「P」と一致するもの

Massive Attack, Young Fathers - Voodoo In My Blood - ele-king

 すでにご存じの方も多いかと思いますが、マッシヴ・アタックの新作PV、格好良すぎです。昨年『ホワイト・メン・アー・ブラック・メン・トゥー』が前作『デッド』に続いて高評価された、エンジンバラの3人組ヤング・ファーザーズをフィーチャーした新曲のPVですが、なんといまもっともエロティックかつデンジャラスな女優、ロザムンド・パイクが出演!!!! 
 これは2016年のベストPVでしょうな。ロザムンド・パイクの演技を見れるだけでも素晴らしい……

Andrew Weatherall - ele-king

 音楽を聴き続けている者として、ひとつの好奇心、興味、関心のあり方として自分と同年齢の者がどのような表現の変遷、作家活動を辿るのだろうか、というのがある。ぼくより年下の人にもぜひ意識することをオススメしたい。自分と同じ歳で共感できるミュージシャンを探すことである。自分が25歳のときに、同じく25歳のあいつはこんな音楽を作って、35歳のときはこんな音楽を作ったと。そういうふうに聴いていると、なにかと考えさせられることがある。ときには励みにもなる。
 ぼくと同じ歳のミュージシャンというと、──ミュージシャンというよりDJだが──、デリック・メイとジェフ・ミルズがいる。この人たちは、しかしこう言ってはナンだが〝ハイパー〟なので、じつはそれほど同年齢意識を持っているわけではない。日本では菊地成孔がまったく同じ歳で、辿ってきた音楽体験が違いすぎるのだけれど、やはり、わかるところはすごくわかることがある。彼の近著『レクイエムの名手』がまさにそうだった。
 アンドリュー・ウェザオールもぼくと同じ歳である。今年で53歳という、立派な中年だ。そしていま〝中年〟であること、それはぼくがウェザオールに抱く関心のひとつとしてある。
 そもそも、アシッド・ハウス/テクノを直撃した世代の多くは、いま中年期に差し掛かっている。現役でがんばっているDJの多くも中年になってきた。この中年期は、ひとの人生においてじつにむずかしい。以下、エドワード・W・サイードの文章を引用する。

 中年期という年頃は、より明快に定義された二つの時期や事柄の間に挟まれたものの常として、かくべつ有益なものとはみられてこなかった。もはや将来を嘱望された青年でもなく、かといって敬われる老人でもない。不惑を過ぎてなお反抗的な若者ぶってもしばしば愚かしく、いっぽうで早くから老いた重鎮のようにみなされてしまうと、おぞましい尊大さや制度そのもものの厳格さを背負うことになりかねない。(中略)中年期は不確実性と、ある種の喪失性、身体的な弱さ、心気症、不安とノスタルジーの時期である。大多数の人びとにとって初めて死を意識するようになる時期でもある。
 いずれにしても、いま述べたことは経験にもとづいた現実の一部である。(中略)しかし誰であれ実際に中年にさしかかった者にとって、喜ぶよりは考えさせることのほうが多い。過去を繰り返すことなく(いっぽう悲しくもありがちないように)過去を裏切ることも避けながら、そこから学びつつあらためて来し方行く末を思い、猪突猛進してきたそれまでのエネルギーを新たな現実に合わせて修正しなければならないからである。あらゆる決まり文句が示唆するとおり、野暮ったく退屈な、色褪せた状態にもそれなりの真実はある。そしてそれが中年というものなのだ。

エドワード・W・サイード『サイード音楽評論』二木麻里訳

 なんの反論もない。思春期はたしかに人生においてむずかしい季節だが、中年期もすごくむずかしいのである。そのむずかしい季節をアンドリュー・ウェザオールは試行錯誤しながら生きている。ぼくと同じようにだ。
 そのアンドリュー・ウェザオール、彼こそはアシッド・ハウスにイングランドのゴシック趣味を注いだ張本人、彼こそは誰もがスニーカーを履いていた時代にラバーソウルを履いてDJをしていた男、彼こそは誰もが太陽を歌った時代に雨と霧を愛した人物である。近年流行っているゴシック/インダストリルの美学なんぞは、90年代の愛(バレアリック)の季節から表現し続けている。凡庸なDJがそんなことをすればただの異端児だが、ウェザオールという男は、その手の掟破りを最高に格好良く思わせてしまうのだ。彼の才能は、迎合しないその非凡なセンス、それをやってしまう思い切りの良さ、きわめて英国的な目利きにある。
 ロッターズ・ゴルフ・クラブとは彼のレーベル名であるが、この「ゴルフ・クラブ」という言葉を持ってくるところがいかにも彼らしい。ゴルフ・ファッションの元となったラウンジ・スーツは、19世紀つまりヴィクトリア朝時代の後期に流行っている。それはその時代のアウトドア・ファッションである。また最近の彼は顎ひげを生やし、ワークシャツを着ている。これも19世紀から20世紀初頭にかけての英国のスタイルだが、こうした服装からも読み取れることは、彼が〝現在〟に対して深い疑問を抱いているということだ。
 ファンションの問題もあるだろう。近年のウェザオールには見習うべきところがある。もしぼくが40代〜50代をターゲットにするファッション誌の編集者だったら、間違いなくこの男を特集するだろう。多少やり過ぎのところはあるが、もっともむずかしい中年期の身だしなみを彼になりに表現しているからだ。
 とはいえ、完璧な人間などいやしない。ウェザオールは、いまから12年前、中年期を目前としながらロカビリーを取り入れたことがある。41歳において過度に若者ぶったのだが、この気持ちもわかる。この年頃にありがちな、俺はまだいけるんだという、最後のあがきなのだ。そういう意味でウェザオールの作品からは、人生を生きるひとりの人間としての迷いや恐れといったものを感じるし、今作が7年ぶりになったのは、やはりこの歳のむずかしさがあったのだろう。誰もがいつでも時代に乗れるわけではない。  

 俺たちは川に蹴りを入れている
 流れを止めようとして
 無理そうな気がしてきたんだ
 俺が願うほうには流れていきそうにない
 “Kick In The River”

 先日書いたYuri Shulginのレヴューからも続く話だが、アンドリュー・ウェザオールがアシッド・ハウスのなかに注いだゴシック(リヴァイヴァル)運動は、ヴィクトリア朝時代の産業革命への抵抗の表れだった。いま起きている現実の変化こそ悪夢にほかならない。19世紀のテクノロジーの革新による変化をうながす原動力は資本主義だったが、それは現代にも通じる話であり、ゴシックという名の警鐘がいままさに打ち鳴らされていることはここ数年の音楽シーンをみればよくわかる。ゴシックの作家たちが150年前の最新テクノロジーを有効利用したように、彼らもデジタルを使いながらデジタル化社会を批判する。
 しかし、アンドリュー・ウェザオールという、その知性と趣味の良さ、アティチュードによって、長きにわたってDJカルチャーのトレンドに多大なる影響を与えてきた人物の最新ソロ作品は、ハウスでもテクノでも、トリップホップでもない。場末のライヴハウスで10人の客を相手に演奏する、誤解を恐れずに言えばうだつのあがらないバンドのようだ。強烈なまでにくみしたいと願うダンス・ミュージックのスタイルがいまの彼にはないのかもしれない。これもまた一考に値することだが、泉智のレヴューのように長くなってしまったので、先を急ごう。
 場末のライヴハウスで10人相手にするようなバンドは、ある意味では自由である。世間からのプレッシャーもなければ、自らを追い詰めるようなオブセッションもない。過去を美化するノスタルジーもない。曲が出来て、歌詞が書ければ、楽曲は生まれる。『コンヴェナンザ』は、いまのアンドリュー・ウェザオールの気持ちをもってして生まれた誠実な作品である。「野暮ったく退屈な、色褪せた状態にもそれなりの真実はある」とサイードが言うように、ここには若さゆえの勢い、老境ゆえの悟りにはない真実がある。

