「IR」と一致するもの

Twine - ele-king

 南太平洋の大陸でひっそりと “カントリーゲイズ” (カントリーとシューゲイズの要素をミックスしたスタイル)の大名盤が誕生しているのをご存じだろうか。そう、トゥワイン(Twine)というバンドにアクセスすることによって現行音楽に対するリスニング経験は大きく変わる……と声を大にしてそれを言いたくなるほどトゥワインというバンドを皆さんに知ってもらいたい。

 トゥワインはオーストラリアの南部、アデレードで2021年に結成されたバンド。アデレードはシドニーから1300km以上、メルボルンからは700km以上離れたオーストラリアの地方都市だ。当初はトム・カツァラス(Tom Katsaras:ヴォーカル/ギター)のソロ・プロジェクトだったそうだが、演奏メンバーの様々な入れ替わりを経て、現在のマット・シュルツ(Matt Schultz:ギター)、テア・マーティン(Thea Martin:ヴァイオリン)、アリシア・サルヴァノス(Alicia Salvanos:ベース)、ジャクソン・パジェット(Jackson Pagett:ドラムス)を含めた体制が固まると、バンドとしての歩みをはじめたという。

 初めて聴いたときは、ブラック・カントリー・ニュー・ロードの1stアルバム『For The First Time』と2ndアルバム『Ants From Up There』の間の世界を思い浮かべた。反復する混沌としたポスト・パンク的アプローチから、繊細なメロディが広がるフォーキーなサウンドへ移行したその狭間ではどんな音が鳴っているんだろうか。もちろん、ブラック・カントリー・ニュー・ロードとトゥワインでは出自も音楽的な成り立ちも異なるが、トゥワインの不協和音がぶつかり合うカオティックな展開と、優しく鳴り響くスロウコア風味のエモーショナルな展開の連続には、あったかもしれないブラック・カントリー・ニュー・ロードの別のストーリーを想像させた。感情のダイナミズムとジャンルの折衷や溶解が広がるその世界をこじ開け、拡大させ、そこに彼らの旗を立てたと言おうか。丁寧だけど叫び散らかしていて、スリリングだけど優しく染み渡る。若きバンドによる初期衝動とアイデアがもたらす完成されていないからこその未知なる可能性。過去のロック・バンドの名盤と呼ばれる作品がそれを証明するように、そこにこそ生々しくリアルなカオスが宿り、そこにしか味わえないドキドキがある。

 ヴァイオリン・メンバーがいるのは、ロック・バンドとしては珍しい編成ではあるが、まずは1曲聴いてみようということであれば、7曲目の “Fruit To Ripe” を強くお勧めしよう。軽快なドラム・ビートと獰猛なギターに並行して、エネルギッシュなヴァイオリン・リフが絡みついては楽曲の印象を優雅に引き上げている。楽曲の沸点に近づくとともにカツァラスは痙攣気味に声を張り上げ、心地良い緊張感のなかで全ての音が爆発的に融合する瞬間に我々リスナーも心を大きく揺さぶられるであろう。2024年に日本国内のインディ・ロック・ファンの最大公約数となったフリコ(Friko)をも彷彿とさせる楽曲でもある。

 ノイジーで優雅。例えば、3曲目の “Spine” はイントロからディストーションの洪水に見舞われるが、騒々しいカオスを抜けた先に、ガラッと見晴らしの良い晴れた日の高台に出たかのような清々しい音に切り替わる。ヴァイオリニストのテア・マーティンは「ヴァイオリンがバンドの各パートを音響的に移動する効果が好きなんだ」とも語っているが、ヴァイオリンの音使いが秀逸で、轟音のなかでは、後方から音に神秘性のエッセンスを注ぎ込み、ヴァイオリン・リフがはじまると音の先頭に立ち、風が吹き抜ける牧草地のような世界観を演出している。さらに、サビでの感傷的なカツァラスの歌は、ヴァイオリンが感情の導線を演出し、より一層エモーショナルな爆発を引き起こす。

 ここまで彼らを説明するのに初期のブラック・カントリー・ニュー・ロードとフリコを引き合いにしたが、ウェンズデイのようなアメリカン・カントリーな表現を、オーストラリアの地方都市のフィーリングで鳴らしていることにも注目しよう。音には、風が吹き抜ける牧草地と揺れる大地と突然の雷雨のような彼らが生まれ育った故郷のような土着的な雰囲気が漂う。彼らを取り巻く環境、──絶望するほど広すぎる大地、スマホで再生される外の世界、発展し過ぎた複雑なテクノロジー、親密で距離の近いコミュニティ──のなかで、暮らし成長する彼らの雄弁と焦燥、愛と憎しみ、夢と現実が、センチメンタルに沈むのではなく、ちょっとした期待を信じて、感情の爆発を起こす。ヤング・パワーとアイデアと友情と苦悩が迸るトゥワインの音楽はパンクであり、フォークであり、悲しみであり、未来へと続く希望だ。広大なオーストラリアの片隅から放たれたこの衝撃が多くの人に伝わって欲しい。

Seefeel - ele-king

 またその話かよ! ってなるかもしれないんだが……シーフィールのセカンド・アルバムにして〈WARP〉からの最初のアルバムとなった『Succour』(1995年)に関しては、当時の同レーベルの日本での発売権を持っていたソニーがその年出したリリースでもっとも売り上げが低かった1枚だったらしいよとele-king編集長の野田努に言われたことが、当時本作のライナーノーツを担当した僕にとっては未だにトラウマとなっていることはまあ僕以外には関係のない話かもしれない。が、当時のテクノ・シーンに興味を持っていたリスナーなら、このアルバムは話題になる! と確信を持って長文のライナーノーツをしたためた僕の気持ちをわかってくれるじゃないだろうか。そう、ステレオラブやPJハーヴェイを産んだUKインディ・レーベル、〈Too Pure〉から1993年にデビューしたシーフィールは、未だアルバムをリリースしていない時点ですでにかのエイフェックス・ツインとの交流を持っていたのだから。
 「リミックスを頼まれる曲の大半はクソみたいなもの」などと発言して、ほとんど原曲を使わず、まんま自作になってるんじゃないかと思わせるようなリミックスすら堂々と発表したりしていたエイフェックス・ツインがシーフィールとのダブルネームで1993年7月に〈Too Pure〉からリリースしたシングル「Time to Find Me」——原曲はシーフィールのデビュー・シングル「More Like Space EP」(1993年3月)に収録——では、曲の良さを損ねることなくAFX Fast MixとAFX Slow Mixというふたつのリミックス(ちなみにこれはこのシングルより数ヶ月先に発表されたニュー・オーダーのシングル「Regret」の、Sabres of Paradiseによるふたつの——Sabres Fast 'N' ThrobとSabres Slow 'N' Lo——リミックスと呼応しているようにも感じる)を披瀝していたことがおおいに注目を集めたのを今でもよく覚えている。じっさいこのコラボレーションはその後、エイフェックス・ツインからのラヴコールによって彼が共同運営するレーベルRephlexからのリリースとなったシーフィールのサード・アルバム『(Ch-Vox) 』に結実する。
 この「Time to Find Me」のリミックス盤、そして「Plainsong EP」の2枚の12インチと、それを1枚にしたCD「Pure, Impure」が同時に発売され(1993年7月)、これを受けて同年10月に満を持して発売されたのがファースト・アルバム『Quique』である。
 アルバムにはデビュー・シングルの曲はひとつも収録されず、続く2枚のシングルからも「Plainsong」のみが選ばれ、リミックスされた「Time to Find Me」も含まれなかったこのファースト・アルバムはしかしむしろ好意的に受け入れられ、同時にライヴ・アクトとしても人気を集めた彼らはわかりやすい例えで言えば「マイ・ブラッディ・ヴァレンタインとエイフェックス・ツインを繋ぐ」ものとしてその存在感を強めたし、アルバム発売後のツアーの一環としておこなわれたコクトー・ツインズとのヨーロッパ・ツアーは、シーフィールの名をいっそう高みへと押し上げるのに十分な役割を果たしたのだった。
 こうして舞台が完全に整ったと言える時期に、彼らは電子音楽の牙城とも言えるシェフィールドの名門レーベル、〈WARP〉への移籍を発表。WARPには盟友、エイフェックス・ツインも、のちにシーフィールのリミックスを手がけることになるオウテカもいた。〈WARP〉初のギタリストを擁するロックバンド!と喧伝されたシーフィールは1994年4月にWARPからの初プロダクトとしてシングル「Starethrough EP」を発表。ここに収録された「Spangle」は、その翌月に発売されたWARPのリスニング・テクノ・コンピレーション『Artificial Intelligence 2』に、オウテカやエイフェックス・ツイン(Polygon Window名義)とともに収録され、彼らの代表曲のひとつとなった。9月には続くシングル「Fracture / Tied」をリリースし、そして翌1995年3月にはセカンド・アルバム『Succour』が日の目を見る。

