「AY」と一致するもの

Burial - ele-king

 昨年11月末、リリース前のシングル「Young Death / Nightmarket」が予定よりも早く発売されてしまうというアクシデントに見舞われたブリアル。先月のレコード・ストア・デイではゴールディの限定シングルにリミックスで参加するなど、ジャングル・リヴァイヴァルとも同調する動きを見せていた彼が、また唐突に新たなトラックを発表した。5月19日にBandcampにて先行リリースされた「Subtemple」は、タイトル曲“Subtemple”と“Beachfires”の2曲入りで、10インチ・ヴァージョンが5月26日に発売される。レーベルは〈ハイパーダブ〉。どちらのトラックもビートレスで、ブリアル流ダーク・アンビエントが展開されている。ううむ、はたして彼はいま何を考えているのだろうか……



https://burial.bandcamp.com/album/subtemple

Wayne Snow - ele-king

 ここのところの欧州には、派手な話題を振りまくことはないものの、昔ながらの堅実なディープ・ハウスやビートダウン・ハウスをリリースする良質なレーベルがいくつかある。UKではすでにレーベル歴も長い〈エグロ〉とサブ・レーベルの〈ホー・テップ〉がその筆頭に挙げられ、アル・ドブソン・ジュニア、カオス・イン・ザ・CBD、カマール・ウィリアムスことヘンリー・ウー、ジョーダン・ラカイの変名のダン・キーらの作品をリリースする〈リズム・セクション・インターナショナル〉が近年の最注目レーベルと言えるだろう。ドイツにはマックス・グレーフとグレン・アストロの運営する〈マネー・セックス〉があり、デンマークにはそのマックス・グレーフとグレン・アストロ、ヘンリー・ウーなども作品をリリースする〈ターテレット〉がある。この〈ターテレット〉からデビュー・アルバム『フリーダムTV』をリリースしたウェイン・スノウは、本名をケシエナ・ウコチョヴバラといい、ナイジェリア出身のシンガー・ソングライターである。ニューヨーク、ロンドン、シドニーなど世界中でパフォーマンスをおこなっており、2014年からベルリンを拠点に活動している。同じベルリンのマックス・グレーフが、〈ターテレット〉からリリースした『リヴァーズ・オブ・ザ・レッド・プラネット』(2014年)にヴォーカリストとして参加。それによって名前を知られるようになるとともに、自身も〈ターテレット〉から「レッド・ランナー」、「ロージー」という2枚のシングルEPをリリース。そして、マックス・グレーフをプロデューサーに迎えた『フリーダムTV』をリリースするという流れだ。

 マックス・グレーフがジャズやフュージョン、ブギーといった要素を取り入れたディープ・ハウスを得意とするだけあり、『フリーダムTV』の基軸はそうしたサウンドを土台に、ウェイン・スノウがソウルフルなヴォーカルを披露する作品集となっている。ウェイン・スノウはナイジェリア出身ということで、土着的でアフリカ色の強い歌声かと思いきや、実際は都会的に洗練されたもの。むしろアメリカのR&Bシンガーに多いタイプで、ディアンジェロ、ドウェレ、エリック・ロバーソンなどが思い浮かぶ。アフリカをルーツとするシンガー・ソングライターということでは、セオ・パリッシュのプロデュースで「フラワーズ」を発表したガーナ系イギリス人のアンドリュー・アショングがいるが、比較的彼に近いタイプのアーティストとなるだろう。そんなウェイン・スノウの歌声が最大限に生かされたディープ・ハウスとして、本作では“フリーダムR.I.P.”が挙げられる。2015年に他界した人権解放運動に尽力したジンバブエの女性詩人のフリーダム・ンヤムバヤに捧げた曲で、エレピをフィーチャーしたそのジャジーなサウンドは、かつてのブレイズやミスター・フィンガーズの全盛期を彷彿とさせるもの。ゴスペルを基盤とするウェイン・スノウの歌は、ンヤムバヤの詩の一説を引用して自由を説いている。“ナッシング・ロング”はジョージ・デュークの“ブラジリアン・ラヴ・アフェア”を彷彿とさせるベース・ラインを用い、マックス・グレーフのスペイシーなフュージョン感全開のナンバー。こうした作品ではウェイン・スノウの開放感溢れる歌が光る。“レッド・ランナー”はブギー調のディープ・ハウスで、“ドランク”はビートダウン系となるだろう。一方、“ザ・リズム”はエレクトロな要素の強いブロークンビーツ系で、ここではオールド・スクールなラップ調のヴォーカルを披露するなど、多彩なところを見せている。そして、アブストラクトなムードの“フォール”や“クーラー”、ダウンテンポ系の“スティル・イン・ザ・シェル”では、実験的なR&Bシンガーとしての顔を見せる。このあたりはかつてのスペイセックが得意としていたようなサウンドだ。“ロージー”もそうで、Jディラ的なフィーリングが感じられる。つまり、全体としてはJディラからセオ・パリッシュ、ムーディーマンらを繋いだデトロイト勢の影響が色濃く感じられるアルバムと言えるだろう。

Children Of Alice - ele-king

 いつまでも忘れられない人がいる。でももう二度とその人に会うことはできない。なぜなら、その人は死んでしまったから。
 大切な人を失ったとき、僕たちはとても奇妙な行動に出る。亡くなってしまった彼や彼女のことを、僕たちはいつまでも覚えていようと努力する。でも、なんで僕たちはそんな不思議なことをしてしまうのだろう? べつに試験があるわけでもなければ面接があるわけでもない。死んでしまった人のことをきれいさっぱり忘れてしまったところで、日常生活にはなんの支障もきたさない。なのに、どうして僕たちは死者のことを思い出してしまうのだろう?
 いつまでも君を忘れない。君はいつまでも僕のなかで生き続ける。そして君は永遠になる――Jポップならきっとそう歌うだろう。でも、本当にそうすることが良いことなんだろうか? それって、永遠に喪が明けないってことじゃない? それはつまり、死んでしまったはずの君を死んでいないと見做すことであり、要するに「死体蹴り」である。死者に対してそれ以上に暴力的な行為があるだろうか?
 思い出は、冒瀆である。じゃあ、すでに彼岸へと旅立ってしまった者に対して、いまだ此岸に留まらざるをえない者たちが為すべき最善のことって何だろう。死者に対して、愚かにも生き残ってしまった者たちが為しうる最良のことって何だろう。いずれは同じように死んでいく者たちが、先に存在しなくなってしまった者たちの、その「存在しなささ」を最大限に尊重する方法って何だろう。
 それは、忘れることだ。ちゃんと、忘れてあげることだ。

