「S」と一致するもの

Arca - ele-king

 ど、ど、どんと三段重ねのニュースである。アルカが〈Mute〉を離れ、〈XL〉とサインを交わした。そして4月7日にニュー・アルバム『Arca』がリリースされる。それに先駆け新曲“Piel”が公開されたが、そこではなんとアルカ本人が歌っている。
 本人によるヴォーカルがフィーチャーされているのは、今回公開されたこの1曲のみなのだろうか。それともアルバム全編にわたってアルカのヴォーカルが導入されているのだろうか。そのあたりの情報はまだ明かされていないが、レーベルの移籍やアルバムのタイトル、あるいは「内面」や「感情」といった本人のコメントから推測するに、来るべきアルカの新作はこれまでとは異なる作風に仕上がっている可能性が高い。
 「OPNとは何者なのか」という問いに答えが出ていないのと同様、アルカという現象もいまだ解明されていないと言っていいだろう。しかし今度の新作はもしかすると、「アルカとは何者なのか」という問いにひとつの手がかりを与える内容になっているのではないだろうか。まあ現時点ではまだ何もわからないので、さしあたりは公開された新曲を聴きながらおとなしく待っていよう。


A R C A
奇才アルカが〈XL Recordings〉との契約を発表!
最新アルバム『Arca』を4月7日(金)に世界同時リリース!
ジェシー・カンダによるアートワークと新曲“Piel”を解禁!

“我々の期待を完全に超えている”
- Pitchfork【Best New Track】獲得


Artwork by Jesse Kanda


これは僕の声であり、僕の内面の全てだ。自由に判断してほしい。
闘牛のように、喜びを求める感情の暴力を目撃することになる。
これは、感情のぶつかり合いの模倣的存在が、不自然なほど深く、自己陶酔していく姿なんだ。
- Arca

ベネズエラ出身ロンドン在住の奇才、アルカことアレハンドロ・ゲルシが〈XL Recordings〉と契約し、待望のサード・アルバム『Arca』の4月7日(金)世界同時リリースを発表した。長年のコラボレーターであるヴィジュアル・アーティスト、ジェシー・カンダの手がけるアートワークと、初めて自身の歌声を披露した新曲“Piel”を公開した。『Pitchfork』では早速【Best New Track】を獲得している。

Arca - Piel (Official Audio)

早くからカニエ・ウェストやビョークらがその才能を絶賛し、FKAツイッグスやケレラ、ディーン・ブラントといった新世代アーティストからも絶大な指示を集めるアルカ。セルフタイトル作となった本作『Arca』は、2014年の『Xen』、2015年の『Mutant』に続くサード・アルバムとなり、〈XL Recordings〉からの初作品となる。国内盤CDの詳細は近日発表予定。iTunesでは、アルバムを予約すると公開された“Piel”がいちはやくダウンロードできる。

Arca: Discography
『XEN』2014
『MUTANT』2015
BJORK『VULNICURA』2015
KANYE『YEEZUS』2013
FKA TWIGS『EP2』2013/『LP1』2014
KELERA『HALLUCINOGEN』2015
DEAN BLUNT『THE REDEEMER』2013
BABYFATHER『BBF: HOSTED BY DJ ESCROW』2016
FRANK OCEAN『ENDLESS』2016


label: BEAT RECORDS / XL RECORDINGS
artist: Arca
title: Arca

release date: 2017/04/07 FRI ON SALE

iTunes Store: https://apple.co/2m9K7um
Apple Music: https://apple.co/2l1GBNJ

Tracklisting
01. Piel
02. Anoche
03. Saunter
04. Urchin
05. Reverie
06. Castration
07. Sin Rumbo
08. Coraje
09. Whip
10. Desafío
11. Fugaces
12. Miel
13. Child
14. Saunter (Reprise) *Bonus Track for Japan

作品情報

『サクロモンテの丘~ロマの洞窟フラメンコ』
2017年2月18日(土)より、有楽町スバル座、アップリンク渋谷ほか全国順次公開

監督:チュス・グティエレス
参加アーティスト:クーロ・アルバイシン、ラ・モナ、ライムンド・エレディア、ラ・ポロナ、マノレーテ、ペペ・アビチュエラ、マリキージャ、クキ、ハイメ・エル・パロン、フアン・アンドレス・マジャ、チョンチ・エレディア他多数
日本語字幕:林かんな/字幕監修:小松原庸子/現地取材協力:高橋英子
(2014年/スペイン語/94分/カラー/ドキュメンタリー/16:9/ステレオ/原題:Sacromonte: los sabios de la tribu)

提供:アップリンク、ピカフィルム 配給:アップリンク 宣伝:アップリンク、ピカフィルム
後援:スペイン大使館、セルバンテス文化センター東京、一般社団法人日本フラメンコ協会

公式サイト
https://www.uplink.co.jp/sacromonte/

 エレクトロニックなクラブ系の音楽にとって、フラメンコといえば、チル・アウトの一要素として流麗なギターが使われる程度のことが多い。しかし映画『サクロモンテの丘』のフラメンコの音楽と踊りは、はるかに荒削りで強烈なものだ。歌詞のストレートなあけすけさはラップに負けず、手拍子(パルマ)と踊り手のステップ(サパテアード)と打楽器的なギターによるリズムは、ミニマルなダンス・ミュージックに通じ、ときにトランシーでさえある。
 映画が撮られたのは、スペイン南部アンダルシア地方のグラナダ。町の郊外のサクロモンテの丘の洞窟には古くからヒターノ(ジプシー)が暮らし、フラメンコで身を立てている。グラナダ出身の監督チュス・グティエレスは、その丘と住民に焦点を当てた。


チュス監督

「ドキュメンタリー映画を撮ったのはこれがはじめて。テーマに興味があって、身近なものだったので、何かが語れる自信はあったけど、企画の段階では、それが何なのか、まだわからなかった。映画を作るときは、信じるものを追求して撮るだけよ。サクロモンテの人たちにインタビューすることからはじめて、撮りながら作っていったの」

 フラメンコ・ダンサー/歌手/研究者のクーロ・アルバイシンを案内役に、映画は少しずつサクロモンテに暮らす人々の中に分け入って行く。世界中を旅して回った人もいれば、踊るために結婚生活を断念した人もいる。ヒターノではないのに踊りを教える人もいれば、大人顔負けのステップを踏む少年もいる。インタビューや歌や踊りに合わせて、登場人物の若いころの姿などの貴重なアーカイヴ映像も挿入される。

「フラメンコは若い人たちの力強い踊りを見るものと思われているけど、わたしが感動したのは、年配の人たちが体力の限界の中で表現している微妙な動き。若い人のような激しさはないけど、抑制された踊りの動きが、かえって新しく見えたりする。その人たちは、みんな見よう見まねでフラメンコを覚えた世代の人たち。マノレーテのように、アントニオ・ガデスの踊りを見て影響を受けた人もいる」

 実は1963年の洪水で丘の洞窟住居は大きな被害をこうむり、以後ヒターノたちの生活環境も変化を余儀なくされた。

「この映画の主役はフラメンコだけでなく、昔ここにあった共同体のゆくえでもある。往年のこの丘ではフラメンコが生活と密着していた。それがどうだったのかを知りたかった。いまの子供たちはそんな環境には暮らしていない。学校で先生について学んで、伝統を受け継いでいる」

水害で失われたものは大きかったが、伝統が時代の変化に対応しながら継承されている様子は、映画から伝わってくる。ところでサクロモンテのフラメンコはアンダルシアの他の地域のフラメンコと異なる特徴を持っているのだろうか。

「フラメンコはフラメンコね。本質にちがいはない。ただ、狭い洞窟の店で、舞台の上ではなく、同じ目線の高さで、目と鼻の先にいる客を相手に踊るから、その熱が伝わってくる。床はセメントで、舞台の板のようには響かないから、音を出すためのステップも激しい。ライヴの場面は身内のパーティのような形で撮ったので、みんな親密にリラックスした形で、楽しんで踊ってくれた。奔放に踊るフラメンコになったと思う」

 イベリア半島は、8世紀から15世紀までイスラム王国の支配下だった。グラナダは最後の王国が残っていたところだ。グラナダのイスラム建築の精華アルハンブラ(アランブラ)宮殿の姿も、丘の上の踊りの場面で遠望できる。イベリア半島に残ったアラブの音楽家たちが、フラメンコの成立に影響を与えたという説もある。

「イスパニア王国はイスラム王国と戦うとき、鍛冶屋だったヒターノを連れてきて武器を作らせたと言われています。踊りの場面を撮影したタブラオ(フラメンコ酒場)の壁に金属の調理道具が飾ってあるのもその名残。アラブの音楽はフラメンコにもきっと影響を与えたでしょう。いまも北アフリカの弦楽器バンドゥーラを使ってフラメンコを演奏する人がいるし、踊り手が額にアラブの貨幣をつけて踊ったりもする」

 両者の古い関係は文献では跡づけられなくて諸説あるが、交流がまったくなかったとは考えにくい。短絡は避けなければならないが、推測する楽しみは尽きない。
 海外でのイメージとちがって、「フラメンコはスペインでは外縁的な文化扱いされ、大切にされていない。優れたアーティストは国外に出ていってしまう」と監督は嘆いていた。でもインドに起源を持つヒターノたちがユーラシア大陸の西端でフラメンコの担い手になったように、文化のDNAは国境や民族を越えて繋がっている。「だからこの映画も日本まで来ることができたのだと思う」と語る監督の目はうれしそうだった。

予告編

interview with Jeff Mills - ele-king




Jeff Mills & Orquestra Sinfónica do Porto Casa da Música
Planets

U/M/A/A Inc.

