「K Á R Y Y N」と一致するもの

PolySick - ele-king

 ただでさえ平均水準を遥かに下回る生活を送っていた僕は悪いことに昨年頃からユーロラック・モジュラー・シンセ熱に完全に浮かされてしまい、さらなるドロ沼最底辺の生活を絶賛急降下中である......ことが僕がいまレコードを買えない主たる理由である。しかしながら何か書かねばなるまいと自宅にて頭を悩ませているフリをしていた矢先、友人のウォーター(Wouter Vanhaelemeesch)から激しく寄せられていた彼自身のレーベルである〈オーディオマー(audioMER)〉を紹介するに思い至った。
 本誌の特集にて幾度となく僕が企画を提示せど、当然のごとく部数の売り上げへの貢献が皆無であるがゆえ、永久に採用されることがないベルギー、ゲントを中心とするエクスペリメンタル/アヴァン・シーン、その中核で活動するウォーターは非常に才能豊かなイラストレーター/レーベル・オーナー/ミュージシャンである。同郷のヒエロニムス・ボッシュを想起させる奇怪かつ愉快なイラストレーションは彼のレーベルのパッケージングは勿論のこと国内外の様々なアーティストのレコード・カバーで見受けられるであろう。同郷のシルヴェスター・アンファング II(Sylvester Anfang II)やイグナツ(Ignatz)に代表されるようなズブズブ系サイケデリック・ミュージックへの並々ならぬ愛情は〈オーディオマー〉の過去のリリース群や、ここで紹介している彼自身の怨恨系フォークロア・プロジェクト、ウルプフ・ランゼにて存分に伺い知ることができるが、次のリリースは......ポリシック!?

 ポリシックと言えば日本でも〈モアムー〉や〈ビッグ・ラヴ〉からのリリースや、アマンダ嬢の100%シルクからのリリースでお馴染みのペラッペラ・ディスコである。エクスペリメンタル・フォークロアのドープネスをひたすら追求してきたレーベルからの突然の危険球。もちろん同郷のクラーク(KRAAK)は古くからコーン(Kohn)等の実験電子音楽を手掛けていて、この地には不思議と水面下におけるボーダレスなシーンの土壌があるのかもしれない......が、ここまでかけ離れてはいない。

 橋元嬢のポリシックの昨年の非常に真面目なレコ評、そのロマンを完全にブチ壊しかねないが、完全に渦中に巻き込まれ、振り回されている僕から見れば、それまでエレクトロやビートと無縁の生活を送っていたミュージシャンの多くが単にどいつもコイツも電子楽器に夢中なのだ。事の発端が果たしてエメラルズにあるのかはいまでは定かではないけれども......故に彼等や僕にとってはベターなアシッド・パターンと4つ打ちですら新鮮であり、何かを間違えながら再構築しているのだ。ポリシックもまたしかり。初期ミー・アミからアイタルへの変遷はそれの最たる成功例ではなかろうか。

 ミー・アミと共に古くから多くのツアーを通じて交流を重ねてきたローブ・ドア(Robedoor)のドラムを叩いていたゲド・ゲングラス(Ged Gengras)は彼等のエレクトロニクスに魅了され、よりモジュラー・シンセに傾倒し、それと暮らしていた僕もそれに夢中になる。気がつくとかつてアイオワの伝説バンド、のラクーン(Raccoo-oo-oon)のメンバーであり、現在はドリップ・ハウス(Drip House)として活動するダレン・ホー(Daren Ho)はNYでコントロールというヒップなシンセ屋をオープンし、消費を加速させる。レコードを買う金は残らない。

 僕はウォーターから送られてきたポリシックのレコードに飛び火するシンセジスの波の強大さを感じずにはいられない。しかし、このウルプフ・ランゼの新作は硬派だ。イグナツなジャック・ローズに代表されるラーガ・フォークロアの系譜にあれど、経験とともに確実に進化している。レーベル・オーナーとして常にオープンな耳を持ちながらもミュージシャンとしてのブレない探求を継続している。それまでの路線を捨ててアッサリとシフトしてしまいがちな印象があるUSシーンと比べ、そのあたりが国民性の違いなのだろうか。

interview with Hotel Mexico - ele-king

 昨年の紙エレキングにおける(筆者は参加していない)ヤング・チームの座談会において、「ヨウガク耳」と題された項目を興味深く読んだ。奇しくも、老害チームの座談会でも紙面には字数の都合でならなかったが、洋楽を聴く若者が減ってきているという話題が出ていたからだ。「若者の洋楽離れ」をおじさんリスナーが危惧するなか、海外の音楽を聴いている20代のリアリティが余すことなく詰められたインディ・ポップが一定の成果をあげているのだとすれば、それはシーンで起こっていることこそが状況を軽やかに刷新していることを示唆しているのではないかと思う。


