「P」と一致するもの

KABUTO - ele-king

 KABUTOは千葉出身、東京在住のDJ。KABUTOが少年時代を送った1980年代~90年代はパンク以降の音楽、クラブ・カルチャーの隆盛、ファッション、スケート・ボード、あらゆるユース・カルチャーが混然となった時代である。当時10代のKABUTOは千葉の街で、日々次々と生み出される新しく刺激的なムーブメントの数々を、ヤンチャな遊びの過程で貪欲に吸収して育った。
 そして2000年代になり、KABUTOは地元の先輩であるDJ NOBUからの誘いで、始動間もない〈FUTURE TERROR〉に加入する。千葉という街で何の後ろ盾もなく、仲間たちによる手づくりで始められた〈FUTURE TERROR〉……それがどれだけ特別なものであるかは、インタヴュー本文でKABUTOの言葉から知ってもらうべきだろう。とにかくKABUTOは〈FUTURE TERROR〉のオリジナル・メンバーであり、後に彼は〈FUTURE TERROR〉を脱退し東京に移るが、いまでもKABUTOの言葉は〈FUTURE TERROR〉への愛と敬意にあふれている。それからKABUTOは〈FUTURE TERROR〉で得た大いなる経験と理想を胸に歩み、彼はいま、東京のダンスフロアからもっとも信頼されるDJのひとりとなった。頼るものはDJとしての心と技、ただそれだけだったであろうが、それゆえに彼の周りには、新しい仲間たちも集まってきた。

 現在のKABUTOのホーム・グラウンドは、全国の音楽好きから愛される東高円寺の〈GRASSROOTS〉で自らオーガナイズする〈LAIR〉。それと、和製グルーヴ・マスターと名高いdj masdaが運営し、ベルリン在住のyone-koも名を連ねる代官山UNITの〈CABARET〉である。KABUTOのプレイ・スタイルの片鱗は、2009年に〈DISK UNION〉からリリースしたMIX CDシリーズ"RYOSUKE & KABUTO - Paste Of Time Vol.1/2"や、この秋サウンドクラウドにアップされた"Strictly Vinyl Podcast 010"等でも触れてもらえると思う。だができることならぜひ、パーティの現場でこそ、彼のDJと人柄を味わってもらいたい。なお2013年12月13日、現時点でのKABUTOの最新のプレイのひとつである〈CABARET〉では彼は朝6時過ぎからブースに登場。ミニマルとディープ・ハウスを行き来し気持ちよく踊らせる持ち味を発揮した後、荒々しいシカゴ・ハウスをはさみつつどこまでも加速するようなKABUTOのプレイにダンスフロアの歓声はどんどん膨らんでいった。時計は7時半を回っていた。

 それではKABUTOの初めてのインタヴューをお届けする。KABUTOと長年交流する五十嵐慎太郎(〈Luv&Dub Paradise〉主宰)をインタヴュアーとして、過去、現在、そしてこれからについて存分に語ってもらった。


俺、全部同時進行なんです。「(特定の)この音楽で育った」っていうのはないんですよね。そういう音楽の聴き方をしていたのは先輩とかの影響もあるから、千葉での遊びがルーツとも言えるかもしれないですね。

■五十嵐:俺、カブちゃんとは常に会うような関係ではないけど、お互いの要所要所では何度も会って、熱い話をしてるんだよね。それこそカブちゃんが〈FUTURE TERROR〉を離れるにあたって考えていたこと、その当時の目標やヴィジョンなんかも含めて、個人的には以前にも話を聞いてるんだ。それからしばらく経って、KABUTO君の近年のDJ/オーガナイザーとしての活躍ぶりは、すごく注目されるべきものだと俺は強く思っていて。それでインタヴューという形で改めて、KABUTOというDJのこれまでの歩みや、何よりもKABUTO君がこの先、DJとしてやろうとしていることについて、じっくり話を伺おうと思ったんです。
 まず、カブちゃんが〈FUTURE TERROR〉を辞めたのはいつなんだっけ?

KABUTO:2008年に辞めたから、5年ですね。

■五十嵐:いきなり言っちゃうけど、その頃カブちゃんは、NOBU君が〈FUTURE TERROR〉というパーティを何もないところから作って、みんなの信頼を勝ち得るまでのものすごい大変さをわかった上で、「そこに挑戦したい」と言っていたんだよね。そして「それで、俺がDJとしていまより良くなっていったとしても、それは〈FUTURE TERROR〉のおかげなんだ」とも話していた。

KABUTO:本当にそう思います。

■五十嵐:これからあらためて聞くけど、カブちゃんがその頃から思ってきたことに、ここに来て近づいてきたのかなって俺は感じてるんだよね。

KABUTO:やっとちょっとは見えたかなって感じですね。

■五十嵐:まず、11月15日にカブちゃんがいま〈GRASSROOTS〉で主宰してる〈LAIR〉の6周年があったじゃない(その日のゲストはムードマンと、DJスプリンクルズことテーリ・テムリッツだった)。あれは本当に素晴らしかったね。あの雰囲気を作り上げたっていうのがさ。DJはもちろん良いに決まってるんだけど。

KABUTO:プラス皆の人間力ですよね。

■五十嵐:その一方で2013年になり〈womb〉や〈ageha〉の〈ARENA〉のような大きな会場のメインも務めたり、活躍の場を広げてきているよね。そんなこといろいろと思い出してたら、こないだの〈FUTURE TERROR〉の12周年(2013年11月23日)のフロアでさ、朝、俺がHARUKAのDJで踊っていたら、NOBU君がカブちゃんのところに来て、「お前、去年あたりからいい動きしてるよ」って、俺の目の前で話し出してさ(笑)。それを見た時に、お互いの気持ちをメチャメチャ感じて、何故か俺が感動しちゃって。俺が泣いてどうするんだっていう(笑)。

KABUTO:NOBU君とは、もう出会って20年ですよ。俺が17のとき。共通の知り合いがいて、ある日その人とNOBU君とで俺の地元に来たことがあって、そのときに初めて会って。凄い覚えてますね。RYOSUKE君(同じく元〈FUTURE TERROR〉)も17のときから知っていて、俺はRYOSUKE君が当時やっていたバンドをよく見に行ってましたね。

■五十嵐:RYOSUKE君がやってたのはハードコアのバンドだったんだっけ?

KABUTO:そうです。RYOSUKE君は、ハードコアだけじゃなくてレアグルーヴとかいろいろな音楽を聴いてる感じで、当時の俺はメチャメチャ影響受けてるんですよね。RYOSUKE君とは、高校生の頃、俺が船橋のバーみたいな所でDJしてたときに、初めて話したのは凄い覚えてます。

■五十嵐: RYOSUKE君も年上だよね? 当時のふたりはどんな関係だったんだろう。街の兄貴分みたいな感じ?

KABUTO:兄貴って、そこまで仲良くなれなかったですね。

■安田:遊びに行くといる、格好いい先輩みたいな?

KABUTO:そう。千葉に〈LOOK〉っていうライヴハウスがあって、そこによく遊びに行っていたんですけど、最初は話もできなかったですね。「ちわっす」「おつかれさまです」って感じで。

■五十嵐:ガハハハハ(笑)! そのときが17歳っていうと、1992、93年ぐらいか。そのときはどんなDJしてたの?

KABUTO:そのDJのとき、(ビースティー・ボーイズの)『CHECK YOUR HEAD』からのシングル・カットをかけてたんですよ。そうしたらRYOSUKE君が反応して、話かけてくれて。

■安田:KABUTO君の音楽のルーツっていうと何なんですか?

KABUTO:うーん、強いていうならスケート・カルチャーがルーツですね。スケートのビデオで使ってる音楽っていろいろじゃないですか。それをすごい観てたから、いろんな音楽を聴くようになったんですよ。
 あと姉が洋楽好きだったので、それでピストルズとかを聴いたのが小6とか。で、ガンズとかのハードロックからヘヴィー・メタル。スレイヤー、メガデス、というのが中1、中2ぐらい。
 で、中3になるとスケートもはじめて、メタリカ、アンスラックス、レッチリとかレニー・クラビッツを聴いていて、それからジミヘンやクラプトンとかも聴くようになりました。で、高校生になるとスーサイダル(・テンデンシーズ)とかバッド・ブレインズとかを聴く一方でHIP HOP、R&Bも聴いてて、テレビでは〈BEAT UK〉を観てたり。そういう感じで、聴いてきたものは皆とそう変わらないんだけど、ゴチャゴチャでいろいろ聴いてたんですよね。だから「昔何聴いてたの?」って聞かれると「全部!」って答えてて。レゲエやスカ、キンクスもスペシャルズも大好きだったし。昼間はスペシャルズ聴いて、夜になったらサイプレス(・ヒル)聴いて、みたいな(笑)。またゆったりしたい日にはスティーヴィー・ワンダーやプリンスも聴いてたし。だから「(特定の)この音楽で育った」っていうのはないんですよね。あと、そういう音楽の聴き方をしていたのは先輩とかの影響もあるから、千葉での遊びがルーツとも言えるかもしれないですね。

■五十嵐:ロックとクラブ・ミュージックが交わる時期というか、とにかくいろいろ新しいものが出てきた時代でもあったよね。

KABUTO:そうですね。アンスラックスとパブリック・エネミーの“ブリング・ザ・ノイズ”とか、ビースティーとかNASも人気があって、それで元ネタを掘り始めたりするんですよね。

■五十嵐:『パルプ・フィクション』等の影響でのレアグルーヴもあったしね。

KABUTO:映画の影響もありましたね。高校の時に『さらば青春の光』を見たり、マット・ヘンズリーの影響でVESPAが流行って乗ったりもしてましたね。

■五十嵐:90年代にはフィッシュとか、ジャム系のバンドも出てきたけどそういった音は?

KABUTO:俺はフィッシュとかは通ってないんですよ。その頃は俺、日本のハードコアがすごい格好いいと思ってた時期ですね。下北沢の〈VIOLENT GRIND〉とかもよく一人で行ってました(笑)。そういえば、NOBU君はニューキー・パイクスと繋がってたりして。

■五十嵐:そうなの?