 シーフィールはデビュー当時からことほどさようにいつもなにかしら話題があり、注目されていたのである。なのに、日本では売れなかった。壊滅的に、と言ってもいいほどに。
 だが、今になって振り返れば……たとえばエイフェックス・ツイン。テクノ好きを中心としたファンベースは確かにあった。けれど、今では名作として語られる『Selected Ambient Works Vol. II』(1994年3月)ですら、リアルタイムで国内盤は発売されていない。エイフェックス・ツインのアルバムが本国と同時に発売されたのは「Girl / Boy Song」で注目された『Richard D. James Album』(1996年)からなのだ。『Vol. II』は、初出から5年を経てようやく1999年に国内盤化された。オウテカだって似たようなものだし、初期のシーフィールをエンジニア的側面から支えてきた盟友マーク・ヴァン・ホーエン(Locust名義も)に至ってはもっと未知の存在にすぎなかっただろう。だから、彼らの名前でこのシーフィールというバンドを知る人はかなりいるはず……というのはかなり甘い期待だったと認めざるを得ない。まあ、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインだってあの時代はまだそれほど人口に膾炙する存在とは言えなかった。
 加えて『Succour』期の彼らが、加工されているとはいえまだギターやヴォーカルの肌理が温かみを保っていた〈Too Pure〉時代よりもよりアブストラクトで鉱物的な音響工作を推し進めていたことも要因としてある。〈WARP〉が契約した初のギター・バンドってどんなの? と思って聴いてみた人にしてみたら、これってどこがロック? ギターはどこ? となるのはある意味当然かもしれない。入口としてはちょっと敷居が高かったのだろうか。
 だから、そういう人が先に『Quique』期の彼らを耳にしていたら、もしかしたらこの『Succour』の日本での受容はもう少し変わっていたのかもしれないと、今にして思うのである。

 この『Quique』のRedux(戻ってきた、よみがえったの意)版は、オリジナル『Quique』の拡大版としてシングル曲や未発表曲が加えられて〈Too Pure〉から2007年にリリースされたものである。この拡大版を作るために集ったメンバーは、これを機に活動休止状態になっていたバンドを再始動する意思を固め、それは2011年の4作目となるセルフ・タイトルのアルバムへと結実する。しかしそのいっぽうで彼らの生みの親とも言えるレーベル、〈Too Pure〉はこの拡大版をリリースした翌年に事実上消滅した(それゆえ、今回取り上げた本作は現在の原盤権を持つBeggars Arkiveからのリイシュー盤である。内容は2007年版と変わらないが、あらたにリマスターが施されている)。そういう意味ではこのアルバムは、〈Too Pure〉の「白鳥の歌」でもある。『Quique』は、この2時間におよぶ拡大版でいっそう際立って甘美な音楽を披瀝する。この甘美さは、WARP期以降の彼らからはいくぶん失われた。もちろんそのかわりに彼らが獲得した精緻な彫刻めいたアーキテクチャもまた魅力的であることは間違いないし、2024年にリリースされた最新の2部作も素晴らしい作品であったから、この先の彼らのあらたな展開はやはり楽しみではあるのだが、しかしときにはこの白昼夢のような世界にどっぷりと浸かりたくなることもあるのだ。

Jane Remover - ele-king

 「過剰」「極度」といったニュアンスで捉えればよいのだろうか、ともかくパンデミック前夜に幕を開けた、いわゆる「ハイパーポップ」とされる新たなムーヴメントは、隔離の時代を終えたいまもたしかな存在感を発揮しつづけている。

 その一端を担う2003年生まれのアメリカ人アーティスト、ジェーン・リムーヴァーが最新作『Revengeseekerz』を4月4日に(ポスト・ハイパー的ムーヴメントの一端を担うレーベル)〈deadAir〉よりリリース。

 パンデミック期には「leroy」名義で過剰にマキシマイズされ、多量のサンプル・ソースで構成されたサウンドデザインを特徴とするマイクロジャンル「ダリアコア」(ハイパーフリップとも)の提唱者として世界中のキッズを熱狂させつつ、本名義ではインディ・ロックやエモとEDM、デジコア──ハイパーポップのなかでもよりヒップホップに近接したサブジャンル──をミキサーにかけたような作品を次々と披露するなど、ハイパー以降のシーンにおいて特異な才能を発揮しつづけている。

 そんな彼女(*ジェーンはトランス女性であることをカミングアウトしている)の新作には、デトロイトのラッパー・ダニー・ブラウンが参加するなどのサプライズも。実験的でマキシマイズされた作風はそのままに、ラップでもポップでもない未知の地平に向けて日々邁進しつづけているようだ。

 ともかく、2020年代以降に水面下で起きている新しい動向についての興味の有無は別として、まずはぜひ一聴を。耳馴染みがなくとも、案外好みに合うかもしれません。

Artist: Jane Remover
Title: Revengeseekerz
Label: deadAir
Format: Digital
Release Date: 2025.04.04

Tracklist:
1. TWICE REMOVED
2. Psychoboost ft danny brown
3. Star people
4. Experimental Skin
5. angels in camo
6. Dreamflasher
7. TURN UP OR DIE
8. Dancing with your eyes closed
9. Fadeoutz
10. Professional Vengeance
11. Dark night castle
12. JRJRJR

https://janeremover.bandcamp.com/album/revengeseekerz
https://stem.ffm.to/revengeseekerz