Hotel Mexico
Her Decorated Post Love

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 だから、ホテル・メキシコがはじめ鳴らしていた無邪気にインディ然としたシンセ・ポップを、僕は戦略的なものではないかと感じていた。ゼロ年代終盤からのディスコ・リヴァイヴァル~チルウェイヴ、あるいはローファイという流れに見事に同調して現れたバンドは、ポップの現在地点がネットを介してシェアされるいまを意識的に射抜いているのだろう、と。だが、実際に会ってみた彼らは、あくまで自分たちの現在を音に反映することでこの音を鳴らしているのだという。この、フェミニンで、スウィートで、夢想的な音を。
 ホテル・メキシコのセカンド・フルとなる『Her Decorated Post Love』は、チルウェイヴ以降拡散していくインディ・ポップのひとつの見事な回答例を出している。ギター・サウンドをより前に出し、80年代ギター・ポップやいまっぽいAOR感をまぶしながら、甘ったるい恍惚はより純度を増しているように聞こえる。メンバー間でのキーワードは「ロマンティック」だったそうだが、訊けばそれもイノセントな感覚だったそうである。自覚と無自覚の狭間でファンタジーを浮かび上がらせるホテル・メキシコは、ポップ・ミュージックのいまを愛することのリアリティを、ごくナチュラルに体現し、謳歌している。

当時の〈イタリアンズ・ドゥ・イット・ベター〉なんかをすごくよく聴いてて、なんかああいうのができればと思って。(石神)

では自己紹介ということで、お名前と生まれ年と、あと去年のベスト・アルバムを教えてください。

菊池:菊池史です。84年生まれです。去年のベスト・アルバムは、たぶんブラックブラックのLPがすごく好きだったので、それかなと思います。

石神:石神龍遊です。84年6月生まれです。ベスト・アルバムは......なにがあったっけ?(笑) あ、トップスのLPがすごく良かったですね。

伊藤:伊東海です。生まれ年は83年。ベスト・アルバムは......えっと、ないですね(笑)。

(笑)メンバー同士でそういう話はあまりされないですか?

伊藤:いまこれを聴いてるとかって話はするんですけど。とくに僕は遅れて聴くことが多いので、いつ出たって話はあまりしないですね。

なるほど。去年のベスト・アルバムを訊いたのは、ホテル・メキシコってリアルタイムのリスナー感覚が音に反映されるバンドなのかなって思うので。ちなみに僕が84年生まれなので、リスナーとして通ってきたところも近いと思うんですね。基本的なことから訊こうと思うんですが、結成が2009年ですか?

石神:2009年ですね。

そのときからメンバーの音楽的なテイストって共通していたんですか?

石神:いや、もうまったくバラバラですね。もともと同じサークルで、バンド活動みたいなことをしているような子たちもいて。メインになってバンドを起こしたのは菊池とかで、「こういう音楽をやりたいな」ってなったときにメンバーを自然に集めていった感じですね。比較的仲のいい子たちで集まって。

当初音楽的な方向性っていうのはあったんですか?

石神:方向性を決めてやってたわけじゃなくて、当時の〈イタリアンズ・ドゥ・イット・ベター〉なんかをすごくよく聴いてて、なんかああいうのができればと思って。いっしょのものをやりたいわけじゃなかったんですけど。

2008年、2009年ってディスコ・リヴァイヴァルがあったりとか、シンセ・ポップが賑わったりって頃でしたね。その同時代の音をやりたいっていう?

石神:そうなんですよ。そこにかなり引っ張られて。

なるほど。その後デビューされたとき、すごく「チルウェイヴ」って単語で説明されましたよね。「日本からのチルウェイヴへの返答」というような。そこに抵抗はなかったですか?