TechnoClassical

(初回生産限定盤)

Amazon
Tower
HMV



(通常盤)

Amazon
Tower
HMV


 まず確認しておくべきことがある。ザ・ウィザード時代に高速でヒップホップをミックスし、その後URのメンバーとしてヨーロッパを震撼させ、ソロでミニマル・テクノのフロンティアを切り拓いたあのジェフ・ミルズが、なんと今度はクラシックに取り組んだ! という意外性が重要なのではない。彼が幼い頃からSF映画などを通してクラシックに触れてきたであろうことを想像すると、今回のオーケストラとの共作がこれまでの彼の音楽的志向から大きく外れたものであると考えることはできない(実際この10年、彼はオーケストラとの共演を何度も重ねてきた)し、そもそもジェフ・ミルズのルーツであるディスコやハウスがいわば何でもアリの、それこそロックを上回るくらいの雑食性を具えたジャンルであったことを思い返すと、今回のアルバムがエレクトロニック・ミュージックからかけ離れたオーケストラの生演奏とがっつり向き合っていることも、これと言って驚くには値しない。ポルト・カサダムジカ交響楽団との共同名義で発表された新作『Planets』は、あくまでもこれまでの彼の歩みの延長線上にある作品である。だから、ちゃんとグルーヴもある。

 とはいえ、ではこの新作がこれまでの彼の作品の焼き直しなのかと言うと、もちろんそんなことはない。アルバムを聴けばわかるように、このオーケストラ・サウンドとエレクトロニクスとの共存のさせ方は、以前のジェフ・ミルズ作品には見られなかったものである。徹底的にこだわり抜かれた細部のサウンドは、テクノ・ファンには「オーケストラでここまで表現できるのか」という驚きを与えるだろうし、クラシック・ファンにはかつてない新鮮な余韻と感歎をもたらすだろう。ホルストを踏まえた「惑星」というコンセプトにも、ジェフ・ミルズ独自の視点が導入されている。それに何よりこのアルバムには、黒人DJが白人ハイカルチャーの象徴たるオーケストラをコントロールするという文化的顛倒の醍醐味がある。

 本作を制作するにあたりジェフ・ミルズ本人は、クラシックでもエレクトロニック・ミュージックでもない第3のジャンルへと到達することを目指していたそうだが、彼は1999年の『ele-king』のインタヴューで非常に興味深い発言を残している。「かつて僕は、スコアを書ける人間に自分の音楽を書き取らせようとしたことがあった・でも彼にはそれが出来なかった。というのもそこには、彼が上手く当てはまるような言葉にカテゴライズ出来ない要素がたくさんあったから」。要するに、ジェフ・ミルズの音楽をエンコードすることなどできないということだ。今回『Planets』で編曲を担当したシルヴェイン・グリオットは、しかし、見事にその不可能を可能にしてしまったということになる。だがそこで新たな困難が生じてしまった。プレイヤーがそのスコアを完全には再現できないのである。すなわち、オーケストラはジェフ・ミルズの音楽をデコードすることができないということだ。ゆえに彼は「譲歩」を強いられるが、まさにその折り合いのつけ方にこそ「第3のジャンル」の片鱗が示されていると言うべきだろう。だからこそ彼は本作に2枚組という構成を与え、オーケストラ・ヴァージョンとエレクトロニック・ヴァージョンを並置したのである。ジェフ・ミルズはいまコード化の可能性と脱コード化の不可能性とのはざまで、自らの音楽を更新しようと奮闘している。何しろ彼はこの作品を、100年先の人びとへも届けようとしているのだ。




クラシックやエレクトロニックのどちらでもない第3のジャンルのような音楽にまで到達できれば、と思いながら制作したね。

今回の『プラネッツ』は、2005年の『ブルー・ポテンシャル』から始まり、10年以上にわたって続けられてきたオーケストラとのコラボレイションの集大成のような作品で、ジェフさんにとっても念願の作品だと聞いています。クレジットでは「作曲:ジェフ・ミルズ、編曲:シルヴェイン・グリオット」となっていますが、このアルバムはジェフさんが原曲を書き、シルヴェインさんが編曲して、それに基づいてポルト・カサダムジカ交響楽団が演奏をおこない、それを録音する、というプロセスで作られたのでしょうか?


ジェフ・ミルズ(Jeff Mills、以下JM):プロセスについてはいま言ったことで間違いないけど、編曲をする段階で編曲者のシルヴェインとすごくいろいろな話し合いを重ねたね。話し合いの内容は具体的なアレンジ方法というよりは曲のコンセプトについて、たとえば惑星がどういったもので構成されているかといったことについてで、物質的なことも含めて音として表現したいと思っていた。たとえば土星であれば、その輪の重要性や、あるいは輪が凄まじいスピードで廻っているということに関して、「それはテンポに反映するのがいいのではないか、ならば土星はいちばんテンポを早くしよう」というふうに、コンセプトや科学的な事実をどういった形で音に反映するかということを話し合った。その話し合いの後、シルヴェインが編曲し、また変更点を話し合うといったやりとりを何度もおこない、曲を完成させていったんだ。

ホルストの「惑星」は神話がもとになっていますが、ジェフさんは科学的なデータに基づいてシルヴェインさんと曲を作っていったのですよね。神話の場合だと、たとえば「マーズは戦の神なので曲を荒々しく」というふうに曲のイメージがなんとなく想像できるのですが、惑星の物質的な要素を曲に反映させる場合は、いまおっしゃったような「土星の輪の回転速度をテンポに反映させる」といったこと以外に、どういったパターンがあるのでしょうか。

JM:僕もホルストからの影響は受けているよ。どういうことかと言うと、(僕は)実際の神話をもとにしてはいないけど、ホルストがそういった考えをもとに作曲したというそのことに影響を受けた。惑星に対してどういう見方をするかということを勉強した。僕の場合は、科学的な事実に基づくとともに、「僕たちが惑星をどのように見ているか」ということに重点を置いている。たとえばネプチューン(海王星)やプルート(冥王星)のような太陽系の端にある星というのは、いまだにわからないことが多くあって非常にミステリアスなんだけど、自分たち人間がまだすべてを把握できていないというその事実を音として表現したんだ。もう少し具体的な例を挙げれば、ガスで構成されている惑星、天王星や海王星は表面がはっきりと識別できないので、曲の雰囲気を軽くしてみたり、逆に岩石でできているような惑星は足元があるので、しっかりとしたソリッドな雰囲気で曲作りをおこなった。

なるほど。科学的な事実に基づいているとのことですが、個人的にはこのアルバムを聴いていて、たとえば8曲目の“マーズ”からは戦のイメージを思い浮かべたり、10曲目の“ジュピター”からは神々しさのようなものを感じたりしました。それはあらかじめ聴き手がそういう神話を知ってしまっているためかなとも思ったのですが、神話ではないにせよ、ある程度はジェフさんも意識して、人間が持っている惑星のイメージや見方を曲に込めていらっしゃったと考えてもいいのでしょうか?

JM:君の言う通りで科学的な事実だけに特化したわけではなく、普段から影響を受けているSFであったり、宇宙科学はもちろんのこと、たとえば火星に関する映画であったり、実際の惑星の写真であったり、人間が蓄積してきたものすべてから影響を受け、作曲をおこなった。宇宙科学の話で言うと、今後人類が火星に行くかもしれないという段階に来ているので、そういったこともいろいろと考慮しながら曲を作ったよ。

今回のアルバムはポルトガルのポルト・カサダムジカ交響楽団との共同名義となっています。ジェフさんはこれまでも様々なオーケストラと共演されてきたと思うのですが、今回一緒にアルバムを制作したポルト・カサダムジカ交響楽団が他のオーケストラと違っていたところがあれば教えてください。

JM:ポルト・カサダムジカ・オーケストラとは『プラネッツ』を制作する以前に別の作品で共演したことがあったんだ。その際に非常に良い印象だったことと、そのコンサートが大成功だったこともあって、オーケストラのマネージャーからも「また何か一緒にやりたい」という話をもらった。そのときちょうど『プラネッツ』を制作していたので、こういう作品を制作しているという話と、一緒にレコーディングしてみないかという話を伝えたところ、今回の共同制作が実現したんだ。

6曲目“アース”を聴いていて、管楽器奏者の息継ぎ(ブレス)の音が効果的に使われているように感じました。またこの曲は他の曲とは違って唐突に終わり、すぐ次の曲に移りますよね。「地球」は私たちの住む星なので、やはりこの曲には他の惑星とは異なり何か特別な意味合いや思いが込められていたりするのでしょうか?

