる新曲、"No Strings"が10"で登場。リミキサーがJazzy Jeff師ということでヒップホップDJも是非!

4

ROMAN RAUCH

ROMAN RAUCH RRREMIXED »COMMENT GET MUSIC
Gerd周辺人脈と見られるEdizione Crumarによる名門Philpot第1弾は、昨年の地元Tjumy Records発デヴュー作に収録されていたトラックのリミックス再リリース。Philpot首領Soul Phiction、4 Lux、3rd Strikeからのリリースで注目を集めるErdbeerschnitzelによるリミックス。

5

RICKEY CALLOWAY & THE DAP-KINGS

RICKEY CALLOWAY & THE DAP-KINGS STAY IN THE GROOVE »COMMENT GET MUSIC
只今異常な程の人気を誇るRickey Callowayが、またしてもDap-Kingsとの夢の共演で送るスーパー・キラー・ファンク!!今回も即完売必至の500枚限定プレスです。

6

TORN SAIL

TORN SAIL BIRDS (TIAGO REMIX) »COMMENT GET MUSIC
Tiago Remix収録のSmith & Mudd人脈によるニュー・プロジェクト1stがお勧めです!!Smith & Muddにてフロント・ヴォーカルも務めているUKのシンガー・ソング・ライターHuw Costinによるニュー・プロジェクト第一弾。先日のDFAデビュー作も恐ろしく最高だったポルトガルの雄によるリミックスをフィーチャー。

7

FORD & LOPATIN

FORD & LOPATIN EMERGENCY ROOM »COMMENT GET MUSIC
Mexican Summer傘下の新レーベル、Software第1弾となる超限定ピクチャー盤。Gavin Russom、Bugによるリミックスも収録!!

8

奇妙礼太郎トラベルスイング楽団

奇妙礼太郎トラベルスイング楽団 機嫌なおしておくれよ YOGURT & KOYAS DUB MIX »COMMENT GET MUSIC
奇妙礼太郎トラベルスイング楽団による7インチ第3弾は、6月にリリース予定のコンピレイション・アルバム『Dub Conference In Tokyo』からの先行カット!

9

ENERGY 52

ENERGY 52 CAFE DEL MAR (RICARDO VILLALOBOS RMX) »COMMENT GET MUSIC
ジャーマン・テックトランスシーンの歴史的名曲"Cafe del Mar"をRicardoが尺長なミニマル・ヴァージョンへと見事にアレンジ!!WIREでRicardoがプレイし話題となったあの"Age Of Love"をも凌ぐテクノ界きっての温故知新トラックが登場!!

10

SEAHAWKS

SEAHAWKS HIGH ON YOU / DREAMS ARE MADE OF MAGIC »COMMENT GET MUSIC
シングル編集盤コンピ『Ocean Trippin'』、ピクチャーLP『Vision Quest One』の発表で本格的にブレイクの兆しを見せるSeahawksのニュー・シングル。次回入荷はございませんので、即決でお願いします!!

Chart by JAPONICA 2011.05.18 - ele-king

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1

MAYER HAWTHORNE

MAYER HAWTHORNE NO STRINGS STONES THROW / US / 2011/5/12 »COMMENT GET MUSIC
LAの注目DJ/プロデューサー・ユニットCLASSIXXを迎えたオリジナル・ヴァージョンは、温かみあるメランコリックなメロディー/質感と 洗練のエレクトロニクスを同居させたレイドバック・トラックにMAYER HAWTHORNEの極上ファルセット・ヴォイスもばっちり健在する、これぞニュー・ソウル最前線な逸品!そしてタイトなヒップホップ・フレイヴァ注入に てブレイクビーツ・ソウルへとアップデートしたB面の御大JAZZY JEFFリミックスも見逃せません!

2

WILD RUMPUS

WILD RUMPUS CLOUDHOPPING / TIKKETY-BOO BITCHES BREW / UK / 2011/5/12 »COMMENT GET MUSIC
<BITCHES BREW>主宰の才女DJ COSMOとギタリストGARY LUCASによるユニット・プロジェクト=WILD RUMPUS、久々新作!フロアでの効力も存分に期待できるハード・エッジな約12分にも及ぶ長編アシッド・サイケ・ディスコA-1、そしてB-1では同 トラックを<CLAREMONT 56>主宰敏腕仕事人MUDDがアコースティック感ある鮮やかなバレアリック・ナンバーへとリミックス。もう一つのオリジナル・トラックとなるB-2は、 まるで温泉にでも浸かってる気分にさせる夢見心地の極上ドリーミー・ダウンテンポ・トラックでこれがまた本気最高!