KABUTO:そうなんですよ。そこでAckkyさんとも繋がるんですよ。

■五十嵐:なるほどね! Ackkyもニューキー・パイクスのライヴに客演で参加したこともあったみたいだもんね。
 そういう、90年代からいまへと連なる人の繋がりもあるわけだけど、ミクスチャーとかHIP HOPの世代の人たちから、バンドとDJの間の壁がまるっきりなくなったと俺は感じていて。要するにNOBU君世代ぐらいからなのかな。それまではクラブとバンド、ラップとバンドの垣根はすごく高かったように思うんだけど、サイプレス・ヒルとかガス・ボーイズが出てきたあたりから変わってきたんだよね。

KABUTO:それが、俺が高校生の頃ですね。俺、全部同時進行なんです。ハードコア聴いてる時期に〈MILOS GARAGE〉に行ったり、平日の青山〈MIX〉、あと〈BLUE〉とかも、千葉から遊びに行ってたし。四つ打ち行く前にアシッド・ジャズ、ラテンとかも聴いていて、ビバ・ブラジル(Viva Brazil)のスプリットのレコードを買ったらその逆面にサン・ラが入ってたりして。後に気付くんですけど、当時はサン・ラってわからず聴いてましたね。

■五十嵐:カブちゃんはバンドだけじゃなくDJの方にも、すんなり入っていったんだね。

KABUTO:クラブ・ミュージックの最初は、地元の仲良い年上の友だちが、兄弟でレコードすごい持ってて。その家がたまり場でよくDJして遊んでたりしてたんです。そこで電気グルーヴの『VITAMIN』や『オレンジ』とかを初めて聴いて、あとは〈ON-U〉とかのダブを聴いたり。高校のときはハウスとかテクノってあまりピンとこなかったんですけど、シカゴ・ハウスを聴いたときに「何だこれ!?」って思って衝撃を受けて、そこからハマってったんですよ。

■五十嵐:その頃、RYOSUKE君とかNOBU君はもうDJやってたの?

KABUTO:NOBU君は出会った頃はまだそんなにやってなかったはずですね。あまり正確には覚えてないんですけど。その頃トリップ・ホップも流行ってたじゃないですか。スカイラブ(SKYLAB)とか〈MAJOR FORCE〉、デプス・チャージ、セイバーズ・オブ・パラダイスとか、それでアンディ・ウェザオールが〈新宿リキッドルーム〉でやるときに、地元の友だちとNOBU君と一緒に行ったんですよ。それがクラブで初めての四つ打ち体験。19ぐらいの時かな?

■安田:四つ打ちを聴きはじめてからはどうなったんですか?

KABUTO:その後、ハタチぐらいからの何年か、毎年のようにアメリカに遊びに行ってた時期があるんですよ。地元のスケーター仲間がアメリカに住んでたから。いろんな街に旅行して、クラブもいろいろ行きました。ニューヨークに行ったときには(ジュニア・)ヴァスケス聴きに行ったりとか(笑)。NYでは他にも〈Sonic Groove〉と〈Drumcode〉の共同開催みたいなパーティとかにも行ったし。ちょうど年越し時期のフェスっぽいパーティで、NYのフランキー・ボーンズ、シカゴのマイク・ディアボーンやポール・ジョンソン、ヨーロッパからもアダム・ベイヤー、ニール・ランドストラムとか、いろいろ出てましたね。サンフランシスコではQ-BERTとか聴いてるけど、レコードはテクノを買って帰ってきました(笑)。ロスアンジェルスに行った時はたまたまカール・クレイグとステイシー・パレン、デトロイトのふたりが出るパーティがあったから、それに遊びに行ったりとかしてました。

■五十嵐:ここまで、若いときの音楽の話には「地元の仲間」という言葉が頻繁に出てくるから、やっぱり「千葉」はカブちゃんにとってとても重要な要素なんだね。カブちゃん自身は、住んでいたのは千葉のどのあたりなの?

KABUTO:僕は成田で、〈FUTURE TERROR〉の最初の4人のなかでは僕だけ住んでる所が離れてるんですよ。

五十嵐:成田ってどういう感じの街だったの?

KABUTO:成田山と空港くらいで田舎です(笑)。で、外国人が多い。地元の仲間はみんなスケーターでしたね。

■五十嵐:それにハードコアとか、バンドや音楽が好きな仲間も。

KABUTO:そうですね。皆で滑って、飲みに行ったり。その頃俺らまだ未成年だったけど、悪い先輩達と遊ぶのがすごい楽しかったし。そこからもう夜遊びの方にシフトしていくタイミングですね。

■五十嵐:俺の地元の静岡もそうだけどさ、そういうので生活は成り立たないじゃない。

KABUTO:成り立たないですね。

■五十嵐:どうしてたの?

KABUTO:普通に働いてました。まず車がほしいんで、お金貯めなきゃ、ってなって。高校卒業してすぐ車ゲットして。これで東京のクラブにも遊びに行ける! って。もうみんな乗せてパーティ行ったりとか、ウロチョロウロチョロしてましたね。俺、就職するとか大学に行くとか、全然考えなくて。まず遊び。

■五十嵐:ガハハハハ(笑)!

KABUTO:パーティの楽しさを知ってしまったので、もうひたすら遊びに行ってました。

■五十嵐:千葉で自分でパーティもやってたの?

KABUTO:いや、やってないです。俺が22歳くらいの時にRYOSUKE君が〈MANIAC LOVE〉でDJシャッフルマスターと〈HOUSEDUST〉っていうパーティでDJをやってて、それに結構遊びに行ってて。その頃にDJ RUSHとかPACOUみたいなDJを初めて現場で聞くんですよね。後で知るんですけど、その頃、KURUSU君(FUTURE TERROR)もRYOSUKE君と遊んでるんですけど、俺はその頃はまだKURUSU君のことは知らなくて、実際に知り合うのはもう少し後なんですよね。

■五十嵐:そうなんだ?

KABUTO:俺とKURUSU君がリンクしたのが、たしか(2000年前後に大人気だった)SUBHEADが来日した後くらいだったかな。
 SUBHEADが来日して、渋谷道玄坂の〈MO〉ってクラブでやってた〈Maximum Joy〉ってパーティでプレイしたことがあったんですけど、そのパーティがすごいヤバかったんですよ。ちなみに〈FUTURE TERROR〉の第1回目のゲストが、そのSUBHEADのフィルとMAYURIさん(metamorphose)なんですよ。
 その〈Maximum Joy〉には俺は客として遊びに行ってて、そこからクリスチャン・ヴォーゲルとか、No Future系にもハマっていくんですけど、そこにはNOBU君たちもいて。それから何年かして誘われるんですよね、〈FUTURE TERROR〉に。

[[SplitPage]]

デトロイトで音を作っている人たちって、結構生活が厳しいながらも、やっぱり音楽の力を信じてやってたりしますよね。自分も(進学はせずに)仕事して、働いた後にパーティの準備するために集まったりしてたんで、そういうところが当時ちょっと自分とダブって感じて、デトロイトの音楽にハマったっていうのもあるかもしれないですね。

■五十嵐:〈FUTURE TERROR〉はこないだ12周年だったから、2001年ぐらいに始まってるわけだよね?

KABUTO:俺は1回目の〈FUTURE TERROR〉のときはDJじゃなくて。実は1回目は遊びにも行ってないんですよ(笑)。
 俺、その時パーティが開催されることを全く知らなかったんです。地元で仲良かった友だちはそれ行ってて、俺は後から聞いて「え、そんなのやってたの!?」みたいな。で、それが集客も良かったらしくて、レギュラーでやってみようかってなったらしいんですけど、俺はもう、全然知らずに。
 だけど、ちょっと経った頃に……当時よく、音楽好きな友だちと、家でいろんな音楽聴きながらDJしてたんですよ。そしたらある日、NOBU君からいきなり電話がかかってきて「DJやらない?」って言われて。「レコードあるんでしょ?」「はい」って、「今度こういうのやるんだけど、どう? RYOSUKEとKURUSUと4人で」って。だから正式には、俺は2回目からなんですよ。

■五十嵐:なるほどね。

KABUTO:その時は結婚式場を借りて、システムを入れてやるって話で。でも、その時俺はパーティのやり方がなんにもわかんないから。必死にDJやるだけでした。

■五十嵐:俺、その辺の話は静岡にいる時に、何かの雑誌で読んで知った。パーティを自分たちで一から作り上げて。千葉にね、静岡の自分と同じ気持ちの人たちがいるんだってシンパシーを感じてたんだよね。環境がなければ自分たちで作るしかないっていう。

KABUTO:俺はもう、右も左もわかんないし、DJしかやってなかったんですけど。ただ言われたことをひたすらやって。「この時間に集合ね」って言われたら行って、システムを運ぶのを手伝ったりとか、その程度でしたけどね。その前に、自分がパーティに行ってクチャクチャに遊んで、っていう経験はあるんですけど、それを自分がやるとなったらどうやればいいかっていうのは、わかってなかったですね。

■五十嵐:東京のクラブで遊んでて、それを地元の千葉で再現したいっていう気持ちだったの?

KABUTO:うーん、東京で遊んでて、なんだろう、その時期はRYOSUKE君も〈HOUSEDUST〉を辞めていて、NOBU君は空手に打ち込んでた時期なんですよね。たぶん、また遊びたくなったからはじめたんだと思うんですけど。パーティをやるスキルはみんなあったと思うんだけど、日本のシーンに対するアンチテーゼ的な感じで最初ははじまってるんで。

■五十嵐:商売気とかの部分かな?

KABUTO:当時の東京のノリにちょっと飽きちゃったというか。やっぱり地元でやりたいっていうのも強かったと思うんですよね。

■五十嵐:遊びではじめたことに、だんだん気持ちが入っていったって言う感じ?

