「IR」と一致するもの

Sound Live Tokyo - ele-king

 舞台芸術を中心に、国内外のアート・シーンにおける情報と人とのプラットフォームとして芸術や文化の振興に取り組んできた特定非営利活動法人、国際舞台芸術交流センター(PARC - Japan Center, Pacific Basin Arts Communication)企画の音楽フェスティヴァル「サウンド・ライブ・トーキョー」が10月26日(金)~28日(日)にかけて行われる。

 参加アーティストは、菊地雅章、工藤冬里/マヘル・シャラル・ハシュ・バズ、サンガツ、ティム・エッチェルス、Project UNDARK + ディーター・メビウス、Baby Arabia、山下残と、先鋭的な表現活動を重ねてきた面々が多く並び、演奏のみならず展示や映画上映など、音楽から広くアートへとつながる地点でどのような音が鳴らされるのか楽しみだ。Project UNDARK + ディーター・メビウスのパフォーマンスには後藤まりこもゲスト参加する旨が追加発表されている。以下簡単にトピックスを。

 菊地雅章のピアノ・ソロは、東京文化会館という音響的に優れた環境に加え、PAなしの演奏が予定されており、理想的な条件のもとで公演を楽しむことができそうだ。
 Phewと小林エリカによるProject UNDARKは、「被曝」というテーマに果敢に取り組んだ傑作『Radium Girls 2011』を発表して以来初となる、クラスターのディーター・メビウスを迎えてのライヴ・パフォーマンスに期待が高まる。
 Baby Arabiaは、タイでアラブ/マレー音楽を演奏し、イスラム・コミュニティの聴衆を楽しませ続けているバンドだとのこと。「自分が所属しないコミュニティの歌を自分が話さない言語で35年歌っているという、彼らの音楽活動のあり方にも興味を持ってもらえれば」と言うのは担当氏だ。ライヴの前にはタイにおける「普通の」イスラム教徒をテーマにしたという連作ドキュメンタリー映画から、昨年公開の『Baby Arabia』が字幕付で上映される。
 ティム・エッチェルスの展示『Wall of Sound』の音楽監督も務める工藤冬里は、マヘルでの演奏の他、同展示のコンサートに子どもの合唱団を交えたパフォーマンスを試みる。これまた担当氏は「展示されているテクストの読解のプロセスがそのままパフォーマンスになるような、とても面白いものになりそう」と語気を弾ませる。ぜひ単日だけでなく、通しチケットの方でプログラムの全体を楽しんでいってもらいたいとのことだ(『Wall of Sound』は展示、コンサートとも入場無料)。熱意を持って取り組まれ、熟慮された構成の企画であることがよくうかがわれるだけに、シリアスな音楽ファンと
して、またワークショップ感覚でも全日程を体験したいところである。

サウンド・ライブ・トーキョー
Sound Live Tokyo

会期:2012年10月26日(金)[前夜祭]~28日(日)
会場:東京文化会館 小ホール

参加アーティスト:菊地雅章、工藤冬里/マヘル・シャラル・ハシュ・バズ、サンガツ、ティム・エッチェルス、Project UNDARK + ディーター・メビウス、Baby Arabia、山下残

日程:
10月26日(金)
17:00~20:30 ティム・エッチェルス『ウォール・オブ・サウンド』(展示)
*19:00 菊地雅章 ピアノソロ(1stセット)
20:30 菊地雅章 ピアノソロ(2ndセット)

10月27日(土)
13:00~20:30 ティム・エッチェルス『ウォール・オブ・サウンド』(展示)
*18:00 Project UNDARK + ディーター・メビウス
19:20 山下残『ヘッドホンと耳の間の距離』
20:30 工藤冬里/マヘル・シャラル・ハシュ・バズ

10月28日(日)
13:00~19:30 ティム・エッチェルス『ウォール・オブ・サウンド』(展示)
*15:30 『Baby Arabia』(HDCAM上映、74分)
17:00 Baby Arabia(コンサート)
18:15 ティム・エッチェルス『ウォール・オブ・サウンド』(コンサート、音楽監督・工藤冬里)
19:30 サンガツ

会場:東京文化会館 小ホール

チケット、詳細:https://www.soundlivetokyo.com/index.html

主催:東京都、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)、国際舞台芸術交流センター(PARC)

後援:ブリティッシュ・カウンシル、東京ドイツ文化センター

東京文化発信プロジェクトは、「世界的な文化創造都市・東京」の実現に向けて、東京都と東京都歴史文化財団が芸術文化団体やアートNPO等と協力して実施しているプロジェクトです。都内各地での文化創造拠点の形成や子供・青少年への創造体験の機会の提供により、多くの人々が新たな文化の創造に主体的に関わる環境を整えるとともに、国際フェスティバルの開催等を通じて、新たな東京文化を創造し、世界に向けて発信していきます。




© Abby Kikuchi  菊地雅章


イラスト:小林エリカ  Project UNDARK + ディーター・メビウス


山下残『せきをしてもひとり』(2010年、原宿VACANT)
山下残『ヘッドホンと耳の間の距離』


工藤冬里/マヘル・シャラル・ハシュ・バズ


Baby Arabia


スペクタクル・イン・ザ・ファーム(2010年、那須)での演奏  サンガツ


We Wanted by Tim Etchells (2011)  ティム・エッチェルス『ウォール・オブ・サウンド』

Mediafired™ - ele-king

Mediafired™ - Pixies

"we had Pepsi™ sponsorship" misssequence(メディアファイアード™本人。上記動画のコメント欄にて)