伊藤:抵抗っていうか、「違うよね」っていう話はしていましたね。そこら辺の音は聴いてましたし、反映はされてるとは思うんですけど。自分たちがそれっていうのは、なんか違うよねって言っていました。

その違いがあるとしたら、ポイントはどこにあると思いましたか?

石神:チルウェイヴの定義っていうのがよくわかんなかったですよね(笑)。

菊池:でもたぶん、”イッツ・トゥインクル”を聴いてくれたひとが、チルウェイヴっていうのに当てはめてくれたんだと思うんですけど。ファースト・アルバム全体で言ったら、チルウェイヴ感っていうのはないのかなって。

実際、ウォッシュト・アウトなんかはどうでしたか? メンバーでは人気はありました?

石神:めちゃめちゃ聴いてましたね。

じゃあパンダ・ベアは?

菊池:パンダ・ベアはそんなに聴いてなかったかもしれない。

じゃあ、メンバーの間で当時いちばん盛り上がっていたのは〈イタリアンズ・ドゥ・イット・ベター〉あたりのディスコ?

石神:そのあたりの、暗い感じで踊れるものを聴いてましたね。

なるほど。バックグラウンドはみなさんではバラバラなんですか?

伊藤:そこがほんとにバラバラですね。

菊池:僕は日本の音楽から入って、YMOなんかから買い始めた感じだったんで。洋楽を聴きはじめたのは高校の後半とか、大学入って周りがみんな聴いてたから、影響されて聴き始めたんです。

高校あたりのインディ・ロックですか?

菊池:ほんとストロークスとか。

ですよね。

石神:僕は中学校のときはメタルばっかり聴いてて(笑)。地元のCD屋さんではメタリカとかニルヴァーナとかしか置いてなくて、その後に「これじゃいかんな」とポスト・パンクとかニューウェーヴとかを聴き出して、で、ネオアコとか浅く広く通ってきた感じです。

伊藤:僕はそれこそ、高校だったらJロック育ちですよね。その後ガレージ・リヴァイヴァルを通って、スーパー・ファーリー・アニマルズに会ってからは、自分はポップなものが好きなんだなと気づいて。それからはジャンルを問わずに自分がポップだと思うものを聴いていました。

そのバックグラウンドがバラバラななかで、ホテル・メキシコっていうバンドにはこの音がハマったなって感覚はありましたか?

石神:なんだろうな。当初曲作りそのものはみんなでやるって感じではなくて。個人が作ってきたのを聴いて「いいね」みたいな。音的なものでハマったっていうのは、それこそローファイ的な音色だったりとか。

ヒントになったアーティストっています?

石神:さっき出たウォッシュト・アウトとか。音的なもので言うと。

するとウォッシュト・アウトのEPですよね? 『ライフ・オブ・レジャー』。ウォッシュト・アウトのデビュー・アルバムと、ホテル・メキシコのデビュー・アルバムがほぼ同時に出てるのは面白いですね。じゃあ、ここ数年でメンバー間で共通項としてあったものってどのあたりになりますか?

石神:それはアーティストですか?

アーティストでもシーンでも、あるいはフィーリングみたいなものでもいいんですが。

石神:フィーリングは、ロマンティック。たとえば、僕が今回アルバム作るときに聴いていたのはプリファブ・スプラウトで。新譜だったらキング・クルーとか、ああいうギター・サウンドというか、ロマンティックなイメージがあるものを意識して作りましたね。それはたぶんみんなも共有してたし、作る前に話し合ったりもしましたね。

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いまのシーンがどんなだっていうのは見てますけど、でも今回に関しては「いま」っていう意識ではそんなに作ってない。むしろ「何がいまなのかわからん」って話をしてたぐらいで(笑)。(伊東)

今回はギターが前より出てるなと思ったんですけど、そこに何かポイントはあったんですか?

菊池:単純に曲の作り方が変わったっていうか、前はシンセで作ってたのが多くて、今回ギターを中心に作るのが多くなって、そういうのが集まってきた感じですね。

ちょっと80年代のギター・サウンド的なニュアンスが目立つかなと思ったんですが。

石神:それはあると思いますね。

80s感で言えば、いまだったら、たとえばワイルド・ナッシングスとかどうですか?

