「Nothing」と一致するもの

DJ Yogurt (Upsets) - ele-king

今回は日本人による曲のみで10曲選んでみました。
2012年前半によく聴いたり、DJプレイしたり、心に残る歌詞と感じたりした曲揃いです。
https://twitter.com/YOGURTFROMUPSET
https://www.djyogurt.com/
https://www.myspace.com/djyogurtfromupsets
https://ja.wikipedia.org/wiki/Dj_yogurt
https://www.facebook.com/djyogurtofficial

9/22 SUNSET LOUNGE@江の島展望台下サンセットテラス
9/26 WWW x Doobie presents “レイトショー vol.1@渋谷WWW
9/26 DJ YOGURT@SHIBUYA Lounge neo
9/28 DJ YOGURT IN RETROMETRO@CAVE246
10/5 DJ YOGURT VS DJ KURI @青山・蜂
10/6 DJ光Presents Lifestyle@Time out cafe

最近好きな日本人の曲


1
踊ってばかりの国 - !!! - Minimuff Records

2
奇妙礼太郎トラベルスイング楽団 - スイートソウルミュージック - P-Vine

3
七尾旅人 - 圏内の歌 - Felicity

4
曽我部BAND - サーカス - Rose Records

5
L.E.D. - One (Yogurt&Koyas Remix) - Penguinmarket

6
The Backwoods - Frying Bugz (Kaoru Inoue Remix) - Ene

7
Punpee - Movie On The Sunday - 板橋録音クラブ

8
ミステルズ - ライトで照らせ - Combine

9
Cos/Mes - He Is Rain Man (Seahawks Smooth and Spacey Disco Mix) - Funiki Ene

10
Yogurt&Koyas - Eternal Dawn pt2(Dorian Remix) - Upset rec/Horizon

新ジャンル用語解説 - ele-king

問題:以下のアーティストをジャンル別に分けよ。ジュリア・ホルター、アイコニカ、アクトレス、ハイプ・ウィリアムス、ダニエル・ロパティン、ジェームス、フェラーロ、ジャム・シティ、ワイルド・ナッシング。
答え:無理。理由としては、ジュリア・ホルターをひとり見ても、シンセ・ポップ、アンビエント、ノイズ、いろいろある。ダブステップ系に括られるアイコニカにしても、フットワーク、エレクトロ......。ハイプ・ウィリアムスやダニエル・ロパティンにいたっては、スクリュー、ニューエイジ、ダブ、シンセ・ポップ、ジャム・シティはUKガラージ、サイケデリック、ドローン、ワイルド・ナッシングはシューゲイズ、ドリーム・ポップ......(以下、略)。

 1980年代後半から1990年代にかけてのジャンル用語を振り返ってみる。シカゴ・ハウス、デトロイト・テクノ、ガラージ、アシッド・ハウス......このあたりからジャンル用語は噴出する。アンビエント・ハウス、ガバ・ハウス、ハード・ハウス(NYのコマーシャル・ハウス)、ヒップ・ハウス(ラップ入りのハウス)、そして舞台をUKに移すと、バレアリック・ハウス、アシッド・ジャズ、プログレッシヴ・ハウス(トランスとほぼ同義)、テクノ、ハード・テクノ、ジャーマン・トランス、ゴア・トランス、インテリジェント・テクノ(大いなる失敗作)、ハード・ミニマル、ミニマル・ダブ、トライバル・ハウス、ディープ・ハウス、そして1994年当時もっとも問題視されたトリップ・ホップ(多くのアーティストがこう呼ばれることを嫌悪した)、そして、さらに多くの批判を促した用語としてIDM(レイヴで踊っている奴はバカという視点に基づく)がある。
 さらにまた、ハンドバッグ・ハウス(その名の通り、ちゃらいハウス)、ジャングル、ドラムンベース、ダークステップ、2ステップ、ビッグビート、ドリルンベース(駄洒落のきいたネーミングだった)、ブレイクコア、ポスト・ロック、グリッチ、アブストラクト・ヒップホップ、ブロークンビーツ......、当時はこうした用語解説を依頼されたものだった。
 ゼロ年代のダブステップ以降もまた、こうしたジャンル用語シーンが活性化している。ことインターネット・ユーザーにとっては、これらは知識というよりもある種のシニカルな情報との戯れでもある。

 たとえば、「hypnagogic(ヒプナゴジック)」、これは2009年の『Wire』誌が言い出しっぺのタームで、ポカホーンティッド、エメラルズ、マーク・マッガイア、ダックテイル、ジェームス・フェラーロなどがその例として挙げられている。おわかりのように、ほぼ同じときを同じくして出てきたある世代の共通的な感覚を『Wire』なりに言い表したタームだ(要するに、正確に言えば、感覚を指す用語で、ジャンル名ではない)。

 ちなみに『Wire』は、「ポスト・ロック」というタームを1990年代後半に生んでいる。これが日本では長いあいだ誤用されている。
 そもそも「ポスト・ロック」とは、トータス周辺に象徴される音で、つまり主義主張を訴えていたロック文化とはまったく別の(まさにポストな)方向性を持つ音楽を意味する。さらに言えばジャズやクラウトロック、さもなければ現代音楽にその源泉を求めている。ゆえにモグワイやシガー・ロス、65デイズ・オブ・スタティックスのような、歌手がいないインストというだけで、基本やってる音はロックな連中にまで「ポスト」を冠するのは間違っている。
 フリー・フォークも同じように、かなり曖昧に日本の音楽ライター界では使われている。これも『Wire』が出自で、この場合の「フリー」とは、フリー・ジャズの「フリー(即興)」に近いニュアンスだった。ゆえにサン・バーンド・ハンド・オブ・ザ・マンのような即興性の高い音楽はフリー・フォークと呼べるが、デヴェンドラ・ヴァンハートは昔ながらのフォークであり、フリー・フォークではない。
 こうした誤用はときには「ま、どうでもいいか」で済ませるが、ときには済ませられないこともある。音楽としての「フリー」を目指しているバンドにとってフォーク(アコースティックな響き程度の理由から)と呼ばれることは、ひとつの解釈という話しではなく、誤謬そのものだ。旧来のフォーク・スタイルに「フリー」が冠せられるのもあんまりである。

 music is music........あったり前だが、音楽を楽しんでいるときにジャンル用語を気にしているリスナーがいると思ってはいない。それでも僕がこうしたジャンル用語をわりと面白がるのは、それら情報のカオスから生まれたタームが、音楽を語る言語の停滞を阻止する役目を果たし、新しい問題提起へと連続させるからだろう。単純な話、これは人の好奇心を煽る。昔はよく、商売熱心なレコード会社やレコー店もジャンル用語をでっちあげたものだったが......(デス・テクノとか、サイバー・トランスとか、あるいはレイヴという言葉さえもジュリアナ東京に差し替えたりもしたが、ことの善し悪しはともかく、それによって売り上げが伸びたのは事実)。

 たしかに新ジャンル用語はときにリスナーを困惑させる。IDM(インテリジェント・ダンス・ミュージック)というジャンル名が出てきたとき、「何がインテリジェントだ」と、最初は抵抗があった。が、もうどうでもいいやと思って使っている。IDMという用語の普及とともに、その音楽性も急速に拡大したという事実を前に、「それで通じるなら、ま、いいか」と、「便宜上」使うことにした。IDMをやっていれば知的だとは決して思っていない。 
 最近では、「chillwave」もやっかいなタームだった。「chillwave」はブロガー発の新ジャンル用語として定着した最初の例となったわけだが、その契機となったウォッシュト・アウトやトロ・イ・モアの初期音源(つまり、ネタありきの音楽)からはずいぶん離れたところでも使われている。
 「chillwave」とは、いわば素人の作ったタームだ。それはデジタル文化における情報発信の自由がもたらした最初の結実だ。音楽を楽しんでいる素人の作ったブログから生まれた造語と、レーベルから送られてくる情報のコピー&ペーストで構成される音楽情報サイトと、どちらが文化的に有益だろうか。いずれにせよ、それがどんなに陳腐に見えようが、今日の新ジャンル用語の氾濫は、アンダーグラウンド・シーンの活況を反映しているのである。

 以下、興味がある人のみ参考にしてください。そして、間違い/追加項目があったら教えてください。

screw:わかりやすく言えば、ウルトラマンに出てくるゼットン星人の声だが......音楽の世界では、いまは亡きヒューストンのDJスクリューの編み出した技から来ている。ゆえにジャンル用語ではなく、グリッチと同じように、テクニック用語である。ピッチを落としてミキシングするだけだが、独特の幻覚性が得られることから、ゼロ年代半ば以降から現在にかけて、いろんなシーンで流行っている。オリジナル・チルウェイヴとクラウド・ラップがスクリュー・リヴァイヴァルをうながしている。



footwork(juke):シカゴの速くてくどい、ハードなダンス。チョップとドラムマシン。強いコミュニティ意識から生まれたジャンル用語。DJネイト、DJロック、DJダイヤモンド、DJラシャド等々。彼らの汗は、欧州や日本へも飛び火している。また、こうした固有の地域から生まれたジャンルには、他にもメンフィスの「crunk」、南アフリカの「shangaan electro」、ディプロが見つけた「new orleans bounce」などがある。



UK funky:グライムのハウス化。ソカのセンスが混じっている。ロンドン在住の友人によれば、ほぼ20歳以下限定のノリだとか。

brostep(filthstep):レイヴ仕様のダブステップ。もともとはダブステップもブローステップも同じ場所にいたはずで、こうした識別こそジャンル用語のネガティヴな作用だと言える。ハンドバッグ・ハウスよりはマシだが......。

dream pop:ドリーミーな宅録音楽。チルウェイヴ、クラウドラップ、ヴェイパーウェイヴと違って、盗用すなわちサンプリング主体ではない。ビーチハウス、ピュリティ・リングス、ナイト・ジュウェル、ツイン・シスターほか多数。

cloud rap:ドリーミーかつヒプナゴジックなラップとトラックで、クラウド・ストレージのような共有ファイルからがんがんに音源をダウンロードして作っている、サウンド的にもクラウド(雲のよう)なラップ。リル・B(本人は自分の音楽を「based」と呼んでいる)、メイン・アトラキオンズ、クラムス・カジノ、エイサップ・ロッキー、オッド・フューチャーなどなど。また、「trill wave」という言い方もあって、クラウド・ラップのラップがあるかないかという説明がされている。ストーナー・ラップとも親和性が高いが、別に大麻を主題としているわけではない。



dark wave:コールド・ケイヴのような、ゴシック調のシンセ・ポップ・リヴァイヴァル。ちなみにコクトー・ツインズ系のような気体のような音、マジー・スターのようなウィスパー系を、欧米では、エーテル系(ether、英語読みではイーサ)と呼んでいる。

witch house:冗談めいた、ちょっと痛いジャンル名のひとつ。簡単に言えばゴシックなハウス。ブリアルの影響下で生まれ、スクリューを取り入れている。oOoOOが有名で、ほかにもセーラムとか、†‡†とか、恐怖モノですな。



vaporwave:クラウド・ラップのように、ネットからダウンロードした音源の再利用によって作られているモダン・サンプリング・ミュージックの第三の波。グローバル資本主義への批評性、もしくは抵抗とも解釈されている。ひとつの文化現象としても興味深い。情報デスクVIRTUAL 、インターネット・クラブ、マッキントッシュ・プラス等々。