 違法ダウソしてますか?™
 愉快なコマーシャル映像まで作られたオンライン・ストレージ〈メガアップロード〉は、違法ダウンロードの温床となっていたとされ、現在は閉鎖されている(https://www.megaupload.com/)。いっぽう、おなじく人気だったオンライン・ストレージ〈メディアファイアー〉は存続してはいるが、共有が違法と思われるファイルについては積極的に削除しているようだ。アーティスト名やタイトルとともに「mediafire」を入力してグーグル検索すれば音源ファイルが見つかりますよと友人に教えられたのは3年ほど前。いま同じことをしても、ダウンロードへのリンクは見つけづらい状況だろう。それが道理なのかもしれない。しかし、利用するか否かに関わらず、オンライン文化も全盛だというのに息苦しい出来事だなとも感じる。™

 メディアファイアード™ことジョアン・コスタ・ゴンサルヴェス(Joao Costa Goncalves)もポルトガルでそういった違和感をすこしは抱えているに違いない。今作『ザ・パスウェイ・スルー・ワットエヴァー』はあからさまに他者の著作物をカットアップして作られたものだ。素材となった曲を収録順に並べると、クイーンの“イニュエンドウ”/ヴァン・ヘイレンの“キャント・ストップ・ラヴィン・ユー”/インナー・サークルの“スウェット(アララララロン)”/ケイト・ブッシュの“嵐が丘”/バックストリート・ボーイズの“アイ・ウォント・イット・ザット・ウェイ”と、そうそうたる有名どころばかり――MOR(Middle Of the Road)的である。いずれも古い。商業的にも旬を過ぎたものであって、〈メディアファイアー〉にアップされていたとしてもちょっとイケてないではないか。™

 ビートルズやマイケル・ジャクソンをおなじように剽窃したジョン・オズワルドの『プランダーフォニック』との大きな違いとして、今作には過剰にエコーがかけられていることが挙げられる。これは、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーのダニエル・ロパーティンによる『チャック・パーソンズ・エコージャムズVol.1』の、80年代のアダルト・コンテンポラリー(日本でいうAOR)やソウルの一節をループさせエコーの海に浸した手法「エコージャム」であり、「エコージャム」はタグの一種でもある(ちなみに、同アルバムの楽曲にダニエルがレトロな映像をつけたプロジェクト〈Sunsetcorp〉――斜陽企業がヴェイパーウェイヴの起こりだと思われる)。™

 今作でループさせられている一節一節は、ガンガンにエコーをかけられ、まるで巨大な聖殿に響き渡っているかのように祝祭的ですらある。景色はまるで真っ白で、鳩がパタパタと飛び立っていく画が見えるようだ。しかし、そんな演出とは対照的に、チョップとループのタイミングも展開も聴き手に心地よさを与えるものとはけっして言えないほど荒々しい。ピッチは原曲より低くされたりしながらも、スピードは上げられていたりする。祝祭的な響きをもちながらも、ポップソングがゾンビのように知性のないうめきを上げているようでもある。仕事中などにわけもなくなにかの歌の一節が脳内ループしてしまう体験に等しい。非常にストレスフルである。荒々しいが繊細に編集されている。ジェームス・フェラーロはポップ/ロックがリビングでつけっぱなしのMTVから垂れ流され平坦な環境音となり死んでいる様子を捉えたが、今作ではメディアファイアード™によってポップスがゾンビとして目覚め、リスナーに襲いかかってくる。™

 カセットのB面には「shit's cold / roam as you are」というサブタイトルがついているが、「私、キャシーよ!帰ってきたの。とても寒いから、窓から入れてちょうだい」と歌うケイト・ブッシュと、別れた恋人への未練を歌うバックストリート・ボーイズに対してメディアファイアード™が吐き捨てた言葉なのだろう。それらの曲名は“ピクシーズ”なんてバンド名がもろにつけられていたり、ソニックユースの曲名だったり、ニルヴァーナの“イン・ブルーム”の歌詞(“Spring Is Here”“Tender Age”)が引用されていたりする。俗なポップスに対して自分の趣味――すなわち自分にとっての聖(ノイジーなロック)をぶつけていく幼稚で原初的な対抗意識を演出している。™

 『ザ・パスウェイ・スルー・ワットエヴァー™』が『プランダーフォニック』のようなカルト的な支持を得ることはないだろう。なにしろ元ネタが基本的にcheezyでダサい懐メロからだ。しかし、それらはストレスフルな編集がなされているぶん原曲以上に印象的でもある。繰り返すが、編集は凝っている。最後の曲のアウトロでは飛行機が風を切る音が聞こえるが、これは“アイ・ウォント・イット・ザット・ウェイ”のミュージック・ヴィデオのイントロで挿入されている音だ。そう。つまり、そういうことだろう(I want it that way)。™