石神:好きですね。

いまこの音になるのは「わかるぜ」って感じですか?

石神:ああー。共感できるところもあるけど、彼らは狙ってやってるから。自分たちが取り立てて80sをやるバンドっていう風に思ったりはしないですね。

ホテル・メキシコって同時代の音楽とすごくナチュラルにシンクロしていますよね。それは狙ってやっているんじゃなくて、自分たちのモードとしてやっているとそうなったって感じですか?

伊藤:いまのシーンがどんなだっていうのは見てますけど、でも今回に関しては「いま」っていう意識ではそんなに作ってない。

石神:ほとんど意識してない。

伊藤:むしろ「何がいまなのかわからん」って話をしてたぐらいで(笑)。

石神:たとえば80年代にやってたひとたちって、いまやっているひとたちに比べてハンデがあると思っていて。いまやっているひとたちっていうのは昔の音楽を参照してやれるけど、当時のひとたちは過去を知らずに作っていて。僕らもその感覚に通じているところがあるのかなと。そういう意味では素直に、あまり狙わずに作りましたね。

じゃあ、さっきおっしゃったプリファブ・スプラウト以外に何か参照点があったわけでもない?

石神:うーん。今回はこれを参考にして作ろう、みたいなものはあんまりなかったかなって感じですね。

なるほど。ちなみに前作では?

石神:うーん、前回もなかったかも。最初の入り口は「こういうものがやりたい」っていうのがあったんですけど、最終的に出来上がるときにはまったく違うことを考えながらやっているっていう。

じゃあ、ほんとにシーン的なものは気にしてないんですね。今回、AOR感もあって、それもいまっぽいなと思いましたけどね。

石神:最初、AOR感が欲しいって話をちょっとしたりはしましたけどね。それがたぶんちょっと入ってるんでしょうね。

日本の同世代で、共感するバンドやシーンはありますか?

石神:東京の〈コズ・ミー・ペイン〉というレーベルですね。

ああ、なるほど。それはどういったポイントで?

石神:まあ単純に好きなものがいっしょだったりとか、あと〈コズ・ミー・ペイン〉は海外に対する意識みたいなものが強いですね。そういうところも話していて楽しいし。

日本のインディ・シーンも盛り上がってる印象もあるんですけど、そのシーンの一部にいるっていう意識はありますか?

一同:ないです。

石神:僕はまったくないですね。

伊藤:(日本のインディは)まだ括れるほどはっきりしたものじゃないんじゃないかな、と思いますけどね。

なるほど。同時代のものとリンクしているって感じもあまりない?

伊藤:ないですね。いまは〈コズ・ミー・ペイン〉と仲良くやっていけてるし、お互い好きだし、それでいいやと思ってますけど。最初はいっしょにやるバンドがいなくて困ってたぐらいだし、リンクしている感覚はないですね。

ふむ。じゃあ、アルバムの話に戻ろうと思うんですけど。コード進行とか、音色がフェティッシュな感じがするんですよね。やっぱりすごく、甘いじゃないですか。1曲目の“スーサイド・オブ・ポップス”の最初のコードが聴こえてきたときに「これだ」って思うわけですけど、あれを1曲目にしたのはどうしてなんですか?


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石神:理由はね......ないです(笑)。

あ、そうなんですか?(笑)

石神:僕らアルバムの流れを意識してアルバムを作ってなくって。とくに曲順とか流れは考えていなくて。「これ一発目じゃないな」っていう消去法でいって、あれが残ったっていう感じが強いですね。

あの曲の最初のビートがLCDサウンドシステムの“ルージング・マイ・エッジ”のイントロと似てるじゃないですか。で、そこにあのチルウェイヴ以降を思わせる甘いコードが入ってくるっていうのが、リスナー遍歴を表しているのかな、って勝手に思ったんですけど(笑)。

石神:(笑)そういう風に聴くんだ。そういう想像するのが楽しいんだと思いますけどね(笑)。

そういうのも、自然に出ているんですね。

石神:そうですね。狙ってはなかったですね。

メンバーのバックグラウンドがバラバラななかでも、出るフィーリングっていうのは甘いポップスになるわけじゃないですか。バンドとしてそういう音をやるんだっていうメンバー間でこだわりっていうものがあるんですか?