Cosey Fanni Tutti - ele-king

 コージー・ファニ・トッティの小女時代からTG結成にいたるまでの人生が映画化されるというニュースが話題になったのは、彼女の自伝『アート セックス ミュージック』(2017)が出版され、それが大いに話題になってから数年後のことだった。それは、暗闇のなかでラジオに耳を澄ませながら空想の友だちを作っていた少女の話であり、大学を中退し、ポルノ産業で働きながら芸術集団COUM Transmissionsのメンバーとして活動、やがてThrobbing Gristleでベースを弾くにことになる女性の物語になるらしい。
 また、コージー・ファニ・トッティはあれからソロ・アルバム『Tutti』(2019)、『Re Sisters』(2022)という本を出版した。それは三人の女性——彼女自身、電子音楽家のデリア・ダービシャー、そして15世紀の神秘家で作家のマーガリー・ケンプ——の「記録」を通してその人生を探るものだった。
 そして来たるべく6月、コージー・ファニ・トッティは9曲入りの新作『2t2』をリリースする。
彼女はいう。「“Stound”というトラックでの私の倍音唱法は、内なる自己に触れるもので、感情的にも身体的にも、存在の核にまで入り込み、音が浸透して癒やしをもたらすとともに、私たちが直面するものに対する力強さ、抵抗、回復力を生み出すもの」 。よりメランコリックな瞬間でも、彼女は「悲しむことは大丈夫、それは人生の一部だ」と説明する。「人生の一部であるが、失った人びととの思い出や互いに共有する瞬間には喜びもたくさんある。喜びは私たちの抵抗だ」
 現在は、そのポジティヴなヴァイブが詰まった曲“Stound”が公開中。
 https://thequietus.com/news/cosey-fanni-tutti-details-new-album-2t2/

 コージー・ファニ・トッティの新作『2t2』は〈Conspiracy International〉より2025年6月13日にリリースされる。

Bruce Springsteen - ele-king

 この度、ブルース・スプリングスティーンの通称「失われたアルバム」がリリースされることになった。アナログでは9枚組、CDとしては7枚組のセットで発売されるこのコレクションは、1983年から2018年のあいだに録音された7枚のフル・アルバム(計82曲)を網羅しているという。
 これらのアルバムは、いちどは録音されたものの最終的にリリースされることがなかった作品で、その多くは90年代に制作された音源になる。スプリングスティーンはパンデミック中にこれら「失われたアルバム」を見直し、「失われた90年代」というこれまでの見解を払拭するためにリリースを決意したと明かしているが、まあなんといっても注目は、あの暗い傑作『ネブラスカ』と『ボーン・イン・ザ・USA』のあいだの試行錯誤が記録された『LA Garage Sessions '83』を筆頭に、1993年の『Streets Of Philadelphia Sessions』、E ストリート・バンドをフィーチャーしたカントリー ・アルバム『Somewhere North Of Nashville』あたりだろうけれど、木津毅のようなコア・ファンには、2019 年のアルバム『Western Stars』への架け橋であった『Twilight Hour』や映画のサウンドトラックとして制作された『Faithless』も聴きたかったに違いない。なにせこれらは当初、アルバム作品として録音されていたものなのだ。(つまり、たんなる未発表の寄せ集めではない)
 ちなみにこのボックスのなかで、アルバムとして考えられていなかった唯一の作品は『Perfect World』だとスプリングスティーンは明かしている。
 『トラックスII:ザ・ロスト・アルバムズ』は6月27日にソニーよりリリース。また、ボックスから20曲を抜粋したハイライト集『ロスト・アンド・ファウンド:セレクションズ・フロム・ザ・ロスト・アルバムズ』(1CD/2LP)も同時リリースされる。

 今年2025年はBorn To Run 50周年。そして4月には初来日公演から40周年(初日は1985年4月10日代々木オリンピック・プール)を迎えるブルース・スプリングスティーン。その記念すべき年に、遂に1998年に発表された未発表曲集『トラックス』の第二弾が発売されることが決定した。



 6月27日に発売となる『トラックスII:ザ・ロスト・アルバムズ』には、1983年から2018年までの35年間で、制作されながらもこれまで世に出ることはなかった「完全未発表アルバム」7枚を収録。“失われたアルバム”7枚には全83曲(82曲の未発表トラック+アルバム未収録ヴァージョン1曲)が収められ、それぞれのアルバムごとに特色あるパッケージングが施されている。アーカイヴからのレアな写真、エッセイストのエリック・フラニガンによる“失われたアルバム”各タイトルについてのライナーノーツ、そしてスプリングスティーン本人自らこのプロジェクトの紹介を収録した、100ページにも及ぶ「布装豪華ハードカバー本」とともに、マスターテープを模した超豪華ボックスに収納。内容もパッケージも前代未聞の歴史的コレクターズ・アイテムとなる。超豪華ボックス・セットはファースト・プレスのみ。日本盤は輸入盤国内仕様で2000セット限定。日本版ブックレットには五十嵐正氏によるハードカバー本の完全翻訳と日本版ライナーノーツ、そして三浦久による全曲対訳と訳者ノートを収録。「失われたアルバム」を紐解く充実した内容になる。

https://brucespringsteen.lnk.to/TLATrailerPR

「やりたい時にはいつでも自宅で録音できる環境のおかげで、幅広い様々な音楽的方向性に入り込めた」とスプリングスティーンが説明する「完全未発表アルバム」7枚の内容は、『ネブラスカ』と『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』を繋ぐ重要なリンクとしてローファイ・サウンドを探求した『LAガレージ・セッションズ’83』、グラミー賞、アカデミー賞を受賞、ドラム・ループやシンセサイザーのサウンドに挑戦した『ストリーツ・オブ・フィラデルフィア・セッションズ』、未完の映画のサウンドトラック作品『フェイスレス』、ペダル・スティールを擁する小編成のカントリー・バンド編成の『サムウェア・ノース・オブ・ナッシュヴィル』、国境の物語を豊かに織りなす『イニョー』、オーケストラ主導の20世紀半ばのフィルム・ノワールを彷彿させる『トワイライト・アワーズ』、アリーナにおあつらえ向きなEストリート・テイスト満載の『パーフェクト・ワールド』。この7枚のアルバムは、その音楽の世界を広げてきたスプリングスティーンのキャリアの年表に豊かな章を書き入れ、今まで知られていなかった側面や、ジャンルを超えた多才ぶりも魅せつけてくれる。

 ボックスからの第一弾シングルは「レイン・イン・ザ・リヴァー」。“失われたアルバム”の中の7枚目『パーフェクト・ワールド』に収録されている。
 https://brucespringsteen.lnk.to/RITRPR
 
 スプリングスティーンはアルバムの主題は何かということによって曲を選択していくため、彼自身が気に入っている曲も含め、リリースされずじまいの曲がアルバム何枚分も存在していると言われてきたが、今回遂にその全貌が明らかになる。なぜこの曲が世に出ていなかったのか?と不思議なくらいのクォリティの高い楽曲が詰め込まれ、通常のアーティストの未発表集のようなものとは一線を画す、彼が辿ってきた道をもう一度別の道で辿る、歴史的な作品集といえるだろう。『トラックスII:ザ・ロスト・アルバムズ』は限定7枚組CDボックス(日本は2000セット限定)、9枚組LPボックス(輸入盤のみ)、デジタル版の各フォーマットで発売される。

 また、未発表ボックス・セットから選りすぐりの20曲を収録したハイライト盤『ロスト・アンド・ファウンド:セレクションズ・フロム・ザ・ロスト・アルバムズ』は1CD(日本盤は高品質BSCD2)、2LP(輸入盤のみ)で同じく6月27日に発売となる。

 『トラックスII:ザ・ロスト・アルバムズ』は、プロデューサーのジョン・ランダウ監修のもと、プロデューサーのロン・アニエッロとエンジニアのロブ・レブレーと共に、スプリングスティーンがニュージャージー州のスリル・ヒル・レコーディング(自宅スタジオ)にて編集した。