First Person Shootr - ele-king

 そもそもインタヴューをおこなうつもりで返事を待っていたのだが、担当者の骨折りにもかかわらず、彼からは返事がこなかったようだ。それからもうずいぶんと時間がたった。ファースト・パーソン・シューターとは誰なのか。リリース当初ほんとうにわずかな情報しかなく、フレッド・ワームズリーとかリー・バーノンという名前にたどりつくのすらやっと。その頃デビュー作をリリースしたばかりだったサクラメントのプロデューサー、リー・バーノンと、このリー・バーノンを結びつける記事もなかったし、フレッド・ワームズリーと記されることがもっぱらであって、いまではリー・バーノンのサイド・プロジェクトらしいということはわかっているが、ファースト・パーソン・シューター(以下FPS)名義でのインタヴューは見かけない。情報がないというよりも意図的に覆面性を持たせたのではないかと、いまでは思う。彼にはファースト・パーソン・シューター(以下FPS)をリー・バーノンの名前から切り離したい理由があったのではないか? それは「少なくとも僕が本当に好む最後のチルウェイヴ作品になるだろう」という数ヶ月前の発言を再度引用しながらはじまるタイニー・ミックス・テープスのレヴューにも透けてみえるように、チルウェイヴ的な音への留保つきの共感、あるいはそのブームとしての消費期限を瀬踏みするかのような思惑ではなかったか。リリース元の〈レフス〉もチルウェイヴ系のレーベルとしての印象が強く、〈プラグ・リサーチ〉のような硬派な名門とはキャラクターとして差が大きい。もしそのようなことのために素性をあいまいにするような経緯があったのだとすれば、本作にとってもチルウェイヴにとってもあまりにもったいないことだと思う。「ピュア・ベイビー・メイキング・ミュージック」......それが、リリース後にやっと読むことのできた彼のFPS評だ。リー・バーノン名義では卓抜にして自在なエディットと、スマートなセンスによって、自由な発想に打ち抜かれたヒップホップを展開している。「それこそフライング・ロータスのモンド・ヴァージョンでしょう」というのは三田格の評で、そのように込み入った自身の作家性を、FPSの「ベイビー・メイキング」な作風と混在させたくなかった。そのようなことではないかと推察する。

 KEXPなどではFPSの音源にリーン・ウェイヴというタグがつけられている。それは「やせ細ってかぼそく、ふしぎなことにウェイヴィだ」そうで、実際のところ、R&Bを基調としながらも、シンセを重ね、リヴァービーにドリーム・スケープを広げていくやりかたにはチルウェイヴのヴァイブが色濃い。全体的にはかなげで繊細、隙間が多く、とてもスローに展開する。また自在なビート感覚、あるいはタイム感覚がそなわっている一方で、メディテーショナルなアンビエント・ポップへと展開していきそうな芽もある。要するにはっきりとポスト・ヒプナゴジックを彩る才能のひとりである。それを当人の言で表すなら「リアル・アンビエント・R&B・ノスタルジア・タイプ」ということになるだろうか。アンビエントとR&Bとを接続する感性がチルウェイヴを介して登場してくる例を鮮やかに示している。クラムス・カジノと比較するサイトもあるが、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルも引き合いに出さねばならない。

 「リーン」という言葉が定着することはなかったが、それはファットな要素をごっそりとそぎ落とした音楽、というような意味とともに、リテラルなかぼそさに言及したものであろう。FPSにはひどく栄養不足な男性のイメージも重なっていて象徴的だ。そもそもFPSとはプレイヤーの視点で争われるシューティング・ゲームの総称。ゲーム画面はイコール自分の視界であり、プレイヤーは不断の緊張をしいられる。自分の存在が戦闘空間に巻き込まれている緊迫感と臨場感、サバイバル感。それがFPSの肝だそうで、それはけっしてファットな体験ではなく、神経をすり減らし摩耗させるものだ。"パンチ・ストラック""シー・イン""ザ・ビッグ・ミステイク"と、ゲームの体験をほうふつさせるような曲名が並び、食事もとらずにモニターにはりつくプレイヤーを描出しながら、最終的に"ペイン・フォー・ユア・ウィン"(勝利の痛み)をうたい、再度「ニュー・ウェブ」(あらたなクモの巣)へとからめとられていくことを暗示して本作はぶつりと終わる。それはこうしたゲームへの両義的な返歌であるとともに彼の世界観でもある。ドリーミーでありながら、モニターから見えるものはすべて敵という、酷薄な現実認識がその裏側にはりついているのではないか。パンダ・ベアやチルウェイヴはマッチョイズムの対極にあるフィーリングをとらえたが、FPSの「リーン」は挫折したマッチョイズムを内側からあかすものなのかもしれない。奇妙に栄養のない音は、とてもデリケートにその空虚さをうずめていく。男性の表現はいつこのような細やかなタッチを得たのだろうかと筆者は驚く。

 そうした、女性らしさを経ない非マッチョイズムの可能性に対して、FPSはもっと意識的であっていい。それを「赤ちゃんが作ったようなピュアな音楽」として、一見肯定するようでいて実際は恥じているかのような自己評価が下されていることは、筆者にとっては悲しいものだ。このデビューEPの次がリー・バーノンの作品になるかFPSの作品になるかはわからないが、ぜひともFPSは続けてほしい。そして、どうせ名義わけるのならもっと限界まで「赤ちゃんが作ったようなピュアな音楽」性をつきつめてほしいと思う。本作は今年聴いたもののなかでも出色の作品なのだから。

