「NotNotFun」と一致するもの

Sons Of Kemet - ele-king

嵐がおれの海の旅の目覚めを祝った アルチュール・ランボー

 これは海で生まれた音楽である。カリブ海の岬からアフリカの岬へと往復される航路のなかで……。ことにカリブのリズム、ソカとカリプソの灼熱のリズムがアルバム前半の祝祭性をいっきにあげる。そしてエジプトの黒い大地=ケメトの子供たち(サンズ・オブ・ケメット)の新作は、『あんたらの女王は爬虫類( Your Queen Is A Reptile)』なる題名をひっさげて、アメリカの名門〈インパルス!〉からリリースされる。
 UKジャズとは、雑種であることを良しとする。ジャズ警察をとっとと無視し、ジャズ・ファンと呼ばれる人たちの耳を堂々と裏切る。それはジャズ・ウォリーズ以降の大いなる道筋だ。ジョージ・オーウェルの『1984』における“党”は、現在を支配するがゆえに未来も過去もコントロールするが、ジャズ・ウォリーズはその現在を転覆したことで、未来も過去も自分たちでリライトすることに成功した。いまそのとき生まれたであろう未来──ときにそれはやかましい未来、騒々しい未来だが──の航路を旅しているのがシャバカ・ハッチングスである。もし、この現在において、本当にUKジャズなるモノが勢いづいているのだとしたら、その中心にいるのは33歳のカリブ系イギリス人のサックス奏者にほかならない。

 サンズ・オブ・ケメットは、シャバカの手掛けるプロジェクトのひとつで、ふたりのドラマー(トム・スキナー+セブ・ロチフォード)とひとりのチューバ奏者(テオン・クロス)のクアルテットを基盤としている。すでに2枚のアルバムをリリースしているが、本作と併せて聴いてみるべきはセカンド・アルバム『我々が何をしにここに来たのかを忘れないために( Lest We Forget What We Came Here To Do)』だろう。
 というのも、そのアルバムの最後から2番目の曲名が“アフロフューチャリズム”であるからだ。その前の曲がアフリカ系の女流SF作家の名を曲名にした“オクティヴィア・バトラーの長い夜”。曲名を知って曲が聴きたくなるアーティストは、このようにごく稀にいる。

 『ユア・クイーン・イズ・ア・レプタイル』の曲名はすべてが“My Queen is ●●”となっている。●●のところに入るのは、すべてアフリカ系の女性たちの名前だ。それはアンジェラ・デイヴィスのような(元)活動家の名前から、指導者、先駆者、あるいはハッチングスの祖母の名前にまでいたる。不勉強さゆにえ知らない名前ばかりだが、すべてが実在している“女性たち”の名前だ。そう、ぼくはぼくの不勉強さゆえに知らない/見えていない名前は、オーウェルの『1984』にならって言えば、党が支配する現在が示す歴史ではそれほど重視されていない名前かもしれない。だからこそやらなければならない。ハッチングスは、党の支配に逆らって神話を創出しなければならない。

 それにしてもこの音楽はいったい何なのか。カリブ海のリズム/アフロビートの壮絶なる混交、それはひとつには、この音楽が完璧にダンス・ミュージックであることを示している。地下で催される政治集会か、あるいは森の奥深いところか、そしてサックスとチューバの旋律は、ブルージーなジャズとは別のところから聴こえてくる。それはどこなのだろうか。その曲“マイ・クイーン・イズ・エイダ・イーストマン”では、かつてLVとダブステップ作品を制作している詩人のジョシュ・アイデヒンがマイクを握る。支配者たちへ宣戦布告である。そして“マイ・クイーン・イズ・マミー・フィップス・クラーク”で、ハッチングスはレゲエのサウンドシステム文化をこの名状しがたい神話的ジャズに接続させる。

 コートニー・パインがUKジャズに持ち込んだ大きなものは、ジャマイカのサウンドシステム文化だった。よく知られるように、キング・タビーの実験的なダブ・ミキシングは、彼の芸術的野心によってうながされたわけではない。ダンスホールに集まった人たちをどれだけ喜ばせる/驚かせるかという(経済的に不自由な人間の)娯楽的探求心によってもたらされている。まずはそれがひとつ。
 さらにもうひとつの重要点は、サウンドシステム文化とは音を電気的に増幅し、加工することだ。アコースティックを前提とするジャズ演奏において、これはある種の禁じ手だろう。しかしながらUKジャズという雑種においては、むしろこの手を使わずにはいられない。“マイ・クイーン・イズ・マミー・フィップス・クラーク”ではかつてMCレベルの名で活躍したコンゴ・ナッティがマイクを取って、この素晴らしい混交にエネルギーを注いでいる。そして、モーゼス・ボイドとエディー・ヒックスという、まさにいま旬のドラマーふたりを交えた“マイ・クイーン・イズ・ハリエット・タブマン”はさらにすさまじい情熱で大西洋を渡り、速度を上げて航路を運行する。そう、これこそポール・ギルロイが描いた航路の音楽と言えよう。
 シャバカ・ハッチングスは、しかし、コートニー・パインやジョン・コルトレーンばかりを聴いてきたわけではない。彼は若い頃、スティーヴ・ベレスフォードやエヴァン・パーカーとも出会い、フリー・ミュージックについての教えも受けている。その流れでセシル・テイラーを聴き込んでいる。そうした背景が、彼の音楽をシンプルなジャマイカン・ジャズへとは向かわせないのかもしれない。“マイ・クイーン・イズ・アンナ・ジュリア・クーパー”から“マイ・クイーン・イズ・アンジェラ・デイヴィス”へと、彼らの即興性は高まっていく。
 かつてはアンダーグラウンド・レジスタンスも曲の主題にした逃亡奴隷の女性リーダー/ジャマイカの国民的英雄の名を冠する“マイ・クイーン・イズ・ナニー・オブ・ザ・マルーンズ”は、過去を照らし出しながら大らかな空気を放流する、言うなればナイヤビンギのアンビエント変異体だ。続く“マイ・クイーン・イズ・ヤァ・アサンテワァ”では、ふたたびモーゼス・ボイドとエディー・ヒックスが加わり、ハッチングスは女性サックス奏者のヌビア・ガルシアと共演する。イギリスの植民地主義と闘った西アフリカの女王の名前を冠するこの曲は、彼女の抵抗を讃えているのだろう、ハッチングスとガルシアの勇ましくも美しいメロディが絡み合っている。
 南アフリカの活動家の名前を冠した“マイ・クイーン・イズ・アルベルティーナ・シスル”で、アルバムはそしてまた激しさを増していく。打ち鳴らされるカウベルに導かれるかのように、アルバム前半のソカのリズムは取り戻され、最後の曲“マイ・クイーン・イズ・ドリーン・ローレンス”へと繫がっていく。1曲目でフィーチャーされたジョシュ・アイデヒンがここでもMCを務める。それはアルバムが怒りを持って締められることを意味しているのだろうか。シャバカ・ハッチングスは、感情の火の粉を降らせはするが、無駄にそれを引きずることなく、すぱっと音を止め、そしてリズムだけを走らせる。

 『ユア・クイーン・イズ・ア・レプタイル』は、100%政治的なアルバムであり、アフロフューチャリズムであり、ブラック・アトランティックである。そして、USの名門ジャズ・レーベルからのリリースとなるそれは、UKジャズという雑種の気高さをこれでもかと主張する。大海原を航海しながら、党の支配や思考警察に刃向かいまくる。未来を描くために。

Alva Noto - ele-king

 本作『UNIEQAV』は、カールステン・ニコライの新レーベル〈ノートン〉におけるカールステン・ニコライ=アルヴァ・ノトによる初のソロ・アルバムであり、同時に08年の『UNITXT』、11年の『UNIVRS』から続いてきた「UNI」シリーズの完結編でもある。

