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SilkieCity Limits Volume 2 DEEP MEDi Musik/Pヴァイン(6/15発売予定) |
「すべてのインタヴュアーがデトロイト・テクノから影響を受けているだろう? と訊いてくるんだけど......」と、ロンドンからやって来た25才のダブステッパーは言う。「僕は本当にデトロイト・テクノのことを知らなかったんだ。で、聴いてみたら、たしかに似ていると思ったけどね」
このエピソードが彼の音楽的傾向を物語っている。シルキーを名乗るソロマン・ローズは、ダブステップに70年代ソウル/ファンクのフレイヴァーを注ぎこみ、2ステップ・ガラージのビートにそのメロウなフィーリングを混合する。それが2009年に〈ディープ・メディ・ミュージック〉からリリースされた『シティ・リミッツ・ヴォリューム1』だった。
それはオリジナル・ダブステップの系譜からの一撃だったが、シルキーの音楽は、ときにロマンティックな都会の叙情主義ゆえに、この2年ものあいだじっくりと時間をかけながら、デトロイト・テクノやハウス・ミュージックのリスナーを巻き込んで、ジャンルを横断するような、より幅広い支持を得るにいたっている。
この取材は彼がDBSのために来日した4月17日におこなわれている。福島第一原発の放射性物質の漏洩によってDJやミュージシャンの相次ぐ来日キャンセルのなかで、ロンドンからやって来たダブステッパーは意気揚々と渋谷を歩いて、そして居酒屋でビールを飲みながら話してくれた。
グライムというのはアーティストやオーディエンス同士のしがらみがあったり、音もアグレッシヴだし、けっこう大変なんだよ。発砲事件もたびたび起きているし、殴り合いの喧嘩なんか頻繁にある。それが嫌になっていたときに、友だちにダブステップのイヴェントに連れていかれて、あまりにもピースだったんでびっくりした。
■『シティ・リミッツ・ヴォリューム1』がホントに好きなんですよ。
シルキー:それはどうもありがとう。
■アルバムからはソウル・ミュージックというものを強く感じました。
シルキー:うん。(しばし沈黙)......それで質問は?
■いや、ただ言ってみただけです。
シルキー:ハハハハ、オッケー(笑)。いつ質問が来るのかなーと思って、ついつい構えていたんだよ。
■初めてだし、バイオ的なことを訊いてもいいですか?
シルキー:いいよ。2001年、15歳で音楽を作りはじめたんだ。最初はグライムから入った。当時のグライムのシーンはエキサイティングだったけど、メロディを受け入れるような感じはなかったけどね。
■何がきっかけだったんですか?
シルキー:姉の影響でガラージを聴いたのがきっかけだったね。ガラージの熱が冷めかけた頃にグライムを聴きはじめて、ダブステップに関しては最初から聴きはじめたわけじゃないんだけど、急カーブを曲がるようにダブステップへといったね。
■なぜグライムからダブステップへ?
シルキー:最初はホント、グライムにハマったんだけど、グライムというのはアーティストやオーディエンス同士のしがらみがあったり、音もアグレッシヴだし、けっこう大変なんだよ。発砲事件もたびたび起きているし、殴り合いの喧嘩なんか頻繁にある。それが嫌になっていたときに、友だちにダブステップのイヴェントに連れていかれて、あまりにもピースだったんでびっくりした。チーム同士のしがらみがないところも気に入ったし、それでダブステップのイヴェントに通うようになるんだ。そして自分で作ったテープを持っていって、自分の顔を売っていったんだよね。
■ティンバランドやネプチューンズの影響は受けなかったの?
シルキー:ノー。ただまあ、グライムがいろんな音楽に影響されているものだから、直接ではないけど、知らないうちに影響されているかもね。
■へー、ガラージやグライムの人たちはUSのヒップホップとR&Bからの影響が大きいでしょ。
シルキー:イエス、僕よりも年上の連中はみんなUSヒップホップからの影響を受けている。ただ、僕の世代になってくるとすでにUKガラージがすごく大きかったし、すぐにコマーシャルにもなった。だから僕の世代にとってのアンダーグラウンドはヒップホップとはまた別の音楽になったんだ。
■え、最初からアンダーグラウンドだったんですか?
シルキー:ホントにそうだった。まだガラージがアンダーグラウンドだった1998年、僕が13歳のときに聴きはじめたんだよね。最初はガラージも小さなシーンだったけど、それはあまりにも早く大きくなってしまった。そして嫉妬や人間関係のしがらみが出てきてしまった。
■ロンドンのアンダーグラウンドはまずはラジオから?
シルキー:ああ、ホントにラジオの役割はでかいよ。とくに年齢が若いとクラブには行けないから、まずはラジオで聴いて、そしてレコード店に行く。僕がそうだったな。ラジオで音を聴いて、ビッグ・アップルにレコードを買いに行って、ベンガに会うっていうね(笑)。アンダーグラウンドの入口はラジオだし、みんなそこから入っていくんだよ。
■ちなみに同世代というと?