3

HOLGER CZUKAY

HOLGER CZUKAY HIT HIT FLOP FLOP / HEY BABA REEBOP CLAREMONT 56 / UK / 2011/5/12 »COMMENT GET MUSIC
87年の傑作アルバム「Rome Remains Rome」収録のご機嫌チューン2曲をセルフ・リミックスした超限定7インチ!子供声をフィーチャーした遊び心満載の名曲「Hit Hit Flop Flop」と、スイングジャズ・ミュージシャンLionel Hamptonの「Hey Baba Re bop」にインスパイアされて作ったという名曲「Hey Baba Reebop」(←初めてシーケンサーを使った曲とか!)の2曲。

4

MAMPO

MAMPO VILLAGE SACRED RHYTHM MUSIC / US / 2011/5/10 »COMMENT GET MUSIC
2010年リリースのUN.CHAINED RHYTHUMSのボックスセットに収録されていたエクスクルーシヴ音源が7"シングルとして登場。無骨でヘヴィウェイトなベースライン、パーカッション が力強く交わりミニマルに攻め立てる90'Sライク・ハウス仕立てのフロア・ヒット確実な一枚!中盤以降からフィーチャーされるまさにJOE印の 流麗なキーボード演奏とのコントラストも実にお見事です。素晴らしい!

5

CHOPP MASTER FLOPP

CHOPP MASTER FLOPP DIRTY FUNK SURE SHOT / US / 2011/5/12 »COMMENT GET MUSIC
DJ SPINNAの変名エディット・プロジェクト=CHOPP MASTER FLOPP、待望の新作4トラックスEP!今回も誰もが知るサンプルソース古典~B-BOYクラシックスをカットアップ/ループ・エディット/マッシュ アップを駆使し豪快&痛快にブレイクビーツ化!ヒップホップ・スピリットが奥深くで息づいたある種原始的な荒々しく、そして大胆なエディット感覚 /手法が好感触な一枚です。12"リリースという体裁も嬉しいところ。

6

OBRIGARRD

OBRIGARRD OBRIWORLD 音韻王者REC. / JPN / 2011/5/4 »COMMENT GET MUSIC
名古屋の巨匠お二方による、ヒップホップ魂滾る傑作マージナル・ブレイクビーツ集!刃頭+YANOMIのミラクル・ユニッ ト=OBRIGARRD!祝ファースト・アルバム完成!南米/アフリカ/中東/アジア・・と世界各地に眠る民族/辺境音楽の数々を引っ張り出して は持前の高偏差値ヒップホップ流儀にてマージナル・ダンス・トラックへとアップデート!全国各地で高評価を得るライブのあのノリをそのまま落とし 込んだ、 OBRIGARRDの「今」が詰まった傑作。

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TORN SAIL

TORN SAIL BIRDS CLAREMONT 56 / UK / 2011/5/12 »COMMENT GET MUSIC
UKロックバンドEARTH THE CALOFORNIAN LOVE DREAMのメンバーであり、SMITH & MUDDにもボーカルで参加していたノッティンガム出身のHUW COSTIN率いるニューバンド。スライドギターにハスキーなボーカルが哀愁を誘う、THE BYRDS、CSN、WIZARDS OF KANSASを彷彿させるウエストコースト・ロック~カントリー・ロック・サウンドで最高!カップリングはTIAGOによるリミックスを収録!

8

BANDA ACHILIFUNK & OJO

BANDA ACHILIFUNK & OJO I BELIEVE IN MIRACLES LOVE MONK / SPA / 2011/5/8 »COMMENT GET MUSIC
<LOVE MONK>が2011年新たに送り出す激注目スパニッシュ・バンドBANDA ACHILIFUNK & OJO、CDアルバムからのシングル・カット7"!永遠のクラシック・ナンバーJACKSON SISTERS"I BELIEVE IN MIRACLES"をスパニッシュ・ラテン・ファンク・カヴァーしたA面。極上です。そしてB面もこれまた鉄板ナンバーで本ネタ使用の関連作はどれももれ なくヒットのディスコ・クラシック"AIN'T NOSTOPPING US NOW"の爽快トロピカル・スパニッシュ・カヴァー!

9

MARCELLUS PITTMAN

MARCELLUS PITTMAN MARCELLUS PITTMAN EP LIFETIME GROOVE / GER / 2011/4/30 »COMMENT GET MUSIC
ご存知デトロイトの至宝が集結した伝説的ユニット3 CHAIRSの一角=MARCELLUS PITTMANによる「VERY LIMITED COLLECTORS RELEASE!」との一言のみ記されたレーベル/制作年等一切不明の謎に包まれた新作。そんな謎だらけの本盤ですが、内容のほうは期待通り(以上)のこ れぞ本家と言わんばかりの淡い鍵盤リフが舞う漆黒デトロイト・ハウス2発!これめちゃくちゃ良いです。