 ここで「UNI」シリーズについて簡単に説明しておこう。まず、00年代中盤以降のアルヴァ・ノトが〈ラスター・ノートン〉で展開した連作シリーズはふたつあった。ひとつは「UNI」シリーズ。もうひとつは「ゼロックス」シリーズである。「ゼロックス」シリーズは07年に「Vol.1」、09年に「Vol.2」、15年に「Vol.3」が発表され、このシリーズも三作目で一区切りをつけたようだ。ゼロックスの名前のとおり「コピー」をテーマとしたアンビエント・ドローン連作である。
 対して「UNI」シリーズはリズミックなトラックを中心に収録するシリーズだ。発端は「アルヴァ・ノトが数十年前に東京のクラブ“UNIT”にブッキングされた際、その環境に応じたサウンドを作り出そうとしたのがきっかけ」という。つまり最初から「クラブユース」のトラックであることを目指していたようである。
 同時に『UNITXT』の後半部分で聴かれるように、音素からノイズ領域に還元された音響もサウンドの特徴を形成していたことも大きな特徴であった。いわばリズム/ノイズという音楽・音響の構成要素を素材の状態から再蘇生するように突き詰め、サウンド/トラックの生成・構成・構築を行っているのだ。
 その意味で「UNI」シリーズは00年代初期までの初期のサイン派のリズミックなコンポジションによるウルトラ・ミニマルな電子音響の流れにあるシリーズともいえる。コピー/生成という「ゼロックス」シリーズに近いテーマ性を読み込むことも可能だろう。

 新作『UNIEQAV』においては、そんなカールステン・ニコライのリズム/ノイズの生成・構築が洗練の極を迎えていた。かつての過激なまでのウルトラ・ミニマリズムは影を潜め、実にエレガントで端正なテクノ・トラックである。細やかなリズム、高密度な低音、ミニマムな電子ノイズなどが、ときにダイナミックに、ときにしなやかにコンポジションされ、聴き手を音響の渦の中に巻き込んでいく。グリッチ・サウンドを経由した10年代後半的な「モダン・テクノ」といっても過言ではない見事なトラックだ。

 この『UNIEQAV』では、そんなモダン・テクノ的なマシン・グルーヴに加えて、「ゼロックス」シリーズ(特に「Vol.3」)や、坂本龍一との共作である映画『レヴェナント』のサウンドトラックなどにあった音楽的な和声感覚もそこかしこに埋め込められてもいる。たとえば「ゼロックス」『レヴェナント』的な持続音で幕を開ける“Uni Mia”、その途中から鳴り始める「二つ目のコード」のように。
 加えて「声」の導入も「UNI」シリーズの重要な要素である。カールステン・ニコライが「声」をトラック内に本格的に用いたのは、おそらくは「UNI」シリーズからのはず。そして「UNI」シリーズの「声」といえば、フランスの音響詩人アン=ジェイムス・シャトンである。
 彼は〈ラスター・ノートン〉から11年に『Événements 09』、2012年にアルヴァ・ノトと、長年のコラボレーターであるアンディ・ムーアらとの共作で『Décade』をリリースしている。二作とも途轍もなくクールなヴォイス+電子音響だ。
 そのふたりの最初の共作トラックが収録されたアルバムが、08年にリリースされた『UNITXT』であった。カールステンの電子音響トラックに、アン=ジェイムス・シャトンの無機的な質感の声がこれほどの見事なマッチングを聴かせるとは思いもよらなかった。それは電子音響ヒップホップとでも形容したいほどの「クールさ」だが、何より世界の満ちている資本主義社会的な記号=言葉を反復するヴォイスは、「UNI」シリーズが内包していた世界認識論を体現していた。じじつ、11年の『UNIVRS』にもアン=ジェイムス・シャトンは参加し、三文字の企業・団体名/ロゴの英字を繰り返し発声し、アルバムのメッセージを強く体現していた。
 それは『UNIEQAV』の“Uni Dna”でも同様だが、前作までとは反対に、まずはトラックが先行制作され、そこにアン=ジェイムス・シャトンのヴォイスが重ねられたらしい(曲名どおりDNA情報に関するワードだ)。結果、アン=ジェイムス・シャトンによる「声」のリズムとアルヴァ・ノトのトラックのリズムの関係性が、ふたりのこれまでのコラボレーションから反転しているのだ。

 ではカールステン・ニコライは、この『UNIEQAV』ではトラック優先で、ビートの可能性を追及したかったのだろうか。しかしそれはビートというより、ある法則で区切られた音の線=リズムというべきかもしれない。「声」もまた法則で区切られた音の分割=リズムである。じじつ『UNIEQAV』におけるリズムは、“Uni Clip”などで聴かれるようにキーボードをタイプする音にも聴こえるし、“Uni Sub”のベースの3連などは、アン=ジェイムス・シャトンの声のようにも聴こえる。横溢する分断されるリズム=音の線。

 リズム。ノイズ。分断される音。これらが交錯する本作を聴いていると、不意にカールステン・ニコライが育った「東ドイツ」のことを考えてしまった。たとえば、彼が少年期などに耳にしていた東ドイツにおけるラジオ放送などを。
 私見だが、この最先端の電子音響の本質には、どこかカールステン・ニコライの記憶の層が織り込まれているように聴こえてならない。もしかすると「東」に住むカールステン少年・青年は、(おそらくは検閲によって)消えかけて(分断された)ラジオ放送を耳にしていたのではないか、と。思えば「ゼロックス・シリーズ」の「Vol.3」もまたどこか記憶の旅のようなアルバムあったが、本作『UNIEQAV』も音楽のフォームは違えども、やはり、同様のものを感じてしまった。
 サイン・ウェイヴ、グリッチ。ノイズ。マシン・リズム。90年代以降、ヒトから離れたマシン/エラーな音響作品を作り続けてきたカールステン・ニコライだが、00年代後期から10年代以降のシリーズ/アルバムには、彼の幼年期の記憶/人生も結晶しているようにも思えるのだ。20世紀後半、東ドイツの記憶。モダニズム建築。放送。ノイズ。音響。リズム。
 そう、知覚を圧倒するテクノロジーの交錯による最先端電子音響/モダン・テクノ『UNIEQAV』が放つマシニック・リズムのむこうには、ヒトの記憶が、まるで光のように交錯し、反射しているのだ。


IVY LAB, IKONIKA - ele-king

 〈ハイパーダブ〉からの作品で知られるIKONIKAが来日します! 共演は、同じくUKベース・ミュージックから IVY LAB、日本からは注目のDJ/プロデューサー、LISACHRIS(リサクリス)。ぜひ注目しましょう。

CIRCUS presents IVY LAB, IKONIKA
出演日 2018/5/18(fri)
場所 CIRCUS TOKYO
時間 OPEN/START 19:00
ADV ¥2,500- (+1drink) / DOOR ¥3,000- (+1drink)
Act :
IKONIKA(Hyperdub)
IVY LAB
LISACHRIS

interview with BES & ISSUGI - ele-king


BES & ISSUGI
VIRIDIAN SHOOT

WDsounds/Pヴァイン

Hip Hop

Amazon

 近いところにある交わってないストーリーが出会う。まざりあうことで純度を増していくHIP HOP。プラスがプラスになるコンビネーションが作り出すシンプルな強さがこの作品の柱を作っている。気持ちよくただただ乗って欲しい。
 「HIP HOP?」と自分に問うことへの答えと、「HIP HOP?」と他者に問われたときの答えは違う。BESとISSUGIがリリースしたアルバム『VIRIDIAN SHOOT』は絶対的に「HIP HOP」として存在する。初めてこの作品を聴いたときに強烈に感じさせられた「HIP HOP」を理解するひとつの手がかりを言葉にしたくてふたりに話を聞いた。

地元の先輩のDJがレッドマンの“IT’S LIKE THAT”ってあるじゃないですか? それに山本リンダをブレンドしてたんですよ(笑)。
──BES
かなりどぎつい味になりそうですね(笑)。
──ISSUGI