Burial follower:これは筆者が勝手に言っている。ジャンル名ではなく、ひとつの傾向。悲しく、ダークで、ヴォーカルを加工するところに特徴を持っている。ホーリー・アザー、バラム・アカブ、マウント・キンビー、ダークスターなどなど。クラムス・カジノも、共通の感覚を有している。

drone folk:ギターでドローンしながら歌うことだが、なんとなく雰囲気を指し示す、曖昧なターム。そもそもフォークとは、ポップスと比較して言葉表現が自由なことから、詩的な言語を使えるジャンルとして発展している。ドローン・フォークは、必ずしも一音で構成されているわけではないし、言葉の詩学ももたない。ときにポポル・ヴーといったドイツのコズミックの系譜とも関連づけられる。グルーパー、モーション・シックネス・オブ・タイム・トラヴェルなどなど。



haunted R&B:ハウ・トゥ・ドレス・ウェルをはじめ......ジャンル名というよりは今日顕在化している感覚。ウィッチ・ハウスと同じようなものか。サッド・コアとかね。



dark minimalism:シャックルトンの絶大な影響力によって拡大している。雨後の竹の子のようにこれからも出てきそうな気配。

dark industrial:デムダイク・ステアやレイミ、ブラッケスト・エヴァー・ブラックのようなインダストリアル・リヴァイヴァル。





 一時期は「post dubstep」とはなんだったのかとよく訊かれたが、僕なりに説明すれば、ブリアル以降のハウスのBPMに合わせたベース・ミュージックで、ピアソン・サウンドやジョイ・オービソンなどその一部はテクノやハウスに回帰しているから、その過程だったともいまなら言えるか。
 また、〈ワープ〉の若手としてはダントツに才能がありそうなハドソン・モホークは、少し前は「wonky」などと呼ばれていたが、いまでは死語となりつつある。

The Invisible - ele-king

 たとえば“サレンダー”に明瞭に表れているように、ジ・インヴィジブルにはレディオヘッドの影響が色濃い。誰もが『OKコンピューター』を思い起こさずにはいられないシークエンスを持ち、またそれを通してザ・キュアーのおもかげまでが宿る。メンバー3人がそれぞれアデルのバックを務めたりポーラー・ベアーのギタリストだったりという腕利きであることに加え、こうした音楽性がまたマーキュリー・プライズにノミネートさせるような、大きな市場への説得力となり得ることは想像に難くない。ベッドルームや小さな小屋ではなく、テレビや街頭で聴かれるに耐える大柄なボディを持った音である。

 だが前作もけっして耳ざわりがよく大衆受けするポップ・チューンのならぶ作品だったわけではない。独特のローファイ感をいかしたソウルフルでジャジーなダンス・アルバム、ブロック・パーティ以降、多くのフォロワーを生みながらも空洞化していたポストパンク・リヴァイヴァルの最後の残り香といえるような雰囲気も漂わせていた。デイヴ・オクムのギターにその一端がうかがわれる。リズム隊も知的で熱情的なスタイルだった。しかし全体的にはクリアでリッチな音に仕上がっており、動画で確認できるような彼らのライヴの荒々しい熱狂や生演奏のスキルは、それほど反映されていない。とてもウェルメイドなアルバムという印象であった。

 2枚めとなる今作について、ギターとヴォーカルのデイヴ・オクムは「前作のツアーの終盤でわれわれは自分たちのほんとうのアイデンティティをみつけた」と語っている。そして、2度同じことは繰り返したくない、だからメンバーで話し合いながら音を厳選して絞っていった、という内容の発言をつづける。その結論がこの『リスパ』であったのなら、それはよりエモーションを大切にしたいというようなことではなかったか。沈み込むような暗さ、神経症的で反復的な展開、複雑なアレンジをきかせる一方で、オクムのヴォーカルはより粘り気を増し、より感情の弁を開いたかのように感じられる。アート・ワークもそれを銀と朱で対照させるかのようにコンセプチュアルなたたずまいがあり、何だかよくわからないファーストのジャケットから、一歩も二歩もテーマとしてのピントを絞るべく踏み込んだ作品なのだと想像させる。(ちなみにアート・ワークのトム・スキップはニューオーダーやザ・ミュージック、カサビアンなどの作品も手掛けている。)

 前作の制作時にオクムは母を亡くしており、今作はその影響についてもよく指摘がなされている。よりストレートな感情表出があるように感じられるのは、そうした話を念頭におくとよく理解できる。“ア・パーティクル・オブ・ラヴ”“プロテクション”という、冒頭と終曲に選ばれた2曲には、その葬儀の際に録音されたというケニアの伝統的な霊歌が用いられている。どちらかといえば沈痛な面もちの作品にあって、この女性たちが歌うアフリカの霊歌の奇妙な明るさや開放感は印象深い。前半は“ウイングス”や“ライフ・ライン”のように16ビートに縛りつけられるような抑圧的なアヴァン・ダンスが展開され、後半はノイジーでドリーミーなアンビエント・ポップ“ホワット・ハプンド”を区切りに(この曲にも例のアフリカン・スピリチュアルが挿入される)、哀切なヴォーカルがたっぷりとした幅をもって広がるようになる。終始リヴァービーなギターに彩られ、構造としては非常にドラマチック、曲ごとにも意が尽くされて飽きることがない。

「なによりも重要なのは、われわれのうち皆がこのアルバムをとても好きだということだ」国民的な注目を浴びた前作につづくものとして大きなプレッシャーもあったことだろうが、ジ・インヴィジブルはみごとにテーマ性を深め、そのことによって音楽性に美しい陰影をそなえることに成功している。メンバーがみなこの作品を気に入っているというのは本当だろう。次作もこのようであればやや重たすぎるかもしれないが、今作において彼らの意外なシリアスさはとても麗しく、またそうした方向に踏み出した勇気も認めたい。メジャーなマーケットにもおもしろく良質な音楽がきちんと存在しているということを証す好作である。

2年半ぶりのオリジナル・アルバム『イン・フォーカス?』のリリースに先立ち、先行シングル『デコレイト』が発表された。躍動的なリズムに高い音楽性を優しくほぐしこんだ“デコレイト”は、“ラム・ヒー”にも比較されるキャリア屈指のポップ・ソングだが、ほかの2曲も見逃せない内容になっている。

 2曲めに収録されているバグルスの名曲“ヴィデオ・キルド・ザ・レディオ・スター(ラジオ・スターの悲劇)”カヴァーは、トレヴァー・ホーンのファンであるという彼がすでに幾度もライヴで披露し、UKのラジオでも演奏されたお馴染みのトラックである。CD収録についてファンからの要望がとくに高かったということだが、アルバムには未収録となる。

 “ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ(恋に落ちた時)”は、映画『零号作戦』などに使用され、ナット・キング・コールによる録音で知られるヴィクター・ヤングのスタンダード・ナンバー。この曲のカヴァーである3曲めも、トクマルシューゴ自身の音楽的嗜好が随所にひらめく愛聴ナンバーである。

 ソノシートも同時にリリースされ、こちらは2曲のみ(“デコレイト”“ヴィデオ・キルド・ザ・レディオ・スター”)の収録となるが、いまではプレスできる工場が希少となったポストカード一体型のめずらしい形式。ダウンロード・クーポンがついているため、音とはべつに「かたち」として愛でたい。撮影当日は高熱をおして水に入ったというドラマもこめられたジャケット写真を、より大きく手にすることができる。

 さらに特設サイトでは“デコレイト”のミュージック・ヴィデオが公開されている。これもターンテーブルのイメージにゾートロープ(回転のぞき絵)の手法が重ねられ、どこか懐かしい感触に仕上げられている。手がけたのはアジア・デジタル・アート大賞2011への入賞も果たしたという注目の制作チーム、ONIONSKIN。楽曲、リリース・フォーマット、ヴィジュアルがリニアに「アナログ」の存在論を浮かび上がらせていて、これもトクマルシューゴのメッセージであるかのように思われ、興味深い。

[CD]
トクマルシューゴ 「デコレイト」
SHUGO TOKUMARU 「Decorate」
発売日:2012.9.5 Amazon <TRACK LIST>
1. Decorate
2. Video Killed The Radio Star
3. When I Fall In Love

[ソノシート]
トクマルシューゴ 「デコレイト」 / SHUGO TOKUMARU 「Decorate」
発売日:2012.9.5 Amazon <TRACK LIST>
1. Decorate
2. Video Killed The Radio Star
※収録分数の関係で、CD盤より1曲少ない計2曲の収録となります。
ソノシート特性上、CDや通常のレコードに比較してノイズ・音飛び等が多く聞かれる場合がありますので、予めご了承下さい。
※収録曲のフリー・ダウンロード・コード付き
※再生にはレコード・プレイヤーが必要となります。


【関連商品情報】
new album “In Focus?”
2012.11.7 ON SALE Amazon 商品詳細:https://p-vine.jp/news/3607

<限定盤>
PCD-18688/9 ¥2,900 (tax incl.)
★スペシャル・スリーブケース仕様
★トクマルシューゴ自身の演奏による、著作権フリーの99種/99トラックの楽器フレーズを収録したボーナスCD付き2CD仕様

<通常盤>
PCD-18690 ¥2,500(tax incl.)
★ジュエル・ケース1CD仕様

01. Circle
02. Katachi
03. Gamma
04. Decorate
05. Call
06. Mubyo
07. Poker
08. Ord Gate
09. Pah-Paka
10. Shirase
11. Tightrope
12. Helictite (LeSeMoDe)
13. Micro Guitar Music
14. Down Down
15. Balloon

