見たまえ、ワトソン君。見渡す限りの広大な荒野から湧きあがる、これら生気溢れる音楽を。君が20年前に熱に浮かされたところのそれを探そうたって無駄なことなんだ。よもや4年前の暴動を忘れたわけじゃないだろうね。多くの文化が浸潤し、そして新しい音楽が鳴り響く。それでも君は、FKAツイッグスやスリーフォード・モッズ、ヤング・ファーザーズを無視するというのかね。ぐわははは……
というわけで、UKの音楽が、面白いんです。
ele-king vol.16は、いまのUKミュージックを大特集しました。
話は、昨年末の年間チャートを考えていたときにさかのぼります。面白かった作品を挙げていくと、どうにも日本と英国が多かったことに気がつきました(vol.15参照)。これは、実は近年では、なかなか見られなかった傾向です。
1960年代から1990年代までのUKミュージックの魅力が半端なかったのはたしかです。いまでも、いろんな雑誌で懐古的な特集が組まれています。再発モノ、90年代リヴァイヴァル、ノスタルジー、いろいろあります。
しかし、現在の「UK」も面白いことになっているのです。
まずは、先日、初来日ライヴを大成功させたばかりのFKAツイッグスがカヴァー・ストーリー。生い立ちから現在までを語った1万5千字インタヴュー+リキッドルームの楽屋での撮り下ろし写真。現在のUKのポップアイコンである、FKAツイッグスを大フィーチャーです!
UKの躍進を最初に印象づけたのは、ザ・XXです(そして、そう、ジェイク・バグです)。
ザ・XXのサウンドをプロデューしているのは、いまやDJとしても売れっ子のジェイミーXXです。実は彼、5月末発売予定のソロ・アルバムを控えているのですが、本誌は、いち早く、ジェイミーの声をつかまえることができました。ずば抜けて無口な彼にがんばって喋ってもらい、彼のルーツについてもいろいろ聞けました。彼のルーツがDJシャドウとプラッドだったというのは、「なるほど」とうなずける話です。
また、2015年の大注目、ヤング・ファーザーズとジャム・シティのインタヴューもどうぞご一読を。現代のマッシヴ・アタックと呼ぶに相応しい前者、チルウェイヴの現実逃避を見事に反転させた後者。彼らの発言を読むと、「何故いまUKなのか」わかると思います。自分たちが生きているこの「時代」について、すごく良いことを言っているのです。また、この連中はルックス的にも格好いいので、写真を見ながら音楽を聴いて、読みましょう。
ポストパンクが再燃しているいま、35年ぶりに新作を出したザ・ポップ・グループも登場します。マーク・スチュワート御大の久しぶりのインタヴューです。
その盟友、エイドリアン・シャーウッドにも出てもらいましょう。
そして、名門〈ワープ〉が送り出す、マンチェスターのローンレディの取材もあります。先頃アルバムを出したばかりの、UKポストパンク・ファンクの新世代です。
またしてもスリーフォード・モッズが登場します。彼らは7年前からやっているのに、私たちは「以前」にそれを聴かず、何故「いま」聴くのでしょう? オールド・エレキング読者にはお馴染みの、イギリス人のジョン・レイトが彼らの魅力を書いてくれました。
女性ラッパーのケイト・テンペストは、昨年ニンジャ・チューンからアルバムを出しました。FKAツイッグス、ヤング・ファーザーズらと混じってマーキューリー賞にノミネートされたその作品は、むしろ文学として評価されています。ブレイディみかこが、この女性ラッパーのリリックのどこが素晴らしいのかを解説します。
2013年にイギリスのペンギン社(由緒ある文芸出版社)から刊行されたモリッシーの自伝『Autobiography』は、欧米諸国ではたちまちベストセラーとなりました。その夥しいイギリスならではの固有名詞、文学性の高い表現力ゆえか、いまだに翻訳されていません。ならば、ブレイディみかこに読んでもらい、どんな内容か紹介してもらいましょう。
UKの勢いを印象づけたことのひとつにエイフェックス・ツインの復活があります。そのAFXが見いだした才能のひとつが、スクエプッシャーなわけですが、AFXの快進撃に続けとばかりにスクエプッシャーの最新作がたいへんなことになっています。その予告編的インタヴューも掲載!
