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interview with Young Fathers

interview with Young Fathers

ポップ・ソングがいちばん難しい

──ヤング・ファーザーズ、インタヴュー

取材・文:小林拓音    質問作成:小林拓音+野田努 通訳:染谷和美 Photo by ROB WALBERS   Mar 08,2018 UP

Young Fathers
Cocoa Sugar

Ninja Tune / ビート

PopElectronicHip Hop

Amazon Tower HMV iTunes

 たしかに多様であることはたいせつだ。排他的だったり差別的だったりする世のなかが生きづらいのは間違いない。けれど、洪水のようにPCが猛威をふるっている昨今、多様性の賞揚それ自体がひとつの体制と化しつつあるようにも見える。企業も広告に気を配るのにひと苦労だろう。彼らは売らなければならない。資本はなんでも利用する。多様な世界、素晴らしい。そんな世界にふさわしいうちの商品、いかがでしょう。
 そのような風潮のなか、サウンドもメンバーの背景も多様なヤング・ファーザーズの新作がリリースされたことは興味深い。アンダーグラウンド精神溢れる〈Anticon〉からミックステープを発表し、〈Big Dada〉から放った前々作『Dead』でマーキュリー・プライズを受賞、前作『White Men Are Black Men Too』で大きくポップに振り切れながらも挑発的な問いを投げかけていた彼らは、いま、バランスをとることに苦心している。
 無自覚ではいけないのだろうけど、かといってPCマシマシなムードには胃がもたれる――似たようなことは音の扱い方にも言えて、大衆迎合的でありすぎてもいけないし、難解でありすぎてもいけない。そのような葛藤は、サブ(=従属的)カルチャーであると同時にカウンター(=対抗的)カルチャーでもあるポップ・ミュージックに背負わされた、永遠の宿命と言っていいだろう。ヤング・ファーザーズはその両岸でバランスをとるのが抜群にうまい。たとえば、今回のアルバムの冒頭を飾る"See How"から2曲め"Fee Fi"の馴染みやすくかつエッジイな音選びを経て、アノーニのようなヴォーカルがアフリカン・パーカッションを連れてくる3曲め"In My View"へと至る流れには、多様性が体制となったこの時代をサーフする巧みなバランス感覚が表れ出ている。
 アルバムごとに変化を続けている彼らではあるが、ヤング・ファーザーズというバンドの芯に揺らぎは見られない。彼らはいまもむかしも変わらず「ポップ・ミュージックとは何か」という問いのなかでもがき続けている。そのエンドレスな格闘のもっとも新しい成果報告が、この『Cocoa Sugar』なんだろうと思う。

ポップ・ソングはバランスがすごく大事で、聴き覚えがある部分と、聴いたことのない、おもしろくてもっと聴きたいと思うような部分のバランスが取れているのが良いポップ・ソングだと思うんだよね。

今回の新作は、前作とはまた異なるアルバムに仕上がっています。制作するうえで方向性やテーマのようなものはあったのでしょうか?

アロイシャス・マサコイ(Alloysius Massaquoi、以下AM):前作からの継続だとは思っているんだけど、同じ方向性でわりとシンプルにしたところはあるかな。アレンジに関しても一貫性を持たせるというか。僕らはポップ・ソングを作るという難業に挑んでいる。ポップ・ソングってじつは作るのがいちばん難しいタイプの音楽だと思っていて、重要なのはバランスのとり方なんだよね。すべての正しいものを正しいところに収めていかないといけない。そうしないといいものができない。それがポップ・ソングだからね。その意味で前作でやったことをさらに推し進めつつも、新たなカラーを持ち込んだ。明るいカラーだね。全体としては前作よりも大人になったアルバムと言えるかもしれない。その理由は自信がすごくついたこと。自信があるからやりたいことをやりたいようにできるようになった。やりたいことを自由にオープンに表現するためには、すごく自信が必要なんだと思う。クリエイターとしてそれを得ることができたから、さらに確信を持って作ることができたんじゃないかな。

グラハム・"G"・ヘイスティングス(Graham 'G' Hastings、以下GH):まったくいま言ったとおりなんだけど、いろんなものを押し込めるというよりは、厳選して作り上げた音楽かもしれない。「曲」という認識で作っているから、たとえばブリッジがあってヴァースがあってコーラスがあるというような構成の部分と、音的にもリヴァーブとかのエフェクトに頼るんじゃなくて、ドライに音を作って曲を浮き彫りにするということは考えたかな。