 どうかこの手紙を許して欲しい
 難破した魂が綴ったんだ
 残骸の専門家 砕けた石のなかで失われた名前
 どんな祈りも僕を救えなかった
 もう一度亡霊を呼び出そう
“Ghosts Again”

SUSUMU YOKOTA - ele-king

 昨年のもっとも悲しいニュースのひとつに、横田進の死があった。彼の早すぎる死は、世界中のDJにもリツイートされたが、それはいかに彼が国際的に評価の高いプロデューサーであったのかを証明した。
 さて、ときの経つのは早く、3月で1周忌となるわけだが、横田進が90年代に長く在籍していたサブライム・レーベルから、ススムヨコタ名義としてはデビュー・アルバムとなる1994年の『Acid Mt.Fuji』が復刻リリースされる。当時日本に上陸したサマー・オブ・ラヴを真っ向から捉えた作品で、時代のドキュメントでもある。
 オリジナルマスターからハイレゾに対応したリマスターを施したのに加えて、ボ ーナス・ディスク(CD アルバム限定)では、過去 CD シン グルのみに収録された3曲に、7インチ限定曲、完全未発表曲、さらに1994年6月のライヴ音源も収録。500枚限定生産なので、欲しい人はお早めに。発売日は3月23日。
 
 また、彼が名声を決定づけた3作、『1998』『1999』『ゼロ』の3枚のアルバムもボーナストラック付きでデジタル配信される。
 詳しくは、こちらをどうぞ。https://www.musicmine.asia/yokota/index.html

Ed Motta - ele-king

 2013年の『AOR』は、タイトルそのものズバリのAORアルバムだったエヂ・モッタ。スティーリー・ダンやボビー・コールドウェルなどから、日本の山下達郎や吉田美奈子までこよなく愛するエヂらしさが表れたアルバムで、近年はライト・メロウ~シティ・ポップスといったサウンドが好評を博す日本ではとくに評判が高かった。デヴィッド・T・ウォーカーとの共演も話題を呼んだ。1980年代後半にブラジルからデビューして以来、長いキャリアを誇るシンガー・ソングライターで、初期のファンクやブギー・ソウル(彼の叔父はあのブラジリアン・ファンクマスターのチン・マイア)から、1990年代後半はジャズ、ソウル、ファンク、レゲエから、R&B、ヒップホップ、ハウス、ディスコといったクラブ・サウンドを融合した作品をリリースし、世界的に活躍するようになった。一方、彼はかなりのレコード・コレクターでもあり、さまざまな分野の音楽を愛好する中で、とくにジャズのコレクションも充実している。そうした嗜好が表れた2002年の『ドゥイツァ(Dwitza)』は、ジャズやフュージョンに傾倒したアルバムだった。エヂはヴォーカルのほかに鍵盤奏者としても優れた才能を持ち、ここでのフェンダー・ローズやシンセを組み合わせたコズミックなプレイは素晴らしかった。そして、サンバをはじめとしたブラジル音楽とジャズ/フュージョンが結び付いたスタイルは、往年のアジムスやアイアートなどに通じていたと言えよう。

 『AOR』と『ドゥイツァ』はそれぞれ方向性が異なるもので、リスナーにとっても好みが分かれるところだろう。ただ、どちらもエヂが好きなタイプの音楽であり、そうした2つの世界を1枚のCDの収めたのが新作『パーペチュアル・ゲートウェイズ』だ。ここではわかりやすく、アルバムのA面にあたるのが「ソウル・ゲート」、B面が「ジャズ・ゲート」と色分けされている。とは言っても、「ソウル・ゲート」は『AOR』の二番煎じ的な印象が拭えず、それよりも「ジャズ・ゲート」の出来がいいという印象が個人的には強い。ひさびさにエヂが本格的なジャズに挑戦したアルバムではないだろうか。「ソウル・ゲート」の最後を飾る“ヘリテージ・デジャ・ヴ”にしても、いわゆるフュージョン・ソウル的な作品で、ジャズ・サイドへのうまい橋渡しとなっている。プロデュースを行うのはグレゴリー・ポーターの師匠格にあたり、アルバム『リキッド・スピリット』のプロデュースも手掛けていたカマウ・ケニヤッタ。そして、彼のつてでパトリース・ラッシェン、ヒューバート・ロウズ、グレッグ・フィリンゲインズ、チャールズ・オーウェンスといった往年の名手から、伝説的プレイヤーのセシル・マクビーの息子まで、という非常に豪華なラインナップだ。

 シリアスな佇まいの“ジ・オウナー”は、1960年代のモード・ジャズ~新主流派といった流れを彷彿とさせる作品。ウェイン・ショーターのブルーノートでの『スピーク・ノー・イーヴル』、『ジュジュ』あたりの演奏が思い浮かぶ。それに続く“ア・タウン・イン・フレームズ”は激しいリズム・セクションを持つアフロ・ジャズで、こちらはマッコイ・タイナー的だ。若いジャズ・ファンには、カマシ・ワシントンの『ザ・エピック』に繋がるようなスピリチュアルな世界、というとわかり易いかもしれない。オーウェンスによるコルトレーン調のテナー・サックスがフィーチャーされたモーダルな“オーヴァーブラウン・オーヴァーウェイト”も含め、これらは本作のディープ・サイドを象徴する楽曲群だろう。バップ調の“アイ・リメンバー・ジュリー”でのエヂのヴォーカルは、ヴォーカリーズの始祖であるエディ・ジェファーソンを彷彿とさせるもので、彼がいかにジャズ・ヴォーカルを研究しているかが伺える。また、『AOR』がいろいろな録音データをまとめて作ったのに対し、『パーペチュアル・ゲートウェイズ』はロサンゼルスのスタジオで一発録音という、昔ながらのジャズ・レコーディングのスタイルに則った。「ジャズ・ゲート」における緊密な空気は、やはりこうしたレコーディング・スタイルでないと生まれてこないものだろう。

Yuri Shulgin - ele-king

 よくアナログ盤は音がいいからという感覚的な話を聞くが、いま現在、12インチのヴァイナルEPなるメディアが意味するところは、90年代(=欧米のインディにとってカジュアルなリリース形態)とも、80年代(=ディスコ目的のリリース形態)とも違っている。高価にはなったが、その意味するところは、19世紀ヴィクトリア朝時代のウィリアム・モリスによるアーツ・アンド・クラフツ運動と似ている。そう、〝量〟に抗する手段である。
 いや、〝量〟というよりは、インターネット地獄に抗する手段というべきだろうか。カイル・ホールの素晴らしいアルバムがヴァイナル・オンリーの配信ナシで5千円することも、まったくもってアーツ・アンド・クラフツ運動のコンセプトと重なりはしないか。
 ウィリアム・モリスとは、19世紀の大英帝国を代表するデザイナーで、そして貧困を憎む社会主義者だった。イギリスで『資本論』を真っ先に読んだ人物としても知られ、英語版のデザインを手がけてもいる。カール・マルクスの娘とともに社会主義同盟のメンバーとして、ストリートでラジカルな演説をうったほどの人だ。モリスが世界を変えるために試みたアーツ・アンド・クラフツ運動による工芸品は、しかし結果、高価であるがゆえに、彼が味方した労働者に買えるものでなかったという矛盾があった。
 だからといって大量生産された安いものばかりを買うことは、職人気質や手工芸というものをこの世界から追放することに加担する。インディ音楽シーンにおいて、いまさらアナログ盤やカセットが重要な意味を持つに至った理由と大いに重なる話だ。そして、Yuri Shulgin(ユーリ・シュリジンと読むのでしょうか。わかる方教えてください)の2年ぶりの新作からは、これが12インチ・ヴァイナルでなければならない理由がよくわかる。デジタルで満足している人には悪いけど、ずば抜けている。そろそろ音楽について語るべきだろう。

