「IO」と一致するもの

Laurent Garnier - ele-king

 いまテクノを絶対に聴くことができない──パンデミックど真ん中にそうこぼしていたパリの至宝は、ここ1年半ほど、欧州を中心に各地を飛びまわっている。どうやらとっくに迷いは晴れていたようだ。
 出世作となったEP「A bout de souffle(息を切らして=『勝手にしやがれ』の原題)」やチョイス「Acid Eiffel」から今年でちょうど30年。地元フランスでは音楽以外の分野でも活躍し、2年前にはその半生を描いた評伝映画が製作されてもいる世界指折りのDJが、4年ぶりに日本の大地を踏みしめる。
 3月17日から22日にかけ、大阪・東京・札幌・ニセコの4か所をツアー。東京公演はなんと23:30~5:00のオールナイトセットとのことで、これは見逃す理由がない。「僕たちみんなが愛する音楽は、それが同じダンスフロアで一緒に聴けて、体験できるときにだけ本当の価値があるんだ。そしてそれが日本のダンスフロアでもあるとすると……僕にとってそれは本当に世界でもっとも美しいものなんだよ」。来る3月が、そのときだ。

LAURENT GARNIER JAPAN TOUR 2023

◆OSAKA
Date: 2023年3月17日(金)
Venue: JOULE Osaka
Act: Laurent Garnier and more
Open: TBC
Tickets: Advance: TBC Door: TBC

◆TOKYO
Date: 2023年3月18日(土)
Venue: Spotify O-EAST
Act: Laurent Garnier & more
Open: 23:30
Tickets Prices: ¥5,000 Door: ¥6,000

◆SAPPORO
Date: 2023年3月20日(月)
Venue: Precious Hall
Act: Laurent Garnier & more
Open: 23:30
Tickets Prices: TBC

◆NISEKO
Date: 2023年3月21日(火)
Venue: Powder Room
Act: Laurent Garnier & more
Open: TBC Curfew: 2:00am
Tickets Prices: TBC

奥深すぎるギャングスタラップの世界……

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■収録アーチスト
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■執筆陣
Lil Ricky a.k.a. Da Mask Baby(D.M.F. Inc./Piranha Soldierz)
Gonzosta-T a.k.a. Da Mask Daddy(D.M.F. Inc.)
BIG-K(Piranha Soldierz)

■構成
Lil Ricky a.k.a. Da Mask Baby(D.M.F. Inc./Piranha Soldierz)

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Ulla - ele-king

 フィラデルフィアを活動拠点とするウラ(ウラ・ストラウス)は、ここ数年のアンビエント・ミュージック・シーンを振り返るとき、欠かすことのできない重要なアーティストである。
 ウラはセンセーショナルな「新進気鋭のアーティスト」として華々しく登場したわけではない。10年代末期にマイナー・レーベルからひっそりと作品をリリースし、そのサウンドの魅力によって、いつのまにか多くのリスナーを獲得していったのだ。そして今や2020年代を担うアーティストの一人にまでなった。本当にすごいことだと思う。
 2022年にリリースされた新作『Foam』では、これまでのアンビエント/ドローンを基調としたサウンドから脱して、ループとグリッチ・ノイズをミックスするエレクトロニカへと変化した。その音はアコースティックとグリッチ・ノイズが交錯する00年代エレクトロニカ・リヴァイヴァルのようでもあり、心を沈静するようなミニマル・ミュージックのようでもある。もしくは聴き込むほどに愛着が深まるアクセサリーのような音楽でもある。エレクトロニカ、アンビエント/ドローンの交錯の果てに行き着いた桃源郷のようなサウンドスケープとが展開しているのだ。そしてリリースは(満を持して?)〈3XL〉である。

 ここで、『Foam』へと至るウラの道筋を示すために、ウラのこれまでのリリース歴を簡単に振り返っていきたいと思う。
 ウラの最初期の音源はシカゴのオンライン・レーベル〈Terry Planet〉配信リリースしたNo Pomoとのユニットwiggle room『 Pyramid』といえる。2015年だ。ウラ・ストラウス名義ではシカゴの〈Lillerne Tape Club〉から、2017年にリリースした『Floor』、〈Sequel〉から『Append』が初期の音源である。硬質なアンビエンスが魅惑的だが、この頃はまだ「知る人ぞ知る」のような謎に満ちた存在だった。
 そしてHuerco S.主宰のレーベル〈West Mineral〉からPontiac Streatorとのコラボレーション『11 Items 』と『Chat』を2018年と2019年にリリースした。このトリッキーにして静謐、ミニマルにしてどこかポップな多くの音源によって、多くのアンビエント・リスナーの耳に届くことになった。
 2019年になるとニューヨークの〈Quiet Time Tapes〉からウラ・ストラウス名義で『Big Room』をリリース。このアルバムにはまるで霧のように霞んだアトモスフィアが満ちていた。私はこのアルバムに満ちている掴みどころがない空気のようなサウンドにとても惹かれたことを覚えている。抽象的なのに不思議な存在感に満ちている音とでもいうべきか。
 翌2020年、ベルリンの〈3XL〉を親レーベルとする〈Experiences Ltd.〉からウラ名義で『Tumbling Towards A Wall』をリリースした。この作品が決定的だった。ミニマル・ダブとアンビエントを交錯させるサウンドを実現しており、このアルバムによってウラは、アンビエント・マニアだけではなく、エレクトロニック・ミュージック・ファンのリスナーを獲得していったのだ。まさに転機となるアルバムといえよう。
 2020年は、ロシア出身のエクスペリメンタルアーティストのPerilaとのコラボレーション作品『silence box 1』、『29720』、『blue heater』の3作をポルトガルのレーベル〈silence〉から発表するなど旺盛な活動を展開する。
 2021年、〈Motion Ward〉から『Limitless Frame』をリリースした。なかでも『Limitless Frame』がこれまでのウラの作品の総括したようなアルバムである。霧のアンビエントに、どこかジャズのような音楽のフラグメンツが散りばめられ、聴くほどに深い沈静効果が得られるような傑作に仕上がっていたのだ。2022年は「20分1曲」というEPシリーズを継続的に送り出す〈Longform Editions〉から『Hope Sonata』を発表したことも忘れてはならない。

 同じく2022年リリースであった『Foam』は、『Limitless Frame』を受け継ぎつつも、新しいタイプのアンビエント・エレクトロニカ・アルバムを展開していた。10年代以降のアンビエント/ドローン・シーン出身であったウラが、驚くべきことに00年代エレクトロニカの蘇生へと向かったような音楽性を展開していたのだ。新境地といってもいい。
 だがそれは『Limitless Frame』にあったジャズ的な音楽性の解体といった面から地続きでもあるように思う。つまり「音楽の解体」がそのまま「サンプリングとグリッチ」の表現として再浮上してきたわけだ。
 本作『Foam』ではドリーミーなループを基調とした楽曲を展開している。声やピアノなどの音のフラグメンツがちりばめられたミニマルなサウンドスケープがとにかく心地よい。
 先に書いたようにクラシカルな音が軽やかなノイズによってグリッチしていくさまは、00年代初頭のエレクトロニカを思わせもする。個人的には2001年にリリースされたフランスのジュリアン・ロケによるジェル(gel:)のファースト・アルバム『-1』(Artefact)や、2002年にリリースされた彼の変名ドリンヌ・ミュライユ(Dorine_Muraille)『Mani』(FatCat Records)も思い出した。これは00年代リヴァイヴァルなのだろうか。いや、そうではない。ウラは独特なアトモスフィアを放つアンビエントを作り続けながらも、常に新しいサウンドを模索しているのだ。『Foam』におけるゼロ年代的なエレクトロニカへの変化はノスタルジアはない。つまりは変化だ。彼女はアンビエント音楽の新しい形式を模索している。

 ウラを本作を「キーホルダーのような」作品と自ら語っている。いわばアクセサリーのように生活のなかに存在する音楽/音響という意味か。このアルバムは室内楽的な電子音楽だが、生活のなかに空気のように自然に浸透する音楽でもある。日々の暮らしの中で家具のようにでなく、アクセサリーのような音楽として存在すること。このコンセプトはとても新鮮だ。
 まるで未来のエリック・サティのようなミニマル・ミュージックなのである。『Foam』は、新しい時代のエレクトロニカなのである。

interview with Kelela - ele-king

自分はジャズ・シンガーになるんだと思っていた。でも、インディ・ロックもジャズも、実験的で自由なように思えて、じつはすごく保守的。フリー・ジャズとかも、音的には形は自由かもしれないけれど、服装や演出の面ではスタイル的にコントロールされていると思う。

 掛け値なしに素晴らしいアルバムだ。ケレラ・ミザネクリストスの、実に5年ぶりのニュー・アルバム『RAVEN』。ここには──素晴らしい作品が常にそうであるように──個人的な経験や生々しい現実の語りと、内面世界の探究の結晶化の両方がある。「私」と外の世界との摩擦から生じたもがきや苦しみ、そして、ひとり部屋に閉じこもって、ときには涙を流しながら音やテキストと戯れて深めた思索。『RAVEN』は、彼女の外にも中にも存在しているそういった二面性、多面性を積極的に肯定する作品だ。

 キーになっているのは、ブラック・フェミニズムやインターセクショナリティについての思惟である。2022年9月、まだアルバムのリリースすらアナウンスされていなかった頃、『デイズド』に載ったインタヴューには、『RAVEN』を理解するためのヒントが散りばめられている。たとえば、序文には、彼女が、黒人差別やフェミニズムに関する本、ポッドキャスト、動画などの詰め合わせを友人や家族、ビジネス・パートナーたちに送った、と書かれている。自身が学んだことを人びととシェアして、自分が所属する小さなサークルから少しでもベターな社会を構築していくための、ささやかでたしかな行動。『RAVEN』は、そういった抵抗と対話のアクションの延長線上で、ケレラからリスナーの手に直接渡された小包のような作品でもある。

 さらに、次のインタヴューでは、彼女が誰に語りかけているかを明言している。歌詞は、黒人たち、女性たち、ノンバイナリーたちのためのものだと。そして、明確な対象に語りかけているそれらの言葉は、そうであるからこそ、誰にとっても力強く歌えるものなのだ、とも言う。バラバラに散らばって、疎外され、抑圧された「ひとりたち」のあいだに細い糸を通して結びつけ、小さくひそやかな声で交信すること。ケレラの音楽は、差異と分断の時代に、差異と分断を前提にしながら、苛烈な闘争と政治のその先を優しく提示しているようにすら思える。

 だからこそ、『RAVEN』は、アップリフティングなダンス・アルバムでもある(まるで、ビヨンセの『RENAISSANCE』のように)。“Happy Ending” の扇情的なジャングルから “On The Run” のセクシーなレゲトン、“Bruises” のミニマルなハウス、“Fooley” のダブまで、ダンス・カルチャーやレイヴへの愛に満ちている。彼女はダンス・ミュージックの逃避性について「クラブは現実を知るための場所だ」と言い切るが、その言葉はクラブの音楽やカルチャーについての、とても誠実で聡明なコメントだと思う。そうでありながらも、ここでは、たゆたうアンビエントR&Bすらも等価に溶け合っている。ケレラはいま、サウンドの海を自由に泳ぎまわっているのだ。

Cut 4 Me』(2013年)や『Take Me Apart』(2017年)の頃から考えると、彼女はずいぶん遠くまで来た。言い換えれば、彼女の新たな音楽の旅がここからはじまっている、とも言える。さあ、あなたもオールを握って、ケレラと新しい海に漕ぎだそう。ただ、そこに浮かんでいるだけでもいい。目の前には、苦痛も涙もよろこびも受け入れる、穏やかな場所がある。

エレクトロニック・ミュージックは白人の判断が基盤になっていて、「白人、テクノ、ストレートな男」みたいなイメージがあるし、一方で伝統的なR&Bやソウル・ミュージックを聴くのは黒人女性のイメージで、そういう人たちはエレクトロニック・ミュージックは聴かない。私はずっと、このふたつの間でつねに交渉をしているような状態だったんです。でも、「もういいや」と思えた。

こんにちは。本日はよろしくお願いします。そちらは朝ですよね?