一同:うーん......。

少なくとも、マッチョな感じはない音じゃないですか。シンセ・ポップ・リヴァイヴァルが出てきたときに、マッチョな音に対する違和感を表現しているって言われたりもしたんですけど。その感じにリンクするというか。根っこにはメタルもあるひとたちなのに(笑)、ホテル・メキシコっていうバンドでやるときに非マッチョな音になるのはどうしてでしょう?

石神:うーん、どうなんだろう。考えたことないな。

じゃあ、ホテル・メキシコっていうバンドは、ストーリーや場景っていう具体的なものよりも、曖昧なフィーリングを鳴らしているんでしょうか?

伊藤:フィーリングなんじゃないですかね。

石神:でもたとえば、こっちがストーリーを作ったとしても、聴いたひとがどういう解釈をしてくれても全然よくって。想像力を刺激できるような音だったり展開だったりっていうのには気を遣っているつもりですね。

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それぞれのロマンティックを持って来いみたいな感じになって。僕の意見では、先ほど言ったみたいに逃避的なものがすごくロマンティックだったりもするし。攻めてるだけが音楽じゃないって思うし。そこに埋もれたものの受け皿みたいなものがあってもいいなって思うし。(石神)

たとえば、多くのJポップにあるような、共感をベースにした歌詞や物語からは遠いところにあるんでしょうか?

石神:でも個人的には、遠くはないとは思うんですよ。そういうものがないと面白くないと思うし。Jポップとの違いで言うと、あれはオリジナリティがないっていうか。

では、歌詞やフィーリングは自分たちに起こっていることですか? それともフィクションが多いですか?

石神:完全にフィクションですね。

それはどうしてなんでしょうか?

伊藤:「普段起こっていることを歌うのはやめとこう」って思わないくらい、そういう実際起こっていることを歌にしようっていう意識はないですね。最初からそれは考えにないです。曲のフィーリングは普段の考えからぱっと出てくるのかもしれないですけど、具体的なことを歌おうっていう考えはないですね。

では、ホテル・メキシコの音楽がドリーミーだって言われることに抵抗はありますか?

石神:まったくないですね。ドリーミーな音楽だと思ってくれたらいいですね。

「逃避的だ」って言われるのは?

石神:それはそれで、逃避したいひとが聴いてくれれば(笑)。

(一同笑)

みなさん自身はどうですか? 逃避的な音楽をやっているっていう意識はありますか?

菊池:そういう部分もあるんじゃないですか?

石神:客観的に見たらそうかもしれないですけど、主観的にはそういう感覚は全然ないんですけど。世間から見たらそうなのかなーって(笑)。

では、少しいやらしい訊き方ですけど、震災以降、音楽に限らずシリアスな表現が増えましたよね。具体的な状況を織り込んで、それに対するステートメントを表明するものが。そんななかで、ホテル・メキシコがやっている音楽はただ逃避的なだけじゃないかっていう批判があったとしたら、それに対する反論はありますか?

伊藤:反論というか(笑)、それに対する反論をする必要があるのかって感じですね。

菊池:そういうひともいますよ、と。

伊藤:そもそも、そのひとがどうして逃避的なものをそこまで否定するのかがまずわからないです。

たとえば、チルウェイヴなんかもすごく議論の対象になって。現実に対する抵抗としての逃避ではなくて、何となくの逃避ではないかっていう意見もあったぐらいで。それだったら、どちらに近いんでしょう?

石神:それは何となくの逃避でしょうね。とくに意識してやってるわけでもないし。それを意識しだすとフィーリングじゃなくなるので。

伊藤:何かをあえて意識してやるっていうのはないですね。

アルバムを作っているときのゴールっていうのは何かあったんですか?

石神:うーん......期日。日程。スケジュール(笑)。

(一同笑)

石神:限られた時間のなかで、どこまでやれるかってことですね。自分たちの目標は立てたわけではなくて、むしろ間に合うかなっていう感じで。

その期日が限られているなかで、いちばん重視したポイントっていうのは?