パスカルズ - ele-king

 ゼロ年代の邦画でワーストを挙げろと言われれば『NANA』『ベロニカは死ぬことにした』『モテキ』『ラビットホラー』……とキリがないけれど、ベスト3を挙げろと言われれば、中島哲也監督『下妻物語』(04)、柴田剛監督『おそいひと』(04)、是枝裕和監督『空気人形』(09)になるかなーと(長編アニメ除く)。そして、コーエン兄弟をパクった山下敦弘監督『松ヶ根乱射事件』(07)も次点では必ず挙げたいところで、それはコーエン兄弟を評価するというよりは日本人のウェットな体質を殺ぐには有効な方法論として応用されていたのではないかということと、『松ヶ根乱射事件』ではそれが最大限の効果を上げたと思うからである。同じことは奥田庸介監督『東京プレイボーイクラブ』(11)にも言えるし、韓国映画にルイス・ブニュエルが入り込むと情感の強さが違う見え方をしてくることにも似ていて、よく考えると悲劇なのに、その瞬間は喜劇にしか見えないところがいいというか。泣くところを笑うところにすり替えるテクニックともいえる。

 そして、山下敦弘の映画といえば音楽はいつも赤犬が担当していた……のに、『松ヶ根乱射事件』ではなぜかパスカルズが起用されていた(知らずに観ていたので、ちょっと驚いた)。エンディングこそボアダムズだったものの、アイリッシュ・トラッドやコンテンポラリー・ジャズをどこか無国籍風に演奏するパスカルズは、舞台や映画に起用されることが多く、先日もフリードミューンで上映された大林宣彦監督『この空の花』でもラスト・シーンはパスカルズの演奏シーンとなっていた。14人もいるメンバー全員は写っていなかったけれど(青山CAYのステージには全員が上がりきれなかったらしい)、この世に渦巻くありとあらゆる感情を嫌味なほど平和な地平に着地させてしまうパスカルズがそこにはいた。

 結成17年目なので『17才』。反射的に「南沙織だね」というと、本人は大江健三郎の「セブンティーン」を考えていたらしい。だけど、ジャニーズのTOKIOも17周年なんだよとリーダーのロケット・マツは穏やかに笑う。これまで三上寛から吉野大作まで客演暦には事欠かないキーボード奏者で、頭脳警察のトシと組んだシノラマのライヴを聴きに行ったのが僕は最初だったか。タイマーズが電波ジャックをやってのけた「FM東京」のバックでアコーディオンを弾いていた時はさすがに驚いたし、後で訊いてみたら、マネージャーにも内緒で、一旦リハが終わってから楽屋で小さくなって練習したという。あの時は全員変名だったのに、ロケット・マツだけがロケット・マツだったな、そういえば。

 『17才』は相変わらずパンク性を持たないポーグスのようなアンサンブルがメイン。楽器の多さを感じさせないほど息はピッタリで、スリリングな展開になるときも努めて穏やかな曲調を維持しようとしているのか、強く感情に触れるような瞬間はない。ミュージカル・ソーがシンセサイザーのように不自然なアクセントをつける以外、すべては平らかに流れていく。平穏無事。「退屈を音楽にしたかった」とは佐藤伸治の弁だけど、それならパスカルズにも一脈はある。パスカルズはその時間を楽器のアレンジを考える時間に費やしてきたのだろう。「エル・ドン・ガバチョ」でちょこまかと現れる小さな音のひとつひとつがその成果に思われる。ちなみにパスカルズというバンド名はパスカル・コムラードにちなんでいる(フランスではコムラードと同じレーベルからリリースされている)。マスタリングは久保田麻琴。

 これまでブライアン・イーノから武満徹まで縦横にカヴァーしてきたパスカルズがここでは友部正人「6月の雨の夜、チルチルミチルは」(87)とバッハのアリアに日本語の歌詞をつけてカヴァー。東北大地震をはさんでレコーディングされたというだけあって、どこか内省的で、失われた日常性への郷愁が感じられる。ロケット・マツとは5年前にHONZIさんのお葬式でばったり会って以来、久しく顔を合わせていず、先月、官邸前でまたしてもばったり再会することになったもので、その後、久しぶりに観に行ったライヴでも福島原発のことはMCでも触れられていた。記憶が薄らいでいくことに抵抗があり、だから必ず話すことにしていると彼は説明していた。もちろん、彼はそういったキャラクターではなかった。それこそ抜群に似合っていなかった。ライヴが終わってから、伝えたいことがあるならもっとMCも練習しなきゃダメじゃんというと、あれでも練習したといって笑うだけ。貴重な存在であるw。

 穏やかな音楽という意味ではブリストルのライアン・ティーグも引けをとらない。ギター・サウンドに特化した前作から3作目で再びオーケストラ・アンサンブルに揺り戻し、ウィム・メルテンズを継承したような柔らかいミニマル・サウンドが12パターン。どれも小さな世界の小さな出来事を小さな声で伝えているようなコンポジションばかりで、日本人のようにミニマル・ミュージックをアンビエント・ミュージックとして捉えることのない西欧人たちにも、これはさすがにアンビエントに聴こえてしまうのではないかと思えるような展開ばかり。ちょっとパッセージの早い「セル・サイクル」が科学映画のBGMみたいだと思ったら、パスカルズ同様、なるほど、この人も映画やTVのサウンド・デザインを手掛けることが多いらしい。「カスケイズ」を共作しているトム・エドワーズは元スピリチュアライズドかつコイルのサポート・メンバー。マスタリングはモキラことアンドレアス・ティリアンダー。

The XX - ele-king

憂鬱という悦楽 文:木津 毅

E王 The XX - Coexist
Young Turks/ホステス

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 デビュー作『XX』の最良の部分、それは"VCR(ヴィデオ・カセット・レコーダー)"のヴィデオに凝縮して封じ込められている。廃墟のような隠れ家で戯れる若い恋人たち、モノクロから不意にカラーへと色づく淡い映像。「VCRでヴィデオを見ながら ふたりで大きな愛を語る/たぶん わたしたちはスーパースターで/最高の存在だってあなたは言う」。そこには優れた少女漫画のようなリリカルさと瑞々しさがあり、僕はふと大島弓子の短編を思い出す......そうたとえば、少年少女が最小の革命へと真っ直ぐに向かっていく『ローズティーセレモニー』を。ザ・XXは、その音とそこにこめられたフィーリングがどれほどメランコリックであろうとも??いやだからこそ、拭いきれない若さとロマンティシズムを抱えていて、その純度の高さにわたしたちは溜息をつく。彼らが優れていたのは、何度となく繰り返し表現されてきた10代の憂鬱をダブステップ以降のポップスとして鳴らした直感的な鋭さであると思う。音数の少なさによって生じる隙間は、聴き手を思春期の揺らぐ感情に放り込むスペースである。そうしてザ・XXは、ポップスの......ラヴ・ソングの、もっともプライヴェートな愉しみ方を刺激する。

 『共存』と題されたセカンド・アルバムでは、さらに音数を減らした"エンジェルス"を見事な導入としながら、基本的には前作の方法論を進めている。ミニマルなビートと、その隙間ですれ違う非常にインティメットなツイン・ヴォーカル。はじめに聴いたときは全体的なトーンが一定すぎるようにも思えたが、よく聞けばジェイミーが打つビートが細かく曲によって分けられており、そのディテールに耳を澄ましたいアルバムだということが繰り返し聴いていると理解できる。たとえば中盤の"トライ"から"サンセット"へと続くフォー・テットの近作のようなダンス・トラックは基本的にキックが4/4を刻みながらも、時折訪れるブレイクで入ってくる裏拍のヴァリエーションが多彩だ。そういったところによく表れているが、ザ・XXの音は非常に耳と身体の快楽を意識して作られている。クラブ・ミュージックの要素が強くなったためにその印象が強くなったこともあるが、基本的な構造としては変わらない。それはつまり、ここでオリヴァーとロミーが囁く陰影の深い愛の詩、その歌が快楽的なものであるということをジェイミーが誰よりも理解しているということで、3人のその緊密な関係性のあり方がバンドの不可侵な佇まいを生み出している。

「隠れよう/共に隠れよう/世界が静かに立ち去るのを許可して/ふたりぼっちになろう"スウェプト・アウェイ"」、「隠れる必要などない/ここにはあなたしかいないのだから"リユニオン"」??まったく逆のことを言っているようでありながら、その実同じことが繰り返し歌われている......社会の喧騒、もしくは「世界」と呼ばれるものに背を向けて、人目のつかない場所で愛を交わすこと。誰も知らない愛を。"VCR"のヴィデオの若いふたりがフラッシュバックする。しかしながら、本作ではアルバム・タイトルにしてもそうだが、"トライ(挑む)"、"リユニオン(再結合)"、"アワ・ソング(わたしたちの歌)"という曲タイトルに、恋愛を歌いながらもどこかそこに留まらない強い結束を感じさせるものがある。そこでは、デビュー作以上に自分たちの音楽とリスナーとの関係性のあり方が非常に意識されているように思える。さらに密室的な聴き方を強く要請する音であり、そこでこそ歌の感情がさらけ出される。「鼓動が変わってしまった/こんなこととてつもなく久しぶりで"ミッシング"」、「展開しよう/秘密のままにはしておかない/どこまでもどこまでも続く感情"アンフォルド"」......ビートが鳴り止んだときに不意に歌い上げられるそれらの言葉が、今度は聴く側の最も内側に侵食しようとする。

 若さは去る。そしてイノセンスは必ず失われる----ことを描いていたのは、萩尾望都の『トーマの心臓』だったかクリント・イーストウッドの『ミスティック・リバー』だったか......。『コエグジスト』でもまた、宿命として愛が去っていくことが主題となっている。だが、彼らはそのロマンティシズムを手放そうとしない。その潔癖さ、清冽さは明るい光の下ではなくて、薄暗い部屋の片隅でひっそりと、しかし隠さずに手渡される。ザ・XXを聴くことの快楽とは、自分のなかにもまだ存在していた純粋な何かを再発見する悦びにとてもよく似ている。そして"わたしたちの歌"では、こんな風に歌われる。「わたしのすべて あなたにあげよう/暗黒の日々に 誰も手を差し伸べなくても/わたしをあげよう/そうすれば わたしたちになれる」