ブルース・スプリングスティーン
『トラックスII:ザ・ロスト・アルバムズ』
Bruce Springsteen / Tracks II : The Lost Albums

2025年6月27日 (金)発売予定 【2000セット限定】
完全生産限定盤 輸入盤国内仕様(詳細な日本版ブックレット付) 
SICP-31767〜73(7CD超豪華ボックス・セット) 税込:¥35,750 (税抜:¥32,500)
ブルース・スプリングスティーン本人とエリック・フラナガンによるライナーノーツ/布装豪華ハードカバー本封入/英文ブックレット翻訳&日本版ライナーノーツ:五十嵐正/対訳&訳者ノート:三浦久
(*9LP BOX:輸入盤で発売)

<収録曲>
DISC1 : 『LA Garage Sessions ’83/LAガレージ・セッションズ‘83』 
1. Follow That Dream/フォロー・ザット・ドリーム
2. Don’t Back Down On Our Love/ドント・バック・ダウン・オン・アワー・ラヴ
3. Little Girl Like You/リトル・ガール・ライク・ユー
4. Johnny Bye Bye/ジョニー・バイ・バイ
5. Sugarland/シュガーランド
6. Seven Tears/セヴン・ティアーズ
7. Fugitive’s Dream/フュージティヴズ・ドリーム
8. Black Mountain Ballad/ブラック・マウンテン・バラード
9. Jim Deer/ジム・ディアー
10. County Fair/カウンティ・フェア
11. My Hometown/マイ・ホームタウン
12. One Love/ワン・ラヴ
13. Don’t Back Down/ドント・バック・ダウン
14. Richfield Whistle/リッチフィールド・ホイッスル
15. The Klansman/ザ・クランズマン
16. Unsatisfied Heart/アンサティスファイド・ハート
17. Shut Out The Light/シャット・アウト・ザ・ライト
18. Fugitive’s Dream (Ballad)/フュージティヴズ・ドリーム(バラード)

DISC2 : 『Streets of Philadelphia Sessions/ストリーツ・オブ・フィラデルフィア・セッションズ』
1. Blind Spot/ブラインド・スポット
2. Maybe I Don’t Know You/メイビー・アイ・ドント・ノウ・ユー
3. Something In The Well /サムシング・イン・ザ・ウェル
4. Waiting On The End Of The World/ウェイティング・オン・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド
5. The Little Things/ザ・リトル・シングズ
6. We Fell Down/ウィー・フェル・ダウン
7. One Beautiful Morning/ワン・ビューティフル・モーニング
8. Between Heaven and Earth/ビトウィーン・ヘヴン・アンド・アース
9. Secret Garden /シークレット・ガーデン
10. The Farewell Party/ザ・フェアウェル・パーティ

DISC3 : 『Faithless/フェイスレス』
1. The Desert (Instrumental)/ザ・デザート(インストゥルメンタル)
2. Where You Goin’, Where You From/ウェア・ユー・ゴーイン、ウェア・ユー・フロム
3. Faithless/フェイスレス
4. All God’s Children/オール・ゴッズ・チルドレン
5. A Prayer By The River (Instrumental)/ア・プレイヤー・バイ・ザ・リヴァー(インストゥルメンタル)
6. God Sent You/ゴッド・セント・ユー
7. Goin’ To California/ゴーイン・トゥ・カリフォルニア
8. The Western Sea (Instrumental)/ザ・ウェスタン・シー(インストゥルメンタル)
9. My Master’s Hand/マイ・マスターズ・ハンド
10. Let Me Ride/レット・ミー・ライド
11. My Master’s Hand (Theme)/マイ・マスターズ・ハンド(テーマ)

DISC4 : 『Somewhere North of Nashville/サムウェア・ノース・オブ・ナッシュヴィル』
1. Repo Man/リーポ・マン
2. Tiger Rose/タイガー・ローズ
3. Poor Side of Town/プア・サイド・オブ・タウン
4. Delivery Man/デリバリー・マン
5. Under A Big Sky/アンダー・ア・ビッグ・スカイ
6. Detail Man/ディテール・マン
7. Silver Mountain/シルバー・マウンテン
8. Janey Don’t You Lose Heart/ジェイニー・ドント・ユー・ルーズ・ハート
9. You’re Gonna Miss Me When I’m Gone/ユア・ゴナ・ミス・ミー・ウェン・アイム・ゴーン
10. Stand On It/スタンド・オン・イット
11. Blue Highway/ブルー・ハイウェイ
12. Somewhere North of Nashville/サムウェア・ノース・オブ・ナッシュヴィル

DISC5 : 『Inyo/イニョー』
1. Inyo/イニョー
2. Indian Town/インディアン・タウン
3. Adelita/アデリータ
4. The Aztec Dance/ジ・アズテック・ダンス
5. The Lost Charro/ザ・ロスト・チャロ
6. Our Lady of Monroe/アワー・レディー・オブ・モンロー
7. El Jardinero (Upon the Death of Ramona)/エル・ハルディネロ(アポン・ザ・デス・オブ・ラモーナ)
8. One False Move/ワン・フォルス・ムーヴ
9. Ciudad Juarez /シウダー・フアレス
10. When I Build My Beautiful House/ウェン・アイ・ビルド・マイ・ビューティフル・ハウス

DISC6 : 『Twilight Hours/トワイライト・アワーズ』
1. Sunday Love/サンデー・ラヴ
2. Late in the Evening/レイト・イン・ジ・イヴニング
3. Two of Us/トゥー・オブ・アス
4. Lonely Town/ロンリー・タウン
5. September Kisses/セプテンバー・キッシズ
6. Twilight Hours /トワイライト・アワーズ
7. I’ll Stand By You/アイル・スタンド・バイ・ユー
8. High Sierra/ハイ・シエラ
9. Sunliner/サンライナー
10. Another You/アナザー・ユー
11. Dinner at Eight/ディナー・アット・エイト
12. Follow The Sun/フォロー・ザ・サン

DISC7 : 『Perfect World/パーフェクト・ワールド』
1. I’m Not Sleeping/アイム・ノット・スリーピング
2. Idiot’s Delight/イディオッツ・ディライト
3. Another Thin Line/アナザー・シン・ライン
4. The Great Depression/ザ・グレイト・ディプレッション
5. Blind Man/ブラインド・マン
6. Rain In The River/レイン・イン・ザ・リヴァー
7. If I Could Only Be Your Lover/イフ・アイ・クッド・オンリー・ビー・ユア・ラヴァー
8. Cutting Knife/カッティング・ナイフ
9. You Lifted Me Up/ユー・リフテッド・ミー・アップ
10. Perfect World/パーフェクト・ワールド

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前代未聞の未発表超豪華ボックスから選りすぐったハイライト盤
ブルース・スプリングスティーン 『ロスト・アンド・ファウンド:セレクションズ・フロム・ザ・ロスト・アルバムズ』
Bruce Springsteen / Lost and Found: Selections From The Lost Albums
2025年6月27日 (金)発売予定
通常盤(日本プレスBSCD2) SICP-31774 税込:¥2,860 (税抜:¥2,600)
(2LP:輸入盤で発売)