JM:アレンジャーとの話し合いの際に強調したことは、もちろん「地球」は僕たちがいちばん慣れ親しんでいる星なので、何かなじみのあるような音をシンプルな形で表現したいということだった。地球自体は太陽系の中でも比較的若い星であり、その若さというものを表現したかったし、地球はまだ進化し続けているので、はっきりとした結末を迎えるのではなく、アンフィニッシュな感じの曲作りをお願いしたんだ。曲自体の長さもあまり長くならないよう心がけた。僕がオリジナル・スケッチを制作した際は、わりとおとぎ話のような雰囲気を持たせ、子どものようなイタズラ感のある音作りをしたんだけど、それは地球がまだ若い星であることに注目したからなんだ。

少し「地球」での出来事についてお伺いしたいと思います。去年アメリカで大統領選挙がおこなわれ、デトロイトでは失業したりした貧しい人たちがトランプに票を入れたという話を聞きました。まさにいまそのトランプが大統領に就任して、さっそく中東やアフリカからの入国を禁止する大統領令を発しています。彼はこれからもそういった政策をどんどん実行していくのだろうと思います。ジェフさんは昨年末『ハフィントン・ポスト』紙のインタヴューで、人種差別に関して「もう手遅れだ」というようなことをおっしゃっていましたが、このトランプの時代に何か私たちにできるポジティヴなことは残されていると思いますか?

JM:イッツ・ア・メス(めちゃくちゃだ)! この先4年間ローラー・コースターのようにいろいろなことが起こるだろうね。大統領たる人物が自分の好き勝手なことを躊躇せず発言しているけど、発言の細かい内容がどうこうではなく、そのような事態になってしまっているというモラルの低下がいちばんの大きな問題だと思っている。国のトップに立つ人物がそのような行動をすることによって、みんなに(悪い)例を示してしまっている状況だ。まだ大統領が就任して日が浅いから、これからそれがどのように影響していくのかはまだはっきりとは見えていないけど、みんなの雰囲気がいままでとは少し異なっているような印象を抱いている。インターネットの力もかなり大きいと思うけど、個人個人が好き勝手なことを発言してもそれが許されるという状況で、ますます洗練とは逆の方向に向かってしまった。その結果がどのような形になって現れるのか、はっきりとは言えないけれど、今後しばらくはこのような状況が続いてしまうのではないかと思う。ポジティヴなことは考えられないね。


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僕が強調したかったのは「ミックスする」ということと「ミックスされた結果がどのようなものになるのか」ということなんだ。

ではまたアルバムについての話に戻りたいと思います。12曲目“サターン”の打楽器は、とてもテクノ的あるいはエレクトロニック・ミュージック的な鳴り方をしているように聴こえました。終盤から電子音が乱入してきますが、弦楽器がピッツィカートでそれと呼応・並走して、エレクトロニクスと生楽器との間におもしろい共存関係が成立していると思いました。16曲目の“ネプチューン”でもピッツィカートが電子音のように使われていますよね。今回このアルバムを制作するにあたって、オーケストラの奏でるサウンドをエレクトロニックなサウンドに「近づける」、「似せる」というような意図はあったのでしょうか?

JM:どちらかと言うとクラシカルな音とエレクトロニックな音がうまく融合して、区別がつかないような音像にしたいというのが最終的な目標だった。特に太陽から離れていった、太陽系の端にある惑星に関しては、そういったミクスチャーをより強調していくことを心がけている。むしろクラシックやエレクトロニックのどちらでもない第3のジャンルのような音楽にまで到達できれば、と思いながら制作したね。

なるほど。なぜこの質問をしたのかと言いますと、もし「近づける」ことが意図されていたのであれば非常に興味深いと思ったからです。実際は「似せる」ことではなく両者の区別がつかなくなることを意図されていたということですが、オーケストラ・サウンドをエレクトロニック・サウンドに「近づける」ことは、たとえば「人間がAIを模倣する」というような関係性に近いと思ったのです。一般的には機械やエレクトロニックなものは人間や自然を模倣して作られたものですが、それが逆転しているという関係性はおもしろいと思いました。もしそのような逆転があるとするならば、人類の未来のあり方としてそのような状況についてどのように考えますか?

JM:その考えはとてもおもしろいね。自分が考えていたのは2017年といういま人間が置かれている状況、つまり「ミックスされている」ことを表現したいということだった。人類が進化するにつれて性別や人種などいろいろなものが混じっていったということ。アメリカという国の成り立ちを踏まえても、「ミックス」という考え方を表現したかった。もうひとつ考えていたのは、与えられた情報をいかに有効活用するかということ。今回の『プラネッツ』に関しては科学的な情報を自分に取り込み、そこから何か新しいものを生み出すというような方法をとった。それは様々なことを伝える考え方で、僕が強調したかったのは「ミックスする」ということと「ミックスされた結果がどのようなものになるのか」ということなんだ。

細かい音を連続で鳴らすときに、エレクトロニクスの場合はひとつの音をすぐ止めることができると思うのですが、生の楽器の場合は構造上どうしても残響が生じてしまいますよね。アルバムを聴いていると両者のその差が揺らぎのようなものを形成しているように感じて、それはたとえば宇宙空間の無重力などを演出しているのかなと思いました。エレクトロニクスとオーケストラを共演させる際に最も苦心したこと、苦労したことは何ですか?

JM:揺らぎのようなものについてだけど、今回の作品では「旅」がメイン・テーマになっていて、宇宙は無重力空間だから、太陽から徐々に離れて太陽系の外に向かっていくということを止めることはできないんだ。そのため(演奏が)沈黙(サイレンス)する状態がないようにすべてが延々と繋がっているような曲作りをした。その際に浮遊感のようなものを演出するため、いろいろな工夫を施している。苦心したことに関しては、ひとつには楽譜を作っていく段階で、特に後半の“ウラヌス”、“ネプチューン”、“プルート”は譜面が難しくて、ミュージシャンが演奏するのに苦労した部分が多々あったこと。あまり難しくしすぎると(オーケストラのメンバーが)ミスなく演奏できないということが起こりえるので、そのあたりは多少の譲歩があった。そういう意味では、レコーディングだと1度きりのパフォーマンスと違って何度も演奏し直すことができるし、ポスト・プロダクションでそれぞれの音を多少調整することもできるから、レコーディングに関しては比較的スムースにおこなえたよ。もうひとつ、難しいというか大変だったのが、僕自身の楽譜というものがないから、自分で演奏するパートはもちろん、他のミュージシャンの演奏する音をすべて暗記して本番に臨まなければならなかったということだね。それに、(自分には楽譜がないので)決められた中である程度即興的に演奏しなければならなかったこともすごく苦労した。


いまこれを聴いてくれる人たちはもちろん、自分が100年前に作られたホルストの「惑星」を聴いていまでも楽しめるように、この『プラネッツ』も100年先に生きている人びとにも聴いてもらえるのであればいいなと期待しながら作ったんだ。

最終曲の“プルート”は終盤にノイズが続き、それが唐突に途切れて、その後15秒の沈黙(サイレンス)を経てトラックが終わりますよね。他方、ディスク2のエレクトロニック・ヴァージョンの方の“プルート”はフェイドアウトしていく終わり方です。オーケストラ・ヴァージョンの不思議な終わり方を聴いたとき、それまでアルバムの冒頭から旅を続けてきた人が急に宇宙という広大な空間に放り出されるような印象を抱きました。宇宙船なのか他のものなのかはわかりませんが、人類が自らの技術力に頼って最後の冥王星まで辿り着いた結果、難破してしまうようなイメージ、つまりある種のバッドエンドを想像したのですが、それは深読みでしょうか? なぜこのような形でアルバムを終わらせたのですか?

