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vol.71:RIP DIY

沢井陽子 Mar 19,2015 UP

 RIP DIY、などと書き出すと「また、この話題? ウィリアムスバーグが終わってるのはわかってる」と言われそうだが、DIY世界の近況である。たしかに、ウィリアムスバーグのDIY会場はほとんどなくなった。
 先週(3/5-3/15)、その時代のDIY会場のドキュメントを展示した「RIP DIY」というアートショーが、ウィリアムスバーグのクラウドシティ・ギャラリーで行なわれた。
https://facebook.com/events/412237698952966


ニッキ・イシュマエルと「RIP DIY」(Photo: Nicole Disser)


「RIP DIY」に集まってくる人びと。

 主催者は、自身も写真を提供しているニッキ・イシュマエル。
 彼女は2006年にNYに引っ越すと、すぐにアンダーグラウンド・ミュージック・シーンにどっぷり浸かった。デッド・ヘリングというDIYスペースに住んでいた彼女は、そこが2013年にクローズした後も、仲間と、ヴィジュアルアート展覧会、シアター・パフォーマンス、フィルム上映、小さなライヴなどを催すクラウド・シティ・ギャラリーを始めた(著者のスタジオの1ブロック先!)。
 「(DIY会場が)もちろん永遠に続くとは思っていないけど、この思い出をなんとか残せないか」と考えた彼女は、知り合いの写真家に声をかけ、今回の展示が開催されたのである。
 20アーティストによる30のブルックリンのDIY会場。
 285 ケント、ビッグ・スノウ・バッファロー・ロッジ、デッド・ヘリング、デス・バイ・オーディオ、フィットネス、グラス・ハウス、グラス・ランド、ホセ、モンスター・アイランド、サイレント・バーン(移転前)、パーティ・エキスポ、グラス・ドア、グッバイ・ブルー・マンデー、シークレット・プロジェクト・ロボット(移転前)、ウッザー……。
 全てここ10年間でクローズした会場である。

 ニッキは、デス・バイ・オーディオがクローズした後、何ヶ月もみんなに会わなくなった。このロスをただ受け止めるだけでいいのかと考え、あらためてこれらのDIY会場がシーンに与えた重要さに気づき、ただの写真展ではなく、コミュニティの「再結合」をキュレートした。
 実際、その当時ショーに通った層(最近ではあまり外出しない)、当時は知らないが興味のある層、その友だちなど、現代と過去のDIYを通しての交流場所になった。

 写真からは、今にも動き出しそうな、生々しいライヴ感、台所やリビングルーム、フロアでのぎゅうぎゅうになったバンドとオーディエンスの塊から発せられるエネルギーから、DIYのコミュニティにいる自分たちの存在を再確認しているようだった。

 著者は、ニッキの住んでいたデッド・ヘリング、グラス・ハウス(グラス・ランドの前身)、シークレット・プロジェクト・ロボットは、誰がプレイするなど関係なく、毎日のように通ったので、名前を見るだけで、当時の記憶が鮮やかに蘇る。


オヤジ大集合。ザ・ポップ・グループのライヴ。


@palisades bk


@bohemian grove


@bohemian grove


ザ・ポップ・グループ(photos by Greg Cristman)

 昨日(3/17)、ポストパンクのアイコン、ザ・ポップ・グループを見に行ったのだが、会場は90%おじさん(40アップ)で埋め尽くされていた。
 ザ・ポップ・グループは、タオルを振り回しながら、叫び、踊り、脅した。ショーはエネルギーの塊で、最後の音まで活きていた。オーディエンスの中には、「DIY」時代の人がたくさん来ていた。「最近どうしてる?」と尋ねたら、テック関係の仕事をしていたり、相変わらず音楽をやっていたり、様々だった。ひとつ言えるのは、ザ・ポップ・グループのショーが、80年代~90年代の世代、その時代を生きた人たちのその時代への感謝の場所となり、また、DIY精神の確認の場でもあったこと。
 オープニングのリーガル・ディーガルは、ノーエイジのPPMやテリブル・レコーズから作品をリリースしているし(DIY万歳)、DIY精神は、確実に次世代へと繋がっている。
 ザ・ポップ・グループは、今年インディ・バンドの祭典のSXSWでもプレイする。


曲目表(photos by Greg Cristman)

 「RIP DIY」は、「あの時は良かった」という懐古的なものではない。それぞれのDIYの時代を強調することで、過去のDIYと現在のDIYの間のライン(あやふやだが)を効果的に引く。そして、その記録を、次世代に繋げる、次世代にタイマツを手渡すようなものである。

 著者は最近、パリセーズ、グッド・ワーク・ギャラリー、ボヘミアン・グローヴなどのDIY会場に顔を出している。全てJライン沿いにあるブシュウィックのスペースである。ウィリアムスバーグに、このような場所が少なくなったのは事実だが、アーティスト、ミュージシャンは「RIP DIY」と同じバイブを持つスペースをあちらこちらに作り出している。

 新しいDIY会場は、今までと同じヴァイブの場所、新しいコンセプトから、DIYを卒業する人、やり続ける人、新しい人、やりたい人が集まり、その時代のコミュニティが生まれ、進化していく。
 「RIP DIY」は、DO DIYのリマインダーなのだろう。

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Profile

沢井陽子沢井陽子/Yoko Sawai
ニューヨーク在住20年の音楽ライター/ コーディネーター。レコード・レーベル〈Contact Records〉経営他、音楽イヴェント等を企画。ブルックリン・ベースのロック・バンド、Hard Nips (hardnipsbrooklyn.com) でも活躍。

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