文:木津 毅

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素晴らしき第二章 文:竹内正太郎

E王 The XX - Coexist
Young Turks/ホステス

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 ポップ・ミュージックのアーカイヴにおいて、スペース・ロックの起源がどこであるかを知らずとも、最新の形がそれであることはわかる。あるいは......これがベストなのかもしれない。『The XX』(2009)は、端的に言ってそういう飛躍を許し得る作品だった。それは特段、ドリーミーでも、トリッピーでも、サイケデリックでもなかった。楽器を演奏しない筆者でも容易に判断できるくらい、別に高度な技術性があったわけでもない(少なくとも、そうは聴こえなかったという意味でもいい)。密やかなマシン・ビートに、つま弾く程度のエレクトリック・ギター、そこに薄く重なるムーディなアンビエンス。もし、そこに「何があったのか」という位相での議論になれば、むしろ「何もなかった」と答えるのが相応しかったとも言える。果てしなく広がる無音の空間に、真夜中の空中遊泳へと出かけるための、一睡の浮遊感。ただそれだけがあった。それが2009年の新たなルールだった。

 普段、それほどインディ・ロックを聴かない人からすれば、「インディなんて遠くから見れば全部一緒じゃん!」くらいのことを言いたくなるかもしれないが、無批評的な言い方をすれば、The XXに関しては格が違ったとしか言いようがない。それはインディ・ロックのフェティシズム(相互浸食する類似の音楽を比較し、小数点第一位までレイティングするような細部へのこだわり)などでは絶対になかった。コクトー・ツインズでさえ華美なセルアウト・ポップに思えた、あるいはヤング・マーブル・ジャイアンツでさえ古臭いロックに思えた、あの静謐なポップ・ミュージックは、そのアンチ・ポップ的態度とビート感覚において、ダブステップ以降のUKインディを定義したと言える(目立ったフォロワーは現れなかったと記憶しているが、そのことが逆説的に彼らの大きさを浮き彫りにした)。ロミーの恍惚とした吐息のようなヴォーカル・スタイル(そしてオリヴァーのアンチ・エモーショナルなそれ)を媒介に、あるいは、アンビエント・R&Bと同期するようなジェイミーのサウンド・プロダクションを足掛かりに、ドレイクらネオ・アンビエント・ポップの感性とも共振し、実際にその音は交わった。そしてThe XXの艶やかな無音性はいま、さらなる洗練を見せている。

昨日の夜 世界はふたりの真下にあった
"Fiction"

隠れよう
あなたと共に隠れよう
世界が過ぎ去るのをただ見送って
あなたとふたりぼっちになろう
"Swept Away"

 待望のセカンド・フルレンス、『コエグジスト』。前作から白黒が反転しただけのアートワークに、うっすらと油膜のようなものが光の干渉を描いている。これが、本作の概要をほぼ完全に代弁する視覚イメージである。確かに変わっているが、何も変わっていないようでもある、そんな作品だ。その点からすれば、『The XX』を初めて聴いたときほどのショックはないかもしれない。

 だが、振り返って前作を聴き直したときに、"VCR"や"Island"といった代えがたいインディ・ポップの輝きでさえも、ポップスのセオリーに従った形式的な音楽だったと言えてしまうほどの距離を、『コエグジスト』とのあいだに確認することはできるだろう。驚くべきことに、メロディの煌びやかさはさらに取り払われ、メンバーの脱退という意味以上に、音の装飾的な余剰部はほとんど撤去されている。起伏という点では、前作を上回って抑制されている。広い空間によぎるビターな後味だけが、甘い余韻を醸し、メロディは断片としてのみ、ある。そして、それゆえに、ファースト・リスニングでは1曲たりとも、具体的には記憶できないだろう。彼らはアンチ・ポップの方向性を明確に打ち出している(一瞬だけ、本作にチャーミングな時間が訪れる、"Reunion"に聴こえるスティール・パンの音色は、ジェイミーのシングル"Far Nearer"(2011)からの残響だろうか)。

 しかし、その早熟な音作りとは相反して、詩作という点ではやや紋切型のナイーヴな感性を見せるのがThe XXというバンドでもある(『The XX』のトラック・リストを改めて眺めてみて欲しい)。それは本作においても継続しており、「世界」という巨大な概念を、個人が対峙できるサイズ(ゼロ年代に「セカイ」と呼ばれたもの)にまで圧縮し、対象化しながら、そこに含まれつつも世界を拒絶し、また世界の方からも拒絶さるという、デフォルメして言うのならばそのような世界観を通底させている。そして気の毒なことに、The XXが描く「あなたとわたし」が生きる世界では、常に「あなた」の不在が先行する。「あなた」の存在で無限の承認を得ようというほどの図太さは、彼らにはなく、その圧縮された空間内において、「わたし(僕)」の個人的充足は永遠に先延ばしされている。そして彼らは、その不満足性にこそ、ラブ・ソングの美しさを見出しているようだ。

 ヤング・マーブル・ジャイアンツを必要としない世代のための、アンチ・ポップ・ポップ。一方の世界では、これをこの年のベストな作品だとするのだろうし、また一方の世界では、これをインディ・ロックのフェティシズムと呼ぶのだろう。それを議論するときに聴くべきベスト・トラックは......誰がなんと言おうが、ラストの"Our Song"だ。感傷的なミニマル・バラードをキックとベースが細かくアタックする、この慎ましいクライマックスにおいて、「あなたとわたし」、そして複数形の主語を用いていったい何が歌われ、何が願われているのか。それはあなた自身の手と目と耳で確認してみて欲しい。単に私がセンチメンタル過剰なのだろうか、ベタなことを言えば、『海辺のカフカ』(村上春樹、2002)のクライマックスを彷彿するものが、そこにある。遠のいていく光を、破滅への予感を抱えながらも追いかける(追いかけずにはいられない)、アンビエント・トリップの素晴らしき第二章だ。


文:竹内正太郎

interview with The XX - ele-king

都市には秩序も空間も
そして場所もない
真実も信頼もない
インガ・コープランド“BMW”

 なぜか日本の若い世代では昔ながらのシティ・ポップスが流行っているけれど、英国で流行っているシティ(都市)の音楽は、死刑台のように、ばっさりと冷たい。その象徴が僕にはディーン・ブラント&インガ・コープランド(ハイプ・ウィリアムス)だと思える。ブリアルを見いだし、自らもコード9+ザ・スペースエイプ名義の作品によって、都市になんざぁこれっぽっちの陶酔もないことを訴えていた人物が契約しただけのことはある。僕も彼らの感覚に多いに共感しているわけだが、ダブステップを好きになった理由もそこだった。

 ザ・XXは、ここ数年のロンドンの音楽が感じ取っている冷酷な都市感覚をより甘美なメロドラマに見立て、そしてスタイリッシュにブラッシュアップしている。デビュー時に何かと比較されたエヴリシング・バット・ザ・ガールのトレイシー・ソーンが自分のほうからザ・XXの曲“ナイト・タイム”をカヴァーしたほど、その洒落たセンスは認められている。特別何か強い主張があるわけではないが、ザ・XXには格別なムードがあるのだ。メランコリーをとらえるのが抜群にうまい。
 3人それぞれの個性がこのバンドを構成しているのはたしかだろう。が、ことジェイミー・スミス(ジェーミー・XX)という音作り担当の存在は大きい。リチャード・ラッセル(XLレコーディングスの社長)がギル・スコット・ヘロンの遺作のリミキサーに大抜擢したことはある。だいたいレディオヘッドとリアーナから仕事を依頼されるという文武両道ぶりはすごい。

E王
The XX
Coexist

Young Turks/ホステス

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 そういえばマッシヴ・アタックのセカンド・アルバム『プロテクション』の1曲目はトレイシー・ソーンが歌っていたなと、『コエグジスト』をホステスで試聴する前に思い出していた。満足度で言えば、ジェイミー・スミスのトラックに関してはほぼ満足している。思ったよりもダブステップ色は薄く、代わりにハウス(ディスコ)が注がれているが、R&Bやバラードなど、前作以上に幅をもたせているばかりか、品質はいっきに向上している。そして、どう考えてもジェイミーのクラブ・ミュージック愛が前作以上に滲み出ている。

 ザ・XXは深夜の音楽であるから必然的な展開だったと言えるが、あらためてそうなった。いわばトドラ・T(いや、ここはホット・チップと言うべきなのかな、斎藤君)の裏側、音数は少なく、密室的で、薄暗いその内省的なスペースは心地よく広がっている。あとは静かにして、音に集中するだけだ。


DJをして世界を回って肌で感じたのは、結局みんな行き着くところはハウスでありテクノであり、っていうところで。イギリスもいま、そういう風になってきてる。

いきなりですが、あなたがたがいまUKでベストだと思うレーベル/DJ/プロデューサーを教えてください。

オリヴァー・シム(以下、オリヴァー):僕たちがすごく恵まれてるなと思うのは、自分たちが所属するレーベル(Young Turks)は僕たちが好きな音楽をかなりのパーセンテージで出しているレーベルなんだよね。それにアーティストとしてすごく自由をくれていて、いい関係を築けているからこれ以上のレーベルはないと心から思っているよ。それから、ジェイミーがこの1年でやってきたソロ活動をいちファンとしてすごく楽しんできた。自分は関わっていないけど本当に素晴らしいと思うし、彼のことを心から誇りに思うよ。

今回のアルバムは、より今日のUKのクラブ・カルチャーを反映していますよね?

ジェイミー・スミス(以下、ジェイミー):自分たちのレーベルはいまでもインディではあるけれど、しっかりメインストリームのものも扱いつつしっかり限定されたいいものをすごくいいバランスでやってるっていう意味ですごくいいレーベルだと思う。DJやプロデューサーに関しては、みんなすごく注目されてまたすぐ消えて、っていう。ダンス・ミュージックっていうものはそういうことを繰り返して、進化と発展を遂げてきたんだと思うんだよね。だからいますごく気に入ってるっていうのはないけれど、フォー・テットに関してはすごく安定して活動を続けているし、何か作品を出す度に進歩的な音楽を作っているなと思うよ。

ロミーは現在のクラブ・カルチャーにどのような見解を持っていますか? あなたは歌っている立場ですけれども、今回はサウンド・プロダクション的にはクラブ・カルチャーの側面が強く出ていますよね。

ロミー・マドリー・クロフト(以下、ロミー):わたしは基本的に、ジェイミーやオリヴァーが「こういうのが面白いよ」って教えてくれるものを通してクラブ・ミュージックを聴いているの。イギリスだけじゃなくいろいろなものを聴いていて、ハウスやディスコもすごく好きだし、R&Bもすごく好きだったりする。自分からUKのクラブ・シーンに特別注目するっていうことはあまりないかな。

3人にとってUKのクラブ・カルチャーは誇れる文化だっていう意識はあるんでしょうか?