KABUTO: 初めはNOBU君に誘ってもらったけど、なんで俺を誘ってくれたのかはわかんないですね。聞いたこともないですけど。
 最初の〈FUTURE TERROR〉でのDJは警察に止められて途中でダメになったし、それからは数々のいろんなことがあるわけですけど。当時は「地元でやろう」ということだけを考えてたと思うんですけどね。それが徐々に、徐々に大きくなっていくというか。結婚式場からレストランに移ったり、場所も変えつつ。あ、レストランの前に別の箱があって。潰れて空いてた箱なんですけど、そこでパーティできるって話になって、〈FUTURE TERROR〉で最初にテレンス・パーカーを呼んだのはそこなんですよ。そこでみんなで何日か前から集合して、ホコリだらけのところをみんなで掃き掃除から全部やったりして。そのパーティが凄く強烈でしたね。それまでのパーティも楽しかったんですけど、そこで気持ちが一気に入った感じですね。

■五十嵐:ゼロから自分たちで作っていった、っていう。

KABUTO:強烈に憶えてますね。

■五十嵐:テレンス・パーカーも感動して〈Chiba City〉っていうレーベルを作っちゃったりね。

KABUTO:すぐやめちゃいましたけどね(笑)。最初DJ引退するって言ってたんだけど、その時の〈FUTURE TERROR〉で「やっぱり辞めない」ってなって、それからいまだに辞めてないんですけど。テレンスもそれぐらい強烈なインパクトを感じたんだと思うんですよね。(壁や天井から)水滴も垂れるし、最前列はタバコの火も点かないぐらい酸欠で。みんなメチャクチャ踊ってて。本当、初めて「ハウス」を感じた日だったかもしれない。

■五十嵐:伝説として話は聞いてる。

KABUTO:あれ遊びに来た人はみんな結構憶えてるんじゃないかなぁ。当時はいろんなMIX音源を聴けるサイトは〈Deephouse Page〉ぐらいしかなくて、来日前はそれでチェックするしかなかったんだけど、テレンスはHIP HOPとかいろいろなセットも結構やってたから「当日はどんなDJやるんだろう?HIP HOPやったらどうする?」とか、心配したりもしてたんですよ(笑)。けど、その日はURから始まって、ゴスペルやらディスコやらを2枚使いでかけたりしてて、何じゃこのDJは! って皆ひっくり返ったっすね。

■五十嵐:みんなで何日も前から集まって準備してそこに至る、って、いいなぁ。

KABUTO:みんなでマスクして(笑)。でも千葉のそのDIYスタイルはずっとそうで。その後やった会場はレストランだったけど、そこも何日か前から集合して、壁に防音やったりしてました。そこで本当、パーティをつくるっていうのはこういうことだと教えてもらって……「教えてもらった」って言っても、言葉で何を言われるわけじゃないですけど。

■五十嵐:今日はいろいろ訊こうと思ってたんだけど、その全部の答えがいまの話に集約されていたというか。そういうパーティ体験があったからこそカブちゃんは、ただスキルを磨くだけのDJにはならなかったんだね。

KABUTO:DJのスキルがあっても気持ちがないと……NOBU君のDJを見てたらわかると思うんですけど、たまに(ミックスを)ミスりますよ、NOBU君でも。だけど人間力で持っていけるんですよ。あれはNOBU君にしかない部分だと思うんです。あのイケイケな感じでミックスしてオラーッて、フロアが盛り上がっちゃうんですよ。ああいうDJ、誰にでもできることじゃないから、それをずっと見てると、そういう感覚に陥っちゃうというか。

■五十嵐:スキルは大事だけど、パーティを楽しみたいという気持ちはもっと大切なんだよね。

KABUTO:そう。その気持ちがグルーヴになって現れるし。あとひとつ言えるのは、〈FUTURE TERROR〉のお客さんってメチャメチャ踊るんですよ。常にダンスフロア。そういうダンスフロアの雰囲気。踊った人にしかわからない感覚ってあるじゃないですか。DJの皆もそうで、その感覚を持ったDJが揃ったな、とは思いましたね。

■五十嵐:高橋透さんが同じこと言ってた。透さんはソウルのダンサーやってたの。チーム組んで。透さんが言うには、俺たちは音楽評論家じゃないんだ、ダンスして遊ぶ仲間なんだ、って。

KABUTO:やっぱり、踊ったときにしかわからない感覚、ダンスフロアにいる時にしかわからない聴こえ方、見え方って重要じゃないですか。それをみんな知ってるんですよね。それを言葉で確認したりしないですけど、自然とDJもそうなるというか。〈FUTURE TERROR〉が最初ハウスやってたのも、そこから今のテクノに移行していって耳がどんどん変化していくのも、踊ってる人ならではの感覚があるゆえにだと思います。

■五十嵐:ダンスの楽しさを、人一倍味わっちゃってる人たちなんだよね。

KABUTO:そうなんですよね。いまの〈FUTURE TERROR〉に来てる人は知らないかもと思うんですけど、最初は歌物がガンガンかかってましたからね。ゴスペルとか。デトロイト・ハウスが好きすぎて、実際みんなでデトロイトまで遊びにに行っちゃいましたし(笑)。
 デトロイトで音を作っている人たちって、結構生活が厳しいながらも、やっぱり音楽の力を信じてやってたりしますよね。自分も(進学はせずに)仕事して、働いた後にパーティの準備するために集まったりしてたんで、そういうところが当時ちょっと自分とダブって感じて、デトロイトの音楽にハマったっていうのもあるかもしれないですね。俺の勝手な妄想かもしれないですけど(笑)。仕事してキツいけど、その日のためにみんな気持ちをそこに持っていくというか。
 ひとつ、すげー嬉しかった話してもいいですか(笑)? さっき話したテレンスを呼んだ回の後なんですけど、デトロイトからテレンスとスティーヴ・クロフォードのふたりを一緒に〈FUTURE TERROR〉に呼んだ時があったんです。そこでNOBU君は(海外からゲストをふたり招く大切なパーティを)、テレンス、スティーヴ、俺、の3人だけで一晩やらせてくれたんですよ。そのときもお客さんパンパンで。すげー嬉しかったですね。任されたっていうのもあったし。スティーヴの前にやったんですけど、DJ変わるときお客さんすごい拍手してくれて、テレンスとスティーヴも来てくれてワーッってなって。本当嬉しかったですね。NOBU君はサラッと俺を指名してくれたというか。RYOSUKE君やKURUSU君でもいいはずなのに。でも俺に振ってくれたんです。

■五十嵐:それぞれがDJスキルを見せつけるためにパーティをやってるんじゃないんだよね。

KABUTO:それをすごい感じましたね。

■五十嵐:こないだ(2013年11月)、カブちゃんが〈ageha〉の〈ARENA(メインフロア)〉でやってたじゃない? 同じ日にNOBU君は〈ageha〉の中の〈ISLAND〉でやってたんだけど。いまの話を聞いて、その日のことともリンクすると思った。

KABUTO:俺は初めてNOBU君が〈ARENA〉でやるときも行ってたし、正直みんなも、〈ARENA〉はNOBU君だと思ってたと思うんですよ。最初話が来た時は、自分が本当に〈ARENA〉でやるとは思ってなかったし。今までやってきたことがちょっとずつ繋がってきた瞬間でもありました。

■五十嵐:カブちゃんが〈ARENA〉でやるって知ったときは、俺もめちゃめちゃ嬉しかった。11月にはその〈ARENA〉があって、インタヴューの最初に言った、〈FUTURE TERROR〉12周年におけるNOBU君の「お前、この1年いい動きしてるよ」という言葉があった。その時に俺は「やっぱり思ったとおりだな」って感じたんだよね。あれは同じクルーとしての言葉でもあるけれど、ひとりの男同士としての言葉なんだよね。

KABUTO:本来DJとしては、そういうの持ち込まない方がいいのかな、って思うところもあるんですけど、やっぱり千葉の人間ってそこが熱いのがいいところだから。そういうのがダメな人もいるんですよ。でもやっぱり俺はそういうところ出身の人間なんで。そういう人たちのパーティはやっぱ熱いから。泣けるっすよね。

■五十嵐:だからデトロイト・ハウスにも泣けるんだよね。

KABUTO:感動するし、流行り廃りじゃないスタイルで、本当にここ(胸に手を当てて)。気持ちの部分。いちばん芯の部分をちゃんとわかってる人にしかできないパーティというか。〈FUTURE TERROR〉もダメな人にはダメだと思うんですよ、でもそれはまだ、本当の〈FUTURE TERROR〉を知らないなって。 

■五十嵐:最近になってNOBU君を知った人には案外知られてない部分かもしれないし、もっとアナウンスをしたい部分だと思うんだよね。

KABUTO:常に100%。本気な人ですね。

■五十嵐:KABUTO君もそうなんだよ。

KABUTO:その影響を受けてるから。それは身体で教えられたというか、見せられましたね。言葉では何も言われてないですね。

■五十嵐:それで〈GRASSROOTS〉の〈LAIR〉も同じ11月に6周年。「本当に素晴らしかった」という感想は最初に伝えたけど、あの光景を見た時に、カブちゃんがいままで頭に描いてたことが、形になってきたことの表れだと俺は思ったんだよね。6年経って、それについてはどう?

