「KING」と一致するもの

前説:
 定住地ヲ持タズ、定職ニモ就カズ、雨ニモマケズ、風ニモマケズ、雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ丈夫ナカラダヲモチ、慾ハナク、決シテ瞋ラズ、イツモシヅカニワラッテヰル、一日ニ玄米四合ト、味噌ト少シノ野菜ヲタべ……。
 思わず宮沢先生の一節を口ずさんでしまうこの男のドリフター・ライフスタイルに僕はいつだって尊敬の念を抱いてしまう。実際に彼がおもむろにポケットから生のニンジンを取り出し、カリポリ食べながらマスタリングをしている姿に僕が唖然としていると、「どうした? 何か変か?」と屈託のない眼差しで不思議そうに首をかしげていたり。いや、変じゃないよね。単にそんな人を僕がみたことなかっただけだよね。むしろジャンク・スナックを喰らうよりぜんぜんいいよね。彼と過ごしていると、僕自身の生活感覚を改めて考え直させられるような場面が多々あるのだ。アメリカのフードスタンプ制度や、その他の各国々においても、あらゆる生活保護プログラムを最大限に利用して創作活動を続けるアーティストたちに、日本人である僕はいつもインスパイアされてきた。彼らにたかられるのにもウンザリしてきているんだけども。

 〈ハンデビス(Hundebiss)〉のドラキュラ・ルイス(Dracula Lewis)ことシモーネ・トラブッチの手引きの下、ソーン・レザー(SEWN LEATHER)としては最後のヨーロッパ・ツアーを終え、スカル・カタログ(SKULL KATALOG)としての初めてのツアー、そして彼自身初めてのジャパン・ツアーを強行しようとしているこの男。80'sホラー・ムーヴィーから抜け出してきたような風貌、めちゃくちゃなライヴ・パフォーマンス、僕がみてきたアーティストの中で間違いなくもっともキャラが立つ(てか、ほぼ漫画のキャラ)USアンダーグラウンド最大の問題児の全貌が、いま明かされようとしている。

 というわけで、今回はずっこけノイズ放浪記番外編! 僕の主宰する〈crooked tapes〉がお届けする、このスカル・カタログ・ジャパン・ツアーをより楽しんでもらうために、来日直前インタヴューをお届けしたい。来週月曜(7月7日)にはDOMMUNEにも出演するので、この機会に観られるだけ観ていただけたらうれしいです。

■スカル・カタログ / バイオグラフィー
1987年、ニューオリンズにて生を受ける。
パンテラのフィリップ・アンセルモの又従兄弟。
2002年に観たノーティカル・アルマナック(Nautical Almanac)のショウに感銘を受け、音楽活動を開始。
〈DAF〉やジ・ノーマル(The Normal)、ソフト・セル(Soft Cell)やスロッビング・グリッスル(Throbbing Gristle)等に影響を受け、2006年12月よりソーン・レザー(SEWN LEATHER)を始動する。
これまで〈ハンデビス(Hundebiss)〉や〈フレンス・アンド・リレイティヴ(Friends and Relative)〉、〈アメリカン・テープス(American Tapes)〉や〈ナイト・ピープル(Night People)〉等、数多くのレーベルからさまざまなフォーマットによる音源をリリース。
2007年より国内外でのツアーを頻発。
これまでDJドッグ・ディック(DJ Dog Dick)やナーワルツ・オブ・サウンド(Narwhalz of Sound)、レーザー・プードル(Laser Poodle)、ドラキュラ・ルイス(Dracula Lewis)、シークレット・アビューズ(Secret Abuse)、アース・クラウン(Earth Crown)、ヴィデオ・ヒッポス(Video Hippos)やホアクス(Hoax)等、ボーダレスにアーティストやバンドとステージ/フロアを共有してきた。
2013年暮れ、ソーン・レザーからスカル・カタログ(SKULL KATALOG)へ改名。
2014年夏、スカル・カタログとして初のミニ・ツアーが〈Crooked Tapes〉によって日本で強行されようとしている。USアンダーグラウンドきっての問題児の狂気を見逃してはならない。

俺たちは「エンド・タイム(最後の時)」を生きているわけじゃない。世界はとっくに終ってるんだよ。

やぁ、ソーン・レザーとして最後となったヨーロッパ・ツアーはどうだった?

(スカル・カタログ):よう! ヨーロッパはいつ行ってもクレイジーだぜ。フィンランドはとくにヤバかった。とりたてて何も期待せずに行ったら、完全に狂ってたよ。地元のテレビのヤツが取材に来てさ、ソイツのインダストリアル・ミュージックのショウのためにインタヴューを受けたり、同じ日にナイン・インチ・ナイルズとコールド・ケイヴが近所でプレイしてたから、俺らのショウのゲスト・リストにトレント・レズナーが入ってたんだよ! 結局来なかったけど……。
 次の日がオフだったから、ハコにそのまま残っていた3人とずっと飲んでてさ、その中のひとりのジョナスってデッカイやつが、次の日のベルリンのショウまでノリで航空券買っていっしょに来やがったんだよ。アコギだけ持って飛行機乗ってきて、ロック・スター気取りでさ。シモーネ(ドラキュラ・ルイス)がマネージャーのフリしたりして。フィンランド人はイケてるぜ。

ムハハ。グダグダだね。シモーネの〈ハンデビス・レコーズ〉からリリースされたソーン・レザーのラスト・アルバム『フリーク・オン・ハシシ/ロングボーディング・イズ・クライム』なんだけど、ソーン・レザーのラストを飾るのにふさわしい、素晴らしくヴァラエティに富んだ、ドラマティックなレコードだよね。このアルバムに込められたコンセプトとかあるわけ?

SK:う~ん……、ぶっちゃけそれ作ったのは相当前のことだからさ、そのとき何考えてたのかぜんぜん憶えてないんだよね。俺を取り巻いていた当時の状況を反映したものだと思うよ。ソーン・レザーの発展と終焉さ。このプロジェクトに対するある種のお別れを作りたかったのがあるけど、あのときそう思っていたかどうかはわからないね……。

あ、言っちゃうんだ(笑)。ぶっちゃけ僕も君がそれマスタリングしてたの憶えてるんだけど、たしか2012年にLAにいたときだよね? でも、お世辞を抜きにしても、ソーン・レザーとしてのベストじゃないかな。ヘヴィで、グシャグシャにロウで、それでいてエモいし、くそハードコア。

SK:ありがとう! そうそう。ほとんどは俺があのときLAに滞在していたくそ狭い部屋(LA郊外にある通称「ウーマン」というクラスト・アーティスト・レジデンス)で作りあげたね。

君がいつも作る造語みたいのっていいよね。最近の名言があったら教えて。

SK:最近作った新しい言い回しは思い当たらないな。だけどスカル・カタログの曲で、“ポスト・ワールド・オーダー(世界後秩序)”っていう、俺の見解を示す新しい言葉を掲げたんだ。基本的には「ニュー・ワールド・オーダー(新世界秩序)」のもっと極端なヴァージョンさ。俺的には「エンド・オブ・ワールド(世界の終焉)」はもう起きたんだ。俺たちは「エンド・タイム(最後の時)」を生きているわけじゃない。世界はとっくに終ってるんだよ。「ドゥームズ・デイ(審判の日)」を待っているなんて連中は的外れだし、「ドゥームズ・デイ」がすでに起きた事件だなんて考えるには混乱しすぎてんのさ。

いいね。すげぇそう思うよ。じゃなきゃこんな放射能汚染大国に人が住んでるわけないもんな。ほとんどの人々はまだ世の中がまだどうにかなってるって無理矢理思ってる/思わされてるからね。

SK:マジでその通りさ。

つーか、いまどこがヤサなの? こないだまでマサチューセッツのノーサンプトンにいたらしいじゃない。

SK:いまはカリフォルニア。カラッカラだぜ。

ソーン・レザーは死んだんだ。俺が“スモーク・オブ・ザ・パンク”(初期の代表曲)をやるのを期待してショウに来ないでほしいね。

ソーン・レザーはどうしちゃったわけ? なんでスカル・カタログになっちゃったの?

SK:もう長らくその名前に飽きてたんだ。俺が2006年にソーン・レザーを始動したときと、いまの自分とをこれ以上同一視できないしな。当時の俺はとにかく電子音楽とかノイズのショウでプレイしたかったんだ。ぜんぜんそういったシーンに不平があったわけじゃないけど、いまはロックンロールなバンドともっとプレイしたいんだよ。たとえどんなバンドでも、自分たちなりのロックンロールを表現している連中とね。そんなのばっかり聴いているから、最近の電子音楽なんてほとんど聴いてねぇよ。コンテイナー(Container)とその他ちょこっとは別だけどな!!!! 俺は客といっしょに騒いでハコをブッ壊すようなギグをプレイしたいんだ。観客がただ俺のことを怖がっていたり、ドラッグや酒をあおってそのへんに突っ立ってるようなんじゃなくなくて。つーか、そもそもショウに来てドラッグやって酒やって突っ立ってるって、どういうことだよ? 場はエナジーを求めてるんだよ? 連中は殻を破るべきじゃん、ゆでたまごになっちまうんじゃなくてさ。わかるっしょ? 俺的には、名前を変えることでソーン・レザーがやってきたことと差別化して異なった何かになればいいと思ってるかな。俺がいまやってるのはソーン・レザーじゃねぇ、スカル・カタログなんだ。だからソーン・レザーは死んだんだ。俺が“スモーク・オブ・ザ・パンク”(初期の代表曲)をやるのを期待してショウに来ないでほしいね。ありゃもう6年もやってねぇし、やる気もないね。

スカル・カタログの音はソーン・レザーと比べて(いくらか)キチっとしてるよね。

SK:その通りさ。他に方法ないしね。機材も使いこなせるようになったし、新しいのも入れたしね。カセットは使ってないよ。これは俺にとっていいことだね。場所を節約できるし音もいい。音がずさんなハコでエフェクトをこなすのはマジで難しいけど。

実験性は減ったけどパワフルな楽曲になったよね。リリックのテーマとかも変化してるのかな?

SK:リリックも進化してると思うぜ。俺はいつだって自分の身のまわりのことやこの世界でおきているクソッタレについて唱ってるんだ。

最近のゴス・リヴァイヴァル・ムーヴメントってすごいけどどう思う?

SK:ぶっちゃけそういった「最近何が起こってんのか」なんてことはぜんぜんわかんないんだけどさ、なんだってキッズはいつだって同じ格好してんのさ? 俺的には、ゴスだのパンクだのハードコアだの、シーンのキッズの格好をみるたびに変だなって思うよ。だって、すげぇ制服っぽいじゃん。まるでバカなガキがタンブラーだかなんだかに指示されてるみたいだよ。トレンチコートにブラブラ系のイヤリング、鋲付きのフィンガーレス・グローヴとか、最近の80年代の映画みたいなパンクはアリだけどな。唯一パンク・コミュニティに関しては、人々は変わりモンの思想を身にまとうことでコミュニティを引き立たせるってのはあるよ。みんなを異なるヴァージョンの同じ「変わり者」に見せるのさ。

あらゆるタイプの人間とツルんで、発展のためにあらゆる音楽を聴くべきだと思う。単にパンク・シーンのためだけじゃなくて人類全体のためにな!