Ryoma Takemasa - ele-king

10/17にファース・トアルバム『Catalyst』をUNKNOWN seasonからリリースしました。かなり濃い内容になってますので是非チェックお願いします。また、『Catalyst』のミュージック・クリップをYoutubeで配信中 です。テンポ良くモダンな映像でかなりかっこいい作品に出来上がってますのでこちらも是非宜しくお願いします。
Ryoma Takemasa "Catalyst (Autumn Evening Mix)"

10/26@原宿Lily
DJ : Ryoma Takemasa、TBA
10/27@恵比寿Zubar
Music : Yoshi Horino、Ryoma Takemasa、Kyoko Kamichika
11/24@恵比寿Zubar
Music : Yoshi Horino、Ryoma Takemasa、Kyoko Kamichika
11/30@Loop
DJ : Shinya Okamoto、DJ Nori(Posivision)、Ryoma Takemasa
Live : Cherry、ngt.

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CHART


1
Ryoma Takemasa "Catalyst" UNKNOWN season

2
Yoshio Ootani "Strange Fruits (Gonno Remix)" Black Smoker

3
Manzel "Manzel2" Manzel

4
Ryoma Takemasa "Deepn'(Gonno Remix)" UNKNOWN season

5
Ryoma Takemasa "Deepn'(The Backwoods Remix)" UNKNOWN season

6
Sutekh DIrty Needles Drop Beat Records

7
Kenlou "The Bounce" MAW

8
Unbalance "Unbalance5" Unbalance

9
Milton Bradley "Reality is Wrong" Prologue

10
Reality Check "Fantasy" Strictly Rhythm

Meditations 2012.10.15 - ele-king

Chart


1

Jean Dubuffet - Experiences Musicales (II) Rumpsti Pumsti (Musik)
これは事件でしょう...アール・ブリュット提唱者Jean Dubuffetによる61年美術館級音源の未CD再発部分が遂にCDになりました。以前のCDでは聴けなかった激しい演奏ばかりが満載です!

2

Sensations' Fix - Music Is Painting In The Air (1974 - 1977) Rvng Intl.
Spectrum Spoolsの再発で知られるFranco Falsiniが中心である伊プログレバンドの既発、未発&新ミックス盤。黄金色に輝くギターの浮遊感が素晴らしい!

3

Uku Kuut - Estonian Funk Bigtree Records
PPUの編集盤で度肝を抜かされたエストニアのファンク作家による最新作。新曲&リミックスのトレンドからは微妙に外れたハウス/ファンクな音楽性は、今回も多くの音楽好きに爪痕を残します!

4

Ricardo Donoso - Assimilating The Shadow Digitalis Recordings
2LPに渡る壮大な宇宙への旅~ 退廃した近未来世界を思わ暗さを持つコスミッシェ作品。派手な展開はないものの、宇宙地下道をロマンチックに突き進む展開は素晴らしい。影の傑作!

5

Ian Drennan - The Wonderful World Underwater Peoples Records
OESB周辺からこんなものが...!Big Troublesのメンバーによる初ソロ作。ワールド/ニューエイジ臭漂うアンビエントを軸に、破天荒な展開を重ねるポップ/アヴァンの混沌具合...たまりません。

6

Woo - It's Cosy Inside Drag City
Nite Jewelお気に入りのユニットによる89年2ndが再発。現れては消えて行く優しいアンビエンスは唯一無二で、あらゆる人に聴いもらいたい名盤です。今再発されるというのも良いタイミング。

7

M.B. - Neuro Habitat Urashima
言わずと知れたイタリアのノイズ巨匠の82年代表作が再発。ミンチ状に怪音が刻まれ続けるA面に、幻覚から必死に抜け出そうと重くもがき苦しむB面。絶品です...

8

Elg - Mil Pluton Hundebiss Records
Ghedalia Tazartesとの共作でも知られるElgの怪ポップ! 宇宙電子音、コンクレート、EBMにボーカルが絡むという破綻寸前の所でポップに仕上げてます。今年の発狂盤の中でもこれは上位でしょう!

9

Natural Snow Buildings - Night Coercion Into The Company Of Witches Ba Da Bing!
フォークとドローンの間から陰惨な破滅を導き続ける男女ユニット。08年作の再発盤となるここでは、3CDという長尺で最初から最後まで一直線に破滅へと導くノイズ・ドローンを披露。純粋なノイズでは無い分余計にむごいです。

10

Roberto Cacciapaglia - Sei Note In Logica Wah-Wah Records Sound
前作に続いて79年の2ndも再発。児童による演劇を観ているような、危なっかしいハラハラした感覚と素朴な楽しさが心地良い電子音楽/ミニマリズム。蛍が現れては消えていく淡々とした美しさです。

dj kamikaz - ele-king

dj kamikaz

clockwise recordings再始動しました!
私自身の活動としては、六本木bullet'sにて開催されている"Metropolis"に定期的に出演しています!clockwise recordingsのこれからの動きはチョコチョコ報コックしまっすので。ツイッターやgoogle検索とかをチェケラッチョしてみてください。
今回はちょっと古めから今現在までの曲で、雰囲気の良い曲をまとめてみましたので。
https://soundcloud.com/kazakami