KABUTO:元々は〈GRASSROOTS〉が10周年のときに、(店主の)Qさんから「カブちゃんやってみる?」って言われて、「いいんすか?」って、最初はホント気楽にはじめさせてもらったんです。そのときは〈FUTURE TERROR〉に在籍してたんで、〈LAIR〉はもうちょっとパーソナルなパーティ……自分のスタイルでパーティをやれたらいいかなと思ってました。その後すぐに〈FUTURE TERROR〉を抜けるんですけど、千葉で教わった、パーティを一から作っていくことを目標にしてやっていきたいと思ってましたね。6年本当あっという間でした。やっと少しは良い感じにやれてきたかなと。

■五十嵐:いま話してくれた、「結果的に〈FUTURE TERROR〉を辞めることになったけど、自由にやれることにもなったんで、千葉で教わった、パーティを一から作っていくことを目標にしてやっていきたいと思うんです」という話が実は、このインタヴュー冒頭で俺が言ったことなんだよね。俺がブッキングさせてもらった姫路の〈彩音〉で、酒でベロンベロンになりながら2時間ぐらい同じ話をずっとしてたよ(笑)。

KABUTO:だはは! ありましたね(笑)。元〈FUTURE TERROR〉の人間として、このパーティの凄さを、もっと知らしめたかったっていうのもありましたしね。

[[SplitPage]]

これから厳しくなっていく環境のなかで、どれだけ工夫してサヴァイヴしていくか。それは、その人がこれまでやってきたことが全部出ちゃう部分だと思うけど、そこからいい音楽は絶対生まれてくると思っていますね。やっとみんな本気で考え始めたんじゃないかって思ってて。「なぜパーティをやってるのか」ということを。

■五十嵐:そして、〈LAIR〉が軌道に乗ってきた2009年には、カブちゃんとRYOSUKE君のスプリットのMIX CDシリーズ(『Paste Of Time』)を〈DISK UNION〉からリリースしたじゃない。あれは俺、いまだに聴いてる。さっきカブちゃんが「踊った人にしかわからない感覚を大事にしているDJが〈FUTURE TERROR〉には揃った」という発言をしていたけど、あのCDの空間の捉え方はまさしく、自宅ではない音の響き方を知ってる人たちのものだと思うんだ。
 去年、〈DOMMUNE〉の番組でベルナー・ヘルツォークの映画(『世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶』)を紹介する番組に俺が関わったときに、あの日の〈BROADJ〉をRYOSUKE & KABUTOにお願いしたのも、『Paste Of Time』からの流れなんだよ。あの映画は、それまで言われていた人間の起源を大きく塗り替えた、3万2千年前の洞窟壁画にまつわる作品なんだけど、それを〈DOMMUNE〉の番組前半で紹介するなら、番組後半の〈BROADJ〉は「あのふたりに頼んでみたい」と思ったんだ。

KABUTO:なんだろう、(『Paste Of Time』でやったように)空間をイメージするっていう行為というか、ある空間の中でダンスするとか、みんなパーティでやってることなんですよ。

■五十嵐:俺が素晴らしいと思ったのは、ふたりは映画に合った、洞窟という空間による音の響きを意識した選曲とミックスをちゃんとしてくれたのよ。空間プロデュースという側面でのDJの役割を見事に果たしてくれて、印象深いんだよね。

KABUTO:俺も、「洞窟」っていうテーマは初めてで(笑)、しかも何万年もさかのぼるっていうのは初めての感覚で、悩みましたけどね。

■五十嵐:何万年も前の人も、現代の人も、根本のところでは同じなんだよね。それを音で見事に表現してくれた。

KABUTO:あのときの録音はたまに自分でも聴いてます(笑)。でも、そうやっていろいろな現場でDJやれるのはありがたい話ですよね。いま、同じ〈CABARET〉チームのyone-koやmasda君と出会ったのもそうだし。yone-koに関しては、静岡にDJで行った時に、静岡のKATSUさんから「yone-koってのが東京にいるからよろしくね」って言ってもらったことがあって。でも実は俺は、当時から〈CABARET〉が気になってたんですよ。日本人の音源も結構チェックしてたから、The Suffraggetsも聴いてたし。で、静岡から戻ってきてから、〈CABARET〉に遊びに行って。そこで、「yone-ko君っすよね?」って、俺から話しかけたんですよ(笑)。「今度タイミング合ったら一緒にやろうよ」って。それがファースト・コンタクトですね。
 その後、さっき五十嵐さんが言った『Paste Of Time』を俺とRYOSUKE君とで出した時に、「リリース・パーティやらない?」って話になったんですね。それで「ふたりだけでやるのもなんだから、誰か呼ぼうか」ってなった時に、yone-koがいいんじゃないか、と。そのときにyone-koと初めて一緒の現場でDJやって、yone-koが俺らのDJにも反応してくれて。それですぐyone-koはわかってくれたと思うんですよね。その時、音楽の話はそんなにしてないと思うんですけどね。

■五十嵐:音で通じ合った。

KABUTO:そう、それで俺が「〈LAIR〉でもDJやってよ」って。逆にyone-koは自分が〈SALOON〉でやってた〈Runch〉に呼んでくれたり。そういう風に、とんとん拍子に。
〈CABARET〉のメンバーは、最初yone-koしか知らなかったんですよ。他のメンバーとは誰も喋った事なかったから。顔は知ってたんですけど(笑)、話しかけるのも照れくさいしって感じで。で、〈CABARET〉に遊びに行くようになって、yone-koと話してるときにmasda君が来て、「KABUTO君だよね?」って話しかけてくれて「よろしくっす」みたいな感じで。で、少し経ってyone-koはベルリンに行くんだけど、ある時にmasda君と話してて、「〈CABARET〉どうするの?」って聞いたときに、「パーティは続けたい。手伝ってくれない?」って言われて。で、俺、レギュラー・パーティも〈LAIR〉しかなかったから「いいよ」って。俺、最初、裏方の手伝いかと思ったんですよ。一足早く現場に入っていろいろケアしたりとか、そういう意味での手伝いを頼まれてるのかと思って返事したら「いや、DJで」って(笑)。

■五十嵐:そりゃそうだよ(笑)

KABUTO:それで2012年に〈CABARET〉に正式に入って、いきなりスコーンってやらせてもらって。そのとき思ったのが、「masda君、けっこう腹くくってんなぁ」って。本気だなって思ったんですよ。

■五十嵐:カブちゃんからの影響も強いと思うんだけど。

KABUTO:本当っすか。本気でやろうとしてる人には魅力を感じるし、そういう人じゃないとやりたくないし。

■五十嵐:一緒に本気でやれる新しい仲間ができて、それが〈CABARET〉ということなんだね。それじゃあ、この先の目標は? カブちゃんは〈FUTURE TERROR〉を離れるときから「DJとしても上を目指す」とも話していて、いまは事実、全国津々浦々に呼ばれるようになっているわけだけれど。

KABUTO:目標……大げさですけど、遊びに来てくれた人の人生を変えられるようなパーティをやることですかね。「このパーティがあったから、俺の人生変わっちゃったんだよね」って、来てた人に言わせてみたいですね。それだけかも。俺もパーティで人生狂わされたし(笑)。もちろんいい意味で。〈FUTURE TERROR〉で人生狂わされた人、価値観変わった人結構いると思うんですよ。それを伝えてくってわけじゃないですけど、人生巻き込み型パーティっていうか。生き方に対してもそうだし、全てにつながるじゃないですか。いろんな考えがあってもちろんいいんですけど、やっぱり音楽ってすごい原始的なもので、リズムはずっとあったものだから(人間にとってすごく大切なもの)。それはやっぱ、ずっと伝えないといけないっていうか。テクノだろうがハウスだろうが、基本、根っこの部分は一緒だと思うんですよ。お客さんの人生を変えるぐらいのパーティをしたいっていうのは、永遠のテーマですね。〈FUTURE TERROR〉を抜けてからですけど、やっぱりそれは常に目標というか。

■五十嵐:この生きづらい時代の、パーティの存在意義という話にもつながるよね。ただ楽しみたいだけなのに、どうにかして奪いに来ようとする奴らがいるからね。

KABUTO:それと戦う意味で音楽があると思ってるし。

■五十嵐: 〈LAIR〉に行ったときもさ、あのお客さんの優しさ。

KABUTO:そうなんですよね。

■五十嵐:あれはある意味理想郷だった。あれを目指したいと思ったよ。具合悪そうな奴がいたら「大丈夫ですか?」とか。「金なくて困ってる」っていう奴がいたら……。

KABUTO:一杯おごるとか。そういうことじゃないですか。助け合いの精神。「全てパーティから学んだ」って言ったら大げさかもしれないですけど……俺、元々は凄い人見知りなんですよ。さっきyone-koに自分から話しかけたって言ったじゃないですか。何かそれから、自分からいろんな人に話しかけるようになったんですよ。だいたい酔っ払ってんですけど(笑)。
 最近仲良くしてるSatoshi Otsuki君もそうで。(田中フミヤの)〈CHAOS〉にOtsuki君が来てたときに、「Otsuki君今度一緒にやろうよ!」って話しかけて、そうしたら「MIX聴いてましたよ」なんて言ってくれて「おっ!」みたいな。だからそういう、ベクトルが合う感覚というか、あ、この人全然大丈夫だわ、って嗅ぎ分ける感覚とか、そういうのもパーティから学んだし。だから、自分から行かないと何も開かない、待ってても何も来ない、っていうのは本当に、千葉にいたときに教わったことっていうか。

■五十嵐:ヴァイブスで繋がると、偏見も取れるしね。

KABUTO:そう。例えば〈CABARET〉はマニアックな音を出してるんだけど、みんなシュッとしてて、出で立ちもスマートじゃないですか。最初は俺、〈CABARET〉クルーとこんな仲良くなるなんて思ってなかったけど、なんだろう、〈CABARET〉に入るって決まったときに、俺のキャラがプラスに働くと想像できたんですよ。yone-koやmasda君みたいに知的で、膨大な知識のあるDJと、俺みたいなタイプのDJが一緒にやれたらいいパーティができるなっていうのが。バランスですよね。どっちが行き過ぎてもダメだから。お互い切磋琢磨して、バランスがとれてると凄くいい。それが今の〈CABARET〉なんですよ。

■五十嵐:違う人との調和ってことだよね。本当にここのところね、カブちゃんがずっと前から言ってたことが形になってるという感触を、きっと本人がいちばん感じているはずなんだよ。

KABUTO:そうですねぇ。感じられるようになったかな。

■五十嵐:周りも、そういうステージも用意してきているし。

KABUTO:なんか、DJ度胸じゃないけど、海外のDJが出るパーティで、そのゲストDJの後にやることが何回かあって。その時もまぁ普通に緊張はするんですけど、〈FUTURE TERROR〉のときに比べたら全然余裕、って正直思いましたね。当時は、NOBU君の後にDJすることほど、緊張するものはなかったですね。当時みんなNOBU君を観に来てるって感じもあって、お客さんはNOBU君で散々踊りつくして、DJ変わるとき「次DJ誰? まだ踊れるの?」みたいな空気があるじゃないですか。そういう現場を経験してきたから、外タレのときは緊張は少なくて。やっぱそれは、千葉でやってきた甲斐があったなぁ、っていうのは東京に出てきてから感じましたね。

■五十嵐:俺は、カブちゃんが実際いま好きな音楽とかも詳しくはチェックしてないんだけど、皆がカブちゃんやNOBU君に求めてるものっていうのは、パーティ=人なわけじゃん。