JM:“プルート”の終わりにあるノイズは、太陽系を出たところにカイパーベルトという宇宙の塵のようなもので構成されているリングがあるんだけど、それを塵=ホワイトノイズとして表現している。15秒のサイレンスについては、たしかに僕たちが実際に聴くことのできる形での音楽はそこで終わっているけれど、マスタリングの際に沈黙の部分を可能な限りレヴェルを高くして何度も何度もサイレンスを重ねることで、そこにじつは非常に高いレヴェルのサイレンスがあるようにしたんだ。もしもそこに沈黙ではなく音を配置したとしたら、スピーカーが飛んでしまうようなレヴェルの沈黙になっている。それはつまり、自分たちが知っている太陽系というものを出てしまった後は本当に未知の世界で、何がそこに潜んでいるのかわからないから、非常に注意しなければいけないという警告の意味があるんだ。なのでここで終わってしまった、ということではないね。

ジェフさんは先ほどこのアルバムは「ジャーニー」がテーマであるとおっしゃっていましたが、頭から順番に通して聴いてみると次々に惑星を訪れていくような映像が頭に浮かびます。そこで旅をしているのは一体誰、または何なのでしょうか? 人類なのでしょうか? それともたとえばボイジャー探査機に搭載された人類の情報を刻んだレコードのような、人の思いや願い、あるいはメッセージのようなものなのでしょうか?

JM:旅をしているのは基本的に人間だ。誰のためにこれを作ったのかということを説明すると、いまこれを聴いてくれる人たちはもちろん、自分が100年前に作られたホルストの「惑星」を聴いていまでも楽しめるように、この『プラネッツ』も100年先に生きている人びとにも聴いてもらえるのであればいいなと期待しながら作ったんだ。この作品はそういう未来を見据えた考えに基づいている。“ループ・トランジット”という、惑星と惑星の間を旅するというコンセプトのセクションが9つあって、その箇所は現在の人間の知識では基本的に無の空間として認識されると思うんだけど、いまの人間の能力では何も見えず、何も聴こえず、何もわからないだけであって、もしかしたら何百年も経った後にはそこに何かがあるということを人間が発見するかもしれないよね。そういったことが起こりうるということを期待しつつ作曲したんだ。

このアルバムはオーケストラのサウンドがメインになってはいますが、いくつかの曲からはいわゆる普通のクラシックの曲からは感じられないテクノやダンス・ミュージックのグルーヴが感じられました。それは意識して出されたものなのでしょうか? それとも自然と出てきたものなのでしょうか?

JM:僕のオリジナル(・ルーツ)としては、やはりグルーヴ(・ミュージック)から入っていったので、グルーヴについては入れ込めるところには可能な限り入れたいと思っている。アレンジャーのシルヴェインももともとジャズのピアニストなので、彼自身ファンキーなことはできるし、ふたりでできる限りそういった要素を入れることを試みたよ。

このアルバムはCD2枚組になっていて、2枚目には1枚目の楽曲のオリジナル・エレクトロニック・ヴァージョンが収録されていますよね。両者を聴き比べるとその違いが際立ったり、いろいろなイメージが膨らんだりしておもしろいのですが、なぜこのような2枚組という形態にしたのでしょうか? 『プラネッツ』というアルバムはオーケストラ・ヴァージョンだけでは完結しない、ということなのでしょうか? それとも2枚目はあくまでボーナスあるいは参考資料のような位置づけなのでしょうか?

JM:(2枚組にしたのには)『プラネッツ』という作品の全体像をみんなに把握してもらいたいという意図があった。オリジナル・エレクトロニック・ヴァージョンの方もボーナスという位置づけではなくて、作品に欠かせない存在だ。あえてオリジナルのトラックをみんなに聴いてもらうことで、「クラシカルなアレンジをすることでそれがどのような変化を遂げたのか、どの部分が取り上げられてどの部分が取り上げられなかったのか」ということをいろいろと考えてもらったり、評価してほしいという意図があるんだ。





Campanella - ele-king

誰が光で 誰が影で 誰がサグで 誰がオタクで 誰も知らねえ
俺は光で 俺は影で 俺はファックで 俺はカスだ 全部当たりまえ
誰がバビロン 誰がファッション 誰がボスで 誰がルールだ 誰が決めたね
俺がラッパーで俺が詩人で俺が俺であるがゆえの俺のプレイ
“OUTRO” 

 「アンダートウUNDERTOW」という言葉があって、ジャンルを問わないアンダーグラウンド・ミュージックを聴いていてよく思い出す。表面の波に逆らって最深部を力強く流れる底流。KOHHが宇多田ヒカルとコラボレーションし、バトル・ブームの熱気に後押しされた若い世代のトラップが勢いよくポップ・フィールドへと流れこみつつあるいま、日本のヒップホップ・シーンにおけるアンダートウはどこにあるだろう? 2017年1月14日、深夜の渋谷WWWで開催されたCAMPANELLA『PEASTA』のリリース・パーティに足を運んで確信した。現在の日本でもっとも強力なアンダートウのひとつは、NEO TOKAIにある。

 NEO TOKAI。名古屋を中心とする近隣エリアを指すそのスラングを初めて耳にしたのはたしか2、3年前で、やがてそれがHIRAGENのあの『CASTE』を輩出したTYRANTクルーを源流のひとつにしていることを知った。冷却装置がぶっ壊れたように沸騰するその熱をパッケージしたコンピレーション『WHO WANNA RAP』とその破壊的再構築『WHO WANNA RAP 2』。そしてC.O.S.A.が自主流通のみでリリースした傑作『CHIRYU YONKERS』の衝撃……。西日本に大雪が降った1月の真夜中、WWWでのパーティはJET CITY PEOPLEの鷹の目のDJで始まり、Fla$hBackSのJJJとKID FRESINOの東京組がばっちりとオーディエンスをあっためた後には、FREE BABYRONIAとRAMZAのビート・ライヴが会場を襲い、NERO IMAI、呂布カルマ、C.O.S.A.というスタイルは違えどどれもヘヴィ級のMCたちがその夜の主役、CAMPANELLAの登場を準備していた。もちろんその日のアクトに限らず、現在流通している音源や飛び交う噂だけでも、東海地方にうごめく凶暴でソリッドなうごめきを黙殺するのは不可能になりつつある。

 そして名古屋といえばなにより、2004年に急逝したTOKONA-Xという大き過ぎる存在なくしては語れない。しかしその喪失はすでに、彼の姿を熱っぽく見つめていた若い世代によって埋められつつあるようだ。ATOSONEとDJ BLOCKCHECK主催の不定期開催のパーティ<METHOD MOTEL>は名古屋を中心に東海各県の猛者を集めてぶつかり合わせる地下闘技場としてこのシーンの母胎となった。エクスペリメンタルでレフト・フィールド……だがそれだけじゃなく、叩き上げならではのタフな精神性がある。NEO TOKAIはすでに独自の音楽性と毅然としたアティテュードによって東京や大阪に牙をむく、オルタナティヴ・ヒップホップの音楽的爆心地となっている。

 しかし『PEASTA』はNEO TOKAIというよりももっと濃密な、三人の人間のトライアングルから生まれている。C.O.S.A.のシャウトアウトにも登場する名古屋郊外のベッドタウン、小牧市桃花台。そのニュータウンで生まれ育ったCAMPANELLAはまだ十代半ばで、今回すべてのトラックを手がけたビート・メイカーRAMZAとFREE BABYRONIAの二人と出会った。フライング・ロータスに導かれたINDOPEPSYCHICSの子どもたち。そんな言葉さえ浮かぶインタヴューの通り、アンビエント~ノイズ~エレクトロニカのフィールドでも注目を集める二人の仕事は、既存のヒップホップの枠をはみ出し、だが結局はヒップホップと呼ぶしかない異形の音像でそのアートフォームを更新している。

 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』からアーティスト・ネームを拝借したというCAMPANELLAは2014年のミックステープ『DETOX』では、タイラー・ザ・クリエイターの“ヨンカーズ”とともに、レディオヘッドの“ナショナル・アンセム”もビート・ジャックしていた。強烈な個性のラッパーがひしめくNEO TOKAIにあって、CAMPANELLAが武器にするのはときにナンセンスなユーモアとリリシズム、そしてフリーキーなフロウだ。刺繍作家RISA OGAWAの赤い刺繍糸が印象的な今作のアートワークにはオズの魔法使いやアルチュール・ランボーのコラージュが並び、楽曲にはチリの革命詩人パブロ・ネルーダやイスラムのスーフィズム由来の詩がまぎれこみ、ミュージック・ヴィデオでは花飾りで顔を隠したコンテンポラリー・ダンサーが踊る。

 狂騒のパーティを繰り返したその先、退廃を拒絶し、怠惰を遠ざけるストイックなストリート・マナーは、ポスト・Jディラ的なビート・ミュージックの音楽的実験性と融合し、トラップ以降の享楽主義とはひと味違う、洗練されたアートの花を咲かせている。このフレッシュさは、USヒップホップの最新トレンドの日本的翻訳ではなく、世界中に拡散するヒップホップそれ自体の実験性が、極東の地方都市の歴史の中で独自に進化し、溢れだした結果だ。

