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interview with Analogfish

interview with Analogfish

俺は忘れない

──下岡晃、インタヴュー

野田 努    写真:小原泰広    Mar 15,2013 UP

Analogfish
NEWCLEAR

Felicity / SPACE SHOWER MUSIC

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 最初に下岡晃が提案したアルバムのタイトルは『ディストピア』だったという話を、取材が終わってから知った。しかし、どうした理由からか、下岡はタイトルを『NEWCLEAR』に変更した。政府がいつ再稼働するのかうずうずしているようなときに、ある意味では挑戦的なタイトルだ。
 しかし、さらに考えてみれば、そういう時期に『ディストピア』を大々的に言うことも、面白かったのではないのかと思う。「ノー・フューチャー」とはっきり言うことで開ける未来もあるからだ。あるいは、音楽で「ウィー・アー・フューチャー」と言えば、アシッド・ハウスである。いずれにせよ、人生とはそんないいものではないと言うことは立派な激励で、ことに20世紀のロックは、「いいものではない」と言ってあげる役割を負ってきている。
 だから筆者は、アナログフィッシュがいかなる魂胆で、前向きになっているのかを知りたかった。311直後に『失う用意はある?それともほうっておく勇気はあるのかい』をリリースして、およそ半年後に『荒野/On the Wild Side』を出したロック・バンドは、311に照準を合わせるかのように、1年半ぶりのアルバムを発表した。1曲目の"Super Structure"は、もったいぶらずにさくっとはじまり、さくっと歌が入る。オーソドックスだが、ドライヴするリズムのハイテンションの曲調のなか、下岡晃が言葉を矢継ぎ早に出す。筆者が思うには、アルバムのベスト・トラックである。

 大都市にそびえ立つビルの最上階
 一人たたずむ男はコントロールフリーク
 管制塔から今も君の事じっとみつめてるんだぜ

 決められたルール与えられたコースから
 逃げるルートの裏の裏までもが想定内
 この街の中で彼の目から逃れる事なんて出来ない

 ザ・クラッシュの"コンプリート・コントロール"と同じ主題だ。こうした苛立ちは、"Watch Out(サーモスタットはいかれてる)"という曲にもうかがえる。そう言う意味では、アナログフィッシュは変わっていないと言えば変わっていない。
 とはいえ『NEWCLEAR』には、感傷的な要素も多分にある。失恋とも別離とも受け取れる"Good bye Girlfriend"のような曲はその代表で、それどころか、そのものずばり"希望"という曲さえある。「希望」「希望」「君の存在自体が希望だと思った」という素朴なラヴ・ソングなのだが、その曲に続くクローザー・トラック、やけのはらが客演する"City of Symphony"は、アップリフティングな、心温まるヒューマニズムの世界である......さて、アナログフィッシュがいま見ているところとは......さあ、今回は下岡晃に訊きたいことがたくさんあるぞ!

「忘れないぞ」っていう気持ちもあったし。子どものころ「ニュークリア(nuclear)」ってああやって(newclear)書くと思ってたんですよ。97年に京都議定書のときに言われてたのって、安全だし、CO2も削減できるし、クリーンなパワーだみたいなことばっかり言われてたから。

今日は下岡くんに食ってかかるぞ。

下岡:なんでですか(笑)。

嘘です(笑)。でも、ガンガン意見を言ってください。

下岡:はい。

『NEWCLEAR』というタイトルにしたのは、原発問題が中心にあるということを暗示しているわけですよね。

下岡:たぶんいくつか理由があったと思うんですけど。ひとつは、コンパクトで前向きなタイトルをつけたかったこと。あとは......でも原発のこともきっとあったんだろうなあ......「ニュークリア」って言ってるんだから。

はははは、それはそうでしょう!