 ……って、こんなんマジでいい加減にしてくれよって感じだよ! ユース・オブ・トゥデイは80年代に「ブレーク・ダウン・ザ・ウォール(壁を壊せ)」って言っていた。俺はその言葉を何よりも2014年の「パンク」シーンに与えたい気がするね。俺はパンクが自分自身を箱の中に押し込めるモンだなんて思ったこともねぇし、あらゆるタイプの人間とツルんで、発展のためにあらゆる音楽を聴くべきだと思う。単にパンク・シーンのためだけじゃなくて人類全体のためにな! インターネットだかなんだかのせいで均質化されたクソッタレなんかファックなんだよ。もし誰かが心から「ゴス」でも何でものめり込んでるなら、いいよ。イケてるよ。だけど空っぽの「リヴァイヴァル」なんて全部ファックだぜ。

ソーン・レザーが死んだのは、君が言うそういった空っぽの「リヴァイヴァル」への離別の意味もあったりするのかな?

SK:う~ん……いや、それはさっきも言ったけど単に俺が自分の過去のクソとこれ以上関わりたくなかったからだよ。単に過去の自分のスタイルから離別したかったってだけ。

最近君らがはしゃいでたトリップ・メタルって一体なに?


空っぽの「リヴァイヴァル」なんて全部ファックだぜ。

SK:ジョン・オルソン(ウルフ・アイズ)があるインタヴューの流れの中で言ってたんだよ。「ノイズ・ミュージックは完全に終わった」「ウルフ・アイズはトリップ・メタル・バンドだ」……ってね。なにがトリップ・メタルだか聴きゃなんとなくわかるだろ? でも定義できないんだよ。あらゆる定義の試みは不毛だ。人々は永遠にそれが何であるのか、何がトリップ・メタルと呼べるのか、思いを巡らせていくだろうよ。
 ドッグ・レザーはスクラップ・メタル・バンドだぜ!

DJドッグ・ディック(犬チン)との合体ユニット、ドッグ・レザーはまだやってる?

SK:……いや。だけども、できればもうすぐ引退を発表したいな。

うわー、悲しいなぁ……。君たちが近いうちにスカル・ディック(骨チン)を結成することを夢見てるよ。

SK:ハハハ、いいぜ。いつか必ずやってやるぜ!

最近イケてるバンドといっしょにやったりした?

SK:モントリオールのバンドでペルヴィック・フロア(Pelvic Floor)はヤバい。ギリシャのバンドでバズーカ(Bazooka)ってのがクソヤバいんだけど、いっしょにやったことはないな。最近ちゃんといろんなバンドとやれてないよ。ホアクス(HOAX)とのツアーは最高すぎたけど。

ホアクスはヤバかったよね。彼ら解散したってきいたんだけどマジ? ……てか、君は昨年末までノーサンプトンで彼らのところに転がりこんでなかった?

SK:そうさ。ホアクスのジェシーとイアンはいまLAに住んでるよ。俺は昨年末までドラマーのジャイボのところで過ごしてたよ。彼はいまモーロン(MORON)って新しいバンドをやっててそれもヤバい。

……つーかなに、知らなかったんだけど、君ってパンテラのフィルの又従兄弟なの? それってマジ? なんかそれにまつわるイイ話ないの?

俺がバックステージ・パスを持ってヴィニー・ポール(パンテラのドラマー)のとこに行って「ヘイ! フィルに会わせてくれない? 俺フィルの従兄弟なんだ!」って言ったんだよ。そしたら彼は俺を見ながら「誰もがフィルの従兄弟さ!」ってね。

SK:ヘヘン! マジだぜ。会ったことないけどな! フィルの母ちゃんはクールだぜ。若い頃に彼女に何回か会ったことがあるんだ。彼女はいつもクールなパンテラのマーチをくれたし、パンテラやスレイヤー、それにモービッド・エンジェルのショウに入れてくれたんだよ。あれはたしか俺が14歳のときだな。俺がバックステージ・パスを持ってヴィニー・ポール(パンテラのドラマー)のとこに行って「ヘイ! フィルに会わせてくれない? 俺フィルの従兄弟なんだ!」って言ったんだよ。そしたら彼は俺を見ながら「誰もがフィルの従兄弟さ!」ってね。いまだにそれがマジでどういう意味だったのかわからないけど。まぁとにかく、スレイヤーのメンバーが俺と俺の友だちに話しかけてくれたし、彼らはマジでクールだったね。どうよ?

最ッ高……(笑)! イイ話だわ……それ。自分で呼んでおいてなんなんだけど、君がもうすぐこっちに来るなんて信じられないよ。ショウ以外で果たしたい野望はあるか? あとスケボーは持って来いよな。

SK:この野郎! もちろんスケボーは持ってくぜ! もし金に持ち合わせがあればクールなTシャツとかカセットをゲットしたいぜ! レコードショップ・ベースは行きたい! 全パンクスとハングアウトしたいぜ!

■あぁ……最後の以外はどうにかできるわ(笑)。

宣伝:

■SKULL KATALOG SPENDING LOUD JAPAN TOUR 2014
頭蓋骨の目録/爆音浪費日本道中二〇一四


7月11日(金)新宿ロフト
7月12日(土)西横浜エルプエンテ
7月13日(日)札幌The HAKATA
7月19日(土)大宮ヒソミネ
7月20日(日)幡ヶ谷フォレストリミット

■SKULL KATALOG SPENDING LOUD JAPAN TOUR 2014 INTRODUCTION
緊急特番!
頭蓋骨の目録/爆音浪費日本道中二〇一四開会宣言
CROOKED TAPES TV

7月7日(月)Dommune
出演
食品まつり
黒電話666
SKULL KATALOG
※エアロビ有り
…and more ?

■SKULL KATALOG SPENDING LOUD JAPAN TOUR 2014 FINAL
頭蓋骨の目録/爆音浪費日本道中二〇一四最終公演
CROOKED TAPES NIGHT

7月20日(日)幡ヶ谷フォレストリミット


出演
SKULL KATALOG
PAIN JERK
DREAMPV$HER
黒パイプ
§=§
MCKOMICKLINICK&WATTER
KΣITO
DJ 1drink
DJ ケンジルビエン
DJ 7e
※エアロビ有り
友情出演:
Vinnie Smiths

21時より
¥2000 + 1 drink

more info:
www.crooked-tapes.com
ryo@crooked-tapes.com

Fatima - ele-king

 先日ロンドンから帰ってきたばかりの友だちが言うには、いまは「ジャズが来ている」そうだ。流行りモノが好きな僕は、そういうひと言が気になってしまうのだが、UKは、クラブ・カルチャーにおいてジャズ/ファンク/ソウルがセットとなって周期的に流行る。ele-kingでもここ1~2年はその手のモノが紹介されているが、あるクラブ世代の固まりがある程度の年齢に達すると、ジャズ/ソウル/ファンクにアプローチする人は少なくなく、いまはダブステップ世代にとってそういう時期なのだろう。
 そういえば、昨年はセオ・パリッシュによる〈ブラック・ジャズ〉(70年代のスピリチュアル・ジャズを代表するLAのレーベル)の編集盤もあったが、今年はサン・ラー生誕100周年でもある。ラー100年の記事は、海外のインディ系の多くのサイトでも載っている(彼は1914年、大正3年生まれなのだ)。

 クラブ・ミュージックで言えば、フローティング・ポインツ(サム・シェファード)は、そのスジでもっとも評価の高いプロデューサーだ。彼はいまだにアルバムを出していないのだが、何枚かのシングルによって(とくに2011年の「Shadows EP」と「Faruxz / Marilyn」は必聴)、その他大勢のジャジーな連中との格の違いを見せている。ゆえに彼が運営に関わる〈エグロ〉からソロ・デビューした、スウェーデン出身ロンドン在住の女性シンガー、ファティマのフル・アルバムを楽しみにしていなかったファンなどいないだろう。

 録音はロンドンとLAでおこなわれている。アルバムをサポートするメンツはかなり良い。サム・シェファードはもちろんのこと、デトロイトのセオ・パリッシュ、〈ストーンズ・スロー〉のオー・ノー、サーラーのシャフィーク・フセイン、LAのコンピュータ・ジェイ、リーヴィングからもカセットを出しているナレッジ、ケンドリック・ラマーのアルバムにも参加しているスクープ・デヴィル、ロンドンのfLako……とまあ、一流(?)どころが揃っている。
 しかし、一流どころを揃えれば必ずしも試合に勝てるわけではないことは、ワールドカップをご覧の方にはおわかりだろう。チリやメキシコのようなチームは、がんばって最後まで見て良かった……と思わせる試合をした。ファティマの『イエロー・メモリーズ』がそのレヴェルに達しているかどうかは疑わしいが、確実に言えるのは、ここには過去を活かした魅力的な「現在」があることだ。

 現在──ローリン・ヒルやジル・スコットで育った90年代の子供の上品な歌の背後には、モダンなビートが軽やかに鳴っている。1曲目の“Do Better”(シェファードpro)は、70年代ソウル風のドラマティックなホーンセクションではじまるが、アルバムはレトロに囚われない。マッドリブの弟によるヒップホップ・ビーツの“Technology”、コンピュータ・ジェイ(とシャフィーク・フセイン)によるネバっこファンク“Circle”、スクープ・デヴィルのうねりをもった“Ridin Round (Sky High)”……と、前半は、ヒップホップ・ファンとしての彼女の好みが展開されている。
 そして、ジャズ/ソウル・スタイルの“Biggest Joke Of All”(シェファードpro)、最高にチルな“Underwater”(ナレッジpro)など、古さを活かした曲を混ぜながら、『イエロー・メモリーズ』はUKらしい折衷主義を更新する。真夜中のダウンテンポ“Talk”(シェファードpro)から最後の曲“Gave Me My Name”(シェファードpro)にかけてのメランコリーも悪くはない。 
 

 大好評発売中! 続々と追加のオーダーをいただいております『「4分33秒」論』。イヴェントやフェアもまだまだつづきます。ジュンク堂書店池袋本店さんでは、佐々木敦さんの選書フェア〈ジョン・ケージと「4分33秒」を/から考える〉を開催中。こんなにあるのかジョン・ケージ本! 売り場では、ケージ自身の著作から、ケージ学者の研究書、実験音楽の入門にもってこいのガイド本まで、佐々木さんのコメントつきでずらりと展示・紹介されています。お立ち寄りの際にはぜひ9F芸術書のフロアまで!