伊藤:作品全体としてのバランスですね。

菊池:今回はアルバム全体として聴けるものを作りたいっていうのがあったんで。全体的なまとまりを目指しましたね。

石神:トータルして言うと、抽象的だけどやっぱりロマンティックさですね。細かいんだけど、コーラスひとつのエフェクトにしても、1時間かけたりとか、ずーっとやってたりとかして。そのどれが正解っていうのはないんですけど、ギターの音なんかにしても、自分が納得するまでやるっていうのはありましたね。

ロマンティックさにこだわったのはどうしてなんですか?

石神:うーん、気分ですね(笑)。

(笑)でも、そこにメンバーが同調しないとまとまらないじゃないですか。バンドでロマンティックな気分になっていたのは何か理由は思い当たりますか?

伊藤:うーん、でも最初にその話をしたときに異論も出ませんでしたね。僕らも「あ、じゃあそれで行こう」と。すんなりと。

菊池:たしかに、誰も何も言わなかったね(笑)。

じゃあそのロマンティックっていうもののイメージのモデルはあったんですか?

石神:そこについては話し合わなかったですね。

気分として共有しているものだと?

石神:それぞれのロマンティックを持って来いみたいな感じになって。僕の意見では、先ほど言ったみたいに逃避的なものがすごくロマンティックだったりもするし。攻めてるだけが音楽じゃないって思うし。そこに埋もれたものの受け皿みたいなものがあってもいいなって思うし。それぞれが持っているものなんですよね、ロマンティックに対してのイメージっていうのは。そういう意味では、英語のロマンティックに当てはまらないものなのかもしれないですね。

なるほど。ただ、それぞれのロマンティック持ち寄るって言ったときに、メンバー間でそれがバラけることはなかったですか?

石神:うーん、でも意識的なものではなく、かなり漠然としたものなので。そこで乱れるっていうことはなかったですね。

じゃあ、アルバムを作っていくなかで、「この方向性で間違ってないな」って感じた瞬間はあったんですか?

石神:最初に出来た曲が6曲目の“ア・パーム・ハウス・イン・ザ・スカイ”っていうインストなんですけど。それは8月ぐらいから作りはじめていて。むしろ、この曲からロマンティックっていうテーマをインスパイアされた感じも少しあって。そのときにみんな、何となく感じるものがあったっていうか。

それで方向性が出来たんですか?

石神:1曲1曲のモチヴェーションが違うんですけど、共有という意味では、きっかけとしてはこの曲だったかなと。

菊池:軸になった感じはしますね。

その軸が、言葉がない曲だっていうのが面白いですね。

石神:そうなんですよ。

歌詞に、曲ごとのテーマは設けるんですか?

石神:いやそれも、かなり感覚と、デモを作る段階で英語っぽく歌ってるやつを英語に直して、リズム感を重視して。

英語である理由は何なんですか?

石神:それもよく訊かれるんですけど、とくにないですね。

日本語になると意味の部分が大きくなってしまって、フィーリングの部分が削がれるからっていうところもありますか?

石神:それもありますかね。

伊藤:うーん、でも僕が英語詞を作るんですけど。曲のイメージを作ったひとにもらうんですよ。で、さっき龍遊が言ったみたいに、語感であったりイントネーションだったり言葉のリズムだったり、っていうのを考えて仮歌を入れてるんで、それをいちばん大事にして言葉を入れていくんですけど。そのイメージをもらうときに、日本語詞でもらうこともあるので、べつに日本語詞になったからってフィーリングが削がれることはない。

石神:英語のほうがカッコいいからってだけですね。

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作ってるときに水辺の映像を作ったりもしていたので、そういうイメージが強いですね。そういう部分を聴いてほしい。(菊池)


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なるほど。1曲目が“スーサイド・オブ・ポップス”っていう、けっこう意味深なタイトルなんですけど。これはどこから出てきたんですか?