Kelela:そう。もしかして私の声でわかったとか(笑)? 昨日ニューヨークからロンドンに来たところで、まだこっちの時間に慣れようとしているところで(笑)。

そうなんですね(笑)。早速インタヴューをはじめさせていただきますが、『RAVEN』は本当に素晴らしいコンセプト・アルバムでした。ダンサブルなのに、聴いていると、あなたの内面世界に深く導かれたような気分になります。

Kelela:ありがとう。

まず、アルバムについて具体的にお聞きします。一貫した流れを感じるダンス・アルバムだと感じるのですが、ダンス・カルチャー、クラブ・カルチャーからあなたが得たもの、学んだことを教えてください。

Kelela:まず、私が初めてダンスやクラブ・カルチャーに触れたときのことを思い出すと、私は普通とは違うレヴェルのパーティーに足を踏み入れていたんですね。説明するのがすごく難しいんだけれど、LAには本当に様々なクラブ・シーンがあって。言語は同じだったかもしれない。けれど、ストレートな白人によるテクノ・シーンと、私がLAに来たときに初めて衝撃を受けたダンス・ミュージックの空間は全く違うものでした。私が入り込んだダンス・ミュージック界にはいろんなタイプの人たちがいたんです。アメリカには、ブラック・ダンス・ミュージック限定の空間もある。でも、私が通っていたのは、そっちでもなかった。ハウス・ミュージックやテクノをベースとした音楽が多いなか、私が通っていたのは、フリークス(変わり者たち)がいる空間だったんです。つまり、エキセントリックなキャラクターや様々なバックグラウンドを持つクィアたちが集まっていて、とてもミックスされた空間だった。

なるほど。

Kelela:でも、私のクラブ・カルチャーの経験でいちばん印象的だったのは、「匿名性」ですね。初めて本物のパーティーに足を踏み入れたような感覚を覚えたんです。その空間に私を連れてきてくれたのは、私の友人のアシュランド(トータル・フリーダム)です。彼は、私を誘い込んだ張本人で、私のレコーディング・セッションに立ち会っていたことがあるらしく、私が歌っているところを目撃したときに、そのシーンが私に合うと思ったみたいで。あれは、大晦日のパーティーでした。当時はLAにぜんぜん友だちもいなくて、ひとりで過ごすことも多かったし、ちょうど別れを経験したところでもあったから、彼にメッセージを送ったんです。私は、そのときはまだ彼のことをよく知らなかったんだけど、メッセージを送ってみたら、彼からの返事に書いてあったのは、4つの数字と住所だけ。

えっ(笑)!?

Kelela:すごくミステリアスな文章に惹かれて、私はその家に行ってみたんです。そしたら、そこがとにかく巨大な家で、びっくり。それで、入ってみると、本当にたくさんのキャラクターがいて。コスプレしてる人もいれば、仮面をかぶっている人もいるし、とにかくいろんなキャラクターがいて、本当に楽しかった。そして、「この場所では自分がなりたいものになれる」という感じがしました。判断や批判をされることもなく、他人とちがうことをしたり、変わった方法で自分を表現したいと思ったりすることで、仲間外れにされることもないんだって。他にも経験したダンスやクラブ・カルチャーのシーンはあるけれど、それが私がLAにきて入り込んだ空間でした。

素晴らしい経験ですね。

Kelela:私が音楽を作りはじめたとき、その基盤は、私がそのシーンに触れる前から築かれていたと思う。ジャズもそうだし、どのように実験し、どのように音楽を作るのかを教えてくれたものは、たくさんあるから。でも、あのシーンは、私になんの制限もない居場所を与えてくれたように感じます。そして、もっと探求できる方法があることに気づかせてくれた。最終的に、自分にはいろいろな姿があるんだ、と思えるようになったんです。それまでは、自分はジャズ・シンガーになるんだと思っていたけど。私はポスト・バップ系のジャズ・シンガーになるんだろうなって。でも、インディ・ロックもジャズも、実験的で自由なように思えて、じつは、実験をしながらもすごく保守的。彼らの実験は特定の枠のなかでおこなわれていて、私にはジャズにも音楽のルールがある気がして。フリー・ジャズとかも、音的には形は自由かもしれないけれど、服装や演出の面ではスタイル的にコントロールされていると思う。それに、ジャズ・ミュージシャンになると、ジャズ・ミュージシャンとしてジャズの空間に追いやられているようなところもあるんじゃないかと。ジャズ・シンガーがダンス・ミュージックやポップ・ミュージック、インディ・ミュージックのような世界に進出するのは難しいし、稀なことなんですよね。いまでこそ、少しはそれができるようになってきたかもしれないけれど、当時はとても無理な話だった。そういう意味でも、他のシーンは、将来は他のサウンドを追求したい、実験してみたいと思っていた私にとっては、良い踏み台にはならなかったと思う。

そうだったんですね。

『Aquaphoria』は、初めて存分にアンビエント・ミュージックの実験ができたレコードなんです。あのレコードで私は、アンビエント・ミュージックを完全に探求することを自分自身に許したんですね。『Aquaphoria』を作ったあとも、あの感覚から抜け出せなかったんですよね。

Kelela:あと、私は、自分に本当にヘヴィでハードなプロダクションが必要なこともわかっていました。私の声は風通しがいいというか、柔らかいんですよね。だから、私が一生懸命に叫んで、声で怒りを表現しているときでも、なんだかかわいらしく聞こえてしまう(笑)。なので、基本的には、自分の声とプロダクションでバランスを取りたくて。それが、よりヘヴィなプロダクションを選んだ大きな理由のひとつです。それは、さっき話したダンス・シーンが私に与えてくれたもののひとつだと思う。最初にそのシーンに触れたときの衝撃は、私にとってすごく爽快なものだったし、すごく豊かだった。だから、このシーンに惹かれたんです。このシーンは、遠くに飛躍するための本当に自由なキャンバスを私に与えてくれたし、そのキャンバスの上ではなんでも探検できるような気がして。『Aquaforia』(2019年に〈ワープ〉の設立30周年を記念しリリースされたミックスで、エングズエングズのアスマラとの作品)はその典型的な例ですね。多くの人は、私がダンス・ミュージックを作っているから、ヘヴィなプロダクションで、純粋にソフトなアンビエント・サウンドを探求することには興味はないだろうと思うかもしれない。でも、私は『Aquaforia』で、そのキャンバスを皆に提供しようとしたんです。

『Aquaforia』は素晴らしいミックスでした。

Kelela:もうひとつは、クィアと黒人、黒人と女性であることを同時に経験するような、インターセクショナルな経験がある場合、その交差によって、様々な拠りどころや特異なアイデンティティを理解できるようになると思うんですよね。もちろん、ストレートの白人男性たちがみんな偏った考え方でセンスがない、というわけではないけれど、正直に言って、厳格さというものは、大抵の場合、白人性から生まれる。というのも、有色人種のクィアたちは、みんな白人社会の中で育ってきたから、多くの白人の拠りどころを理解しているんです。そして、それに加えて有色人種の間でも育ってきた経験のある彼らは、他の多くの拠りどころを理解することもできる。だから、私が投げかけるものがなんであれ、彼らはそれを理解しようとする気持ちがあるんです。それが、私が感じたダンスやクラブ・カルチャーの美しさだった。それは、私が音楽業界に入ったときのシーンの雰囲気や前例とは非常に対照的でした。私が最初にこのシーンに入ってきたときは、インディの全盛期のような雰囲気だったから。でも、LAに引っ越してきて、初めてそのカルチャーに出会ったんです。

よくわかりました。『RAVEN』のサウンドとビートは、ジャングルからUKガラージ、ダブなど、とても多彩ですよね。特に、ジャングルのビートが印象的でした。これらのダンス・ミュージックは、若い頃、思春期に出会ったものなのでしょうか?

Kelela:ダンス・ミュージックに関して言えば、アメリカのメインストリーム以外のものに初めて触れたのは、ナップスターが登場したとき。私は、周りで最初にナップスターをはじめたひとりだったんです。友だちと一緒にナップスターに夢中になっていて。大抵、周りは年上のお兄ちゃんやお姉ちゃんを通してそういう音楽を見つけていたけど、私には兄も姉もいないから、すべてはナップスターでした。当時、家のコンピューターが私の寝室にあって、私はそれを大きな特権だと感じていて(笑)。それで、寝る前にランダムにいろんなものをクリックして、音楽をダウンロードしていたんです。ダウンロードされるまで、何が出てくるかわからない。寝る前にサイコロを振って、朝にその目が出る、みたいな感じ。朝起きると、まるで抽選会みたいでした(笑)。運が良ければ、良いトラックに出会えた。ダウンロードがうまくいかなかったり、まだ70%しかダウンロードできていなかったり、ダウンロードできてもめちゃくちゃだったりするから。

ナップスターとは意外ですね(笑)。でも、世代的によくわかります。

Kelela:私はいろいろなものをダウンロードしていたけど、ある日アートフル・ドジャーの曲がダウンロードされてたのは、いまでも覚えています。それから、クレイグ・デイヴィッドの曲もたくさんあった。まだクレイグ・デイヴィッドがソロ・アーティストとして登場する前の話。彼の曲をベッドルームで発見したとき、そのプロダクションがあまりにも衝撃的で、信じられなかったのを覚えています。いま、説明しながら汗ばんじゃうくらい(笑)。新しい何かを見つけた感覚と、秘密というか、私だけの何かを自分で見つけたような気がして。イギリスではすごく人気だったんだろうけれど、ワシントンDCの郊外に住んでいた私にとっては、ものすごく大きな発見でした。そのあとから、それ系のダンス・ミュージックや関連するものを探し続けて。そうやって、自分にとって神秘的なものを見つけていったんです。「このスピードアップしたヴォーカルはいったい何!?」って思っていましたね。当時、アメリカにはそんな音楽はなかったから。インターネットがいまほどは普及していなかったから、美的感覚が太平洋を越えるのには、まだ時間がかかっていた時代だった。だから、私にとって、そういう音楽を見つけられたのは、すごくパワフルなことでした。

その話題につなげると、あなたは以前からUKのプロデューサーやシーンとの関わりが深いですよね。今回、特にUKのダンス・ミュージックの要素が色濃くなった理由は?