下岡:なんか、「忘れないぞ」っていう気持ちもあったし。あと、子どものころ「ニュークリア(nuclear)」ってああやって(newclear)書くと思ってたんですよ。

へえ。核のニュークリアを。

下岡:そう。で、97年に京都議定書のときに言われてたのって、安全だし、CO2も削減できるし、クリーンなパワーだみたいなことばっかり言われてたから。

そうだよね。

下岡:で、ニュークリアって新しくてキレイだし、こうやって書くんだよなって勝手に思ったの。

僕も憶えている。環境問題にひっくるめられて、どんどん原発が促進されていったときだね。たしかにそういう時期がありました。

下岡:俺にとってはニュークリアはそれがいいなっていう(笑)

アルバムのトピックのひとつを言うと、いま下岡くんが言ったように、僕も前向きさにこだわった作品だと思ったんですけれども。この新作の方向性っていうのはどのような経緯で決まったんでしょうか?

下岡:方向性っていうのは、はじめから説明すると、ここに落とそうと思って作った盤ではぜんぜんなくて。あのあとけっこうすぐ、"抱きしめて"って曲を録ろうって話になったんです。

"抱きしめて"があのあとにすぐできた?

下岡:いや、"抱きしめて"も震災前に作ってあったの。で、ああいうこともあって、自分で歌う気がしなかったんです。でもそのうち、歌いたいような気持ちがムクムクと出てきて、で、歌ってみたら「いいぞ」って話になって。それで、まずそれを録ったんですよ。そこから月イチとか2ヶ月に1回とかのゆっくりしたペースで作っていって。それを集めたらこれになったっていうのが一番近いかな。

じゃあとくに意識的に方向性を決めたってわけじゃない?

下岡:ない。でも、最終的にNEWCLEARってタイトルにしようとしたのはまた雲行きが怪しくなってる中でここから新しくはじめようってステートメントを掲げようって思って。それが前向きかはわからないけれど市井のくらしの中にある希望みたいなのは拾っていこうと思った。そういう物まで一緒くたに失われたかのような感じがいやだったから。

"抱きしめて"って曲も311以前だったんだ。

下岡:そうです。

一種の疎開現象みたいなことを匂わせているフレーズが、"Good bye Girlfriend"とか"My Way"とか、いろんな曲で見受けられると感じたんですよ。だから"抱きしめて"なんかはどう考えても311以降に作ったのかなと僕は思っていたんだけど。「危険だから引っ越そう/遠いところへ引っ越そう」っていう言葉からはじまるわけだし。

下岡:作ったときは地震のことを思ってましたね。ずっと自分に来るべきものとして怖がっていたものだから。

ひとが東京から離れていく現象について言及が曲の断片から出てくると思うんだけど、それに関して下岡くん個人はどういう気持ちでいました?

下岡:あのときですか?

うん、だから"Good bye Girlfriend"みたいな曲もそういう想いがきっと入っているのかなと思って。

下岡:あれは(佐々木)健太郎が作ってて。あいつが何を言おうとしたかっていうのは、直接俺がすぐ口にできないんだけど。僕はこれは純粋なラヴ・ソングとして理解してる。でも、疎開現象については......。

僕の深読みなのかな。でも、けっこう周りにいました?

下岡:僕の近くに出てしまったひとはいなかったですけど、みんな考えてたし、一時期いなくなったひとはけっこういましたね。

それはけっこういたよね。

下岡:いました。俺もでも考えたけど、じゃあそこで何するんだろって思っちゃったっていうか。そのときってどうでした?

僕の周りではいるんだよね。子持ちが多い世代だから。

下岡:でも俺も子どもいたら絶対そう思うし。

僕、子どもいるけど思わなかったな(笑)。

下岡:そうなんだ。

周りからは「疎開したほうがいいよ」って言われたんだけど。できるひとは疎開したほうがいいかなって思ったんだけど、僕は現実的にできる状況じゃなかったし、長生きが人生の目的じゃないし。ただ、子供がいるといろいろ難しいよね。やっぱりそこで、最初に心のほうがやられてしまったってひとがいるじゃない?

下岡:たしかに。

取材:野田 努(2013年3月15日)

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