ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Various - Funk.BR: São Paulo
  2. interview with tofubeats 自分のことはハウスDJだと思っている  | トーフビーツ、インタヴュー
  3. Columns 5月のジャズ Jazz in May 2024
  4. Schoolboy Q - BLUE LIPS | スクールボーイ・Q
  5. Bianca Scout - Pattern Damage | ビアンカ・スカウト
  6. Iglooghost - Tidal Memory Exo | イグルーゴースト
  7. R.I.P. Steve Albini 追悼:スティーヴ・アルビニ
  8. Columns E-JIMAと訪れたブリストル記 2024
  9. Sisso - Singeli Ya Maajabu | シッソ
  10. Claire Rousay - Sentiment | クレア・ラウジー
  11. bar italia ──いまもっとも見ておきたいバンド、バー・イタリアが初めて日本にやってくる
  12. Adrian Sherwood presents Dub Sessions 2024 いつまでも見れると思うな、御大ホレス・アンディと偉大なるクリエイション・レベル、エイドリアン・シャーウッドが集結するダブの最強ナイト
  13. Tomeka Reid Quartet Japan Tour ──シカゴとNYの前衛ジャズ・シーンで活動してきたトミーカ・リードが、メアリー・ハルヴォーソンらと来日
  14. みんなのきもち ――アンビエントに特化したデイタイム・レイヴ〈Sommer Edition Vol.3〉が年始に開催
  15. Pet Shop Boys - Nonetheless | ペット・ショップ・ボーイズ
  16. Gastr del Sol ──デヴィッド・グラブスとジム・オルークから成るガスター・デル・ソル、アーカイヴ音源集がリリース
  17. Cornelius ──コーネリアスがアンビエント・アルバムをリリース、活動30周年記念ライヴも
  18. Overmono ──オーヴァーモノによる単独来日公演、東京と大阪で開催
  19. interview with Yui Togashi (downt) 心地よい孤独感に満ちたdowntのオルタナティヴ・ロック・サウンド | 富樫ユイを突き動かすものとは
  20. interview with I.JORDAN ポスト・パンデミック時代の恍惚 | 7歳でトランスを聴いていたアイ・ジョーダンが完成させたファースト・アルバム

Home >  Reviews >  Album Reviews > Wayne Snow- Freedom TV

Wayne Snow

Deep HouseHouseSoul

Wayne Snow

Freedom TV

Tartelet/SWEET SOUL

Tower HMV Amazon iTunes

小川充   May 22,2017 UP

 ここのところの欧州には、派手な話題を振りまくことはないものの、昔ながらの堅実なディープ・ハウスやビートダウン・ハウスをリリースする良質なレーベルがいくつかある。UKではすでにレーベル歴も長い〈エグロ〉とサブ・レーベルの〈ホー・テップ〉がその筆頭に挙げられ、アル・ドブソン・ジュニア、カオス・イン・ザ・CBD、カマール・ウィリアムスことヘンリー・ウー、ジョーダン・ラカイの変名のダン・キーらの作品をリリースする〈リズム・セクション・インターナショナル〉が近年の最注目レーベルと言えるだろう。ドイツにはマックス・グレーフとグレン・アストロの運営する〈マネー・セックス〉があり、デンマークにはそのマックス・グレーフとグレン・アストロ、ヘンリー・ウーなども作品をリリースする〈ターテレット〉がある。この〈ターテレット〉からデビュー・アルバム『フリーダムTV』をリリースしたウェイン・スノウは、本名をケシエナ・ウコチョヴバラといい、ナイジェリア出身のシンガー・ソングライターである。ニューヨーク、ロンドン、シドニーなど世界中でパフォーマンスをおこなっており、2014年からベルリンを拠点に活動している。同じベルリンのマックス・グレーフが、〈ターテレット〉からリリースした『リヴァーズ・オブ・ザ・レッド・プラネット』(2014年)にヴォーカリストとして参加。それによって名前を知られるようになるとともに、自身も〈ターテレット〉から「レッド・ランナー」、「ロージー」という2枚のシングルEPをリリース。そして、マックス・グレーフをプロデューサーに迎えた『フリーダムTV』をリリースするという流れだ。

 マックス・グレーフがジャズやフュージョン、ブギーといった要素を取り入れたディープ・ハウスを得意とするだけあり、『フリーダムTV』の基軸はそうしたサウンドを土台に、ウェイン・スノウがソウルフルなヴォーカルを披露する作品集となっている。ウェイン・スノウはナイジェリア出身ということで、土着的でアフリカ色の強い歌声かと思いきや、実際は都会的に洗練されたもの。むしろアメリカのR&Bシンガーに多いタイプで、ディアンジェロ、ドウェレ、エリック・ロバーソンなどが思い浮かぶ。アフリカをルーツとするシンガー・ソングライターということでは、セオ・パリッシュのプロデュースで「フラワーズ」を発表したガーナ系イギリス人のアンドリュー・アショングがいるが、比較的彼に近いタイプのアーティストとなるだろう。そんなウェイン・スノウの歌声が最大限に生かされたディープ・ハウスとして、本作では“フリーダムR.I.P.”が挙げられる。2015年に他界した人権解放運動に尽力したジンバブエの女性詩人のフリーダム・ンヤムバヤに捧げた曲で、エレピをフィーチャーしたそのジャジーなサウンドは、かつてのブレイズやミスター・フィンガーズの全盛期を彷彿とさせるもの。ゴスペルを基盤とするウェイン・スノウの歌は、ンヤムバヤの詩の一説を引用して自由を説いている。“ナッシング・ロング”はジョージ・デュークの“ブラジリアン・ラヴ・アフェア”を彷彿とさせるベース・ラインを用い、マックス・グレーフのスペイシーなフュージョン感全開のナンバー。こうした作品ではウェイン・スノウの開放感溢れる歌が光る。“レッド・ランナー”はブギー調のディープ・ハウスで、“ドランク”はビートダウン系となるだろう。一方、“ザ・リズム”はエレクトロな要素の強いブロークンビーツ系で、ここではオールド・スクールなラップ調のヴォーカルを披露するなど、多彩なところを見せている。そして、アブストラクトなムードの“フォール”や“クーラー”、ダウンテンポ系の“スティル・イン・ザ・シェル”では、実験的なR&Bシンガーとしての顔を見せる。このあたりはかつてのスペイセックが得意としていたようなサウンドだ。“ロージー”もそうで、Jディラ的なフィーリングが感じられる。つまり、全体としてはJディラからセオ・パリッシュ、ムーディーマンらを繋いだデトロイト勢の影響が色濃く感じられるアルバムと言えるだろう。

小川充