10

MARC MAC PRESENTS VISIONEERS

MARC MAC PRESENTS VISIONEERS APACHE / SHAFT IN AFRICA (ADDIS) BBE / UK / 2011/4/23 »COMMENT GET MUSIC
NAS"WORLD IS YOURS"、PHARCYDE"RUNNIN'"等ヒップホップ・クラシック中心としたジャズ・リメイクが多方面で話題となったMARC MAC(4 HERO)によるリメイク/カヴァー・プロジェクト=VISIONEERS、待望の新作は"APACH"と"SHAFT IN AFRICA"というこれまたヒップホップの中枢的大ネタを大胆リメイク!限定プレス。

Ari Up & Vic Ruggiero - ele-king

 オド・フューチャー・ウルフ・ギャング・キル・ゼム・オール(OFWGKTA)は、『ニューヨーク・タイムス』によれば「ヒップホップ文化論争を再燃させるための発火点」だそうで、若干20歳のタイラー・ザ・クリエイターの闇雲な怒りや絶望は、非道徳的な、女性蔑視ないしは同性愛嫌悪の文脈や暴力のファンタジーを誘発しかねないような、『ガーディアン』が言うには「胃にずしりと来るような」、ある意味すれすれの表現として大人たち、とくに良識派と言われる白人インテリ層の歯ぎしりを誘っている。『ガーディアン』のその記事内に記された情報によれば"ヨンカーズ"においてラップされるメンバーのシドとは実際にゲイだという話もあって、だとすれば彼らの表現は2ライヴ・クルーのような単純な構造ではないし、それでもタブーを弄んで大人たちからの憎悪を我が身に招き入れるようなその態度ゆえにオド・フューチャーは"新しいセックス・ピストルズ"と形容されているわけだが(いずれ磯部涼あたりがしっかり書いてくれるでしょう!)、アリ・アップが生きていたら間違いなく彼らを肯定しただろう。彼女はおうおうにしてインテリから批判の対象とされたもの――ラップのうぬぼれた自意識過剰さやジャマイカの保守的な文化(それは僕も同じように批判的にアプローチしたものでもある)――を擁護して、そして彼女に共感するフェミニズムに対しては冷ややかに対応した。それが良いか悪いかという話ではない。僕が見る限り、彼女はとにかくそういう人だった。

 先日、本サイトの「Sound Patrol」で7インチを紹介したように、これはニューヨークのスカ/ロックステディ・バンド、ザ・スラッカーズのメンバー、ビクター・ルジェイロとアリ・アップによる未発表コラボレーション作品集である。全5曲なのでアルバムというにはおよばないが、彼女の声が聴けるだけでも充分に嬉しいリリースだ。もちろんこれはあくまでファン心理であって、この作品を誰かに推薦しようとは思わない。もしアリ・アップがいまも生きていてこの作品を出したら、「何を中途ハンパな作品を出して......」などと文句のひとつでも書いていたかもしれない。それだけ彼女のキャリアを見たらたいしたことのない出来だが、いまは亡き彼女の未発表音源だと知っている身で聴いていると「何て素晴らしいのだろう......」などと思ってしまうのである。誰かにこうした事態をオカルトだと非難されたとしてもうまく言い返せないだろう。
 が、しかし、実を言えば、そうした気持ちになれることを僕は嬉しくもある。国も言語も宗教も主食も何もかもが違う場所に生まれながら、音楽はその伝えたい思いにのみによって人を繋げることがある。よく人から「何をそんなに海外の音楽に思い入れるのだ」と言われるが、僕にしてみればたかが日本人同士というだけで通じ合えるとも思っていないし、海外だから好きだという、そんな単純な理由で音楽を選んでいるわけでもない。このことについて考えると、アリ・アップという人間はアリ・アップ以外にいないという当たり前の現実認識へと結ばれる。そしてセンチなことを言うようだが、30年以上もずっと好きでいられる音楽と出会ったことにあらためて喜びを感じる。15歳のときにアリ・アップを好きになった以上に、彼女について詳しくなったいまのほうがさらに好きになっている。彼女の話を聞くなかで、ほんのわずかだろうが、以前よりも心が広くなったような気になっているからである。

 というわけでザ・スラッカーズのファンの方には本当に申し訳ないが、このCDを買った理由はアリ・アップが歌っているからである。"ベイビー・マザー"に対する"ベイビー・ファダ"は、小さな子供を持ったお父さんに向けて歌っているのだろう。"親"と呼ばれる人たちに向けて「未来のためにしっかりせい」と言っている。日本では子供を産んだ女性ミュージシャンが「子供サイコー!」と興奮したり、スピリチュアルやオーガニックに行くことは多々あっても、あるいはアメリカにはパティ・スミスのような社会派はいても、猥雑さに身をおきながら"親"と呼ばれる人たちに向けてパンクなメッセージを吐ける人はそういない。アリ・アップはそれがなんであれ権威や権力といったものを嫌悪し、ゼロ年代に殺人音楽と罵られたダンスホール・レゲエというスタイルをジョン・レノンのような大きな愛の歌に変換した。これ以上、何か付け足すことはあるのだろうか。