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 アルバムの幕開け、タイトル・トラック“PEASTA”。丁寧に音響処理されたブレイク・ビート、綿密に計算されたタイミングでインしてくるピアノ、ベース、ヴォーカリーズ的にたゆたう女の歌声。チリチリとしたノイズが鼓膜の内側の空気の圧まで調整するような繊細さと緊張感を漂わせる。仲間とハニー、すれ違うビッチズ。ドラッグでヨレるヒマはねえ、というルードなストイシズムと、リリックはため息混じり、ビートは日々の意味、と言い切る詩情。次いで“THE HAVIT”は低音を抜かれたドラム・パターンとループする効果音、腹を震わせるベースで軽快に疾走する。クラブは太陽で音楽は月、というリリカルなパンチラインとともに、ノー・ギミック、完全に言いたいことを言う宣言。

 「A Little Wind Cleans the Eyes…」。13世紀のイスラム神秘主義者、ジャラール・ウッディーン・ルーミーの詩「ライク・ディス」の一節を英女優ティルダ・スウィントンが囁く声で始まる“INDIGO”。「グラスに注いだビアみたいな日々」…それを「うたかたの日々 Mood Indigo」とするなら、ここにあるのは衝動まかせに快楽を追いかける青春を飲み干した後の、葛藤と内省の日々のスケッチだ。美しい恋人と愛する音楽、それ以外のものはすべて消え去っていい。そう言い切れる若い勢いを失って、不規則なブレイク・ビートの上を千鳥足で行ったり来たりする言葉。デューク・エリントンの往年の曲によればインディゴはブルーよりも深い憂鬱を意味する。焦燥と苛立ちから自己を解放するまでの自問自答のモノローグ。

 双璧をなす“BIRDS”は、もともとFREE BABYRONIAのビート・テープ『KOMAKI』に収録されていた同タイトルのインストゥルメンタルを再構築し、ラップをくわえたもの。「わたしになりたい」という回帰願望と「あなたになりたい」という変身願望が、アシッド・トリップ的な鳥の目の幻視を通じて結合される。イントロとアウトロ、そしてピアノのブレイクとともに混線するテレグラフは、タイトルの由来であるパブロ・ネルーダの英詩を伝えるゲリラ・レディオ。去年ついに倒れたフィデル・カストロとチェ・ゲバラは、1956年たった12人でシエラ・マエストラに上陸して始まったキューバ革命の途上、夜になると野営地で兵士たちにネルーダの詩を朗読して聴かせたそうだ。
 
 物騒なのは中盤の2曲。前曲からの鳥のさえずりをディープなベースラインとゆったりとしたブレイク・ビートがかき消す“KILLEME”。幻聴かと思うほどかすかに鳴らされるアコースティック・ギター。ドローン的な音像にのせて引き伸ばされ、それでも棘々しく尖る攻撃的な言葉。次は間髪入れずに威嚇射撃のような強烈なスネアが鼓膜を突き刺す“SHOOT-IN”。逃げ遅れた/あえて逃げ出さなかった人間に突きつけられるC.O.S.A.の16小節。ダセえDJ、ダセえMC、セルアウターをまとめてなぎ倒すタフな殺気と、愛やクルーという言葉の裏に貼りつく寂しさと孤独。「みんな違ってみんないい」とお互いの多様性を認め合って仲良くやれればいいのだけれど、このゲームのルールは「白黒以外必要ねえ」。フックで挑発するのはバンダナを顔に巻いたNERO IMAI。オラついた相棒二人のストレートさに煽られても、CAMPANELLAのラップはフリーキーさとナンセンスさを失わない。このあたりは外野がはやし立てる話じゃないから聴きたければ自分の耳で。

 寝静まったベッドタウンで意識を夜間飛行させる“BLACK SUEDE”以降は、“RELAX, BREAK”の言葉通り、アンビエント的なチル感やナーサリー・ライムを織り交ぜながらぐっとピースフルなムードに変化していく。今じゃUSも日本もビーフの勃発やリスペクトの表明はSNS経由で、便利な反面ずいぶん軽くもなったそのやりとりに「写真にいいね押していい気分に浸ると/なぜか遠くなった気がしたストリート」と正直な逡巡を告白する“NINE STORIES”。ぐにゃりと曲げられたギターの音色がブルース・シンガーのように歌う九番目の雲……そんな幸福な一夜の感覚を永遠に引き延ばすような“YUME NO NAKA”。肌寒い夜にコンビニの前で開ける缶ビールとくゆらすウィード。記憶を飛ばすほどの多幸感は暖かなグルーヴのハンド・クラップによるエンディングに着地する。

 スタンド・アローンでラストに待ち受ける圧巻の“OUTRO”は、ずいぶん前に“COLD DRAFT”というタイトルで配信されていた曲をそっけなく改名したもの。冒頭、きらめき陶然と遊んでいたエレピが、最初のキックの音を合図に意志を持って走り出す。フリークアウトする生のベースとRAMZAのマシンの腕が操るドラムによるコズミック・ファンク。仲間と女、背中を押してくれる歓声、それでもけして他人には触れられない影。吐き捨てるライムの怒りと焦燥の矛先はほかでもない自分自身に向けられ、ラッパーであり詩人であるひとりの青年のメンタルの肖像を彫刻する。たんにエモーショナルというのでもない。アルバムで最初にレコーディングされたというこの曲がすべての葛藤と成熟の出発点だ。

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 DJ クラッシュとDJ シャドウが1990年代に世界中にバラまいたビート・ミュージックとしてのヒップホップ、いわゆるアブストラクト・ヒップホップは、それ自体コンペティティヴ(競争的)な独自のバトル・フィールドを構成した。フリースタイルに端を発した去年のラップ・ブーム以降、バトルと言えばMCバトルのみが想起されるような風潮もあるかもしれないが、ヒップホップでコンペティションに晒されるのはラップだけじゃない、ビートもだ。そしてその熾烈なバトルはもちろんラップとビートの間にも勃発する。トラックに対して、インストゥルメンタルとしても通用する、というのはよく言われる褒め言葉だが、もっといえば、突出したビートは生半可なラップを拒絶する。鍛錬と引き換えに獲得した互いの自由と自由がぶつかり合い、挨拶がわりに口にするだけなら簡単な「リスペクト」という言葉の真の対価を要求する。

 ラップとビートの衝突から生まれる先鋭的な音楽的オリジナリティにくわえて印象的なのが、アートワークや楽曲に臆面もなく散りばめられた古今東西の文化的なコラージュ。ドラッグや喧嘩をやっていれば不良で読書やアートにハマっていればオタクで……なにもかもテレビ向けのキャラクター的なストーリーに落としこんでしまう向きにとってはどうか知らないが、無菌室で育ちでもしない限り、人間は薬物や暴力とも文化や知識とも、自分なりの基準で向き合いながらその人格をつくる。誰に媚びる必要も何を恥じる必要もない。トリップの経験だろうが詩だろうが映画だろうが、自分の血肉になったインスピレーションをすべて遠慮なくつむいで創られたこのアートは、どうにも魅力的だ。傷だらけの拳に光るリングや花束に忍ばされたナイフのように、喧嘩腰の啖呵にリリシズムがきらめき、美しい詩に血の味が混じる。

 「これは音楽、輩の手なら届かない」、「言葉で負けた際に出る手」というCAMPANELLAのラップを聴いて思い出したのは、「誰か殴るわけじゃなく歌詞を書く」というC.O.S.A.のいつかのリリックだった。それはアンセムを一緒に歌うとか、コラボするとか、そんなものよりもっと深いレベルでNEO TOKAIの人間たちが共振していることを教えてくれる。知らざあ言って聞かせやしょう、と居並ぶ男たちのケツを蹴り上げていたTOKONA-Xの豪放なメンタルは、彼が知ることのなかった青春の終わりを生き延びた後輩たちによって、強く、しなやかに受け継がれた。若くして倒れた巨大な背中を見ていたキッズたちが成長し、やがてその年齢を追い越したのだ。

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 現在の東海のこの熱は2010年代なかば、「アンダーグラウンド」という言葉を再定義するだろう。2000年代のハスリング・ラップの本格的な台頭以降あいまいになってしまったことだが、本来アンダーグラウンドとは知名度のあるなしとも、アウトロー的な犯罪性とも本質的には関係がない。ストリートのトラブルで負った傷を地上波でふてぶてしく晒すMC漢のスキャンダラスな態度を見ればわかるように、言ってしまえばギャングスタ・ラップとコマーシャルなショウビズとの相性は必ずしも悪くない。