 ホアン・アトキンスが「ジャズは先生(Jazz Is The Teacher)」なる曲を発表したのは1992年で、いまここでその時代に起きていたことを振り返ってみるのは、Yuri Shulginの新作を絶賛する理由がより見えやすくなるかもしれないが、そうした分析はときにうっとうしくもあるので、まず単刀直入に言うべきことは、このアナログ盤に彫られた4曲すべてに気持ちが揺さぶられる力があるとういこと。計算されながらも、優れた直観による力強い音響と抱擁、個性、美しい逸脱がある。ミスよりも勢い(グルーヴ)を重視しているところもいい。
 A面1曲目の“Nothing In The City”の出だしのリズムとコードは、飲んでいるビールを思わず吹き出してしまうほどマッド・マイク直系だが、タメの効いたベースライン、ブレイク、躍動するサックスと美しいソウル・ヴォーカル、華麗なピアノのソロ、これら抑制されたジャズの断片と連続してアシッド・ハウスがミキシングされたとき、まあ、微笑まずにはいられない。ジャズが〝先生〟で、音楽的向上心を意味するなら、アシッド・ハウスとは下々の祝祭へのリスペクトを意味する。
 続く“Polyphonic Mind ”を特別なものにしている要素のひとつにもリズムを刻む彼のベースがあり、ヴィブラフォンとサックス、ギターの即興がある。タイトルが言うように、すべての音が“ポリフォニック”に構成される、混然としていて、パワフルで、ハウス・ミュージックが本来持っている猥雑さが根を張るようにある。“Nothing In The City”と同様に、トランペット以外の楽器はすべて彼自身によって演奏されているが、これはフュージョンではないしIDMでもない。1993年のURを継承する音と言えるだろう。
 B面の2曲はダブの探求となる。“Livetrackrecording (Dubby) ”はベーシック・チャンネルを彷彿させ、“#1stereo (Analog Jam) ”はアンビエントを展開、こちらの2曲にもアシッド・ハウスとジャズがある。
 
 Yuri Shulginはロシア在住のプロデューサー(ベーシストとしてヴァクラなどの作品に参加している)で、アントン・ザップのレーベル、〈Ethereal Sound〉から2011年にEPを出している。いや、EPしか出していない。Mistanomistaという名義でもイタリアのレーベルから2枚出していて、その2枚と本人名義の3枚すべてがもっと広く賞賛されるべきものだ。本作は2年ぶりの新作になる。彼の音楽は小さなレーベルから発売されたアナログ盤でのみ発表されている。

HIROSHI WATANABE『MULTIVERSE』 - ele-king

 〈トランスマット〉からのリリースを控え、ヒロシ・ワタナベが今週末から日本全国ツアーを開始する。無茶苦茶気合いが入っていると思われるので、この機会にぜひ彼のDJを体験して欲しい。〈コンパクト〉のKaitoだけが彼のスタイルではない。彼の新作のように、エモーショナルなところも彼の魅力のひとつであり、その音楽は、きっとあなたを悪夢から覚ましてくれるでしょう。
 なお、アルバムも4月20日に発売が決定しました。

Matmos - ele-king

 どうして洗濯機なのだろう……マトモスの新作を聴きながら、そのことばかりを考えてしまう。ワールプール社製の洗濯機が発する音だけで構築された本作『アルティメット・ケアII』は、現代のライフスタイルと音楽との関係性をコンセプチュアルにユーモラスに問う彼ららしい作品だと言えるし、生活音で作り上げられたハーバートの『アラウンド・ザ・ハウス』(02)を思い出すまでもなく、モダンなミュージック・コンクレート――もしくは「コンセプトロニカ」――としては正統なあり様のように感じられる。ただ逆に言えば、コンセプトのみにおいては強烈な真新しさを感じなかったのは正直なところで、ドリュー・ダニエルのソロ・プロジェクトであるザ・ソフト・ピンク・トゥルースの近作における、社会学的なアプローチが続いたコンセプトのほうがキャッチーなようにはじめは思えた。だが、意地の悪いインテリジェンスをつねに武器としてきたマトモスの功績を思い返すほど、冒頭の問いに立ち返るのである。そこにはきっと何か理由があるはずだ。どうして洗濯機なのだろう……。

 その回答のヒントは、38分12秒にわたるアルバムが1曲のみで構成されていることにあるように思う。たとえば「注水」「洗い」「すすぎ」「脱水」といった行程によって分割する曲構成もあり得たはずだ。が、そうならなかったのは、その38分12秒――もちろんそれは1回の洗濯にかかる時間である――にひとつのストーリーを見出しているからだろう。汚れた服を入れ、ボタンを押したらあとは放っておかれる機械の架空の物語がここでは繰り広げられる。
 興味深いのは、全体としてブレイクコアやIDMといったマトモスの「節」は炸裂しながらも、得意の優雅でポップなハウス的展開がほとんど見当たらないところだ。冒頭、ダイヤルを回して洗濯の水が注がれれば徐々にパーカッシヴなビートが入ってくるのだが、なにせBPMが140近くある。せわしなく機械は動き、そしてノイズがギリギリと雄叫びを上げる……それは比喩ではない。本当に機械が上げる悲鳴のように聞こえるのだ。やがてもう一度水音が聞こえればビートは消え、ダーク・アンビエント/ドローン的展開になだれ込んでいくのだが、その幻影的な音像の隙間から抽象的だがとても物悲しげなメロディが漏れてくる。それはこの秘密めいた音楽的冒険のなかの、もっともエモーショナルでメランコリックな瞬間だ。そしてそのまま、中盤は陶酔的な時間が引き延ばされ続け、25分あたりの完全にビートレスの瞬間はほとんど官能的ですらある。

 この物悲しさを、僕はマトモスの音楽のなかにずっと忘れていたことにそのとき気づかされた。テレパシーを主題にした前作『ザ・マリアージュ・オブ・トゥルー・マインズ』の突飛さもあったし、何より彼らの作品には素っ頓狂で黒い笑いがつねに滾っているからだ。だが、その隙間では声にならない悲鳴もつねに上げられていたのではないか。
 「アルティメット・ケア」、すなわち「究極の世話」とは何と皮肉めいた名称だろう。洗濯という必要不可欠な、しかし取るに足らない日々の家事において毎度上げられる機械の悲鳴。それが「究極」だろうと何だろうと人間は気にも留めないし、そうした煩雑なルーティンのなかで少しずつ心を削っていく。だがマトモスが言うには、想像力を働かせれば、そこでも音楽は鳴らされているのである。もし本作のことをインダストリアル・テクノと呼ぶのであれば、それは空虚な労働の横で鳴らされている機械音が生み出すエモーションと物語がでっち上げられているからだろう。だとすれば、これはミューザックが姿を変えて全世界的なBGMとなった現代の資本主義社会に対する、愉快で哀しい抵抗にも思えてくる。