interview with Analogfish - ele-king


アナログフィッシュ
失う用意はある?それともほうっておく勇気はあるのかい

felicity

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 〈フェリシティ〉といえば、カジヒデキからSFPまでというか、昨年は七尾旅人にやけのはらにTHE BITEなどなど、今年に入ってからも石橋英子のソロ・アルバムと、あまりにも幅広いリリースをしているレーベルだが、もとをたどれば渋谷系のど真ん中に行き着く。それがいまプロテスト・ソングを歌うロック・バンドとして巷で話題のアナログフィッシュと契約を交わし、新作をリリースするというのも時代と言うべきなのだろうか......。プロデュースは、かつてフリッパーズ・ギターを手掛けている(まさに渋谷系の先達とも言える)サロン・ミュージックの吉田仁だ。
 『失う用意はある?それともほうっておく勇気はあるのかい』という、その挑発的なタイトルは、菅直人の浜岡原発停止の要請に対して、夏場の電力が足りないなどという議論のすり替えを持ち出しながら、この期におよんでも原発肯定論に持っていこうとする魂胆がいたるところで散見できる現在において、若者たちからの「現在の我々を支配している一見豊かに見える生活水準を失ってもいいじゃないか」という主張として機能する。豊かと言われる生活の背後にあんなおっかない装置があったことを知った以上、失う用意はある? というわけだ。この曲は震災が起こる数か月前に書かれたものだが、奇遇にも、それは現在の言葉となった。
 ちょうど反原発のデモのあった4月30日の渋谷で、このバンドで歌詞を書いて歌っている下岡晃に会って、話を訊いた。

日本の社会に違和感を感じているからだと思います。子供の頃からずっとあったものだったし、ただ、それが俺だからそう感じているのか、本当に世のなかがおかしいのか、その辺はぐじゃぐじゃでよくわからなかったけど、でも、何でこういうことになっているんだろう? っていう考えはずっと自分にあった。暮らしていて、気持ちにそぐわないことが多いなというか......。

そもそもどうしてはじまったんですか?

下岡:地元の同級生だったベースの(佐々木)健太郎と、暇なときに「暇だー」と言ってはじめたのがアナログフィッシュです。

最初からいまのような社会を主題とした言葉を歌っていたんですか?

下岡:時代によって変わっています、本質は変わっていないと思いますね。

なにがきっかけで生まれたバンドだったんですか?

下岡:中学のときにユニコーンを聴いたのが最初で、僕の中学は本当に小さな村にある中学で、ユニコーンですら聴いている人がいないような。ユニコーンですらマイノリティでオルタナティヴだったんです。唯一、いっしょに聴いてくれたのがベースの健太郎だったんですね。その後僕、高校はオーストラリアに行くんですけど......。

え、なんでまた?

下岡:うちの親がオーストラリアの人を家に泊めてあげたり、好きだったみたいで、それでなんか......姉がすごく勉強ができて、英語も喋れて、「行く」って言い出してたんで、俺も便乗して......はい(笑)。

へー、ちょっと変わった家族ですね。

下岡:ミーハーですね。

なんでも人口6千人の村で育ったとか。

下岡:そうそう。

そこからいきなりオーストラリアですか。

下岡:2年メルボルン、2年シドニーでしたね。

高校出てからもしばらくいたの?

下岡:いや、高校卒業と同時に戻ってきて、姉ちゃんは勉強できるから大学行かせるけど、お前は勉強できないから実家継げって。だから継ぐつもりでいっかい田舎に帰って、で、嫌になってバンドをはじめた。

ハハハハ。洋楽はメルボルンで聴いていたの?

下岡:いや、それがぜんぜん。インターナショナル・スクールに通っていたんですけど、アジアの金持ちの子とか、都会から来た子がほとんどで、人口6千人の村から来た僕に対して、「ここは何て田舎だ」とか言って(笑)。洋楽はシドニーに行ってからですね。オアシスとかウィーザーとかプロディジーとか......片っ端から聴いてましたね。

長野に戻ってバンドをはじめたのが?

下岡:97年か98年ですかね。

アナログフィッシュという名前はどこから来たんですか?