■佐々木敦著
「4分33秒」論──「音楽」とは何か

本体 2,500円+税
上製256ページ
2014年5月30日発売
ISBN 978-4-907276-05-8
Amazon

~目次公開!~
一日目 『4分33秒』とは何をするのか
イントロダクション/「『4分33秒』を/から考える」ということ/『4分33秒』の初演とその時代/無響室の体験/「音」と「音楽」/なぜ四分三三秒なのか/ホワイトペインティング説/『4分33秒』が企図するもの/「あんなの音楽じゃない」/人間は慣れる/「HEAR」と「LISTEN」/「音」から「音楽」へ/耳はフォーカスできる/「聞こえている」ことの豊かさ/現前性・一回性・不可逆性/『4分33秒』を聴く/『4分33秒』を録音するということ/時間の設定/『4分33秒ダブ』/ダニエル・シャルルとの対話/「音」の収奪/作曲なんかいらない?/『4分33秒』は常に流れている/『4分33秒』の後で作曲するということ
二日目 「無為という行為」と「時空間の設定」
否定形で語られる『4分33秒』/ネガティヴがポジティヴに変換する/「意図」の所在/『4分33秒』を「音楽」たらしめるもの/『4分33秒』の理想の有り様/二回目以降/四分三三秒の間に起きていること/意図の介在しない芸術/音楽が不要になる?/それは芸術の範疇なのか/「音楽」vs「音」の不可能性/時空間の設定・限定/「無為」を成立させる条件/アートと音楽/『4分33秒』のオムニバスを聴く/角田俊哉とサーストン・ムーアによる『4分33秒』/参加できなかった理由/リダクショニズム/「無」が語る
三日目 『4分33秒』をめぐる言説
音楽史における「サイレンス」/マイケル・ナイマン『実験音楽』/「偶然性」と「開かれた経験」、そして〈生〉の肯定/近藤譲『線の音楽』/「外聴覚的音楽」/「音楽だと思ったら音楽」なのか/「聴覚的音楽」に回収される/器としての世界/常にそこにある沈黙/庄野進『聴取の詩学』/『4分33秒』がまとう権威性/『4分33秒』と「レディメイド」/「枠」と「中身」/『4分33秒』の続編/若尾裕『奏でることの力』/フルクサスとの関わり/「オーヴァーピース」と「アンダーピース」/コンセプチュアル・アートと『4分33秒』/室内楽コンサートとヴァンデルヴァイザー楽派/『One11 with 103』/ケージとフランク・ザッパ/次回予告
四日目 『4分33秒』以降の音楽
『ヴァリエーションズⅦ』/「枠」と「出来事」/指示の零度と百%の狭間/出来事性を再認識させる/映像における「枠」と「出来事」/構造映画(ルビ:ストラクチュラル・フィルム)/カメラがパフォームする映画/ほとんど何もない/『4分33秒』への回答/ミニマル・ミュージックとの接点/特権化が神秘化へ向かう/ヴァンデルヴァイザー楽派/聴取ではなく体験、官能ではなく認識/『セグメンツ』/『セグメンツ』で起きていたこと/コンセプトの理解と聴取体験/コンセプトは理解されるためだけにあるわけじゃない/体験が重要なのか/『4分33秒』を/から「考える」こと/即興/聴取の解体
五日目 「聴取」から遠く離れて
三つの『4分33秒』/第二の『4分33秒』/第三の『4分33秒』/「聴取」だけが問題なのか/枠と出来事を再考する/枠とは何か/純粋なタイムマシン/自分の時間が外にある/純粋に時間が流れる/映画におけるフレーム/純粋小説?/『エウパリノス』/「体験」でいい/質疑応答/無駄なことが贅沢だという感覚/『4分33秒』と「人間が生きているということ」/美学に拠らないこと


interview with Matthewdavid - ele-king


Matthewdavid
In My World

Brainfeeder / Beat Records

ElectronicAmbientExperimental

Tower HMV Amazon iTunes

 マシューデイヴィッドはロサンゼルスの空のような男だ。僕がどれだけくだらないことを喋ろうが、いくら現在の音楽マーケットに悪態をつこうが、いつでも穏やかで、真摯なまなざしを向けながら人の言葉をひとつひとつ丁寧に咀嚼し、紳士的に自分の見解を述べる。そのたたずまいはつねに涼しげ、本当にメガ・爽やかな男であり、時折あれ? 軽く後光差してない? と思ってしまうほどの輝くポジティヴ・オーラで、語りかけるものの身を包んでしまう。それでいて完全に超変人。

 本作『イン・マイ・ワールド』の完成直後、彼から受け取ったデータを初めて通しで聴いたとき、僕は愕然とした。近年にないほどの深い感動をおぼえた。いったいどうなってるんだ? どうやったらこれだけポップでありながら最高にドープなソングライティングができるんだ? 彼にしか創ることができない最高のレコード。結婚と娘の誕生によってかけがえのない家族を得た彼が人生のひとつの集大成として完成させたこのレコード。彼の過去の膨大なアンビエント・ワークスの中で僕がしばしば垣間みてきた彼の人生の苦悩や不安、葛藤──僕が体験したことのない人生の山なみを乗り越えた先に広がる光と闇が渾然一体となる遥かな宇宙、それをマシューデイヴィッドは愛で包み込もうとしている。控えめに言っても最高傑作、僕の今年度最高のレコードだ。

 インタヴュー中に登場するマシューの奥さんであるディーヴァ・ドンペ(Diva Dompe)は、かつてブラック・ブラックやポカホーンテッドなどでバンド活動をおこない、現在はディーヴァ(DIVA)としてLAを拠点にソロ活動をおこなうアーティスト。マシューとの結婚、娘のラヴ誕生後も滞ることなく積極的にライヴ・パフォーマンスや、自らが主催する瞑想プログラムなどをおこなっている。不定期ではあるが彼女も〈ダブラブ〉でヒーリング・プログラム、「イアルメリック・トランスミッションズ(Yialmelic Transmissions)」のホストをつとめている。

■Matthewdavid/マシューデイヴィッド
フライング・ロータス主宰〈ブレインフィーダー〉の異端児にして、自らも時代性と実験性をそなえるインディ・レーベル〈リーヴィング〉を主宰するLAシーンの重要人物。非常に多作であり、カセット、ヴァイナル、配信など多岐にわたるリリースを展開。2011年に〈ブレインフィーダー〉よりデビュー・フル・アルバム『アウトマインド(Outmind)』を、2014年に同レーベルよりセカンド・アルバム『イン・マイ・ワールド』を発表した。


たぶん、君は僕の「幸福の涙」にチャネリングしちゃったんだと思うよ。

やあマシュー、またこういったかたちでインタヴューができて本当に光栄だよ。はじめに正直に言わせてくれ。『イン・マイ・ワールド』を聴いて泣いたよ。ここ数年でもっとも感動したレコードのひとつだと言っていい。

MD:ありがとう。じつは最近泣き虫なんだよ。このアルバムの制作中もよく泣いていたから、たぶん、君は僕の「幸福の涙」にチャネリングしちゃったんだと思うよ。

「幸福の涙」にチャネリング!!!! 何かスゴいねそれ。でも僕も大袈裟な言いまわしかもしれないけど、このレコードを通してマシューの人生と、それに照らし合わせた僕の人生を追体験させられたよ。

MD:共感してくれたみたいだね。それこそ僕が成し遂げたいことのすべてさ。アートのかけらが無機質な社会を貫き、全人類が共有可能な感情レヴェルの最深部を掘りおこす……この音楽はまだまだ、ぜんぜん、抽象的なんだよ。まだ相当難解だし実験的なんだけど……。僕はこのイカレたスタイルで、もっとポップな音楽を制作するようユル~く試そうと思うんだ。より広いオーディエンスへ向けていくことも重要だしね。

うん。間違いなく共感した。極論を言えば、すべての人間は一生の間、人生経験や内面世界を誰とも完全に共有することはできないんだけど、僕らは他者の人生経験や内面世界を自分たちのそれと照らし合わせることで誰の人生や感覚でも共感できる。そういう意味でこのレコードはすんごいスムーズだと思うんだよね。『イン・マイ・ワールド』は抽象的で難解なエクスペリメンタルとポップの完璧なバランスの上に成り立っている。そのバランスの支点にシュッと人が入り込めるようになってるってゆーか……

MD:そうさ! これは解放なんだよ! 僕が求めているのは解放なんだ! 僕らはしばしば僕らのマインドが解放を求めていることに気づけないんだ。僕はこのアルバムをひたすら外へ向かってゆく魂の表現に感じている。すごいダイレクトなんだよ、何も後ろには抱えないで前に向かってく感じ。これがリスナーの解放に働きかけるんだ、ちょうど僕がこれを制作していたときに体験したように。僕は人々がもっと寛容でオープン・マインドなっていくように感じるんだ、すべてにたいして。すべてが癒えるのさ。
 もし誰かがこのレコードを試しに聴いてみてフィーリングがあまり合わなかったり、好きになれなかったりしてもだよ、それでもそこにはリスナーへの影響があって成立するある種のポジティヴ&ヒーリングがあるんじゃないかって感じているんだ。それが僕のゴールなんだよ。

マスタリングとミックス・ダウンをしているときに僕のベイビーが生まれたんだよ。僕は最後の手を加えて構成を形作った。

解放だね。ジャケも全裸だしね! 勝手な感想なんだけど、『イン・マイ・ワールド』は非常にストーリー性に富んだ作品に思えるんだ。スーパー・スイートなラヴ・ソングで幕が開けたと思ったらさまざまな感情が押し寄せてきて、気がついたら壮大な精神の旅へ向かっている。最終的には生命と芸術的欲求の根源、宇宙のはじまりまで遡ってまた帰ってくるみたいな……

MD:そうさ! これらの曲で物語を編むのはマジで大変だったんだよ! 正直に言うと当初の予定でははじめから終わりまでの流れはこうじゃなかったんだ。だけどアルバム制作が最終段階に入ってさ、マスタリングとミックス・ダウンをしているときに僕のベイビーが生まれたんだよ。僕は最後の手を加えて構成を形作った。

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物語、つまり『イン・マイ・ワールド』のストーリーで織られたタペストリーは、情熱と探求による献身の時間を経て、語られるべき時を迎えたのさ。


Matthewdavid
In My World

Brainfeeder / Beat Records

ElectronicAmbientExperimental

Tower HMV Amazon iTunes

けっこうな時間をこのアルバム制作に割いてたよね? いくつかの曲は1~2年前にできあがっていたじゃん。でもこのアルバムでの聴こえ方ってかなり違うし、マスタリングとミックス・ダウンのときにさ、以前作った曲もショワ~って変容した感じ? 家庭を持ったマシューが見えた新たな物語の世界へさ。

MD:バラさないでくれよ……(笑)。ご存知のとおりこのアルバムを作りあげるのに何年もかかったよ。たぶん2~3……いや、何年かかったか正確に言うのも難しいな。2曲めの“コズミック・コーラー”は何年も前に作ったビートものだったし。
 僕の人生、つまり新たな家族を得るまでの変遷が、長年あたためてきたアイデアに、あらためて僕を頭から飛び込ませてくれて、そのチカラづよさに気づかせてくれたんだ。まだ完成するまえの話だよ。たくさんの古いアイディアが成熟、変容して、全体像を結ぶ曲となっていった。物語、つまり『イン・マイ・ワールド』のストーリーで織られたタペストリーは、情熱と探求による献身の時間を経て、語られるべき時を迎えたのさ。愛、思いやり、感情移入といったもっとも深い情熱が誠実な創造力を走らせてくれるんだ。

さっきも言ったけどジャケが最高。写真が相当キテる。とくにライティングと表情が。このポートレート撮影にあたってコンセプトはあったの?

MD:いや~、ニコラス・マレーが撮影したフリーダ・カーロのポートレイトを参考にしたんだよね(https://indigodergisi.com/wp-content/uploads/2014/01/frida-kahlo-by-nickolas-muray.png)。ディーヴァの友人の素晴らしい写真家であるローガン・ホワイトのおかげさ。リヴィングにデカいライティングを用意してもらってさ、僕らでベンチやら植物やらハリボテやらセッティングして……僕らが実験を開始してから一時間かそこいら経った頃かな、よっしゃ、全裸でベイビー抱いて撮ろうぜ! ってなって。

いや、普通ならないって……

MD:ちがうライティングや表情も試してみてさ、異なった趣きを演出するように、僕らの幸せを内省的でアーティスティックな雰囲気に再現してみたんだ。僕のベイビーは人生と愛を、人類の成長と進歩を象徴しているんだ。

マシューはディーヴァ(Diva)といっしょにあのけっこうマジな瞑想をしてるの? いくつかのトラックはディーヴァの曲のコンセプトに近いものを感じるよ。てか、3曲めなんかモロに“パーペチュアル・ムーン・ムーズ(Perpetual Moon Moods)”でディーヴァのアルバム・タイトルとカブってるし。ネオ・ペイガニズムとかアニミズムみたいなものには惹かれる?