 トリッシュ・キーナンが亡くなってから6年が経つ。チルドレン・オブ・アリスは、かつてブロードキャストで彼女の相棒を務めていたジェイムス・カーギルが、同じく元ブロードキャストのロジ・スティーヴンスおよびザ・フォーカス・グループのジュリアン・ハウスとともに、2013年に開始したプロジェクトである。「チルドレン・オブ・アリス」というバンド名は、キーナンが好んだ小説『不思議の国のアリス』から採られており、そこには彼女へのトリビュートの念が込められている。感傷的なネーミングだが、まさにこのバンド名こそがかれらの音楽を決定づけてしまっていると言っていいだろう。「アリスの子どもたち」――それはキーナンをはじめとするキャロルの読者たちのことであり、そしてキーナンに先立たれたメンバー3人のことでもある。チルドレン・オブ・アリスは、そのはじまりからすでに死者にとり憑かれている。おそらくカーギルも他のメンバーも、キーナンのことをちゃんと忘れられていないのではないか。
 当たり前の話ではあるが、かれらの記念すべきこのデビュー・アルバムに、キーナンは参加していない。その不在はまずサウンドに表れ出ている。

 1曲めの“The Harbinger Of Spring”は20分を超える大作で、フォークロアを探求するレーベル〈Folklore Tapes〉のために2013年に作られた曲である。そこではさまざまな民俗的音塊が展示されていて、ミュジーク・コンクレートからの影響を聴き取ることもできるが、件のバンド名から連想するなら、これは穴に落っこちてしまったアリスが遭遇する摩訶不思議な世界、ということになるのかもしれない。しかし他方でこの曲はジョン・ウィンダムのSF小説『呪われた村』からも影響を受けているそうで、となれば次々と転がってくるそのフォーク・サウンドを、宇宙人(=西洋や近代や科学)によって侵略される村(=民俗的なもの)のメタファーとして捉えることもできる。が、曲の仕上がり自体はけっして重々しいものではなく、それぞれの音の連なりを単にフェティシズムの対象として消費することも可能だ。
 他の3つのトラックも〈Folklore Tapes〉のために2013年から2016年のあいだに作られたもので、いずれもフォーキーな音の数々を陳列している。そういう要素はブロードキャストにもなかったわけではないが、本作における民俗的なものへの志向はよりコンセプチュアルだ。カーギルが『クワイータス』に語ったところによれば、これらの曲は「ペイガン(pagan)=異教」というテーマに基づいているのだという。そんな話を聞くと、この3曲も先の『呪われた村』の喩えと同じように、侵略的な蒐集欲に突き動かされているように見えるが、それぞれの音の配置のしかたは非常にコラージュ感覚に溢れており、その遊び心はおそらくシュルレアリスムに由来している。同じ記事のなかでハウスはアンドレ・ブルトンに言及しているが、かつてブルトンはシュルレアリスムのルーツのひとつとしてルイス・キャロルの名を挙げ、『黒いユーモア選集』に『不思議の国のアリス』を収録したのだった。シュルレアリスムもまた「アリスの子どもたち」のひとりだったのである。

 でもたぶん、このアルバムの核心はもっと別のところにあるんだと思う。全4曲のなかでもっとも耳に残るのは、民俗的な要素とは別に妖しげな躍動感を携えた2曲め“Rite Of The Maypole”で、その微かなサイケデリアにはどこかブロードキャストの楽曲を思わせるところがある。この回想力・喚起力こそが本作の肝だろう。『Children Of Alice』は、全体としてはかつてブロードキャストが鳴らしていたサウンドとは異なる雰囲気を漂わせているが、その部分にはブロードキャストを想起させる音の数々が埋め込まれている(そしてそれはおそらく意図して生み出されたものではないのだろう)。それゆえ僕たちはこのアルバムを聴いたときに、トリッシュ・キーナンのことを思い出してしまうのである。もしこれらのフォーク・サウンドに、キーナンのメロディと歌声が乗っかったらどうなるのだろう、と。けれど彼女はもう、存在しない。ブロードキャストとは別の試みを実践しているはずのチルドレン・オブ・アリスは、しかし、不可避的にかつての良き日々を、あの頃の思い出を滲み出させてしまうのである。

 僕たちはいつも、忘却に失敗する。僕たちはちゃんと死者のことを忘れてあげることができない。僕たちはいつまでも、喪に服し続ける。それが良くないことだと知りながら。

Mount Eerie - ele-king

  死は現実
  誰かがそこにいて それからいなくなってしまう
  それは 歌うためにあるんじゃない
  アートにするためにあるんじゃない
  現実の死が家に入ってくれば あらゆる詩は沈黙する

 このアルバムはそんな風にして、現実の死に対して歌とアートと詩の否定から始まる。だが、“リアル・デス”と題されたこの「歌」は──そう、歌でありアートであり詩である。『ア・クロウ・ルックト・アット・ミー』はその矛盾に絡み取られた、音楽の姿をした生々しい問いだ。現実の残酷さを前にして、弱々しくうずくまるしかないわたしたちがどうやって生きていくか、についての。