下岡:なにせ村なんでライヴハウスなんかもなく、主にベースのヤツの家で活動をするんですけど。

どういう活動を(笑)。

下岡:宅録活動ですね。田舎なんでまわりに家もなくドラムも叩けるんです。で、あるときベースの健太郎が『ロッキングオン・ジャパン』を持ってきて、ある広告ページを開いて「ここにデモテープ募集って書いてあるぞ」って言うんですね。それで、「おまえ電話してみてくれ」と。それで電話したら「バンドは名は?」と訊かれて、「アナログフィッシュです」と。ホントにそれはとっさに出てきた名前ですね。当時は漠然と頭にあった名前だったんでしょうけどね。

アナログフィッシュというとね、意味のない言葉というか。

下岡:そうですね。英語としてもおかしいし。

ナンセンスな言葉ですよね。そんなナンセンスな名前のバンドがどうして社会に向かったのかっていうね。

下岡:なんでだろう(笑)。

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日本の洋楽の聴かれ方って、第二次大戦後の民主主義の入り方と同じで、歌詞の部分が拘らなさすぎているなって思うんですよ。洋楽を聴いて、愛の歌もあるけど、同じように政治の歌もあるじゃないですか。それはダサいものかもしれないけど、でも、あるものなんですよね。


アナログフィッシュ
失う用意はある?それともほうっておく勇気はあるのかい

felicity

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最初からは社会をテーマにしていたんですか?

下岡:そんなに面と向かってはいなかったけど、基本的にはずっと自分は変わってないと思います。初期の頃は......もっとモヤモヤしたものをやりたかったんだと思います。最終的にはちょっとかわしてみたりとか、ゆらゆら帝国のフォロワーの人たちがやっているようなことをやってみたかったんだと思います。

じゃあ、敢えてナンセンスなものも取り入れたり?

下岡:「変だね」と言われるようなものを歌ったり。

実は僕、ユニコーンって聴いたことないんだけどさ、ユニコーンって社会派の歌詞を歌っていたわけじゃないでしょ?

下岡:じゃないですよね。

誰かの影響ってわけじゃないんだ?

下岡:ホント、どこから来たんでしょうね。

だってさ、『ロッキングオン・ジャパン』とか読んでてもさ......って読んだことないんだけどさ、たぶん、社会のことを歌うロック・バンドって日本にあまりいないでしょ?

下岡:いない......と、俺も感じます。

頭脳警察とかさ。ソウルフラワーとかさ、いないことはないと思うけど、圧倒的に少ないですよね。とくに若いロック・バンドでは。

下岡:いないですよね。なんでいないのかなぁ。

まあ、そういういないなかで、なんでアナログフィッシュの言葉は生まれたんでしょう?

下岡:言葉遊びだったり......歌詞を書くときには他の要素もあるんですけど、僕が書くのはどうしても世界との確執、違和感のようなものになってしまうんですね。そういうのが多かったんです。それがどんどん直接的になってきたんです。ソニーでやってきたときに、「こういう歌詞はダメだよ」って言われたことがあって、「いやだって、ボブ・ディランとか普通に歌っているじゃないですか」と言うと、「ボブ・ディランはボブ・ディランだから」って言われて。

そんなことを歌ったら売れなくなるよってことだよ(笑)。

下岡:そういうことだったのかなぁ。

〈フェリシティ〉レーベルのボスである櫻木(景)さんは、今回の取材のときに「昔の作品は聴かなくていいです」って僕に言ったんだよ。「今回がデビュー作ですから」って(笑)。

下岡:ハハハハ。

しかしいまボブ・ディランの名前が出たけど、やっぱ洋楽からの影響は受けているんですね。

下岡:僕はオザケン好きなんですけど、オザケンにも同じものがあると思っているんですよね。あと、ボブ・ディランも好きだし、ケイクも好きだし、REMとか......。

たしかにアメリカの音楽には、社会について歌うという伝統があるよね。

下岡:僕自身もアメリカの音楽を聴いて育ったから、そういうことに違和感がないというか、それが普通というか、そう思ってきたから。逆になんで(日本のバンドは)歌わないのかな? とはずっと疑問だった。

やっぱアメリカの音楽が好きだった?

下岡:イギリス、アメリカって分けて聴いてたわけじゃないけど、アメリカの音楽のほうが好きですね。

REMのようなアメリカの音楽になぜ惹かれていったの?

下岡:それは俺が、日本の社会に違和感を感じているからだと思います。子供の頃からずっとあったものだったし、ただ、それが俺だからそう感じているのか、本当に世のなかがおかしいのか、その辺はぐじゃぐじゃでよくわからなかったけど、でも、何でこういうことになっているんだろう? っていう考えはずっと自分にあった。暮らしていて、気持ちにそぐわないことが多いなというか......。

たとえば?

下岡:なんで大人はつまらなそうに働いているんだろう? とか。なんで働かなきゃいけないんだろう? とか。そういうのって子供っぽいけど、ずっと思ってましたね。

うん、ホントにそうだよね。

下岡:で、そうした議論をしても結局、誰もが納得できる説明ができないけど、音楽というのはそのメッセージを共有することで何か解消できることがあるじゃないですか。結論はでなくても、何か気持ちを前に進ませるというか。

なるほどね。そういうカタルシス以上に、伝えたいことがある音楽だと思うけどね。いまのところリアクションはどうなんですか?