 清貧主義やギャングスタ・メンタリティの根底にあるアンダーグラウンド・ヒップホップの精神性とはなによりも、インディペンデントであることだ。いまじゃ珍しいものではなくなったアーティストによる独自のレーベル運営という意味で日本のシーンにアンダーグラウンドの種をまいたTHA BLUE HERBのBOSS THE MCのかつての言葉を借りれば、それは「レコード会社の奴隷にならず自ら皿を作り/テレビやラジオに利用されずに利用し/自分だけのアイディアで金を作り/責任を持ち/各地にいる同じ志の仲間達と/イカレた音楽をデカイ音でならす」という独立不遜の哲学だ。

 知っての通り、北と東海とのあいだには因縁がある。今でも語りぐさになるほどのインパクトを持ったTHA BLUE HERBに対するTOKONA-Xのディス“EQUIS. EX. X”、あのトラックを提供したのはINDOPEPSYCHICSのD.O.I.だった。それにSLUM RCのコンピレーションに新たな生命を与えたBUSHMINDやDJ HIGHSCHOOL、MASS-HOLE、アルケミストのビート遺伝子が繋げたC.O.S.A.とKID FRESINOの昨夏の『SOMEWHERE』、そしてあの日のWWWのパーティに集結したNEO TOKAIの面々を迎えた東京のアーティストたち……。M.O.S.A.D.に衝撃を受けたかつてのCAMPANELLA少年は、東京のラッパーのCDをすべて売っぱらったらしい。しょうがない。これは生まれや育ちが違う、ともすればそれだけで拳を交える理由になる物騒なカルチャーだ。しかしそもそも名古屋のレジェンドであるTOKONA-Xその人は、少年期に横浜から東海へと流れてきた異人だった。ウータン・クラン由来の筆で描かれたNEO TOKAIの地図は、すでに地理的な環境の制約をはみ出し、都市と都市を越えた力強いユニティを産み出してもいる。

 実際、このアルバムはとても小さなコミュニティから生まれたレフト・フィールドなたたずまいながら、不思議なほど風通しがいい。「PEASTA」というタイトルは、桃花台にあるショッピング・モールの名だそうで、PEACHにFESTAをかけて作られたというなんとも言えないその造語のセンスは、たぶんいまの日本のニュータウン的な地方都市で育った人間にとってはどこか懐かしいものなはずだ。文化資本など一見まるで見当たらない場所に生まれ育ったキッズたちが、自分や仲間の目と耳、腕だけを頼りに創りあげたアウトサイダー・アート。郊外の子ども部屋やモールのたまり場に響く無邪気な笑い声が聴こえてくるようで、リリースからしばらく経ったいまでも何度も聴き返してしまう。

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 ここ最近熱っぽく口にされる日本のヒップホップの夜明け……やっと朝がきたのだとすればここ10年ほどは夜だったということだろう。だがその長い夜の時代、ひときわ光の射さない地方都市で鍛えられた言葉と音、そして耳は、あらゆる熱狂に浮つきはしない。去年はさんピンCAMPから20年ということで、その黄金時代の思い出が口々に語られたけれど、あの日凄まじいステージングを見せたという弱冠17歳のTOKONA-XとDJ刃頭の姿はその後の映像作品からは完全にカットされている。同じくさんピン以降の東京に敵対心むき出しで登場したTHA BLUE HERBにせよ、日本の地方都市には熱に沸く中央に冷水を浴びせ、強烈なオルタナティヴを突きつける伝統的なマナーがある。

 「オルタナティヴ・ヒップホップなんてものは存在しない。なぜならヒップホップの唯一のオルタナティヴとして知られているのは完全な沈黙だけなのだから(There’s no such thing as Alternative Hip hop Because the only known Alternative to Hip hop is dead silence)」。スワヒリ語で「鳥のように自由」という意味の名を持つミシェル・ンデゲオチェロのファースト・アルバムのインナースリーヴにはそんな書き出しで始まる檄文が刻まれている。「オルタナティヴ」という言葉が切実に求められるのは必ず、ある文化がメイン・ストリームに溢れだし、バブルのように巨大化するときだ。しかし、ヒップホップはオルタナティヴの存在を認めず、対抗的なエネルギーをあくまでその内部に抱えこむ……それじゃヒップホップって?

 バイセクシャルであり、コンシャスなアクティヴィストであり、そして異彩のグルーヴを生み出すベーシスト/コンポーザー/シンガー/ラッパーであるンデゲオチェロの痛烈な檄文は、オルタナティヴ・ヒップホップの存在否定というよりも、むしろ本来オルタナティヴという名で呼ばれるものこそが真にヒップホップの名に値するのだ、と言わんばかりに、次のように締めくくられる。つまりヒップホップとは、「デジタルにグラインドされ、テクノ・モルヒネを生み出すジェームズ・ブラウンの骨盤」……「最高にぶっ飛んでいるときの感覚喪失に対する唯一の解毒剤」……なによりそれは「ドープ認識学/ドープノロジー(DOPE-KNOW-LOGY)」である、と。

 なるほど。たとえ誰もが動画やサイトのヴュー数、視聴率とセールスばかりに目を奪われていたとしても、ヒップホップ・サイエンスの審美眼はいつだってシンプルきわまりない。それは誰が一等ドープかを知るための科学(DOPE-KNOW-LOGY)だ。あらゆるライムとビートはオルタナティヴという冠に満足せず、あくまで文化の正統な後継者の地位を要求する。オルタナティヴ・ヒップホップが存在するとすれば、それは商品ラベルに書きこまれるジャンル名なんかじゃなく、現状の秩序を転覆(Revolve)しようとする、そのエネルギーのことだ。

 CAMPANELLAはつい先日JJJプロデュースでEGO WRAPPINの中納良恵とのジョイント曲“PELNOD”をリリースし、シーンの重鎮YUKSTA-ILLは待望のフル・アルバム『NEO TOKAI ON THE LINE』をドロップ、さらにはMC KHAZZの新譜も予告されている。2017年もNEO TOKAIからの轟音は止みそうにない。ここには確かに、馴れ合いも、ましてや沈黙も拒否する言葉と音がある。なにがドープか知っている人間は、東海の地殻変動からけして目を離せないはずだ。

Kid Cudi - ele-king

「と、ここまで書いて深沢七郎の『東京のプリンスたち』を読みかえして笑ってしまう。この小説に登場する五〇年代末の、面倒臭いことはほとんど何も考えずプレスリーのリズムでからっぽの頭の中をいっぱいにして、細いズボンをはき、体を小刻みに揺っていた高校生たちも、今は六十四、五歳だ。今も何も考えずに生きているだろうか」 金井美恵子『目白雑録2』2006

 Cudi is back!!!
 アメリカ・アマゾンではこんなタイトルで始まるレヴューが新作『Passion, Pain & Demon Slayin'』に付いていましたがキッド・カディは今までどこかへ行っていたわけでもなく、2009年にカニエ・ウェストの〈GOOD Music〉からデビュー作『Man on the Moon: The End of Day』を出して以降、スタジオ・アルバムだけで6枚もあってとくに寡作な人でもない。ないですが、キッド・カディと言えば2008年のデビュー・シングル「Day 'n' Nite」に尽きるかも、という辺りからして少なくとも日本では、最初に打ち上げた大玉花火の残像みたいな扱いかも知れない。

 自分が最初にカディを聴いたのは2013年発表の3作目『indicud』で、そこから遡って耳にした“Day 'n' Nite”よりも同アルバム収録の“Enter Galactic (Love Connection Part I)”や“Up Up & Away”の方がずっと好もしい印象だったのはいまでも同じですが、カニエ・ウェストの“All of the lights”(2010)を始めとした幾多の客演曲も含め、この人は過去作品を一通り聴いてみても嵌まると凄いんだけどダメな時は超残念、といった余りの玉石混淆ぶりが面白く、かつ評価を定めづらいところではある。

 さてこの、歌詞データベース・サイト「Genius」が制作したこの動画は『Passion, Pain & Demon Slayin'』からカディがハミングしているパートだけを集めた、新作及び作家紹介としてはこれに尽きるダイジェストだ。ハミングに限らず、とりわけ彼が旋律を下降していく時に発生する低いノイズの禍々しく官能的な豊穣さは、ちょっと他に思い当たらない類いの感触がする。ただし自分のノドを楽器と見做して日々鍛錬、といったストイックさは微塵も感じられないので行き当たりばったりのだらしない感じが満載だが、例えばちょっと前に大喧嘩してたらしいドレイクの入念に計算された(スタイルとしての)だらしなさとキッド・カディの「だらしなさ」は似て全く非なるものであって、公式音源でさえも音程が妙に外れたままの曲が結構ある辺りからして、この人のだらしなさ加減はミキシングやポスト・プロダクションではどうにもならない天然の――要は獣が唸っているかのようなのだ。
 アルバム冒頭の“Frequency”からして唸っている。暗すぎてカディの姿がよく見えないPV(ほとんど珍獣観察番組である)は自分で監督しているのでその辺りの獣性には自覚があるように思えるが、2曲目の“Swim in the Light”と来ると、聴くほどにこれはひょっとするとフランク・オーシャンの“Swim Good”を遥か遠くに踏まえ、FOが剥き出しにしてみせた傷に5年くらい経って貼られた絆創膏のなのではないかと思えてくる。