 この胸をえぐられるフォーク・ソング集は、90年代のローファイを引き継いだザ・マイクロフォンズからマウント・イアリへと改名し、その誠実で地道な活動が静かに評価され続けてきたフィル・エルヴラムの新作にして、昨年癌で夭折したアーティストの妻ジュヌヴィエーヴ・カストレイの死そのものをテーマとした作品だ。自ら所有するスタジオではなく、妻を看取った自宅に機材と楽器を運んで録音されたという。マウント・イアリを特徴づけてきたローファイながらも厚みのあるサウンド構築はなく、シンプルなギターのアルペジオと幾分重々しいピアノの和音、それに不安定なエルヴラムの歌ばかりがあり、そしてその部屋の妻の生前の気配までもを残そうとするかのような生々しい録音が施されている。インナースリーヴには妻ジュヌヴィエーヴが描いた絵が印刷されていて、裏ジャケットには幼い娘を抱きしめるエルヴラムの姿が見える。近年の音楽作品においてもっとも近いのは母の死について歌ったスフィアン・スティーヴンスのフォーク・アルバム『キャリー&ローウェル』だろうが、それよりももっとももっと弱々しく、痛ましい。音楽の雰囲気としてはボニー“プリンス”ビリーの『アイ・シー・ア・ダークネス』辺りに近いと言えるかもしれない。
 (1週間後)の副題がついた“リアル・デス”はそして、なお妻の死の渦中に留まる「僕」の呟きを綴っていく。すると死んだ妻の名前で小包が届く。なかには1歳半になるふたりの娘のための秘密の贈り物が入っている――娘が成長して、学校に通うときのためのバックパックが。「僕」は玄関で泣き崩れる。「僕はこのことから何も学びたくない/僕は 君を愛している」。飾らないギターの演奏と、頼りない歌が聞こえる。

 身近な人間の死に際して、何かアートを生み出す例は珍しいことではない。だが、これほど率直なものがどれほどあっただろうか? 昨年は息子の死を描いたニック・ケイヴや母の死を思い返した宇多田ヒカルもあったが、自分に連想されるのは、むしろ音楽作品よりもアメリカで話題になったインディペンデント・ゲーム『That Dragon, Cancer』だ。これはゲーム・クリエイターの父親が幼くして癌で亡くなった息子の記憶をゲームにしたもので、プレイヤーは無邪気な赤ん坊と遊んだり、父親と母親になって息子の病気の告知を受けたり、家族の記憶のなかを漂ったり、泣き叫ぶ息子を看病したり、あるいは赤ん坊になって癌の化身であるドラゴンと闘ったりする(ドラゴンを倒すことはできない)。プレイヤーは死から逃れることはできず(つまり通常のゲームとまったく逆のことが起こっている)、しかし死んでいった息子の記憶がそれでも生き続けることを体験する。
 『ア・クロウ・ルックト・アット・ミー』でも似たことが起こっていて、アルバムは(2週間後)(1ヶ月後)(1ヶ月半後)と妻の死後から時間を進めながら「僕」(=エルヴラム)の身の周りで起こることや考えたことを赤裸々に描写していく。夕陽を前に「君」の遺灰を撒き、「悲しみに浸るために」幼い娘を連れて森に行く。アルバムを通して、自分に言い聞かせるように「死は現実だ」という言葉が繰り返される。(2ヶ月後)の副題がついた“スウィムス”では、「今日娘が訊いてきたんだ お母さんは泳いだりするのかなと/僕は答えた 「うん泳ぐよ、いまはそれしかしていないんじゃないかな」と/かつて君だったものがいま 波を越えて運ばれていく/蒸発し消えていく」と歌われ、柔らかいピアノの調べとともに悲痛な会話が詩的な瞬間へと変容していく。詩の沈黙を知りながら、それでも詩を求めてしまうその矛盾、その業――が、このアルバムを特別なものにしている。マウント・イアリはひとりのシンガーとして、死をドラマティックなものとする代わりに、現実としての死の前に立ち止まり、それでもか弱い呼吸で詩をどうにか吐き出そうとしている。わたしたち、すなわちこの歌の聴き手はこの世を去っていった妻の気配を「僕」とともに感じることができる。そこではなにか、悲しみを超えた感情がたしかに息づいている。
 (7週間前)と生前にまで記憶を遡った“ソリア・マリア”を挟んで、(4ヶ月後)との副題がついた終曲“クロウ”(“カラス”)は、娘とともに過ごす時間に捧げられた穏やかな1曲だ。眠る娘との会話を描写し、そしてアルバムは「そこに彼女はいた」という言葉で終わる。「不在が在る」ということ──その深い悲しみとともに生きていくこと、ひとが喪失を乗り越えられないことを、そっと抱擁するかのようにこの歌たちは響いている。

[5/24追記:固有名詞に誤りがあったため訂正いたしました(編集部)]

NEO TOKAI ON THE LINE - ele-king

 YUKSTA-ILLというMCはいつも驚きと感動をくれる。YUKSTA-ILLを知る15年以上も前に、先輩がL.L.COOL Jが、「OLD SCHOOLっていうのは敬意を込めて人が言う事なんだ。HIP HOPは常にNEW SCHOOLであり続ける事なんだ」ってインタビューで言っていた。そう教えてくれた。この発言は何に載ってたかも分からないし、確認もできてないから、本当にそんな事言ってるのか分かんないんだけど、凄く感銘を受けた。進化していくものがHIP HOPだと思う。もうOLD SCHOOLとかNEW SCHOOLなんて言葉もあまり使わないし。YUKSTA-ILLが敬愛するPAPOOSEの“ALPHABETICAL SLAUGHTER”は1より2の方が圧倒的に凄まじい。ALPHABETの頭文字でA to Zで順番にライムする1と2があるその曲は、YUKSTA-ILLの作るHIP HOPを理解するのに重要だと思う。是非聴いて欲しい。2が出た時、ちょうどYUKSTA-ILLと一緒にいたことはYUKSTA-ILLの作るHIP HOPに自分をよりのめり込ませてくれたものだ。