お互いの出身地と育った場所を聞かせてください。

ISSUGI(以下、I):俺は練馬です。学校は荻窪だったんだけど、基本的に練馬からそんなに離れた所に住んだことないですね。

BES(以下、B):俺は18位から渋谷で遊びはじめて。地元にはいて、地元は東京の青梅ってとこなんですけど。20くらいまで地元にいて、何もないんでそこから出たくて。地元から出て。そのときもう、池袋BEDで「URBAN CHAMPION」(池袋BEDでいまも続いているパーティ)はMOTAIとかとやってたんですけど。はじめたばっかのときは青梅で。地元でやってても面白くなくて。音楽やる奴がほとんどいなかったんですよ。ラッパーっていっても違う感じだなって思ってて。そのときもうEISHIN(SWANKY SWIPE のメンバー)と組んでたんですよ。中野にはしょっちゅう遊びに行ってました。

 SWANKY SWIPEはBES、EISHIIN、DJ PORCHE、YODELからなるグループで2000年代にHIP HOPをHIP HOPそのものとして新たな次元に持って行ったグループのひとつだ。アルバム『BUNKS MARMALADE』を是非聴いて見て欲しい。リリース当時さまざまな場所で話題になっていた記憶は鮮明に焼き付いている。90年代にヘッズにトラウマを残したBOOT CAMP CLIKと近い存在と言っても過言ではないだろう。SWANKY SWIPEのBESとEISHINの出会いは意外だけれどしっくりくる。

EISHINと組みはじめたのは?

B:18、9からですね。EISHINはわからないですけどおれは向こうがラップやってるのは知ってたんで。新宿にCISCOがまだあったときに、たまたまばったり会ってですね。その前にも何回か連絡してたんですけど、電話切られちゃったりして(笑)。俺は中学からEISHINのこと知ってたんですよ。お互いスキーやってて、スキーの大会で知り合ってるんですよ。「サイプレス・ヒル聴いてる?」 「聴いてる、聴いてる」とか言って。

I:面白い。

青梅に住んでたときの思い出の曲ってありますか?

B:そのとき、地元の先輩のDJがレッドマンの“IT’S LIKE THAT”ってあるじゃないですか? それに山本リンダをブレンドしてたんですよ(笑)。

I:かなりどぎつい味になりそうですね(笑)。

B:そうそう。俺爆笑してて、ひとりで(笑)。「だっだだだだだだ」って山本リンダが入ってくる。クラブでそういう時間があったんですよ(笑)。その人は青梅から絶対に出ない人なんですけど。福生で基本イベントやってるのが多くて、アメ車の輸入やってる先輩がいて、その人達がYOU THE ROCKとかを呼んでイベントやってたんですよ。そこで自分がセキュリティとかやってて。19とかっすかね。そのパーティは人も凄かったですね。

I:その時代知らなかったです。ふたりとも別々でソロでやってたんですね?

B:いや、EISHINはグループ組んでたんだけど。結局グループがなくなっちゃって、相手がいないってなってて。そんで、地元の奴ごしに、八王子に会いに行って、そこで会うのが後のDJ PORCHEなんですけどね。それで、八王子でイベント出てました。「URBAN CHAMPION」の前ですね。お客さん5人しかいなかったり、見よう見まねでフリースタイル・バトルやって無茶苦茶になって笑っちゃったりとか(笑)。春木屋って店があって、スタジオとライヴハウスがくっついた3階あるところなんですけど。春木屋はもうないんですけどね。。15年以上前ですね。

I:面白そうですね。

その頃はISSUGIとはまだ会ってないですか?

I:俺はまだですね。BEDに遊びに行くようになって「URBAN CHAMPION」とか「ELEVATION」ってイベントがあって、それで知ったって感じですね。仙人掌とかメシアTHEフライが先に知ってました。SWANKY SWIPEって人達がいるって、聞いてて。それで、場所がBEDだったんですぐにライヴを見て。

その時の印象は?

I:ライヴ見て、衝撃受けました。何話したかは覚えてないんですけど、「ライヴやばかったす。」って感じのことを言って、普通に握手しようとしたら。このタイプの握手の人だったんすよ。(4段階式の握手の手振りをする。)わかります?「ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!」みたいな。周りにあんまりそういう人がいなかったんですよね。

B:MSこうだったじゃないですか? 俺たちはこうで。パチンってやるのをやってたんですよね。最近みんなこうじゃないですか?(色々な握手を手振りする)

たしかに。その頃って握手の仕方違いましたね。

B:ありましたよね。俺たちはこうパチンで。鳴らすのをずっとやってて。

I:いままで見たこと聴いたことないラップだなって思ったのを覚えてます。

そのときに一緒に曲を作るイメージはありました?

B:なかったよね。

I:その頃はBEDで会うっていう感じでしたね。毎月何回か何かのイベントでBEDで。

B:ライヴなくても会ってたりしてたね。

 BESもISSUGIも出演してなくても、クラブにいる印象がある。MONJUのメンバーである仙人掌はBES、SWANKY SWIPE双方のアルバムに参加しているのもあって、出会った当初から共に曲を作っている印象を持ってる人は少なくないだろう。初の共演は2012年になる。

「BES ILL LOUNGE」(MIXED BY DJ ONE-LAW)ので初めて一緒に曲やってるので合ってますか?

B:たぶん。

I:はい。そのなかの“COFFEE & SUGAR”が最初だと思います。バトルに一緒に出たりはしてたんですけど、曲作りはそこまでなかったですね。

B:ないっす!

それより前に曲作ってるんじゃないか? って思ってしまいます。

B:やってないですね。やるとしたら仙人掌でしたからね。

SWANKY SWIPEもBESの1stも参加してますもんね。“COFFEE & SUGAR”はどういう経緯で作ることになったんですか?

I:GUINESS君(ラッパー/『BES ILL LOUNGE』をリリースしたレーベル、SNAKESLOWを当時運営)が振ってくれたんでしたっけ?

B:うん。GUINESS君からだと思うよ。

I:それで、ビートを聴いてもらって、すぐに、面白いと思ってすぐ作ったすね。

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俺が、USのラッパーのトラックにラップのせてっていうシリーズを作りたいなと思ってて。たまたま、、あれ? 俺から声かけたんだっけ?
──BES
はい。「ビートジャックしたミックステープ」を作ろうって誘いの連絡をもらいました。
──ISSUGI


BES & ISSUGI
VIRIDIAN SHOOT

WDsounds/Pヴァイン

Hip Hop

Amazon

そういうエピソード聞くのすごく好きです。そこからまた時間が5年くらい空いて今作『VIRIDIAN SHOOT』ですが、どういう経緯で作ったんですか?

B:俺が、USのラッパーのトラックにラップのせてっていうシリーズを作りたいなと思ってて。たまたま、、あれ? 俺から声かけたんだっけ?

I:はい。「ビートジャックしたミックステープ」を作ろうって誘いの連絡をもらいました。

時期的には16FLIP vs BES(BESのアルバム『THE KISS OF LIFE』を16FLIPが全てREMIXしたもの。アルバム本編には収録されていなISSUGIのRAPも収録。)よりあとですか?

I:それより前の可能性があるんですよね。「『THE KISS OF LIFE』のリミックスやってよ?」って言われる前に、ジャック系の作品を作ろうっていうのでこっちのプロジェクトは動いていて。

その時点でレコーディングはじめてましたか?

I:はい。そうなんですよ。3~4曲くらいは録ってたんですよ。DOPEY君(東京のRGFのトラックメーカー。アルバム『SMILE』をリリースし、現在、制作動画と配信のプロジェクト「WORKS」をゲストを招き展開中)のとこで。

全部DOPEYのところでレコーディングはしてるんですか?

I:最初はDOPEY君のところでなんですけど、分かれてるんすよね。3つの時代に。DOPEY君/ODORI STUDIO/KOJOE君のところ。

レコーディング時期も分かれてるんですか?

I:各4ヶ月、3ヶ月は空いてますね。

レコーディングしてる日数はどれくらいなんですか?