Kelela:今回のアルバムを作りはじめるとき、私は、「自分が望むものであれば、何をつくってもいいんだ」と思うことができていたんです。ヴォーカル曲みたいな領域から初めて、それをリミックスでダンス・ミュージックの領域に移動させたり、改めて解釈しようとしたりしなくてもいい、と思ったんですね。以前は、いまはいない観客を取り込むことに興味がありました。でも、同時に、R&Bが好きな人たちが留まることができるものを作りたかった。つまり、ヘヴィなヴォーカルの瞬間がある一方で、プロダクションが好きでエレクトロニック・ミュージックに傾倒している人たちも満足できるような音楽。だから、私は音楽を作りながら、その両者を満足させようと、ずっと考えていました。

まさに、それこそが、あなたの音楽のアイデンティティですよね。

Kelela:その理由は、私は自分がそのふたつのものに繋がっていると感じているから。このふたつは、私がやっていることの大きな柱なんです。でも、この二面性を行ったり来たりしてしまうと、一体どっちなのかがわからなくなってしまうので、なんとかできないかと考えていました。だって、そのふたつって、全然ちがうからね。エレクトロニック・ミュージックは、白人の判断が基盤になっていて、「白人、テクノ、ストレートな男」みたいなイメージがあるし、一方で伝統的なR&Bやソウル・ミュージックを聴くのは黒人女性のイメージで、そういう人たちはエレクトロニック・ミュージックは聴かない。だから、もし実験的な音楽が盛り込まれすぎていたら、彼女たちは、いったい何が起こっているのかって混乱してしまうかもしれない。それもあって、私はずっと、このふたつの間でつねに交渉をしているような状態だったんです。

なるほど。

Kelela:でも、『RAVEN』を制作しているときは、「もういいや」と思えた。難しく考える必要はなく、ふたつの場所を行き来しようとしなくても、自分がいる場所をそのまま表現すればいいんだって。直感的なものを書いて、サクサク進めていけばいいんだと思えたんです。ポップ・ライターと一緒に曲を書くつもりもなかったし、参考にするものも自分の身近に存在しているものでよかった。それもあって、自然に、いままででいちばんダンス・ミュージックにフォーカスしたレコードになったんだと思います。

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私は、泳ぐことができるんです。このアルバムで、私は、サウンドの海を泳ぎまわれているような気がします。アルバムを理解できない人や興味を持てない人がいても、そんなことはどうでもいい、と思えた。それを理解してくれる人たちだけに、何かを届けたいと思ったんです。

その一方で、ビートのないアンビエント的なプロダクションの曲も要所に配置されています。ドラムレス、ビートレスの曲にシンガーとしてどのようにアプローチしましたか?

Kelela:『Aquaphoria』は、初めて存分にアンビエント・ミュージックの実験ができたレコードなんです。あのレコードで私は、アンビエント・ミュージックを完全に探求することを自分自身に許したんですね。あのプロジェクトであそこまでアンビエントを感じ、それを探求できたことは、とても実りのある経験だった。だから、『Aquaphoria』を作ったあとも、あの感覚から抜け出せなかったんですよね。あのレコードを制作したあと、もっとアンビエントな音楽を聴きつづけて、特に2019年の秋はずっとずっとそういうものを聴いていたから、あのとき、私はまさにアンビエントのゾーンにいたんです。そして、そのときから OCA のレコードも聴きはじめたんだけれど、それはまるで、私が美しいゾーンにいるような感覚だった。それが『RAVEN』に引き継がれたんだと思います。

ええ。

Kelela:2020年の1月に、今回のアルバムの制作を始めた頃、OCA に声をかけました。OCA に「次のアルバムでもっとアンビエントを実験したい」と言ったら、彼らは「もちろん」と答えてくれたんです。しかも、彼らは、自分たちの曲の私のミックスを聴いて、「泣いた」とも言ってくれた。しかも、そこから深く影響を受けて私を気に入ってくれたらしく、じつは私が声をかける前から、私といつかコラボできたときのために、すでに曲を作ってくれていたんです。それを聴いて、私は「すごい!」と思いました。本当に美しくて、とても意味があった。そして、初めて彼らと一緒に作業をはじめたときは、もう魔法みたいな瞬間でしたね。アンビエントなサウンドを、実験しながら即興を乗せていく、すごくリッチな時間。

素敵なエピソードですね。

Kelela:私は、ハードなサウンドが好きな人も、ハードなサウンドだけが好きとはかぎらないと思うし、実際、みんな、柔らかさというものをどこかに求めていると思うんです。だから、私は、LSDXOXO のビート主体のトラックと、アンビエントでビートレスな私自身が探求したいサウンドを合わせて、その意味を見出そうとした。それをどうやったらいいのかはわからなかったけど、とにかく納得できるまでやってみようと思ったんです。そうやって夢中になって作業していると、その週の終わりには、15曲中13曲が完成していました。そして、それらの曲は、ビートをベースにしたトラックとアンビエントなトラックのあいだを行ったり来たりしていたんです。正直なところ、そのふたつの組み合わせがどう意味をなすのか私にも完全にはわからない。でも、説明のできない意味をなしているように感じるんですよね。とても自然に、それができ上がっていました。

そのふたつの同居こそが、このアルバムの肝だと思います。

Kelela:このアルバムは、私がアーティストとして生きている場所と同じ。私は、泳ぐことができるんです。このアルバムで、私は、サウンドの海を泳ぎまわれているような気がします。今回は、アルバムを理解できない人や興味を持てない人がいても、そんなことはどうでもいい、と思えた。それを理解してくれる人たちだけに、何かを届けたいと思ったんです。いまの私は、そんなふうに考えられるようになっている。そして、その場所にいることがとても幸せです。この場所にいたら、もっと良い音楽を作ることができると思うから。

私にとって、クラブは何かから逃げ、忘れる場所ではないんです。クラブは、現実を知るための手段であり、感情的な体験から抜け出すのではなく、むしろ、そこに入っていくためのもの。

「海を泳ぐ」ということに関連してお聞きすると、前作やそれ以前と比べて、あなたのファッションやヴィジュアル表現もずいぶん変化しましたよね。カヴァーアート(ジャケット)の写真は、プレス・リリースにある「社会の中で虐げられた黒人女性としての視点」というテーマを表しているように感じます。カヴァー写真が表しているもの、カヴァーの制作プロセス、『RAVEN』のヴィジュアル・コンセプトについて教えてください。

Kelela:あのアヴァターのことは知ってます? ケレラ・アヴァター。彼女は、何年か前からすでに何度か登場していて、最初のひとつはリミックス・プロジェクトでした。あのプロジェクトでは、私の顔を3Dスキャンしたんです。で、実際に3Dの胸像を作った。で、それにいろんなウィッグをかぶせて実際に写真を撮りました。つまり、あなたが見ているのは偽物。要するに、すごくメタヴァースなイメージなんです。『Aquaphoria』のアートワークにもアヴァターを使ったけれど、私は、彼女はもう一度命を吹き込まれる必要があるんじゃないかと感じたんですよね。

なるほど。

Kelela:私は、このアルバムは、「水」が中心になっていると思うんです。水の中を移動しているような、もしくは洗礼を受けて生まれ変わったような、そんな感じ。私が経験したことの再生、みたいな感じがする。そして、水は浮遊するのを助けるだけでなく、地面に叩きつけてあなたを痛めつけることもできるように、幅広さを持っている、という面もあります。私も同じなんです。だから、水の中に存在する、あの幅が好きなんだと思う。そして、私は、その両方を表現したかったんだと思います。何か困難なことを乗り越えつつも、浮かんでいる私。水が、私をどこかに導いて、連れて行っているんです。私の顔は水に完全に取り囲まれているけれど、私の顔には穏やかさがある。私自身には、あのカヴァー写真は、水に沈められそうになりながら浮いているような、そして、困難な状況にいながらももがき苦しんでいる様子を感じさせない何かがあると感じるんです。水が暗くて、色が黒いのもあり、不吉な海だという雰囲気を漂わせながらも、私は空回りしているわけでも、苦労しているわけでもない。あの水は、深くて暗い海で、感情の奥底のようなもの。あれは、その深海に身を置きながら、その中に完全に入り込む方法、居場所を見つけた私の姿。私の中の交点があの場所なんだと思います。

歌詞についてもお聞きしたいです。“Raven” に「I’m not nobody’s pawn」というリリックがあり、タイトル・トラックがアルバムのメッセージを集約しているようにも感じます。“Raven” のリリックについて教えてください。

Kelela:“Raven” は、サウンド的には、最初にアスマラのシンセで実験したサウンドに魅了されて作りはじめた曲です。そのサウンドをどう表現しようか、という感じで作りはじめました。あの曲は、すぐにビートが来るんじゃなくて、長いビルドアップがあるんですよね。そして、そこに到達したとき、私にとっては、ダンスフロアを一掃するような瞬間を思い起こさせるんです。あれは、クラブでいちばん美しい瞬間だと思う。DJがそれをやれば、それがその夜のピークになるような。一掃するというのは、みんながいなくなるという意味ではなくて、立ち止まって両手を挙げるような感覚。個々のカタルシスのようなものかな。誰もが自分だけの時間を過ごしているような、でも、それを他の人びとと一緒に経験しているような、そんな感じのことです。