 終盤10分はほとんど冗談のような打撃音の応酬が繰り広げられる。ファンキーだと言ってもいい。何も聞かされていなければ、これが洗濯の音なんて誰も思わないだろう……と僕はほくそ笑みつつ、ビートに合わせて頭を振る。洗濯の完了を告げるブザーが鳴れば我に返るが……次回の洗濯はいつもよりも楽しめるかもしれない。

 90年代から現在までを通じて、もっとも幅広いシーンで愛されてきたといえるエレクトロニック・アクト、アンダーワールド。来月には6年ぶりにフル・アルバム『イフ・ラー』が発表される予定で、2012年にロンドンオリンピック開会式の音楽監督を務めて以来だという新曲“アイ・エグゼイル(I Exhale)”も公開され話題を集めている。
 そして今回は緊急来日の情報が解禁となった。抽選で一夜限りのスペシャル・ライヴ(彼ら推奨のハイファイヘッドフォンを使用)を体験できるほか、2次会場にて360度映像のライヴ・ストリーミングも楽しめるようだ。なお、この企画はの一環であり、本展ではカール・ハイドとリック・スミスによるペインティングと音のインスタレーションも見られるとのこと。それぞれ日程や詳細は以下のとおりだ。

アンダーワールドが緊急来日! ライヴで渋谷をジャック!
世界的デザイン集団「TOMATO」結成25周年記念大型企画展に登場!

3月16日に6年ぶり7作目となる最新スタジオ・アルバム『バーバラ・バーバラ・ウィ・フェイス・ア・シャイニング・フューチャー』をリリースするアンダーワールドの緊急来日が発表された。3月12日から4月3日に渡って、Parcoが東京・渋谷から世界に向けて開催する、世界的デザイン集団Tomato (www.tomato.co.uk) の結成25周年記念エキシビション「THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION “O”」 のハイライトとしての来日となり、エキシビション初日に「Underworld Live: Shibuya Shibuya, we face shining future」と題したパフォーマンスで華を添える。

Tomatoの創立メンバーでもあるアンダーワールドのカール・ハイドとリック・スミスは、3月12日渋谷某所で、抽選に当選された幸運な200名のオーディエンスに向け、彼らが推奨するBowers & Wilkins 社製P5 ハイファイヘッドフォンを 使った一夜限りの「SUPER-HIGH-QUALITY-LIVE-TO-HEADPHONE」ライヴを行う。

さらに、今回のライヴは、この春開局する「渋谷のラジオ」(87.6MHz FM)とのコラボレーションで、ラジオ電波を通じて、渋谷の街へ生放送。最新アルバム「Barbara Barbara, we face a shining future」に収められた楽曲も初披露される。(詳細後日発表)

また、このライヴでは、「Galaxy」プロデュースによるライヴストリーミングを2次会場にて開催予定。「Gear VR」とともに360度映像で楽しめるかつてない体験をお届けし、さらに本企画に協力する「Galaxy」と「Bowers & Wilkins」がよりその空間を盛り上げます。(詳細後日発表)

この他、エキシビション本展への参加としてKarl Hydeによるペインティング作品と、Rick Smithによるサウンド演出からなるアートインスタレーションも展示される予定。(Gallery X: 渋谷パルコ・パート1 B1F)

詳細はコチラ >>> www.parco-art.com

また先日ブリストルで開催された6ミュージック・フェスティバルから、不朽の名曲「Cowgirl」と新曲「I Exhale」のパフォーマンス映像も公開されている。

「Cowgirl」 https://youtu.be/BmpBbnPSOTI
「I Exhale」>>> https://youtu.be/l2wOC1JIP1o

8月にはSUMMER SONIC 2016にも初出演を果たすアンダーワールドの6年ぶり7作目となる最新スタジオ・アルバム『バーバラ・バーバラ・ウィ・フェイス・ア・シャイニング・フューチャー』は3月16日にリリース。 日本盤CD限定のスペシャル・フォーマットとして、Tomatoがデザインを手がけたTシャツ付セットも限定数販売される。なお、2月29日(月) までに対象店舗(※オンラインストアは除く)で、日本盤CDを予約すると、オリジナル・A4クリアファイルがアルバム購入時にプレゼントされる。

Labels: Smith Hyde Productions / Beat Records
artist: UNDERWORLD(アンダーワールド)
title: Barbara Barbara, we face a shining future
『バーバラ・バーバラ・ ウィ・フェイス・ア・シャイニング・フューチャー』
release date: 2016/03/16 WED ON SALE
price: ¥2,450+tax
商品情報はこちら:https://www.beatink.com/Labels/Underworld/BRC-500/

Vol.81:Random access NY - ele-king

 今年もまたこの時期がやってきた。あー、アメリカにいるなー、と思える瞬間。スーパーボウルである。アメリカのプロフットボール「NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)」の優勝決定戦。アメリカで感謝祭の次に多くの食料が消費される日。

 アメリカでは、プロ・アメリカンフットボールが国民的にいちばん人気のあるスポーツ(33%)で、次が野球(15%)、その次が大学アメリカンフットボール(10%)である(ハリス・インタラクティブ2015年12月調べ)。プロと大学を合計した場合は43%で、2人に1人のアメリカ人はアメリカン・フットボール好き、というほど人気ぶり。アメリカの国技になっている。

 筆者は去年まで、スーパーボウルにも、ハーフタイム・ショーにもまったく興味はなかったが、たまたま去年、スーパーボウル時にいたバーで、ゲームを大きな画面で上映していた。周りはやんややんやの大盛り上がりで、ルールのわからない私には、まったく「???」だったのだが、そこまでアメリカ人を惹き付けるスーパーボウルとは何ぞや、と興味を持った。ルールは、実際きちんとは把握できていないのだが、4回の攻撃権で10ヤード進むと得点を入れることができる。まわりの友だちが、「いまのは……」とプレイごとに説明してくれるのだが、すぐに次のプレイに進み、「お~、ぎゃ~、ダメ~!!」など大声で野次を飛ばすので、ルールはいつまでも理解できないまま。詳しくはこのリンクを参照(https://www.nfljapan.com/guide/rule/)。

 観るほうも、自分の人生をかけるように真剣で、私はまわりの人の反応を見るほうがおもしろかった。

 ゲームの前に、真っ赤なパンツ・スーツと真っ赤なアイシャドウのレディ・ガガがナショナル・アンセム(国家)を独唱。グランドピアノ一台とガガのみで、後ろには、巨大なアメリカ国旗が広げられ、選手、オーディエンス、会場が一つになり、皆が胸に手を当て敬意を払う。その前では手話で国歌を通訳している女性がいたり、中継で海軍が敬礼している様子が写されたり、あらためて国家的行事なんだなと。ガガは堂々と落ち着き払い、その様子はオペラ歌手のようにもみえる。そしてお決まりの飛行機が飛ばされ、ゲームはスタート。

 ゲーム内容は割愛するが、スーパーボウルはCMの祭典といわれるほど、流されるCMにも気合が入っている。バドワイザー、T Mobile、アマゾン、コルゲートなど、ここで流すCMは500万円を超えるとか。私が好きだったのは、ケチャップのヘインズ。