MD:そうだね、コンセプチュアルな面では扱っているテーマ/リリックの言葉選びの点では近いものがあるよ。僕が自分の音楽のなかで話そうとしている事柄はいろいろあるんだけど、その内のいくつかは君が言うような「ネオ・ペイガニズム」や「オカルト」、「秘術」と呼ばれる類いのものだ。LAでのエナジー交流のコミュニティがあって、僕も彼女もその中でいっしょに瞑想してるよ。秘技である古代の治癒術を学んだり、不安や恐怖をどのように消すのかをコミュニティの中での創造行為を通じて学び、段階的な行動とともに共有していくんだよ。

僕が自分の音楽のなかで話そうとしている事柄はいろいろあるんだけど、その内のいくつかは君が言うような「ネオ・ペイガニズム」や「オカルト」、「秘術」と呼ばれる類いのものだ。

近年のマシューの作風であるソウルやR&Bのチョップ&スクリュー、オリエンタルなメロディ、未来的ダブ・エフェクトも非常に洗練された新たな形でこのアルバムの曲に表れているよね。なにより今回はマジで唱いまくってるしラップしまくってる。それがなによりこのアルバムを愛に満ちたものにしているしね。月並みなことを言って申し訳ないんだけど、〈ブレインフィーダー〉からの前作『アウトマインド』からの変化は明らかなんだ。話が重複しちゃうけど、結婚や娘の誕生などマシューの人生には最近大きなことがいっぱいあったわけで、状況や環境の変化は君のアートにも絶対影響するじゃん?
 “アウトマインド”を制作してたときからふりかえってみて、いったい何がもっともマシューの音楽に影響を与え、どんな方向に変化したと思う? マシューを再びラップすること、唱うことに突き動かしたのはなんだろう?

MD:これは僕にとってとても重要なことなんだけど、愛の明白なテーマを投影するためには、よりよいプロダクション・クオリティでの歌とラップのヴォーカルが不可欠なのさ。若い頃の僕がヒップホップの洗礼を受けたことは、僕が真に自由な自己解放に向かっていくはじまりだったんだ。高校の頃にビートを作りはじめてビートにラップをのせた。初期のフルーティーループスと初期のACID PROで作ってたね。自分自身の存在意義や怒れる10代のフラストレーションなんかを込めて、ほとんどパンク的反抗精神なんだけど、あくまでそれをヒップホップを通して発散していたのさ。当時の僕のラップはすべて自分自身に関する事柄だった。ティーネイジャーとしての足掻き、教師や政府、ときには両親への足掻きもね。

愛の明白なテーマを投影するためには、よりよいプロダクション・クオリティでの歌とラップのヴォーカルが不可欠なのさ。

 いま、僕がこれらの人々に見せつけてやりたい唯一の事柄は感謝と尊敬の念なんだ。すべての人類へのメッセージさ。みんなが愛を持ちつづけるかぎり僕には未来への希望と楽観があるんだ。人間は意識を高めればお互いに助け合い、共感し合うことができるんだ。意識の飛翔(Mind Flight)+意識の拡張(Mind Expansion)= 宇宙の移行(Space Migration)なんだ。「みんなが愛を持ち続ける限り」……僕はこのテーマをこの新たな身体表現として語りかけたいんだ。インスト・アルバム(『アウトマインド』)のようにテーマをコッソリと埋め込むかわりにね。勇敢になるときがきたのさ、世界がひとつになるための最大の可能性といえるこの普遍的なテーマを表現するときがきたんだ。僕らは娘を「ラヴ」と名づけたんだ。彼女やこの地球に存在するすべての人間が宇宙の光を内包しているようにね。

たしかに君がこのアルバムで壮大な愛と平和の「意識の拡張」を試みてるのはよくわかるんだ。でも僕がこれを聴いて感じたのは、君が今回掲げる普遍的なテーマの強度とでも言おうか。単なるヒッピー気取りのハリボテじゃない強度、それはマシューがいままでの人生で体験してきた憤り、葛藤、失望といったリアリティがあるからこそ成立しているように聴こえるよ。

MD:その通りだよ。光と闇は一体だ。そして僕らは自分たちからその多くを学ぶことができる。夜のもっとも深い闇を通り抜けるようにね。その秘密は闇の中で沸き返ったり固まったりしているんだよ。僕らは眩い光と漆黒の闇の間でおこなわれる、認めざるをえない交換を理解することで宇宙の秘密、魂の秘密を見つけるんだ。この考え方が僕の音楽を強固なものにし、マジで僕のヴィジョンを強いものにしているんだ……そこだよ。僕らはいま同じ波長で話をしているんだ。
 僕がマジに焦点をあてたいことがあるんだ。僕の友だちやコミュニティもつねにそれを談義してきた。僕らの国には深刻な戦いがあるんだ。たぶん他の国々でもそうだけど、これは闇との戦いなんだ。僕らの国は、僕らが生きていくことから追いたてるドラッグ、計画、道具、組織を作り出した。恐怖を僕らの心にしみ込ませることで、僕らが絶対に闇に立ち向かえないように、完全に闇を恐れてしまうようにね。これは不健康だから変わる必要があるんだ。僕らがもっと目を向けて認めなくてはならないのは、人間社会と意識の解放において教育と試練をもって闇を抜けていくことなんだよ。

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これ以上もう境界線なんてほとんどないんだよ。いつだって僕らは音楽の境界を解放してきたんだ。


Matthewdavid
In My World

Brainfeeder / Beat Records

ElectronicAmbientExperimental

Tower HMV Amazon iTunes

少し話題を変えるけど、マシューを取り巻くLAのローカル・シーンも最近変化している? もしくは見え方が変わってきた?

MD:すべての物事は絶え間なく続く変化と流動の段階にある。それは音楽シーンもいっしょさ。僕はたくさんの音楽をたくさんの時間で考える。あらゆる歴史の点から、あらゆる国からやってくる、あらゆる種類の音楽について。ロサンジェルスはインスピレーションを受けるには本当にエキサイティングな場所だ。エレクトロニック・ミュージックは〈ロー・エンド・セオリー〉で、ジャズはサンダーキャットで、アンビエントやニューエイジ、実験音楽のリヴァイヴァル・ライフスタイルは僕やゲド・ゲングラスやキャメロン・スタローンズが担っているようにね。これらの芸術行為はつねに混ざりあってひとつのものになろうとしている……これがいま起きていることさ。ここでは、僕はソウルやR&Bミュージックを作って、「変テコ・ポップ」や「変テコ・ソウル」をショウで披露して、オーディエンスはつねに何か新しいものに興奮し、敬意を抱いてくれるんだよ。

最近誰かとコラボレーションしている? 家族とのコラボレーションは『イン・マイ・ワールド』の中には入ってる?

MD:アルバム・カヴァーの家族写真だけかな。じつはディープ・マジック(Deep Magic)の古い曲をリミックスして3曲めの“ザ・ムード・イズ・ライト”に使っているよ。インドでサンプリングしてきた子どもたちの声は最後の曲の“バーズ・イン・フライト”に使っているね。
 “イン・マイ・ワールド”以外だと、仕事でマジでたくさんの人とコラボレーションしつづけているよ。友だちの音楽をたくさんミキシングしてマスタリングして、〈リーヴィング・レコーズ〉のリリースもやりながらね。

〈リーヴィング・レコーズ〉も年々ヴァラエティに富んだリリースになってきたよね?マシューと〈リーヴィング〉も繋がりの深い〈ストーンズ・スロー〉や〈ロー・エンド〉周辺も以前よりも懐の大きなものになっていってる気がするんだけど。それって前も訊いたかもしれないけど君らによるものが大きいんじゃないかな。

MD:これ以上もう境界線なんてほとんどないんだよ。いつだって僕らは音楽の境界を解放してきたんだ。

子育てが忙しいのにけっこうイヴェントにも顔出すし、ライヴもやってるよね? 最近LAで印象に残ったイヴェントとかライヴってある?

MD:昨日は〈ロー・エンド・セオリー・フェスティヴァル〉だったんだよ! 全部ジャングルとドラムンベースのセットでプレイしてやった! ステージ上でキモいくらい踊り狂っちゃってさ、そしたら観客がガンガンのせてくるもんだからドンドンアガっちゃって……。みんなすごい楽しんでたし、僕のほうも新たなスタイルでパフォーマンスをするのはいつだって最高だね。ラップと歌もチョコっとやったよ。

うわ! それ行きたかったなー。君めっちゃクネクネ踊るもんね。数ヶ月前にさ。ロー・エンドにDJ Earlといっしょに観にいったの憶えてる? あれすっごいヤバかったよね。ジャングルからジューク/フットワーク系もハマってる? アルバムに収録されてる“ウェスト・コースト・ジャングル・ジューク”は超キラー・トラックだよ。このスタイルだけの12インチとか切ってよ。

MD:すごいハマっちゃってるよ。すごく楽しいしエナジーに満ちてるんだ。こういったもののヴァイブレーションをもろに受けたらクレイジーに突っ走らずにはいられないよ。ありがとうマシュー・サリヴァン(Matthew Sullivan)! 僕にジャングルを発見させてくれて感謝するよ!
 ジャングルはフットワークの親でもある……だけど僕はヒップホップのバッググラウンドで育った。ヒップホップはサンプリング・ドラムとブレークだろ? ジャングルはそこからブレークを取って2倍の早さにしちゃうんだ! 超楽しいよ! フットワークとジュークはベースにベースにベースにベースさ。IDMとドラムンベースはリズムとシーケンス、それからタイミングを永久飛行に……よっしゃ行こうぜ!

正直なところ、最近、クレイジーなジャングルやドラムブレークにハマっちゃってて……それからフットワークを少々……。僕は実験を試みながらこれらのスタイルがヒップホップやソウル、アンビエントと合体していくのにワクワクしてる。

〈ダブラブ(dublb.com)〉でマシューがホストを務めているウィークリー・プログラム、「マインドフライトメディテーション(Mindflight Meditation)」について教えてよ。

MD:毎週2時間、〈ダブラブ〉でおこなっている僕の音楽瞑想プログラムさ。ほとんどの場合、すべてが即興で、すべてがライヴでおこなわれ、聴者の意識レヴェルを高め、変性に向ける、アンビエント/エレクトロニック/ドローン/フィールド・レコーディングなどで構成される番組だよ。ひょっとしたら僕の音楽活性化体験の中でもっとも満たされて報われているものかもしれないな! この種のパフォーマンスや即興はいつもホーム・スタジオでおこなってるんだ。僕ん家のリビングで、僕の家族と……だけどもそれをブロードキャスト、〈ダブラブ〉を通じて世界中に配信できるのはとてもうれしいよ。ヒーリング・ヴァイブを共有するんだ! これまでにたくさんのゲストを迎えて僕とコラボレーションやライヴ・パフォーマンスをおこなってきた。ディンテル(dntel)、 mndsgn、M・ゲド・ゲングラス、d/p/i、ホワイト・レインボウ(white rainbow)など……いろんな人が遊びに来るけど大抵の場合は僕ひとりでやってるよ。

とりあえず近いところで企んでることがあったら教えてよ。

MD:さっきも言ったけど、正直なところ、最近、クレイジーなジャングルやドラムブレークにハマっちゃってて……それからフットワークを少々……。最高のヒップホップ・グループ、アウトキャストのミックス・プロジェクトとジャングルだね! そろそろくるでしょ。僕は実験を試みながらこれらのスタイルがヒップホップやソウル、アンビエントと合体していくのにワクワクしてる。

君がどれだけアウトキャストが好きなのかは知ってるよ。このアルバムを聴いてケンドリック・ラマーも好きなのかなって思ったんだけど。

MD:ケンドリックは好きだよ。だけどアンドレ3000はもっと好きだな。あえて言いたいんだけど、僕はケンドリックが持っているようなスマートで未来的でイケてるスタイルはあきらめなきゃいけないな。彼には本当に滑らかなヴォーカル・プロダクションもあるよね。正直に言うと、ケンドリックのサウンドは彼のヴォーカル・プロダクションによって最高のものになっていると思うし、そこからインスパイアされるよ。アウトキャストはいつだって境界線をブッ壊してるんだ。でも僕にとってもっとも重要な要素は、彼らがどうやってヴォーカル・プロダクションにおいてピッチを使っているかなんだ。型にはまらない、ファンキーな、ギャングスタなレイヤー感とサイケ・エフェクト……。

最後に締めのメッセージがあれば……

MD:僕のレーベルの〈リーヴィング・レコーズ〉は〈ストーンズ・スロー〉の協力の下、たくさんの奇妙なアルバム・リリースを控えている。きたる一年、僕はもっと〈ストーンズ・スロー〉のオフィスで働くことになると思うよ。可能なかぎり情熱的で革新的なアートに焦点をあててサポートとリリースをつづけていくよ!
 そして最大の感謝の念を僕のコミュニティ、家族、友だちにつつましく表するよ。
 愛してるぜリョウ!

