![]() Lea Lea Pヴァイン |
あの手この手で続けられるM.I.A.バッシングを見ていると、マドンナが『トゥルー・ブルー』(86年)を出した頃を思い出さざるを得ない。どこか挑戦的な女を見ると無性に腹が立つ男がいるということなのかなんなのか、理由は後から取ってつけたような批判が後を絶たず、何を歌っても三流扱い、映画『シャンハイ・サプライズ』に出れば「ワースト・アクトレス」に認定と、それはもうスゴい言われようだった。「フェミニズムを10年遅らせた」という女性たちからの批判も凄まじかったし、マドンナも脇が甘いというのか、批判を寄せつけないという雰囲気からはほど遠く、むしろ呼び込んでいるような風情まであった。いまのM.I.A.にも、そうした「呼び込む」感じというのはあって、「無性に腹が立つ人たち」の琴線を刺激していることは確かなんだろうけれど、これだけ時代が経っていれば、それがマドンナと同じものであるはずがなく、格差社会やイスラム差別といったイッシューも重なっているだろうから、なかなか見えにくいとは思うものの、どこがどう変わったのか、そこが気になるところではある。M.I.A.は一体、時代の何を刺激しているのだろうか。
ジャマイカのテリー・リンもフォロワーにたとえられたけれど、リー・リーことリー・リー・ジョーンズにもM.I.A.と重なる部分があるように思われる。彼女について考えることもひとつの方法ではないかと思い、具体的にM.I.A.の名前を出して、どこか影響があるか訊いてみたところ、これは完全にスルーされてしまった。それだけ脈があると考えればいいのか、それともぜんぜん見当はずれだったのか。ひとつ、面白かったのは、リー・リーも政治的な歌詞を過剰に歌う反面、楽園に対するイメージも強く持っていたことで、イギリスにはこれまで戦闘的なシー・ロッカーズから浮かれモードのベティ・ブーへ、あるいは、グランジ・ロックのヴードゥー・クイーンからラウンジ・ミュージックのアンジャリへと、極端な方向転換を試みたフィメール・ミュージシャンがどの時代にもそれなりにいたことで、そこには政治とパラダイスが裏表に存在しているという観念がどうしても認められてしまう。「なにも戦いたくて戦っているわけじゃないから」と、彼女たちは言っているかのようだし、M.I.A.に通じる部分もそこかなーと思ったり。
ヴォーカルのレンジとパフォーマンスと社会的なメッセージのバランスを取ろうといつも思っています。
■店頭で見かけたジャケットのヘア・デザインが気になって興味を持ちました。ドクロの髪飾りは何を意味していますか?
リー・リー:昔からドクロのデザインには魅了されてきました。ヴィジュアルも美しいだけでなく、感情にもうったえかけてきます。わたしたちはみな、頭蓋骨を持っています。みな、骨格を持っていて、それはわたしたちが生存している証拠の裏にあるものですよね。
■音楽をやりはじめたきっかけや、現在に至る過程を教えてください。
リー・リー:音楽家の家庭に生まれたので、子どものころから歌いはじめ、パフォーマンスしてきました。15歳のときにプロとして音楽を作りたいと気づいて、そのときはヒップホップのバンドに参加しました。18歳のときに初めてソロのリリースがありました。そのとき以来、順調に物事が進んでいますね。
■派手になり過ぎない演奏やどこか覚めた雰囲気を残した歌い方だと思いましたけど、それは意識して?
リー・リー:ヴォーカルのレンジとパフォーマンスと社会的なメッセージのバランスを取ろうといつも思っています。このことを常に忘れないようにし、どの曲も慎重に考えて作りこんでいます。
■曲はどうやってつくるのですか?
リー・リー:いろんなやり方があります。最初にメロディーが浮かぶこともあれば、先に詞を思いつくこともあります。キム・ギャレットとジャック・ベイカーといっしょに作曲と制作を進めてきました。型にはまった作曲方法がないので、かえってイノヴェイティブでエキサイティングなものになりました。
■ホレイス・アンディとはどんな関係? 彼から学んだことはありますか?
リー・リー:アルバムのプロデューサーのジャック・ベイカーに紹介してもらいました。残念ながら、ジャマイカに行ってホレイスといっしょにレコーディングはできませんでした。まだ実際には会ったこともないのです。彼は音楽の生きる伝説で、彼の音楽からは沢山影響を受けてきました。
■先行シングル『ブラック・オア・ホワイト』のリミックスにGOTH-TRADを選んだ理由は?
リー・リー:GOTH-TRADとは共通の友人を通して数年前にロンドンで知り合いました。すぐに意気投合したのです。いっしょに仕事をしたいとずっと思っていました。『ブラック・オア・ホワイト』のリミックスを誰にしようか考えたときに最初に浮かびました。光栄にも彼は引き受けてくれて、あのリミックスはお気に入りのひとつです。
[[SplitPage]]
殴られて、めった刺しにされて、残酷に苦しめられてから生き埋めにされるより、「AK-47」で瞬時に撃ち殺してほしいとその女性は懇願しているのです。それは寛大な処罰の象徴であり、選択の余地のない世界からの現実逃避において間違いを引き起こすものでもあります。
![]() Lea Lea Pヴァイン |
■クラブにはよく行く方ですか? どこで音楽を聴くことが多いですか?