<収録曲>
1 Follow That Dream/フォロー・ザット・ドリーム
2 Seven Tears/セヴン・ティアーズ
3 Unsatisfied Heart/アンサティスファイド・ハート
4 Blind Spot/ブラインド・スポット
5 Something In The Well/サムシング・イン・ザ・ウォール
6 Waiting On The End Of The World/ウェイティング・オン・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド
7 Faithless/フェイスレス
8 God Sent You/ゴッド・セント・ユー
9 Repo Man/リーポ・マン
10 Detail Man/ディテール・マン
11 You’re Gonna Miss Me When I’m Gone/ユア・ゴナ・ミス・ミー・ウェン・アイム・ゴーン
12 The Lost Charro/ザ・ロスト・チャロ
13 Inyo/イニョー
14 Adelita/アデリータ
15 Sunday Love/サンデー・ラヴ
16 High Sierra/ハイ・シエラ
17 Sunliner/サンライナー
18 I’m Not Sleeping/アイム・ノット・スリーピング
19 Rain in the River/レイン・イン・ザ・リヴァー
20 You Lifted Me Up/ユー・リフテッド・ミー・アップ

Jefre Cantu-Ledesma - ele-king

 米国テキサス出身のジェフリー・キャントゥ=レデスマのことを知ったのは、2006年に〈Spekk〉からリリースされたジ・エルプス(The Alps)の『Jewelt Galaxies / Spirit Shambles』だったと思う。その後、同じく日本のレーベル〈Spekk〉から2007年にリリースされた、彼のソロ作『The Garden Of Forking Paths』も聴いた。両作とも、プリミティヴなアヴァン・フォークをエクスペリメンタル化したようなサウンドスケープが印象的で、当時は繰り返し聴いたものだった。00年代初頭から中盤にかけて、密かに(?)フリー・フォーク・ブームがあったと思うのだが、その系譜にある音楽として聴いていたように思う。ただ、『The Garden Of Forking Paths』には「時」が浮遊するようなアンビエンスが生成されており、今聴くと、現在の彼に通じる瞑想的な音響感覚がすでにあったことに気づかされる。

 決定的だったのは、2010年に英国の〈Type〉からリリースされた『Love Is a Stream』である。シューゲイザー風味のアンビエント/ドローンとでも言うべきか。当時はティム・ヘッカーの音に惹かれていた時期だったので、とてもはまり、CDを何度も繰り返し聴いた記憶がある。シューゲイザーといっても、マイ・ブラッディ・バレンタインというよりは、スコット・コルツのlovesliescrushing『Bloweyelashwish』(1993)や、Astrobrite『Whitenoise Superstar』(2007)の系譜にあるアンビエント・シューゲイザーといった趣で、自分の好みにぴったりの音だった。

 今思えば『Love Is a Stream』は、シューゲイズ的要素というよりも、ジェフリー・キャントゥ=レデスマの音楽が持つ「浮遊感覚」「幻想感覚」「瞑想感覚」が見事に表現された作品だったことが重要だった。そもそも、シューゲイズの肝はノイズではなく、これらの感覚にあるとも言える。その意味でも、彼の音楽はシューゲイザーというジャンルに対して非常にクリティカルな存在だったと思う。あの時代のアンビエント/ドローンがどこから生まれ、何を参照していたかを考えるうえでも示唆的な作品である。

 米国ニューヨークのインディ・レーベル〈Mexican Summer〉からリリースされた新作である本作『Gift Songs』では、彼の「瞑想感覚」が全面的に展開された傑作に仕上がっている。ただし、音の質感や形式はこれまでと大きく変化している。ひとことで言えば、アコースティックなのだ。どこかジム・オルークと石橋英子、山本達久によるカフカ鼾と共に聴きたくなるような、ピアノとドラムのミニマルな演奏と、透明なドローン/アンビエントが一体化したアンサンブルとサウンドが展開されている。

 『Gift Songs』の音は、フランスの〈Shelter Press〉からリリースされたフェリシア・アトキンソンとのコラボレーション作の影響から生まれたのではないかと想像する。だが同時に、近年、禅僧やホスピスの職員としても活動しているジェフリー・キャントゥ=レデスマの死生観が、色濃く反映されたアルバムでもあるのだろう。だからこそ、ソロ・アルバムなのだと思う。また、どうやら彼が移住したニューヨーク州北部・ハドソン渓谷での自然体験も、この作品に大きな影響を与えているらしい。自然と精神、ミニマルとドローン、生と死──さまざまな境界線を越境しつつ、どこか無化されてしまうような瞑想的なアルバム、それが本作である。その意味で、ジェフリー・キャントゥ=レデスマの(現時点での)集大成といえる作品であろう。

 アルバムには、20分ほどの長尺曲“The Milky Sea”、三部構成の組曲“Gift Song”、アンビエント/ドローンの“River That Flows Two Ways”の計5曲が収録されている。参加ミュージシャンは、ピアノとアレンジを担当したオメル・シェメシュ、ベースおよびミックスを担当したジョセフ・ワイズ、チェロのクラリス・ジェンセン、ドラムとパーカッションのブッカー・スタードラムら。ジェフリー・キャントゥ=レデスマ自身も、ギターやシンセサイザー、パーカッションなどを担当している。

 “The Milky Sea”では、オメル・シェメシュのピアノを基調に、ミニマルなアンサンブルが展開される。硬質な響きと、心に落ち着きをもたらす瞑想的な感覚が同居した、素晴らしい楽曲/演奏だ。ジャズ的な感覚とアンビエント的な感覚が見事に融合し、聴き手の心を浄化するような透明な響きが生まれている。約20分に及ぶ長尺であり、『Gift Songs』のオープナーにして中核を担う楽曲といえる。

 続く“Gift Song I”、“Gift Song II”、“Gift Song III”という3曲は、「Gift Song 組曲」とでも呼ぶべき構成で、“The Milky Sea”よりもさらに静謐なサウンドが展開される。アナログではここからがB面となり、心身をより深く沈静させていく構成になっているのかもしれない。ここでもオメル・シェメシュのピアノは透明な音色で音楽のトーンを支えており、特に“Gift Song III”のピアノは実に瀟洒だ。クラシカルな響きとジャズ的な揺れの間を行き来するような音の揺らぎが美しい。

 アルバム最終曲“River That Flows Two Ways”では、アンビエント/ドローンが展開される。ここでは、すべての音が消失した後の世界のような、それでいて奇妙な安らぎに満ちた音が持続する。すべての音が溶け合った黄泉のサウンドスケープとでも言うべきか。アルバムのアートワークに描かれた青い花のような、天国的な音である。

 本作『Gift Songs』は、聴き手の心を静かに浄化してくれるような、瞑想的な音楽である。心を汚すような出来事ばかりが起きる今この時代において、奇跡的ともいえる純粋な善意に満ちた音世界が、ここにはある。私はジェフリー・キャントゥ=レデスマがこれほどの音世界に至った経緯や、彼の人生について詳しくは知らない。だが、音を聴けば、彼が人生──すなわち生と死──に常に向き合いながら生きていることが伝わってくる。確かに音は音だ。だが、その音を発する人の人生観は、音の隅々にまで鳴り響いているように感じる。その意味で、『Gift Songs』に満ちている「善性」への希求は、これまでの彼の人生そのものなのかもしれない。