#5 eastern youth 吉野寿 後編 - ele-king

この頃から俺、一人で飲みにいけるようになったんですよ。一人でウロウロするようになって。そしたら自分と同じように一人でウロウロしている人が、世の中にはいっぱいいるってことに気づいたんですよ。

前編はこちらから

──今回インタヴューさせていただくにあたって、eastern youthのアルバムをあらためて活動順に全部聴き直してみたんです。そしたら『Don quijote』がすごく印象的で。歌っていることの本質はいまと変わらないのですが、歌詞から連想される世界観が荒涼としているというか。この頃の吉野さんはどんな心境だったんでしょうか?


eastern youth
DON QUIJOTE

キングレコード

Amazon

吉野:どんな感じだったんでしょうね……。「ドン・キホーテだなあ」って思ったんですよね。

──ご自分が……?

吉野:そう……ですねぇ……。この頃からCDのセールスが落ちてきて、レコード会社から首の皮一枚だみたいなことを言われて、さんざん脅されてたんですよ。さすがにもう(工事)現場の仕事とかには戻りたくなかったし、なにより自分との戦いに負けたくなかった。でもその戦っている相手が己の主観でしかない、幻のようなもののような気がしていたというか。「いったい何と戦ってるんだろう、俺は?」みたいな。ただ戦わなきゃ敗れるということだけはハッキリしてるんだけど、同時に勝つということもない戦い。

──どういうことですか?

吉野:負けたくないってことをあえて具体的に言うなら、生き延びたいってこと。だからこの戦いにおいて勝つということはないんです。前からそう思って生きてきたんですけど、恐らくこの当時はそれをより強く感じていたんじゃないですかね。……『Don quijote』って、どんな曲が入ってましたっけ?

──“暁のサンタマリア”とか“大東京牧場”とか。

吉野:あー、はいはいはい。この頃から俺、一人で飲みにいけるようになったんですよ。それまでは友だちを誘ってたりしてたんだけど、いよいよ誰もいなくなってきて、一人でウロウロするようになって。そしたら自分と同じように一人でウロウロしている人が、世の中にはいっぱいいるってことに気づいたんですよ。それを見てたら、結局(自分の人生は)一人で戦わなきゃダメなんだっていうことがわかったんです。「俺たちには仲間がいるからな」とかいうんじゃなくて。

──それって吉野さんが何歳くらいのときですか?

吉野:35~6ですよ、たしか。

──じつは僕いま37歳なんですが、まさに同じような心境なんですよ(笑)。

吉野:あははは(笑)。でもね、それは子どもの頃からずっと続いてて、いまも続いてる感覚なんです。結局一人なんだっちゅーか。眼鏡の内側には一人しかいなくて、一人の窓からみんなを見ている。結局一人に帰ってくるというか。そういうのがずっと心の軸になっている感覚なんで。このアルバムではそれがとくに強調されていたのかもしれませんね。この頃の俺は荒んでたんですかね……。いまも十分荒んでるんですけど(笑)。バリバリ。ヤバい(笑)。

俺は人間の形をした虚無袋みたいなもんです。それでその虚無みたいなもんにぶっ殺されそうになるんですよね。なるというか、つねになってるんですよ。だけど、それが当たり前の状況なんだと思うんです。

吉野:虚無ですね。俺は人間の形をした虚無袋みたいなもんです。どこを切っても虚無しか出てこないし、逆さに振っても虚無しか出てこない。もう砂漠っていうか、「空洞です」っていうか。それでその虚無みたいなもんにぶっ殺されそうになるんですよね。なるというか、つねになってるんですよ。油断してると、膝から崩れ落ちそうになる。「なんだこりゃあ、ダメだ」って。だけど、それが当たり前の状況なんだと思うんです。自分の荷物は自分で背負うしかない。虚無を打ち負かしてやるとか、うっちゃるとか、誤魔化すとかじゃなくて、それごと生きていこうっていうか。

──それが吉野さんの戦いであり、eastern youthが歌っていることであるわけですね。

吉野:言いたいことはただひとつ。虚無を背負って、それでも生きていくんだっていうこと。もやもやっとしているものなんで、グッと形にするのはエネルギーが必要な作業なんですけど。

──虚無を背負って生きていく、と思えるようになったのはいつ頃ですか?

吉野:心筋梗塞で半殺しになったときから(https://natalie.mu/music/news/21916)。最初倒れたとき、「死ぬ」と思ったんですね。「あーあ、これまでか。こりゃ死んだな」って。でも、生き残ったわけですよ。集中治療室で寝転がってて「やったー! 死ななかった」と思ったけど、「たぶんこれはいままでみたいにバンドはできんだろう。何もかもパーだな」って感じたんです。そのときは先のことなんてわかりませんから。

──でも、パーじゃなかった。

吉野:そう。パーじゃなかったんですよね。結局生きているうちは生きていくしかないんですよ。泣こうが喚こうが生きていくしかないっていうか。虚無だろうが、絶望だろうが、生きていくしかねえわけです。そう思えたら清々したんですよ。それまでは「俺はいつまで生きるんだ?」とか「いつ死ぬんだ?」って思ってたから。もちろん死んで終わらせてしまいたいと思うことはいまでもあるけど、焦んなくても死ぬよっていうのがわかってしまったんですよ。

──なるほど。

もちろん死んで終わらせてしまいたいと思うことはいまでもあるけど、焦んなくても死ぬよっていうのがわかってしまったんですよ。

吉野:人はそれぞれ持ち時間というものを与えられていて、それが終われば死にたくねえって言ったって死ぬ。虚無だろうが絶望だろうが、「いま生きてる時間を生きるしかないんだな」っていう覚悟ができたっていうか、腹が決まったっていうか。そんな気がしましたね。そんときがくりゃ、焦んなくてもいずれ死ぬなら、もうなるようになれと思って。そしたら清々したっていうか、さっぱりしたっていうか。シンプルになりました。迷わなくなりましたね。

──死に対する考え方が変わったということですか?

吉野:どうなんでしょうね。ただ死に対する恐怖は倒れる前よりも、確実に強くなっていますね。夜中に突然目が覚めて「このまま死ぬんじゃないか?」って眠れなくなったり、お風呂入っていてちょっと目眩がすると「もうダメか」って思ったり。俺の身体はもう「死ぬ」という感覚を知っているから、その恐怖とつねに隣り合わせで生きている感じです。昔は死ぬのなんて大して怖くなった。「死ぬときゃ死ぬんだ。どうにでもなりやがれ」と思ってたんですけど、いざ一回本気で死にかけると死の山は想像以上に高いというか。「死ぬって並大抵のことじゃねえぞ」って思うようになっちゃったんですよね。

──よりリアリティを持って死を意識するようになったと。

吉野:死ぬのは前より怖くなりましたけど、だからなおさらいましかねえんだっていうか。いましかねえから「ちゃんとやれ」っていうか。世の中の大人として「ちゃんとやれ」っていう意味じゃなくて、自分の生きたいように生きてくれっていうか、生きろっていうか、やれっていうか。焦燥感や虚無感はあるけど、それを克服しようがしまいが死ぬときゃ死ぬっていうね。だったらそれごと行くしかねえ。俺はそう思ってますね。

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誰かのせいで自分はいまこんなふうになってる、こんな目にあっているっていうふうにすり替えようとしてる。その誰かを踏みにじることで俺は救われるんだ、みたいな考え方はすごく情けないことだと思います。


eastern youth
叙景ゼロ番地

バップ

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──震災以降、日本は死を意識するようになったと思うんですよ。でもそこから生まれた焦燥感や虚無感から、悪い意味で「自分の生きたいように生きていく」とか「人よりも自分」とか、まるでタガが外れてしまったような気がします。自分勝手になったというか。では、吉野さんはいまの日本をどのように見ていますか?

吉野:難しいですね。……一言で言うならムカつく。「何言ってんだお前ら、正気かよ」って思うようなことが普通になっていると思います。なんて言えばいいのか……。パンドラの箱が開いちゃいました、みたいな。身も蓋もないような感じになっているなとは思いますよね。

──それはどういった部分に感じるのですか?

吉野:インターネットとかで匿名の発言が表に出ることが増えましたよね。そういうところで、たとえば拝外主義みたいなものを正当化しようとしてるように思うのですよ。「みんな、そう思ってるだろ?」って。それでそこに居場所を見出そうとしている。そんな人が多いように感じます。だから安倍晋三が総理大臣なわけだし。嫌な国だな、腐っとるなと思うわけです。やっぱりみんな余裕がなくなっているんじゃないですか? 俺だって余裕ないけど(笑)。

──ヘイトスピーチなどをする人や、ネトウヨと呼ばれる人たちのことですね。

吉野:江戸時代の身分制度のようなもんですよ。彼らは自分よりも下のものを無理矢理作り出して、自分の人生がうまくいかないことに対する不満、実社会でどうにもならない自分の鬱憤を、自分よりの下みたいなものを踏みにじることで解消しようとしている。自分を認めさせようとしている。そんなふうに思うのです。承認要求みたいな。でも本当は自分自身のうまくいかなさなんてのは、自分で背負っていかなければならんのです。己の人生とがっぷり四つで戦っていかなきゃ打開なんてぜんぜんされないのに、誰かのせいにすることによってそれをごまかしているような気がする。いや逃げようとしている。そんなことして自分の行動や論理が合理化されるとでも思ってるんですかね? 情けない。

──なぜ彼らはそうなってしまったと思いますか?