ケイアス・バンコール(Kayus Bankole、以下KB):僕らは作品を作るたびに毎回違うものを作っているんだよね。それは、自分たちに挑みつつ安全圏からつねに踏み出していこうという姿勢の点では同じなんだけれど、結果としてできるものが変わっていくということだね。色合いが増えたとか、明るさについての話が出てきたけど、それは音そのものというよりも感覚的なものかなあ。フィーリング的により明るいものになっているね。僕らはもともとダークなバンドってわけじゃないんだけど、今回はより明るいものを求めていたってのはあるのかもしれない。他のメンバーも言ったとおり、曲の構成をしっかりするということや、内容やトピック、個人的なことに関してもなんでも、わかりやすく伝えやすくすることを考えながら曲として仕上げていった。

AM:ポップ・ソングはバランスがすごく大事で、聴き覚えがある部分と、聴いたことのない、おもしろくてもっと聴きたいと思うような部分のバランスが取れているのが良いポップ・ソングだと思うんだよね。そこは目指したな。

今回のアルバムを制作するにあたって影響を受けた音楽、または映画や本などがありましたら教えてください。

GH:とくに影響源はないよ。ファースト・アルバムもそうだったけど、自分たちは何かを聴いて「これをマネしてやろう」なんて思うことはいっさいないし、とくに今回のアルバムはそれが顕著だったんだ。音楽的に「このサウンドで」と参考にしたものはないね。とにかくスタジオに入って、さあ作ってやろうという勢いで作ったアルバムだったからね。

KB:あらかじめ自分たちの頭のなかに、こんなことをやりたいというイメージがあったから、それをスタジオに入ってそのまま形にすることができたのはすごく良かったと思う。影響源となるものをこちらから求めなくても、自分たちのなかに蓄積があったってこと。もちろん、そのままの形でアルバムになったわけではないけど、自分たちの気持ちに素直にやった結果、新たな発見があったりもして、そうしたなかでできあがったアルバムかな。

AM:ある意味自分たちで勝手にストーリーを作っちゃったようなアルバムだと思っていて、よそから引っ張ってきたと言うより、フェイクもリアルも入り混じった僕たちの作ったストーリーという感じのアルバムなんだよね。

KB:(前作から)2年という月日があって、もちろん音楽は聴いていたんだけど、それまでに自分たちが送ってきた生活や、日常的なことから作り上げられた自分というものが、今回は自然な形で表れているんじゃないかな。新しいサウンドとか新しい方向性をあえて模索しなくても、自分たちが送ってきたふつうの生活が新しいものになってアルバムに出ていると思う。だからここで新しいスタートを切れたような気がするんだよ。(2011年の)『Tape One』もそういう性格のアルバムで、それまでの自分たちの生活から生み出されたものだった。それ以降の作品は、それを踏まえて作ってきたところがあるけど、今回はいったんそれをチャラにして、まったく新しいチャプターが開けたような感覚のあるアルバムなんだ。

GH:だいたい僕らは飽きっぽいからさ。人と一度何かをやるとすぐ飽きちゃうんだよ。だから前と同じことができないというのもあるんだけど、そういう意味でもこの年月のなかで培ってきたものがおのずといい形で出たアルバムなのかなと思う。

KB:「新しいチャプター」という言い方はぴったりだね。他の音楽をまったく聴いていないなんて言うつもりはないし、ふだんからヘッドフォンを持ち歩いて聴いたりはしているんだけど、自分たちに染み込んでいったものが自然と出てきているんだろうな。だけど、あくまで作るという過程、自分たちを表現するという過程においては、その聴いていたものに立ち返ってそれを紐解くというようなことはしていない。自分たちのなかにすでにあるものを自問自答するような形で、自分たちにチャレンジするような、自分たちのなかで議論をしながら作っていったものなんだ。じっさいの作業に入ったら他のものはぜんぜん聴かないね。その部屋のなかで自分たちだけで作ったものなんだよ。

「新しいチャプター」という話が出ましたが、今回はリリース元も前作までの〈Big Dada〉から、その親レーベルの〈Ninja Tune〉へと変わりましたよね。

GH:新しいスタイルになったことで上に上がれたわけだけど、どうかな(笑)。これで満足してもらえるといいね(笑)。「新しいチャプター」だから新しいスタッフと組んでみて、さあどうなるかな、ってところだな。でもフレッシュなスタートを切れたのはよかったよ(笑)。いまのところは順調だね(笑)。

KB:ブルシット! ブルシットだね! はははは!

今回マッシヴ・アタックとともに来日を果たしましたが、あなたたちにとって彼らはどのような存在ですか?