KABUTO:人生捧げてる人たちですから(笑)。

■五十嵐:だから俺はもう、今後の活躍を……。

KABUTO:「このまま散ってやるよ」って感じですね(笑)。

■五十嵐:ガハハハハ(笑)。

KABUTO:だからもう、そこの覚悟を決めてる人と決めてない人との違いは、俺のなかではものすごくデカいんですよ。東京でやってても、辞めちゃう人もいるじゃないですか。

■五十嵐:みんなセンスは凄くいいのにね。

KABUTO:そう。でもなんだかんだ言って、いまは東京で見せてナンボってところは実際あると思う。

■五十嵐:世界との玄関口だしね。

KABUTO:世界中見てもこんなクレイジーな街ってないと思ってるんですよ。本当、東京って独特な狂い方じゃないですか。だからそこで勝負できるっていう幸せも感じないといけないし、ここで生活することの大変さもそうだし、ここでDJできることのありがたみを感じながらプレイして、その気持ちをお客さんに伝えられるかどうかってことですよね。

■五十嵐:プレイがいいのは大前提としてね、そこに気持ちがないと、この街ではサヴァイブできないよね。

KABUTO:ニュースを見てても、これから厳しくなっていく環境のなかで、どれだけ工夫してサヴァイブしていくか。それは、その人がこれまでやってきたことが全部出ちゃう部分だと思うけど、そこからいい音楽は絶対生まれてくると思っていますね。

■五十嵐:だからいま、突きつけられてるんだろうね。

KABUTO:そう、やっとみんな本気で考えはじめたんじゃないかって思ってて。「なぜパーティをやってるのか」ということを。風営法(の問題)もあるし。デトロイトなんか2時までしかパーティできないですからね。それでもたくさんいい音楽が出てくる。普段の生活はキツかったりするのに。厳しい状況になればなるほど、音楽って良くなっていくじゃないですか。それに比べたら東京はまだ恵まれてるんですよ。すごい数のクラブやパーティがあるんですよ。

■五十嵐:本当に、いまの東京は凄いんだよね。

KABUTO:だけど実際は、(本気で)やれてる人はほんの一部じゃないですかね。でも歳とるとだんだん感覚が研ぎ澄まされてくるというか、同じような人が自然と集まってくるんですよね。どんどん辞めて抜けていくから、そういう人しか残んなくなってくるし。それでみんなで協力して盛り上げようとか、そういうことでもいいし。皆でできることがたくさんあると思うんです。

■五十嵐:こないだ俺、ele-kingのチャートで『求めればソウルメイトと必ず会える都内のDJ BAR&小箱10選 pt.1』ってやったけど、「ソウルメイト」ってそういうことなんだよね。若い人に「ソウルメイト」とか言うと笑われるかもしれないけど(笑)。

KABUTO:ジャンルとかじゃないんですよね。だから俺は〈GRASSROOTS〉でパーティやってるし。〈CABARET〉に入る前、〈LAIR〉にmasda君を呼んだ時なんですけど、秋本さん(THE HEAVYMANNERSの秋本武士)とかKILLER-BONGとかがフラッと来たことがあったんですよ。普段やってるクラブじゃ有り得ないですよ。masda君がDJやってるところに秋本さんがいるとか。で、Qさんが「これで秋本さんを踊らせたら凄いよね」とか言うんですよ。俺も本当、そう思って。ジャンルとかは無し。人と人。だから俺も、全然知らない人がやってるパーティ行ったりしてるんですよ。それで新しい感覚を覚えるし、いろんな考え方を知ることもできる。だから〈womb〉も〈AIR〉も遊びに行くし、逆にそこで遊んでる人たちが〈GRASSROOTS〉に来てくれるようになったりするんです。「こんなとこあったんだ、ヤバいね」って言ってくれて「でしょ?」って。でもキッカケがなかっただけで。そのキッカケづくりができたのはデカかったかな。そうすると「ひとりでGRASSROOTS来ちゃいました」とか言う人も出てくるんだけど、何でもいいんですよ。そうやっていろいろな音楽を聴いて、いろんな感覚や価値観を感じてもらえば、やってる意味があるというか。別にDJ巧い人でも、その感覚がなかったら俺はあんまり魅力を感じないし。NOBU君の凄さってそういうところにあるのかなって。〈BERGHAIN〉でやってて、〈GRASSROOTS〉でもやるっていう。

■五十嵐:それをやってたのは、ラリー・レヴァンなのかもね。

KABUTO:そういう感覚を身につけるのはすごい重要だと思いますね。場所を選ぶ嗅覚というか。その場の匂いを感じ取ってそこにガッと行けるというか。

■五十嵐:パーティがあれば幸せでしょ?

KABUTO:幸せですよ。パーティで皆で踊ったり、いろんな人と出会えたり、いろんなジャンルの音楽や人が交じり合う瞬間って、やっぱり楽しいし、幸せだって思います。それがいま自分がいちばん感じやすいのが〈GRASSROOTS〉なのかな、とか思ってますね。そこでいろいろなジャンルの人が交差して新しいものが生まれたら凄くいいし。「俺は違うことやるよ」って思うのもいいし。それを全部含めて、パーティでしかできない感覚というか。そこが全てですね。

■五十嵐:なんか、安心したよ(笑)。さっきからNOBU君、NOBU君、って言ってるけど、カブちゃんにとってはNOBU君発信だったものが、KABUTO君が発信することによって伝わっている人というのが、着実に増えているという風に俺は実感してるんだ。カブちゃんのいないところでね。それこそ、〈CABARET〉にしか行ったことのなかったお客さんが「KABUTOさん良かったです」と。そういうのを耳にしていると、おべんちゃらみたいだけど、カブちゃんは有言実行したんだな、と思う。

KABUTO:俺も意地ありますから(笑)。〈FUTURE TERROR〉を辞めた時の気持ちがずっと原動力になってますから。これからもずっと続いていくでしょうけど。

■五十嵐:いまでも〈FUTURE TERROR〉にはLOVEなんだね。

KABUTO:もちろん。当時〈FUTURE TERROR〉に関わった全ての人には本当感謝してます。お客さんとケンカしてるの五十嵐さんに見られたりとかあったけど(笑)。

■五十嵐:でもちゃんとその後仲直りしてたじゃん(笑)。音楽の前に人ありき、だもんね。

KABUTO:そういうところを感じられたら、また音楽が楽しくなるし。全てですよね、音楽と、人と、その人生。それについてくると思ってるんですよ、パーティって。そこにいるいろんな人に出会って、そこから生まれるものってたくさんあると思うんで。だから、グイグイ来る若い子に「シッシッ、あっち行け」なんて、絶対誰もやらないと思うんですよ。相当ヒドくない限りは(笑)。そういう若い子を増やしたいですね。ちょっとしたことでもいいんですよ。いいパーティだなって思って最後まで遊んだなら、グラス片付けたり、皆に「おつかれさまでした」って声かけてから帰るとか。なんでもいいんで、自分の方からパーティに関わって楽しんでほしいですね。そうすればもっと楽しくなるし。

■五十嵐:そろそろまとめようか。俺が話してほしかったこと、ほぼ全部言ってくれたよ。

KABUTO:あとは〈CABARET〉をよろしくお願いします。これから先も面白い動きがあるし。それで来年で〈CABARET〉は15周年だから、パーッと何かやるか、っていう話もしてて。DJも、〈CABARET〉関連デザインを担当してくれてるMAA君も含めてみんなでいいパーティやりたいと思ってます。

■五十嵐:常に応援してます。これからもその調子で頑張ってください。最近住居がご近所さんにもなったし(笑)。

KABUTO:まだまだ話したいエピソードは山ほどありますけど(笑)、今後の活動を楽しみにしててください。

■ KABUTO on line DJ MIX
CB-157 KABUTO
https://soundcloud.com/clubberia/cb-157-kabuto

Strictry Vinyl Podcast 10 KABUTO
https://soundcloud.com/strictlyvinylpodcast/svp010

■ DJ schedule
12/28(SAT) Mood and Voltage@cafe domina名古屋
12/30 (MON) KARAT@Solfa w DJ SODEYAMA
12/31 (TUE) TBA
1/10 (FRI) GRASSROOTS
1/18 (FRI) CABARET - a leap of faith edition - feat KAI from berlin
2/1 GIFT feat CASSY @AIR afterhours

- ele-king

OGRE YOU ASSHOLE - ele-king

 いま現在、私を完璧にトランスさせることのできる日本のバンドは、オウガ・ユー・アスホールであります。『homely』以降の彼らのライヴは、「ドリーミー」なんて生やさしいものではない、まさしく「サイケデリック」そのもの。「ロープ」という曲は、ヴァージョンによっては「ドープ」と呼ばれているけれど、私はライヴで演奏されるこの曲を世界中の人に推薦したいと思う。ライヴ会場で聴かなければ、この曲の真実は伝わらないし、そして、20分にもおよびであろうこの演奏を聴いたら、その日たとえどんなに嫌なことがあったとしても、1日のうちに2回以上も電車のダイヤルが乱れても、満天の星のなかをドライヴできる。初めての人は、日本にこんなバンドがいたことに驚きを覚えるでしょう。日本にもこんな、強いてたとえるなら、初期ピンク・フロイドとカンが混ざったようなバンドがいるのです。最新号の紙ele-kingの表紙も飾っています。
 というわけで、12月28日恵比寿リキッドルーム。今年最後のフリークアウトを楽しみましょう!