Colloboh - ele-king

 2作のEPをリリースしたのみながら、Beach Houseのサポート・アクトやSuzanne Cianiとの共演ライヴを果たすなど注目を集める逸材Colloboh。Leaving Records所属の彼の初の日本ツアーがこのGWにはじまる。
 CIRCUS Tokyo公演ではハイ・エナジーなアップビート・セットでDaisuke Tanabe、Sakura Tsurutaと共演、落合のSoup公演ではアンビエント寄りのセットでYosi Horikawa、Albino Soundと共演する。
 また、新宿のWPÜ SHINJUKUと京都のAce Hotel内のPIOPIKOでDJセットも披露。こうご期待。

COLLOBOH JAPAN TOUR 2025

5/2 (Fri) @CIRCUS TOKYO (LIVE: UPBEAT SET)
w/ Daisuke Tanabe, Sakura Tsuruta
5/3 (Sat) @WPÜ SHINJUKU (DJ SET)
5/4 (Sun) @OCHIAI SOUP (LIVE: AMBIENT SET)
w/ Yosi Horikawa, Albino Sound
5/5 (Mon) @KYOTO PIOPIKO (DJ SET)


Colloboh

 ナイジェリアで生まれ、メリーランド州ボルチモアを経て現在はLAを拠点に活動するエクスペリメンタル・プロデューサー/コンポーザーで、過去数年間、ジャンルを超えたモジュラー・シンセの妙技を培ってきた。独学でシンセシスを学んだCollobohのDIYレコーディング日記(Instagramにアーカイブされている)は、すぐに熱心なオンライン・フォロワーを集め、最終的にLeaving Recordsの創設者Matthewdavidの目に留まった。彼はすぐに当時26歳だったCollobohを、Leavingの月例ショーケース「Listen to Music Outside In The Daylight Under a Tree」でのパフォーマンスに起用。そして2021年、Collobohはボルチモアからロサンゼルスに移住し、フルタイムで音楽に専念し、すぐにこの街の活気あるエクスペリメンタル・シーンに定着した。同年リリースしたデビューEP『Entity Relation』がIDM〜エレクトロニカ的な要素も垣間見せるクラブ・ビートに真っ向から取り組んだのに対し、2023年のセカンドEP『Saana Sahel』では、新進気鋭の作曲家の野望の広さを示す作品となった。EPのタイトル「Saana Sahel」は、Collobohの純粋な想像力の地、つまり緑豊かな海岸線と広大な砂漠に広がる手つかずのユートピアを指している。荘厳な「Acid Sunrise」(フィリップ・グラスを想起させる)で始まるこのEPは、この地域の多様な環境とムードをマッピングする一種の地図帳のような役割を果たしている。そして実に多彩で、この6曲には、恍惚としたジャズのフリークアウト、サンバのシャッフル、神秘的なゲスト・オーカル、そしてドビュッシーやガブリエル・フォーレの挿入が散りばめられた実に幅広いサウンドをみせている。
 EPを2作リリースしたのみながら、Beach Houseのサポート・アクトやSuzanne Cianiとの共演ライヴを果たすなど、注目の逸材。
https://www.instagram.com/colloboh/

Chihei Hatakeyama & Shun Ishiwaka - ele-king

 アンビエント作家、畠山地平とジャズ・ドラマー、石若駿による共作『Magnificent Little Dudues』は昨年の注目すべきコラボレーションのひとつだった。「Vol.1」と「Vol.2」に分けられて発表されていた、その「Vol.2」のほうがついにフィジカル化される。CDは4月23日、LPは5月7日に発売。また、4月24日には新宿ピットインでリリース記念ライヴが開催、特別ゲストとして角銅真実も出演するという。これは駆けつけるしかない。

Chihei Hatakeyama & Shun Ishiwaka
Magnificent Little Dudues Vol.2

フィジカル・アルバム発売決定!

アンビエント/ドローン・ミュージシャンChihei Hatakeyama(畠山地平)とジャズ・ドラマーの石若駿とのコラボレーション・アルバムの第二弾『Magnificent Little Dudes Vol.2』のフィジカルCD/LPがついに発売される。リリース翌日となる4月24日(木)には新宿ピットインにて"リリース記念Live"の開催も決定した。

昨年10月にデジタルのみで先行リリースとなった『Magnificent Little Dudes Vol.2』。4月23日(水)にCDが、5月7日(水)にLPが、いずれもボーナス・コンテンツとして3曲のリミックスを追加収録してリリースされる。また、そのリミックス3曲を収録したデジタルEP『Magnificent Little Dudes (The Remixes)』も4月25日(金)に配信リリースとなる。

今回、リミックスを手がけたChihei Hatakeyamaから次のコメントが届いた。
「元々のミックスはレコーディング現場の雰囲気を強く再現したものだった。それはとても良かった。レコーディングから時間が経過すると、他の可能性に気付く時がある。今回もある日違うミックスを作ったら面白いんじゃないかと思った。以前はドローン・サウンドの海に沈んだドラムという感じだったが、今回はより空間を作り、音と音の間の空気感を大事にした」。

なお、4月24日(木)の新宿ピットイン公演会場では来場者限定に一足先に『Magnificent Little Dudes Vol.2』のLPを販売するので、ぜひお見逃しなく!

Chihei Hatakeyama & Shun Ishiwaka(畠山地平&石若駿)
Magnificent Little Dudes Vol.2(マグニィフィセント・リトル・デューズ・ヴォリューム 2)
発売日:CD:4/23(水) / LP:5/7(水)
レーベル:Gearbox Records
品番:CD: GB1595CD / 2LP (140g盤): GB1595
※日本特別仕様盤特典:日本先行発売、帯付き

<トラックリスト>
(CD)
1. M3 (feat. Cecilia Bignall)
2. M2
3. M5
4. M6
5. M1_Space Age Mix
6. M4 (feat. Hatis Noit)_Future Days Mix
7. M3 (feat. Cecilia Bignall)_Unreliable Angel Mix

(LP)
Side-A
1. M3 (feat. Cecilia Bignall)
2. M1_Space Age Mix

Side-B
2. M2
3. M4 (feat. Hatis Noit)_Future Days Mix

Side-C
1. M5

Side-D
1. M6
2. M3 (feat. Cecilia Bignall)_Unreliable Angel Mix

<クレジット>
Chihei Hatakeyama: electric guitar and sound effects
Shun Ishiwaka: drums and percussion, piano on ‘M6’
Cecilia Bignall: Cello on ‘M3’
Hatis Noit: voice on ‘M4_Future Days Mix’

Composed by Chihei Hatakeyama and Shun Ishiwaka
‘M3’ composed by Chihei Hatakeyama, Shun Ishiwaka and Cecilia Bignall
‘M4_Future Days Mix' Composed by Chihei Hatakeyama, Shun Ishiwaka and Hatis Noit

Produced by Darrel Sheinman

Recorded at Aobadai Studio
Engineered by Masato Hara

‘M3’, ‘M2’, ‘M5’ mixed by Caspar Sutton-Jones
‘M6’, ‘M1_Space Age Mix’, ‘M4_Future Days Mix’, ‘M3_Unreliable Angel Mix’ mixed by Chihei Hatakeyama
Mastered by Caspar Sutton-Jones

EP『Magnificent Little Dudes (The Remixes)』4/25(金)配信スタート!
<トラックリスト>
1. M1_Space Age Mix
2. M4 (feat. Hatis Noit)_Future Days Mix
3. M3 (feat. Cecilia Bignall)_Unreliable Angel Mix
https://bfan.link/magniificent-little-dudes

アルバム『Magnificent Little Dudes Vol.2』配信中!
https://bfan.link/magnificent-little-dudes-volume-02


●ライヴ情報

『Magnificent Little Dudes vol.2』 リリース記念Live
2025年4月24日(木)
Open19:00 / Start19:30
前売り:¥3,850税込 ¥3,500+税(1DRINK付)
当日:¥4,400税込 ¥4,000+税(1DRINK付)
出演:畠山地平(G)石若 駿(Ds)スペシャルゲスト:角銅真実
http://pit-inn.com/artist_live_info/250424hatake/

※『Magnificent Little Dudes Vol.2』のLPを会場にて先行販売予定!!
Magnificent Little Dudues Vol.1発売中!