GH:いい人たちだね(笑)。彼らはオリジナル性のあるバンドだった。何もないところからああいう独自のサウンドを作り上げたという意味で、僕らもそうしていきたいと思わせてくれる存在だね。そういう人たちと話ができるのはすごくいい経験だったと思うよ。

AM:しかもそれで成功しているんだもんな。成功例として真似たい存在だとも言えるかもしれない。彼らは一貫性を持ち続けて、あれだけ長く活動して成功しているからね。

GH:あれだけ独自性を持ちながら成功を収めるというのは、じっさいすごく難しいことだと思う。しかもそれを続けているんだからね。それを見ていると希望がわくというか、拘ってやっていってもいいんだなと思える。レコードを売るために、みんなからああしろ、こうしろって言われるようなことをやっていかなくても、自分たちのやりたいことに拘っていくことで成功できる可能性もあるんだなと思わせてくれるバンドだと思うよ。

子どもの頃は、「エディンバラには何もないから外に出ていきたい」と感じていたね。それが逆にエディンバラから受けたいちばんの影響だったような気がするよ。

『T2 トレインスポッティング』ではヤング・ファーザーズの曲が使われていましたが、それはダニー・ボイルから直接オファーがあったんですか?

GH:そうだね。その話をもらって撮影現場まで行ったんだけど、彼は映画ごとに「この音楽を聴きながら作る」というタイプの人だったんだ。あのときはたまたま僕らの音源をずいぶん聴いていたみたいで、それで僕らを信頼して任せてくれたんだよね。すごくいい人だったよ。

オリジナルのほうの『トレインスポッティング』を観たときはどのような感想を持ちましたか? 世代的にリアルタイムではないですよね。

AM:時代の感じが出ている作品だと思う。いまとなっては名作だもんな。当時はヘロインなんかのドラッグ、スコットランドのネガティヴな部分が出ているって文句を言っていた人も多かったみたいだけどね。そのパート2に自分が参加しているんだなという感覚はあるよ。

GH:僕は好きだったよ。

AM:『シャロウ・グレイブ』とか、その前のやつも好きだったな。あと、あの作品はなんだっけ? そうだ、(アーヴィン・ウェルシュ原作の)『アシッド・ハウス』(監督はポール・マクギガン)とかも好きで観ていたよ。

『T2』を観ていてもっとも辛くなった場面はどこでしょう?

AM:最後のほうで僕らの曲が流れてくるところはすごく好きだったけどな。観ていて辛いというか、ふたりの友だち同士が殺し合って首を絞めるシーンとか、そこへ至るまでの緊張感はあったけど、でもそれが嫌だというわけではなくて、そこで自分たちの音楽がサウンドスケープ的に流れてくる感じは好きだったな。

『T2』で使用された"Only God Knows"は今回のアルバムには収録されていませんね。

GH:あれは映画用の曲なんだ。ダニーからオリジナル曲を頼まれて、それで書いた曲だからアルバムには入れていないんだ。

『T2』ではプロテスタントの飲み会に侵入して「ノーモア・カトリック」と合唱するシーンがありますが、そういった光景はいまでもエディンバラでは日常的なのでしょうか?

KB:そのシーンはあんまり印象に残ってないな(笑)。

GH:そういう宗教的なところよりもむしろ、フーリガンの対立のほうが印象に残っているね。まあ、そういうのはエディンバラよりもグラスゴーのほうが色濃いとは思うけど。

AM:あれはどちらかというとお笑いのシーンなんだよ。ああいう人たちの姿から見てとれる滑稽さだとか、「ノーモア・カトリック」って叫んでいるうちにお金を取られちゃったりする滑稽さだとかを描いているんだと思う。

その場面には何か政治性みたいなものがあると思いますか?

GH:笑えるって思えるのは自分たちの地元だからかもしれないけどね。僕らが子どもの頃は、サッカーを観に行けばチーム同士のライヴァル意識からああいうことがよく起こるものだったし、サッカーの世界における互いに対する根深い憎しみというのは、もう笑っちゃうくらいなんだよ。それがああいう形で映画のなかで表現されているということが僕らからすればすごくおかしい。というのも真実だからね。真実だからこそ笑っちゃうというか。もちろん問題としては深刻な部分もあるのかもしれないけど、僕らからするとああいう形で不思議なエディンバラ的なものが描かれているというのはおもしろいし、それを他の世界の人たちが見たらどうなのかなっていうのは興味のあるところだね。

KB:もちろん笑ってしまうようなこともいいことばかりじゃないけどね。ただあの映画のなかでは、あのシーンの役割として、ちょっと笑いを含む滑稽さが出ていたと思う。

スコットランドではEU離脱をめぐる国民投票で60%以上が残留を支持したり、ニコラ・スタージョンの独立路線など、政治的なことがいろいろと起こっていますが、ヤング・ファーザーズの新作にもそういったことが影響を及ぼしたりしているのでしょうか?