Eccy - ele-king

ども、Eccyです。今年もあっという間に終わってしまいましたねー。
結局リリース出来ませんでした(泣)。が、しかし! 何か最近気合いも入ってきたしモチベーションも上がってきたので、来年はリリースすると思われます! いやします! しよう! する! 出来るかな? いやしなきゃ! するでごわす!するなっしー! するめいか! するーざふぁいやー! ちゃかかーん! ということで、2013年のベストアルバムトップ10を書きました。載せたいのもっといっぱいあったけど悩みに悩んで絞りました。ではわたくし、2014年はもっと頑張ります! みなさんよいお年を!(紅白あまちゃん特集楽しみっすね)

https://twitter.com/_Eccy_
https://soundcloud.com/eccyprodukt
https://yusukekiyono.tumblr.com/

10 Best Albums Of 2013


1
Oneohtrix Point Never - R Plus Seven (Warp)

2
Jon Hopkins - Immunity (Domino)

3
Bonobo - The North Borders (Ninja Tune)

4
Danny Brown - Old (Fool's Gold)

5
Atoms For Peace - AMOK (XL)

6
相対性理論 - TOWN AGE (みらいレコーズ)

7
Sky Ferreira - Night Time, My Time (Capitol)

8
Zomby - With Love (4AD)

9
Pusha T - My Name Is My Name (GOOD)

10
Quasimoto - Yessir, Whatever (Stones Throw)

Compilation Albums - ele-king

 コンピレイションを3~4枚。

Various Artists - New German Ethnic Music  Karaoke Kalk

Amazon iTunes

 エレクトロ・アコースティックならぬエレクトロニカ・アコースティック系の〈カラオケ・カルク〉が企画したのはドイツのフォークロアをマーガレット・ダイガスやウールリッヒ・シュナウスをはじめとするクラブ系のプロデューサーたちが電子化するというもので、1970年代にヘンリー・フリントがアメリカでブルースやカントリーをエレクトロニック化した「ニュー・アメリカン・エスニック・ミュージック」に習ったものだという。このところドイツでは過去の音楽に関心が集まっているらしく、移民たちがドイツに持ち込んだ音楽を浮き上がらせるためにリミックスという手法を選択したのだとか。なるほどトーマス・マフムードは北アフリカ起源のグナワをダブに変換し、グトルン・グットはクロアチアの無伴奏男性合唱、クラッパに重いベースをかませて高い声を引き立てている。マーク・エルネストゥスの興味はモザンビークに移ったようですw。

 元の曲がわからないのでジャーマン・ネイティヴのようには楽しめないものの、基調となっている重苦しさはブルガリアン・ヴォイスを思わせるものが多く、オープニングのムラ・テペリはまったくそのまんま。言われてみれば明らかにトルコ系の名前だったカーン(エア・リキッド)はかつての出稼ぎ先だったギリシア音楽をゴシック風にアレンジしてみせる(古代を中世化させたわけですね)。奇しくも2013年はトルコ人9人を殺害したネオ・ナチで唯一自殺しなかった女性、ベアテ・チェーペの裁判がドイツ中の注目を集め続けた年だけにトルコ系のプロデューサーが健在だったというだけで嬉しい知らせといえる。ワールプール・プロダクションズのエリック・D・クラークがキューバ系だったということも初めて知った。
 グルジアや南米からのエントリーもあって、2013年には相変わらずモンド気分な『ザ・ヴィジター』をリリースしたマティアス・アグアーヨと第2のジンバブエと化しているベネズエラのニオベはそれぞれヴェトナム・カン・ホーというフォーク・ソングとスペインのルネッサンス合唱を題材にレジデンツ風ラウンジ・ミュージックに仕上げている(そう、個人的には南米組、圧勝です)。つーか、トラック・リストは面倒くさいので以下を参照。
https://www.inpartmaint.com/shop/v-a-new-german-ethnic-music-immigrants-songs-from-germany-electronically-reworked/

HouseIDM

Various Artists - Scope Samurai Horo

Amazon iTunes

 なんだか補完しあっているようだけど、同じドイツから〈サムライ・ホロ〉がコンパイルした『スコープ』は期せずして、フォークロアとはなんの関係もないのに、似たような重厚さにに支配され、フェリックス・Kのヒドゥン・ハワイと同じく、ベーシック・チャンネルを通過したストイックかつスタイリッシュなミニマル・ドラムンベースを聴かせる。イギリスからASCや最新シングルがまさかの〈トライ・アングル〉に移ったニュージーランドのフィスなど、集められたプロデューサーはドイツだけとは限らず、このところ頭角を現しつつあるサムKDCや2011年に『テスト・ドリーム』が話題となったコンシークエンスの名前もあるものの、まるでひとりの作品を通して聴いているような統一感があって、その意志の堅さには恐れ入る。こういった音楽をマイナー根性ではなくファッショナブルな感覚で聴いていただけたら。



ExperimentalDrum'n'BassIDM

Various Artists - We Make Colourful Music because We Dance in The Dark
Greco-Roman

Amazon iTunes

 大量に吐き出される音楽にはやはり無意識が強く反映され、日本のそれには奇妙な躁状態が表出しているように(なんで?)、ヨーロッパはいまだ深い闇に沈んでいるようである。2017年までにEUからの離脱を国民投票で決めるだなんだと騒がしくなってきたイギリスは、しかし、まったく雰囲気が違っていて、ディスクロージャーのシングルをリリースしてきたグレコ・ローマンがコンパイルした『ウイ・メイク・カラフル・ミュージック・ビコ-ズ・ウイ・ダンス・イン・サ・ダーク(僕たちは暗闇で踊るのだから、カラフルな音楽をつくるのさ)』は(思わずタイトルで買ってしまったけれど)、たどたどしさをなんとも思っていない勢いと若さに満ち満ちている。ディスクロージャーとデーモン・アルバーンのDRCミュージックに参加していたトータリー・イノーマス・イクスティンクト・ダイナソー以外はまったく知らないメンツだったけれど、バイオとテルザがとても耳を引き、調べてみたら前者はヴァンパイア・ウィークエンドのクリス・バイオで、それこそヴァンパイア・ウィークエンドのトラックを使い回したハウス・ヴァージョン。ハーバートがデビューさせたマイカチューのプロデュースによるテルザはゼロの飯島さんもお気に入りのようで、「踊ってんじゃなくて戦ってんのよ/輝いてんじゃなくて燃えてんのよ/触ってんじゃなくて感じてんのよ」という歌詞を気だるげに歌っています。


Various Artists - Young Turks 2013 Young Turks

Amazon iTunes

 この辺りのシーンの火付けは野田努が言うようにジ・XXなんだろう。同じくレーベル・コンピエイションとなる『ヤング・タークス2013』はジ・XX「リコンシダー」にサウンド・パトロールで紹介したFKAトゥィッグス「ウォーター・ミー」とまー、レア・シングルばりばりで、コアレスのニュー・プロジェクト、ショート・ストーリーズ「オン・ザ・ウェイ」まで入ってますよ。いやー、こんなに勢いがあったら、そらー、EUも飛び出しちゃうかも知れませんねー。とはいえ、ギリシャを見放さなかったことで、EUには現在、周辺から弱小国が相次いで加入を決め、入れてもらえないのはトルコだけという感じになっています。〈ヤング・タークス〉というのは若いトルコ人という意味だけどね。

ExperimentalHouseAmbientElectro

 もういい歳こいてることは重々承知、僕は未だに自分の放浪癖を更正するすべを知らない。この原稿を書いている現在も、何の因果かヨーロッパを放浪している。これは、まあ、そのドリフト録とでも言うべきものだ。そもそもはふとした思いつきでLAに向かったことから始まるこの生活だが、今回の最終目的地もいちおうのところLA。僕の放浪はLAに始まりLAに終わるのだ。いや、終わればいいんだけれども。

 といいつつ、この記録を書きはじめた10月には、ローブドア(Robedoor)のヨーロッパ・ツアーのコラボレーターとして暗雲立ち籠める最悪の欧州をドリフトしていた。しかし彼らとの出会いは僕が初めてLAに長期滞在していた2009年に遡る。当時はLAの〈エコー・パーク〉をヤサにしていて、ローカルたちが集うギャラリーや人ん家で夜な夜な催されるアホなパーティーを通じて親交を深め云々、そこからずっとつながる縁である。

■Oct14th
 ローブドアのブリット(〈NNF〉主宰)とアレックスにベルリンにて久々の再会を果たし、昨年LAでの対バン以来初めて観る彼等のデュオ編成でのパフォーマンスに度肝を抜かしたのは言わずもがな、今回のツアーの前半戦をサポートしたスウェーデンからのナイスガイ、マーティンによる初めて見るサンド・サークルズ(Sand Circles)のライヴ・セットは素晴らしいものであった。〈NNF〉からの過去のテープはどちらもヴァイナルをプレスするにじゅうぶんなクオリティであるが、それを納得させるセットだ。
ショウ終了後、再会の感激冷めやらぬ我々はベルリンの寒さをものともせず、さらに寝床を提供してくれたお姉チャンの家が5階で勿論エレベーターが無いため全力で機材を持ち込むことによって全員熱気すら放ち、ヨーロッパの一般的ボロ・アパートの何たるかを忘れシャワーの順番を譲り、みなを起こさぬよう悲鳴を抑えながら3日ぶりのシャワーを冷水で浴びていた。

■Oct15th
 翌朝ムニャムニャのままプラハに向け出発。国境を越え、チェコに入国した途端に濃霧に包まれるハイウェイ。ようこそ暗黒のチェコへと言わんばかりの歓迎にテンションも上がる。幻想的なプラハの町並みに感銘を受けながらダンジョン感全開のハコでのショウ。この日のローブドアのセットは素晴らしかった。勿論この土地で得た僕の心象風景とローブドアのサウンドが相乗効果をもたらしたのであろうが。僕が嗜好するような音楽シーンがこの土地に根づいているのかはわからないが少なくともこの日集まった多くのオーディエンスが熱烈にソレを求めているのがビンビンに伝わってきた。この日の主催者たちが運営する〈アムディスクス(AMDISCS)〉等のDIYレーベルが放つ多くのリリースからもそれをうかがい知ることができる。


そしてこの画のように野暮ったい。しかし野暮なオーディンスこそがリアル。ノー・ハイプ・シット。見よ前列のお姉ちゃんを。

寝床への道中、マシンガントークで町のあっちこっちの歴史を熱弁するこの日のプロモーターの一人(名前失念)は最高だった。僕らのために用意してくれた寝袋のひとつがテントだったのは意味わからんかったけども。

■Oct 16th
全員が早起きした。宿先の正面にそびえ立つ重そうな教会前(Church of the most sacred heart of our load)で朝市が催されており、僕らは大量の新鮮な果物とチーズを購入し……って、そう、チーズ。ローブドアのアレックスは食品輸入関係の仕事をこなしているためか、とにかくチーズに目がなく、僕らはツアー全日程を通してあらゆるチーズをつねに喰っていたため、車内はつねにチーズ臭で充満していたであろう。
この日のショウはウィーンのフラック(Fluc)で移動時間に余裕のある僕らは満場一致でクトナー・ホラのセドレツ納骨堂に寄ることにした。メタル系バンドのジャケで写真が濫用されているアレである。ノリでホトケをLEGOのごとく積み上げてみました的な実物に感銘を受けながら僕らは今回初めての観光らしい観光に充足した。