わかります。

Kelela:シンセを聴いた瞬間に、「これならあの感覚を味わえる!」と思った。クラブに活力を与えるような、そんなサウンドを作りたいと思ったんです。クラブ・ミュージックやクラブ・カルチャーでは、何かから逃げるような──特に、生き延びるためのエスケーピズム(実生活や現実などからの逃避主義)が構成要素になっている部分がある。私はそれを批判するつもりはないけれど、アーティストとしての私は、自分の貢献や自分の音楽が、逃げるのではなく、人びとが物事に直面するのを実際に助けることを望んでいます。私の音楽が、人びとが実生活に直面するのを助け、彼らが得るカタルシスが、それに対処する助けになることを本当に願っているんです。クラブから帰って朝目覚めたとき、本当に起こっていることについて何も考えられない状態でいるよりも、実際に直面していることに対処するための活力を感じてほしい。私にとって、クラブは何かから逃げ、忘れる場所ではないんです。クラブは、現実を知るための手段であり、感情的な体験から抜け出すのではなく、むしろ、そこに入っていくためのもの。クラブで涙を流すというのは、『Cut 4 Me』以来、私のモットーでもあるんです。その感覚を伝えたいとずっと思っていたんだけれど、それがうまく表現できずにいました。私は、自己発見、自己肯定、そして解放的な音と文化の体験に興味があって、それが、私が自分の音楽を通して人びとに与えたいものなんです。クラブにいる人たちにとって、実際に起こっていることを忘れるための手段は提供したくない。だって、それは現実ではないから。逃げるだけでは、朝起きたときにその現実が戻ってきて、最悪な気分になってしまう。私は、クラブをそんな存在にしたくないんです。クラブは、私にとって大好きな場所であってほしい。私が好きなクラブは、帰り道で私を泣かせてくれるクラブなんです。朝起きて、友だちに電話して、「すごいクレイジーな経験をしたんだ!」って言えるような。泣いて、話して、すごく気分が良くなるような。ちょっと二日酔いで頭が痛くたって、自分に気合を入れられたと思うことができればそれでいいんです。

私たちがダンス・ミュージックとして知っているものの多くは、黒人が発明したもの。それなのに、そのシーンで黒人が疎外感について話したり、尋ねられたりするのはどうしてなんでしょうか?

さらにアルバムの核心に迫りたいのですが、昨年の『デイズド』『ガーディアン』のインタヴューでは、ブラック・フェミニズムについて熱心に語っていましたよね。『Take Me Apart』などの過去の作品では表現されていなかったので、驚きました。冒頭でもインターセクショナリティについて言及していましたが、アフリカン・アメリカンであること、かつ女性であることが、『RAVEN』のコア・コンセプトになった背景について教えてもらえますか?

Kelela:自分のなかで、ブラック・フェミニズムという枠組みが、より明確になったんだと思います。これが革新的な概念だとはまだ言いがたいけれど、言えることは、ブラック・フェミニズムの理論が、多くの社会正義に枠組みの原動力になっている、ということ。エイジアン・ライヴズ・マター運動のようなものも、そのひとつ。アメリカや世界の有色人種にとって、こういった運動の理解の枠組みは、女性であるアメリカの黒人理論家に由来するところが大きい、というのはあると思う。私にとって、それはつねに明確ではあったんだけれど、この場所にもっと足を踏み入れる前に、もっと調べたり読んだりする必要があった。いまは、それができた状況なんです。そういう研究を、私はずっと続けてきました。

そうだったんですね。

Kelela:でも、ここ数年は、ダンス・ミュージックにおける自分の経験、つまり交差的な経験を点と点で結びつけ、この領域で自分が直面している疎外とは何なのかを理解しようとしているんです。肌の色が明るいアーティストではない私は、色彩主義(colorism)というのは、国際的な言説になっていないような気がします。たしかに、アメリカでは黒人が虐げられているけれど、少なくとも、ダンス・ミュージックや音楽ビジネス全般において、色彩主義をめぐる言説は、世界中の多くの人びとがもっと注目して、考えるべきことだと思う。黒人女性は、音楽業界からの初期投資がない限り、オーディエンスから発見してもらうこともできません。そして、音楽業界は、反射的に肌の色が明るいアーティストに投資するんです。私が白人女性としてこれまで作ってきたような音楽を作っていたら、もっと大きな存在になっていたと思う。地球上のもっと多くの人が、私の名前を知っていたと思う。それが起こらなかったのは、サウンドのクオリティのせいではないんです。ただ、人びとがより明るい肌の身体からこの種の音楽が生まれるのを見たいということと、音楽ビジネスの専門家たちにとって、より市場が強いことが関係しているだけ。

ええ。

Kelela:ブラック・フェミニズムは、これらのことが同時に進行していることを理解するのに役立つ枠組みだと思います。音楽全般、特にダンス・ミュージックにおいて、黒人女性としての自分の現実を解体するために使える枠組みなんです。私たちのジレンマは、自分の仲間たちに関係している空間のなかで、どうしてこんなに疎外感を感じてしまうのか、ということ。私たちがダンス・ミュージックとして知っているものの多くは、黒人が発明したもの。それなのに、そのシーンで黒人が疎外感について話したり、尋ねられたりするのはどうしてなんでしょうか? これは本当にクレイジーな現実で、そのなかで経験する不協和音の体験はおかしなものです。そこで何が起こっているのかを理解するためには、たくさんの本を読み、リサーチをする必要があります。このアルバムで、誰に語りかけるかという点で中心になっているのは、黒人、女性、ノンバイナリーの人たちです。歌詞を書くときは、車を運転しながら、歌詞を叫んでいる彼らの姿を想像しながら書きました。彼らが叫べるような歌詞にしたいと思って。彼らが叫べば、その周りの人びとにも力を与えられるから。ノンバイナリーである黒人が叫べる歌詞なら、それはどんな人も力強く歌えるような歌詞になるはずだと思ったんです。

そのとおりだと思います。いま、エイジアン・ライヴズ・マター運動にも言及されましたが、パンデミックの影響で日本を含むアジア人は酷い差別を受けました。また、同質性の高い日本社会には、いまも外国人差別があります。レイシズムや色彩主義に対して、歌や音楽ができることはどんなことだと思いますか?

Kelela:アジア人差別は、私がとても興味を持っていることのひとつ。次のインタヴューでは、ぜひそれについて話してみたい。日本でそのような経験をしたことがある人に話を聞いてみたいんです。誰かがこういうトピックについて自分が考えていることを話せるような場を設けることができたら、最高。歌や音楽は、そういう問題に対して、間接的に何かをしているとは思います。人びとがもっと勇気づけられ、もっと肯定され、もっと自分の価値を明確に感じられるようにすることで、その手助けをしていると思う。そうすれば、この世界で人びとがもっと大きな声を出すことができて、自分はひとりではないんだということを知ることができるから。そして、その体験がつながりを生み、その人たちが解放される瞬間になる。それは、すごく意味があることだと思います。

わかりました。質問は以上です。ありがとうございました。

Kelela:素晴らしい質問をありがとう。

TechnoByobu - ele-king

 屏風と言えば狩野派、それはしかし江戸時代までのこと。21世紀の屏風界に新風吹きたるなり。君は「TechnoByobu(テクノ屏風)」を知っているか? それは音楽レーベルでもある〈ユーマ〉がこの度販売する、テクノのアートワークを洋金箔の上に施した屏風。第一弾となる「Electronic Fan Girl」は、アーティストのルー・ビーチ氏が、YMO世界デビュー時のワールドワイド版ファースト・アルバム『Yellow Magic Orchestra』のジャケットとして作成した有名なアートワークを、118年の歴史を持つ歴清社の技術により洋金箔(真鍮箔)の上に施したNFT証明書付き作品です。 
 
■オフィシャルムービー

 「2021年に設立20周年を迎えたユーマはTechnoByobuを同社の20周年記念プロジェクトと位置け、今後も国内外の著名なアーティスト、クリエイターによるアートを、日本の伝統の美および先端技術NFTと融合させ、テクノの精神を体現したアートピースを企画、販売していきます」とのことです。

Number:TB-01
Title:Electronic Fan Girl
Artist:Lou Beach
サイズ:五尺二曲(縦:約1500mm × 横:約1400mm)
重量:約4㎏
NFT証明書:Startrail PORT
価格:880,000円(税込)
販売数量:50隻
2023年3月3日よりWebサイト(https://technobyobu.jp/)にて受注販売を開始
また、販売を記念してTwitterキャンペーンも本日2月3日より行います。
Twitter

■Lou Beach(ルー・ビーチ)
マドンナ、ポリスなどのアルバムアートワークを手掛け、70〜80年代に大活躍したアメリカのコラージュアーティスト。「Electronic Fan Girl(TB-01)」のイラストは、1979年に日本が誇るテクノポップ・バンド、Yellow Magic Orchestra(細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏)のワールドワイド版ファースト・アルバムのジャケットとして描かれた作品です。
世界30か国以上で発売されたこのアルバムは世界各国で熱狂的に愛されましたが、それにはルー・ビーチ氏によるこのイラストレーションも大きく寄与しました。1979年当時、フジヤマ・ゲイシャというイメージだった日本は、同時に、ハイテクやハイファッションの国に変わりつつありました。ルー・ビーチ氏のこのイラストレーションは、そんな伝統と未来が同居する日本の新しいイメージを、YMOの楽曲とともに広めたのです。
2011年、YMOがおよそ30年ぶりのアメリカ・ツアーを行ったとき、このイラストレーションのタトゥーを入れたアメリカ人ファンを目にしてメンバーが驚いたという逸話は有名です。それほど熱狂的に愛されるイラストレーションを纏ったTechnoByobuは、日本のみならずインターナショナルでも熱く愛されるに違いありません。
URL:https://loubeach.com/
Twitter:https://twitter.com/XActo11

■ユーマ株式会社 U/M/A/A Inc. (United Music And Arts)(企画・製作・販売)
国内外の音楽とアート(メディアアート、ファッション、アニメ、ゲーム、マンガ、ガジェット等)をUniteしていく新しいカタチのレコード会社です。クラブ / エレクトロニック・ミュージックからインターネット発ボーカロイド/アニメソング・プロデューサーまで、クオリティー・ミュージックをジャンルレスに展開しています。1970年代末に日本が世界に誇るイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)の音楽を生み出したアルファレコードに勤務していた創業者が、YMOのテクノ・ポップの先進性とユニークネスを現代に継承する会社として設立したのがユーマであり、今回その精神を持って企画したのがTechnoByobuとなります。YMOメンバーによるユニット、Sketch Show(2003)、HAS(2004)のヨーロッパ公演や、YMOのトリビュートバンド『Yellow Magic Children #01』(2019)のリリース等、YMOに関連する事業も行っています。

■歴清社(屏風)
https://rekiseisha.com/
広島で118年の歴史を持つ「歴清社」。特許をもつ洋金箔押紙の製造方法は海外でも認められる唯一無二の伝統技術。帝国ホテル、宮内庁、西本願寺はもとより、CHANEL、GUCCIなどの高級ファッションブランドまで、その製造方法により生み出された様々な箔製品のクオリティーは国内のみならず、世界で評価を得ています。