<トラックリスト>
(CD)
1. M0
2. M1.1
3. M1.2
4. M4 (feat. Hatis Noit)
5. M7

(LP)
Side-A

1. M0

Side-B

1. M1.1

Side-C
1. M1.2

Side-D
1. M4 (feat. Hatis Noit)
2. M7

Chihei Hatakeyama & Shun Ishiwaka(畠山地平&石若駿)
Magnificent Little Dudes Vol.1(マグニィフィセント・リトル・デューズ・ヴォリューム 1)
発売日:発売中!
レーベル:Gearbox Records
品番:CD: GB1594CD / 2LP: GB1594

※日本特別仕様盤特典:日本先行発売、帯付き

『Magnificent Little Dudes Vol.1』配信中:
https://bfan.link/magnificent-little-dudes-volume-01


バイオグラフィー

<Chihei Hatakeyama / 畠山地平>

Photo Credit: Makoto Ebi

2006年に前衛音楽専門レーベルとして定評のあるアメリカのより、ファースト・アルバムをリリース。以後、オーストラリア、ルクセンブルク、イギリス、日本など、国内外のレーベルから現在にいたるまで多数の作品を発表している。デジタルとアナログの機材を駆使したサウンドが構築する、美しいアンビエント・ドローン作品を特徴としており、主に海外での人気が高く、Spotifyの2017年「海外で最も再生された国内アーティスト」ではトップ10にランクインした。2021年4月、イギリス

<Shun Ishiwaka / 石若駿>

Photo Credit: Makoto Ebi

1992年北海道生まれ。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校打楽器専攻を経て、同大学を卒業。卒業時にアカンサス音楽賞、同声会賞を受賞。2006年、日野皓正special quintetのメンバーとして札幌にてライヴを行なう。2012年、アニメ『坂道のアポロン』 の川渕千太郎役ドラム演奏、モーションを担当。2015年には初のリーダー作となるアルバム「Cleanup」を発表した。また同世代の仲間である小西遼、小田朋美らとCRCK/LCKSも結成。さらに2016年からは「うた」をテーマにしたプロジェクト「Songbook」も始動させている。近年はゲスト・ミュージシャンとしても評価が高く、くるりやKID FRESINOなど幅広いジャンルの作品やライヴに参加している。2019年には新たなプロジェクトAnswer To Rememberをスタートさせた。2023年公開の劇場アニメ『BLUE GIANT』では、登場人物の玉田俊二が作中で担当するドラムパートの実演奏を手がけた。2024年5月、日本を代表するアンビエント/ドローン·ミュージシャン、畠山地平とのコラボレーション作品『Magnificent Little Dudes Vol.1』をリリース。その後同作のVol.2も発売した。

Yumiko Morioka & Takashi Kokubo - ele-king

 「宮下智」名義でポップスを制作する傍らアンビエント~ニューエイジ作品を数々生み出してきたピアニスト・盛岡夕美子と、緊急地震速報のアラーム音など生活に溶け込むサウンドをいくつも手掛け、日本を代表する環境音楽家として知られる小久保隆のコラボレーション・アルバム『Gaiaphilia』のCD版が、日本のみの限定商品としてリリースされる。

 また、CD化に際してリリースパーティの開催もアナウンスされている。こちらは今週日曜日、4月13日にPOLARIS tokyoにて。Yumiko Morioka & Takashi Kokuboほか、フィンランドのOlli Aarniと上村洋一のコラボ・ライヴ(!)も。チケット・詳細はこちらから。

 近年では国外からの逆輸入的な評価を受け日の目を見ることとなったかつての日本のアンビエント~ニューエイジ。その先駆者にして代表的存在の作品を、この機会にCD──かつてもっともスタンダードな音楽の入れ物だった媒体──で手に入れてみましょう、せっかくだから。

ジャパニーズ・アンビエント/ニューエイジのリヴィング・レジェンド2人によるコラボレーション作

作曲家・ピアニスト、盛岡夕美子と環境音楽家、サウンドデザイナー、メディア・プロデューサー、小久保隆による共作作品。両者にとって新たな章を刻む本作は、日本の自然の永遠の美しさに根ざした、深く感情的で超越的な体験を聴き手へ提供する、日本環境音楽の新たな傑作。

近年再評価が著しい盛岡夕美子とコンスタントに作品をリリースしてきた小久保隆が、アンビエント・サウンドスケープの旅、『Gaiaphilia』でタッグを組んだ。盛岡の優美なピアノ曲と小久保の没入型フィールド・レコーディング、アトモスフェリックなシンセサイザーがシームレスに融合した作品。

このコラボレーションは、何十年にもわたって画期的な作品を生み出してきた、アンビエント・ミュージックとニューエイジ・ミュージックの分野の2人の先駆者が結集して生み出したものだ。2人は2023年に代官山の「晴れたら空に豆まいて」で開催されたコンサートで共演を果たしたことをきっかけに交流が生まれ、その後自然発生的にコラボレーションが始まった。
1987年のアルバム『余韻 (Resonance)』(Métron Recordsからアナログでリイシューされ各所で高い評価を得た)で名声を博した盛岡は、自身の内省的な演奏に小久保の鮮やかな環境テクスチャを融合させ、自然とメロディの対話を生み出している。

『余韻 (Resonance)』をリリースした後、盛岡は音楽界から身を引き、家族のためにアメリカに移住した。彼女の作品は長年ファンにひっそりと愛され、2020年に再発されて初めて広く認知されるようになった。7年前、壊滅的な山火事でカリフォルニアの自宅が焼け落ちたため、東京に戻り、ショコラティエに転身したが、近年はピアノへの情熱を再燃し、ライヴ演奏や新作のレコーディングを行っている。

小久保隆の伝説的なディスコグラフィーは30年以上にわたり、近年ではYouTubeのアルゴリズムや海賊版のアップロードを通じて広く評価され、数千万回再生されているが、彼はサウンド・デザインの仕事、特に日本の地震警報音やクレジットカード決済のジングルで最もよく知られており、彼の作品は日本社会に浸透している。

「地球への愛と懸念から、私たちは2人とも独自の感性と探究心を持っており、それを音楽を通して表現しています。」

共通の哲学的関心に基づいており、自然の回復力と調和に対する深い敬意を反映している。ガイア、母なる地球の再生、生命の相互関係というテーマが中心にあり、宇宙論、神聖幾何学、日本の神秘的なカタカムナの伝統からインスピレーションを得ており、このアルバムは自然界の繊細なバランスを音が映し出す瞑想的な空間にリスナーを誘っていく。

サウンドデザインの達人である小久保は、衝突試験用ダミーの頭の形をした自作のバイノーラル・マイクで録音した独特のフィールド・レコーディングでこのビジョンを高めている。ボルネオのジャングルから海の波の穏やかなリズムまで、小久保の地球規模の録音は、盛岡の内省的なピアノ曲を完璧に引き立てる没入感のあるサウンドスケープに変化させていく。