YUKSTA-ILL
NEO TOKAI ON THE LINE

Pヴァイン

Hip Hop

Amazon Tower HMV iTunes

 コアなヘッズと変わることなく、YUKSTA-ILLという名前を聞いたのはUMBに出ている頃だった。今作品でも重要なSKITとして収録されているFACECARZという三重のHARD CORE BANDを介してその名前を聞いたと記憶してる。決勝でバトルに出ている数回のタイミングはいつも予定があって見に行けてないのだけれど。映像になっている、ERONEとのUMB決勝大会でのバトルはお互いのラップが進化していく瞬間と歴史が収められている。勝ち負け以上の側面を当事者以外が感じることができる数少ない貴重な資料だと言い切れる。バトルへの肯定も否定も超えたものがそこに存在してる。2ndアルバムになる『NEO TOKAI ON THE LINE』に収録されているMCバトルに関して言及した、“GIFT & CURSE”では今のバトル・ブームへの辛辣な意見をラップしている。それは一般的に軽くなった「DIS」って言葉への「DIS」。美学のない消費をHIP HOPは否定する。KRS-ONEの『SCIENCE OF RAP』にある「朝起きたら鏡を見て俺はラッパーだって言う」。ラッパー十ヶ条のようなものを信じること。飲み会でのバトルの真似事を同列にする事は違うと、改めて公言する。その意味を『NEO TOKAI ON THE LINE』は教えてくれる。

 また、自分が敬愛するラッパーの言葉を引用させてもらう。RAKIMは「自分の友達の話を、有名でもない自分の友達の話をRAPをして曲を作れば、まるで近くにある話のように聴いてる人が思うことができる。それがHIP HOPだ」というようなことを言っていた。これは、出典は忘れたけど、自分が2016年に読んだRAKIMのインタビューか何かで言っていた事だ。凄く分かりやすく言えば、有名なラッパーだけれど、BIG Lを誰もが知ったのはGANG STARRの“FULL CLIP”だ。名もなき黒人の声を今もラッパーは歌っている。#BLACKLIVESMATTER という問題をHIP HOPを通して聞く。TOKAIの話を、HIRAGENというラッパーの事をYUKSTA-ILLを通して知る。パーソナルなストーリーに落とし込めば“RIPJOB”というこのアルバムに入ってる曲でYUKSTA-ILLがどんな仕事をしていて、どんな事をして、今、何をして何を考えてるかを知れる。自分はその話を前から知っていたんだけど、この曲の方が、情報量は多い。

 最初に名前を挙げた三重、鈴鹿のHARD CORE BAND 「FACECARZ」。アルバムの中の地元のことを歌った“STILL T”、“HOOD BOND”。その間にFACECARZのライヴ中のMCを収録したSKITが入る。自分は、東京や名古屋や彼らの地元である鈴鹿でもなく、関東の郊外にあるライヴハウスでFACECARZのライヴを見たことがある。その話をする前に言うけど、FACECRAZは日本を代表するHARD CORE BANDで地元の三重県鈴鹿でも、東海地方の中心地である名古屋でも、日本の首都である東京でも、日本でも、NYでも世界を相手にしてもトップのHARD CORE BANDだ。そのFACECARZが関東郊外の国道沿いのライヴハウスでMCで鈴鹿の事を、誇ってライヴ中に話していた。それは地元とHARD COREそのもので、それが繋がる話。このアルバムのその部分や、全体に流れるYUKSTA-ILLのラップは、その土地にいないものに対して、その土地への興味と強さを感じさせてくれる。DETROITにCOLD AS LIFEってHARD CORE BANDがいるんだけど、その1stアルバムのTHANKS LISTが頭に浮かぶ。まだかっこよかった頃のURのMAD MIKE、そして、J DILLAやSLUM VILLAGEが載っていたTHANKS LIST。

 音楽は音楽そのもの。HIP HOPはHIP HOPそのもの。それだけの強さと魅力が全て。それは勿論だと思う。でも、それ以上のものを感じられたら、それを否定するより肯定した方が最高だって言った方が楽しめるし、いい事あるに決まってる。このアルバムの“LET'S GET DIRTY”はPUNPEEのトラックに、featで参加するSOCKSの炸裂するパンチラインは「KEITH MURRAYみたいにセットアップジャージ」だって。最高にHIP HOPで楽しんだもん勝ちだと思う。今まで書いてきたこの文章放棄できそうだもん。でも、YUKSTA-ILLのラップなYUKSTA-ILLは何も変わってない。

 DIVERSITYって2016年からよく聞く。実際、多様性なんて無かったりするものがあふれてる。ただ肯定しても、ただ否定しても単一性も多様性のどちらも感じられない。ラッパーとしてステージに立つ生活、仕事や家庭の生活。ラージとスモール。派手と堅実。矛盾してるものが普通に存在するのが現実。それをYUKSTA-ILLは、YUKSTA-ILLとして、本名のONE OF THEMではなく、このアルバムでRAPする。『NEO TOKAI ON THE LINE』というタイトルの2枚目のアルバムは、だからこそ独立することができる。YUKSTA-ILLというラッパーがここで語るストーリーは、過去、未来、現在を鈴鹿という場所を純然たるファクトとして存在させる。

 「最初にYUKSTA-ILLは感動と驚きをくれる」と書いた。YUKSTA-ILLが作ってきた音楽、地元のグループであるB-ZIK、TOKAIを席巻したTYRANT、ソロとしてのファースト・アルバム、『QUESTIONABLE THOUGHT』、その中で産まれた「TOKYO ILL METHOD」、多くのフィーチャリング・ワークス、2016年末にリリースされた『NEO TOKAI ON THE LINE』。それらはどれもが繋がっていて、どの方向にも辿ることができる、「点が線になる」を綺麗に感じることができると思う。でも、そう思った瞬間に、YUKSTA-ILLの新たな側面があらわれる。このアルバムの最後に唐突に始まる“CLOSED DEAL”のように。掻き乱される。

