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Young Fathers

DooWappHip HopKrautrockPopR&B

Young Fathers

Cocoa Sugar

Ninja Tune/ビート

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柴崎祐二、野田 努   Mar 14,2018 UP
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野田努

 アートワークに描かれている歪められた顔は、ちょっとだけPiLの『メタルボックス(セカンド・エディション)』のジャケを思い出させる。変型した表情は、変型させられた内面を表しているに違いない。なにせこのご時世だ。しかしながら……ヤング・ファーザーにとっての肝はまずはサウンドだろう。いかに人と違った/変わった/独特なサウンドを創出して、ポップにまとめあげることができるか。

 グラスゴーのエジンバラで結成されたこのグループは、その新作を聴いて思うに、つきなみな言い方をすれば、極端だがじつに“UKらしい”。広範囲にわたって、他からいろんな要素を柔軟に吸収し、そして活力を得ること。USブラック・ミュージックのエネルギーに共振しながら、模倣ではなく、その組み合わせの妙でオリジナルなものとして再編成させること。言うなれば結合術に長けていること。そしてそれが、社会の上層部からは見えない、大衆の気持ちの深いところにリンクすること。
ヤング・ファーザーズにとって3枚目になる『ココア・シュガー』は、基本的には前作の延長にある。要するに、ヒップホップ、R&B、ゴスペル、ドゥーワップのクラウトロック的(Canのような)プリコラージュがときにクラウトロック的(Neu!のような)リズムで展開される。2曲目“Fee Fi”の壊れたコラージュはクラウトロック史においてもっともつかみどころのないグループ、Fasutのようでさえある。
ヤング・ファーザーズが抱えるジレンマとは、これまたつきなみな言い方になるが、クラウトロック的ポップの遊び心ないしは実験精神を、ヒップホップとR&B(という階級差を越えて人気をほこるポップ・ミュージック)で育った世代の耳にまずはどう響かせるのかということだろう。彼/彼女らの耳をぐいっと広げ、感性をぱかっと開かせて、そしてきゃっほーと盛り上げる。そのことを彼らはうまくやっている。
『T2 トレインスポッティング』(この映画に関しては紙エレvol.21にコラムを書いた)を観てヤング・ファーザーズの音楽が思いのほか場面にハマっていることに、ぼくはちょっと感動した。いかにも90年代的なアンダーワールドの“ボーン・スリッピー”に対して、ヤング・ファーザーズの曲はじつにアクチュアルな響きを有している。当たり前のことだが、彼らの曲は今日のムードを反映しているのだ。今日性ということなら、Burialのサンプル・アートでも、あるいはアメリカ人のチーノ・アモービのサウンド・コラージュでも十二分に表現できると思うが、しかし彼らの音楽がコメディタッチの映画に向いているとはとてもじゃないが思えない。

 そういう意味で、ヤング・ファーザーズはインタヴューでも発言しているように、たしかにポップであることにこだわっている。彼らの音楽を耳障りだと思う人でも、さすがに“In My View”は受け入れるだろう。バラード調で、何気に教会音楽のフリをしながらゆっくりと爆走する“Lord”にも笑うかもしれない(歌詞を読むと、宗教は本作において重要な主題となっているようだ。まあ、そこはスコットランドであることが大きく関わっているのだろう)。
サウンド面に絞って言えば、全曲に渡って言えることだが、前作以上に小技が凝っているし、ヴァラエティに富んでいる。“Toy”はNYのポストパンク・バンド、スーサイドの安っぽいシンセ・ロックをソウル・グループがカヴァーしたかのようで、4/4キックドラムをもって展開する“Wire”は苦痛と絶頂のハード・テクノである──そしてこのようなペダンティックな解説をもつ音楽は、たいていの場合、ポップからは遠ざかるものである。
ゆえにここがヤング・ファーザーズの戦いだ。ポップのなかに実験性を持ち込むことは矛盾にはならない。レトロに惑溺するばかりの、実験をおそれる文化は衰退するだろう。少なくともヤング・ファーザーズはポップ・ミュージックはまだ拡張しうると信じているし、その必要性を強く感じている。そしていつの時代も若い人たちは、尖ったものに反応する。しかし『ココア・シュガー』は、過去2枚よりもさらにポップになった。オールド・ファーザーも一緒に楽しませてくれ。

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