■Startrail PORT(NFT証明書)
https://startrail.io/
TechnoByobuには、NFT(Non-Fungible Token)を活用したアート証明書「Startrail PORT」が実装されています。作品に埋め込まれたチップをスマートフォンで読み込むことでNFT証明書を確認できます。TechnoByobuの一隻一隻には固有のNFT証明書アドレスが割り振られており、作品の真性が保証されるとともに来歴も明らかになり、従来難しかったセキュアな証明書管理や2次取引から作家、ライセンスホルダーへの収益還元等の実験的なエコシステムを創出しま

■立花ハジメ(ロゴデザイン)
このTechnoByobuのロゴは音楽家、アーティストとしてYMOとならび1970年代末からテクノを実践してきた立花ハジメ氏(ソロのほか、プラスチックス、Hmなど)によるものです。立花ハジメ氏は1970年代からグラフィック・デザイナーとしても活躍されていて、これまで多くのグラフィック作品、舞台美術、ロゴ・デザインを手がけています。

■発売記念Twitterキャンペーン開催
発売を記念してTwitterキャンペーンを開催します(2023年2月3日〜2月23日)。
・参加者全員に非売品のTechnoByobu Compact Repli-card (1/8スケール)をプレゼント。
・さらに2/13以降に配送される“TechnoByobu Compact Repri-card“の写真を撮ってツイートしてくれた方の中から優秀賞に選ばれた10名様を、3月3日に都内で開催予定の“TechnoByobuお披露目イベント”へご招待。
<参加方法>
◆2/3〜2/12
1.TechnoByobuのTwitterアカウント(https://twitter.com/TechnoByobu)をフォローし、キャンペーンのツイートをRT
2.ツイートに記載されたリンクよりフォームに回答
◆2/13〜2/23
3.2/13以降に発送される“TechnoByobu Compact Repri-card“の写真を撮って写真にメンション@TechnoByobuを付けてツイート

 

ジャン=リュック・ゴダールの革命 - ele-king

誰よりもかっこよくポップで常に新しく倫理的だった映画作家

『勝手にしやがれ』での鮮烈なデビュー以来、常に映画を革新してきた戦後最大の映画革命家、ジャン=リュック・ゴダールが2022年9月13日、91歳で自らの意志により生涯を閉じました。
ヌーヴェル・ヴァーグの旗手としての華々しい登場以来およそ60年にわたり、大きな存在感を示し続けたこの偉大な映画作家について、フィルモグラフィー紹介とコラム、対談記事でその全貌に迫ります。

対談:浅田彰+菊地成孔
鼎談:阿部和重+佐々木敦+中原昌也
執筆:堀潤之、後藤護、真魚八重子、渡邉大輔、上條葉月、西田博至、児玉美月、山本貴光、細馬宏通

目次

Biography ジャン=リュック・ゴダールの映画的人生 (堀潤之)

対談 浅田彰+菊地成孔「こんなかっこいい人はいない」
鼎談 阿部和重+佐々木敦+中原昌也「もっとも倫理的な映画作家」

Filmography
勝「手」に盗め――帰ってきたカッパライ 『勝手にしやがれ』 (後藤護)
1960—1966 アンナ・カリーナ時代のゴダール (真魚八重子)
1967—1968 映像と音、映画とは何かの探究の時代 (上條葉月)
1969—1972 「めざめよと、われらに呼ばわるオプティカルな声ら」――ジガ・ヴェルトフ集団時代 (西田博至)
1973—1987 ミエヴィルとの共闘――〈ソニマージュ〉の設立と商業映画への帰還 (児玉美月)
1988—1998 1990年代――『映画史』へと至る10年 (山本貴光)
2001—2018 21世紀のゴダール (細馬宏通)

Column
ヌーヴェル・ヴァーグとゴダール (渡邉大輔)
ヌーヴェル・ヴァーグ後のゴダールをめぐる人物たち (渡邉大輔)
ゴダールの〈仲間〉たち (上條葉月)

ゴダール監督作品リスト
索引
プロフィール

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧
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TSUTAYAオンライン
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くまざわ書店
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* 発売日以降にリンク先を追加予定。

Matthewdavid - ele-king

 LAのアンビエント/ニューエイジ・シーンの筆頭にして、レーベル〈Leaving〉の主宰者としても知られるプロデューサー、マシューデイヴィッド。その新作EPが1月31日にリリースされている。タイトルはストレートに「マッシュルームについて」。年内に予定されている久しぶりのフル・アルバム『菌糸体音楽』と対をなすものだという。明確にトリップを志向しています。きらきらした夢見心地の音楽を楽しみましょう。

Leaving Recordsの創設者Matthewdavidが今年リリース予定の待望の新作アルバム
『Mycelium Music』に先立つEP「On Mushrooms」をリリース

Leaving Recordsの創設者でもあるMatthewdavidが今年リリース予定の待望の新作フル・アルバム『Mycelium Music』に先立つプライマーとして、アルバムと対をなすEP「On Mushrooms」をリリースしました。
このEP、アルバムの両作品は同じ生態系から表現され、同じ生地から切り出されたものであり、Matthewdavidの最新のサウンドの探求がどこへ向かうのかを予感させる表現力豊かで、エレクトロニックなエネルギーとアンビエントな反射音が合流し、鮮やかな輝きを放っている、来る新作フル・アルバムへの期待が否応無しに膨らむEPです。

Matthewdavid new EP “On Mushrooms” out now

Artist: Matthewdavid
Title: On Mushrooms (A Primer for Mycelium Music)
Label: PLANCHA / Leaving Records
Format: Digital EP
Release Date: 2023.01.31
Buy/Listen: https://orcd.co/obb5g8d

1. Culebra with Wilkes (feat. Sam Wilkes)
2. Under a Tree
3. A New Ambient
4. Dampener
5. Too High to Play Bear’s Campout (feat. Brin)
6. One4G

*all music + engineering by MatthewDavid except track 1 is a collaboration with Sam Wilkes, and track 5 is a collaboration with Brin.
*artwork + design Sam Klickner
*tracks 1 & 2 performed and recorded for Listen to Music Outside in the Daylight Under a Tree, at La Tierra de la Culebra, in Highland Park, Los Angeles
*tracks 3-6 recorded at home in Los Angeles

“私の音楽は真実を明らかにするための幸せな偶然への果てしない探求の結果です。私の部屋にある秘密の抜け穴は、いつもそこにあった答えの境地へと繋がっています。”

決して型にはまらないレコード・レーベル/実験的コミュニティとして絶大な地位を確立しているLAのLeaving Recordsの創始者であるMatthewdavidが今年リリース予定の待望の新作フル・アルバム『Mycelium Music』に先立つプライマーとしてEP「On Mushrooms」を発表。個性的でエッジの効いた、没入感のあるMatthewdavidらしい “ニュー・アンビエント”。

『On Mushrooms』は、LAにあるLa Tierra de la Culebraコミュニティ・アート・パークで定期的に行われているLeaving Recordのイベント「Listen to Music Outside in the Daylight Under a Tree」(日中の屋外で音楽を聴くイベント)で録音された2曲で幕を開ける。生命力溢れるコレクションに相応しく、レーベルメイトのSam Wilkesをフィーチャーした冒頭のトラック「Culebra With Wilkes」ではリヴァービーで穏やかなギターのフレーズにアンビエント的音像が浮遊し、ヒプノティックな世界観が広がる。続く「Under a Tree」では、繊細でミニマルなシンセサイザーが漂い、徐々に天空へと誘われるかのようなサウンドが形成されている。その後はガムランの囁きとドローンがゆっくりと滑らかに交錯し、オーディオリズム奏者Brinとのコラボ曲「Too High To Play Bear’s Campout」では緻密なレイヤー波がうねり、「A New Ambient」での暗号のようなサウンド・コード、そしてクロージング・トラックの「One4G」は、反響の中を沈んでいくように音が広がり幕を閉じる。実験的ながら心地よく幻想的な作品に仕上がっており、Matthewdavidの最新のサウンドの探求がどこへ向かうのかを予感させる表現力豊かなもので、エレクトロニックなエネルギーとアンビエントな反射音が合流し、鮮やかな輝きを放っている。来るフル・アルバムへの期待が否応無しに膨らむEPだ。

以下は、Matt Baldwin(カリフォルニアの著名なギタリスト、作家、サイケデリック心理療法の訓練を受けた心理療法士)が書いた試聴体験談です。

Matthewdavidの新しい音楽を聴きながらケタミン空間(200mgのロゼンジを経口投与)に身を投じたとき、私ははっきりと同様の印象を受けた。特に、この音楽は私が知る前に私のことを知っていて、私に会うために非常に長い間待っていたのだ、ということだ。この音楽は、他の人の意識を媒介にして、ついにその全体性を表現する機会を待ち望んでいたのである。音楽は、空気の圧力波を媒介にして、他人の内面に意味を伝える日常的なテレパシーの一種である。色と音の波が私を貫いていくとき、私は深い相互関係についての非常に明確なメッセージに圧倒され、まさにこの言葉で定式化された。

私たちは、ほとんどの時間を、同じ人間ではないふりをしながら過ごしています。

私たちのコミュニティの重なり合う円は、輝く生きた曼荼羅として私たちの前に横たわっています。

私たちがお願いしたいのは、あなたがここで感じたことを認め、決して忘れないと約束していただくことだけです。

この音楽との出会いは、自分の部屋の床に秘密の抜け穴を見つけて、足元にきらめく洞窟の果てしないネットワークが常に存在していたことに気付くようなものです。さらに、洞窟はどういうわけか生きていて、月相のツィター(スロベニア、オーストリア、ハンガリーなどで見られる、日本の琴を短くしたような弦楽器)の曲の微妙な火が刻まれた秘密のシジル(主に西洋魔術で使われる図形)の淡い金色の線条細工でネットワーク化されています。なお、夢分析では、隠された空間を見つける夢は、自己の可能性の広がりを象徴していることが多い。

Matthewdavidは、静寂と暗闇の隠された双子のような作品を作り上げた。恐怖や孤独の闇ではなく、新しい形を優しく愛撫しながら発芽するビロードのような闇。この音楽の喜びは、その深いプライバシーにある。太陽の光で煌めき、ヒノキの枝のように一日中、夜の断片を抱え込んでいる。それは磁気の光の波に乗って私たちを前進させ、私たちは人間の傷が永遠に癒され、想像力以外の法がない世界の端の向こうの霧深い森に連れて行かれることに気づく。