 例えばこんな一節があったりする:
 “You could try and numb the pain, but it'll never go away”
 君がその痛みを宥めようとしても、消え去りはしない

 最後の「go away」をまた「ゴウオウオウオウオウオウオウオウウェイ」とぐざぐざに唸るのではありますが、カニエ・ウェストという(現時点ではひとまず「調子の悪い方の人グループ」に入れざるを得ない)人を縦軸に取れば、この2人はある種の好対照でもあり、キッド・カディの新作を聴きながら自分の頭の中で「次」に浮かんでくるのはフランク・オーシャンの『nostalgia, ULTRA.』(2011)だったりする──こんなのはもうFOが5年前にやったことだよ、と批判したいのではない。ある作品からまた別の作品へとバトンが受け渡される為に必要な時間はどれだけ長くてもあり得る、ということである。ラストに置かれたアッパラパーなパーティー・チューンが象徴するように、例えご本人は何も考えてない、としてもである。


Kid Cudi “Surfin' (ft. Pharrell Williams)”

Eccy - ele-king

 Eccy復活のニュースが意外なところからやって来ました。2ndアルバム『Blood The Wave』以来7年ぶりのフルアルバム『NARRATIVE SOUND APPROACH』をリリースするようです。しかも元銀杏BOYZの安孫子真哉が主宰する〈KiliKiliVilla〉から。Eccyは以前から銀杏BOYZのリミックスやプロデュースをしていたから違和感こそないものの、このニュースには驚きましたね。〈KiliKiliVilla〉やるなあ。確実にこの2017年、目が離せないレーベルの一つです。
 今回のニューアルバムにはShing02、そして超久しぶりのあるぱちかぶといったメンツから、泉まくらやどついたるねんといった少し変化球な人たちも参加していて、特にどついたるねんが参加している「Sickness Unto Death」は、いい意味で「今これをやるか!」といったオールド・スクール・チューンで思わずニヤリとしてしまいますよ。
 アルバムのリリースに先駆けて、「Lonely Planet feat. あるぱちかぶと」の7インチもリリースされているようです。アルバム収録曲のMVが数曲公開されているので、お見逃しなく。


Eccy - Lonely Planet feat.あるぱちかぶと

アーティスト:Eccy
タイトル:『Narrative Sound Approach』
レーベル:KiliKiliVilla
発売日:2月22日
品番:KKV-039
価格:2,160円(税込)

TRACK LIST :
01. Splendor Solis
02. 天蓋のオリフィス feat. Shing02
03. After Midnight
04. Sickness Unto Death feat. どついたるねん
05. Modular Arithmetic
06. The Fool (Upright) feat. Candle,Meiso
07. Odd Eye
08. Blood feat. 泉まくら
09. Open Face Spread
10. Lonely Planet feat. あるぱちかぶと
11. あのころ僕らは

[ご予約はこちら]
AMAZON:https://www.amazon.co.jp/NARRATIVE-SOUND-APPROACH-ECCY/dp/B01MSYB1HF


Eccy/エクシー
1985年生まれ、東京育ち。2007年10月、Shing02をフィーチャーしたデビューシングル『Ultimate High』でHip Hopシーンに新しい感性で切り込み、デビューアルバム『Floating Like Incense』が新人としては異例のセールスをあげシーンにその地位を確立。その後、環ROYとのコラボレーションアルバム『more?』、toe柏倉やACOなどをフィーチャーした実験作『Narcotic Perfumer』、2ndアルバム『Blood The Wave』などをリリース。P-Vineから発売された『Loovia Mythos』収録曲はRas GのBTS radio mixでも使用された。Low End Theory Podcastでも曲が取り上げられるなど、活躍の場を世界に広げている。2011年にはSam Tiba & Myd(Club Cheval),Subeena(Planet Mu)をリミキサーに迎えた『Flavor Of Vice EP』を発売。Produceワーク多数。RemixワークもShing02から銀杏BOYZまで多岐に及ぶ。Fuji Rock Fes ’07,’08,’09,’12、Sonar Sound Tokyo’12、Outlook Fes Japan Launch Partyなどに出演。2014年にIRMA Recordsよりリリースされた「Into The Light / Dark Fruits Cake」はZomby(XL Recordings)などのアーティストから幅広い支持を得る。NIKEのランニング用アプリ「NIKE RUN TRACK」、Panasonic「Neymar Jr. Chant」に楽曲提供。米COMPLEX MAGによるThe Best Of Japanese Hip-Hop 25 Artistsに選出。2015年、銀杏BOYZ「Too Much Pain(The Blue Heartsカバー)」トラックプロデュース。2016年、銀杏BOYZ公式ライブ映像作品「愛地獄」OP、ED曲を楽曲提供。

Clap! Clap! - ele-king

 1990年、デリック・メイが「ザ・ビギニング」というシングルを出したとき、まさかそれが本当に「はじまり」だったなんて誰も信じちゃいなかった。ぼくもそうだった。『ブラック・マシン・ミュージック』を書いているときもまったく予想できなかったな。ドラム・マシンが、いずれはその多くが、アフリカのリズムすなわちパーカッションをプログラムされるようになるとはね。
 イタリア人ジャズ・ミュージシャン、クラップ!クラップ!は、ビートの蒐集家にしてアフリカン・パーカッション&アフリカ楽器の魅力ある音色の混合者、かつファンタジーの語り部である。彼は、ブリストルのレーベル〈ブラック・エイカー〉からの数枚のシングルにおいて、ベース+ジュークつまりハウスよりもテンポが速めの、電子音によるシャンガーン的アフリカン・パーカッションというコンビネーションの妙技を披露し、脚光を浴びた。
 そして、2014年のファースト・アルバム『タイー・ベッバ』では、リズムにさらに自由度を与え、ゆるめの曲も交えながら全体をある種ファンタジーに変換した。それはネガティヴな小林の精神を照らす光となり、現実からの逃避を手助けし、深夜帰りの病んだ気持ちに優しく作用したのである。ゆえに『タイー・ベッバ』は、アナログ盤のみのリリースだったのに関わらず評判となり、高まるニーズに応えるべく日本ではCD化され、クラブ系では近年のベストセラーの1枚となった……どころの騒ぎではない。ポール・サイモンの2016年のソロ・アルバムにトラックを提供するまでに至った。(ポール・サイモンはその昔『グレイスランド』で南アフリカのレディスミス・ブラック・マンバーゾを起用したぐらいで、それを考えれば……という向きもあるが、にしてもこれは限定で発表されたような真性のアンダーグラウンド・ミュージックなわけで)

 本作『ア・サウザント・スカイズ』はセカンドであり、大躍進後の最初のアルバムだ。前作同様、別の時間軸からの音楽であり、寒々しくも荒廃した世界の住人の心を温める音楽、夢への旅立ちを助ける音楽ではあるが、前作よりもぐっと洗練された作品となった。間口は広がり、ひと言で言えば聴きやすいアルバムだ。いくつか曲名を挙げるなら、“Hope”なる曲ではポップ・センスを、“Ode To The Pleiades”ではエレガントなダウンテンポを、“Lunar Ensemble”ではアフロ・ハウス・フュージョンとも呼べる展開を見せている。完成度は確実に上がっている。
 CDには各曲に付けられた物語が記されている。宇宙の神話、ひとりの女性の夢とアフリカの往復──そのファンタジーは、希望がことごとく揉み消されるこの現実への抵抗の表れであろう。重力も忘れて、この音楽に身を委ねることで現実の惨さを忘れることは、音楽ファン冥利につきる。なお、2曲目にフィーチャーされているボンゲジウェ・マバンドラは、日本盤リリース&来日もある南アフリカのシンガー・ソングライター。ほかはよくわかりませんので、わかり次第追って報告したいと思います。

AHAU - ele-king

作業中に聴いている音楽の中から

皆様こんにちは
1976年、神奈川生まれ東京在住。アーティスト活動をさせて頂いているAHAU(アハウ)といいます。
1996年から都内を始め関東周辺、最近では神戸や京都などで行われている音楽のチラシやフライヤー、グッズなどで関わらさせて頂いています。