下岡:うーん......まだ、そんなに返ってきているものはないんですけど、ライヴでやっていると熱くなり方は違ってきていますよ。そこは感じていますね。

じゃ、それなりの手応えがあるんだね。

下岡:そうだね。

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なるべくわかる言葉でプロテスト・ソングを歌いたいというのもあった。難しい言葉でそういうことを表現するのもイヤだったし......やっぱ、洋楽聴いてるリスナーはダサさ/ダサくないで聴いている人が多いじゃないですか。だから、そこはもう、ダサいと言われてもいいんです。


アナログフィッシュ
失う用意はある?それともほうっておく勇気はあるのかい

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ちなみに〈フェリシティ〉レーベルのボスの櫻木さんは、90年代は〈トラットリア〉というレーベルで働いていて、アナログフィッシュとは真逆の音楽をばんばん出していたんですよ。

下岡:ハハハハ、知ってます。

僕もどちらかといえば、普段は、現実逃避するための音楽ばっか聴いているんです(笑)。下岡くんはそういうの嫌いでしょ?

下岡:いや、そんなことはないですよ。俺はいま、TV・オン・ザ・レディオとパッション・ピットが好きなんですけど、TV・オン・ザ・レディオには(社会が)ありますけど、パッション・ピットにはない。あれは気持ちよさですね。

TV・オン・ザ・レディオは僕も大好きだけど、あれはたしかに歌詞も面白いけど、何よりも音が圧倒的に格好いいじゃない。

下岡:うん、格好いい。あのギターの人......。

デヴィッド・シーテック?

下岡:デヴィッド・シーテック、あの人の作る音はすごいと思う。とくにうちのドラマー(斉藤州一郎)は、ヴァンパイア・ウィークエンドやMGMTやダーティ・プロジェクターズみたいなのが大好きで、だから音の良さで聴くってこともありますよ。

MGMTなんて現実逃避でしかないもんね(笑)。

下岡:そうですね。だから、両方あるんですよ。メッセージに関しては本当に俺の気持ちなんですね。

なるほど。逆に日本では少数派だから歌詞に注目が集まってしまうんだろうね。しかし、何故、日本ではプロテスト・ソングは少数なんだと思う?

下岡:......うーん、なんか......売れないから。

ハハハハ。何故売れないんでしょう?

下岡:関心がない......でも、俺、関心がないとは思わないんだな。昔はそう思っていたけど。ただ、日本の洋楽の聴かれ方って、第二次大戦後の民主主義の入り方と同じで、歌詞の部分が拘らなさすぎているなって思うんですよ。

ロックのスタイルは輸入されたけど、文化の根底にある言葉の力みたいなものもしっかり輸入されてるわけではないからね。

下岡:洋楽を聴いて、愛の歌もあるけど、同じように政治の歌もあるじゃないですか。それはダサいものかもしれないけど、でも、あるものなんですよね。なのに、洋楽に影響を受けた人が作る音楽に言葉が入ると、おしなべて、総じて、意味のない言葉になっているっていうのがあって、それは何でだろう? って。感覚だけで作られた言葉っていうか、そういうのは俺は好きになれない。

なるほど。

下岡:なんでそんな理解なのか。洋楽っぽいって言われる日本のバンドほど歌詞が熱くないんですよ。まったく意味がない。

あまりにも社会がない?

下岡:何でなんだろう? って思う。何でそこを抜かすかわからない。

その件に関して僕も昔すごく考えたことがあったけどね。

下岡:結論は?

極論すれば、日本では音楽は娯楽の範疇なんだと思いますよ。良くも悪くも。

下岡:そうですね。

アメリカなんかは真逆だよね。音楽は社会のいち部として機能し過ぎちゃってるから、選挙の度にミュージシャンが出てくるもんね。民主党だろうと共和党だろうと、ミュージシャンや映画の役者が出てくるじゃない(笑)。

下岡:ああ(笑)、俺、あれもイヤなんだけど。

僕も、あれはどうかと思うときがある。あそこまでいくと八百長プロレスじゃないけど、利用し利用されるって感じがね。

下岡:そうそう。

ただ日本ではそれが無さ過ぎるのも事実で、大物では坂本龍一さんぐらいですよね。何でそうかというと、やっぱ日本における音楽は社会や政治的な文脈とは別のところで発展したってことが大きいんじゃないのかな。ブルース・スプリングスティーンはあまり求められていないっていうかね。だから、そういう意味ではアナログフィッシュはすごい挑戦をしていると思うんだけどね。

下岡:はい、理解されるといいんですが(笑)。

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そうしたネガティヴな可能性のもとって、金なんですよね。金じゃねーって、そういうところで作り直したらいいんじゃないかと思うんですね。夢みたいなことだけど、でも金じゃねーという気持ちが人びとに行き渡れば解決できることって多いと思うんです。


アナログフィッシュ
失う用意はある?それともほうっておく勇気はあるのかい

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「失う用意はある? それともほうっておく勇気はあるのかい?」という言葉はどっから来たんですか?