吉野:俺も彼らがなんでそんなこと言うのか、ハッキリとした理由はわかりません。だけど自分の人生や孤独というものに耐えきれない根性なしであるというのは間違いないですよね。ちゃんと自分の人生を戦ってないというか、(自分の問題を)誰かのせいにして「自分は悪くない」と思っているってことじゃないですか。誰かのせいで自分はいまこんなふうになってる、こんな目にあっているっていうふうにすり替えようとしてる。その誰かを踏みにじることで俺は救われるんだ、みたいな考え方はすごく情けないことだと思います。自分の問題は自分で打ち壊さないと。それができないやつらが多くて、そいつらが差別したりするんでしょうね。だから余計に腹が立つ。

人間は誰しもが一人なんです。最終的には一人なんですよ。

──吉野さんはヘイトスピーチに反対するデモにも参加されているらしいですね。

吉野:みんなそれぞれ事情があるよ。街なんてそれぞれがいろんな事情を背負って、隣り合わせて、小競り合いをしながら関わり合っているんですよ。人間なんて最終的には一人ですからね。その人が死んだら全世界はなくなるのと同義なんですよ。だから一人の人間っていうのは全宇宙と言ってもいいわけですよね。だからこそちがっていて当たり前だし、だからこそおもしろいし、そうやって街はあるべきだと思うんです。人間とはそういうものでしょう。なのに、彼らはひとつの型みたいなものを作り上げて、「自分はそこのメンバーだ」「それが自分のアイデンティティの核だ」と思うことで、自分を認めたがっている。しかもそうじゃないやつらを踏みにじる。「俺はそうだけど/お前はそうじゃない/だからお前はクソだ」「俺は持ってる/お前は持ってない/だからお前はクソだ」。でもね、そんなのは幻想ですよ。幻です。幻みたいなものを信じようとしている。その根性のなさに腹がたつ。国家も民族も全部幻ですよ。人間は誰しもが一人なんです。俺っていう人間、君っていう人間。一人ひとり。それがいっぱいいりゃあ、村にもなるだろうし、街にもなるだろうし、国にもなるだろうけど、最終的には一人なんですよ。一人と一人が関わるからいろんなことが起こってくるけど、結局国だの民族だのってのは幻だと思う。人間はそんなもので割り切れん。人間をなんだと思ってるんだって。舐めやがって、っていう気持ちですよね。

──では最後の質問です。吉野さんにとってレベル・ミュージックとはどんなものですか?

吉野:俺ねえ、考えたことないんですよ(笑)。「レベル・ミュージックって何?」っていうか。レベルっていうのは闘争のことですよね。闘争って人それぞれちがうと思うけど、俺にとっては生き残ることなんですよ。「冗談じゃねえぞ、殺されてたまるか」ってことです。それだけです。

──ということはeastern youthで歌っていることこそが、吉野さんにとってのレベル・ミュージックであると。

吉野:レベル・ミュージックかどうかはおいといても、闘争の歌であるということは間違いないです。あくまで俺っていう人間がどうにかこうにか生きていくんだっていう。俺は歌を政治闘争とか社会に訴えかけるような「手段」にはしたくないんですよ。そういうことじゃなくて、一人の人間がどうにかこうにか生きていくことがすでに闘争なんだと思うんです。戦わないと生きていけないです。だから、何に向かって戦っているのかわからないけど、わからないけど殺されそうになってるわけです。

俺は歌を政治闘争とか社会に訴えかけるような「手段」にはしたくないんですよ。そういうことじゃなくて、一人の人間がどうにかこうにか生きていくことがすでに闘争なんだと思うんです。

 俺はどうして生きてっていいか、どう歩いてっていいかわからないけど、それを掴もうとするのもひとつの戦いですよね。いわゆる社会に対してもの申すみたいな歌が自分の中から自然と出てきて、それが必要だと思ったら歌うかもしれないですけど、基本的に俺にとって曲を作って歌うということはそういうことじゃないんです。「こうやったら世の中よくなるよ」とかを歌にしたくない。「これを買ったら、あなたの人生はもっとよくなりますよ」っていうのと同じでしょ(笑)。

──仮に僕がそういった曲を聴いて鵜呑みにしてしまえば、それは思考停止ということですしね。

吉野:うーん、なんていうか、答えみたいなものは自分でたどり着かないとダメだと思うんですよ。人に答えを提示してもらったって、それは答えにならないんです。だから、自分にとっての答えを探すしかなくて。ただそうするだけ。ただ探し続けていくことだけが大事なんです。たどり着くことが大事かっていうのは俺の問題じゃない。ただ探すだけ。それが目的であって、到達点ではない。というか、到達点はないんです。

──最初から言っていたことと変わらないわけですね。

吉野:そう、シンプルです。でも年々ヴォキャブラリーが崩壊していっている(笑)。口も頭もぜんぜん回らない。信じていた語彙みたいなものも信じられなくなってしまって、バラバラになっているんですよね。昔は「信念」とか「真実」とかってものをもうちょっとは形のある状態で信じていたと思うんですけど、いまはまったく信じてなくて。信念も真実もそんなもんはねえっちゅーんだ、っていうか。本当はあるんだけど、「それは何か?」と言われると「これです」って言えるもんじゃないっていうか。たしかなものは何もないっていうか。歳とったらたしかなものが増えていくのかなって思ってたんだけど、逆で、どんどんどんどん剥がれ落ちていって、なんにもたしかなものがなくなってきたんです。ただ命が一個あるだけで。でもそれが大事なことなんじゃねえかなって。

歳とったらたしかなものが増えていくのかなって思ってたんだけど、逆で、どんどんどんどん剥がれ落ちていって、なんにもたしかなものがなくなってきたんです。ただ命が一個あるだけで。

 正しさとかよくわからない。ただ、自分が生きてるように他のやつも生きてるんだっていうのは真実です。それは尊重されるべきだと思う。尊重されるべき人間とされなくていい人間っていうのはいないわけだから。自分が人間として生きていたいのであれば、他の人も人間として生きてることを受け入れないと。そうじゃないと、自分が人間ではなくなってしまう。それはたしかだと思います。そんぐらいしかわかんないです。で、どうしたらいいんだっていうことは、いろんな人がいろんなこと言いますし、自分のバカな頭でなんとか理解しようとしていますけど、やっぱり明確な答えなんてわからんのです。どんどんわからんくなってきてます。でもどうにかこうにか生きたいとは思っています。

■ライヴ情報
極東最前線巡業 ~Oi Oi 地球ストンプ!~
2014年8月30日(土) 渋谷クラブクアトロ
open 17:00 / start 18:00  ¥3,500(前売り/ドリンク代別)
出演:Oi-SKALL MATES / eastern youth

ticket
ぴあ(P:230-946)
ローソン(L:77597)
e+(QUATTRO web :5/17-19・pre-order:5/24-26)
岩盤
CLUB QUATTRO

(問い合わせ)
SMASH : 03-3444-6751
https://smash-jpn.com
https://smash-mobile.com


DBS presents PINCH Birthday Bash!!! - ele-king

 この日ユニットに集まった人びとは、ピンチが2台のターンテーブルの前に立っていた150分間に一体何を期待していたのだろう。やはり、彼がシーンの立役者として関わったダブステップか? それとも、彼の新しいレーベル〈コールド・レコーディング〉で鳴らされる、テクノやUKガラージがベース・ミュージックと混ざり合った音だったのだろうか? ピンチがフットワークを流したら面白いな、なんて想像力を働かせていた人もいたのかもしれない。
 実際に会場で流された音楽は、それら全てだった。
 
 ジャー・ライト、エナに続いたピンチのステージは、テクノの轟音とともにはじまった。そこに重低音が混ざるわけでもなく、リズム・パターンが激しく変化するわけでもなく、ストイックな四つ打が会場を包み込んでいく。
 ピンチがロンドンでダブステップの重低音を体感し、それをブリストルへ持ち帰り自身のパーティを始めるまで、彼はミニマルやダブ・テクノのDJだったのだ。ここ1年でのピンチのセットのメインにはテクノがあるわけだが、自分自身のルーツに何があるかを理解しないうちは、新しいことなんぞ何もできない、と彼は証明しているようにも見える。
 〈コールド・レコーディングス〉から出たばかりの彼の新曲“ダウン”はまさにテクノと重低音、つまりピンチ過去と現在が混ざり合った曲だ。
 先日発売された同レーベルの初となるコンピレーション『CO.LD [Compilation 1] 』は、去年の4月からレコードでのみのリリースをまとめたものになっており、参加しているエルモノ、バツ、イプマン、エイカーという新進気鋭のプロデューサーたちは、自分たちを形作っているジャンルの音を現在のイギリスのシーンに置ける文脈のなかで鳴らしている。
 例えば、イプマンはダブステップの名門レーベル〈テンパ〉や〈ブラック・ボックス〉からのリリースで知られていたが、〈コールド・レコーディング〉から出た彼の曲“ヴェントリクル”では、テクノの要素が前面に押し出されており、意外な一面を知ったリスナーたちを大きく驚かせることになった(イプマンがレーベルのために作ったミックスではベン・クロックが流れていた)。
 「アシッド・ハウス、ハードコア、ジャングル、UKガラージ、ダブステップ以降へと長年続く伝統からインスピレーションを受けた、進化し続ける英国のハードコア連続体の新たなムーヴメントのための出口」が〈コールド〉のコンセプトだが、ピンチ自身と彼が選んだプロデューサーたちは、伝統から学ぶスペシャリストである。このコンピを聴くことによって、それぞれのプロデューサーたちの影響源だけではなく、彼らの目線を通してイギリスのクラブ・ミュージックの歴史までわかってしまうのだ。 

Pinch-Down-Cold Recordings


Ipman Cold Mix


 開始から30分ほどして、流れに最初の変化が訪れる。ピンチは若手のグライムのプロデューサーであるウェンによるディジー・ラスカルのリミックス“ストリングス・ホウ”をフロアに流し込んできた(彼のミックスの技術はずば抜けて高く、色の違う水が徐々に混じっていくようなイメージが浮かぶ。手元にはピッチを合わせてくれたり、曲の波形を可視化してくれるデジタル機器は一切無く、レコードのみだ)。今年に入りアコードをはじめ、多くのDJにサポートされてきたアンセムはオーディエンスたちにリワインドを要求させたが、「まだ早いよ!」といわんばかりにピンチは4つ打へと戻っていく。

Dizzee Rascal-Strings Hoe-Keysound Recordings


 ちなみに、この日流れていたテクノも面白いチョイスだった。「うおー! これDJリチャードの〈ホワイト・マテリアル〉から出たやつだ!」という情報に富んだ叫び声が聞えてきたのだが、DJリチャードはジョーイ・アンダーソンやレヴォン・ヴィンセントと並ぶ、アメリカ東海岸のアンダーグラウンド・シーンにおけるスターだ。彼らが作る曲はときに過剰なまでのダブ処理が施され、リズムにもヴァリエーションがあるため、ベース・ミュージックのシーンでもたびたび耳にすることがある(ペヴァラリストのセットにはしばらくレヴォン・ヴィンセントの“レヴス/コスト”があった)。
 おそらく、アメリカで育った彼らも、スコットランド生まれブリストル育ちのピンチと同じようにベーシック・チャンネルのうつろに響くミニマル・テクノを聴いてきたのだろう。国境を越え、似たルーツを持ち違った土壌で生きるプレイヤーたちが重なり合う現場には驚きと喜びがつきものだが、この夜はまさにそんな瞬間の連続だった。

DJ Richard-Leech2-White Material


 とうとう、この日最初のリワインドがやってくる。ピンチがマムダンスとともに〈テクトニック〉からリリースした“ターボ・ミッツィ”が流れるとフロアが大きく揺れ、DJはレコードを勢いよく、そして丁寧に巻き戻す。だが、直ぐに頭から曲は始まらない。ピンチは拳で自分の胸を叩いて、フロアに敬意を示す。するとイントロのシンセサイザーがじわじわとフロアに流れ始めた。気がつくと、フロアはオーディエンスではなくパーティの熱気を作り上げるDJの「共犯者」で埋め尽くされていたのだった。