 ホットドッグになったダックスフンドがヘインズ・ソース・ファミリーに向かって、パタパタ走っている。「かわいいー」と周りの反応も○。緊張感あるゲームの間、ひととき癒される。スーパーボウルのCMはどれも気合が入っているので見る価値ありだが、オーディエンスのダイレクトな反応もわかりやすい。いけてるユーモアを入れると反応するが、さじ加減がちがうと×なのだ。受けると思って作るとだめらしい。

 ハーフタイムショーには、今年はコールドプレイ、ビヨンセ、ブルーノ・マーズが出演。演奏者、ダンサー、チアリーダー、エキストラ、たくさんの人を巻き込み、豪華絢爛に会場を一つにする。

 コールドプレイがメインアクトなのだが、まずフィールドで歌うクリス・マーティンの後ろをたくさんのファンが走り抜ける。ステージは虹色に飾り付けられ、マーチング・バンドや応援団が登場、虹色の花傘を振りまわし、フィールドがお花畑のようになる。彼らが3曲歌った後にブルーノ・マーズが登場。そこで雰囲気ががらりと変わり、その後のビヨンセで、観客の心をガツーンと鷲づかみにした感がある。ビヨンセはこの一日前にニュー・シングル“Formation”をリリースしたばかりで、その曲を披露。ブラックパンサー党を彷彿させる、黒人女性ダンサーを何十人も従え、娯楽の場に政治的意味を盛り込み、ハーフタイムショーの主役を軽く持って行った。その後にコールドプレイが“Clocks”を演奏しはじめると、いままでのハーフタイムショーの映像が映し出され(ポール・マッカートニー、マイケル・ジャクソン、U2など)、3人がいっしょに登場し、“Fix You”、“Up&Up”と続く。最後は、観客席が「BELIEVE IN LOVE」と文字になって映し出され、まわりがすべて虹色に染まる。

 このショーだけでジーンと来るし元気を100倍ぐらいもらった気がする。これだけアメリカが一つになる日ってあるのでしょうか。 今年は、大統領選もあり、すでにドナルド・トランプとヒラリー・クリントン、バーニー・サンダースあたりの話題で持ちきりだが、皆アメリカにプライドを持っているし熱い! いろんな暗い話もあるが、これを観ると万事OK。スーパーボウルへの情熱は、アメリカを象徴している気がする。この国から生まれる音楽がタフなわけである。

Setlist:

Coldplay“Viva La Vida”
Coldplay“Paradise”
Coldplay“Adventure of a Lifetime”
Mark Ronson and Bruno Mars“Uptown Funk”
Beyonce“Formation”
Coldplay“Clocks”“Fix You”“Up&Up”

(参考リンク)
https://pitchfork.com/news/63378-beyonce-mark-ronson-bruno-mars-join-coldplay-for-super-bowl-halftime-show/

interview with IO - ele-king

タグ付きのティンバーで街中をムーヴィン
――IO“Soul Long”

 千歳船橋の駅前でIOと合流する。真っ白のタイトなパンツを穿き、丈が短めの黒いブルゾンのようなアウターを着ている。すらりと伸びる長い足が強調されてみえる。握手を交わして二言三言会話する。あっさりしているが、よそよそしくはない。無愛想でもなく、ヘラヘラもしていない。威圧的でもなく、必要以上に低姿勢でもない。ダンディだが、笑うと10代の少年のようなあどけなさもある。クールだ。ひとつ前の取材でIOの対談相手だったというOMSBに別れを告げ、KANDYTOWNのラッパー、GOTTZの運転する車に乗り込み、閑静な住宅街を抜けファミレスへと向かう。このあたりはIOとKANDYTOWNのホームだ。


IO
Soul Long

Pヴァイン

Hip-Hop

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 ラッパー、IOのファースト・アルバム『SOUL LONG』は2016年の東京のヒップホップを占う一枚と言える。彼が所属するKANDYTOWNはこの1、2年で東京のシーンの話題をさらうクルーとなった。2009年頃に世田谷を主なフッドとする数十人の仲間たちによってKANDYTOWNの原型はできあがる。クルーの名前が付いたのは一昨年ぐらいだという。そして、2014年にフリーミックステープ『KOLD TAPE』、2015年にフィジカル・アルバム『BLAKK MOTEL』と『Kruise'』を発表する。KANDYTOWNのアーバンとストリートの間を行くような洒落たサウンドとファッションに多くのヘッズが魅了された。メンバーの中にはすでにソロ・アルバムをリリースしているラッパーもいる。が、『SOUL LONG』は彼らが脚光を浴びて以降に初めてクルー内のラッパーが出すソロ・アルバムだ。

『SOUL LONG』のサウンドはソウルフルでレイドバックしている。ときにファンキーだ。意味よりも感覚を重視するIOのラップには情熱がほとばしっている。言葉に強烈な主張はないが、彼と彼の仲間たちの日常とアーバン・ライフが刻まれている。ジョーイ・バッドアスやプロ・エラに通じるものもある。さらに、ベテランから中堅、若手まで国内のヒップホップのサウンド・メイキングをけん引するプロデューサーたち――MASS-HOLE、Neetz、KID FRESINO、DJ WATARAI、OMSB、Gradis Nice、Mr. Drunk、MURO、JASHWON――の渾身のトラックが聴ける。昨年不慮の事故で亡くなったIOの親友で、KANDYTOWNの中心人物・YUSHIのビートもある。ミックスとマスタリングはI-DeAだ。

 いま、男も女もヘッズの多くがIOとKANDYTOWNのライフスタイルやファッション、身振りや表情や態度、ラップ・ミュージックに新しい時代のクールのあり方を感じはじめている。そんなIOは1月で25歳になったという。KANDYTOWNの仲間、アルバムの制作――MUROやMUMMY-Dとのやり取り、作詞法、K-TOWN、そしてIOの考えるクールの美学についておおいに語ってくれた。

■IO / イオ
幼少期より同じ街で育ってきたメンバーで構成されているKANDYTOWN LIFEの中心メンバーであり、JASHWON、BOMBRUSH!、LostFace、G.O.Kらを擁するクリエイター集団、BCDMGのメンバーでもある。ラッパー以外にもアート・ディレクター、ヴィジュアル・クリエイターなど表現者として多彩な顔を持つ。2014年末にUNITED ARROWS企画のサイファー「NiCE UA 37.5: “Break Beats is Traditional”」にMUROのDJのもと、ANARCHY、KOHHらとともにKANDYTOWNのメンバーであるYOUNG JUJU、DONY JOINTと揃って参加したことでストリートのみならずファッション界隈からも注目を集め、KID FRESINOの最新作『Conq.u.er』にも客演するなど、待望される中で2016年2月、デビュー・アルバム『Soul Long』をリリースする。

ずっと曲は作っていたんですけど、出すことをあんまり意識してこなかったんです。

アルバムの制作はいつから始めたんですか?