Chart


1
Airhead - Black Ink

2
Matthewdavid - Being Without You

3
Jeremiah Jae - $easons

4
Ras G - Yea

5
Nicole Willis&The Soul Investigator - Soul Investigator's Theme(Heralds of Change Remix)

6
dj klock - machine live @Niigata club JunkBox 2004 12/4

7
dj klock - untitled(2003 out take)

8
himeshi - Break my heart

9
shlohmo - Places

10
RLP - Minovsky Physics

Goku Green - ele-king

 今年の3月のことである。写真家の植本一子は「とうとう眉毛を整えたラッパーが出てきたぞ! と石田さん(夫であるECDのこと)が鼻息荒く教えてくれた」とツイートしていた。SALUのことだ。それがひどく印象に残ってしまい、機会あってECDにインタビューした際に、「SALUをはじめとする若手ラッパーについて、どう思いますか?」とたずねてみた。返答は思いがけないものだった。「SALUは作られているといった感じがするんだけれど、北海道のGoku Greenというラッパーは天然で......どちらかというと、僕に近い気がする」。もちろんこれは眉毛の話なんかではなく。

 ECDが1996年の七夕の日に日本語ラップ史に残るイベント「さんピンCAMP」を主催したのは有名な話だが、Goku Greenはそのちょうど1年後に生まれた。音楽好きの両親のもと、スヌープやボブ・マーリーを師と仰ぎながら育ち、高校入学と同時に本格的に音楽制作をはじめる。そして、昨年秋に無料ダウンロードで発表されたミックステープ『ハッパ・スクール』を契機にシーンの注目を集めることになる。ウィズ・カリファやカレンシーといった、いわゆるUSストーナー・ラップ直系のスムースでメロディがかったフローが持ち味で、SALUとはラップ・スタイルが近似しているためによく比較されていた(ともに影響を受けたアーティストとしてボブ・マーリーを挙げている)。しかし、前出のECDの言葉が端的に表しているように、この二者には違いがある。似たようなフローのなかにおいても、アクセントや節回しから90年代~00年代の日本語ラップの潮流を汲んでいるSALUに対して、GOKU GREENは、荒削りな原石としての輝きがある。発声法やトラックへ合わせたデリヴァリーしかり、洗練という意味では、SALUの方が上手かもしれない。だが、必ずしもスキルの優劣が音楽の良し悪しに直結するものではないことを僕らは知っているし、彼はそういうタイプの歌い手でもない。ヴォーカルのかぶせやエディットも最小限の簡素なつくりで、少々危うさもつきまとうボーカルだが、なにより華があるのだ。彼が「生まれながらのMC/ナチュラル・ボーン・ラッパー」と言われるゆえんであり、ECDに「天然」と指摘されもするそんな屈託のなさは、あるいは、かつての5lackの「テキトー」と言いかえてもいいのかもしれない。

 そんな彼のデビュー作は『ハイ・スクール』と題された。それはたんに、彼の日常の大きな比重を占めている場所を指しているのだろうか。大半の曲で歌われる内容は、ショーティー、マネーにウィ―ド......いずれもオーソドックスなヒップホップ・テーマの例に漏れないものばかりだが、「高校」という主題からはおおよそかけ離れているし、自分が高校生ということに言及している詞も少ない。にもかかわらず、こうしたタイトルをつけているのは、全編にただようモラトリアムなムードと、それを許している自身の生活・環境を考えてのことだろう。いわば、想像と夢に耽ることを許された時間。"キャン・ユー・フィール・イット"で聴けるライン「人生の計画は考えないでノリはEasy」なんてすがすがしいほどだ。また、"ネボー・ギャング"なんていう、彼らの仲間内で使われているキュートなスラングのように、ヒップホップ・マナーでもっていかに日々を楽しむかというゲームを行っているようなフシも感じとれる。今作が描き出す彼の日常は、"ドリーム・ライフ"の意味を「夢の日々」、もしくは「夢のような日々」のいずれに解釈するにしろ、現実感に付随する重さをきらい、若さに満ちた確証の持てない希望を、個人的な願望に置きかえて歌っている。ラップ・スタイルとしては、やはり5lackの系譜に連なるとは思うが、ストーナー・ラップの括りでいえば、ファンタジーを織り交ぜて東京という街を描出し、楽観的にも厭世的にもとれる平熱的な語り口を持つ詩人、ERAをも思い出させる。だがGOKU GREENはより初々しく甘酸っぱく、ドリーミーでポップだ。つまり、グリーンはグリーンでも、ストーンというよりはエヴァー・グリーン。思いがけないドラマに導かれた彼に言わせれば、ヒップホップのクリシェ「Life's A Bitch(人生はクソだ)」よりは、「Ma Life Iz Like A Movie」なのである。



