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Eglo Records Vol.1

Eglo Records

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野田 努   Jun 18,2013 UP

 アルバム単位で聴いているだけで、ダンス・ミュージックをわかった風に語ってはいけない。それは間違っている。ダンス・ミュージックとは12インチ・シングルとともにあるからだ。10インチでも、7インチでもかまわないのだが、八百屋のようにコツコツとシングルを入荷する店とともにある。ぱっと聴いてぱっと買う。思いすがるような気持ちで、忍耐強くアルバム単位で聴く音楽とはわけが違う。
 などと、偉そうなことを言うほど昔のように大量に聴いているわけではないのだが、それでもまだまだ聴いているぞ。URが何枚アルバムを出しているか考えてみるがいい。ルーズ・ジョインツに何枚アルバムがある? ダンスはいつでも12インチ・シングルのものだ。それが、この音楽が切り拓いてきた歴史だからだ。アルバムというフォーマットは、所詮は利益率優先主義がもたらした形式に過ぎない。優れたポップ・ミュージックがシングル単位であるように、生気をもったダンス・ミュージックもシングル単位でリリースされているのだから、まずはその時点で聴かれるべきなのだ。
 フローティング・ポインツ(サム・シェパード)は、そのことをよくわかっている。少しばかり話題になったからと言って、すぐにアルバムをリリースしてしまう尻軽女とはわけが違う......と、ここまで書いて1ヶ月以上も放置したままだった。

 そして、1ヶ月ぶりに続きを書きながら、多少の商魂は持っている僕は、結局8曲もフローティング・ポイントの曲が入っているのだから、彼の作品集を1枚でまとめれば良かったと思う。しかもこの小生意気な若者は、2012年の「Faruxz / Marilyn」のうち"Faruxz"を未収録にしやがった。本気で"Faruxz"を聴きたければ、レコードを探せと、そういうことだろう。Yutubeで聴けてしまうのだが、そんなのは最初から相手にしない。アートワークは可能な限り、贅沢にする。
 彼のような上から目線の復古主義がダブステップに内包されていたことは重要だ。無料で音楽をばらまく? それでは俺たち音楽家はどうやって食えばいい? こうした当たり前にして当たり前の生活レヴェルでの疑問がしっかり具現化されている。
 〈エグロ〉は見つけたらレーベル買いしている。それは、フローティング・ポインツという、20年前のカーク・ディジョージオやイアン・オブライアンに匹敵する才能がレーベルの主宰者のひとりであることも大きいが、ベース・ミュージックの世代がいかにしてジャズ/ソウルのエッセンスをダンス・ミュージックに取り入れるのかというよりも、彼らの明快なレーベルの態度が気に入ったからである。

 しかもこのレーベルには、スウェーデンのR&B歌手ファティマ、そしてビートメイカーのミズ・ビーツという、どう考えても素晴らしい女性アーティストがふたりもいる。アシッド復興運動家のファンキネヴン(Funkineven)による303系のうねりが耳障りだが、まあ、許そう。賢明な彼らは、過去に目を奪われるあまり現在を受け入れない高級なクラブ・ジャズの繰り返しをしないよう、先手を打っているのかもしれない。
 今年に入ってリリースしたストレンジ・Uの12インチは、初期のアンチコンを彷彿させる幻覚性の強いヒップホップだった。〈ディープ・メディ〉出身のミズ・ビートも、ダブステップからガラージ/ヒップホップに向かっている。そもそもこのアルバムのはじまりが、フローティング・ポイントによるインスト・ヒップホップ曲"Radiality"なのだ。

 『Eglo Records Vol.1』は、2009年からはじまった〈エグロ〉にとって最初のコンピレーション・アルバムとなる。さあ、これでフローティング・ポインツやファティマがいつアルバムを出しても驚かない。ファンはそれを待っているし、ボノボやシネマティック・オーケストラとは別の可能性を探ってもらいたいと思っている。

野田 努