IO:アルバムを出すって決まったのが夏の終わりぐらいだったと思います。それからトラックを集めて、自分がリリックを書いてレック(録音)しはじめたのが11月中旬ぐらいからだと思います。だから、自分が実際に制作してた期間は2ヶ月ないぐらいだったと思いますね。KANDYTOWNの動きやCARHARTT WIPとのミックステープ(IO, DONY JOINT, YOUNG JUJU『Nothing New EP』)を作ったりもしていたので、ソロの制作が少し遅れてしまいました。

IO,DONY JOINT,YOUNG JUJU feat. KANDYTOWN“All bout me”

IO,DONY JOINT,YOUNG JUJU“We & 4Ever U”

KANDYTOWNは2014年にフリーミックステープ『KOLD TAPE』、2015年にフィジカル・アルバム『BLAKK MOTEL』と『Kruise'』を出しましたね。KANDYTOWNは2009年ぐらいにはクルーとしての形ができあがって、名前が付いたのが一昨年ぐらいですよね。なぜ、ここ1、2年で急に活動が活発になったんですか?

IO:ずっと曲は作っていたんですけど、出すことをあんまり意識してこなかったんです。クルー全体で50曲ぐらい……いや、もっとありましたね。それを一度まとめてフリーで出してみようとなった。それが『KOLD TAPE』だった。出してみると思ったより反響があって自分たちが動けば状況も変わることがわかったんです。それからみんな意識して作品を作って出すようになったのはあります。作品への反響や変化が起きる事にビックリはしましたね。オレらはずっと何十人しかいない小箱でやっていたのにいきなり何百人もの前でやるようになったりして、ステージもどんどん大きくなっていったから変化は感じました。それはKANDYTOWNのみんなが感じていると思います。

IO“K14 (Noise Ver)”

KANDYTOWN “KOLD CHAIN (Kruise' Edition)”

KANDYTOWNはどういう場所でライヴをしてきたんですか?

IO:30人入ればパンパンに見えるようなところばかりです。行ってもラッパーとか出る側の人間しかいないようなところ、そこでさっきまでLIVEしてたやつらが今度はフロアで俺らのLIVEを睨んで見てるみたいな。そういう感じがほとんどでした。町田だとVOXとかFLAVA、あと、下北沢のthreeや渋谷のNo Styleは多かった。そういうところでやってましたね。

BANKROLL“LOST MY MIND (BANKFRIDAY -Last week-) Presents by KANDYTOWN”

オレは外は全員敵っていう雰囲気でしたね(笑)。だから、あんまり外のヤツと話す気はないし、関わるつもりもなかった。

これまで活動してきて現場で顔を合わせたり、フィールしたり、仲良くなったりする同世代はいましたか?

IO:俺はほとんどないです。

けっこう孤立してたんですか?

IO:シーンでやってる人たちと現場で会ってちゃんと話したりすることは全然なかった。オレはメンバーの中でもとくになかった方だと思います。SANTAとかメンバーによってはいろんな人と仲良くしてたりはあったと思いますけど。

あと菊丸くんはMCバトルに出たりソロ・アルバムも出したりしてますし、RYOHU(呂布)くんも独自にいろんな活動をしてきていましたよね。

IO:菊丸は人当たりもいいですしね。オレは外は全員敵っていう雰囲気でしたね(笑)。だから、あんまり外のヤツと話す気はないし、関わるつもりもなかった。オムス(OMSB)くんとかとかSIMI LABとかは昔からLIVEとかで会ってましたけど、そんなに仲良く遊んだりとかはしてなかったですし、オレはずっと地元で仲間と遊んでいた感じですね。

じゃあ、『KOLD TAPE』のリリースをきっかけに状況や環境がガラッと変化した感覚なんじゃないですか?

IO:そうですね。あとはソロで言えばBCDMGに入って、その反響もありますね。

IO“DIG 2 ME”Produced by JASHWON(BCDMG)

アルバムのトラックメイカーの豪華さはやはり最初に目を引きますよね。人選はどのようにしていったんですか?

IO:まず、カッコイイ人のカッコイイビートでとやれればいいなっていうのがありました。あと、あまり外の人とやったこともなかったですし、自分が昔から聴いていたMUROさんやMUMMY-Dさん(Mr.Drunk)とか、そういう人たちとできたらうれしいなというのもありましたね。そういう部分はアルバムのプロデューサーのNOBUさんやPヴァインの升本さん(A&R)にやってもらった感じです。だから、プロデューサーに関してははわりとお任せしました。オレはとにかくその中からフィールしたビートを選ばせてもらって決めていきました。

とにかくカッコイイビートでやりたかったっすね。

エグゼクティヴ・プロデューサーがJASHWONさんで、コ・プロデューサーがNOBU(a.k.a. BOMBRUSH)さん、クリエイティヴ・ディレクターがKANDYTOWNのNeetzさんですよね。それぞれどういう役割分担でアルバムを制作していったんですか?

IO:JASHWONさんに大まかな流れを作ってもらって、NOBUさんとアイディアをより明確にしていった感じですね。Neetzはレコーディングをすべて担当してくれて、たとえば、2つレックしたらどちらのフロウを選ぶかとか、そういう細かいところまで関わってくれた。そういう感じですね。

プロデューサー陣やトラックメイカーとのやり取りの中でアルバムの根幹に関わるような印象に残っている言葉やキーワードはありますか?

IO:とくにないですかね。いままで通り、あるトラックに思いついた言葉を1小節1小節歌っていくというのは変わらなかった。

たとえば、MUROさんやMUMMY-Dさんとはどういうやり取りがありました?

IO: MUROさんのスタジオにお邪魔してレコードを選ばせてもらいましたね。

へぇぇぇ。

IO:MUROさんとNOBUさんとレコードを聴きながら、この曲カッコいいですね。みたいな話をして、あとはMUROさんがやってくれました。

MUROさんの仕事場に行ったわけですよね。貴重な体験だと思うんですけど、どうでしたか?

IO:シーンを作ってきた方だし、あまり経験できないことだと思うのでうれしかったですね。

MUMMY-Dさんには「どんな曲がいいかな?」と訊かれたので、好きな曲を18曲ぐらいCD-Rに焼いて渡したんですよね。ナズからジェット・ライフまで、自分の好きなニュアンスの曲をCD-Rにして。

MUMMY-Dさんとのやり取りはどうでした。「Plush Safe He Think」では「耳ヲ貨スベキ」ってワードで最後のヴァースを落としてるじゃないですか。

IO:はい。

RHYMESTERも聴いてきたんだろうなと。

IO:そうですね。リスペクトですね。MUMMY-Dさんには「どんな曲がいいかな?」と訊かれたので、好きな曲を18曲ぐらいCD-Rに焼いて渡したんですよね。ナズからジェット・ライフまで、自分の好きなニュアンスの曲をCD-Rにして。

粘っこいベースとどっしりしたビートが絡む90Sマナーの曲じゃないですか。仕上がったトラックを聴いてどうでした?

IO:いい意味で驚きがありましたね。もっとフレッシュで明るめのトラックかなってなんとなくイメージしてたんだけど。来たものはいつもオレが好んで選びそうなトーンのトラックだった。オレの曲とかも聴いてもらっているのかと思うぐらいで。メロウで哀愁のあるトラックで俺の好きな色でした。

他のビートメイカーとも同じようにやり取りがあったんですか?