I:今回スタジオ入ってる回数は少なくて5回とかだと思うんですよ。1日にふたりで3曲くらいRECORDINGしてたんですよね。

期間が空いてるとはいえ、かなりハイペースでのレコーディングですよね。意図的にですか?

I:俺的には単純に一緒にいると勝手に曲ができ上がってくようなイメージでしたね。パッパッパって。

B:どっちかが書けたら先に録ってっていう流れ。合わせてリリック書いたりふたりで構成作って、できたらそれでOK。

I:自分でも驚くほどでしたね。こんなに楽に曲できちゃって。だって、何もない状態でスタジオ行って、「今日何やりますか?」ってはじまってるのに、帰るときには3曲くらいでき上がってて。やべーできた! って。

ふたりで作ってる印象を強く感じました。

I:どっちかの聴くとそれによってスラスラと書けるというか。俺のなかで最初はビートジャックのミックスCDを作ってる感じで作ってたので、普段のアルバムよりちょっとゲーム的というか、煮詰め過ぎないスピーディな質感が出せたと思ってます。BESとレコーディングしてったものを、持っていってディール組んでお金ゲットしてっていう。BESの誘ってくれたゲームに参加させてもらうみたいな意味でも楽しめたというか。

B:ありがとうす。

楽しんでる感じ伝わります。エグさももちろんあるけど、音に乗ってる楽しさというか、気持ち良さを感じました。どのようにこの作品のアイデアは生まれたんですか?

B:『BES ILL LOUNGE』で海外のトラック、ビートジャックしたらCDでだったら出せるってわかったから、自分の好きな曲のトラック使ってやりたいって思って。それ作れたら最高だと思って、そのときに話ししてたレーベルが「お金の話しましょうか?」って言ってたんだけど、「できました」って持ってったら、「流通しかできません」って言われて。「お金の話しようっていってたじゃん」って。それでどうしようってなって。

I:そっからはバトンタッチっていうか、自分がそのバトンを持ってやるぞっていう。

そこからアカペラをトラックにのせていく?

I:5曲くらいはトラックに合わせて書いたんですけど、他はアカペラをトラックにのせて行きました。

どういう流れで制作してたんですか?

I:基本的には自分が集めたオリジナルのビートにアカペラを乗せ変えて曲を作って、BES君に「気に入らない(ビートとアカペラがあってない)のがあったら言ってください」って送ったら。これで全部ばっちりってなって。

作り方自体がかなり面白いですよね。

B:そうなんすよ。

I:いままで自分でもないっていうか。

B:俺もないっす。

 ビートジャックからオリジナルにBESからISSUGIにバトンが行き来する。海外のミックステープでオリジナルのものが既存のインストにブレンドされたものは普通に存在してる。その逆の作り方で作られたアルバムはこの作品以外に存在するのだろうか? ビートジャックして作られた「オリジナル」のものを聴けることはあるのだろうか?

I:はめこんで作る作業が面白かったですね。この雰囲気にあうビートはこれでとかで。やってみて合わなかったのもあるし。元々フックががっちりできたものは、このフックに合うトラックをはめるっていう作業だったり。“NO PAIN, MO GAIN”がもろそういう曲で、フックのハマりを失いたくないなと思って、探して元のフックにバッチリ合うビートが見つかって完成したときは嬉しかったですね。

トラックは新たに探したというよりは自分がもっているストックを使ったんですか?

I:はい。GWOP (GWOP SULLIVAN)のビートは自分のソロのときにALL GWOPプロデュースで出したいなと思って、十何曲くらい持っていて。やりたいと思ってたんですが、自分のなかで先の先の先くらいのプランで考えていて。すぐ制作に入れない感じだったんですよね。でもビートってずっと持ってると自分にとって古くなるというか、ビートってそういうのあると思うんですよね。だからBES ISSUGIを作ってるときにコレだと思ってそこにGWOPのビートを全部つぎ込みたいと思って。作りました。

GWOPに対する印象をそれぞれ聞かせてください。

B:渋いっすよね。

I:俺も渋いと思いました。渋いんだけど年齢もそんなにいってないと思うんですよ。自分より年齢下なんじゃないかな。若くて渋いところわかっちゃってるビート作るやつだと思ってて。だから90sの焼き直しと全然違うフィーリングというか、鳴り含めてアップデートされているんですよね。あとはドラムに勢いがあってドラムの跳ね方がヤバいことになってますね。GWOPのビート、ドラムとベースの出方がウーファーから風が吹いてきそうなんですよ。そういうところが好きです。

新たに録った曲もあるじゃないですか? どこでこのアルバムを完成だと決めましたか?

I:いちばん最後にRECが終わったのが“WE SHINE”で、それが終わったときにこの曲で揃ったかなと思ったんですけど、自分的に“WE SHINE”をアルバム最後の曲にしたくなかったのでBONUS 2曲いれて、そこまでの流れで1枚聴いて欲しいと思ってました。アルバム作ってて これがHIP HOPっしょって気持ちもあったし、HIP HOP好きなやつが聴いてぶち上がるアルバムにしたいという思いもありましたね。

 絶対的な「HIP HOP」に作品で聴き、ライヴで首を振りまくって騒いで欲しい──

〈VIRIDIAN SHOOT LIVE TOUR〉
4/28 北見UNDERSTAND
4/29 旭川BROOKLYN
5/5 池袋BED
6/2 京都OCTAVE
6/3 岐阜
6/30 水戸MURZ
7/14 福島

「BES & ISSUGI『VIRIDIAN SHOOT』
& Mr.PUG『DOPEorNOPE』DOUBLE RELEASE PARTY
supported by CARHARTT WIP」

日程:2018年5月5日(土・祝)
会場:池袋BED
OPEN 22:00
DOOR / ¥3,000 1D
ADVANCE TICKET / ¥2,500 1D + BONUS CD
RELEASE LIVE:
BES & ISSUGI
Mr.PUG
(feat 仙人掌,MICHINO,Eujin KAWI)
LIVE:
弗猫建物
BEAT LIVE:
CRAM
ENDRUN
DJ:
BUDAMUNK
DOPEY
JUCO
GQ
TRASMUNDO DJs
YODEL & CHANGYUU

チケット取扱店:
DISK UNION
JAZZY SPORT
TRASMUNDO
7INC TREE LIMITED STORE

Nanaco + Riki Hidaka - ele-king

 昨年、リキ・ヒダカのライヴを見たとき、彼は歌うのではなく、ステージの上でひとりでドローンを演奏した。いわゆるインディ・ロック系のオムニバスのライヴのだったので、そりゃあもちろん、スマホをいじっている客もいた。が、そこにいたほとんどのオーディエンスは、リキ・ヒダカの演奏に集中した。リキ・ヒダカもまた、オーディエンスの耳を話さなかった。アンビエント系とかその手のイベントならまだしも、経験的に言えば、ライヴハウスでロックのファンを前にこれができるミュージシャンは多くはない。
 リキ・ヒダカは素晴らしいボヘミアンだ。広島のStereo Recordsからリリースされている彼のアルバムは、静かな波紋を呼んで、本当にゆっくりと広まっている。そのひとつはジム・オルーク、石橋英子とのライヴ・ツアーだが、いまもうひとつ、意外なコラボレーション作品のリリースが発表された。年々再評価を高めている80年代を駆け抜けた伝説のシンガー、佐藤奈々子との共作『Golden Remedy』がそれだ。
 世代もジャンルも異なるこのふたり、いったい何がどうしてコラボレーションすることになったのか謎ではあるが、間違いなく注目作でしょう! 

Nanaco + Riki Hidaka『Golden Remedy』
2018年6月20日リリース
PCD-25259 定価:2,500円+税

伝説のシンガー、佐藤奈々子の5年ぶりニュー・アルバムは、今もっともアートなサウンドを紡ぐ大注目ギタリスト、Riki Hidakaとのあまりに美しきコラボレーション!
唯一無二のウィスパー・ヴォーカルと吸い込まれるほど夢幻的なギター・サウンドが織りなす妖艶なるポップ・ワールド──。カメラ=万年筆とコラボした前作に続き、またしても若き天才との化学反応が生んだ恍惚の傑作が誕生!