シルキー:スクリームやベンガ、ジョーカーなんかだよね。マーラーは年上だから叔父さんに接するみたいな感じだけど(笑)、スクリームやジョーカーみたいな連中はホントに同世代って感じで接している。
[[SplitPage]]PCがあって、フルーティ・ループスを使って、そして親から盗んだスピーカーを使って(笑)、ベッドルームでとてもベーシックなセットで作りはじめた。実はいまでもそんなに変わらないんだ。自分の部屋で作っているという感じが好きだし。
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■作りはじめたときに目標とするプロデューサーはいた?
シルキー:とくにいないね。グライムやガラージに対する敬意はあったけど、自分がどうして音楽を作っていったのかと言えば、自分のなかには何かあるんじゃないかと信じていたわけで、そしてそれがシーンに貢献できるんじゃないかと信じていたからなんだよ。
■最初の機材は?
シルキー:PCがあって、フルーティ・ループスを使って、そして親から盗んだスピーカーを使って(笑)、ベッドルームでとてもベーシックなセットで作りはじめた。実はいまでもそんなに変わらないんだ。自分の部屋で作っているという感じが好きだし。
■最初にヴァイナルで作品を出すのは2003年? 初期の作風はガラージっぽい音だった思うんですが、それがダブステップに変化していくうえでパーティ以外の影響ってありました?
シルキー:基本的にはクラブからの影響だったね。最初はグライムのクラブに通っていて、ホントにグライムが好きだったんだけど、ただ音楽を聴いているだけなのに喧嘩になるようなところにうんざりもしていて、で、ダブステップの平和な雰囲気に惹かれていった。音楽を聴いて気持ちよくなれないと意味がないと思ったんだよね。
■グライムって、やっぱそんな喧嘩ばっかだったんですね。
シルキー:ハハハハ、けっこう酷かったね。いまはだいぶ洗練されているのかもしれないけれど、初期のアンダーグラウンドだった頃のグライムのリリックというのはまったくの真実で、まあ、最悪の場合はパーティの最中に銃で人を撃ったりしていたわけだよ。洒落にならないくらい危ないシーンだった。
■それであなたの音楽にはピースな感覚があるんですね。そうそう、あなたの音楽にはメロディがあるけど、以前、何か楽器をやっていました?
シルキー:ピアノは独学で少しやっていた。音楽理論はネットを見ながら勉強した。
■音楽はあなたにとってどんな意味で重要だったんですか?
シルキー:僕はサッカーもやらないしコンピュータ・ゲームもやらなかった。僕には音楽しかなかった。他の子供たちがコンピュータ・ゲームをやっている時間に僕は部屋でずっと音楽を作っていたってだけだよ。
■多くのダブステップのプロデューサーはシングルはたくさん出すけど、アルバムはあまり出さないですよね。そんななかであなたはわりと早くファースト・アルバム『シティ・リミッツ・ヴォリューム1』を出しましたよね。
シルキー:2003年が僕の正式なデビューだけど、実は2002年にもホワイトで1枚出しているんだよ。それは音楽を作りはじめて8ヶ月後に出した作品だった。そして2005年からしばらく作品を出さずにいて、それで2009年に『シティ・リミッツ・ヴォリューム1』を出しているんだよね。
■コンセプトがあるアルバムですよね?
シルキー:つねにアルバムを作りたいと思っていた。そういう意味ではすべての曲には共通しているものがあると思う。
■都市生活がテーマになっているんですか?
シルキー:たしかにそうなんだけど......というか、僕は世界に出たいけど、ロンドンで暮らしている。ロンドンから出られないんだ。それが"シティ・リミッツ(都市の境界)"という言葉に繋がっているんだ。ロンドンから出られないことが音楽に影響を与えていることは間違いない。"コンクリート・ジャングル"をよく聴くと車の音や街中の音が入っている。すべての曲はロンドンという街から得たインスピレーションで作られれている。
■出身はどこ?
シルキー:どこかの雑誌を読んだらサウス・ロンドンと書かれていたけど、ウェスト・ロンドンだよ(笑)。
■ご両親の出身は?
シルキー:ジャマイカです。
■それでレゲエの曲も入っているんですね。
シルキー:母親から音楽的な影響を受けたことはないんだけどね。彼女も家で音楽を聴いていたわけじゃないんでね。ジャマイカ系ということを抜きにして、ロンドンで暮らしていると自然にレゲエの音が耳に入ってくる。そこからの影響だよね。
■それでは、あなたのソウルやファンクのフィーリングはどこから来ているんでしょう?
シルキー:それもいろいろだと思う。90年代のR&Bかもしれないし、ガラージからかもしれない。とくに意識はしていないんだ。
■サックスの音が好きなのはなぜ?
シルキー:それはもう、ただその音が好きだとしか言いようがない。
[[SplitPage]]スティーヴィー・ワンダーとクインシー・ジョーンズはとくに尊敬している。作っていくうちに、何かいいなと思えるアーティストに出会うんだけど、そのひとりがスティーヴィー・ワンダーだったね。実は最近は古い音楽ばかり聴くようになっているんだ。音楽を作っていないあいだは音楽ばかり聴いている。
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■ダブステップやガラージ以外で尊敬しているアーティストに誰がいますか?