Mumdance&Pinch-Turbo Mitzi-Tectonic Recordings


「Yes, I’m」という声ネタとハンド・クラップが鳴り始めた瞬間、フロアの熱気はさらに上がる。それは、ブリストルのニュー・スクールの優等生であるカーン&ニークの“パーシー”を、ふたりが成長する土壌を作り上げたピンチが流すという、感動的な場面でもあった。世代から世代へと時代は嫌でも変わっていくものだが、この日34歳の誕生日だったピンチはその変化を楽しんでいるようだった。
 ラストのダブステップからジャングル、フットワークという流れにいたるまで、フロアをDJはロックし続けた。曲が鳴り止むとピンチはフロアへ合掌し、オーディエンスとゴス・トラッドに拍手の中で150分間のロング・セットは幕を閉じた。

Kahn&Neek-Percy-Bandulu

TechnoGrimeBass Music

V.A.
CO.LD [Compilation 1] 

Cold Recordings/ビート

Amazon HMV Tower

Hundred Waters - ele-king

 ピッチフォーク系列の映画サイトであるザ・ディゾルヴでは絶賛されTMTではボロカスに書かれたスパイク・ジョーンズの『her』だが、そのあまりにフワフワとした物語と映像に、ジャ・ジャンクーの『罪の手ざわり』において返り血を浴びながらナイフを握りしめる労働者の女に喝采を送った僕などは「どんだけ傷つきたくないねん」と朦朧とした頭でツッコまずにいられなかった。しかしながら題材的にもムード的にも現代的であることは間違いなく、そしてそれをもたらしているのは主人公が恋するOSのスカーレット・ヨハンソン演じる「声」である。デジタルの海のなかで抱ける官能とメランコリアがあるとすれば、そのもっとも手っ取り早い触媒は生々しい発話であるだろう。コンピューターの声としては妙に艶っぽいヨハンソンの囁きは、インターネット時代のその後の近未来において唯一たしかな人間臭さとして響いていた。まあ、さすがにあのセックス・シーンはないなーと思ったけど。

 フロリダ出身の4人組バンドであるハンドレッド・ウォーターズはおそらく、そうした声の響きがもたらす現代性に自覚的だ。はじめに聴いたときは、これは紙版『ele-king』vol.6における特集「エレクトロニック・レディランド」の続き、すなわち女性ソロ・ユニットの作品だと思ったのだが、そのくらいヴォーカルのニコール・ミグリスの声がバンドのコアとして成立している。生音を使いながらエレクトロニカの方法論で作られたトラックはデジタル的にカッチリとしているが耳触りは徹底してオーガニックで、いわばラップトップ時代のフォーク・ミュージックだ。フォークトロニカという呼び方ももちろんできるわけだが、しかしフォー・テットの『ポーズ』~『ラウンズ』時代をそのジャンルのピークとするならば、ハンドレッド・ウォーターズにはもっと歌に対するはっきりとした志向が感じられる。ほかのIDM、ラップトップ・アーティストのように声を加工し素材として使っても不思議ではない音楽ではありながらも、そうはしないことが肝だ。

 なぜかスクリレックスのレーベルと契約した2枚め。2010年代のアーティストらしく音楽的語彙は豊富で、10年前くらいのビョークやムーム、フォー・テットを思わせるエレクトロニカが中心にはあるが、もちろん今様のアンビエント・ポップの感性を備え、“アニマル”のようなダンス・トラックではトライバルな風合いもあるのでバット・フォー・ラッシーズや、遠景に6、7年前あたりのギャング・ギャング・ダンスが見えてくるのもおもしろい。が、たとえば中盤のハイライトとなる“ブロークン・ブルー”~“チャンバーズ(パッシング・トレイン)のひたすら幻想的で物悲しいメロディがアルバムの色彩を深めていることを思えば、トラックの多様性はあくまでバンドのスペックである。夜空にきらめくような音色を携えながら放たれるコケティッシュなニコールの声が響かせようとしているのは、このデジタル時代のエクスタシーだ。それは『her』の取ってつけたような(疑似)恋愛よりも、僕にははるかにロウなコミュニケーション欲求に聞こえる。オープニングの1分少しのアカペラ風トラックはもっともチャーミングな小品だが、そこで彼女はすでに「わたしに愛を見せて」と宣言することからはじめているのだから。


Eddi Reader
Vagabond

Reveal / ソニー・ミュージック

Review Tower HMV Amazon iTunes

 エディ・リーダーの来日公演がいよいよ間近に迫ってきた。私自身もとても楽しみにしている。5月に日本盤が発売となった5年振りのニュー・アルバム『ヴァガボンド』も(毎度のことながら)じつに素晴らしい作品だったからなおさらだ。

 エディの魅力とは何なのだろう。いつも何気な〜く聴いてしまっていて、正直なところこれまで彼女の魅力について深く考えたことがなかったけれども、第一の魅力がその歌声にあることは明白だ。無邪気な少女性と大らかな母性のちょうど中間を行く、伸びやかなその声の魅力はなにものにも代え難い。陳腐な表現だが、まさに心洗われる声だ。

 そしてもうひとつ。「何気な~く」聴いていると述べたけれど、いま思うに、その何気なく聴けてしまう感じこそが重要なのではないか。はっきり言って彼女の音楽には革新性と呼べるものはないし、刺激的とも言い難い。じゃあ保守的で退屈なのかと問われれば、断じてそんなことはなく、むしろいつも瑞々しい感動を与えてくれる。ひと言で言えば、彼女の音楽は純度100%の“グッド・ミュージック”なのである。奇をてらうことなく、ただ実直にいい歌といい曲を届けようというその姿勢は、フェアーグラウンド・アトラクション時代から現在に至るまで1ミリもブレていない。そして、そんな彼女に裏切られたことはいまのいままで一度もない。言うなれば、彼女のもうひとつの魅力とは、この上ない「安心感」だと思う。

 私だって、常日頃は刺激的な音楽を探し求めている。だが、それと同時に、何も考えずただ気持ちよく身を委ねることができ、かつ充足感を与えてくれる音楽の存在というのも非常に大切にしている。私は後者のような音楽を、最大限の敬意と愛着を込めて“障らない音楽”と勝手に呼んでいるのだが、この“障らなさ”を実践できる音楽家というのはじつはなかなかいない。いや、ただ障らないだけのイージーリスニングみたいな音楽ならそこら中に転がっているわけだが、そこに充足感までを求めるとなると、これがじつに貴重なのだ。そんな中で、エディ・リーダーは私にとって“障らない音楽”界のヒロインなのである。繰り返しになるけどこれ、めちゃくちゃ褒めてますからね。

 エディのライヴの思い出というと、私にとっては2005年のフジロックが挙げられる。当時のタイムテーブルはもうすっかり忘れてしまったし、他にも刺激的なアクトを多数観ていたはずだが、もはやその記憶も薄れてきた。だが、あのとき苗場の山に響いた彼女の歌声の清らかさだけは、鮮烈な記憶としていまも脳裏に焼き付いている。これが私にとって初の生エディ。それまでも作品は愛聴していて、その素晴らしさは十分享受しているつもりでいたが、いやいや甘かった。ステージでの彼女の歌は本当に生き生きとしていて、バンドとともに作り出すアットホームな雰囲気も最高。野外での開放感も相俟って、ラストの“パーフェクト”の大合唱ではその多幸感のあまり感極まったのを覚えている。もちろんライヴにおける彼女にもギミックなど一切ない。飾らないステージにシンプルなバンド、あとは歌だけだ。それで十分。ライヴでの彼女の魅力は、間違いなくアルバムを超えていた。

 さあ、今年もエディ・リーダーが日本にやってくる。今回はフェアーグラウンド・アトラクションでの来日時にこけら落としを行った名古屋〈クラブクアトロ〉の25周年アニバーサリー公演を含む東名阪のツアーだ。

 また、新作『ヴァガボンド』の日本盤リリースに加え、来日を記念して、フェアーグラウンド・アトラクション3作とエディの初ソロ作の計4タイトルが紙ジャケット仕様の完全生産限定盤として再発された。
(詳細 https://www.sonymusic.co.jp/artist/EddiReader/info/438207

 彼女のことだから、今回も素晴らしいステージになるのは間違いのないところだろう。そして、ひょっとしたらアニバーサリーイヤーならではのサプライズもあるかもしれない。思いっきり期待して、あとわずかに迫ったその日を待とうじゃないか。

■エディ・リーダー ジャパン・ツアー

大阪公演
6月28日(土)
Umeda CLUB QUATTRO
18:00開演
前売り¥7,000(税込/ドリンク別)
(問)スマッシュウェスト06-6535-5569

名古屋公演
6月29日(日)
Nagoya CLUB QUATTRO
“Nagoya Club Quattro 25th Anniversary”
18:00開演
前売り¥7,000(税込/ドリンク別)
(問)クラブクアトロ 052-264-8211

東京公演
7月1日(火)
Shibuya CLUB QUATTRO
19:30開演
前売り ¥7,000(税込/ドリンク別)
(問)スマッシュ 03-3444-6751

チケット発売中
https://smash-jpn.com/live/?id=2109

 いまさらって感じもあるんで、飛ばしていきます。
 前回は……ビザも帰りの航空券もなかったものの、EU加盟国でないスイスに無事入国。かの地のゲストへの歓待ぶりに感心し、まだもう少しつづくはずの旅について夢想しつつ結んだのだった。ローブドア(Robedoor)のブリット・ブラウン(〈NNF〉代表)、アレックス・ブラウン(ローブドア)、マーティン(サンド・サークルズ/Sand Circles)僕の4人はチューリッヒからバーゼルへ入った。

■OCT 18th
 最初にツアー日程を確認した際に、なるほど、18日はバーゼルでデイオフなのね。観光できるのね。と浮かれてみたものの、まさかのハコの名前が〈OFF〉っつーオチでした。この日はよくも悪くもいわゆるパンク・スクワットな場所で音質はもちろん劣悪。集客もマチマチといったところで不完全燃焼であった感は否めない。翌朝にロザーン入りする前にギーガー美術館へ行こうということになり、イヴェント終了後に身内で勝手に『エイリアン』をスクリーンに上映しながら飲みはじめる。僕ら4人が『エイリアン』にエキサイトしている階下にお客さんのひとりが申し訳なさそうに降りてきて『マーチを売ってほしいんだけど……』と言われるまで完全にライヴをおこなったことを忘れていた。ちなみにこのハコっつーか、ビルに宿泊してたわけだが、シャワー風呂がなぜか台所に置いてあるフランシス・ベーコン・スタイルで家人にモロ出しだった。しかも窓際でカーテン無しなので向かいの家にもモロ出し。逆にお返しのつもりなのか、向かいのお姉ちゃんがベランダからオッパイ見せてくれました。これ、バーゼルのハイライト。

■OCT 19th


ギーガー美術館にたたずむアレックス

 ロザーン入りする前にグリュイエールのギーガー美術館へ(R.I.P.)行く。山腹にそびえ立つグリュイエール城への道のりに建立されるこの美術館はパーソナル・コレクションや併設展も含めて予想以上に見応えのあるものであった。ギーガーのイラストレーションとグリュイエールの幻想的なランドスケープが相乗する不思議な感覚には体験する価値があるとここに記しておこう。ロザーンでの衝撃はele-kingのウェブ版にも紙面にも書いてしまったのでこれ以上はクドいため割愛させていただこう。〈ル・ボーグ〉、ルフ・フェスティヴァル、エンプティセット、エンドン最高!