<トラックリスト>
1. Old Lady Lake
2. 王女の愛 (Love of Princess)
3. Frankincense Myrrh Gold
4. I Will Marry You
5. 美しい旅人 (Beautiful Traveller)
6. Secret Rose
7. 未来の砂漠でギターを弾く君と私 (The Desert)
8. 魔法使い (Wizard)
9. 白鳥 (Swan)

<参加ミュージシャン>
オカモトレイジ (OKAMOTO’S):dr
野宮真貴:cho
ジェシー・パリス・スミス:keys, cho
Babi:cho
佐藤優介 (カメラ=万年筆):p
佐藤望 (カメラ=万年筆):chorus arrangement
ほか

◆プロフィール


佐藤奈々子 (Nanaco)
歌手・写真家
1977年 佐野元春氏との共作アルバム『ファニー・ウォーキン』でデビュー。4枚のソロアルバム他をリリース。
1980年以降、カメラマンとなり、広告、雑誌などで活躍し、5年間パリで暮らす。
1996年 アルバム『Love is a drug』をイギリス、アメリカ、日本でリリース。タイトル曲のシングルは、日本人アーティストではじめて、NMEの"single of the week" に選ばれる。
1998年 イギリスBella Unionより、Simon Raymondeプロデュースによるアルバム『Luminous love in 23』をリリース。
2000年 R.E.Mを手がけたMark Binghamのプロデュースにより『sisters on the riverbed』をリリース。
2013年 カメラ=万年筆とのコラボレーション・アルバム『old angel』(diskunion)リリース
2016年 前田司郎監督の映画「ふきげんな過去」の主題歌を歌唱+作詞。近年はライブ活動も行なうようになり、さまざまなミュージシャンとのセッションやライブツアーも行なっている。写真家としては、広告、雑誌、またCoccoや細野晴臣といったミュージシャンのCDジャケットなどの撮影を多数手がけている。ピチカート・ファイヴに楽曲提供した「Twiggy Twiggy」は世界的なヒットとなった。


Riki Hidaka
1991年LA出身。東京育ち。2014年よりNY在住。ギター奏者。
『NU GAZER』(‘11)、『POETRACKS』(‘11)、『LUCKY PURPLE MYSTERY CIRCLE』(‘17)など、自主制作による限定リリースを含む多数のソロ作品をリリースするほか、QN、THE OTOGIBANASHI’S、GIVVNなどの作品にギタリストとして参加。また、アートワークやフィルム制作、ショーの音楽など、様々な分野で活動している。ライヴも精力的に行い、17~18年に行われたジム・オルーク、石橋英子との二度に亘るスリーマン・ツアーは話題を呼んだ。


 アンノウン・モータル・オーケストラを初めてみたのは、2014年のアイスランド・エアウェイズ。たまたま入った小さな映画館で彼らはプレイしていた。100人ぐらいの人がいて、優しいアイスランドの人たちは小さいアジア人に場所をあけてくれ、「椅子に登るとよいよ」とアドバイスまでくれた。そこで見たのは、グレイのスウェットに黒のベースボール・キャップを被ったギター・ヴォーカルと、黒一色のベーシストと、ジンジャー・ベイカーのようなプレイをする、一番目立っていたドラマーの3ピースのサイケデリック・バンドだった。ヒップホップかハードコアにもなり得るリズム・セクションに、カジュアルだが、ファンキーなギター・ラインに圧倒され、すぐに次に行く予定が立ち去れなかった。無理してないのに、なぜか良い。イギリスのバンドだと思っていたが、ニュージーランド出身、ポートランドを拠点とするルーバン・ニルソンを中心とするバンドだった。その後彼らのアルバムを聴き漁っていると、いつの間にか曲をハミングし、歌詞も覚えてしまった。

 2015年、ルーバンと妻、そしてガールフレンドの関係をテーマにした新譜『マルチ・ラヴ』をリリースした後は、いたる所で名前を目にするようになった。有名なセントラル・パークのサマー・ステージでもプレイし、”So Good At Being In Trouble”, “Swim and Sleep”, “Ffunny Ffriend” などのシンガロング系のヒット曲から、新曲 “Can’t Keep Checking My Phone” などをミックスしたセットでは、広々としたセントラルパークというロケーションもあり、リラックスしたレイドバックな雰囲気で、誰もが思い思いに楽しんでいた。この、少し奇妙なバンドは、いつのまにか幅広い知名度を獲得していた。

 2018年4月、「自分たちが消費するもの、それがどのように影響するか」をテーマにした新譜『セックス・アンド・フード』をリリースした。それと同時に地下鉄のホームから道の看板まで、アルバムの広告で溢れかえり、イヤでも目につくようになった。数週間後にブルックリンの工業地域にある大会場、ブルックリン・スティールで2日間のショーを行った(ソールド・アウト)。ブルックリン・スティールは、2017年にLCDサウンドシステムが再結成&こけら落としをした新しい会場で、インディのトップクラス・バンドがプレイしている。

 ステージ・ライトは『マルチ・ラヴ』のカヴァーのようなピンク。楽器以外にレコード・プレイヤーと白いスピーカーが載った長テーブルがあり、白いふわふわのじゅうたんがひいてある。フルワイン・ボトル2本、ウィスキー、テキーラ・ボトルが一本ずつ、キーボード・スタンドの下に準備されていて、まるで誰かの部屋のようである。

 バンド・メンバーは、ルーベン、ベースプレイヤー。キーボード・プレイヤー、ドラマーの4人で、ドラマーはルーベンの兄。
 ベースボール・キャップ、Tシャツ、ショート・パンツにレギンスのルーベンは全体を通してリラックス・ムード。ガムを噛んでいて、大体歌の出だしをミスる(笑)のだが、その後のクレッシェンド感は流石。高い音も決して外さないし、R&B、ソウルっぽい強弱のある歌い方とメロウなギターの爪弾きにキューンとさせられる。ショルダーバックがけのギターの持ち方もチャーミングだし、「ブルックリン、まだ大丈夫?」と観客を気遣うことも忘れない。

 今回は新曲中心に4枚のアルバムから曲を選び、グルーヴィでエフェクトをかけたルーベンのヴォーカルが現実的で病んだテーマをディスコ・ボールのなかでダンスしているように軽やかに響かせていた。メロウになったり、ハードコアになったり、基本はR&Bグルーヴを様々な表情に変えていた。

 彼らの曲はインターネットの世のなかに生きていれば起こりえる日常生活を歌っている。いまの時代みんな狂っているし、だからそれをテーマに歌うUMOに共感するのだろう。オーディエンスは20~30代ゲイの男が中心で全部歌詞を覚えている! ぐらいの熱烈さだった。私たちが持つ現代病問題をサラリと気づかせるメロウな友たちがUMO。それを伝染させるのは簡単なことなのだろう。

4月に刊行された『現代プロレス入門』にて表紙を飾っていただいた葛西純選手をお招きし、5月28日、書泉グランデにて刊行記念サイン会がおこなわれます! 先着50名となっておりますので、ご予約はお早めに。

出演者
・葛西純選手(プロレスリングFREEDOMS)

イベント内容
・サイン会

開催場所 / 開催日時
書泉グランデ(神保町) 7F
2018年05月28日(月) 19時~

発券場所 / 発券日時
グランデ(神保町) B1F
2018年04月28日(土) 10:00~

【店頭受付】2018年4月28日(土) 10:00~
【電話受付】2018年4月29日(日) 13:00~
 TEL:03-3295-0017(直通)