リー・リー:そこまで頻繁にクラブへ行く方ではありません。むしろライヴハウスにバンドを見に行ったり、温かい雰囲気で盛り上がっているようなバーでDJプレイを見ている方が好きですね。こういうところで新しい音楽を聴くのは大好きで、いろんな影響を受けます。
■歌詞がわからないのでタイトルから内容を想像するだけなのですが、“アパルトヘイト”や“ブラック・オア・ホワイト”は人種差別だとして、“デッド・ガール・ウォーキング”は死刑制度に関する曲ですか?
リー・リー:どちらも人種差別についてではありません。
■あ、違うんですか。
リー・リー:“アパルトヘイト”は経済的な隔離がテーマです。不正を生み出し、世界中のコミュニティは分裂させられています。“ブラック・オア・ホワイト”は判断(ジャッジメント)や、さまざまなイデオロギー/パーソナリティー/文化に対してオープンになれないことについて歌っています。両方とも社会問題が根底に強くあるので、そこからの波及効果で人種差別に関しても読み取れるのかもしれませんね。“デッド・ガール・ウォーキング”も死刑制度に関する歌ではなく、わたしたちは必ず死ぬ運命にあることをテーマにしています。
■なるほど。ドクロに繋がるテーマなんですね。アメリカでいま、もっとも人気があると言われている“AK-47”ではおそらく自動小銃の残酷さを訴えていると思いますが……
リー・リー:“AK-47”はアメリカとの国境近くに住んでいるメキシコ人の女性の視点で書かれています。麻薬戦争の起きている過酷な地帯のことです。殴られて、めった刺しにされて、残酷に苦しめられてから生き埋めにされるより、「AK-47」で瞬時に撃ち殺してほしいとその女性は懇願しているのです。メキシコの国境付近に住む人々にとってはこのような恐ろしいことが日常なのです。この場合には「AK-47」は寛大な処罰の象徴であり、選択の余地のない世界からの現実逃避において間違いを引き起こすものでもあります。
■“ブラック・オア・ホワイト”のヴィデオで日本刀を振り回しているのは?
リー・リー:あの刀に暴力を助長する意味はありません。自由意志のヴィジュアル的なメタファーとして使いました。自分と他人を守り受け入れるためにも使えますし、傷つけるためにも使えるものです。
■フェミニズムがバックラッシュの憂き目にあって以来、女性ミュージシャンの書く歌詞は社会や男性に期待しなくなり、女性から女性に向けられたものが増えました。日本では「女子会コミュ」とか言うんですが、音楽ではその最大の成果がケイティ・ペリーやアメリカのハイヒール・モモコと化しているニッキー・ミナージュだと思います。あなたはそういった流れに属するよりはM.I.A.やジャマイカのテリー・リンに近い立場を選択したと考えてよいですか? そうだとしたら、そのようにしようと思った理由は?
リー・リー:わたしの興味は社会問題について歌って、音楽を作ることです。人権や男女間のことなどにも触れますね。
■『モーヴァン』や『ハッピー・ゴーラッキー』、あるいは最近の『フィッシュタンク』といったイギリス映画を見ていると、イギリスの若い女性たちは異様なほど追い詰められているというか、ほとんど全員テロリスト予備軍に見えてしまいますが、実際はどうなんでしょう? 最近の映画であなたがいいと思った作品があったらそれも教えて下さい。『アリス・クリードの失踪』なんかはイギリスらしくていい作品だと思いましたけど。
リー・リー:正直に言うと、これらの映画は見たこと無いのです……。でも女性のメイン・キャラクターがステレオタイプではない役をするような映画は大好きです。『ハンガー・ゲーム』でのカットニス・エヴァディーンは最高でしたね!
■ああ、めちゃくちゃ強い女性像ですね。アメリカ型というか。あ、イギリスにも『タンク・ガール』があったか。ちなみにイギリス以外の国で暮らすとしたら、どこがいいですか?
リー・リー:タイ~カリフォルニア~ハワイの順番に住みたいです。基本的に暖かくてビーチが近くて、時間がゆっくりな感じのところならどこでも言ってみたいですね。
■現時点での目標はなんですか?
リー・リー:当面の目標は世界ツアーをすることです。日本にも行ってぜひパフォーマンスしてみたいです!
■ひとりだけ死者を蘇らせることができるとしたら、誰にしますか?
リー・リー:マリリン・モンローです。女性の中でももっとも美しく、知性があって、創造性に溢れるエネルギッシュなひとだからです。
■あれー、僕といっしょですね。理由もほとんど同じだなー。へー。