 NETFLIXで、MARVERLの『LUKE CAGE』でMETHOD MANがラップしてる事って街の事で、それって世論とは相反するし、細かい事は矛盾してるけど、強くて最強で感動したんだけど。そこに出てくる看護婦がいて。RZAが監修してる『IRON FIST』に看護婦として出てきて、「この人、看護婦役で流行ってるのかな?」って思ったら、話が繋がってるっぽくて。そういう、そこまで細かくないけど、説明ないのがエンターテイメントでいいなって、うなづくような納得が最高だなって思った。WU-TANGとMARVERLとNETFLIXが繋がってる事には感動しないし、いまだにKUNG FUUとHIP HOPの関連性とか分かりたいとも思わないんだけど。特に『IRON FIST』で、唐突にHIP HOPかけながら修行してるのとか、理解を超えてるって思うけど。「うわっ」って思いながらも、手を引けないような。受け取る側の許容量を超えた感動って確実に存在すると思う。その許容量を超えたっていう時の一線って意識してない一線だから、定義しようとしたらできないものだけど、確実にある存在を感じることのできる一線だと根拠なく言えるものだって、俺は人に言える。

 YUKSTA-ILLの『NEO TOKAI ON THE LINE』は、そういう一線を超えた作品。最初に、何曲かを聴いた時に、漠然とした感動と、凄まじい衝動を覚えた。けれどもすごく普遍的で。でも、その普遍的な一線はどこにあるのか分からないとも思う。だから、聴くたびに、新たな何かを感じるんだけど、アルバムが幕を閉じた時に、それをいつまでたってもつかめない。聴いてる時はすごくその輪郭を感じられる。このアルバムを作るトラックもゲストも自由にその色を描いてるんだけれど、合わせることも打ち消すこともなくYUKSTA-ILLが存在している現実的だけれど、何か違う世界なのか、次元なのか?気になるんだけど、自然すぎて、再生されている時にその場所にいる。聴き終わって帰ってきた時に、頭に何かが残る。

 今日出たアルバムを、確信して「クラッシック」と言い切る。3本マイクだったアルバムが「クラッシック」として今、存在している。中古盤の棚に¥100で売ってる「クラッシック」がある。買うことのできないクラッシックがある。誰かだけのプライベートな「クラッシック」の存在を知ってる。YUKSTA-ILLの『NEO TOKAI ON THE LINE』は今出ているものが廃盤になっても、REMASTERING盤や廉価版が出る「クラッシック」になるだろう。新たな価値が発見される日が来る日をYUKSTA-ILLは何度迎えるだろうか? YUKSTA-ILLはその日が来る事を知っている。

Spoko & Aguayo - ele-king

 2016年の音楽シーンを特徴づけたトレンドのひとつに、ゴムがあった。南アフリカのダーバンで生み出されたその音楽はクワイトの影響を受けているとも言われるが、いわゆるハウスの文脈よりもむしろベース・ミュージックの文脈に位置づけた方がしっくりくるサウンドで、うなり続ける低音ドローンやダビーな音響、グライム的な間の使い方、それらによってもたらされる奇妙なもたつき感など、なるほどコード9が興味を持つのも頷けるというか、そこにはたしかに「これこそが新しいトレンドだ」と騒がれるに足るじゅうぶんな要素が具わっていた。その潮流の一端は、コンピレイション『Gqom Oh! The Sound Of Durban Vol. 1』にまとめられている。

 そんなゴムの盛り上がりに触発されたのだろうか。昨年リリースされたDJスポコとDJムジャヴァによるEP「Intelligent Mental Institution」は、まるで「ゴムの前には俺たちがいたんだぜ」と宣言しているかのような、自信に満ち溢れた1枚だった。自らの音楽を「バカルディ(=酒)・ハウス」と呼称するスポコは南アフリカのプロデューサーで、近年は〈True Panther Sounds〉やJクッシュの主宰する〈Lit City Trax〉といった米英のレーベルからも作品を発表している。興味深いことに彼は、シャンガーン・エレクトロのドンであるノジンジャとも親交があったらしい(なんでも彼からエンジニアリングを学んだそうだ)。そのスポコの相棒を務めたムジャヴァの方も同じく南アフリカ出身のプロデューサーで、10年ほど前に“Township Funk”で世界中にその名を轟かせたハウス・レジェンドである。『RA』によれば、その“Township Funk”でパーカッションを担当していたのがスポコだったそうだから、彼らの交流はかなり古くまで遡ることができるのだろう。そのふたりが久しぶりにがっつりと手を組んだ「I.M.I」は、強烈なドラムとメロディアスなシンセが絡み合う最高にダンサブルな1枚で(“King Of Bacardi”や“Sgubhu Dance”の昂揚感といったら!)、王者の貫禄とでも言うべきか、とにかく矜持にあふれたEPだった。
 そのスポコが次にパートナーに選んだのがマティアス・アグアーヨである。アグアーヨは、自身のアルバム『Ay Ay Ay』が出たのと同じ2009年に、ムジャヴァの“Township Funk”のリミックスを手掛けているので、今回のコラボには前兆があったということになるが、スポコと共同作業をおこなうのはこの「Dirty Dancing」が初めてのはずだ。〈Kompakt〉というブランドの名を耳にすると、ある特定のミニマル・サウンドを思い浮かべてしまう人もいるかもしれないが、アグアーヨはそういうイメージの束縛から自由なアーティストで、チリ出身ということもあってか、彼の作品からは独特の「辺境」性を感じ取ることができる。したがってわれわれは、スポコの「バカルディ・ハウス」がアグアーヨのその「辺境」性と衝突したときにいったいどのような化学反応が起こるのか、という期待に胸を膨らませて本作を手に取ることになる。