IO:いや、あとは基本的にトラックを送ってもらって、その中から自分の好きな曲を選ばせてもらいました。(KID)FRESINOには、去年ニューヨークに行ってPV撮ったときにFRESINOの家で何曲か聴かせてもらって、いくつかもらうトラックを決めていましたね。

KID FRESINO 「Special Radio ft IO」

GOTTZ:1曲め(「Check My Ledge」/MASS-HOLEのビート)が決まったのはけっこう最後の方ですよね。

IO:いちばん最後だったと思います。MASS-HOLEさんのトラック、カッコイイよくて、ストックを送ってもらって、8曲ぐらいはやりたいのがありましたね。

スタジオにKANDYのみんなが溜まっていたので、「いいワードくれよ」みたいな感じで言葉をもらったりしていましたね。

ファースト・アルバムは誰にとっても名刺代わりになるじゃないですか。そういう意味での気負いやプレッシャーはなかったですか?

IO:そこはあまり気にしなかったですけど、KANDYTOWNのIOとはちがうIOが出せたらいいなと思いました。

制作で悩んだり苦労したりはしなかったですか?

IO:多少はありましたね。時間が無くてとにかくそれがキツかった。まあ自分が悪いんですけど。

宿題をギリギリまで残すタイプ?

IO:完全にそうですね。

それはリリックを書きあぐねたとか?

IO:ぜんぜんありました。スタジオにKANDYのみんなが溜まっていたので、「いいワードくれよ」みたいな感じで言葉をもらったりしていましたね。ひとつワードをもらったら、「次はどうくる?」とか誘導してみんなで作り上げたヴァースもありますね。たとえば、DONYが何かのワードを出したら、GOTTZがそこに付け足すワードを出して、さらにRYOHUが加える。そうやって1小節を作って、「OK! じゃあ次に行こう!」って。ラップの勉強にもなりましたね。ここで言葉を切るのがカッコイイとか、ここで間を置いた方がいいよねとか、みんなでラップの勉強しているみたいな感じになっておもしろかったですね。

GOTTZ:「ここは(韻を)踏まない方がかっこいいんじゃないの?」と誰かが言ったりして。

IO:そうそう。モヒートで韻を踏みたいからそのためにみんなで考えたりした。

GOTTZ:IOくんに振られて考えていたのに、「いや、アル・パチーノだろ」と答えを出したりすることもあった。

IO:あった、あった(笑)。ワードを出してもらってるのにぜんぜんちがうって言って、結局ひとりで解決させることもあった。

時間のあるときは羽田空港の屋上に行ったりしますね。車で行く間にビートを聴いて、屋上に着いたらバーッと8小節とか1ヴァースとか書く。

それはおもしろい話ですね。具体的にどのヴァースをみんなで作りました?

IO:“City Never Sleep”の2ヴァースめですね。そのヴァースを最初は“Check My Ledge”で使っていたんですよ。でも、このヴァースは“City Never Sleep”の方に使った方がいいと思って変えたりした。

スタジオでリリックを書いてそのままレックしていた?

IO:ほぼそのやり方でした。何曲かは家である程度書いてからスタジオに行きましたね。あと、オレは車で走ってるときにけっこう書くんです。書くというか、ボイスメモで録音するんです。ビートを聴いて、そこに浮かんだ言葉をハメていく。時間のあるときは羽田空港の屋上に行ったりしますね。車で行く間にビートを聴いて、屋上に着いたらバーッと8小節とか1ヴァースとか書く。それから空港内にある国際便のカフェでホットミルクを買って、帰りにボイスメモで録りながら帰る。そういうことをやってましたね。

ファーストだからこれだけは言っておきたい!ということはありました?

IO:あまり無いかもしれないです。「オレってイケてるでしょ」「オレらってクールでしょ」、基本的にはそれがベースだと思います。それは昔から変わんない。とにかく、オレらは「この街でクールにプレイしてるんだぜ」っていうのをひたすら言って見せているって感じだと思います。

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(クールって言葉の定義は)シンプルなことだと思います。仲間を大事にするとか、女の子を大事にするとか、親を大事にするとか。

クールって言葉をよく使うじゃないですか。IOくんが定義するクール、またはクールな男ってどういうものですか?

IO:はははは。それは、すごく難しい(質問)じゃないですか(笑)。でも、ほんとにシンプルなことからだと思います。仲間や女の子を大事にするとか、親を大事にするとか。だから、テンションが低くて冷静であんまりはっちゃけないのがクールっていうわけではないです。

GOTTZ :Neetzのスタジオに「KoolBoy―10のルール―」みたいな紙が貼ってあるんすけど、9個までしかないんですよ。「ピザはピッツアと呼べ」とか書いてある(笑)。

はははは。

IO:いや、ほんとは11個あるんです。オレが4、5年前にバーッと書いたんです。紙が2枚あったんですけど、2枚めがどこかにいっちゃったから壁には9個で終わっているんです。「1日1回熱いシャワーをキメる」「誰の事も見下すな」とか書いた「KoolBoy―10のルール―」なんですけど、じつは11個めがある。それは「ルールにしばられるな」と。クールじゃないですか?

自分でルールを並べて、最後に「ルールにしばられるな」と。

IO:はい。でも当たり前のことだと思いますね。おばあちゃんには優しくするとか、ゴシップに振り回されないとか。オレの中には11個以上ありますね。


じつは11個めがある「KoolBoy ― 10のルール ―」

やっぱりクールの定義が明確にありますね。

IO:ですね。

クールにつながる話なんですけど、ラッパーや先輩、俳優とか歌手でもいいですし、カッコイイと思うってどういう人ですか?

IO:挙げたらキリないですけど、いまパッと出てくるのは『モ'・ベター・ブルース』(監督・スパイク・リー/1990年公開)のデンゼル・ワシントンですね。

僕もあの映画だいぶ昔に観ました。ジャズ・トランぺッターの話ですよね。

IO:言葉で説明するのは難しいですけど、あのデンゼルのストイックさがすごいカッコイイと思う。何時から何時まで楽器を練習すると決めて、音楽に対してちゃんと向き合う姿勢とかが渋いと思う。自分にそういうストイックさがないからかもしれないけど、そういう習慣のある男はカッコイイと感じますね。他にもジョー山中とかアル・パチーノとか自分の父親とか、NOBUさんやJashwonさんもGottzもクールだと思います。

KANDYTOWN“IT'z REVL (IO, RYOHU, Mr.K, MUD)”

フッドは街っていう感じで、タウンはもっとディープでオレらとか俺たちがいま立っている場所とか状況っていう意味かもしれないですね。

IOくんのファッションや立ち振る舞い、ラップにも街の匂いをすごく感じるんですね。ラップの中でも、シティ、タウン、フッドという単語が出てくるじゃないですか。その3つはどのように使い分けていますか?

IO:その言葉を言ったときのオレに訊いてみないとわからないですね。


IO
Soul Long

Pヴァイン

Hip-Hop

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たとえば、“City Never Sleep”という曲名は“Town Never Sleep”では意味が変わってくる?

IO:タウンは寝ますね。

タウンは寝るんだ。

IO:ガン寝です。

シティは?

IO:寝ないです(笑)。

アハハ。

IO:シティは大まかに言うと東京だったり世の中という意味が大きいと思うんです。タウンはオレらが居るとことか今みたいな事かもしれない。フッドよりタウンの方がオレ的には狭いかもしれないすね。

一般的にはフッドは近所でタウンは街だからフッドの方が狭いですよね。でもそこは感覚的には逆なんですね。

IO:逆かもしれないですね(笑)。フッドは街っていう感じで、タウンはもっとディープでオレらとか俺たちがいま立っている場所とか状況っていう意味かもしれないですね。

KANDYTOWNの“K”は喜多見の“K”ですよね。

IO:そうですね。

IO“City Never Sleep” (pro. by JASHWON for BCDMG) - Official Video -

(K TOWNとは)オレたちを作ってくれた街。べつに何かがあるってわけじゃないんですよ。ただ、オレたちが育ってともに時間を過ごして、いまもいる街ですね。

K TOWNをまったくの部外者に説明すると、どういう街ですか?