「タイトルのGaiaphilliaは、自然と生命への愛と尊敬を包含する新しい言葉です。この感情こそが、私たちが表現したいテーマです。」

山梨にある小久保のログハウス・スタジオ「スタジオイオン」で録音されたこのコラボレーションは、日本の自然の風景の永遠の美しさに根ざした、深く感動的で超越的な体験をリスナーに提供する。

artist: Yumiko Morioka & Takashi Kokubo
title: Gaiaphillia
label: PLANCHA / Métron Records
Cat#: ARTPL-236
format: CD
release Date: 2025.04.30 ※04.13のリリース・パーティーで先行発売

Track List:
1. Birds of Borneo
2. Gaiaphilia
3. Elegant Spiral
4. Ancient Beach
5. O-KA-GU-RA
6. Sanukite
7. Veil of the Night
8. Hibiki of Katakamuna

Composed and arranged by Yumiko Morioka & Takashi Kokubo
Piano and Keyboards by Yumiko Morioka
Synthesizers, Keyboards and field recordings by Takashi Kokubo
Voice by Takashi Kokubo (on Hibiki of Katakamuna)

Recorded and Mixed by Takashi Kokubo in STUDIO ION (Japan)
Artwork by VENTRAL IS GOLDEN
Supervisor by Jiro Yamada
Manufacturing by Brandon Hocura

Special thanks to SUSERI (The inspiration for ‘O-KA-GU-RA’)
Yuki Yama, Takaya Nakamura, Chiharu Ishida

LA Timpa - ele-king

 ブライアン・イーノなら、これも「新しいアンビエント・ミュージックだ」と評するだろうか。ナイジェリア出身でトロント育ちのクリストファー・ソエタン(Christopher Soetan)による通算5作目。クラインが『Loveless』をリミックスしたような『IOX』は様々なループを駆使するのはこれまで通りとして、前4作にはないドローンないしはドローン状のサウンドが全編で取り入れられ、さらにはドローンとループを組み合わせたサウンドを縦横に発展させた上でこれまでになくポップへの道筋も見えている。5年前に〈Halcyon Veil〉からリリースされた2作目『Modern Antics in a Deserted Place』が一部で注目され、トリッキー “I’m in the Doorwaye” のリミックスやスペース・アフリカ『Honest Labour』への客演を経て、昨年はクラインのインダストリアル・アルバム『Marked』など彼女の諸作に様々な形でフィーチャーされている。以前からディーン・ブラントと類似性を指摘する声もあり、5作目はロリーナことインガ・コープランドの〈Relaxin Records〉からとなった。

 これまで様々なフォームの曲を展開してきたティンパ・サウンドから5作目全体の雛形となったのは前々作の “Through Mine” や前作の “Spar” 、あるいはドローンをループさせた “Redo(Etching for Walls)” や雑にギターをかき鳴らす “ornary pt.2” もひと役買っているかもしれない。比較的ヒップホップ寄りだった “Through Mine” のテンポをスローダウンさせて黄昏れたロック・サウンドに近づけたのがオープニングの “Pressure (Don't Show On You)” であり、続く “Remain” となる。リズムもかつてなくパーカッシヴで歯切れのいい叩き方に変えているものの、それを凌駕するようにドローンが様々な強度で吹き荒れ、曲全体はどれもドローンによって性格づけが決まっていく。ほとんどの曲にヴォーカルが入っているものの、霞がかかったようなエフェクトがかけられていて1単語も聞き取れない(言葉は重視していないのか、声を楽器として聞かせるというやつか?)。

  “Brought On” が最初の白眉。ふわふわとした雰囲気のつくり方はマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン “Soon” を思い出すとかいうと杉田元一にぶっ飛ばされるかもしれないけれど、この曲はなかでは珍しくドローンを背景に退かせ、シンプルなギターらしき弦のループを際立たせている。ソウル・ミュージックの破片も混ざり込んでいて、コクトー・ツインズ好きを表明していたプリンスが生きていたらいつかたどり着いた……いや。同趣向ながらリズムを逆回転させているのかなと思うのが “Sk (I Let Them In)” と続く “Deceived” で、この辺りはノイ!が溜めの多いファンキー・サウンドを陰気に演奏したらスライのモデル・チェンジになりました的な印象。最初は気持ち悪いのに、だんだんグルーヴィーに感じられてくるからあら不思議で、そういえばインダストリアル・ボディ・ミュージックにブラック・ミュージックのグルーヴを結びつけたのがジェフ・ミルズだったとしたらシューゲイザーにブラック・ミュージックのグルーヴを持ち込んだ例ってなんかあったっけ? A・R.・ケインも違ったよなー。

 自ら編み出した独特の手触りを裏切るようにアグレッシヴなパッセージで幕をあける “Capture” 。これも杉田元一に殴られるのを覚悟で持ち出すのが “Only Shallow” 。このあたりからドローンよりもループの存在感が増してきて、ここではまったく調和の取れていない3つか4つのループが重ねられている。「シュトックハウゼンの捨て曲です」と言われれば信じてしまうかもしれない煩雑さ。雰囲気をコロっと変えてしれっと終わった後は冒頭に帰ったような “Twin Action” へ。雰囲気を自在に操るというのか、なんか手玉に取られている感じ。ここではくっきりとしたスネアの背後でランダムに打ち鳴らされる複数のドラムが前の曲からイメージを引き継ぎ、悲しげなヴォーカルを引き立てもしなければ足を引っ張りもしない。単なるスキゾフレニアック・ポップ。一転して洪水のようなノイズ・ドローンで始まる “Make It Count” は全体的には妙にクールで誰にも憎しみを抱いていないインダストリアル・ミュージック? フェネスやエメラルズを思わせるノイズのネオアコというか、ハーシュ・ノイズがファシズムではなく優しさに包まれる感じを呼び起こす。ここからの展開は杉田元一を狙い撃ちしているかのような構成で、 “We Must Devisen” がまずは “Brought On” のヴァリエーション。やはりシンプルなギターらしき弦のループが前面に押し出され、半透明な空気をゆっくりと撹拌する。イーノのジェネレイト・ミュージックと同じようにループを重ね合わせた “One Too Many” は “Capture” のヴァリエーションで、この発想だけでアルバム・サイズまで拡大させればエレクトロニカの作品となるんだろうけれど、ここから2000年代前半のティム・ヘッカーやイエロー・スワンなどを思わせる長尺のローファイ・ドローン “Living Moment” へと続く。どこかに意識が飛んでいくようなトリップ感覚はまるでなく、どことなく内省的で疲れていない時に聞くとやや退屈。この曲はこの曲順で聞くよりDJでかけていた時の方が数倍カッコよかった印象がある。ちなみにDJはかなりのフリースタイルで、フリー・アドヴァイスとのB2Bでは実験音楽を16で刻みながらレイヤー化し、音の断片でオーケストレーションを編み出していくのが圧巻。最後におまけみたいな “Wish” で、締めるというよりは別な入り口に立っているような終わり方。

 「IOX」というのはオーディオ・インターフェイスのことでしょうか。音を楽しみ、音楽に終始したアルバムという印象で、これまで孤独や環境の変化をテーマにしてきたLAティンパが内なる平和を模索したということか。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369