 『ハイ・スクール』リリース後、GOKU GREENは8月にフリーのミックステープ『ダーティ・キッズ』を発表。こちらは発表直後から長らくダウンロードできなかったのだが、つい先ごろ2曲追加した形で再度発表された(ダウンロードはコチラ→)。『ダーティ・キッズ』はミックステープらしいつくりで、というのも、いくつかは既存の曲のビート・ジャックもので、フリースタイルでサクッと録ったような印象。だが、前半部を聴くだけでもビート・アプローチが確段にうまくなっていることがわかる。キャッチーなフックとフローのメロディ・センスは健在で、多幸感あふれるクローザー・トラック(その名も"ネボー!!!")まで心地よく聴かせられてしまう。総じて言えることではあるが、非常に軽い聴きざわりで、それが快い。目玉はLil'諭吉プロデュースの"キャンディ・キャンディ!!!!"で、テーマ・パークのメルヘンチックなBGMをサウス寄りのバウンシーなトラックにアレンジしたような好トラックだ。また、ニコラップをフィールドに活躍する気鋭のラッパーRAqやYURIKAといった客演陣は、非常に完成度の高いヴァースを提供しており、こちらも聴きごたえ十分。

 今年に入ってAKLO、LBとOtowaなど、ミックステープを主戦場として活動していたアーティストが有償かつフィジカルでのリリースを果たしている。そんななかでもGOKU GREENはミックステープ『ハッパ・スクール』のみを足がかりに、1年と経たずインディ・ヒップホップ専門の新興レーベル〈BLACK SWAN〉の第1弾アーティストとしてデビューを果たした。このアクションのはやさには「非メインストリームに潜むすばらしい音楽やアーティストを自由に紹介すること」をレーベル・ポリシーとして掲げる〈BLACK SWAN〉の強い思いがあったようだ。それにしても、THE OTOGIBANASHI'Sをはじめ、『REV TAPE』にも収録され話題となっていたdodoや、早くから騒がれていたRIKKIに、12月に〈LOW HIGH WHO?〉からデビューする女子高生ラッパーdaokoなどなど新たな世代の胎動と加速する若年化の波は、けっしてアイドル業界にかぎった話ではない。そんな過渡期ともいえるなか、先鞭をつけるかたちで若干16歳のGOKU GREENがアルバム・リリースを果たしたことの意味は大きい。長い目でみれば、『ハイ・スクール』は、ひとつの指標になり得る作品なのではないか。そう思ってしまうほどに、GOKU GREENはフレッシュで、ヒップホップ・ドリームをふたたび、僕らに夢見させてくれるのだ。

倉本諒 - ele-king

Dreampusherというワンマン・バンドで今年から後ろ向きに活動しています。愛称はドリシャです。
先日M. Geddes Gengrasとのセッションをレコーディングしました。気が向いたら形にします。

Crooked TapesからはNNF主催Britt BrownとAlex Brownによる負のオーラ全開のデュオ、Robedoorの"City of Scum"と、Metal Rougeの"Live Dead Elk"をリリースします。
というかもうしてます。ウェブの更新が億劫なだけです。
https://crooked-tapes.com

ジャケのアートワーク及び刷りを手掛けた若手Samantha GrassのLPが〈NNF〉から出ました。2ないし3色x500枚以上のいままでにない量で初めて腰をやられました。
DIYの肉体の限界に挑みます。

他もろもろ、あくまでコッソリとやったり目論んだりしているやらいないやらしてます。

2012 summer-autumn Smoker's Delight


1
M.Geddes Gengras / Personable LP (Peakoil)

2
Pete Swanson / Alone Together #5 7'(Emerald Cocoon)

3
Sean McCann & Matthew Sullivan / Vanity Fair LP(Recital One)

4
Sewn Leather / Feel The Lack CS(Chondritic Sound)

5
Ras G / El-Aylien Pt. II : C.razy A.lien 7'+CS(Leaving Records)

6
OM / Advaitic Songs LP (Drag City)

7
Sylvester Anfang II / John Changs Komische Hand : Moordende Maan 7'(the Great Pop Supplement)

8
Swans / The Seer LP(Young God)

9
Villains / Road to Ruin LP(Nuclear War Now !)

10
EYEHATEGOD / New Orleans is the New Vietnam 7'(A389 Recordings)

あらべぇ - ele-king

こんにちは。あらべぇです。
最近はあるコトで忙しくて活動していないのですが、そのコトが終わったら音に限らず映像作品やArt Bookなど、いろいろなモノに挑戦していきたいなと思っています。あとは、いろんな人といっしょに曲を作りたいです。Beatmakerの方など、よろしくお願いします。

https://soundcloud.com/ovovovvovo
https://twitter.com/ovolooowv
https://www.calmlamp.net/