※参加券1枚に付き、対象商品1点にサインをお入れ致します。
※サイン入れは対象商品のみとなります。予め、ご了承下さい。
※商品は当日、必ずお持ちください。

ご参加方法

4月28日(土) 10:00より書泉グランデBFにて『現代プロレス入門』をご予約・ご購入でご希望のお客様【先着50名様】にイベント参加券をお渡しいたします。

※商品1冊ご予約・ご購入につき参加券1枚の配付となります。
※状況により1回のご予約・ご購入数を制限させて頂く場合がございます。
※参加券1枚で大人1名様限り有効(お子様のご同伴は係にご相談ください)。
※電話受付は店頭受付開始日の翌日13:00から、残券がある場合に行います。
TEL:03-3295-0017(直通)

ご注意事項
*参加券配付は予定数に達し次第、受付を終了いたします。
*参加券は再発行ができませんので、紛失されませんようご注意ください。
*会場内は禁煙です。
*会場内外の録音・録画は禁止とさせていただきます。
*イベント当日、マスコミの取材カメラが入り、イベントの様子を撮影する場合がございます。
*やむを得ず、予告なしにイベント内容が変更となる場合がございます。
*営利目的による転売行為はおやめ下さい。転売が明らかな場合は、イベントへのご参加をお断りする場合がございます。
*イベント終了までにお支払いがございませんと商品はキャンセルとさせていただきます。
*イベント終了後2週間以上ご来店、ご連絡がない場合はキャンセル扱いとして、商品(特典)は処分させていただきます。
*イベントが長くなりますとイベントの途中で休憩を取らせていただく場合がございます。休憩時間中はお客様にはお待ちいただくことになります。皆様のご理解ご協力をお願いいたします。
*イベント終了時間は決まっておりません、ご参加のお客様が居られませんと終了となります。参加券をお持ちの場合でも遅れて来られますとご参加になれませんのでご注意ください。

(イベントに関するお問い合わせ)
★神保町・書泉グランデBF スポーツ&格闘技コーナー
TEL:03-3295-0017
営業時間 平日10:00~21:00 土日祝10:00~20:00

interview with Tim Liken (Uniting Of Opposites) - ele-king


Uniting Of Opposites
Ancient Lights

Tru Thoughts / ビート

JazzPsychedelicTraditional Indian Music

Amazon Tower HMV iTunes

 反対のものをユナイトすること。それは、たんに逆の性質のものを合体させるということではなく、逆のものをそもそも逆だと見なさない、ということなのだそうだ。ユングの著作から採られたユナイティング・オブ・オポジッツ(以下、UOO)というグループ名には、そのようなコンセプトが込められているのだという。
 UOOは、ベテランのシタール奏者クレム・アルフォードとベーシストのベン・ヘイズルトンのふたりが出会ったことがきっかけとなり、そこにこれまでティム・デラックス名義でハウスのヒット作を生み出してきたティム・リッケンが加わることで始まったプロジェクトである。その初となるアルバム『Ancient Lights』では、インドの伝統音楽と現代的なジャズ、生演奏のアンサンブルとエレクトロニックなサウンドなど、一見遠いところにあるもの同士の折衷がいくつも試みられている。その巧みなコラージュ・センスにはただただ脱帽するほかないけれど、2018年の現在もっとも注目すべきなのは、やはりそのジャズの側面だろう。
 本作にはクラリネット演奏のアイドリス・ラーマン(トム・スキナーととともにワイルドフラワーの一員でもある)や、アシュレイ・ヘンリー&ザ・リ:アンサンブルやサンズ・オブ・ケメットの新作にも参加したドラマーのエディ・ヒックが名を連ねており、まさにいま大きなうねりとなっている南ロンドンのジャズ・シーンとリンクする作品となっている。
 他方インド音楽といえば、旧宗主国たるUKではそれこそビートルズの時代からそれを取り入れる動きがあったわけだけれど、90年代以降のクラブ・ミュージックの文脈でもニティン・ソウニーやタルヴィン・シンといったUKエイジアンたちがエレクトロニックな音楽にその要素を取り入れてきた。つまりUOOは現在の南ロンドンのシーンとの接続を試みる一方で、これまでのUK音楽における多様性の系譜にも連なろうとしているのである。それを同時に成し遂げてしまうことにこそ、まさに「そもそも反対だと見なさない」という彼らのスタンスが表れているのではないだろうか。
 UKの混淆性そのものを体現するかのような『Ancient Lights』という素敵なアマルガムを生み落としたUOO、その中心人物のひとりであるティム・リッケンが新作について、そしてインド音楽や南ロンドンのシーンについて語る。


photo: Kid Genius Creative

逆という見方をしない、逆を持たないというのがコンセプト。真逆のものからわかる発見、事実、そういった感じかな。

ユナイティング・オブ・オポジッツにはシタール奏者やタブラ奏者など、多くの人が参加していますが、まずはバンドの結成に至った経緯を教えてください。

ティム・リッケン(Tim Liken、以下TL):友だちのベン・ヘイズルトンがメンバーを紹介してくれたんだ。ベンとは7~8年の仲でね。『The Radicle』のときに彼がベースで参加してくれて、そのときに他のミュージシャンを探すのも手伝ってくれたんだ。そのときに彼が一緒にプロジェクトをやりたいと提案してきて、まず最初にクレム・アルフォードに声をかけて、3人で音楽を作り始めた。でもプロデューサーという視点から見ると、僕はもっとミュージシャンが必要だと思って、ベンの紹介やロンドンのギグで知り合ったミュージシャンたちに参加してもらうことにしたんだ。エレクトロっぽいものは避けたかったし、ダンス・ミュージックを作りたかったわけでもない。より人間味のある音楽を作るには、それが必要だったんだ。

ユナイティング・オブ・オポジッツというグループ名にはどのような意味が込められているのでしょう? 「反対のもの」とは何と何ですか?

TL:名前はカール・ユングの心理学から来ていて、彼が書いた本も持っているんだけど、それには西と東の考え方の違いが書いてある。そのなかに「そのふたつの合体(Uniting)」という章があって、それがすごくおもしろいんだ。逆という見方をしない、逆を持たないというのがコンセプト。真逆のものからわかる発見、事実、そういった感じかな。

本作では大きくインド音楽の要素がフィーチャーされていますが、インド音楽に注目するようになったきっかけはなんだったのですか? やはり前作『The Radicle』で“Shanti”を作った経験が大きかったのでしょうか?

TL:これまで、あまりインド音楽は聴いてこなかった。でも初めて聴いたとき、西洋の音楽とはもちろんぜんぜん違うし、すごく魅力的だと思ったんだ。だから、サウンドやテクスチャー、リズムもそうだし、前作『The Radicle』に入っている“Shanti”のときからインド音楽の影響は取り入れてきた。あと、クレムは昔インドに行ってシタールを演奏していたときがあるから、彼はインド音楽のマスターなんだ。今回はそのクレムが参加してくれているから、それを大きくフィーチャーしたんだよ。

通訳:あなた自身はシタールやインド音楽を勉強したんですか?

TL:いや、してないよ(笑)。クレムからちょっと習ったり、自己流でルールを破りながら触って見ているだけ(笑)。インド音楽では、あまりコーラスやハーモニーがなくてほとんどがソロだから、そこは自分たちでシステムを変えてコーラスやコードを加えたんだ。

ニティン・ソウニーやタルヴィン・シンなどのUKエイジアンの音楽からの影響はありますか?

TL:それは僕にはわからないな。彼らはやっぱりインド音楽や文化に強いコネクションを感じていると思うけど、僕たちは彼らに比べるとそこまでではないと思うから。

今回、ご自身でもタンプーラ(Tampura)を習得したそうですが、ギターなどの弦楽器との最大の違いはどこですか?

TL:あの楽器は、音符が3つしかないから演奏するのは簡単だったんだ。タンプーラはおもしろい楽器で、ベースみたいな感じで、シタールとか他の楽器のメロディに合うようになっている。シタールはすべての弦を合わせて21本くらい弦があるけど、タンプーラは4本しかない。タンプーラで演奏するのは、音楽のキイとなる音のみで、他の楽器のベースになっている。だから、西洋の他の楽器よりも音のスケールの幅が狭いんだ。あと、タンプーラは催眠っぽくもあるね。トランスみたいな感じ。すごく変わっていておもしろい楽器だよ。クレムとベンが弾き方を教えてくれたんだ。

通訳:自分で習っている楽器は何かありますか?