下岡:この歌詞を書いたのは1年前ですけどね。世のなかが進もうとしている方向があるじゃないですか、でも、それはもう、無理だって。いまの生活水準を保ちながら、何かやろうとしているけど、絶対にそれはもううまくいかないと思っていて。

それは具体的なことで言えば環境問題とか格差社会とか?

下岡:そういうこと全部ひっくるめて。自分たちの生活水準を落とすことをなんで考えられないのかというのが最初の気持ちとしてあるんですね。

そこまで具体性がある言葉なんですね。ロックのリスナーの無関心さを挑発したいってことじゃないんだね。

下岡:そういうわけじゃない。

たとえば"戦争がおきた"みたいな曲は、ライヴでやってどう?

下岡:これはね、シーンとしますね。

ハハハハ。

下岡:でも、この曲がすごく好きだっていう人もいるんです。そういうのはすごく嬉しい。ただ、ライヴでやってて、オーディエンスがカタルシスを感じるような曲ではないんでしょうね。

そこはでも、これからも挑戦していくってことでしょ?

下岡:はい。

前のレコード会社の人からはそういうのはダメだって言われていたことをやっているわけだからね......次のアルバムがまさに勝負だね。

下岡:勝負だし、曲がどんどん出てくるし。

くどいようだけど、アナログフィッシュは日本ではマイノリティだからね。

下岡:でも、強く言いたくなったんだな。そういうことをやるのは自分の役目じゃないと思っていたけど、自分がやらないと誰もやらないんじゃないかという気になったし、鼻をきかせながら生きてきて、なるべくしてなったというか。でも、こういう音楽を待っていた人がいることが良かった。あと、なるべくわかる言葉でプロテスト・ソングを歌いたいというのもあった。難しい言葉でそういうことを表現するのもイヤだったし......やっぱ、洋楽聴いてるリスナーはダサさ/ダサくないで聴いている人が多いじゃないですか。だから、そこはもう、ダサいと言われてもいいんです(笑)。

いま作っているアルバムにテーマはあるんですか?

下岡:まさに「失う用意はある?」ってことですね。

G8と言われているような、先進国社会の豊かさが過剰になっているってことか(笑)。

下岡:ハハハハ、そうですね。でも、単純に人生は金じゃないよってことなんですね。

僕とか櫻木さんの世代は典型的なノンポリ世代でね、まったく偉そうなこと言えないんだけど、逆に下岡くんの世代は偉いなぁと思うよ。僕から見てて、多くの人たちが社会への関心を高めているよね。

下岡:そうですかね。

僕なんかの世代よりもぜんぜん意識は高いと思うよ。下岡くん世代は、小泉純一郎のときに思春期?

下岡:20歳とかそのぐらいですね。

じゃあ、いっしゅんだけあった小泉バブルを経験しているのかな? いっしゅんだけ就職率が上がったときがあったよね。

下岡:小泉は本当に嫌いですね。実家が小売り業やってて、あの人はそういう人たちに対して「痛みに耐えろ」と言った人だったし。ホントに、めちゃくちゃしんどかった。

そういう意味ではアナログフィッシュの歌には歌うべき理由があるってことなんですね。まあ、ただでさえもいまの日本にはさまざまなネガティヴな可能性がころがっているし。

下岡:そうですね。ただ、そうしたネガティヴな可能性のもとって、金なんですよね。金じゃねーって、そういうところで作り直したらいいんじゃないかと思うんですね。夢みたいなことだけど、でも金じゃねーという気持ちが人びとに行き渡れば解決できることって多いと思うんです。

金に支配されているなっていう感覚、ある?

下岡:ていうか、年々強まっていませんか?

Thurston Moore - ele-king

 何日か前のレヴューに野田努の書いたとおり、サーストン・ムーアの3枚目のソロ『デモリッシュド・ソウツ』はアコースティック・ギターを基調にした、ソニック・ユースの背景にあって彼らの音楽の厚みを保証する多様性を個人名義のバイパスを使い放出した2007年のセカンド・ソロ『トゥリーズ・アウトサイド・ジ・アカデミー』をさらに穏やかに、そのアンプラグド・ヴァージョンとでもいった風情にスライドさせたもの、ととりあえずいえるだろうが、枯れたアコギを前面にした音作りとウラハラにそこにはさまざまの音楽の旨味が響き合っている。