■OCT 20th
 ジュネーヴでこれまで同行してきたサンド・サークル(Sand Circle)のマーティンとの共演も最後となる。そして翌日から代わって同行するカンクン(Cankun)のヴィンセントとホーリー・ストレイズ(Holy Strays)のセバスチャンが合流する。ヴィンセントはモンペリエ、セバスチャンはパリを拠点にするフレンチ・ドュードだ。早速レーヌのハイ・ウルフ(High Wolf)をネタにして盛り上がる。ハイ・ウルフことマックス・プリモールトは素晴らしい。彼と時間を過ごしたことのある人間は彼をネタにせずにはいられないのだ。すべてのツアー・ミュージシャンはそうあるべきではないだろうか?


“サイケデリック・ループペダル・ガイ”、カンクンのステージ

 サンプリング・ループとギター演奏によるリアルタイム・ループで構成される初期サン・アロー以降、〈NNF〉周辺で定番化した「サイケデリック・ループペダル・ガイ」という点では、カンクンもハイ・ウルフに近いスタイルだ。しかしハイ・ウルフがクラウト・ロックをベースとしたワンマン・ジャムであるのに対し、カンクンの展開はもっとDJミックスに近い。ダンス・ミュージックとしてのグルーヴが強いのだ。〈メキシカン・サマー〉からの次回作を期待させられる演奏を披露してくれた。
 セバスチャンのホーリー・ストレイズはなんだろう……僕が聴いた初期の〈NNF〉リリースのサウンドとはだいぶ異なっていて、ラウンジっぽかったり、トリップホップっぽかったり、ジュークっぽかったり、ウィッチハウス的な雰囲気も……まぁ如何せんものすっごい若いのでいろいろやりたいのでしょう。インターネット世代のミュージシャンと少し垣根を感じる今日このごろなのです。
 アナーキスト・バー的なハコ、〈L'Ecurie〉もナイスなメシ、ナイスガイズ、ナイスPAと最高のアテンドを見せてくれた。このハコや〈ル・ボーグ〉のようにアトリエ、ギャラリー、居住スペース、パフォーマンス・スペース、バーを一か所に集約している場ってやっぱり発信力とかアテンドが圧倒的に強いと思う。


〈ル・ボーグ〉にて

■OCT 21st


BUKAのステージ

 マーティンとの別れを惜しみつつも5人編成となりミラノ入り。この日のハコの〈BUKA〉はかなりイケてた。もともと70年代に建てられた大手レコード会社(Compagnia Generale del Disco)のビル、つまりオフィス、ウェアハウス、レコーディングスタジオ、プレス工場や印刷工場が併設される巨大な建造物の廃墟なのだ。このレコード会社は80年代のイタロ・ディスコ・ブームで一世を風靡するものの倒産、88年に建物をワーナーが購入するも90年代半ばに断念、長らく放棄させられていた場所で、その一部を改築し、2012年からアート/イヴェント・スペースとして再生したのが〈BUKA〉である。一部というのは本当に一部の地上階からアクセス可能なオフィス、講堂(70年代風のレトロ・フューチャリスティックなコロッセオ型の講堂! ライヴはここでおこなった)のみで、敷地の大半は完全に打ち捨てられた状態である。もちろん電気も通っておらず、サウンドチェックを終えた僕とブリットらは懐中電灯を頼りに探索、男子たるものはいつになってもこーゆーのに心くすぐられるのである。この日のライヴはURサウンドが収録してくれたようだ。

■OCT 22nd
 この日からフランス入り、初日はモンペリエ。これまでサウンドチェックに入る際に必ずスタッフに訊ねていたことがふたつある。ひとつはDIはいくつあるのか? もうひとつは誰がネタを持っているのか? だ。フランスに入ったこの日からふたつめの問いかけに対するリアクションがあまりよろしくなかった。この日はライヴ終了後にマイクでオーディエンスに問いかけるものの単なる笑いものになってしまった。イヴェント終了後、みんなはディスコ・パーティへ向かうものの僕ひとり不貞腐れて宿に着いて寝た。ちなみにここまであんまり書いてないけどツアー中は男同士ふたりでワン・ベッドでも普通に寝れる。ツアーって恐ろしいよねーって朝起きて横で半裸で寝ているブリットを見て思った。

■OCT 23rd
 フランスのお次はトゥールーズ。前日に引きつづきライヴ・バー的な場所。この日もハコの連中は僕の要求に応じてくれず、このあたりからフランス自体にムカツキはじめるもこの日は対バンのサード(SAÅAD)が爽やかな笑顔でわけてくれた。サードはローブドアやカンクンのリリース元であるハンズ・イン・ザ・ダーク〈(Hands in the Dark)〉がプッシュするドゥーム・ゲイズっつーかダーク・アンビエントなバンドである。先日同レーベルからデビュー・アルバムであるディープ/フロート(Deep/Float)が発売されたようだ。シネマティックなダーク・アンビエント好きは要チェックだ。


ブリットとスティーヴ

 この日の僕のハイライトはシルヴェスター・アンファング(Silvester Anfang)のスティーブがたまたまライヴに遊びに来てくれていたことだ。スティーヴはフランダース発、暗黒フリーフォーク集団フューネラル・フォーク(Funeral Folk)及び現在のシルヴェスター・アンファングII(Sylvester Anfang II)の母体となったシルヴェスター・アンファングの創始者である(ややこしいんですけど改名前はサイケ・フリーフォークを主体とし、改名後はサイケ・クラウトロックを主体とする別バンドなんだ! と力説していた。そのあたりもアモン・デュールに対して超リスペクトってことなんですね)。ベルギーのエクスペリメンタル・レーベル代表格、〈クラーク(Kraak)〉のメンバーでもある彼がなぜここに? というのも嫁がトゥールーズの大学へ通っているとのことで数ヶ月前に越してきたらしい。数年前からアートワーク等を通して交流はあったものの、このようなかたちで偶然会えるとは本当にうれしかった。

■OCT 24th


ソーヌ川に浮かぶハコ〈ソニック〉

 リヨンへ到着。この日の〈ソニック〉はソーヌ川に浮かぶハコ……というか船なのだ。その昔サンフランシスコでバスの座席を全部取り外して移動式のハコにしていた連中を思い出す。リヨンの町並みは息を呑むほど美しい。ユラユラするハコも素晴らしい。ワインもおいしい。音は90db以下だったけれどもまぁまぁよかった。この日も誰もネタをわけてくれなかった。フランス人の田舎モンどもなんかファ……などとヴィンセントに悪態をつきながら床に着いた。

■OCT 25th


パリス・キッズ。

 パリへ到着。僕は今回のローブドアのヨーロッパ・ツアー最終地点であるバーミンガムの〈ブリング・ダ・ライト・フェスティヴァル〉には参加しないのでこの晩が彼らとの最後の共演となる。パリでのショウを仕切ってくれたフランチ・アレックス(アレックスはいっぱいいるので)はフランスのインディ・ミュージックのウェブジン、『ハートジン(hartzine)』のリポーターで、DIYテープ・レーベル、〈セブン・サンズ〉の主宰者でもある。フリー・スペース〈ガレージ・ミュー(Garage MU)〉でのイヴェントの集客と盛り上がりはすさまじい熱気であった。パリのキッズはイケている。今回のツアーでもっともヒップスタティックな客層であったかもしれない。カンクンもホーリー・ストレイズも最終日ということで気合いの入ったラウドのセットを披露してくれたし、ローブドアもこれまででもっとも長いセットを披露した。ネタも大量良質で感無量である。例のごとくチーズとワインとジョイントで夜が白むまで最終日を祝った。僕はパリにもう一日滞在してグスタフ・モーロウ美術館をチェックすることに決めた。パリ最高!

■OCT 26th
 ローブドアのブリット、アレックス、カンクンのヴィンセントと別れを惜しみつつも単身パリに残る。この場を借りてブリットとアレックス、マーティンにヴィンセント、セバスチャンとそして何よりプロモーターのオニトと各地でアテンドしてくれたローカル・メイトたちに心底感謝を表する。あんたら全員最高。

 パリなんかクソだ。グスタフ・モーロー美術館は改装中で閉館していた。門の前で呆然と立ちすくむ僕とブルガリアからの旅行者のじじい。ダメ元でピンポンを連打し、出てきたおばちゃんに作品あるならチョコっとでも見せて~と懇願するも鼻で笑われ門前払い。仕方なくポンピドー・センターへ向かい、クリス・マルケルの回顧上映会を見るが煮え切らず。カフェでレバノン出身のカワイ子ちゃんと談笑して癒されるもメイク・アウトできず。物価も高い。駅のジプシーウザい。パリなんかクソだ。

■OCT 27th


トゥールーズにて、夜景。

 ツアー終了とともに足が無くなったので激安長距離バス、ユーロ・ラインで友人の家へ転がりこむためパリからバルセロナへ向かう。激安なので赤ん坊が泣き叫ぶ車内で隣の席の人の体臭がゴイスーな小便クサいゴミまみれのクソバスを想像していたがンなことはなく、むしろ快適に(ワイファイ有り)移動する。途中で停車したパーキング・エリアで、トイレ休憩がいったい何分なのか、フランス語がまったくわからないので他の旅行者風の乗客に訊ねる。ようやく英語が介せるジャーマン女子がいて助かった。なになに、バルサには瞑想プログラムを受講しに行くだって? ニューエイジだね。スピってるね。次の休憩所でドリフター風のフレンチ男子に話しかける。なになに、とくに目的もなく旅行中? いい感じじゃない。え? ネタ持ってきてんの!? じゃあとりあえず巻こうよ。バスがしっとりとした闇夜の荒野を疾走していく中、僕はこの旅が終わらないことを夢想しながら眠りについた。

 無駄にドリフトはつづく……次回はバルセロナから極寒のNYへ。

DAIKANYAMA UNIT 10th ANNIVERSARY - ele-king


BADBADNOTGOOD
III

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 代官山のユニット──DBS、OPN、デムダイク・ステア、あるいはラシャドからマーク・マッガイア等々、妥協をしないコアなブッキングで知られるハコ──が今年で10周年。そのアニヴァーサリー・イヴェントがシリーズとなって今週木曜日からはじまる。
 で、その第一弾は、今週木曜日(6/26)、トロンからの刺客、最高の殺し屋、3人組のジャズ・バンド、BADBADNOTGOOD(バッドバッドノットグッド)だ。彼らは、オッド・フューチャーのカヴァーをしたことで、タイラー・ザ・クリエイターとの共演も果たしている。ライヴでは、カニエ・ウエスト、ジェイムス・ブレイクのカヴァーを披露するそうだ。また、バンドはフランク・オーシャンのバックも務めている。先日、〈Innovative Leisure〉から新しいアルバム『III』を出したばかり。RZAやブーツィー・コリンズも賞賛するという、彼らの生演奏が日本で見れるのはもちろん今回が初めて。これは注目です!
 サポートするのはジャズ、ハウス、ファンク……、あらゆるグルーヴを吸収しながら進化する、cro-magnon。「ジャズ」というキーワードが浮上する今日、是非、この夜を体験して欲しい。

■LINE UP:
BADBADNOTGOOD
guest: cro-magnon

2014.06.26 THU

OPEN : 18:00
START : 19:00
CHARGE : 前売り 4,500yen (税込 / D別)

TICKET :
チケットぴあ0570-02-9999 [P] 233-203
>>@電子チケットぴあでチケットを購入する
ローソン [L] 70152
e+

INFO :代官山UNIT 03-5459-8630

https://www.unit-tokyo.com/


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