TL:ピアノだけ(笑)。ピアノは上手くなりたい。他の楽器も好きなんだけど、僕はハーモニーが好きで、コードをプレイするのが好きなんだ。そっちのほうが音がもっとディープだと思うんだよね。

他方で本作にはジャズの要素もあります。アイドリス・ラーマンはワイルドフラワーやイル・コンシダードで、エディ・ヒックはルビー・ラシュトンやアシュレイ・ヘンリー&ザ・リ:アンサンブルで、南ロンドンのジャズ・シーンの隆盛に一役買っていますが、このアルバムも南ロンドンのジャズ・シーンとリンクしているという意識はありますか?

TL:もちろん。僕はたくさんジャズやクラシック音楽、ビル・エヴァンスのような20世紀初めのジャズとクラシックが交わったような音楽をたくさん聴くんだ。リラックスできるし、自分の耳のトレーニングにもなる。演奏がよりやりやすくなるんだ。ビル・エヴァンスはとくにお気に入りのピアニストだね。彼の、ジャズなんだけどジャズじゃない感じのスタイルが好きだね。

南ロンドンのジャズ・アーティストでもっとも注目しているのは誰ですか?

TL:南ロンドンのジャズ・シーンはここ2、3年でグンと大きくなったと思う。でも、人種の坩堝であるロンドンで流行っているジャズだから、ふつうのジャズではない。そこにちょっとハウスが入っていたり、ガラージが入っていたり、60年代の伝統的なジャズではないんだ。フェラ・クティのヴァイブもあるし、ハウスのリズムやビートがアフリカン・ミュージックのポリリズムと繋がっていたりもするし、ほんとうにおもしろいフュージョンが繰り広げられているんだ。すごく良いシーンになってきていると思うよ。僕が注目しているのは、やっぱりドラマーのエディ・ヒック。あとはキイボードのジョー・アーモン・ジョーンズ。彼はニュー・アルバムをリリースしたばかりなんだけど、曲の構成がほんとうに素晴らしいんだ。あと、女性ではヌビア・ガルシア。彼女はサクソフォンを演奏している。シーンには良いミュージシャンたちがほんとうにたくさんいるんだ。

フローティング・ポインツもハウスとジャズを、そして打ち込みと生演奏を横断するアーティストですが、彼の音楽についてはどう思っていますか?

TL:僕は彼の大ファン。彼がやっていることはほんとうにクールだし、インスパイアされる。彼のようなミュージシャンを見ていると、DJは控えてもっとライヴで演奏をしてみたいという意欲が湧いてくる。クラシックのトレーニングを受けていなくても、彼みたいに素晴らしい音楽を作ることができ、あれだけのパフォーマンスができるアーティストもいるというのは、自信を与えてくれるんだ。パフォーマンスに対して、もっとポジティヴにさせてくれるのが彼の音楽だね。

大きな質問になりますが、あなたにとって「ジャズ」とはなんでしょう?

TL:これはちょっと難しい質問だな(笑)。言葉にするのは難しい。自分が聴いていて、感情を大きく引き出してくれる音楽ではある。ハートに深く届く音楽だけど、それをどう言葉で表現すればいいかはわからない。すごくコネクションを感じるけど、それを言葉で呼ぶことはできないよ(笑)。心で感じるものだし、なんとも言えない感情だから。


photo: Kid Genius Creative

マシンに操られて行き場をなくしてしまうミュージシャンがたくさんいるのも見てきた。

このアルバムを作るうえでもっとも苦労したことを教えてください。

TL:いちばん大変だったのはスタートポイント(笑)。僕はプロデューサーでもあるから、どうしてもヴィジョンが見えていないと作業ができないんだよね。ただジャムをしてレコーディングするってことに慣れていないんだ。でもギグで何度も演奏して経験を積んでいるベンにとっては、それがふつうなわけで、彼は逆にスタジオ・ミュージシャンではない。だから、最初にどうやってレコーディングを進めていくかを考えるのがたいへんだった。でも、自分でレコーディングしたものを保存していたハードドライヴをなくしてしまったから、データがぜんぶなくなってしまったんだ。それが逆によくて、ゼロからのスタートになったから、ぜんぶ忘れてもっとフォーカスを定めることができた。とりあえず始めてみることにして、その流れで直感に従いながら自然と進めていくことにしたんだ。

近年はハウスから離れバンド・サウンドを取り入れていますが、生演奏に重きを置くようになったのはなぜですか?

TL:『The Radicle』でもそうだったけど、他のミュージシャンたちとコラボするのってすごく楽しい。コンスタントにツアーをしているからもうDJもしていないし、ピアノを習い始めたことがいいリセットになったんだ。ピアノを習い始めてからはずっと生演奏がメインになっている。いまはそこからインスピレイションを受けるし、そっちのほうが音楽とコネクションを感じるんだ。ルーツ・マヌーヴァのショウでドラマーのエディ・ヒックと一緒にプレイしていたんだけど、あれも良い経験だった。すごくチャレンジだったけど、あのおかげで演奏に自信がついたね。

ピアノなど生の楽器の良さはどんなところにあると思いますか?

TL:テクノロジーは更新の連続で、それがいかに新しいかが問われるけれど、楽器の場合、毎年ピアノを買い換えるなんてことはない。ひとつのピアノを手に入れれば、それをいかに自分のものにして長く使うかに価値がある。ギターをコレクションする人ももちろんいるけど、楽器のほうが深い繋がりを感じることができるんだよね。テクノロジーは、ニュー・ヴァージョンばかりが注目されて、すべてがマーケティングなところがあるんだよ。生演奏のほうが、自分の音楽を更新するのではなく、深めていくことができるんだ。

生演奏でなければできないこととはなんでしょう?

TL:その瞬間を捉えること。生演奏がおこなわれている瞬間がすべてで、それが経験になる。リスナーもその瞬間に入り込むことができるし、リスナーもそれを体感できるのは生演奏だと思うね。

逆にエレクトロニクスでないとできないことはなんだと思いますか?

TL:エレクトロニクスでも人間味を出すことはできるとは思う。マスターすれば、マシンに操られるのではなく、マシンを操って、人間の力を超えた何かを作り出すことができるとは思うね。それは大きな挑戦でもある。でも、DJの世界にいたこともあって、マシンに操られて行き場をなくしてしまうミュージシャンがたくさんいるのも見てきた。テクノロジーを使うのであれば、それを使いこなし操れるほどの知識とスキル、経験が必要だと思うね。

これまでティム・デラックス名義でやってきたことと今作の試みとのあいだで連続しているものはありますか?

TL:それはもちろんある。まったく違うものではなく、音楽キャリアの旅だからね。プロダクションの面で、僕が好きな音楽が反映されているということに変わりはないし、リヴァースディレイ、スピンはDJのバックグランドから来ていると思うし、ティム・デラックスで聴けるキイボードやタンバリンは、僕のミュージシャンの一面から来ていると思う。プロジェクトやレコードにはすべて共通点があるし、今回もエレクトロのリミックスを考えているんだ。

今後またハウスをやる可能性は?