 プロデュースはベック。資料にも書いてあったサーストン版『シー・チェンジ』というのは本作アコースティックなアレンジのせいである。そのアルバムの前はソウル~ファンクをベック流に解釈した『ミッドナイト・ヴァルチャー』だったから『シー・チェンジ』に驚いたのだった。ところがサーストンの場合、『トゥリー~』と『デモリッシュド・ソウツ』の変化はたいして大きくない。『トゥリー~』にもストリングスもアコギも登場する。その12年前のソニック・ユースのアザーサイドとしてのファースト・ソロ『サイキック・ハーツ』と2作目の間の方がずっと飛躍してる。ストレートにパンキッシュな、そしてメジャー最後のアルバムだった『ラザー・リップト』をソニック・ユースが出した翌年のことである。反動がないわけはない。サーストンはもともと、レコード蒐集家のへヴィ・リスナーであり、反動のなかで音楽を作ってきたともいえる。ソニック・ユースでできないことを別バンドでやり他者と即興した。音楽を職業としながら音楽愛好家でいるには音楽のなかで精神のバランスを保たなければならない。それは私もあなたたちも同じではないか、と鼓舞される気持ちなるからこそ、私は彼の音楽を聴きつづけてきた。そのくせ彼の音楽は本質的にデビュー時から驚くほど変わっていない。バンドは変速チューニングしたエレクトリック・ギターを増幅した音響でソングライティングに腐心した。グレン・ブランカの薫陶を受けたからそうなったのではない。ソニック・ユースのノイズは数学的な倍数比が基底にあるブランカの音響よりアナーキーで、ケージやカーデュー、小杉武久、オノヨーコにちかい(彼らは『Goodbye 20 Century』でこれら作家の曲をカヴァーしているし、『サイキック・ハーツ』のテーマはパティ)。そしてポスト・パンクのスタイルで制御と非制御を行き来するにはアンプリファイしたギターが欠かせない。当然ながらソニック・ユースはその要件で16枚のアルバムを作ってきた。

 サーストンがアコースティックにもちかえたのはソロだからという理由はもちろんあるだろうが、それ以上にこれまでエレクトリック・ギターが担った音響を生楽器のアンサンブルでどう再現あるいは再構築するか、そういったテーマもあったにちがいない。サーストンのギターと歌、各種打楽器、ダブルベースにヴァイオリンとハープの、オーケストレーションというほど大きくない編成をバックに歌う歌は内省というほど主情的ではなく、静謐な祈りに似ている。私は以前、サーストンの新しいソロのタイトルは『ベネディクション』だとネットで見た気がする。幻だったらもうしわけないが、 1曲目が"ベネディクション(感謝の祈り)"だからまちがいなかろう。結局タイトルは"デモリッシュド・ソウツ(覆された考え)"になった。これはイアン・マッケイの弟のアレックが在籍したDCハードコア・バンド、ザ・フェイスの"It's Time"からの引用だが、誰が覆したかと問われればベックがそうしたのである。それを裏づけるように本作ではソニック・ユース的なけばだった不協和音はほとんど聴くことができない。もちろん通常の和声よりテンションは高いが、『デモリッシュド・ソウツ』のコード感はもっと甘美だ。ノーウェイヴ的なアウト・オブ・キー(それはつまり、オーセンティシティに対するカウンターでもある)より、ドラムとベースの重力、そこから逃れようとするヴァイオリンとハープ、その間をつなぐコードを織り上げる多重録音の生ギターが奥行きを作り、浮遊感にあふれている。その変化はけっしてラディカルにみえない。ノイズと轟音とエフェクトのファクターが消え、音楽的な成熟を思わせるのも一因だが、だからといって『デモリッシュド・ソウツ』を成熟の一言で片づけるわけにいかない。というか、エレクトリックをアコースティックに置き換えるだけで成熟するなら、90年代に流行ったMTVのアンプラグドがあれほど簡単に陳腐化することもなかったろうし、アコースティックの手法への表層的な理解にとどまることもなかっただろう。グランジ~オルタナの表裏だったニルヴァーナとソニック・ユースが90年代において、一方はカート・コベインの死後、はじめてだしたアルバムがアコースティックのライヴ盤であり、他方はそのブームに与しなかったのは、私は牽強付会を承知でいうが、象徴的に思える。サーストンが当時からゆうに15年経ってからアコースティック基調のソロを出したのはポスト・アニマル・コレクティヴの時勢で、アコースティック・ギターによるサイケデリック、ロウファイやアシッド・フォークの発展系としてのアコースティック・ミュージックが可能になったという暗黙裡の了解があったからだと思う。むしろ私はサーストンの音楽のつかまえ方に、14年ぶりの新作『マイ・ファーザー・ウィル・ガイド・ミー・アップ・ア・ロープ・トゥ・ザ・スカイ』を出し、来日公演を震災で中止したスワンズ、マイケル・ジラの〈ヤング・ゴッズ〉(つまり、デヴェンドラ・バンハートを筆頭にした一連の流れ)を踏まえた(宗教性を彷彿させるテーマ設定もふくめた)音楽的視座を連想した。

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