Rainbow Disco Club 2023 - ele-king

 GW中の、4月29日〜5月1日の3日間に渡って静岡県東伊豆クロスカントリーコースにて開催される〈レインボー・ディスコ・クラブ2023〉、今年もまた出演者が豪華過ぎます。まずはジェフ・ミルズ、もう説明不要でしょう。彼のことですから、野外でやるからには選曲もまた考えてくることでしょうし、うん。ほか、エレキング的に注目したいのは、Special RequestとChaos In The CBD。前者は、近年のジャングルにおいてもっともカッコいいプロデューサー、後者は、近年のハウスにジャジーなヴァイブを加味した人気のプロジェクトです。それからもうひとり、現在ロンドンを拠点に活動しているChangsieにも注目でしょう。
 ほかにもDJ NOBやBen UFOのような安定した人気を誇るDJもいるし、RDCの精神的支柱の瀧見憲司もおります。早割とかバスツアーとかいろいろあるので、詳しくはオフィシャルサイトをチェックしましょう。とにかく、これは楽しみですね。

開 催 概 要

名 称:
Rainbow Disco Club 2023

日 時:
2023年4月29日(土)9:00開場/12:00開演~5月1日(月)19:00終演

会 場:
東伊豆クロスカントリーコース特設ステージ(静岡県)

出 演:
DJ / LIVE (A to Z):
Alex Kassian
Antal & Hunee
Ben UFO
Changsie
Chaos In The CBD
Daphni
DJ Nobu x Eris Drew
Jeff Mills
Kamma & Masalo
Kenji Takimi
Kikiorix
Lars Bartkuhn (live)
Little Dead Girl
Monkey Timers
Moxie
Occa
Palms Trax
San Proper
Sisi
Special Request
Yoshinori Hayashi (live)
Yu Su

VISUAL:
Realrockdesign
Colo Müller
Kozee
VJ Manami

LASER & LIGHTING:
Yamachang

オフィシャルサイト:
http://www.rainbowdiscoclub.com

Rob Mazurek - ele-king

 シカゴ・ジャズ・シーンにおけるキーマン、かつてガスター・デル・ソルやトータスの作品に参加しポスト・ロックの文脈でもその名が知られる作曲家/トランペット奏者のロブ・マズレク(現在はテキサスのマーファ在住の模様)が、ニュー・アルバムを送り出す。古くからの仲間と言えるジェフ・パーカーを筆頭に、クレイグ・テイボーンやデイモン・ロックスといったメンバーが終結。ブラジル在住時の経験がインスピレーションになっているそうだ。昨年亡くなったジャズ・トランぺット奏者、ジェイミー・ブランチに捧げられた作品とのこと。発売は4月5日、チェックしておきましょう。

Rob Mazurek - Exploding Star Orchestra
『Lightning Dreamers』

2023.04.05(水)CD Release

シカゴ・アンダーグラウンド、アイソトープ217°、サンパウロ・アンダーグラウンドで知られる作曲家/トランペット奏者のロブ・マズレクによる、エクスプローディング・スター・オーケストラ名義の最新作。ジェフ・パーカーを筆頭に豪華メンバーが集結してグルーヴ感溢れる演奏を聴かせる中、故ジェイミー・ブランチも参加し、彼女に捧げたアルバムとして完成された。ボーナストラックを追加し、日本限定盤ハイレゾMQA対応仕様のCDでリリース!!

ジェフ・パーカーとの共作 “Future Shaman” でスタートするロブ・マズレクの新作は、流れるようなグルーヴ、宇宙空間を漂うようなメロディラインと音響によって彩られている。それは、彼が3年間住んでいたブラジル、マナウスで、リオ・ネグロ(黒川)とリオ・ソリモンエス(白川)の合流地点にインスパイアされた感覚の表明でもある。アマゾンの支流を船で日々移動することは、過去、現在、未来の精神を呼び起こしたのだという。画家でもあるマズレクの視覚と聴覚へのアプローチも、エクスプローディング・スター・オーケストラというプロジェクトの目的も、水の流れ、時の流れから彼が掴んだ一種の再生の表現だ。故ジェイミー・ブランチも参加し、彼女に捧げられているアルバムに相応しいテーマである。(原 雅明 ringsプロデューサー)

ミュージシャン:
All music composed by Rob Mazurek (OLHO, ASCAP).
Words by Damon Locks.
Recorded at Sonic Ranch, Tornillo, TX, September 23rd & 24th, 2021.

Rob Mazurek (director, composer, trumpets, voice, launeddas, electronic treatments)
Jeff Parker (guitar)
Craig Taborn (wurlitzer, moog matriarch)
Angelica Sanchez (wurlitzer, piano, moog sub 37)
Damon Locks (voice, electronics, samplers, text)
Gerald Cleaver (drums)
Mauricio Takara (electronic percussion, percussion)
Nicole Mitchell (flute, voice)

Engineered by Dave Vettraino.
Additional Recording by Jeff Parker, Mauricio Takara, Nicole Mitchell,
and Rob Mazurek.
Produced and Mixed by Dave Vettraino & Rob Mazurek.
Mastered by David Allen

Album art by Rob Mazurek Radical Chimeric #1 #2 (mesh, screen, mylar, canvas, video projection) 2022.
Insert Photo by Britt Mazurek.
Design by Craig Hansen.
Thank You Britt Mazurek.
This album is dedicated to jaimie branch.


[リリース情報]
Artist:Rob Mazurek - Exploding Star Orchestra(ロブマズレク・エクスプローデイング・スター・オーケストラ)
Title:Lightning Dreamers(ライトニング・ドリーマーズ)
価格:2,600円+税
レーベル:rings / International Anthem
品番:RINC99
ライナーノーツ解説:細田成嗣
フォーマット:CD(MQA仕様)

*MQA-CDとは?
通常のプレーヤーで再生できるCDでありながら、MQAフォーマット対応機器で再生することにより、元となっているマスター・クオリティの音源により近い音をお楽しみいただけるCDです。

[トラックリスト]
01. Future Shaman
02. Dream Sleeper
03. Shape Shifter
04. Black River
05. White River
+Japan Bonus Track 収録

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008618139
https://www.ringstokyo.com/items/Rob-Mazurek---Exploding-Star-Orchestra

interview with Young Fathers - ele-king

 ロックが培ってきた実験精神と、ゴスペルやR&Bといったブラック・ミュージックが育んできた大衆性、その最良の結合──エディンバラの3人組、全員がヴォーカルをとるヤング・ファーザーズの魅力といえばそれに尽きる。ソウルを愛する文化がアメリカ以上に深く根づいている、イギリスだからこそ出てくる音楽だろう。
 2010年代前半、LAの〈Anticon〉から浮上しエクスペリメンタルなヒップホップ・サウンドを展開していた彼らは、ファースト『デッド』(2014)でマーキュリー・プライズを受賞するとヒップホップ色を薄め、徐々にポップな要素を増大させていった。クラウトロックの冒険心をとりいれたセカンド『白人も黒人だ』(2015)やその延長線上にあるサード『ココア・シュガー』(2018)も、実験的でありながら親しみやすいコーラスを持ちあわせた、広く門戸の開かれた作品だった。
 はたして5年ぶり4枚めの新作『ヘヴィ・ヘヴィ』は、その重々しいタイトルとは裏腹に、かつてないキャッチーさを携えている。ノイズがだいぶ控えめになったことに驚くファンもいるかもしれない。出だしの “Rice” からして祝祭感満載で、ネオリベ社会を風刺したかのようなリリックの “I Saw” にそのアンサー “Drum” と、アルバムはどんどん疾走感を増していく。注目すべきはやはりゴスペル的な要素の前景化だろう。オルガンが教会を想起させる4曲目 “Tell Somebody” でその聖性は最初のピークを迎える。各曲で重ねられるコーラスはまるで、あなたがけしてひとりではないことを強調しているかのようだ。なぜ彼らは今回、ゴスペルやソウルの部分を最大限に押し広げたのだろうか。

 セカンドのタイトル『白人も黒人だ』によくあらわれていたように、ヤング・ファーザーズは聴き手に「どういうこと?」と立ちどまって考える機会を与えることを忘れない。「賛成する意見もあれば反対な意見もある。そして、みんなこのタイトルについて考えていた。〔……〕そういう作用を引き起こしたかった」のだと、メンバーのグレアム・ヘイスティングスは同作について語っている(紙版『ele-king vol.16』、2015年)。もしヤング・ファーザーズの音楽が難解なだけの代物だったら、そんな現象は起こらなかっただろう。リスナーと身近な人びととの会話を刺戟することができるからこそ、彼らはポップであることにこだわるのだ。「5時半に仕事を終え、運転して帰宅途中の人たち」のために音楽をつくっているという彼らの瞳には、つねに生身の人間、生活する人間が映っている。

 新作のテーマはずばりコミュニティだ。というとなにか志を同じくする集団のようなものを思い浮かべてしまうかもしれないけれど、難しく考える必要はない。ようは近しいだれかと一緒にいることである。アルバムには、ネイティヴ・アメリカンの戦士の名を掲げた曲がある。彼はコミュニティのために戦った勇者だった。今回取材に応じてくれたアロイシャス・マサコイは、そのじつにソウルフルな賛歌 “Geronimo” について「人間関係のなかで、自分ができること、自分の役割を全うしたい。ぼくはそのために生きているし、そのために生まれてきた」とまで言ってのける。
 ひとはひとりで生きているわけではない。パンデミックを経てヤング・ファーザーズは、あらためてわれわれにその事実に目を向けさせようとしているのかもしれない。そもそも「ヤング・ファーザーズ」なる気どらないバンド名からして、メンバー全員が父とおなじ名前だからという理由でつけられたものだった。身近な人びととのつながりこそ、彼らの出発点だったのだ。
 けして軽くはないテーマを忍ばせ、ときにはメランコリックなことばを紡ぎながらも、最終的には歓喜と祝祭に満ちたこのアルバムは、たとえば満員電車で無言でひとを押しのけたり舌打ちしたり、泣く赤子をあやす親にキレちらかしたりするのがあたりまえのここ日本においてこそ、もっとも聴かれるべき音楽ではないだろうか。

母親のためにスーパーに行って食材を買わなきゃいけないし、姪っ子や甥っ子の学校の送り迎えだってしなくちゃいけない。〔……〕自分のまわりのひとに尽くせないひとが、社会を変えられるはずがないと思うから。

エディンバラはパンデミックのあいだどのようなムードだったのですか? やはり外出するひとがいない時期が長く続いたのでしょうか?

アロイシャス・マサコイ(Alloysious Massaquoi、以下AM):そうだね。街はかなり人出も少なくて静かな感じだったね。でも、報道されるような大袈裟な感じではなかったよ。実際には出歩いているひともいたし、仕事をしているひともいたし。テレビで観るような感じではなかったと思う。ぼくも外の空気を吸いに散歩に出かけたりしていたけど、出歩いているひとも結構いたね。

いまは完全にもとどおりという感じですか?

AM:そうだね。もとどおりになってけっこう経っているかな。前と同じようにコミュニケーションがとれるようになったよ。

前作から5年ぶりのアルバムですが、この5年でブレグジットやパンデミック、ウクライナの侵略などがあり世界は大きく変わりました。あなたたち自身はどこか変わりましたか?