TL:いまのところは考えていない(笑)。さっきも言ったように、いまは生演奏で得られるものに魅力と昂奮を感じているから。ピアノを始めてから、それをもっと感じるようになった。またハウスを作ることもあるかもしれないけれど、それがいつになるかは僕にもわからないね(笑)。

 ele-king booksからプロレスの本!? そう思われている方も多いでしょうが、現在のプロレスの盛り上がりを見逃すことはできなかったのです。

 古くは力道山、馬場&猪木、初代タイガーマスク、UWFにはじまる格闘技路線と大仁田厚以降のインディー団体乱立、新日本の三銃士と全日本の四天王――時代時代でさまざまな話題をふりまいては盛り上がってきた日本のプロレスですが、90年代後半の格闘技ブームに押され、今世紀に入ってからはやや沈滞ムードが続いていました。

 しかしながらここ数年、新日本を中心とした華やかで楽しいプロレス、そしてデスマッチをはじめ工夫を凝らして特色を出した数々のインディー団体など、プロレス界は再度活況を呈してきています。特に今回のブームの特徴は女性ファンが増えたことで、イケメンレスラーの華麗なファイトにうっとりするに留まらず、蛍光灯で殴り合い血まみれになるような過激な試合を展開している会場に黄色い声援が飛び交う様にはなかなか驚かされるものがあります。

 ライブ・エンターテインメントとしての文句なしの楽しさ。そして多くの試合会場では大きな物販スペースが設けられ、選手自ら売り子をしたりサインに応じたりする姿は昨今のアイドルのサービス精神にも通じるものがあります。こりゃたしかに人気出るわ。

 今や書店にも大きなプロレスコーナーが設けられ、ベストセラーとなる本も数多く出ていますが、不思議なことにビギナー向けの入門書というのが見当たりません。「なんか盛り上がってるらしいけど、どこで見れるの?」「友達が最近ハマってるらしいんで興味あるけど、どこから見たらいいのかわからない」といったこれからのファンたちのために、簡単に今のプロレスを楽しむためのガイドとなるような本があるといいんじゃないのかな、ていうか自分がそんな本を読みたいぞ。

 ――そんなモチベーションから本当に作ってしまったという次第。自分の好きなプロレスを探す第一歩を踏み出すための一冊になっているはずです。

現代プロレス入門 注目の選手から初めての観戦まで
大坪ケムタ(著)

目次

はじめに
巻頭インタビュー1 飯伏幸太
巻頭インタビュー2 葛西純
団体紹介
ローカル団体
アメリカン・プロレス(WWE)
アマチュア(学生・社会人プロレス)
今、注目の選手を一挙紹介! レスラー名鑑
タイプ別レスラー紹介
レジェンドレスラー
チーム・ユニットで構図が見えてくる
Column プロレスとアパレル レスラーとSNS
Column レスラーになるには
Column プロレス好きの有名人
観戦の手引き
観戦のおともに~便利グッズあれこれ
プロレス会場の数々
グッズショップから飲食店まで――お店ガイド
Column リング外のイベント
奇想天外! 変わり種興行
在宅観戦
Column レスラーと音楽
プロレスの歴史
プロレスのルール
Column アイドルファンとプロレスファン
技がわかればプロレスがわかる! プロレス技ガイド
プロレスが10倍おもしろくなるブックガイド
熱いドラマから奇想天外なドキュメンタリーまで プロレス映画ガイド
FAQ
あとがき

ザ・スクエア 思いやりの聖域 - ele-king

 格差に対する危機感はヨーロッパ映画に深く浸透し、そのことが更新を促している。昨年のカンヌ映画祭のパルムドールを受賞した本作『ザ・スクエア 思いやりの聖域』が表象するのはまず、その最新の成果といったところだろう。監督のリューベン・オストルンドは1974年生まれだが、 ヨルゴス・ランティモス辺りとともに下手したらミヒャエル・ハネケを過去へと追いやりかねない存在である。ここでのポイントは、格差の問題を (ケン・ローチやアキ・カウリスマキのように) 移民や難民、貧しき者たちの立場に身を置いて誠実に描くということでなく、むしろ中産階級やブルジョワの側に入りこんで風刺するということにある。
 オストルンド監督の前作『フレンチアルプスで起きたこと』(14)では、スキーリゾートにやって来た比較的裕福なスウェーデン人一家の父親が雪崩事故をきっかけに妻や子どもからの信頼を失う様が描かれていたが、海難事故などの緊急事態では「おんな子どもが先」とならない現実を証明したレポートから着想を得たものだそうだ。つまり、沈みゆく船はヨーロッパであり、「おんな子ども」は貧民である。雪崩から逃げようとした父親に悪気があるわけではない。危機に直面し、本能的に生き延びようとしただけだ。が、道義的に「正しくない」とされ、そのことで責められ、また自分自身が苦しむこととなる。

 『ザ・スクエア』ではそうした主題をさらにコンセプチュアルに押し進めている。舞台となるのは現代アート界。スウェーデンの現代美術館のキュレーターであるクリスティアンは新しい展示である〈ザ・スクエア〉を準備している。それは地面に正方形を描いただけの作品で、このような説明が付け加えられたものである――「〈ザ・スクエア〉は“信頼と思いやりの聖域”です/この中では誰もが平等の権利と義務を持っています/この中にいる人が困っていたら それが誰であれ あなたはその人の手助けをしなくてはなりません」。要は、クリスティアンは一流のキュレーターとしてアートを通して現代における道義を世に問おうとしているのだ。そこまでを背景として、物語は彼が財布とスマートフォンを盗まれるところから動き始める。GPS機能を使って犯人の在りかを突き止めるが、そこはおもに低所得者が暮らす集合住宅だった。部下にそそのかされたこともあり、全戸に脅迫めいたビラを配って盗品を取り戻したクリスティアンだったが……というところから彼の立場は危ういものとなっていく。しかも〈ザ・スクエア〉のキャンペーンはネットで炎上。これは現代の「正しさ」が皮肉な結果を生むことの典型的な例だが(正義を訴えれば訴えるほど炎上商法に加担してしまう)、クリスティアンが自分のことでいっぱいいっぱいなせいで「道義」のことが目に入っていなかったときに起きてしまったことだ。
 たとえばアンドレイ・ズビャギンツェフの『ラブレス』(17)やミヒャエル・ハネケの『ハッピーエンド』(17)がそうだが、近年のヨーロッパ映画の一部の作品では経済的にある程度以上の水準を保つには他者の犠牲に無関心になるしかない、という側面が強調されている。だが『ザ・スクエア』のクリスティアンはべつに無関心、なわけではない。キュレーターという立場からできれば何か世に示したいとすら思っている。が、それは現実の世界では――〈ザ・スクエア〉の外では実現できないのである。そこでは自分の立場や財産を守ることが最優先されるからだ。

 そもそも〈ザ・スクエア〉はそもそもオストルンド監督が実際に携わったプロジェクトである。そして、それ自体がエリート主義めいた小賢しさを孕んだ試みであるとじゅうぶん自覚している。要は自己批判なのだ。その上で、現代アート界の欺瞞や追いつめられていくクリスティアンの姿をドライな演出で滑稽に映し出していく。そう、クリスティアンに悪気はない。盗まれた物を取り返そうとしただけ。だけど、そこから導かれる行為には「信頼と思いやり」も「平等の権利と義務」も「手助け」もない……。彼もまた、資本主義リアリズムに囚われて身動きが取れなくなっている。
 映画は当然クリスティアンを批判的に描いているのだが、しかしながら、ハネケがブルジョワを冷血の権化として登場されていることに対し、オストルンドはどうにか彼の人間味のようなものを浮かび上がらせようとする。彼は間違いを何度も犯しながら、それでも真に人道的であるということはどういうことなのかを辛うじて学んでいく……もったいぶったアートのなかでなく、現実のものとして。これはその不格好な過程を見守る映画なのだ。〈ザ・スクエア〉の外にこそある思いやりを、そして、わたしたち全員の課題として持ち帰らせようとする。ギリギリのところで相互扶助の可能性に懸けているように見えるのである……というのは、僕の願望が含まれているだろうか?

 ところで、〈ザ・スクエア〉の四角とは何のことなのだろう。たぶんにスマートフォンの画面ではないし、よもや国境で区分けされた国家のことでもない。それはきっと、映画のスクリーンのことである……と言ったらそれこそ願望が入っているだろうが、しかし、本作――それが、アート映画というエリートの嗜みだとしても――を通してオストルンドが格差社会においてそれでも追求すべき「信頼と思いやり」を真剣に考えたことは間違いない。

予告編

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