GH:ふつうに曲を書いているだけだよ。

AM:もしかしたら逆の意味での影響は出ているかもしれない。そういう状況があるからこそ自分たちがものを作ることに幸せを見出して、作っていて楽しいと思えるとか、逆説的な意味での影響はあるかもね。でも起こっていること自体が音楽に出ているかというとそんなことはない。べつに聴いていて鬱屈するようなことは歌っていないし、俺に言わせれば希望を歌っているものが多いと思う。ダークな曲を書いている人がダークな状況にいるとは限らないのが音楽の世界だと思うんだ。自分たちが書いている曲の内容も、たとえば自分のことだけじゃなくて、生活のなかで出会った誰かのことをキャラクターとして描いていることもあるし、まったくの架空のことを書いていることもあるし。それができるのが創作の良さだと思っている。だからいまそういう現状があるということをそのまま書くのではなくて、そのなかで暮らしている人たちの姿を曲にしているという感じかな。

GH:サウンド的には聴いていてダークな感じはしないと思うんだ。僕が個人的にいいと思う音楽は、歌詞をじっくり読むとそういったダークなテーマを扱っているけれども、仕上がりとして曲を聴いたときには踊ってしまうような、笑顔になってしまうような曲だから、今回の曲たちもそういう仕上がりになっていると思う。リズム的にはアップなんだけど、歌っていることの概念的な部分ではもうちょっと深いところを突いているような曲になっているんじゃないかな。それも滅入ってしまうようなことではなくて。さっきからバランスという話が出ているけど、そういう意味でいろんな要素を取り合わせつつ、最終的にはポジティヴな感覚を伝えたいということだね。

今回質問を用意したもうひとりは、『T2』で描かれるエディンバラにすごく笑ったそうで、彼の子どもは『ハリー・ポッター』で描かれるエディンバラに憧れているそうなんです。ヤング・ファーザーズの音楽もエディンバラの土壌と関係していますか?

KB:俺も笑ったよ。それはいいことだと思う。

GH:たぶん一般的に描かれるエディンバラのイメージというのは、きれいで住みやすい街みたいな感じなんだろうけど、そういう表面的なところからは見えない、でも育った人なら知っているみたいな部分があの映画には描かれていて、しかもそれが映画のスクリーンにボンと出てくるというのが地元民からするとすごく笑えるんだ。いかにも「らしいな」という部分、みんな知らないだろうけど僕らは知っているからこそ笑えるという感覚があって、僕らからすればそれがあの映画のおもしろさだったんだ。たしかにエディンバラには二面性があって、経済的な部分ではある程度豊かであるという良い面がある一方で、ドラッグの問題なんかの悪い面もあって、その二面性のふだんは表に出てこない裏側のほうにハイライトを当てたというのがあの映画のおもしろさなんだよね。

AM:『ハリー・ポッター』は好きじゃないからな。観に行ってもいないし。

GH:あれは完全にファンタジーだから実感はないね(笑)。美しい古い建物がある街だから、そういう環境がああいうファンタジーを生むということは理解できるけど、若いやつらが夢中になれるようなカルチャー的なことで言えば、僕らが育ってきた時代はほんとうに不毛だったよ。改善されてはいるけど、いまだにその名残はあるね。だからアーティストがエディンバラに居場所を見つけるのはすごく難しくて、芸術の世界で何か成功を収めたいと思ったら「ここに留まっていたらダメだ」という感じがいまだにあると思うんだ。

KB:もちろんエディンバラにはエディンバラの文化があるよ。外から入ってきた人がそこに馴染むのは難しいし、そこに居場所を求めるのも難しいから内向きになっていくんだろうな。最近は多少は良くなってきているけどね。

ヤング・ファーザーズの音楽にはそういったエディンバラらしさが出ていると思いますか?

GH:それはとくにないと思う。そりゃふだんから暮らしている街だから、何かしら自分たちのなかに入り込んでいるエディンバラらしさというのはあるのかもしれないけど。子どもの頃は、「エディンバラには何もないから外に出ていきたい」と感じていたね。それが逆にエディンバラから受けたいちばんの影響だったような気がするよ。他に何かを求めるとか、あるいは自分たちの空想の世界に逃げ込むといったことが、エディンバラが僕らに与えた最大の影響かもしれない。

AM:僕らが若い頃はエディンバラには本当に何もなくて、ユース・クラブっていう若い子が集まれる場所が2ヶ所あったくらいで、外へ出ていきたかった。あの街が僕らに与えた影響は、他の国へと目が向いたり、あるいは自分の世界に籠もってしまったりするようなエスケイピズムだった。もちろん、暮らしていくなかで自分たちに染み込んできた街の要素というのはいくつかあると思うけど。

GH:たしかにあの街は僕らにインスピレイションを与えているよ。あの街が僕らをインスパイアして何かをやらせたというよりは、そこに何もないという現実が僕らに他に何かを求めるインスピレイションをくれたということになるのかな。

取材・文:小林拓音(2018年3月08日)

Profile

小林拓音/Takune Kobayashi
1984年生まれ、東京在住。執筆と編集。寄稿した本に『IDM definitive 1958 – 2018』など。編集した本に『別冊ele-king 初音ミク10周年』など。

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