 結論から言ってしまえば、この「Dirty Dancing」では何か特別なミラクルが起こっているわけではない。“Something About The Groove”におけるエルビー・バッドの参加が如実に物語っているが、良くも悪くも本作は、「バカルディ・ハウス」と欧米のハウス/テクノとの「出会い直し」(あるいは「再会」)といった趣に落ち着いている。そりゃまあ奇蹟なんてそんなに頻繁に起こるものではないから、しかたがないといえばそうなのだけれど、とはいえタイトル曲“Dirty Dancing”で繰り広げられるふたりのシンセの応酬や、あるいは“Taxi Rank”の不思議な疾走感からは、まだ見ぬ新天地の雄大な景色を想像することができる。
 成功するかしないかはひとまず脇に置いておいて、こういう特異なもの同士の接続それ自体はこれからもどんどん為されていくべきだろう。周縁的なものと周縁的なものとが出会ったときに奇蹟的に発生するかもしれない、豊穣なる余剰を夢想すること――それは音楽を享受する愉悦のひとつである。きっとゴムの次に到来するトレンドも、そういう刺戟的な出会いのなかから生み出されるに違いない。

TOYOMU - ele-king

Current top 9

Jeff Parker - ele-king

 去る4月に最新ソロ作『The New Breed』の日本盤がリリースされたジャズ・ギタリスト、ジェフ・パーカー。彼はトータスのメンバーとして有名ですが、ソロとしても魅力的な活動を継続しています。その彼の来日公演が来週から始まります。スコット・アメンドラ・バンドやトータスのステージも含めると、なんと14公演もプレイする予定です。詳細を以下にまとめましたので、ぜひチェックしてください!



■SCOTT AMENDOLA BAND featuring
 NELS CLINE, JEFF PARKER, JENNY SCHEINMAN & CHRIS LIGHTCAP

会場:COTTON CLUB
日程:2017年5月11日(木)~5月13日(土)
時刻:
●5.11 (thu) & 5.12 (fri)
[1st. show] open 5:00pm / start 6:30pm
[2nd. show] open 8:00pm / start 9:00pm
●5.13 (sat)
[1st. show] open 4:00pm / start 5:00pm
[2nd. show] open 6:30pm / start 8:00pm
出演:Scott Amendola (ds), Nels Cline (g), Jeff Parker (g), Jenny Scheinman (vln), Chris Lightcap (b)

* ウィルコのネルス・クラインとともにスコット・アメンドラ・バンドの公演に出演。

https://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/scott-amendola/


■Jeff Parker『The New Breed』発売記念ミニ・ライヴ、トーク&サイン会

会場:タワーレコード 渋谷店 6F
日時:2017年5月14日(日) 16:00 start
出演:Jeff Parker (Jeff Parker & The New Breed, TORTOISE), 柳樂光隆 (Jazz The New Chapter) ※インタヴュアー

* 〈HEADZ〉主催のインストア・イベントに出演。今回の来日公演のなかでは唯一のソロ・ライヴ。

https://towershibuya.jp/2017/05/01/95261


■TORTOISE

会場:Billboard LIVE TOKYO
日程:2017年5月15日(月) & 2017年5月17日(水)
時刻:[1st] 開場 17:30 開演 19:00 / [2nd] 開場 20:45 開演 21:30

会場:Billboard LIVE OSAKA
日程:2017年5月19日(金)
時刻:[1st] 開場 17:30 開演 18:30 / [2nd] 開場 20:30 開演 21:30

* ビルボードライブ東京およびビルボードライブ大阪にてトータスの単独公演が開催。

PC: www.billboard-live.com
Mobile: www.billboard-live.com/m/


■GREENROOM FESTIVAL ‘17

会場:横浜赤レンガ地区野外特設会場
日程:2017年5月21日(日)

* GREENROOM FESTIVAL ‘17の2日目、〈GOOD WAVE〉ステージにトータスとして出演。

https://greenroom.jp

【リリース情報】

アーティスト: Jeff Parker / ジェフ・パーカー
タイトル: The New Breed / ザ・ニュー・ブリード
レーベル: International Anthem Recording Company / HEADZ
品番: IARCJ009 / HEADZ 218
発売日: 2017.4.12
価格: 2,000円+税
日本盤ライナーノーツ: 柳樂光隆(Jazz The New Chapter)
※日本盤のみのボーナス・トラック Makaya McCraven Remix 収録

[Tracklist]
01. Executive Life
02. Para Ha Tay
03. Here Comes Ezra
04. Visions
05. Jrifted
06. How Fun It Is To Year Whip
07. Get Dressed
08. Cliche
09. Logan Hardware Remix (produced by Makaya McCraven)

https://www.faderbyheadz.com/release/headz218.html


【関連盤ご紹介】

アーティスト: Jamire Williams / ジャマイア・ウィリアムス
タイトル: Effectual / エフェクチュアル
レーベル: Leaving Records / Pヴァイン
品番: PCD-24617
発売日: 2017.4.19
価格: 2,400円+税
解説: 柳楽光隆(Jazz The New Chapter)
※日本盤限定ボーナス・トラック2曲収録

[Tracklist]
01. Who Will Stand?
02. The Fire Next Time
03. Selectric
04. Truth Remains Constant
05. Dos Au Soleil
06. Chase The Ghost
07. Wash Me Over (Pollock's Pulse)
08. In Retrospect
09. Futurism
10. [ Selah ]
11. Children Of The Supernatural
12. Illuminations
13. The Art Of Losing Yourself
14. Collaborate With God
15. Collaborate With God (Drums and Strings Mix)
16. Triumphant's Return