 フラックで僕らを迎え入れてくれた〈ヴァーチャル・インスティテュート・ヴィエナ(VIV)〉を主催するステファンとシーラは間違いなくウィーンでもっともイケてるカップルだ。シーラは最高の手料理をふるまってくれ、サウンドチェック後に僕らはそれを堪能し、ステファンは自身のNHKヴァイヴなプロジェクトJung An Tagenでナイスなオープニング・アクトを務めてくれた。ハコのサウンドシステムもさることながら、この日はDJ陣が素晴らしかった。SKVLKRVSHと名乗るアンチャンは僕の今年度のヘヴィロテをほぼ網羅してくれたし(D.R.I.からピート・スワンソンのミックスとか最高過ぎる)、そして何故かジェノバ・ジャクジーが80'sゴス全開のDJを……。
どうやらヨーロッパ・ツアー中であったアリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティに参加していた彼女は、最高潮に達したメンバー間の不和によりツアー半ばにして脱退し、強引にソロ・ツアーを慣行していたらしい。アナーキー過ぎる……。


酔いどれアレックスとジャクジー。何でジャクジーなのよってツッコんだら超真顔で本名だからと仰っておりましたが……

■Oct 17th
 お次はチューリッヒへ、ちなみに僕は今回のドリフトに際してビザも帰りの航空券も取得しておらず、EU加盟国でないスイスに入国するのを危惧していたが、問題なく国境を通過できた。高架下とスケート・パークに隣接するハコ〈Klubi〉は、どことなく新大久保〈アースドム〉を彷彿させる構造と音作りで、爆音での演奏を熟知しているようだ。プロモーションからアテンド、サウンドメイキングまで手掛けてくれたロジャーはソルト(Soult)としてホーラ・ハニーズ(Hola Honeys)のプロモーション・ツアーでNHKと共に来日もしている。ソリッドなDJを担当していたお姉ちゃんが用意してくれた豪勢な食事は、あまりのうまさに全員が無言でガッついていた。
満腹で弛緩しながらも、このあまりにも勿体ない待遇の何たるかを、僕にとって初めてのヨーロッパ・ツアーであるがゆえのカルチャー・ショックなのか、それとももしかしたらヨーロッパにおけるミュージシャンシップはゲストを快く迎え入れることがひとつのステイタスなのかしらんなどなど夢想しながら眠りについた。

無駄にドリフトは続く……

ackky (journal) - ele-king

7incシングル"Painting in November" 絶賛発売中!
radloop.com
ackkyjournal.cx

最近観た映画で面白かった作品(DVDレンタルと成さん(bonobo)コレクション)


1
LOVE STREAMS - JOHN CASSAVETES

2
THE MASTER - Paul Thomas Anderson

3
Spring Breakers - Harmony Korine

4
ペトラ・フォン・カントの苦い涙 - Riner Werner Fassbinder

5
アメリカの友人 - Wim Wenders

6
DRIVE - Nicolas Winding Refn

7
十階のモスキート - 崔 洋一

8
裏切りのサーカス - Tomas Alfredson

9
人生はビギナーズ - Mike Mills

10
世界にひとつのプレイブック - David O Russell

Youth Code - ele-king

 どうやら昨年頃からその兆候が見えていた90'sリヴァイヴァルは完全にトレンドとなってしまったようだ。

 ときに野生の鹿を轢きかけるなどして肝を冷やしながら極寒の東海岸をドリフトしている昨今のわたくしですが、先日、ブルース・コントロールのふたりの運転で移動しながら連中が車内でフロント242(Front 242)をかけていたので、何でこんなん聴いてんのよと訊ねたところ、ラス曰く、だって安いじゃん。とまっとうな回答が返ってきた後、でもEBMはいま結構流行ってんだよとのこと。確かにここ数週間ブルックリンを徘徊していたかぎりそれは充分に感じられた。たしかに昨今のUSインディー・シーンにおけるキーワードはインダストリアルというよりはボディ・ミュージックなのかもしれない(三田先生は流石です)。

 コールド・ケイヴに代表されるミニマル・ウェーヴ・リヴァイヴァルはボディ・ミュージック・リヴァイヴァルに完全に移行したと言っても過言ではあるまい。ユース・コード(Youth Code)はLAを拠点に活動する超スキニー・パピーな男女ユニットである。個人的にとてもアガッているおもな理由はこの男、ライアン・ジョージ。彼はかつて燻し銀のオールド・スクール・ハードコアを聴かせてくれたキャリー・オン(Carry On)のメンバーである(このあたりのバック・グラウンドも相当コールド・ケイヴと被ってるよね。だってウェスのアメリカン・ナイトメアも同時期に限りなく同じシーンで活動してたわけだし……)。
この手のサウンドにおける看板レーベルと言える(ジェネシス・P・オリッジの再発とかも精力的にやってますからね)〈ダイス・レコーズ(Dais Records)〉から発表された彼らの初のセルフ・タイトル・フルアルバムとなる本作は完全にボディ・ミュージックとしか形容できないビシバシ系のトラックにハードコアな男女ヴォーカルが畳み掛けるハイテンションな内容だ。またこのお姉ちゃんがブルータルなんですよ。Youtubeを見る限りパフォーマンスも相当テンション高めなんで近いうちに見たいなー……

 でもヒップなDJたちにとっては良いトレンドではないでしょうか。だってEBM系のレコードはワゴン・セール出没率高いですからね。

interview with Lea Lea - ele-king


Lea Lea
Pヴァイン

Tower HMV Amazon iTunes

 あの手この手で続けられるM.I.A.バッシングを見ていると、マドンナが『トゥルー・ブルー』(86年)を出した頃を思い出さざるを得ない。どこか挑戦的な女を見ると無性に腹が立つ男がいるということなのかなんなのか、理由は後から取ってつけたような批判が後を絶たず、何を歌っても三流扱い、映画『シャンハイ・サプライズ』に出れば「ワースト・アクトレス」に認定と、それはもうスゴい言われようだった。「フェミニズムを10年遅らせた」という女性たちからの批判も凄まじかったし、マドンナも脇が甘いというのか、批判を寄せつけないという雰囲気からはほど遠く、むしろ呼び込んでいるような風情まであった。いまのM.I.A.にも、そうした「呼び込む」感じというのはあって、「無性に腹が立つ人たち」の琴線を刺激していることは確かなんだろうけれど、これだけ時代が経っていれば、それがマドンナと同じものであるはずがなく、格差社会やイスラム差別といったイッシューも重なっているだろうから、なかなか見えにくいとは思うものの、どこがどう変わったのか、そこが気になるところではある。M.I.A.は一体、時代の何を刺激しているのだろうか。

 ジャマイカのテリー・リンもフォロワーにたとえられたけれど、リー・リーことリー・リー・ジョーンズにもM.I.A.と重なる部分があるように思われる。彼女について考えることもひとつの方法ではないかと思い、具体的にM.I.A.の名前を出して、どこか影響があるか訊いてみたところ、これは完全にスルーされてしまった。それだけ脈があると考えればいいのか、それともぜんぜん見当はずれだったのか。ひとつ、面白かったのは、リー・リーも政治的な歌詞を過剰に歌う反面、楽園に対するイメージも強く持っていたことで、イギリスにはこれまで戦闘的なシー・ロッカーズから浮かれモードのベティ・ブーへ、あるいは、グランジ・ロックのヴードゥー・クイーンからラウンジ・ミュージックのアンジャリへと、極端な方向転換を試みたフィメール・ミュージシャンがどの時代にもそれなりにいたことで、そこには政治とパラダイスが裏表に存在しているという観念がどうしても認められてしまう。「なにも戦いたくて戦っているわけじゃないから」と、彼女たちは言っているかのようだし、M.I.A.に通じる部分もそこかなーと思ったり。

ヴォーカルのレンジとパフォーマンスと社会的なメッセージのバランスを取ろうといつも思っています。

店頭で見かけたジャケットのヘア・デザインが気になって興味を持ちました。ドクロの髪飾りは何を意味していますか?

リー・リー:昔からドクロのデザインには魅了されてきました。ヴィジュアルも美しいだけでなく、感情にもうったえかけてきます。わたしたちはみな、頭蓋骨を持っています。みな、骨格を持っていて、それはわたしたちが生存している証拠の裏にあるものですよね。

音楽をやりはじめたきっかけや、現在に至る過程を教えてください。

リー・リー:音楽家の家庭に生まれたので、子どものころから歌いはじめ、パフォーマンスしてきました。15歳のときにプロとして音楽を作りたいと気づいて、そのときはヒップホップのバンドに参加しました。18歳のときに初めてソロのリリースがありました。そのとき以来、順調に物事が進んでいますね。

派手になり過ぎない演奏やどこか覚めた雰囲気を残した歌い方だと思いましたけど、それは意識して?

リー・リー:ヴォーカルのレンジとパフォーマンスと社会的なメッセージのバランスを取ろうといつも思っています。このことを常に忘れないようにし、どの曲も慎重に考えて作りこんでいます。

曲はどうやってつくるのですか?

リー・リー:いろんなやり方があります。最初にメロディーが浮かぶこともあれば、先に詞を思いつくこともあります。キム・ギャレットとジャック・ベイカーといっしょに作曲と制作を進めてきました。型にはまった作曲方法がないので、かえってイノヴェイティブでエキサイティングなものになりました。

ホレイス・アンディとはどんな関係? 彼から学んだことはありますか?

リー・リー:アルバムのプロデューサーのジャック・ベイカーに紹介してもらいました。残念ながら、ジャマイカに行ってホレイスといっしょにレコーディングはできませんでした。まだ実際には会ったこともないのです。彼は音楽の生きる伝説で、彼の音楽からは沢山影響を受けてきました。

先行シングル『ブラック・オア・ホワイト』のリミックスにGOTH-TRADを選んだ理由は?