特集の最後には、現在のUKミュージックを知るための30枚のディスクガイドがあります。暴動があり、景気が落ち込み、右翼が支持率を上げて、そしてEU圏内においては力が弱まった英国……いわば荒れ地となった英国、そこから湧きあがる、新しい音です。
ちなみに、いまUKでもっとも勢いのあるレーベルといえば、〈Young Turk〉と〈Black Acre〉でしょう。その〈Black Acre〉が送り出したクラップ!クラップ!の貴重なインタヴューも掲載です。この記事は、飯島直樹が書いてれました。
「UKの逆襲」のほか、小特集として「アラブ諸国の音楽を楽しむ」があります。
アラブ諸国の音楽のどこが面白いのでしょう? どこから楽しむと、この深い音楽の魅力をより楽しむことができるのでしょう? ピーター・バラカンと赤塚りえ子が対談してくれました。
また、アラブの春について、足立正生が語ってくれました。いわく「アラブの蜂起はヒップホップとサッカーから始まった」
そして、テロ事件を契機に、いま欧州で拡大するイスラモフォビア (イスラム恐怖症)とミシェル・ウエルベックの『Soumission(服従)』について川本ケンが書いてくれました。
web ele-kingで驚異的にアクセス数が高かった対談、トーフビーツ×砂原良徳の続きも掲載します。話は、トーフビーツの人脈、そして90年代への複雑な思いに至ります。いわく「90年代が良かったなんて言わないで!」
さて、連載ですが、今回は磯部涼も原稿を落とさず全員揃いました。佐々木渉 大月壮 ブレイディみかこ 山田蓉子 水越真紀 SK8THG……好評の「NO POLITICS, THANK YOU! PART 3」は、IS事件から桑田佳祐まで、いつものように歯切れ良く喋っています。
前号に引き続き、素晴らしい読者プレゼントも用意しました。
──あるいはこうも言えるだろう。何故われわれは「以前」ではなく「いま」UKに注目しているのかと。ワトソン君、その答えは3月30日の発売日にわかるかもしれないよ。
vol.16 CONTENTS
002 写真=鈴木親
008 特集=UKの逆襲
012 FKAツイッグス インタヴュー 写真=鈴木親
028 最近のブリテッシュ・ミュージックに関する編集会議 野田努×三田格
032 ジェイミー・XX インタヴュー
038 ジャム・シティ インタヴュー
046 ヤング・ファーザーズ インタヴュー
056 エッセイ ケイト・テンペスト 文・ブレイディみかこ
058 エッセイ スリーフォード・モッズ 文・ジョン・レイト
062 ザ・ポップ・グループ(マーク・ステュワート) インタヴュー
066 エイドリアン・シャーウッド インタヴュー
068 ローンレイディ インタヴュー
074 エッセイ モリッシー自伝を読んでみた。文・ブレイディみかこ
077 スクエアプッシャー インタヴュー
080 ブロークン・ブリテイン以降の30枚
084 ルポ ロンドンスケーター
087 SK8THGの原宿逍遥 PART3
092 転生バカボン 第1話 「ここはどこなのだ」の巻 三田格+オオクボリュウ
094 対談 アラブ諸国の音楽を楽しむ ピーター・バラカン×赤塚りえ子
107 アラブ諸国のディスクガイド
111 アラブの蜂起はヒップホップとサッカーから始まった。──足立正生に訊く
112 ミシェル・ウエルベックの『Soumission(服従)』はイスラモフォビア (イスラム恐怖症)の挑発なのか? 文・川本ケン
114 対談 90年代が良かったなんて言わないで! トーフビーツ×砂原良徳
119 クラップ!クラップ! インタヴュー
124 NO POLITICS, THANK YOU! PART3 ジョークを我らに(give peace a joke) ブレイディみかこ×水越真紀
135 REGULARS 佐々木渉 大月壮 ブレイディみかこ 山田蓉子 水越真紀 磯部涼
147 HYPER!──本 マンガ 映画 アニメ 武器 スポーツ 食べ物 ビジネス
156 編集課二係 ジョン刑事












ヤビー・ユー
ヤビー・ユー&ザ・プロフェッツ
DISQ CLASH
13年に"MALA IN CUBA LIVE"のキーボード奏者としてDBSで来日、単独DJセットでフロアーを狂喜させたスウィンドルはグライム/ダブステップ・シーンのマエストロ。幼少からピアノ等の楽器を習得、レゲエ、ジャズ、ソウルから影響を受ける。16才の頃からスタジオワークに着手し、インストゥルメンタルのMIX CDを制作。07年にグライムMCをフィーチャーした『THE 140 MIXTAPE』はトップ・ラジオDJから支持され、注目を集める。そしてSO SOLID CREWのASHER Dの傘下で数々のプロダクションを手掛けた後、09年に自己のSwindle Productionsからインストアルバム『CURRICULUM VITAE』を発表。その後もPlanet Mu、Rwina、Butterz等からUKG、グライム、ダブステップ、エレクトロニカ等を自在に行き交う個性的なトラックを連発、12年にはMALAのDeep Mediから"Do The Jazz"、"Forest Funk"を発表、ジャジーかつディープ&ファンキーなサウンドで評価を決定づける。そして13年の新作『LONG LIVE THE JAZZ』(Deep Medi)は話題を独占し、フュージョン界の巨匠、LONNIE LISTON SMITHとの共演、自身のライヴ・パフォーマンスも大反響を呼ぶ。最新シングル"Walter's Call"(deep medi/Brownswood)でジャズ/ファンク/ダブ・ベースの真骨頂を発揮したスウィンドル、必見の再来日!
トライバルハウス、ディープハウス、UKガラージ等のエッセンスを重低音でハイブリッドしたベースミュージックの新機軸"UKファンキー" の革新者、ロスカ。08年に自己のRoska Kicks & Snaresから"Elevated Level EP"、"The Climate Change EP"をリリース。彼のトラックはSKREAM、ZINC、DIPLO、KODE9を始め錚々たるDJのサポートを受け、一躍脚光を浴びる。09年にはシーンを牽引するRinse FMのレジデントに抜擢され、そのフレッシュでロウなダブ音源でUKファンキーの台頭をリードする。10年にはRinse Recordingsと契約し、キラートラックとなった"Wonderful Day"、"Love 2 Nite"を収録したアルバム『ROSKA』をドロップ。BBC Radio 1のEssential Mixにも登場し、その存在を確固たるものとする。11年にSCUBAのHotflushからのEP、PINCHとの共作発表、Rinseのミックスの監修等を経て、12年は更なる飛躍を遂げ、Rinseからアルバム『ROSKA 2』を発表、ハウスを基調にグライム、ダブステップ、ガラージを独自のスタイルで昇華する。その後は世界各地でのDJ、ラジオショーで多忙を極める中、TectonicからPINCHとの共作"Shoulda Rolla"、Rinseから"Shocking EP"をリリースし、Roska の快進撃はとどまる事を知らない。Tectonicから先頃リリースされた最新作"Hyperion EP"では新境地も伺え、来日プレイの期待は高まるばかり!