現在、2月10日(金)から19日(日)まで神奈川県二宮町で行われている「第一回 湘南二宮 菜の花アートフェスティバル」に参加しています。
二宮駅北口徒歩1分にあるVRGI CAFEというカフェと保育室が一つになった素晴らしいお店でAHAU EXHIBITION「AHAU’S HEART」と題し作品展示を行っています。
額装作品、作品集、Tシャツ、マグカップ、ポストカードの販売も行っています。
お食事やコーヒー、お酒もありますので、ご休憩などに利用して頂けたら幸いです。
土日は11:00から17:00まで、平日は11:00からランチ終了まで営業しています。
最終日は1日在廊しています。参加を記念してイベントも用意させて頂きました。

入店された方全員もれなくオリジナルポストカードプレゼントいたします。
オーダー先着5名様に、オリジナルTシャツ、オリジナルマグカップ、作品集のどれでも一つプレゼントいたします。
オーダー100人目の方に、店内にある額装作品どれでも一つプレゼントいたします。
そのほか駅周辺の17カ所の会場では36組のアーティストの方々も趣向を凝らした様々な催し物を行っています。

ご来場の皆様に楽しんで頂けるようアーティストと地元商店街が一つになって盛り上げていきます。
二宮の美しい自然や風土、産物や歴史ある建造物も大変素晴らしいので、
東京駅から電車でも車でも1時間10分ほどなので、ぜひぜひ散歩やドライブに遊びに来てください。
よろしくお願いいたします。

AHAU

作品紹介:
https://www.instagram.com/explore/tags/ahaudesign/

展示:
2016.11「The Flyer 巡回展」BnA HOTEL Koenji(東京/高円寺)
2016.5「The Flyer」udo(東京/渋谷)
2015.9「ADVENTURE OF UNI」LIBRARY RECORDS(東京/東高円寺)
2015.3「ROOM」TERRAPIN STATION(東京/高円寺)
2012.11「ASSERTONESELF」THERME GALLERY(東京/都立大学)
2009.11「STROKE BOOK2」BE-WAVE(東京/新宿)
2008.2「STROKE BOOK」bonobo(東京/千駄ヶ谷)
2007.4「MUSIC VIEW」Cafe KING(現在Cafe FACTORY)(神奈川/鎌倉)

作品集:
2012.11「ASSERTONESELF」

湘南二宮町:
https://www.town.ninomiya.kanagawa.jp

場所:
VEGI CAFE & てんとう虫保育室
〒259-0123 神奈川県中郡二宮879-19
0463-68-0006

Clark - ele-king

 オウテカが『Confield』を出し、エイフェックスが『Drukqs』を出したまさにその年に、『Clarence Park』で鮮烈なデビューを飾ったクリス・クラーク。IDMの礎を築いた世代が路線を変更したり長い沈黙に入ったりした時期に、まるでその空白を埋めるかのような形で綺羅星のごとく現れたのがクラークである。当時日本では彼のことをRom=Pariが高く評価していたけれど、以降クラークはコンスタントに……うん、少しは休んでもいいのよと心配になるくらいコンスタントに作品を発表し続け、その成果もあってか、この国における彼の影響力はいまでも衰えていない。たとえば、先日戸川純とともにアルバムを制作したVampilliaも、リミックスという形でクラークとコラボレイトしている。
 そのクラークの新作が4月7日にリリースされる。『Death Peak』というタイトルや、「危険でおそろしい頂にたどり着き、あらゆるものが壊れた光景を眼下に見渡す」という本人のコメントから類推するに、来るべき彼のニュー・アルバムは、2016年という暗い世相を反映したものになっているのではないだろうか(昨年彼が国民投票の結果を嘆いていたことを思い出すべし)。
 ともあれ、いまは公開された新曲“Peak Magnetic”を聴きながら、「破壊を超えた先の絶景」とやらがいったい何なのか、ああだこうだと想像しておこう。

破壊を超えた先の絶景……
3年振り待望のスタジオ・アルバム『DEATH PEAK』完成!!!
新曲“PEAK MAGNETIC”を公開!

自身の名を冠した前作『Clark』から3年、サウンドトラック制作や舞台音楽、オーケストラへの楽曲提供など、〈Warp〉きっての多作家として活躍の場を広げ、さらなる進化を遂げたクラークが、自身の独創性を爆発させた待望の最新作『Death Peak』を携えシーンに帰ってくる。アルバム完成の発表と合わせて新曲“Peak Magnetic”を公開!

Clark - Peak Magnetic
https://soundcloud.com/throttleclark/peak-magnetic

“Peak Magnetic”では、ここ数年で最も明るく、アップビートなクラークを聴くことができる。そのほとばしるエネルギーこそ、彼の新たなサウンドを象徴している。
- Pitchfork

デス・ピーク(死の山頂)というタイトルは2016年の8月からずっと考えていた。完璧だと思ったよ。まるで呪文のように『デス・ピーク、デス・ピーク、デス・ピーク』と繰り返していた。この山の出発地点は、穏やかに蝶の舞う牧草地が広がっている。でも最後には危険でおそろしい頂にたどり着き、あらゆるものが壊れた光景を眼下に見渡すことになるんだ
- Clark

10代で〈Warp〉と契約を果たし、いまやレーベルの象徴的存在にまで成長したクラーク。前作『Clark』リリース後も、BAFTA(英国映画テレビ芸術アカデミー)にノミネートされた海外ドラマ・シリーズ『The Last Panthers』の劇伴や、革新的な作品の上演で知られるヤング・ヴィク・シアターで上演された作品『マクベス』の舞台音楽、さらにLAを拠点とするオーケストラ、エコー・ソサエティーへの楽曲提供など、そのサウンドはさらに進化を続けている。また「不健全で強迫神経症じみた人格を潜在的に備えていればいるほど、作品がより優れたものになる」と語るクラークの内なる狂気とのアンバランスさが、いまだ体験したことのないようなコントラストを生み出し、聴く者の聴覚を完全に支配する。また今作での新たな試みとして、自身が「最も完璧なシンセサイザー」と評する人間の声を、収録曲のほとんどに取り入れ、柔らかで美しいテクスチャーをもたらしている。

クラークのキャリア8枚目となる最新スタジオ・アルバム『Death Peak』は、4月7日(金)世界同時リリース! 国内盤にはボーナス・トラック“Licht (Pink Strobe Version)”が追加収録され、解説書が封入される。初回限定生産盤はデジパック仕様となる。iTunesでアルバムを予約すると公開された“Peak Magnetic”がいちはやくダウンロードできる。


label: WARP RECORDS / BEAT RECORDS
artist: CLARK
title: DEATH PEAK
release date: 2017/04/07 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-543 定価 ¥2,200 (+税)
初回限定生産盤デジパック仕様
ボーナストラック追加収録 / 解説書封入

[ご予約はこちら]
amazon: https://amzn.asia/2dFmhIQ
bartkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002147
iTunes Store: https://apple.co/2kVM3F6

TRACKLISTING
01. Spring But Dark
02. Butterfly Prowler
03. Peak Magnetic
04. Hoova
05. Slap Drones
06. Aftermath
07. Catastrophe Anthem
08. Living Fantasy
09. Un U.K.
10. Licht (Pink Strobe Version) *Bonus Track for Japan

ROCKASEN - ele-king


 ROCKASENは、DJ/プロデューサーのBUSHMINDの作品にもフィーチャーされている千葉出身のヒップホップ・グループで、2010年にリリースされ、評判となったファースト・フル・アルバム『WELCOME HOME』はいまでも日本語ラップ・シーンのなかで独特の個性を放っている。彼らの面白さはまず音楽的な幅広さにあるが、それはアメリカの物真似ではなく、彼自身の折衷主義によって成り立っている。独特の浮遊感があり、テクノやハウス・ミュージックの感覚もそこには含まれる。言葉は、自己主張するものではない。なにげない日常描写が彼らのリアルを伝達するが、どこかつねに半分夢の中なのだ。
 そして、その新作、つまりセカンド・アルバムは無料配信されることになった。これがまたROCKASENらしく、メロウで柔らかさのある、本当に心地良くポジティヴで、キャッチーでありドリーミーであり、クオリティの高い作品なのだ。アートワークも良いし、これが本当に無料でいいの?
 というわけで、この機会にぜひDLして聴いて欲しい。

ROCKASEN
Two Sides of
ASSASSIN OF YOUTH
配信開始日:2017年2月17日(金)
配信サイト:bandcamp(https://rockasen.bandcamp.com) / AWA / Apple Music / Spotify


01. Intro A *
02. Always There
03. Deez
04. Till Up
05. Dokomademo
06. Intro B
07. Good Catch
08. Hard Drive
09. Strain
10. Dot B

Produced & mixed by Bushmind
*Produced by Issac & Bushmind
Mastered by Naoya Tokunou
Artwork by Wack Wack

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