ジェイミー:うん。イギリスに根づいたものがいまのイギリスで盛り上がってるっていうことはあまりないけど、いろいろ出てきたものが世界的に大きなものになっているとは思うんだ。DJをして世界を回って肌で感じたのは、結局みんな行き着くところはハウスでありテクノであり、っていうところで。イギリスもいま、そういう風になってきてる。UKのサウンドだけじゃなくて、そこから出てもう少し広い意味での音楽で評価されるようになったっていうのは、逆にいいことなんじゃないかな。

なるほど。

ジェイミー:まあ、これは僕個人の見解なのかもしれないし、あらゆる音楽を聴いて考えてきた結果――まあ、考えすぎなところはあるんだけど――、結局「何がひとを踊らせるんだ?」と考えたときに、根本的な要素を追求したら、さっき言ったようにハウスやテクノなんだなって思ったんだ。

さっきからサウンド面についてばかり質問してしまっているんだけど、バンド自身では今回のセカンド・アルバムでもっとも重要なポイントっていうのはそれぞれどこだと思っていますか?

オリヴァー:事前にこういう作品にしようって打ち合わせをしたわけでもないし、ただひたすら曲単位で、みんなでまた一緒に曲を作る喜び、それを世のなかに発信する喜びを感じながら作っていたんだ。そのなかで、こういう作品を作ろうって目標を決めたわけでもない。僕としては、自分の抱えている気持ちや感情をしっかり出してそこに込めるておいうことだったんだけど。それ以外は、前もって決めたものではないんだよね。

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どんどんすごく悲しい歌になりそうなものは、正反対の対照的なものと組み合わせることで、また新しいムードを作り上げるっていう意味でだね。そのアイデアは気に入ってるんだ。

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前回のインタヴューで、「マッシヴ・アタックのアルバムで何がいちばん好きですか」って聞いたら、「自分たちはiTunes世代だから曲単位でしか曲を聞いてなくて、アルバムって言われてもアルバム名が浮かばないんだ」っていうようなことを言ってたんですけれども。その後時間が経ちましたけど、アルバムというものへの捉え方はどのように変わったでしょうか?

ロミー:ええ、変わったと思う。今回のアルバムを作って、やっぱり曲順とか全体の流れを――とくにDJなんかを聴いた影響もあると思うけど、すごく考えるようになった。どの曲とどの曲を繋げたら合うかってことをとても意識するようになったわ。1枚のアルバムを通して聴くっていうこともすごく意識するようになったわね。たしかにそれはわたしたちは子どもの頃音楽を聴いてきた環境とは違ってて。iPodでシャッフルで音楽を聴くってことをずっとやってきたんだけど、今回アルバムを作って通して聴くってことをすごく考えるようになった。アナログでも出すんだけど、とくにアナログとなると曲を飛ばしたりできないから、曲順もすごく気を遣ったの。いまの時代に、リスナーにアルバムとして聴いてくれっていうのは大きい要求かもしれないけれど、少しでも多くのひとがそういう風に楽しんでくれたらいいと思うわ。

アルバムとして意識しはじめたときに、他のアーティストでアルバム作品としていいなと思ったものはありますか?

ロミー:ポーティスヘッドね。最初から最後まで本当に素晴らしい作品で、1曲1曲も大好きなんだけど、全体を通して聴いても素晴らしいと思うわ。

ポーティスヘッドはサウンド面だけでなく、コンセプト的にも素晴らしいアーティストだと思うんですけれども、今回のあなたたちのアルバムにもコンセプトがあると聞きました。それが「失われし愛」という言葉を聞いたんですけれども、そのテーマについて説明していただけますか?

ロミー:コンセプトを持って作ったってわけではないんだけど、結果的にすべてラヴ・ソングになったの。それもラヴ・ソングにするって決めてたわけじゃないんだけど、純粋に書いてて楽しかったのがそれだったのね。

必ずしもハッピーではないラヴ・ソングばかりを書くのはなぜですか?

ロミー:もともと悲しい曲が好きだっていうのはあるわね。自分が幸せなときも悲しい曲を聴いて、それに浸るっていうのが。結局悲しい想いのほうが、歌で表現したときに説得力があると思う。幸せなものっていうのは得てして陳腐なものになりかねないし。ただ今回のアルバムでは、ただ悲しい曲ばかりじゃなくて、なるべく感情の幅を持たせようという気持ちはあったから、2、3曲ただ悲しいだけじゃないラヴ・ソングも書いたつもりなんだけどね。

なるほど。ジェイミーが作る音にふたりが言葉を合わせているわけではないんですよね?

ジェイミー:3人の個性の融合だね。自分のサウンドを押しつけるのではなくて、ロミーとオリヴァーが書いてきたことに合うもの、その世界観を引き出すものを意識してるんだ。それらを衝突させるよりも、ふたりが作ったものを生かすっていうことを僕は意識してる。

ちなみにダンス・ミュージックってことで言うと、レイヴ・カルチャーではブローステップみたいなものが大きくなってますけど。当然あなたたちはブローステップみたいなシーンとは距離を置いてるわけですよね。

ジェイミー:ブローステップ? (力なく)ああ……。

はははは。

ジェイミー:ダブステップがアメリカに行ってブローステップになってしまったっていうのは、ある意味悲しいよね。好きじゃないんだけど。ただ、去年1年はレイヴとかパーティとかには行ってないし、今回のアルバムの要素としてもクラブ・ミュージックやダンス・ミュージックが大きい位置を占めているわけではなくて、いろんな要素がたくさんあるから。これがダンス・アルバムだと捉えられては困るかな。

とはいえ、6曲目の“サンセット”は典型的なハウス・トラックで、4つ打ちというのはファーストにはなかったわけで。全体的にファーストよりはクラブ寄りに感じましたが。

ジェイミー:それはどんどんすごく悲しい歌になりそうなものは、正反対の対照的なものと組み合わせることで、また新しいムードを作り上げるっていう意味でだね。そのアイデアは気に入ってるんだ。踊ることもできるし、クラブじゃない環境で聴きこむこともできるっていうことをこの曲では目指したんだ。

ギル・スコット・ヘロンのリミックスをはじめ、昨年ジェイミーが〈ナンバーズ〉レーベルから出したシングルも良かったし、ファルティDLのリミックスも良かったし、UKベース・ミュージックの最新型として印象的に思ったんですよね。だから、あなたが次どんなトラックを作るのかっていうところに注目していて。4つ打ちをやったっていうのが、正直自分のなかでは驚きだったので。

ジェイミー:まずはダンス・ミュージックを聴いていたっていうのと、曲に合った一番いいものを作ろうっていう思いでプロデュースした結果なんだけど。XXの曲をプロデュースしたときっていうのは、プロデュースっていうのはひとつの要素でしかなくて、それがすべてではないんだ。自分の作品と比べるとね。4つ打ちっていうのはシンプルな8ビートのなかでいろいろなことができるっていう意味で実はすごく面白いんだよ。

なるほどね。じゃあ最後の質問にしますね。2回目の来日ですけど、それぞれ楽しみにしていることを教えてください。

オリヴァー:3回目だね。フジロックで来たから。

あ、そうか。

オリヴァー:やっぱりライヴだよね。新曲のリアクションがすごく楽しみなんだ。あとは、今回はけっこうたっぷり滞在期間があるから、東京の街中を味わうのをすごく楽しみにしてるんだ。

ジェイミー:買い物だね。

ロミー:田舎のほうを見てみたいわ。歴史的なものを感じたい。その時間があるかだけど。

[Electronic, House, Dubstep]#12 - ele-king

 買ってからけっこう時間が経ってしまっている盤も少なくない。いまはヴィラロボスのアナログ盤が並んでいるけれど、ぜんぶ揃えると5千円かよ~。とりあえずはいくつか現状報告。

1.Lindstrom - Call Me Anytime (Ariel Pink's Haunted Graffiti Remix) |
Smalltown Supersound


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E王いつか誰かがやるんじゃないかと思っていたけれど……リミキサーがアリエル・ピンクス・ホーンティッド・グラフィティ、OPN、そしてマーク・マグワイアという、三田格じゃなくとも「ついにこの時代が来たか!」と唸りたくなるような記念碑的なシングル。機能性のみが重視されているこの10年のリミックス文化には見られなかった何でもアリの実験精神が刻まれている。それでも、OPNとマーク・マッガイアに頼むのはわかる。そこにアリエル・ピンクがA面にどしんと刻まれているところが良い。レーベルの方向性に拍手したい。ノルウェイーのコズミック・ディスコの王様、リンドストロームが今年リリースしたサード・アルバム『シックス・カップス・オブ・レベル』収録曲だが、最近はネナ・チェリー&ザ・シングやラジカのアルバム、数年前はサンバーンド・ハンド・オブ・マンやヤマツカ・アイなどといったレフトフィールドなアーティストの作品を出している〈スモールタウン・スーパーサウンド〉らしい冒険心と言えるだろう。
 アリエル・ピンクス・ホーンティッド・グラフィティのリミックスが意外なことにしっかりとフロア対応していて、クラウトロック的な、そして諧謔性のあるミニマリズムを展開。OPNは、チルアウトを押し通しつつも、左右音が飛びまくりの見事なトリップ・ミュージック。マーク・マグワイアは……思わず笑ってしまうほど、ギターを弾きまくっている。

2.Azealia Banks - 1991 | Interscope Records


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E王とくにヒップホップ/R&Bのリスナーのあいだでは期待が高い、ハーレム出身の21歳、アゼリア・バンクスの〈インタースコープ〉からの12インチ・シングルをマシン・ドラムとローンがプロデュースしているところに“いま”を感じるし、M.I.A.を過去のものにしてやるぐらいの意気込みを感じる。ミッシー・エリオットとM.I.A.の中間をいくようなフローも魅力的で、一聴しただけで強く惹かれるものがある。ハウスを取り入れたマシンドラムの“1991”に対して、ローンはレイヴィーな“Liquorice”で迎える。路上のにおいが漂うB1の“212”も素晴らしい。すべてにおいて完璧。夏前に買ったシングルだが、2012年のベストな1枚だと思う。