これからの季節に自分がよく聴きそうだなーって感じの曲をチョイスしました。
というか、ただ単純にいま聴きたい曲です笑

いま聴きたい曲


1
Erik Satie / Nocturnes - 2.

2
Kazumasa Hashimoto / -1 degree

3
Frank Ocean / Thinkin Bout You

4
Underworld / Twist

5
坂本龍一 / To Stanford

6
RAJA / My Crosshairs

7
小林大吾 / 歩く Stray Sheep

8
環ROY / 蒼い日

9
KILLER BONG / The Cold In Moscow

10
PANAMA / Full of Nothing

Andrea Parker Et Daz Quayle - ele-king

 デヴィッド・クローネンバーグが新作『危険なメソッド』でユングの半生を扱っている。最初は腑に落ちない組み合わせだと思ったものの、すべてをリビドー(性衝動)で説明しようとするフロイトに反発し、性に対する抑圧やその解放を自ら経験しつつ、前後して神秘主義に足を踏み入れる頃には『ヴィデオドローム』(82)や『クラッシュ』(96)といった過去の作品とも重なるものが見えはじめる。なんとも穏やかなラスト・シーンに至ってはかつての世紀末的と評されたエンディングの数々を包み込んで成仏させるような趣きまであった。ユングとフロイトというよりは、ユングと冒頭でユングの診療室に運び込まれてくるザビーナ・シュピールラインという元患者にして、後にロシアでたくさんの弟子を育てる精神分析医の関係が物語の中心となっていて、僕は不勉強でよく知らなかったけれど、この女性の生い立ちがまた凄絶そのものだった(彼女がユングとの恋愛を題材にした論文はフロイトをしてタナトスの概念にも影響を与えたとか)。(日本人にエスプリやフランスの政治はわからないという判断だったのか)劇場未公開だったミシェル・ルクレール監督『戦争よりも愛のカンケイ』(傑作!)は女性に対する性的虐待をファンタジーの領域で逆転させた快作だったけれど、『危険なメソッド』はこれを正攻法で扱い、世界史を構成する不可思議な歯車として認識させてしまう。パク・チャヌク監督『サイボーグでも大丈夫』といい、松尾スズキ監督『クワイエットルームへようこそ』といい、病院に運び込まれてくる女性たちをなめてはいけませんね。

 病院に運び込まれたかどうかはわからないけれど、二度に渡る脳卒中で音楽を諦めることになったダフニー・オーラムは03年に死去してから、ようやく生前の音源がリリースされはじめた。彼女が残した膨大なアーカイヴを整理していたヒュー・デイヴィスも途中で逝去してしまったため、どこでどういうプロセスを辿ったのか、07年に『オーラミックス』がリリースされても内容に不満を持った者が多かったらしく、昨年から改めて『ジ・オーラム・テープス Vol.1』というシリーズが開始されている(いずれも2CDないしアナログ4枚組)。そして、これによって早くから電子音楽を扱っていた女性の表現としてはなかなか意外な相貌が浮かび上がってきた。僕も同時期のアメリカにありがちなシューとかピロピロみたいな無邪気な電子音を想像していたので、むしろミュージック・コンクレートに近い作風がのしかかってきた時には少々面食らった。録音時期が判明しているものでも58年から67年とあり、多くは60年代前半に集中している("脳卒中"と題された曲も......)。

 前述したシュピールラインとその娘たちがナチスによって殺された年、オーラムはBBCでサウンド・エンジニアの職を得ている。戦後のイギリスは男性の数が激減したため、意外な場所に仕事を得た女性が多かった。オーラムはリーダー的な気質だったのか、1958年にはTVとラジオの効果音を製作するBBCレイディオフォニック・ワークショップを組織し、この集団にはジョン・ベイカーをはじめ、後にホワイト・ノイズを結成するブライアン・ホジスンやデリア・ダービーシャイアも所属していた。しかし、1年も経たないうちにオーラムはBBCから不興を示され、同社を退くことになる。以後は財団のサポートを受けて世界でも初めて電子楽器のスタジオを持った女性となり、かなりな数の作品を録音したようだけど、前述した通り、レコードなどでリリースされることはほとんどなかったらしい(https://en.wikipedia.org/wiki/Daphne_Oram)。また、BBCレイディオフォニック・ワークショップがその後も制作し続けた効果音は現在までにけっこうな数がレコード化され、19作目には今年のレコード・ストア・デイで34年ぶりにオリジナル・ジャケットで復刻された『ドクター・フー』も混ざっている。ザ・KLFがタイムローズの名義でナンバー1・ヒットを飛ばした「ドクトリン・ザ・ターディス」はこれの主題歌をサンプリングしたものである(リズムはゲイリー・グリッター......って、いまから思えば単なるマッシュ・アップでしたねw)。

 このようなオーラムの未発表音源に手を加えてリリースしたのが、なんと、アンドリア・パーカーだった。チェロ・プレイヤーからDJに転向し、〈ファット・キャット・レコーズ〉のアレックス・ナイトらとインキー・ブラックヌスとしてデビューしたパーカーは、90年代後半になるとエレクトロのプロデューサーとして〈モワックス〉などからリリースを重ね、やはりエレクトロを専門に扱う〈タッチング・ベース〉を主宰してきた渋いお姉ちゃんである。ライナーによると以前からオーラムにインスピレイションを得ていたパーカーが、偶然にもロイヤル・アルバート・ホールで行われたオーラムの回顧イヴェントでオーラムの曲を再現しないかと誘われたことから話ははじまっている(08年)。「アメリカにロバート・モーグが、イギリスにはダフニー・オーラムというパイオニアがいた」という思いを強くしたパーカーは、いまだ公にされていないオーラムのアーカイヴをすべて聴くチャンスを得て、ダズ・クエールとともに膨大な量のサンプリングを繰り返し、オーラムのダークサイドを抽出したものが『プライヴェート・ドリームズ・アンド・パブリック・ナイトメアーズ』(以下、『PD & PN』)の中核となっていく。面白いのはインナーに使われている写真がオーラムの少女時代のもので、『オーラミックス』や『ジ・オーラム・テープス』に使われていたのがイギリスのがんこババアみたいな写真ばかりだったことと大きな差を感じることである。オーラムの音と向き合うなかで何かを感じたのだろう。

