ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. ゲーム音楽はどこから来たのか――ゲームサウンドの歴史と構造
  2. Nídia & Valentina - Estradas | ニディア&ヴァレンティーナ
  3. interview with Conner Youngblood 心地いいスペースがあることは間違いなく重要です | コナー・ヤングブラッドが語る新作の背景
  4. Damon & Naomi with Kurihara ──デーモン&ナオミが7年ぶりに来日
  5. Loren Connors & David Grubbs - Evening Air | ローレン・コナーズ、デイヴィッド・グラブス
  6. Columns ♯8:松岡正剛さん
  7. interview with Sonoko Inoue ブルーグラスであれば何でも好き  | 井上園子、デビュー・アルバムを語る
  8. Black Midi ──ブラック・ミディが解散、もしくは無期限の活動休止
  9. Wunderhorse - Midas | ワンダーホース
  10. Jan Urila Sas ——広島の〈Stereo Records〉がまたしても野心作「Utauhone」をリリース
  11. R.I.P. Tadashi Yabe 追悼:矢部直
  12. MODE AT LIQUIDROOM - Still House Plantsgoat
  13. Sam Kidel - Silicon Ear  | サム・キデル
  14. interview with Tycho 健康のためのインディ・ダンス | ──ティコ、4年ぶりの新作を語る
  15. Columns Nala Sinephro ナラ・シネフロの奏でるジャズはアンビエントとしての魅力も放っている
  16. talking about Aphex Twin エイフェックス・ツイン対談 vol.2
  17. Aphex Twin ──30周年を迎えた『Selected Ambient Works Volume II』の新装版が登場
  18. ele-king cine series 誰かと日本映画の話をしてみたい
  19. K-PUNK アシッド・コミュニズム──思索・未来への路線図
  20. interview with Jon Hopkins 昔の人間は長い音楽を聴いていた。それを取り戻そうとしている。 | ジョン・ホプキンス、インタヴュー

Home >  Interviews > interview with Analogfish - プロテスト・ソングは何処に?

interview with Analogfish

interview with Analogfish

プロテスト・ソングは何処に?

――話題のロック・バンド、アナログフィッシュに訊く

野田 努    写真:小原泰広   May 12,2011 UP

アナログフィッシュ
失う用意はある?それともほうっておく勇気はあるのかい

felicity

AmazoniTunes

 〈フェリシティ〉といえば、カジヒデキからSFPまでというか、昨年は七尾旅人にやけのはらにTHE BITEなどなど、今年に入ってからも石橋英子のソロ・アルバムと、あまりにも幅広いリリースをしているレーベルだが、もとをたどれば渋谷系のど真ん中に行き着く。それがいまプロテスト・ソングを歌うロック・バンドとして巷で話題のアナログフィッシュと契約を交わし、新作をリリースするというのも時代と言うべきなのだろうか......。プロデュースは、かつてフリッパーズ・ギターを手掛けている(まさに渋谷系の先達とも言える)サロン・ミュージックの吉田仁だ。
 『失う用意はある?それともほうっておく勇気はあるのかい』という、その挑発的なタイトルは、菅直人の浜岡原発停止の要請に対して、夏場の電力が足りないなどという議論のすり替えを持ち出しながら、この期におよんでも原発肯定論に持っていこうとする魂胆がいたるところで散見できる現在において、若者たちからの「現在の我々を支配している一見豊かに見える生活水準を失ってもいいじゃないか」という主張として機能する。豊かと言われる生活の背後にあんなおっかない装置があったことを知った以上、失う用意はある? というわけだ。この曲は震災が起こる数か月前に書かれたものだが、奇遇にも、それは現在の言葉となった。
 ちょうど反原発のデモのあった4月30日の渋谷で、このバンドで歌詞を書いて歌っている下岡晃に会って、話を訊いた。

日本の社会に違和感を感じているからだと思います。子供の頃からずっとあったものだったし、ただ、それが俺だからそう感じているのか、本当に世のなかがおかしいのか、その辺はぐじゃぐじゃでよくわからなかったけど、でも、何でこういうことになっているんだろう? っていう考えはずっと自分にあった。暮らしていて、気持ちにそぐわないことが多いなというか......。

そもそもどうしてはじまったんですか?

下岡:地元の同級生だったベースの(佐々木)健太郎と、暇なときに「暇だー」と言ってはじめたのがアナログフィッシュです。

最初からいまのような社会を主題とした言葉を歌っていたんですか?

下岡:時代によって変わっています、本質は変わっていないと思いますね。

なにがきっかけで生まれたバンドだったんですか?

下岡:中学のときにユニコーンを聴いたのが最初で、僕の中学は本当に小さな村にある中学で、ユニコーンですら聴いている人がいないような。ユニコーンですらマイノリティでオルタナティヴだったんです。唯一、いっしょに聴いてくれたのがベースの健太郎だったんですね。その後僕、高校はオーストラリアに行くんですけど......。

え、なんでまた?

下岡:うちの親がオーストラリアの人を家に泊めてあげたり、好きだったみたいで、それでなんか......姉がすごく勉強ができて、英語も喋れて、「行く」って言い出してたんで、俺も便乗して......はい(笑)。

へー、ちょっと変わった家族ですね。

下岡:ミーハーですね。

なんでも人口6千人の村で育ったとか。

下岡:そうそう。

そこからいきなりオーストラリアですか。

下岡:2年メルボルン、2年シドニーでしたね。

高校出てからもしばらくいたの?

下岡:いや、高校卒業と同時に戻ってきて、姉ちゃんは勉強できるから大学行かせるけど、お前は勉強できないから実家継げって。だから継ぐつもりでいっかい田舎に帰って、で、嫌になってバンドをはじめた。

ハハハハ。洋楽はメルボルンで聴いていたの?

下岡:いや、それがぜんぜん。インターナショナル・スクールに通っていたんですけど、アジアの金持ちの子とか、都会から来た子がほとんどで、人口6千人の村から来た僕に対して、「ここは何て田舎だ」とか言って(笑)。洋楽はシドニーに行ってからですね。オアシスとかウィーザーとかプロディジーとか......片っ端から聴いてましたね。

長野に戻ってバンドをはじめたのが?

下岡:97年か98年ですかね。

アナログフィッシュという名前はどこから来たんですか?

下岡:なにせ村なんでライヴハウスなんかもなく、主にベースのヤツの家で活動をするんですけど。

どういう活動を(笑)。

下岡:宅録活動ですね。田舎なんでまわりに家もなくドラムも叩けるんです。で、あるときベースの健太郎が『ロッキングオン・ジャパン』を持ってきて、ある広告ページを開いて「ここにデモテープ募集って書いてあるぞ」って言うんですね。それで、「おまえ電話してみてくれ」と。それで電話したら「バンドは名は?」と訊かれて、「アナログフィッシュです」と。ホントにそれはとっさに出てきた名前ですね。当時は漠然と頭にあった名前だったんでしょうけどね。

アナログフィッシュというとね、意味のない言葉というか。

下岡:そうですね。英語としてもおかしいし。

ナンセンスな言葉ですよね。そんなナンセンスな名前のバンドがどうして社会に向かったのかっていうね。

下岡:なんでだろう(笑)。

取材:野田 努(2011年5月12日)

1234

INTERVIEWS