ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Kanye West - Jesus Is King (review)
  2. Brian Eno ──ブライアン・イーノが新曲を公開、保守党に任せれば何もかもうまくいく! (news)
  3. interview with Daniel Lopatin 人間としての自分に近い作品に思えた (interviews)
  4. Columns 「ハウスは、ディスコの復讐なんだよ」 ──フランキー・ナックルズの功績、そしてハウス・ミュージックは文化をいかに変えたか (columns)
  5. Moor Mother - Analog Fluids Of Sonic Black Holes (review)
  6. Masahiko Takeda - Mitate (review)
  7. DJ Nigga Fox - Cartas Na Manga (review)
  8. Burial - Tunes 2011-2019 (review)
  9. interview with FINAL SPANK HAPPY メンヘラ退場、青春カムバック。 (interviews)
  10. Baauer × Channel Tres × Danny Brown ──人気ゲーム『グランド・セフト・オート』シリーズにダニー・ブラウンが登場、コラボ・シングルがリリース (news)
  11. Columns NYクラブ・ミュージックの新たな波動 中編:NYサウンドの新世代 (columns)
  12. Columns NYクラブ・ミュージックの新たな波動 前編:10年代のブルックリンの軌跡 (columns)
  13. 30/70 - Fluid Motion (review)
  14. interview with Yukio Edano つまり……下からの政治とはいったい何なのか (interviews)
  15. 家族を想うとき - (review)
  16. KODAMA AND THE DUB STATION BAND - かすかな きぼう (review)
  17. Big Thief - U.F.O.F. / Big Thief - Two Hands (review)
  18. Columns 元ちとせ 反転する海、シマ唄からアンビエントへ (columns)
  19. interview with Kode9 〈ハイパーダブ〉15周年記念 (interviews)
  20. Columns カニエ・ウエスト、大統領選に出馬表明 (columns)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Fatima- Yellow Memories

Fatima

ElectronicFunkJazzSoul

Fatima

Yellow Memories

Eglo Records

Amazon iTunes

野田努   Jul 04,2014 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 先日ロンドンから帰ってきたばかりの友だちが言うには、いまは「ジャズが来ている」そうだ。流行りモノが好きな僕は、そういうひと言が気になってしまうのだが、UKは、クラブ・カルチャーにおいてジャズ/ファンク/ソウルがセットとなって周期的に流行る。ele-kingでもここ1~2年はその手のモノが紹介されているが、あるクラブ世代の固まりがある程度の年齢に達すると、ジャズ/ソウル/ファンクにアプローチする人は少なくなく、いまはダブステップ世代にとってそういう時期なのだろう。
 そういえば、昨年はセオ・パリッシュによる〈ブラック・ジャズ〉(70年代のスピリチュアル・ジャズを代表するLAのレーベル)の編集盤もあったが、今年はサン・ラー生誕100周年でもある。ラー100年の記事は、海外のインディ系の多くのサイトでも載っている(彼は1914年、大正3年生まれなのだ)。

 クラブ・ミュージックで言えば、フローティング・ポインツ(サム・シェファード)は、そのスジでもっとも評価の高いプロデューサーだ。彼はいまだにアルバムを出していないのだが、何枚かのシングルによって(とくに2011年の「Shadows EP」と「Faruxz / Marilyn」は必聴)、その他大勢のジャジーな連中との格の違いを見せている。ゆえに彼が運営に関わる〈エグロ〉からソロ・デビューした、スウェーデン出身ロンドン在住の女性シンガー、ファティマのフル・アルバムを楽しみにしていなかったファンなどいないだろう。

 録音はロンドンとLAでおこなわれている。アルバムをサポートするメンツはかなり良い。サム・シェファードはもちろんのこと、デトロイトのセオ・パリッシュ、〈ストーンズ・スロー〉のオー・ノー、サーラーのシャフィーク・フセイン、LAのコンピュータ・ジェイ、リーヴィングからもカセットを出しているナレッジ、ケンドリック・ラマーのアルバムにも参加しているスクープ・デヴィル、ロンドンのfLako……とまあ、一流(?)どころが揃っている。
 しかし、一流どころを揃えれば必ずしも試合に勝てるわけではないことは、ワールドカップをご覧の方にはおわかりだろう。チリやメキシコのようなチームは、がんばって最後まで見て良かった……と思わせる試合をした。ファティマの『イエロー・メモリーズ』がそのレヴェルに達しているかどうかは疑わしいが、確実に言えるのは、ここには過去を活かした魅力的な「現在」があることだ。

 現在──ローリン・ヒルやジル・スコットで育った90年代の子供の上品な歌の背後には、モダンなビートが軽やかに鳴っている。1曲目の“Do Better”(シェファードpro)は、70年代ソウル風のドラマティックなホーンセクションではじまるが、アルバムはレトロに囚われない。マッドリブの弟によるヒップホップ・ビーツの“Technology”、コンピュータ・ジェイ(とシャフィーク・フセイン)によるネバっこファンク“Circle”、スクープ・デヴィルのうねりをもった“Ridin Round (Sky High)”……と、前半は、ヒップホップ・ファンとしての彼女の好みが展開されている。
 そして、ジャズ/ソウル・スタイルの“Biggest Joke Of All”(シェファードpro)、最高にチルな“Underwater”(ナレッジpro)など、古さを活かした曲を混ぜながら、『イエロー・メモリーズ』はUKらしい折衷主義を更新する。真夜中のダウンテンポ“Talk”(シェファードpro)から最後の曲“Gave Me My Name”(シェファードpro)にかけてのメランコリーも悪くはない。 
 

野田努