AM:社会はつねに変化を続けているからね。それは世界という大きな枠ではなくても、個人個人の人生にとっても同じことだと思うんだ。自分とひととの関係性やリレーションシップも変化を重ねていくものだから。関係性がより強まったり、深まったり、ときには失ってしまったり、終わってしまったり。自分のなかで折り合いをつけて進んでいくしかないんだよ。若いときはその関係性のなかから自分が欲しいものを得ればいいし、歳を重ねるごとにひととの関係性に求めるものは変わってくると思う。家族にせよ友人にせよ、その関係性の上に築かれたものは強度や深度を増していくんだ。とにかくいろいろな変化を経験しながら進んでいく。それが人生だと思うから。

社会的な問題などがあなたの考え方に影響をもたらすことはあるのでしょうか?

AM:それはあると思うね。もちろん、メディアで報道されていることについては自分の恋人や友人と議論することもあるし、会話のなかにも出てくるし。でも、たいせつなことは自分がいまいる場所、やるべきこと、やっていることに向き合うことだと思うんだ。社会でどんなことが起こっていても家賃は払わなくちゃいけないし、家のローンは払わなくちゃいけないし、光熱費だって払わなくちゃならない。母親のためにスーパーに行って食材を買わなきゃいけないし、姪っ子や甥っ子の学校の送り迎えだってしなくちゃいけない。自分がすべきことがあるから、まずはそれに責任を持たなくちゃ。社会の問題についてぼくたちができることは限られているし。もちろん抗議デモに参加して、自分の意思を表明することなんかはできるから、自分にできる範囲でやればいいんだよ。コントロールできない問題だからと諦める必要もないけれど、自分のすべきことを放り出してまでやるのはちがうと思うな。まずは自分にできることからやるべきだよ。自分のまわりのひとに尽くせないひとが、社会を変えられるはずがないと思うから。それができて初めて、もっと大きなことに目を向けるべきなんじゃないのかな。先人たちもずっとそうやって乗り越えてきたはずだよ。今回のことが最後の戦争ではないし、これからも国同士の諍いや戦争は繰り返されて、終わりが来ることはけしてないんだから。自分にできることをやるだけさ。

まずは自分のまわりのひとを幸せにしなければということですね。

AM:そのとおりだよ。


photo by Fiona Garden

全体をとおしてぼくたちが表現したかったことは、コミュニティの雰囲気や共同体の持つ様相といったものなんだ。みんながユニゾンで歌ったり、レイヤーを重ねていくところに、そうしたものの要素が込められていると思う。

ところでこの5年間に、好きな音楽の種類に変化はありましたか?

AM:どうだろう。パンデミックの時期は、むかし聴いていた音楽をよく聴き直していたような気がするな。子どものころに聴いていた曲とか。自分にとって忘れられないような出来事があったころに聴いていた曲を思い出したりしていたよ。当時好きだった曲ということではなくて、けしてその曲が気に入っていたわけじゃなくても、自分にとって人生の転機になるようなころの思い出と、そのころ聴いていた曲が結びついているような感じなんだ。その出来事のBGMになっているというか。もちろん、強烈に覚えているのは出来事のほうなんだけど、その曲を聴くと、当時のシチュエーションが鮮明に思い出される感じだね。そういう曲をよく聴いていた気がするよ。

たとえばどんな出来事と、それに結びつく曲を聴いていましたか。

AM:鮮明に覚えているのは、ぼくがほんとうに小さいころ、難民として母とふたりの姉妹と一緒にアフリカからスコットランドに移住したときのことだね。4歳か、4歳半くらいのころだけど。アフリカにいたころ……それこそ1歳かそれくらいだったと思うけど、母がよくマキシ・プリーストの “Wild World” をかけていて、そのメロディを覚えていたんだね。スコットランドに移ってから、地球の環境問題なんかがとりざたされるときにその曲が話題にのぼっていたりして、ふとこの曲がぼくの頭のなかに響いたんだ。もちろん、誰のなんという曲かは知らなかったよ。それで、7歳か8歳のころに、母に「こういうメロディの曲を覚えてるんだけど……」って歌って聴かせたんだよね。そうしたら母が「ああ、それはマキシ・プリーストよ」って教えてくれて。あの曲を聴くと、幼いころに嗅いだ匂いとか、スコットランドに移住してきたときのこととかを思い出すんだ。2015年に、祖父や叔母、いとこたちに会うために、ぼくは母を連れてガーナに里帰りしたんだ。ガーナの空港に降り立って空気の匂いを嗅いだとき、あの曲が頭のなかに流れてきた。母が大音量で聴いていたあの曲が、ぼくを当時の思い出のなかに連れ戻したんだ。

すごくよくわかります。匂いと音楽は密接に記憶と結びついていますよね。ところで、5年前の『Cocoa Sugar』リリース後の話ですが、ドイツのフェスティヴァルがあなたたちの出演をとり消す事件がありましたよね。彼らはイスラエル大使館とパートナーシップを結んでいて、あなたたちが反イスラエルのボイコット運動「BDS」を支持していたことが理由でした。サーストン・ムーアブライアン・イーノはそんなあなたたちを支持しました。以降もそれに似た、許せないことだったり、コミットできない出来事を経験することはありましたか?

AM:すごく単純にあそこでは演奏したくない、って思っただけなんだ(笑)。フェスティヴァル自体にはなにも思うところはなかったんだよ。彼らはアーティストを集めて、ぼくたちが演奏できる環境を最大限に整えてくれていただけだから。たんに演奏したくないという気持ちの問題だったんだけど、イーノやそういうひとたちがそれを支持してくれて。そのあとどんどん話が大きくなっちゃって、「あのフェスティヴァルのオーガナイザーはテロリスト・グループだ。テロを企てようとしている」という話にまで飛躍してしまったんだ。でもそれはおかしな話で、オーガナイザーのほとんどがユダヤ人だったんだから、そんなわけはないよね。「オーガナイザーの一部が、いろいろなアーティストとメールなどで密談を交わしていた」とかなんとか。それで数年後にドイツのマスコミが当時のことを訊いてきたとき、ちゃんと事情を説明したよ。出演をとりやめたのは、とても単純明快な話だということをね。それで、たったそれだけの話だった、ということをようやく理解してもらえたんだ。ぼくたちは人種もさまざまなグループだし、単純にコミュニティをサポートしたいと考えているから、特定の人種を攻撃するのではなく、互いに助け合うことを望んでいるんだ。逆にいえば、特定の人種だけを守って、他を排除するような活動については容認できないというスタンスをとっている。同意できない主張を掲げている団体とは関係を持ちたくないという、すごくシンプルな理由だよ、その前にも同じようなことがあって。
 ぼくたちは2014年にマーキュリー・ミュージック・アウォードを受賞したんだけど。これはアニメーションなども含めたクリエイティヴな活動に贈られる、イギリスではとても権威のある賞なんだ。ぼくたちは受賞することができたけど、そのときに「ぼくたちのことは右寄りのメディアには書いてほしくない」って明言したんだよね。ぼくたちのことはとりあげてくれなくて結構、ってね。頭にくるのが、タブロイド紙とかそういうメディアにはぼくたちのことは書いてほしくないのに、書いてほしくないと言っていると書き立てるわけだよ(笑)。ぼくたちには、ぼくたちのことを書いてくれるメディアを選ぶ権利があるはずなのに、実際は嫌だと思うメディアのほうが、「嫌がっている」ということを格好の材料にして書くというね。いろいろな考え方を持つ、すべてのひとに満足してもらうことは不可能だから、結局はぼくたちが銃を鞘に収めるしかなかった。受けいれたわけではけしてないけど、彼らを喜ばせてやる義理もないしね。そういうことはこれからもあるんだろうなとは思うけど、それでも自分たちの主張を持つことや、自分たちの考えをちゃんと表明していくことには、ネガティヴな面よりポジティヴな面のほうがずっと多いと思うから。ある程度の状況は受けいれるしかないよね。理解してもらえなかったり、ぼくたちとの会話が対立の火種になってしまったりすることはある程度覚悟しておかないと。ぼくたちのこれまでの作品を聴いてもらえればわかるとは思うんだけど。

そういうひとたちに限って、あなたたちの音楽を聴いていなかったりしますよね。あなたたちの音楽を聴けば、どんなことを考えていて、なにを否としているかは一目瞭然だと思うのですが。

AM:そのとおりだよ。そうなんだ。そこがいらつくけど、まあ、仕方ないね。

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たいせつなのは自分を取り巻く共同体と綿密な関係を築くことや、ひととつながることだと思う。そうしたもののたいせつさをぼくたちは繰り返し音楽をとおして伝えようとしているんだ。

では、少し新作の話を聞かせてください。“I Saw” が公開されたとき、バンドの声明には「なにもかもがうまく行かないことをエスタブリッシュメントと移民のせいにするパンフレット」「長らく死んでいた帝国の悪臭」といった表現が用いられていました。この曲の主人公はなかなか怖いことを言っていますが、彼はなにを恐れているのでしょう?

AM:「チェンジ(変化)」だね。変化や力関係を自分でコントロールするには、自分とはちがう考えのひとたちとおなじ土俵で闘わなければならないからね。

“I Saw” の主人公は「俺は勝ちたい」と歌っていますが、次の曲 “Drum” では「だれもが勝者になる必要はない」と歌われています。これはストーリーになっているのでしょうか?

AM:そうだね。勝ちたいと思う権利はあるけど、思うからといって実際に勝てるとは限らないから(笑)。世界のあり方にたいする理想は掲げていても、現実に直面して打ち砕かれてしまうこともある。そういう二面性を描いているんだ。なにを思おうが、なにを言おうがそれは自由だけど、♪You Can’t Always Get What You Want (※ザ・ローリング・ストーンズの曲)だよ(笑)。

(笑)。続く “Geronimo” とは、あの有名なネイティヴ・アメリカンの戦士のことでしょうか? 

AM:彼をベースにしているけど、彼自身というよりはむしろ彼のアティテュードについて歌っているんだ。敵と対峙する戦士の姿、銃口をつねに構えている姿勢、物事を判断し決断する力、アクションを起こす行動力といったものだね。飛び乗ったり飛び降りたり、自分の人生は自分でコントロールするというアティテュードそのもののことだよ。ネイティヴ・アメリカンの戦士として、植民地化や奴隷化の危機に晒された自分のコミュニティのために彼がしたことは小さなことかもしれないけど、すごいことだと思うから。自分たちもそうありたい、自分の居場所にとって、良き兄弟であり、父親であり、息子であり、伯父でありたい、何か決断を下さなければいけないときは、正しく行動したい。自分が愛する女性に喜びを与えられる存在になりたい。ともにいい時間を過ごしたい。人間関係のなかで、自分ができること、自分の役割を全うしたい。ぼくはそのために生きているし、そのために生まれてきたと思うから。そうした思いが地脈に流れている曲なんだ。

ヤング・ファーザーズの音楽には実験的な要素とポップな要素が同居しています。今回は以前のクラウトロック的な試みとは異なり、ストレートなポップネスが大きく出ていて、全体的にコーラスなどがゴスペル的な雰囲気を演出しています。このサウンドには自然に行きついたのでしょうか?