シルキー:たくさんいるけど、スティーヴィー・ワンダーとクインシー・ジョーンズはとくに尊敬している。初期の頃はとにかくビートを作ることに専念していたんだ。それで作っていくうちに、何かいいなと思えるアーティストに出会うんだけど、そのひとりがスティーヴィー・ワンダーだったね。実は最近は古い音楽ばかり聴くようになっているんだ。音楽を作っていないあいだは音楽ばかり聴いている。母親のCDコレクションも聴いているほどだよ。
■どんな音楽が好き?
シルキー:嫌いなジャンルはないよ。ヘヴィ・メタルがかかっていると音量を下げるくらいかな(笑)。
■ダブステップも生まれて10年くらい経ちますが、あなたから見てシーンはどう見えますか?
シルキー:とても健康的に見えるよ。音楽的に前向きにどんどん展開しているでしょ。古い世代もがんばっているし、新しい世代もどんどん出てきている。ダブステップと呼べるかどうかわからないものまで出てきていることも良いことだと思う。UKではダブステップはすでにメインストリームの音楽だけど、いまでもアンダーグラウンドはしっかりしているし、全体的に良い流れだと思うよ。
■あなたが嫉妬を覚えるほどのプロデューサーは誰?
シルキー:ハハハハ、嫉妬は覚えないなー。素晴らしい作品を聴けば、自分にもそれが作れるんじゃないかと励みにしているよ。
■好きなプロデューサーは?
シルキー:クエストやベンガやジョーカーや......いや、止めておこう。身内を褒めるようで気色悪い(笑)。
■『シティ・リミッツ』のシリーズは今後どうなっていくんですか? 今年に入って2枚のシングルを出していますよね。
シルキー:音楽的に言えば、変化するだろうね。PCのプラグインも変えるし、音も変える。
■昨年はUKファンキーもすごかったし、UKのベース・ミュージックもいま頂点を迎えていると思います。こうしたシーンの動きは意識していますか?
シルキー:僕のなかの変化はシーンにともなうものっていうよりも僕個人のなかの変化だと思う。自分がどこかのシーンに属しているって感じでもないし。セカンド・アルバムの『シティ・リミッツ・ヴォリューム2』もほんとんど出来ている。日本では〈Pヴァイン〉から6月15日にリリースする予定だよ。
■それは楽しみですね。
シルキー:ありがとう。2歳年を取った分だけ、音楽もよくなっていると思うよ(笑)。
■最後に、お礼を言いたいんだけど、今回の福島第一原発の事故の影響で多くの欧米のDJやミュージシャンが来日をキャンセルしています。そんなかで来てくれてありがとう。
シルキー:たしかにまわりの友だちにも止められたんだけど、テレビのニュース番組で言っていることを信じるよりも自分で調べてみて、その結果、放射線の量もそんなに気にすることもないんじゃないかと思って。まあ、自分が空港まで歩くまでのリスクとそんなに変わらないんじゃないかと思ったんだよ(笑)。
取材をした数週間後に、セカンド・アルバム『シティ・リミッツ・ヴォリューム2』が届いた。間が悪いというか、新作について訊けなかったのがホントに残念だ。新作には前作とは違った興味深い変化があるのだ。
アルバムの1曲目に収録された"フィール"は2ステップのビートとダブの空間のなかを、美しいピアノとストリングスが繊細に交わっていくいかにも彼らしい叙情詩で、アルバムでも1位~2位を競うほどの素晴らしい曲だが、『ヴォリューム2』には前作以上にビートが強調されている。アルバムの中盤はとくにそれが顕著で、ダブステップのビートをさまざまな角度で展開しながら、彼のジャズ/ファンクのセンスが活かされている(たぶん......そのスジでも大いに騒がれるでしょう)。そして、それはUKベース・ミュージックのスリリングな冒険となっているわけだが......、それはときとしてカール・クレイグのようなメランコリーを見せ、ときとしてURのような力強いファンクを見せているという、デトロイティッシュなセンスもさらに際だっている。
そして......それは放射線量を気にしながら暮らし、もはや軽々しく"アーバン・ソウル"などとは言えなくなった我々にはなおさらずしりと響くかもしれない。まさに我々はいま、"シティ・リミッツ"な状況にいるのだから......。
とはいえ、まあ、シルキーは新作でも変わらずロマンティックである。アルバムの最後から2番目に収録された"Only 4 U"は、"コンクリート・ジャングル"の続編とも言える曲だ。浮かれ、舞い上がってしまうようなジャズ・ダブステップで、ファンはこういう曲を心待ちにしていたのだろうし、そしてシルキーはそのことよく理解しているかのように、期待に応えている!







