IO:オレたちを作ってくれた街。べつに何かがあるってわけじゃないんですよ。高いビルが建ってたりとか、いいブティックがあるとか、そういうわけでもない。ただ、オレたちが育ってともに時間を過ごして、いまもいる街ですね。

KANDYTOWNのメンバーはこの周辺の団地や一軒家でそれぞれ育っている感じなんですね。

IO:そうですね。オレらには団地で生まれたヤツもいるし、ハイクラスなシティ・ボーイもいる。全員がゲトーなわけでもないし、全員がハイソサエティでもない。だからといってお互いにヘイトもなく、みんながリスペクトし合ってる。そういう生まれた環境は抜きでオレらはずっと遊んできたんです。団地で遊ぶこともあるし、誰かの家で遊ぶときもある。バランスはいいと思いますね。

そういういろんなバックグラウンドの仲間が自然に仲よくしているんですね。

IO:そうですね。誰かを僻んだりもしない。団地で生まれたって事に引け目を感じたり、変な形でそこに固執してるやつはいないと思う。ラッパーとしてしっかりレペゼンするときはして、高みを目指す。みんなが目指すところはだいたい同じ方向だと思うし。逆にいい生まれでもそれに感謝して以上を目指せば素晴らしいことだと思う。それがHIPHOP的にハンデになるとも思わない。ほんとにシンプルにこの街にいっしょにいるっていう感じですね。

最近はどんな遊び方をしているんですか。飲み屋に行ったりとか?

IO: あまり居酒屋とかは行かないんで。だいたいは恵比寿のソウル・バーですね。〈SOUL SISTERS〉っていうよくしてもらっているソウル・バーがあって、そこにけっこう溜まっています。そこからクラブに行ったりもするときもありますね。途中で来るヤツもいるし、途中で帰るヤツもいる。で、残ったヤツでフッドに戻って来てレコーディングして曲を作る。そういう感じです。

そういう流れの中で曲が大量に溜まっていったんですね。実際、それぞれの作品の曲数も多いですよね。

IO:そうですね。街で遊んで、地元に帰って、曲を作る。それだけなんで苦でもないし、遊んでいたら自然とそのぐらいの曲が溜まっていたんです。でも、はじいた曲もあるから実際にはもっとありますよ。純粋にラッパーだけで10人は超えているんで曲数は多いですね。

街で遊んで、地元に帰って、曲を作る。それだけなんで苦でもないし、遊んでいたら自然とそのぐらいの曲が溜まっていたんです。

KANDYTOWNのメンバーはラッパーやビートメイカーやデザイナーだけじゃないわけですよね。

IO:そうですね。そういうヤツらも数え出したらもうわけがわからなくなりますね。ラップしていないヤツもたまにステージに上がっているし、「今日来てるんだね」って感じですね。

「遊びに来てるならステージに上がりなよ」という感じ?

IO:いや、言わなくても上がってる(笑)。

ははは。IOくんにとってKANDYTOWNの仲間とは何ですか?

IO:友だちですかね(笑)。

それは言い替えてるだけでしょ(笑)。

IO:KANDYTOWNは多くがラッパーでライバルでもあるけど、今回オレがソロを出すとなったときにみんながいろいろなサポートをしてくれた。穴があったら誰かが埋めたり、お互い支え合ったりしてアルバムができて、すごく仲間のありがたみを感じたんです。でも、ほんとは支え合うとかはあまり言いたくないんですけど……

そういうこと言うのがちょっと恥ずかしい?

IO:そうですね。でも、今後誰かが何かをするときには、オレも自分がしてもらったように全力でサポートできればいいなとは思いますね。だから友だちです。

さっきのリリックの制作過程の話を聞いていても共同作業の側面も相当大きそうですもんね。

IO:ほんとにそう思いますね。メンバーのみんながこのアルバムが好みかはわからないけど、みんなを代表して作ってやっと1枚できたという気持ちはありますね。

そういう責任感みたいなものはあった?

IO:ほんとにもうありんこぐらいの。

ふふふ。

IO:KANDYTOWNやBCDMG、P-VINE、プロデューサーやトラックメイカー、いろんな人が関わってサポートしてくれたから、そういう人たちの期待を裏切りたくないという気持ちはありました。でもそれがプレッシャーにはなっていないですね。

KANDYTOWN“Skweeze Me”

『SOUL LONG』は去年亡くなられた親友のYUSHIさんのノートに書いてあった言葉からきているんですよね。

IO:響きがよかったですね。フィールして、ほんとうにそれだけですね。YUSHIのリリック帳を読むと、おそらく“SO LONG”という意味だと思うんですけど、オレもまだわからないし一生わからないかもしれない。いろんな想像をさせてくれる言葉だから、聴いた人、見た人がそれぞれ感じて解釈をしてくれればいいかなと思います。

YUSHIさんが亡くなったとき、それまでの人生で初めて考えたことはありましたか?

IO:うーん、まだあんまりわかんないです。そのことをまだ冷静に理解できていない。もうそろそろ1年経つんですけど。

発売日(2月14日)が命日ですよね。

IO:そうですね。亡くなったときにどう思ったとかはあんまりこう……会いたいなとか淋しいなとか、そういうのは思うんすけど……。

整理がまだついてない?

IO:一生つかないかもしれないです。6歳からいっしょだったんで、起きてることがよくわかんない。まだあんま理解できてないです。

YUSHI“42st.”

BANKROLL“KING”

フェイクな音楽はやりたくない。自分がやりたくない音楽をやることほどキツイものはないと思うんですよ。

インナースリーヴの最後のページにYUSHIさんの顔のタトゥーが入った肩がうつっているじゃないですか。あれはIOくんの肩ですか?

IO:そうですね。YUSHIがNYが大好きだったのでYUSHIのお姉ちゃんとNYに行って、YUSHIの骨を撒いてきました。そのときにハーレムで入れてきました。

アルバムへの反響はこれからだと思うんですけど、今後ラッパーとしてどうしていきたいですか?

IO:このアルバムはもう自分の中での評価は下っているんで、次のステージに活かして音楽をやれる時期にやれるだけやって自分のラップをして、仲間と楽しくクールにやる。もうそれだけですね。

ギラギラした野心みたいなものはそこまでない?

IO:もちろんリッチになりたいとは思います。でも、フェイクな音楽はやりたくない。自分がやりたくない音楽をやることほどキツイものはないと思うんですよ。だから自分が納得できるのがいちばん重要なことです。その上でみんなが認めてくれてお金もついてきたらいちばんいいと思う。ラッパーやラップをナメているわけではなくて、ラッパーだけが自分の可能性だとは思っていないんです。いまのオレがいちばん好きなのが音楽だからラップしているんです。そういうことなんです。だから自分の好きな音楽をやってそのあとに結果がついてくる。それが成功だと思いますね。先のことはわからないですね。

■IO リリース・ライヴ情報

2016.3.25 (金)
BCDMG Presents IO 『Soul Long』 Release Live
@ 代官山UNIT & SALOON
OPEN/START 23:00
Release Live: IO (KANDYTOWN)
Live: KANDYTOWN
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