* ジェフ・パーカー『The New Breed』にも参加するドラマー、ジャマイア・ウィリアムスによるデビュー・アルバム。

https://p-vine.jp/music/pcd-24617

Oto Hiax - ele-king

 まったく新しい様式を発明したから素晴らしい。かつてないサウンドを鳴らしてみせたから優れている。たしかにそういう評価のしかたはある。あるいは、最近の傾向を反映しているから重要である。こんな時代にこんなサウンドを鳴らしているからこそ価値がある。そういう判断のしかたもある。でも、当たり前の話ではあるが、そういう基準からはこぼれ落ちてしまう作品だってある。特に目新しいわけではない。何かの波に乗っているわけでもない。でも、完成度自体はきわめて高い――Oto Hiaxのこのアルバムはまさにそういう「こぼれ落ちてしまう」作品だ。どうしても何らかの文脈を用意しなければならないのであれば、「90年代リヴァイヴァル」あるいは「00年代リヴァイヴァル」といった言葉をあてがうこともできるだろう。そのどちらにも当てはまってしまうところがこのアルバムの魅力でもあるのだが、しかしどうにもこの作品からは、そういうふうに「整理されてしまうこと」を拒むような不思議な温度が感じられる。
 Oto Hiax は、シーフィールの中心人物として90年代の音楽シーンに多大な痕跡を残したマーク・クリフォードと、ループス・ホーント名義でおもに〈Black Acre〉から作品を発表してきたスコット・ゴードンのふたりから成るユニットである。2015年に自主リリースされた最初のEP「One」の時点では、「とりあえずコラボしてみました」という印象が強く、まだ方向性の定まっていない感のあったかれらだが、ラシャド・ベッカーがカッティング&マスタリングを手掛け、名門〈Editions Mego〉からリリースされたこのファースト・アルバムは、その多彩な音響の実験とは裏腹にしっかりとしたまとまりを持っている。アンビエント、ドローン、シューゲイズ、サイケデリック、ノイズ、ミュジーク・コンクレート、ミニマル……本作にはさまざまなジャンルやスタイルの要素が盛り込まれているけれど、それらの音の群れをひとつの作品としてまとめ上げているのは、牧歌性である。
 このアルバムでは、ぬくもりのあるシンセやフィードバックがどこまでもノスタルジックな風景を現出させている。その繊細な情緒は、はかなげな電子音がよく晴れた穏やかな午後のイメージを呼び起こす冒頭の“Insh”から、すぐに聴き取ることができる。細かく切り揃えられた電子音がセンチメンタルなコードのなかを流れいき、そこにときおり鋭利な刃物が紛れ込む2曲め“Flist”なんかは、ゆったりと水中を漂っているかのような心地良さを与える。こうした牧歌性は、フィードバック・ノイズとエコーが極上のシューゲイズ的サイケデリアを錬成する5曲め“Creeks”にもっともよく表れており、そのたゆたう音の波のなかでわれわれはただただ安らかな光にくるまれることになる。

 しかしこのアルバムはただ夢見心地なだけではない。フィードバックを背後に具体音が舞い踊る3曲め“Dhull”や、民族的な高音とドローンに支えられながらさまざまな音の展覧会が催される4曲め“Eses Mitre”、もこもこした低音としゃらしゃらした高音が耳をくすぐる小品“Bearing & Writhe”と、トラックが進むごとにアルバムはミュジーク・コンクレートの側面を強めていき、それは9曲め“Lowlan”でひとつの山場を迎える。フィードバックとドローンの上をノイズが転がる7曲め“Littics”や、センチメンタルなコードの往復運動をバックに打撃音が乱れ舞う8曲め“Thruft”などでは、シューゲイズとミュジーク・コンクレートが同時に追究されている。ギターが電子音との一体化を目指しているかのような10曲め“Hak”もおもしろい。
 ノスタルジックでドリーミーなムードのなかに、即興的でノイジーな、ある意味では破壊的でもある要素が巧みに散りばめられている。このアルバムのなかを行き交うさまざまな音たちは、生の喜びを祝福すると同時にその喜びに疑いの眼差しを向けてもいる。音たちは交錯しながら、一方で牧歌的な風景を現出させつつ、他方でその素敵な夢の景色に小さな引っかき傷を刻み込もうとする。情緒に頼り切るのでもなく、かといってエクスペリメンタリズムに振り切れるのでもない。感傷と実験との絶妙な共存。
 このアルバムはけっして後世まで語り継がれるような「傑作」の類ではない。が、確実にある一部の人びとの耳を捉え、いつまでもその記憶の隅っこに留まり続けるだろう。ただ垂れ流しているだけでもじゅうぶん心地良いが、じっくり聴き込めば多くの発見がある。すでにさまざまな佳作や話題作が出揃ってきている2017年の音楽シーンだけれど、2月から3月にかけて個人的にもっともよく聴いていたのがこの Oto Hiax のアルバムであった。きっとこれからも何度も聴き返すことになるだろう。白熱する年間ベスト・レースからは「こぼれ落ちる」、地味ながらも愛おしい1枚である。

Juana Molina - ele-king

 先週、3年半ぶりとなる最新アルバム『ヘイロー』を日本先行でリリースしたばかりのフアナ・モリーナですが、このたび彼女の来日公演が発表されました。フアナは先日のインタヴューで「東京と京都に行きたい」と語っていましたが、見事にその夢が叶いましたね。8月19日にサマーソニックの東京会場に出演、翌8月20日には京都METROにて単独公演をおこないます。いったいどんなステージになるのでしょう。すでにチケットの受付が始まっていますので、早めにチェックしておきましょう。

フアナ・モリーナ、3年半振りのニュー・アルバムが日本先行発売!
サマーソニック出演&京都公演も決定!
“Lentísimo halo”のミュージック・ビデオが公開に!