 オーラムのナレイションをフィーチャーした"女の時間"で幕を開ける『PD & PN』はたしかにオーラムのそれよりもゴシック係数が高く、オーラムが影響を受けたミュージック・コンクレートよりも最近の感性に移し変えられている。これはオーラムだけに言えることではないけれど、かつての実験音楽はあえて感情を排しているものが多く、スキルや音の鳴りに興味がなければジョン・コルトレーンなんか、何をがんばってるのかさっぱりわからないことさえあるし、スロッビング・グリッスル以下のノイズ・ミュージックがむしろ感情表現に変革を起こした実験音楽として聴かれていた可能性もあるだろう(でなければ中原昌也のような存在がそれに続くか?)。01年にクォーターマスからリリースしたセカンド・アルバムに『ザ・ダーク・エイジス』というタイトルをつけていたこととも相俟って、パーカーがここで試みていることはオーラムが残した闇のトーンに感情的な奥行きを与えることではないかとまずは推測できる。オーラムの時代には必要なかったのかもしれないけれど、怒りや悲しみを表す場所がいまやアンダーグラウンドに押しやられている可能性もあるだろうし(ヒット・チャートにあふれている音楽のほうがかつての実験音楽のように感情を排しているとしか思えなかったりするし)、感情表現が過去と接続するための単なる媒介になっているとも考えられる。実際、『PD & PN』を聴いていると少し重いなと思ってオーラムのオリジナルに替えたり、オーラムを聴いていると物足りなくなって『PD & PN』に戻したりしてしまうし。

 オーラムが舞台用に手がけた「ハムレット」(63)を基にした"ゴースト・ハムレット"ではパーカーが得意とするエレクトロも顔を出す。パーカーがクエールとともに大きな意味でウェザオール・ファミリーの一員だったことをこの曲は想起させる。ウェザオールがイン・ザ・ナーゼリー改めレ・ジュメにリミックスをオファーする感覚がこの曲にも流れていて、エンディングでそのホラー趣味は頂点を極める。このような曲に「永遠に、そして、いつもここに」というタイトルを与えることはそのままイギリス人の人生観を表しているのではないだろうか。評価されることもなく、忘れ去られていたオーラムが「永遠に、そして、いつもここに」いると、重苦しい曲のなかから語りかけてくる。『ドリアン・グレイの肖像』じゃないけれど、彼らにとってこれは美を意味しているのではないだろうか。聴き終える頃には少女時代のオーラムが最初と同じ感覚では見られなくなっている。心霊写真のように傷ついた写真はまさにオーラムが「いつもここに」いたように見えてくる。

 オーラムに刺激されたか、今年に入ってから女性の電子音楽家が次々と発掘されている。イタリアからはドリス・ノートンのファースト・アルバム『ラプス』が30年目にして復刻され、それほど不遇ではなかったものの、アンディ・ヴォーテルはスザンヌ・チアーニの初期音源を『リクシヴィアション』にまとめ(ライナーでは性転換したんだからウォルター・カーロスも女性として扱おうとヴォーテルは提案している)、タレンテルのジャフレ・キャントゥ・レデスマはアカデミズム畑からマギ・ペインのアンビエント作品を『アー・アー ミュージック・フォー・エド・タンネンバウムズ・テクノロジカル・フィーツ 1984-1987』にまとめている(どう考えても、この流れは流行りですね)。また、今月はこれらに加えて(まだ観てないけれど、アメリカ版『バトル・ロワイヤル』としか思えない)フェイスブック世代の内面をとらえたといわれるゲイリー・ロス監督『ハンガー・ゲーム』に「セディメント」が使われたというローリー・シュピーゲルが1980年にプライヴェート盤として制作した事実上のファースト・アルバム『ジ・イクスパンディング・ユニヴァース』も再発され、快楽主義というフィルターを通過した実験音楽として聴けるものが多いなかでも、驚くほど現代風のアンビエント・ドローンやシンセ-ポップ風のコンポジションを2CDに渡ってこれでもかと聴かせてくれる。それこそモーション・シックネスやメデリン・マーキーに続く新人といわれても気がつかなかったかもしれないし、年代が20年ほど違うとはいえ、そのような比較のなかでもオーラムとパーカーの仕事は異彩を放っていると結論づけることもできる。もちろん、ジョン・ケージと出会ってピアノを売り払い、シンセサイザーに手を染めたテレーザ・ランパッツィやフランカ・サッキなどあまり知られていない女性の電子音楽家は探しはじめれば切りがない。ニーチェの系譜学ではないけれど、歴史とは誰にとって都合がいいものとして書かれてきたのかということを考えはじめるとき、ダフニー・オーラムが忘れ去られた理由も浮かび上がってくるだろうと思うばかりである。

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