ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. SOUL FIRE meets Chica/Undefined meets こだま和文 ──現在進行形のダブを味わえる濃厚なる一夜
  2. 『蛇の道』 -
  3. LIQUIDROOM 30周年 ──新宿時代の歴史を紐解くアーカイヴ展が開催
  4. James Hoff - Shadows Lifted from Invisible Hands | ジェイムス・ホフ
  5. Beth Gibbons - Lives Outgrown | ベス・ギボンズ
  6. Natalie Beridze - Of Which One Knows | ナタリー・ベリツェ
  7. ドライブアウェイ・ドールズ -
  8. interview with Tourist (William Phillips) 音楽はぼくにとって現実逃避の手段 | ツーリストが奏でる夢のようなポップ・エレクトロニカ
  9. Adrian Sherwood presents Dub Sessions 2024 いつまでも見れると思うな、御大ホレス・アンディと偉大なるクリエイション・レベル、エイドリアン・シャーウッドが集結するダブの最強ナイト
  10. R.I.P. Steve Albini 追悼:スティーヴ・アルビニ
  11. Still House Plants - If I Don​’​t Make It, I Love U | スティル・ハウス・プランツ
  12. Columns ♯5:いまブルース・スプリングスティーンを聴く
  13. interview with tofubeats 自分のことはハウスDJだと思っている  | トーフビーツ、インタヴュー
  14. Brian Eno, Holger Czukay & J. Peter Schwalm - Sushi, Roti, Reibekuchen | イーノ、シューカイ&シュヴァルム
  15. Overmono ──オーヴァーモノによる単独来日公演、東京と大阪で開催
  16. Columns 大胆不敵な音楽の熟達者たち――AMM論
  17. Tribute to Ryuichi Sakamoto “Micro Ambient Music” ——坂本龍一に捧げた大作コンピレーションが配信とアナログ・リリース開始
  18. seekersinternational & juwanstockton - KINTSUGI SOUL STEPPERS | シーカーズインターナショナル&ジュワンストックトン
  19. Sun Ra ——生涯をかけて作り上げた寓話を生きたジャズ・アーティスト、サン・ラー。その評伝『宇宙こそ帰る場所』刊行に寄せて
  20. Cornelius ──コーネリアスがアンビエント・アルバムをリリース、活動30周年記念ライヴも

Home >  Reviews >  Album Reviews > Ogre You Asshole- homely

Ogre You Asshole

Ogre You Asshole

homely

バップ

Amazon iTunes

野田 努   Sep 21,2011 UP
E王

 サイケデリック・ロックほど欧米と日本との文化状況の違いを感じるジャンルはない。この国で"Music For All The Fucked-up Children"が普及しない理由は、欧米の現場に行ったことがない人でも想像に難くないだろう。日本のロックの多くが音よりも言葉に酔せる傾向にあるのも、こうした文化と無関係ではない。もっともそうした不自由さのなかで、日本からはずば抜けたサイケデリック・ロックが生まれてもいる。ボアダムス、コーネリアス、スーパーカー、ゆらゆら帝国などといったバンドは、"ファックド・アップできない子供たち"を"ファックド・アップ"させるよう、自らの好奇心を優先させ、音の追求を怠らなかった。そうしたバンドは、ワールズ・エンド・ガールフレンドが分析するように、日本的な情報量の多さとその編集能力、緻密な折衷主義によって音の独自性を磨いていった。オウガ・ユー・アスホールは、いま、その系譜にいるんじゃないだろうか。
 『homely』のオープニング――クラウトロック的なスペイシーなミニマリズムによる"明るい部屋"から"ロープ"への展開は拍手したくなるほど見事だ。夢とストイシズムの絶妙のバランスのなかで反復するベースとドラム(誰もがカンを思い出すだろう)は、ゆっくりと、そして力強いグルーヴを創出する。リズミックなバンドのアンサンブルには自由に動き回れる空間があって、控えめなギターとシンセサイザーはその空間を面白いように走る。
 バンドはリスナーを当惑させるような、シュールな言葉を好んでいる。言葉は抽象的で、なかなか方向性をはっきりさせない。思わせぶりな歌詞の朗読からはじまる"フェンスのある家"は、しかし、16ビートのリズム・トラックの乾きが象徴的な言葉の重さを消去する。こうした手の込んだテクスチャーは、このバンドの大きな魅力のひとつに思える。バンドの言葉(歌詞)は、たとえ暗い予兆を思わせるものであっても、リスナーを抑えつけるようなことはなく、あたかも空気のようにふわふわしているのである。
 "作り物"は、そうした彼らのユニークな軽さによるキャッチーで、そして感動的な曲だ。「わな? 居心地良く無害で/笑っていた/ここはウソ」――日本語による美しいメロディラインに乗せて、部外者としての疎外感や憂鬱、怒りや絶望、悲しみをOYAはどこか涼しげに、スーサイドとテレヴィジョン・パーソナリティーズの溝を埋めるかのように、ヘタしたら爽やかに歌ってみせる。
 "ロープ"、"フェンスのある家"や"作り物"といった周到にデザインされたような、つまり抜け目のない曲からすると、"ライフワーク"や"ふたつの段階"のようなエモーショナルなロック・ソングはやや見劣りしてしまうかもしれない。が、ヴェルヴェッツ・スタイルの"マット"を聴いたらこのバンドに対する期待は、もはや隠せなくなるだろう。この頽廃と甘美は最高潮に達したときのフィッシュマンズの領域に迫っているかもしれない。クローザー・トラックの"羊と人"は、このバンドらしい屈折した曲と言えよう。たっぷりと皮肉が注入された歌詞を、うそぶくように、洒落たポップスとして表している。曲のエンディングのサックスの切なさは、予定調和をせせら笑い、アイロニーとしての余韻を残すようだ。プロデューサーの石原洋とエンジニアの中村宗一郎は、元ゆらゆら帝国チーム。我々はいま素晴らしいアルバムと出会っている。この強力なアートワークも、不自然さや不条理、意味と無意味をちらつかせるような、このバンドの音楽をよく表している。

野田 努