3.Joy Orbison, Boddika & Pearson Sound - Faint / Nil (Reece) / Moist | SunkLo


 UKベース・ミュージック、ジョイ・オービソンがボディカと一緒に作ったレーベルから3枚リリースされている12インチの最初の1枚。この盤のみピアソン・サウンドが参加。
 ハウス/テクノに限りなく近づきながらも一寸止めでベース・ミュージックにとどまっている。ダブステップやグライムで育った感性がハウス的展開をしているまっただ中にある。ザ・XXのジェイミー・スミスあたりといちばんシンクロしている音はこのあたりなんじゃないだろうか。

4.Moody - Why Do U Feel ? / I Got Werk / Born 2 Die | KDJ


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E王問題はB面の2曲目。ラナ・デル・レイとは、とくに“ボーン・トゥ・ダイ”のプロモーション・ヴィデオを見たことのある人なら、あの曲の世界観が吐き気がするほど白いアメリカだとわかるだろう。それは、デトロイトのブラック・ソウル・ハウスにおけるもっともラジカルなプロデューサーが描き続けている世界とは正反対に広がっている。が、ムーディーマンはそんな彼女を、突き放すのではなく、セクシャルな黒い女神へと変換している。鮮やかな手口でもって。
 ほかの2曲は毅然としたブラック・ソウル。“Why Do U Feel ?”はムーディーマンのメロウなセンスを活かした曲で、“I Got Werk”はファンク。ちょっとオタク的なことを言えば、スネアの音ひとつ、シンバルの音ひとつ、違う。

5.HRKY - Madwazz Ep | Madwazz Records


これをもそうだが、最近は、本当に、デトロイト・テクノがインディ・ミュージックを聴いているいちばん若い世代のあいだで盛り上がっているようだ。ロックのおけるブルースやソウルのように、迷ったら帰る家となっているのだろう。  これは神戸のレコード店〈アンダーグラウンド・ギャラリー〉が鼻息荒く、「CARL CRAIG / BASIC CHANNELファンへ!」と紹介する福岡のレーベル〈マッドワズ〉からの第一弾。バック・トゥ・ベーシックなファンクのグルーヴをキープしながら、アトモスフェリックなシンセサイザーが広がっている。3曲収録されているが、僕はB1の“The momentary break”がいちばん好き。メトロノーミックな909系のキック音、重なるストリングス、美しい余韻、まさに初期のカール・クレイグを彷彿させる。カセット・レーベルの〈ダエン〉といい、大阪と同様にナイトライフの締め付けが厳しくなっている福岡が、なんだか良い感じでざわついてきた。次は稲岡健か?

6.Being Borings - E-Girls on B-Movie(KT Re-Edit) / Red Hat and Black Sun / Love House of Love (Dr.Dunks Club Remix) | Crue-L Records


 瀧見憲司と神田朋樹によるプロジェクト、ビーイング・ボーリングの2枚目の12インチで、ピッチを落とした、どろどっろのドラッギーなハウスが3種類収録されている。スクリュー的(チルウェイヴ的)なフィーリングのハウス解釈とも呼べる内容で、最近ではシーホークスと繋がっているように、言うなればアシッド・スクリュー・ハウスのAOR的な展開なのだ。瀧見憲司の場合は、どれだけフリークアウトしても身だしなみはしっかりしているようなところがあって、ビーイング・ボーリングにも彼の長所がよく出ている。B面ではラブン・タグのエリック・ダンカンがリミックスをしている。

7.Kahn & Neek - Percy / Fierce | Bandulu Records


 スウィンドルに匹敵するような強力なグライムを下さいと、下北沢のZEROの飯島直樹さんに教えてもらったのが、この12インチ。
 新しいレーベルの1枚目だが、カーンのほうは〈パンチ・ドランク〉などから数枚のシングルを出している。まあ、飯島さんが推すぐらいだからブリストルの連中なのだろう。このど迫力あるベースとサンプリング、若くて、ヴァイタルで、重たい音、たしかに「ドゥ・ザ・ジャズ」に匹敵する。グライムにパワーもらおっと。

8.Major Lazer - Get Free | Mad Decent


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 これも実は夏前のリリースで、はっきり言ってE王クラスのキャッチーなポップなレゲエ。ダーティー・プロジェクターズの女性、アンバー・コフマンさんをヴォーカルに迎えて、ディプロとスウィッチは彼らなりのラヴァーズ・ロックを披露している。B面ではボンヂ・ド・ホレ(Bonde do Role)がタイ・ディスコ調のリミックス。両面ともすごく良い。曲調、歌詞ともに今年のサマー・アンセムだった。
「政府からは愛を得られない/お金を得て何ができるの?/金すら得られないっつーのに/私を見て/私には信じられない/彼らが私に何をしてれたのだろうか/私は自由になれない/夢をみたいだけなのに」、その通り。異論はない。

9.Tashaki Miyaki - Sings The Everly Brothers | For Us


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 日本人ではない。ジーザス&メリーチェインをさらにレトロに再構築したようなサウンドで、実際バディ・ホリーやサム・クックのカヴァーも発表している。というか、他にもボブ・ディランとか、カヴァーばかりなのだが……。またレトロ・サウンドかよーと言わないで、聴いてみたほうが良い。形態こそロック・バンドだが、演奏している音は、スクリュー的なのだ。つまりテンポはどろっと遅く、けだるく、ドリーミー。

interview with Keigo Oyamada - ele-king

「『空中キャンプ』も『ファンタズマ』もすっかり過去のものになっていく。日本、終了」(大幅に中略)「音楽だけでなく、あらゆるジャンルで日本にはクリエイターが育たず、せっかくの文化的蓄積を食いつぶしてしまったのである。そして、いまはガラパゴスを決め込み、J・ポップを聴いていれば洋楽を聴く必要はないと開き直っている。......動物化とはよく言ったかもしれない(いいものだってある。でも、それが日本で人気を集められないことはさらに深刻な事態を意味していないだろうか)」
三田格、8月2日、イヴェイドのレヴューより

 そして『ファンタズマ』の作者は、9月5日に自ら手がけたリミックスを編集した『CM4』をリリースする。最初の『CM』がリリースされたのは1998年、UNKLE、マニー・マーク、バッファロー・ドーター、ザ・パステルズ、ザ・ハイ・ラマスを小山田圭吾がリミックスした音源が収録されている。『CM2』は2003年で、ブラー、ベック、クルーエル・グランドオーケストラ、ボニー・ピンク、電気グルーヴ、モビー、マニック・ストリート・プリーチャーズ、テイ・トウワ、ジ・アヴァランチーズ、スティングなど。『CM3』は2009年にリリースしている。スケッチ・ショー、坂も龍一、ジェームズ・ブラウン、クリスタル・ケイ、キング・オブ・コンヴィニエンス、ブロック・パーティ、電気グルーヴ+SDP……等々。『CM4』は、布袋寅泰、小野洋子、MGMT、相対性理論、ラリ・プナ、ビースティ-・ボーイズ、アート・リンゼー、マイア・ヒラサワ、イフ・バイ・イエス(ユカ・ホンダのユニット)、野宮真貴、三波春夫。コーネリアスらしい遊び心があって、工夫があって、可笑しくて、楽しいリミックス・アルバムである。
 『ファンタズマ』の作者は、FREE DOMMUNEでSalyu×Salyuのライヴに出て、翌日にはYMOのライヴ、そして数日後この取材に答えてくれた。

クラフトワークが日本語で「いますぐ止めろ」って言ってたのがけっこうびっくりした。すごいなと思って。あんなにクールな音楽じゃないですか。メッセージもすごいシンプルじゃないですか。それが日本語で。


CORNELIUS
CM4

ワーナー

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小山田くんさ、「ガラパゴス化現象」って知ってる?

小山田:あー……なんとなく。携帯とかそういうやつでしょ? ガラケー(ガラパゴス・ケータイ)とか。ガラケー知らないですか?

いや、それ知らない(笑)。

小山田:えー(笑)! インターナショナルじゃないってことでしょ? 日本で独自に進化したっていう……モードとかそういう、海外じゃ使えないっていう。

そうそうそうそう! まさにそう(笑)。いい面も悪い面もあるとい思うんだけど、すべて内需で成立してしまってる世界というか。音楽シーンは典型的なまでにそうですね。90年代は、『ファンタズマ』でも石野卓球でも、ピチカート・ファイヴでもボアダムスでも、国際社会へと開けていったじゃないですか。ところがここ数年のバンドは、まあ、ほとんどすべてが国内で完結してしまっているっていう。

小山田:どうなんですかねえ。90年代はやっぱそういうのあったんですよ。まだ音楽産業良かったし。日本もまだ大丈夫だったし。でもやっぱ、それ以降ね、音楽産業も世のなか的にも下向いてきたじゃないですか。なかなかそういうのが難しくなってきてるんじゃないですかね。

経済的な問題だけかね?

小山田:うーん……まあ、それもあると思いますけどね。それだけじゃないと思いますけど、でもそれ(経済)がけっこう大きな問題じゃないですかね。

貧して鈍するじゃないけど、貧して創造どころじゃないっていうこと?

小山田:うん……わかんないけどね。

やっぱ寂しさって感じない? なんか航路を作ったのに利用されなかったみたいな。

小山田:感じますね(笑)。思いっきり感じます。でもまあ、そうじゃなくやれてるんで、まあいいのかなあと。

だはは、自分は(笑)?

小山田:はははは。

国際的に開けていった連中に経済的なバックアップがあったわけでもないじゃん。むしろ、経済的なバックアップがありながら、成功しなかった人だって少なくなかったでしょ。経済力だけではないと思うけど。

小山田:そうでもないですかね。何なんでしょうね。でもやってるひとはたくさんいるでしょ、若いひとたちでたくさん。

エレクトロニック・ミュージックの世界ではけっこういるけれど、やっぱりポップ・フィールドではいないよね。

小山田:コーネリアスもポップ・フィールドかって言ったらどうなんだろうね。わかんないけど(笑)。

たとえば、最近コロンビアのラス・マラス・アミスタデスっていうポップス・バンドがロンドンの〈オネスト・ジョンズ〉からアルバムを出したのね。ちょっとヤング・マーブル・ジャイアンツみたいなんだけどさ。イギリスのメディアのレヴューで「スペイン語で歌っているポップスがアングロサクソン圏内の音楽シーンで支持されるには、よほど音楽が面白くなければ無理だ」っていうのがあって。日本の音楽文化もほんの10年前までそうだったはずなのに……。

小山田:なくなっちゃったのかな。

逆に誰か知ってたら教えてほしい(笑)。海外で知られることだけが音楽の価値じゃないんだけど。

小山田:そうですね、そう考えると。いるんですかね。

クール・ジャパン戦略みたいなものじゃなくてさ。

小山田:そうですよね。

そう、コーネリアスがアルバム出さなくなって、日本の音楽はますます危機に瀕しているんでしょう!