AM:そう思う。全体をとおしてぼくたちが表現したかったことは、コミュニティの雰囲気や共同体の持つ様相といったものなんだ。みんながユニゾンで歌ったり、レイヤーを重ねていくところに、そうしたものの要素が込められていると思う。どんどん要素を重ねて重ねて、極限まで重ねていった感じだね。ポップ・ミュージックのフォーマットでは、通常は多くの要素を削ぎ落としていくものだけど、今回のぼくたちは重ねて重ねて、とても密度の高いレイヤーに仕上げていったんだ。そこには再評価すべきものやサブカルチャー的な要素も含まれていると思うんだけど、ぼくたちがこのアルバムで描きたかったことは、世界で起こっていることや環境問題について、個人としてできること、それと共同体としてできることだと言えるだろうね。それに、コミュニティの感覚……個人個人のちがいをすべて包みこむような共同体。すべてのひとが自分らしくあることのできる共同体を表現したかった。これを聴いたひとが、最終的にはヒューマニティについて考えてくれたら嬉しいね。人間のあり方や、互いを認め合う寛容性のようなものに行きついてくれたら嬉しいとぼく個人は思っているんだ。

実際、ヤング・ファーザーズの音楽にはつねに喜びや祝祭性、楽しむことがあります。それを忘れないのはなぜですか?

AM:それはやっぱり、ぼくたちの音楽がヒューマニティ、人類のあり方や人間関係、ひとの情について歌っているからだろうね。ぼくたちは難しい局面や辛い経験もしていかなければいけない。でも、それは笑うことを忘れるという意味でも、人生をエンジョイできないという意味でも、人生の楽しみを知ることができないという意味でもないと思うんだ。さまざまな困難にぶち当たって、痛みやトラウマを感じてしまうかもしれないけど、それでも楽しむことはできるし、いい時間を過ごすこともできるんだ。人生のなかで、ときにはなにか乗り越えなければいけないこともあると思うけど、そんなときはひとと会話を交わしたり、どこかに出かけたり、散歩をして気分転換したりすることもできると思うしね。それが人生そのものだからさ。そうしたなかで、やっぱりたいせつなのは自分を取り巻く共同体と綿密な関係を築くことや、ひととつながることだと思う。そうしたもののたいせつさをぼくたちは繰り返し音楽をとおして伝えようとしているんだ。

8曲目の “Sink Or Swim” は疾走感のある曲ですが、「現状に泣きわめいても仕方がない そんなに深刻になる必要はない」というフレーズがまさに現代だからこそ重要に思えますよね。

AM:そのとおりだよ。もちろん、このフレーズで歌われているような心境に至るまでは、多くのことを乗り越えなければならないと思うし、だからこそ一度沈んでみる必要もあると思うんだ。深淵まで深く深く潜っていくことで、ことの真相を垣間見ることができるかもしれないし、そこをうまく泳ぎ切ることができたら、反対側の光のある方向から抜け出すことができるかもしれないから。もちろん、あえて自分から深みにはまっていく必要はないのかもしれない。表面を上手に泳いでいけばしのげることもあるからね。でも、深い場所に行けば行くほど見えてくることもあるし。深みを知ることで心が軽くなることもあるだろう。この曲で言いたかったことは、その決断は自分で下せるということさ。自分の人生の主人は自分だし、舵取りも自分自身なんだからね。

そのことばにすごく勇気づけられます。あなたたち自身はついつい暗く悲観的になってしまうことはありますか? 

AM:もちろん、そういう悲観的な精神状態というのも、楽観的な考え方の一部を構成していると思うから。ある状況下において、自ら決断を下すということは、その決断に責任を持たなければならないということだからね。ぼくたちの決断は、これまでの人生で経験したことに基づいているけど、そのことに責任を持つ必要があるし、自分自身にたいしても責任を持つ必要があるから。それにもちろん、自分と関わるすべてのひとたちにたいする責任もあると思うしね。自分が選んだことや決めたこと、それに自分がやったことの責任をほかのだれかに押しつけるようなことはしたくない。よりいい人生を送って、より大きな成功を収めるためには、自分ですべてのことに責任を持つことがたいせつだし、そのためには自分自身を律することもたいせつだと思うんだ。ジムでからだを鍛えるのでもいいし、ランニングをするのでもいいし、歩くのでもいいし、サイクリングでもいいし、本を読むことでも、なにかを書くことでもいい。自分の精神状態を健康に保つことがとても大事なんじゃないかと思うな。それが自分らしくあるための、責任のひとつでもあると思うよ。

あなた自身は、具体的にどうやって精神状態を保っているんですか?

AM:ぼく個人としてはジムでからだを鍛えるのが性に合っていると思うね。それと、家族と会話を交わすこと。理解してもらおう、賛成してもらおうと思って話をするわけじゃないけど、自分の考えをひとに話して意見を交わすことで、明確になることもたくさんあるからさ。散らかっていたものをまとめるのに役立つし、それもぼくらしくあるために責任を持つべきことのひとつだね。あとは、エクササイズをするのも好きだよ。頭がスッキリして物事を明確に考えられるようになるからね。とにかく、自分を心身ともに健康に保つことが大切だと思う。ライスをたくさん食べるでもいいし(笑)。

繊細であれ、ということさ。「傷つきやすさ」を弱点ととらえるひとも多いけど、ぼくは逆に強みになるんじゃないかと思っていて。傷つくということは、いろいろなことにたいしてオープンである、ということでもあると思うんだよね。

わかりました。最後の曲 “Be Your Lady” には「俺はお前の女になりたいんだ 俺が男だということを忘れて」という一節があります。これは近年のジェンダーの議論やアイデンティティの問題を踏まえているのでしょうか?

AM:そうとらえることもできるよね。この曲で描きたかったたいせつなことは、「繊細でいること」なんだ。繊細であれ、ということさ。「傷つきやすさ」を弱点ととらえるひとも多いけど、ぼくは逆に強みになるんじゃないかと思っていて。傷つくということは、いろいろなことにたいしてオープンである、ということでもあると思うんだよね。傷ついたり、精神的に落ちこんだり、なんとかそれを乗り切ることで強くなっていけるんだから。胸の痛みや悲痛な思いを経験するということは、そのひとがあらゆるものにたいして繊細で、感受性が豊かだということだ。テレビを観ていたって、本を読んでいたってなにかを感じることのできる感情の豊かさというものは、さまざまなことにたいしてオープンで受け入れる姿勢ができているということ。世のなかには男性的、女性的という感覚が存在していて、男らしくあることと繊細でいることは対極にあるように捉えられがちだけど、そうじゃない。そういう既成概念を取り払うべきだという思いもそこにはあるのさ。

たしかに、傷つきやすくて繊細、というのは弱点のように感じてしまいますが、その考え方は興味深いですね。

AM:そうなんだよ。けして弱点じゃないんだ。なににたいしても感受性豊かに、オープンな気持ちで受けいれられるということだし、行間を読む力も空間把握能力もあるというだと思うんだよね。そこにある空気やエネルギーの流れも読みとることができる。そういうことができるひとはとても繊細だし、それは大きな強みだと思うんだ。

それが最後にカネの話で終わるのが印象に残りました。これは皮肉ですよね?

AM:そうかもしれないね(笑)。

全体をとおして、サウンド的には祝祭感のあるアルバムだと思うのですが、タイトルに『Heavy Heavy』とつけたのはなぜですか?

AM:これは、ぼくたちがレコーディングに際して踏んだプロセスに関係しているんだ。今回のアルバム作りは、すべて自分たちで手掛けたから、他のどの作品よりも時間が掛かったんだけど。外部のプロデューサーに参加して貰うこともなかったし、全部自分たちだけで作ったんだ。だから、自分たちにとってすごく重みのあるものになった、という意味が込められているんだよ。それに、「Heavy」1語だけだと、重量感だけが際立ってしまうけど、2回繰り返すことで、どこか軽さも出ると思ったんだよね。そうすることで、クリエイティヴな部分や作ることの楽しさ、というものもプラスすることが出来たんじゃないかな。忍耐と喜びと、進化の過程と、そういうものがすべて相まってペースの速いサウンドになっていったのかもね。悲しみと喜び、ほろ苦さと甘さの調和を試みた作品になっていると思う。

今回のアルバム制作はどのようなプロセスを踏みましたか? 最初に、これをやる、これはやらない、というような約束事やルールのようなものはあったのでしょうか? サウンド面でもリリック面でも良いのですが。

AM:そういうルールはまったくなかったね。むしろ、どんなことにたいしてもオープンであるように心掛けた感じだね。スタジオに集まって、セッティングして、とにかくやってみよう、という感じでレコーディングして一発で上手くいったものも多いし。たとえばぼくが書いた曲でも、他のメンバーがもっといいアイデアを持っていたら、こだわらずにどんどん受けいれて、結果的にずっとよくなった曲もあるし、その逆もある。その躍動感のようなものを大事にしたかったから、誰かが咳をしたり、誰かがミスをしたりしても、敢えてそれを残したんだ。普通はそういう部分を細かくカットしていくものだけど、それこそがぼくたちの作品そのものだと思ったからね。だから、ルールのようなものは一切なかったよ。もしあるとすれば、これまでに耳にしたことのないようなものをやろうっていうこと。もし何かやりたいことがあったら、どこかで聴いたことのないものになるよう心掛けたということかもしれないね。

では、2月から3月までヨーロッパとUKでのツアーが控えていますが、その後やってみたいことはなんですか?

AM:ツアーが終わったら、一旦少し休んで、それからまた集まって夏のフェスティヴァルに備えることになるだろうね。年内には、どこかに休暇に出掛けたいと思ってるけど。友だちに会いにどこかに行くのでもいいし。普通の暮らしがしたいね。友だちに会ったりとかさ。

では最後に、もしこのアルバムのリミックス盤をつくるとしたら、依頼してみたいアーティストを教えてください。

AM:いい質問だね。そうだな……家族を招いてバッキング・ヴォーカルを録音してみたいかな(笑)。それをリミックス・ヴァージョンとして発表してみたいね(笑)。

それは楽しそうですね(笑)。ゴスペルっぽい感じですかね。

AM:そうそう。そんな感じだよ。

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