リー・リー:GOTH-TRADとは共通の友人を通して数年前にロンドンで知り合いました。すぐに意気投合したのです。いっしょに仕事をしたいとずっと思っていました。『ブラック・オア・ホワイト』のリミックスを誰にしようか考えたときに最初に浮かびました。光栄にも彼は引き受けてくれて、あのリミックスはお気に入りのひとつです。



[[SplitPage]]

殴られて、めった刺しにされて、残酷に苦しめられてから生き埋めにされるより、「AK-47」で瞬時に撃ち殺してほしいとその女性は懇願しているのです。それは寛大な処罰の象徴であり、選択の余地のない世界からの現実逃避において間違いを引き起こすものでもあります。


Lea Lea
Pヴァイン

Tower HMV Amazon iTunes

クラブにはよく行く方ですか? どこで音楽を聴くことが多いですか?

リー・リー:そこまで頻繁にクラブへ行く方ではありません。むしろライヴハウスにバンドを見に行ったり、温かい雰囲気で盛り上がっているようなバーでDJプレイを見ている方が好きですね。こういうところで新しい音楽を聴くのは大好きで、いろんな影響を受けます。

歌詞がわからないのでタイトルから内容を想像するだけなのですが、“アパルトヘイト”や“ブラック・オア・ホワイト”は人種差別だとして、“デッド・ガール・ウォーキング”は死刑制度に関する曲ですか?

リー・リー:どちらも人種差別についてではありません。

あ、違うんですか。

リー・リー:“アパルトヘイト”は経済的な隔離がテーマです。不正を生み出し、世界中のコミュニティは分裂させられています。“ブラック・オア・ホワイト”は判断(ジャッジメント)や、さまざまなイデオロギー/パーソナリティー/文化に対してオープンになれないことについて歌っています。両方とも社会問題が根底に強くあるので、そこからの波及効果で人種差別に関しても読み取れるのかもしれませんね。“デッド・ガール・ウォーキング”も死刑制度に関する歌ではなく、わたしたちは必ず死ぬ運命にあることをテーマにしています。

なるほど。ドクロに繋がるテーマなんですね。アメリカでいま、もっとも人気があると言われている“AK-47”ではおそらく自動小銃の残酷さを訴えていると思いますが……



リー・リー:“AK-47”はアメリカとの国境近くに住んでいるメキシコ人の女性の視点で書かれています。麻薬戦争の起きている過酷な地帯のことです。殴られて、めった刺しにされて、残酷に苦しめられてから生き埋めにされるより、「AK-47」で瞬時に撃ち殺してほしいとその女性は懇願しているのです。メキシコの国境付近に住む人々にとってはこのような恐ろしいことが日常なのです。この場合には「AK-47」は寛大な処罰の象徴であり、選択の余地のない世界からの現実逃避において間違いを引き起こすものでもあります。

“ブラック・オア・ホワイト”のヴィデオで日本刀を振り回しているのは?

リー・リー:あの刀に暴力を助長する意味はありません。自由意志のヴィジュアル的なメタファーとして使いました。自分と他人を守り受け入れるためにも使えますし、傷つけるためにも使えるものです。

フェミニズムがバックラッシュの憂き目にあって以来、女性ミュージシャンの書く歌詞は社会や男性に期待しなくなり、女性から女性に向けられたものが増えました。日本では「女子会コミュ」とか言うんですが、音楽ではその最大の成果がケイティ・ペリーやアメリカのハイヒール・モモコと化しているニッキー・ミナージュだと思います。あなたはそういった流れに属するよりはM.I.A.やジャマイカのテリー・リンに近い立場を選択したと考えてよいですか? そうだとしたら、そのようにしようと思った理由は?

リー・リー:わたしの興味は社会問題について歌って、音楽を作ることです。人権や男女間のことなどにも触れますね。

『モーヴァン』や『ハッピー・ゴーラッキー』、あるいは最近の『フィッシュタンク』といったイギリス映画を見ていると、イギリスの若い女性たちは異様なほど追い詰められているというか、ほとんど全員テロリスト予備軍に見えてしまいますが、実際はどうなんでしょう? 最近の映画であなたがいいと思った作品があったらそれも教えて下さい。『アリス・クリードの失踪』なんかはイギリスらしくていい作品だと思いましたけど。

リー・リー:正直に言うと、これらの映画は見たこと無いのです……。でも女性のメイン・キャラクターがステレオタイプではない役をするような映画は大好きです。『ハンガー・ゲーム』でのカットニス・エヴァディーンは最高でしたね!

ああ、めちゃくちゃ強い女性像ですね。アメリカ型というか。あ、イギリスにも『タンク・ガール』があったか。ちなみにイギリス以外の国で暮らすとしたら、どこがいいですか?

リー・リー:タイ~カリフォルニア~ハワイの順番に住みたいです。基本的に暖かくてビーチが近くて、時間がゆっくりな感じのところならどこでも言ってみたいですね。

現時点での目標はなんですか?

リー・リー:当面の目標は世界ツアーをすることです。日本にも行ってぜひパフォーマンスしてみたいです!

ひとりだけ死者を蘇らせることができるとしたら、誰にしますか?

リー・リー:マリリン・モンローです。女性の中でももっとも美しく、知性があって、創造性に溢れるエネルギッシュなひとだからです。

あれー、僕といっしょですね。理由もほとんど同じだなー。へー。

Huerco S. - ele-king

 昨年に続き、今年も〈ソフトウェア〉は充実したリリースをコンスタントに続けている。オート・ヌ・ヴにはじまり、スラヴァ、ピート・スワンソンコ・ラ、そして現在22歳のブライアン・リーズによるソロ・プロジェクト、ホアコ・エスである。

 ブライアン・リーズはアメリカ合衆国のど真ん中、一般的には田舎扱いされるカンザス州カンザス・シティの出身で、だから彼はホアコ・エスの音楽を「中西部のテクノ/ハウス」と言ったりもする。「デイズド・デジタル」のインタヴューによれば、リーズにとっての「中西部のテクノ/ハウス」というのは同時にシカゴとデトロイトの古典的なダンス・ミュージックのことでもあるらしい。北アメリカ大陸全体を俯瞰したとき、イリノイもミシガンもカンザスも真ん中に近い、ということなのだろうか。

 ともあれホアコ・エスの音楽は、そういったクラシカルなハウスやテクノを彷彿とさせるスタイルを取っている。アクトレスがそうであったように。だがホアコ・エスの『コロニアル・パターンズ』はもっとローファイなノイズ混じりのグズグズとした音質であり、どことなく平坦でダウナーで、よりディストピックである。たとえば“ラグタイム・U.S.A.(ウォーニング)”や“スカグ・コミューン”、“エンジェル”はハウスっぽいスタイルだが、始終さまざまな種類のノイズがチリチリと鳴りつづけ、キックやヴォーカル・サンプルもビリビリと音割れしていたりする。『コロニアル・パターンズ』は、どの曲もカセット・テープやレコードを何度かくぐらせたような奇妙にローファイでひしゃげた音で録音されている。
 ホアコ・エスはベーシック・チャンネルのサウンドも強く想起させる。くぐもったイーヴン・キック、浮遊するノイズにも似た電子音、信号音、いつ終わるとも知れぬ反復……。“プラックト・フロム・ザ・グラウンド、トゥワーズ・ザ・サン”や“クィヴィラ”などはとくにそうだ。だがFACTでリーズが語っているとおり、「ベーシック・チャンネルが生み出したサウンドはこの世ならざるもの」だが、ホアコ・エスのサウンドはもっとドロドロとしていて土臭い。“クィヴィラ”や“フォーティフィケイション・III”に漲るインダストリアルな感覚は土臭いというよりも油臭いと言ってもいいかもしれない。

 『コロニアル・パターンズ(植民地の様式)』は先コロンブス期のアメリカにインスパイアされているそうだ。不穏で示唆的なアルバム・タイトルと印象的なアートワークはそういったことに関係している。ピッチフォークのレヴューによれば、“モンクス・マウンド”はイリノイの遺跡のことだし、“クィヴィラ”は16世紀にスペイン人に「発見」された神話的な場所のことである。
 上記のFACTのインタヴューによれば、リーズはカンザスの隣州ミズーリで暮らしたことがあり、ミシシッピ川流域のネイティヴ・アメリカンたちによる遺跡や文化に感銘を受けたのだという。遺跡の細かく微妙な意匠はほとんど無駄なものにも関わらず、奴隷労働者たちはその意匠のために繰り返し繰り返し作業する。「それをサウンドに応用したんだ。何かを繰り返しすること、そして同じものを繰り返し聴くこと。スコップで土を掘るみたいにね。物事の覆いをはずし、一方では物事に覆いを被せている」。
 ホアコ・エスの音楽は、あるパターンを執拗に反復すればするほど何かしらの真実に近づいていくようでもあり、そこから遠のいていくようでもある。クリアーでない音質が掴みどころのなさを加速させている。『コロニアル・パターンズ』はダンサブルなレコードではないが、手による作業と音の異様な物質感とが刻み込まれている。その一方で非常にアブストラクトでもある。物事を宙吊りにするような不思議な魅力を放っているレコードだ。もしかしたらブライアン・リーズは中西部のモーリッツ・フォン・オズワルドになれる、かもしれない。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727 728 729 730 731 732 733 734 735 736 737 738 739 740 741 742 743 744 745 746 747 748 749 750 751 752 753 754 755 756 757 758 759 760 761 762 763 764 765 766 767 768 769 770 771 772 773 774 775 776 777 778 779 780 781 782 783 784 785 786 787 788 789 790 791 792 793 794 795 796 797 798 799 800 801 802 803 804 805 806 807 808 809 810 811 812 813 814 815 816 817 818 819 820 821 822 823 824 825 826 827 828 829 830 831 832 833 834 835 836 837 838 839 840 841 842 843 844 845 846 847 848 849 850 851 852 853 854 855 856 857 858 859 860 861 862 863 864 865 866 867 868 869 870 871 872 873 874 875 876 877 878 879 880 881 882 883 884 885 886 887 888 889 890 891 892 893 894 895 896 897 898 899 900 901 902 903 904 905 906 907 908 909 910 911 912 913 914 915 916 917 918 919 920 921 922 923 924 925 926 927 928 929 930 931 932 933