小山田:いやいやいやいや(笑)。そんなことないでしょ(笑)!

今回もこうやって、リミックス・アルバムで何とかその場をしのいでいくっていう(笑)。

小山田:はははは(笑)。いや、いろいろやってるってことをね、ちゃんとまとめようかなあと思って。

なるほど。リミックス・アルバムも4枚目じゃないですか。リミックスの依頼っていうのはどうなんですか? 小山田くんは依頼されるとほとんど引き受けるほう? それともけっこう選ぶほう?

小山田:リミックスは、最近はけっこう断ったりしてるよね。最近はいろいろ忙しかったりとか。ちょっとあんまり盛り上がらなかったりとか(笑)。

ああ、気持ち的に燃えてこないと。

小山田:うん(笑)。でも最近リミックス増えてきてるよね。ポツポツ来てるよね。一時期あんまなかったんだけど。

リミックス自体は好きなんだ、自分でも?

小山田:うん、まあ好きですよ。好きですね、どっちかって言うと(笑)。

リミックスを引き受けるか引き受けないかは、自分の音楽の好みで選ぶの? それとも別の理由?

小山田:いやまあ、トータル的な理由です。

好みじゃないけど、リミックスはやってみたいってことはあるの?

小山田:うん、ある。

たとえば今回のアルバムでは?

小山田:それはちょっと……(笑)。

ははははは(笑)。そんなこと言ったら友だちなくしそうだもんね(笑)。

小山田:それはちょっと(笑)。元曲がいい曲だからやりたいっていう場合と、これやったら面白いだろうなっていう場合と、まあ2種類ですよね。

まあそりゃそうだよね。

小山田:うん。

自分が手がけたリミックスをまとめたリミックス・アルバムが4枚というのは、多いほうだと思うんだけど、リミックスという作業には、その固有の上達とかあるの?

小山田:上達……なんか、あるかもね。

はははは(笑)。

小山田:良くなってるかっていうことよりも、時間が短くなったとか(笑)。早くできるようになったとか、そういう意味では上達なのかもしれないけど、作品のクオリティっていうか良さが昔に比べて上がったかっていうと……良かったり悪かったりするときもやっぱりあるし。昔のでもすごいいいのがあったりとか、自分的にね。最近でも「うーん」みたいなのもちょっとあったりとか。

「これはコーネリアスの作品だ」っていう気構えでやってるの?

小山田:うーん、まあ後でまとめることは一応考えてますけどね。全部が全部「コーネリアスだ」っていうわけではないんですよ。でもやっぱり並べると色が見えてくるじゃないですか。

見えてくるね。年々テクノっぽくなってる。

小山田:あ、そうですか。

うん。まあ当たり前なんだけど、打ち込みというか、エレクトロニック・ミュージックの要素が。

小山田:そうか……。

そうは思わない? アート・リンゼーのリミックスなんかもIDMっぽいし。

小山田:完全パソコンで作ってるんで、まあそういう意味ではそうなんですけど、鳴ってる音はけっこう生音を録って使ったりとかはしているので。電子音みたいなものが前面に出てるって感じてもなくて、普通にギター、ベース、ピアノとかドラムとか――ドラムも普通の生音っぽい音色(おんしょく)だったりとか。そういう意味ではテクノっぽくないのかな、っていう気もするんですけどね。

そうだね。野宮真貴さんのリミックスのように、アコースティックな綺麗な反響を活かしている曲もあるし……。全部パソコンでやるんですか?

小山田:いや、全部は全部ではないですけど、まあほとんどパソコンですね。パソコンと楽器ちょっと弾いたりとか。

PCを使うようになってから、やっぱり作業はやりやすくなった?

小山田:まあ、外のスタジオとか使わなくていい分、楽にはなりましたよ。でもやることは増えるから、そういう意味での労力は増えるけど。

最初のガラパゴスの話じゃないけど、今回のアルバムがいままででいちばん日本人が多いじゃないですか!

小山田:そうですね。日本人いままでそんなになかったっけ?

これまではスケッチ・ショウとかさ、電気グルーヴとかさ。

小山田:たしかに。今回は三波春夫まで入ってるから(笑)。日本色強いね。

これはいまのシーンを反映してるんでしょうかね?

小山田:そうなんですかねえ。シーン……。

今回の『CM4』は『CM3』を発表したあとのリミックスってことでしょ?

小山田:基本そうです。アート・リンゼイだけちょっと前なのかな。

でも『CM3』ってそんなに昔じゃないよね?

小山田:そう、3年ぐらい前。

だから多くの曲がここ2年ぐらいのものなんだよね。

小山田:そうですね。

この三波春夫の“赤とんぼ”を最後に持ってきたっていうのはなんで?

小山田:いや、ここしか置くところが思いつかなかったんで……(笑)。

さすがに1曲目から“赤とんぼ”は変化球過ぎるらね(笑)。これはどういう企画だったの?

小山田:これはね、坂本龍一さんのレーベルで『にほんのうた』っていうコンピレーションがあって、唱歌とかそういうものを現代のひとたちでもういっかいやってみようっていう企画でやったんですけど。三波先生はこれはもともとライヴ・テイクで、ロサンゼルスかどこかの公演で歌っていたマルチが残ってて、そこから歌だけ出してきてパーツを付け直したみたいな。

10年前ならやらなかったであろうことをやる年齢になったんだね(笑)。

小山田:そう、できる年齢に(笑)。10年前とかだったらたぶんできなかったと思う。

依頼された曲のなかで、一番好きな曲だったら言える?

小山田:リミックスとして? “赤とんぼ”はけっこう(笑)。食い合わせがたぶん想像できないと思うんだけど、意外に食ってみたらうまかったみたいな感じ(笑)。

MGMTていうのはわかりやすいっていうか、コーネリアスが好きそうな感じがするね。

小山田:あとヨーコさんは別ですね。これはいちおうコーネリアス・ミックスってなってるんですけど、プラスティック・オノ・バンドのセッションを僕が最終的に全部まとめたって感じなんで。これもすごく印象に残ってますね。一緒にやったんで。

小野洋子さんの曲では、ダンス・ミュージックへのアプローチをやっているけど、ラリ・プナはアンビエントなフィーリングが展開されています。これも今作のなかのベストな1曲ですよね。

小山田:ラリ・プナもけっこう気に入ってます、これ。リズムまったくなくて。あんまりそういうの作ったことないから。

これはいつやったんですか?

小山田:1年か1年半ぐらい前かな。

マイア・ヒラサワさんって方は僕存じてなかったんですけど、このひとはスウェーデンなの?

小山田:スウェーデン人と日本人のハーフで、けっこうCMとかでやってる。で、向こうですごく人気があるみたいで。ちょっとビョークに声が似てて。音はタンバリンスタジオみたいな感じのスウェディッシュ・ポップみたいな。

たしかにビョークっぽい。魅力的な良い声ですね。あと、ビースティー・ボーイズのリミックスもやっていたんだね。マシナリーなファンクというか、これはコーネリアスらしい音の遊びがあるっていうか。

小山田:ビースティーはね、ちょうど『センシュアス』のときにパリでライヴがあって、コーネリアスでオープニング・アクトをやったんですよ。たぶんそのときに観て気に入ってくれたのかな。そのすぐ後ぐらいに依頼が来て。

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『CM3』はけっこう偏執狂的に音をほんとに少なくしよう見たいな感じでストイックさがすごく強かったような気がするんだけど。ちょっと肩の力が抜けて遊びが入ってきてるなって気がしますね。


CORNELIUS
CM4

ワーナー

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相対性理論をコーネリアスがやるっていうのはよくわかる気がするんですけどね。

小山田:ふーん……そうなんだ。

ある意味では、遠い存在ではないでしょ。このなかでは。

小山田:まあそうだね。このあいだ一緒にやったりしたし。ヴァセリンズと一緒と時に。話しやすいね(笑)。普通に話せる感じ。

布袋寅泰を1曲目に持ってきたっていうのはすごいね。

小山田:あ、そうですか。

自分でどうですか、今回の『CM4』を通して聴いてみて。

小山田:うーん……『CM3』はけっこう偏執狂的に音をほんとに少なくしよう見たいな感じでストイックさがすごく強かったような気がするんだけど。ちょっと肩の力が抜けて遊びが入ってきてるなって気がしますね。

はははは。でも最後にオリジナル・アルバムを出してから早6年ですよね。

小山田:あ、もうそんなんですか。6年経ってる? ほんとに?

クラフトワークは、『ポイント』のときはヒントになったって言ってたけど、ほんとにクラフトワークになりつつあるんじゃないかと。

小山田:そうだね。6年?

だからいまほとんど『エレクトリック・カフェ』を出した頃のクラフトワーク(笑)。

小山田:はははは。

そして『ザ・ミックス』が出て(笑)。

小山田:『ザ・ミックス』でお茶を濁すっていう(笑)。

じゃあ、次は“EXPO”だね(笑)。

小山田:“EXPO 2000”(笑)。

いや、“EXPO 3000”。もうみんな死んでるって。そういえば最近はYMOに加わって、ほとんどメンバーになって活動してるそうじゃないですか。

小山田:DOMMUNEの次の日がワールド・ハピネスっていうYMOのイベントがあって。でもここ4、5年ぐらいやってるよね。

「NO NUKES」に出演したじゃない? 

小山田:やろうかなと。クラフトワークも出るし。

なるほど。

小山田:あれけっこう衝撃的でしたよ。いきなり日本語で来たから。“放射能(Radio-Activity)”を1曲目でやって、いきなり日本語で歌い出して。あれは衝撃でした。

小山田くんがポリティカルな場所でライヴをやるって初めてじゃない?

小山田:いや、そんなことないですよ。うちのバンドのベースのシミーってひとがいるんですけど。彼がスーデラでけっこう福島の子たちにお金集めるイヴェントとかやってて。それとかはけっこういつも出てるよね。

今回はそういうチャリティではなく、やっぱ政治的主張が目的だったわけじゃない?