先週金曜日に、約3年半ぶりとなるニュー・アルバム『ヘイロー』を海外に先駆け日本で発売したフアナ・モリーナが、この夏サマーソニックに出演することが決定した! 当日はEGO-WRAPPIN’の中納良恵を迎えたスペシャル・セットとなっており、8月19日(土)に東京GARDEN STAGEに出演する。また翌日には、京都METROにて単独公演をおこなうこともあわせて決定!! こちらの公演は5月2日(火)より早割チケット(¥3,500)の受付スタートとなっている。

好評発売中のニュー・アルバム『ヘイロー』は、フアナらしいエクスペリメンタルな方向性と独特の歌声は健在ながらも、さらなる高みを目指した12曲を収録。催眠作用のあるリズム、魔術、虫の知らせや夢といった隠喩を用いたミステリアスなリリック、感情やムードを体全体を使って表す様は、これまでに増してマジカルである。
そんななか、先日収録曲より“Lentísimo halo”のミュージック・ビデオが公開となった。

--------------------
“Lentísimo halo”のミュージック・ビデオはこちら:
https://youtu.be/--pC7g_eGgo
--------------------

これはけっして新たに発見されたマン・レイやハンス・リヒターが作る、1920年代のモノクロのエクスペリメンタルな超現実主義的映画ではない。アルゼンチン人映画監督マリアーノ・ラミスが制作した、フアナ・モリーナの新曲のミュージック・ビデオなのだ。
フアナとふたりでアイデアを出し合って完成したこのビデオは、同楽曲を書く際にフアナの脳裏に浮かんできたという“ひし形をしたヘイロー”に関する伝説がインスピレーションの元となっている。
「ヘイローっていうのは、灯りから発されるぼんやりした光や、聖人の頭の後ろに浮かんでいる後光のこと。それは聖なる光ではなくて、夜に野原を漂う緑色の邪悪な光なの。人を追いかけてくることもあって、200年ぐらい前の田舎に住む人びとは恐れていたらしい。現代になって、それは腐った骨から発せられる蛍光性の光だと判ったそうなの」とフアナは話す。

他にも、収録曲“Cosoco”やアルバムのティーザー音源も公開となっているので、あわせてチェックしよう!

--------------------
アルバムのティーザー音源試聴はこちら:
https://youtu.be/W6_Dzl712i8
--------------------
「Cosoco」の試聴はこちら:
https://soundcloud.com/crammed-discs/juana-molina-cosoco-1
--------------------

■来日公演情報

●サマーソニック2017
2017年8月19日(土)、20日(日)
※フアナ・モリーナは8月19日(土)に東京GARDEN STAGEに出演します。
東京会場:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
大阪会場:舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
サマーソニック公式サイト:https://www.summersonic.com/2017/

●晴れ豆インターナショナル presents JUANA MOLINA Japan Tour 2017 京都公演
@京都METRO
Open 19:00 / Start 19:30
チケット:5/13より一般発売開始
早割¥3,500 ドリンク代別途 [受付期間:5/2~5/12]
前売¥4,000 ドリンク代別途
当日¥4,500 ドリンク代別途

【限定早割】
----------------------------------------------------------------
★期間限定:早割¥3,500 ドリンク代別途 [受付期間:5/2~5/12]
※『特別先行早割お申し込み方法』
→ タイトルを「8/20 フアナ・モリーナ 早割希望」として頂いて、
お名前と枚数を明記して 宛てでメールして下さい。
----------------------------------------------------------------

【一般PG前売り】
--------------------------
チケットぴあ (0570-02-9999、Pコード:332-717)
ローソンチケット (ローソンLoppi、Lコード:53857)
e+ (https://ur0.work/DfpZ)
にて5/13より発売開始
--------------------------
詳細: https://www.metro.ne.jp/single-post/170820
お問い合わせ: 075-752-4765


■リリース情報
アーティスト:Juana Molina(フアナ・モリーナ)
タイトル:Halo(ヘイロー)
品番:HSE-6388
レーベル:Hostess Entertainment
定価:2,490円+税
発売日:発売中!(海外発売:5/5)
※日本盤は先行発売、ボーナス・トラック1曲、歌詞対訳、ライナーノーツ(石田昌隆) 付

【トラックリスト】
1.Paraguaya
2.Sin dones
3.Lentísimo halo
4.In the lassa
5.Cosoco
6.Cálculos y oráculos
7.Los pies helados
8.A00 B01
9.Cara de espejo
10.Andó
11.Estalacticas
12.Al oeste
13.Vagos lagos *
* 日本盤ボーナス・トラック

※新曲“Cosoco”iTunes配信スタート&アルバム予約受付中!
リンク:https://itunes.apple.com/jp/album/halo/id1205397001?app=itunes&ls=1&at=11lwRX


■ショート・バイオ
音楽ジャンルの壁を凌駕する唯一無二の独創的才能を持つアルゼンチンのアーティスト。1996年デビュー。'00年に発表した2ndアルバム『セグンド』によって人気に火がつき、徐々に世界にその名が知られ始める。3rdアルバム『トレス・コーサス』は、U2、ビョーク、カニエ・ウエスト、アニマル・コレクティヴなどのアルバムと並んで、『New York Times』の "The Best Pop Album of 2004" に選出される。'04年には元トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンと全米をツアー。来日も多く、レイ・ハラカミ、勝井佑二(ROVO)、高橋幸宏、原田郁子(クラムボン)、相対性理論など日本のアーティストとの共演多数。中納良恵(EGO-WRAPPIN')からフィリップ・セルウェイ(ds. レディオヘッド)まで、様々なアーティストからフェイヴァリットに挙げられている。2013年11月、約5年ぶりとなる最新作『ウェッド21』をリリース。その後もほぼ毎年来日し公演をおこなっている。2017年4月、約3年半ぶりとなるニュー・アルバム『ヘイロー』を発売。8月にはサマーソニックへの出演が決定。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377