小山田:まあ脱原発ですよね。

原発問題に関する小山田くんの考えを聞かせてもらっていいかな? いろんな次元での考えがあると思うけど。

小山田:ないほうがいい、っていう。単純に怖いなっていう。

いままでそういうことあまり言わないひとだったじゃない。

小山田:そうですね、あまり言わなかったかもしれないですね。いきなり言うことではないと思うし。

変な話、どちらかと言うとコーネリアスは政治とかね、そういうところから180度離れたところにいるようなところがあったじゃない、敢えて。

小山田:だから、そういう(政治的な)ところにはいたくないですよ、ほんとに。でも、脱原発じゃないひとっているんですか?

それはいるでしょうね。科学者のなかにだって。

小山田:まあいろいろじゃないですか。まあ、「いますぐ止めろ」とは……クラフトワークが言ってたけど。

日本語で?

小山田:そう、日本語で(笑)。

それは素晴らしいですね(笑)。

小山田:すごいなと思って。あんなにクールな音楽じゃないですか。メッセージもすごいシンプルじゃないですか。「いますぐ止めろ」って言ってたのがけっこうびっくりした。

それにクラフトワークが言うと何か違う説得力を感じるね。

小山田:だってわざわざ日本語ヴァージョン作ってきたんだよ、クラフトワーク。それで映像もちゃんと日本語訳で、エコノミー・クラスで来たって言ってたから。ちょっと泣けるよね。

たしかに。日本人も英語で歌っている場合じゃないね。ところで、コーネリアスのほうはどうなってるの?

小山田:ちょっと進行してたんですよ、実は。でもいま止まっちゃってて(笑)。

止まってるあいだにスタジオも引っ越して?

小山田:そうですね、まあ引っ越してからちょっと作業してて。で、夏ちょっとライヴだったり。明日からちょっと夏休みだったり(笑)。

自分の夏休み(笑)。コーネリアスの新作っていうのはそんなに容易く作れるとはまわりの人間も思ってはいないだろうけど、自分自身のなかでも今回はとくに大変なの?

小山田:どうなんですかね。大変っていうか、作業的には一緒ですけどね、こういうのと。

あ、リミックスと(笑)? それはウソでしょ(笑)。

小山田:いや作業的にはね(笑)。

作業的にはね。

小山田:精神的にはやっぱちょっと違うけど。ちょっとこの間やりはじめて、「あ、ちょっとエンジンかかったな」と思ったら止まっちゃって。でもまあのんびりやろうかなと。いろいろやりつつ。

いいですね、ほんとクラフトワークみたいで(笑)。やっぱり『ポイント』や『センシュアス』を超えなきゃいけないっていう思いはあるの? 

小山田:超える?

そう、より高次元へと飛躍する(笑)。

小山田:まあそれは自然になるんじゃないかなっていう感じですよね。

ほお、さすがだね。

小山田:(笑)いや、わかんないですけど。6年前とは細胞もやっぱ入れ替わってるし。

新しい自分がここにいるぞと。

小山田:ふふふ(笑)。

そういえば、前に話したときはダーティ・プロジェクターズがいいとか言ってたよね。最近いいなと思った音楽とかある?

小山田:最近はベンチャーズずっと聴いてる(笑)。

何で(笑)?

小山田:ベンチャーズ・ブームが到来で。あの、せたがや区民まつりっていうお祭を馬事公苑でやってるんですけど、今年ベンチャーズが来たんですよ。

ほお。

小山田:それでベンチャーズ観に行って。それでベンチャーズ熱が急激に高まって、ずっと聴いてましたね。

はははは!

小山田:はははは。

その、再発見した部分っていうのは?

小山田:いやもう、カッコいいですね、やっぱ。

もうクラフトワークみたいな普遍的なものとして。

小山田:そうですね。クラフトワークにちょっと近いかも。まあYMOに近いなと思ったんですよ。

ほお。

小山田:いや、メロディを何か楽器が単音で弾いてるインストゥルメンタル・ミュージックで。で、エキゾチックだったり、音響的なものだったり、そういうのもあって。クラフトワークとベンチャーズと、あとジョルジオ・モロダーとか足すと、初期のYMOになる感じがする。

ああ、なるほどね。

小山田:(YMOの)“コズミック・サーフィン”とかやっぱベンチャーズだし。幸宏さんも細野さんも、最初やっぱベンチャーズではじめたって言ってたんですよね。ギターも、ドラムもベンチャーズで。それでベンチャーズ熱がすごい高まっちゃって。全然最近の音楽じゃないけどね。
 とにかく、まあちょっとCD買ったりとか、ダウンロードしたりとか。日本公演がいいですね。64年か65年に日本に来たときに、映画があるんですよ。で、大橋巨泉がナレーションやってて。昭和30年代の風俗みたいなものもすごく入ってて。ほんとにめちゃくちゃ人気あったんですよ、日本で。多分ビートルズ以前は、ベンチャーズがいちばん人気あったロック・バンドですよね。ビートルズよりも人気あったぐらい国民的な存在だったんじゃないですかね。毎年3ヶ月日本ツアーやってますよ。で、1月と7、8、9と年2回来るっていうのを50年間やってるっていう(笑)。

どれだけ日本人に愛されたかってことだよね。

小山田:で、僕ら日本のバンドでも行ったことないような、ほんと地方の公民館のホールとかでも、1000人とか2000人とか必ず入るんだって。

それ馬事公苑でやってたんだ。

小山田:そう、タダで(笑)。

それ何歳ぐらいになってるの?

小山田:えっとね、リーダーのひとがドン・ウィルソンってひとなんですけど、79歳。来年80で、ヨーコさんと同い年。

すごいパワフルだね-。

小山田:で、オリジナル・メンバーはいまそのひとしかいないんですよ。で、全盛期のノーキー・エドワーズってひとは1月しか来ない。夏はほかで営業してるらしいです。で、ドン・ウィルソンってひとが、あの「テケテケテケテケ」をやるひとで、サイド・ギターなんですよ。ずっとリズムを刻んでて、そのひとがリーダー。

新しい音楽は全然聴いてないの?

小山田:うーん……まあ何となくユーチューブで見たりしてるけど、CDは買ってないかなあ。

ほお、ついに小山田圭吾までもが。

小山田:まあダウンロードはちょこちょこしてるかな。

何か気になったのとかいない?

小山田:何かあったかな、ぱっと思いつかないな。何だろう。あ、オン・ザ・ゴーって知ってる? オン・ザ・ゴーっていうロシアのバンド。ロシアの若い子たちで、けっこうカッコ良かった。ロシアでこれはいままでちょっとないなっていう。普通にヨーロッパのバンドっぽいんだけど。まあ変なんだけど。ロシアこれからいろいろ出てきそうかなと。

まあプッシー・ライオットがね。

小山田:プッシー・ライオット知らない。

ええ、プッシー・ライオット有名だよ。それこそロシアのさ、ライオット・ガールズで、メンバーも逮捕されて。それを「釈放しろ」って言って、それこそいろんなミュージシャンが呼びかけてるぐらいの。

小山田:へえー。

じゃあ日本のアーティストで気に入ってるのはいる?

小山田:青葉市子ちゃん。

彼女いいよね。ギターが上手いし。

小山田:歌も良いね。そういえば、今年はまたプラスティック・オノ・バンドのレコーディングが入ってて。それでまたニューヨーク行ったりとかしなきゃいけなくて。

ほお。そうやってコーネリアスが延びてくわけだ(笑)。

小山田:そうなんですよ(笑)。ヨーコさん来年80なんです。やる気満々らしくて、もう「いますぐやりたい」みたいな感じらしいです(笑)。

わかりました。とりあえずは『CM4』を楽しみたいと思います!

Chart - DISC SHOP ZERO 2012.09 - ele-king


JUKE-ish / Juke not Juke Selection #01
本流フットワーク以外の場所から生まれてきた、ジューク好きにオススメ、またはジューク以降の耳で聴くと「!」となりそうな10枚。

Shop Chart


1

FRACTURE feat. DAWN DAY NIGHT - Get Busy (Exit)
ドラムンベースにジュークとエレクトロの要素を盛り込んだタイトル曲は、Apacheな音をうっすら覗かせるあたりもニクい♪ 2はジュークのミニマル感を増量し、カウベルを足したことで高速キューバンな空気も。

2

INDIGO - Ayahuasca / The Root (Exit)
ダブステップで知られるマンチェスターのプロデューサーがドラムンベースのレーベルから。M2のキックの打ち方がジューク的でもあるトライバル感を。

3

VERSA - Shadow Movement (On The Edge)
エフェクトがRhythm & Soundにも通じる深海テック・ダブが、45rpm-2でアンビエント感あるジューク風に。

4

REGIS - In A Syrian Tongue (Blackest Ever Black)
UKミニマル・テクノの鬼才。M2と3は、ピッチアップ(45rpm -8) してドラムンベース~ジュークに接続可。

5

Danny Scrilla - Hunch feat. Om Unit (Cosmic Bridge)
ジュークを半分で捉えたテンポと、Joker周辺なシンセ、そしてダブ~レゲエなリズムが交差してどれも越えてるナゾ度(現状)高い1枚。

6

ILL BLU - Clapper (Hyperdub)
クドゥロにも通じる、クラップを活かしたハイパー・ファンキーなオリジナルに、Traxmanによるフットワーク~ジューク・リミックスも収録。

7

ROMARE - The Blues (It Began in Africa) (Black Acre)
様々なサンプルのコラージュでアフリカとアフロ・アメリカンの間の見えない線を浮かび上がらせる音響実験。ザックリした生の感触と、ジューク以降のベースとリズムのセンスが絡み合って、ありそうでなかった不思議な空間。

8

INTERFACE & MINUS / DIE & MENSAH - Hardwork / Firing Line (Gutterfunk)
ブリストル・ドラムンベースからジュークに接近した1。ふたりの筋金入りファンカーによるエレクトロ2。

9

AMIT - Stay With Me / Kritical (Exit)
M1ではインドな香りのストリングスと大陸的に漂う女性ヴォーカルが、ドラムンベースを通過したトライバル・ビートと融合。M2は、これまたドラムンベースの血を感じさせつつのエレクトロ・アシッド・ファンク。

10

EAN - Darknet E.P (Cosmic Bridge)
ダブステップの音の鳴り&展開をジュークなビートと骨格にはめ込んでみたような、ダブステップ×ジュークの中間でありつつどちらでもない不思議な響き。M4のメランコリックさは新鮮!
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