伊藤:これはたぶん、「スーサイド」って言葉を入れたかっただけじゃないかな。

石神:僕らの曲って作り終わったあとにタイトルを決めることが多いんですけど、この曲はすごく暗いなと思って、自分で(笑)。で、僕アイドルがすごく嫌いなんですけど、そういう、表面的にもポップが死んでるみたいなイメージもあったし。アルバム全体のイメージとして、女の子が持つ世界観みたいなものを出したくて。すごくミーハーなものに対しての、アンチまで行かないけど、ちょっと......。そういうのを最後まで結論出さずに、「ま、これでいっか」みたいな(笑)。

(一同笑)

石神:すいません(笑)。

いやいや(笑)。アルバム・タイトルに「ハー(Her)」ってついてるのはその女の子感を出したかったっていうのがあるんですか? 前作(『ヒズ・ジュエルド・レター・ボックス』)との対比っていうのももちろんあると思うんですけど。

伊藤:フェイスブックのホテル・メキシコのページを最初作ったときに、ジャンルに「世界中の女の子を幸せにするような音楽」って書いていたんですよ。ジャンルって縛れないから、そういうふうに書いたんです。女の子が楽しんでいるような感じ、何かしら女の子に行き着くようなイメージっていうのはもともと持っていますね。

その女の子に向けてっていうところにこだわる理由は?

菊池:単純に、PVとか観ててかわいい女の子が出てるといいよね、っていうのはありますよね(笑)。

(笑)でも、重要なところじゃないですか。誰に聴かせるかっていうのは。

石神:女の子ってやっぱ、未知数だと思うんですよね。メンバー全員男だし、女の子の気持ちなんかわからないじゃないですか。でも、女の子目線で作ったらなんか面白いっていう(笑)。その未知数の部分を、僕らはたぶん間違えてると思うんですよ、全部。

イメージとしての女の子っていう?

石神:第三者から見たらそうなんだけど、でもやっぱやってるときは、もちろん女の子になったつもりで。

(一同笑)

石神:女の子の気持ちを最大限に汲み取ろうと(笑)。同じレンズから、こう。

でもそれ、すごく大事なところですね。フィーリングとしては、自分の男じゃない部分を出しているってことですよね。

石神:でも結果としては、男の目線になってしまうというか。

前作で“ガール”って曲があるじゃないですか。で、今回“ボーイ”っていう曲がある。少年少女っていうことに対しての、思い入れはあるんですか?

石神:思い入れはないですね。

菊池:思い入れは(笑)。

いやいや、たとえば思春期的なものであるとか。

石神:ああ。少年少女が持つような、キラキラしたものっていうか、衝動みたいなものの感じ。それはいいなって。

菊池:惹かれるものはあるね。

なるほど。じゃあ、アルバム全体が醸すフィーリングっていうのは? ロマンティックでもいろいろあるわけですが。

石神:そこについてもとくに話し合ってないんですけど、個人的には、ミーハーな女の子が見ている世界みたいなイメージで僕はこのアルバムを聴きますね。

伊藤:僕がこのアルバムに対して抱いているロマンティック感は、出来上がってから感じてるものなんですけど、退廃的なものっていうか。

石神:はははは(笑)。

伊藤:なんて言うんですか、ロマンティックなんですけど、純愛の絶頂期とかは過ぎてますよね、たぶん。

石神:たしかに。それはある。

伊藤:酸いも甘いも経てからの、ロマンティックのような気がしてます。

石神:はじめて知った(笑)。酸いも甘いも経た上でのピュアさ(笑)。

なるほど。それぞれの勝手な女性像が出た結果みたいな(笑)

(一同笑)

では、バンドとしては、不特定多数に向けて音楽を作っているという意識ですか? それとも、ある特定のリスナー層を想定している?

伊藤:でも逆に言えば、不特定多数のひとがどうして聴かないんだろうぐらいの気持ちでやってますけどね。好きでやってますし。でもやっぱり、こういう音楽を聴くひとたちの耳に届かないと意味がないなとは思ってますね。

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何がロマンティックかっていうことを意味づけするのは難しいと思うんですけどね。ただ、目に見える現実だけがすべてじゃないと思ってるんで。その化粧をしているときに、たとえば鏡が喋ったりするとロマンティックになるわけじゃないですか。そういうことがいつ起こるかわからないよっていうか。(石神)

自分たちのリスナーってある程度見えていますか?

石神:いや、正直まったく見えてないです。

たとえばライヴに来ている客層とか。

石神:ライヴの客層はかなり不特定のほうに入ると思いますね。たぶんやけど。

もらったリアクションで面白いものはありますか?

石神:たとえば、ミスチルが好きっていうギャルが、ホテル・メキシコが好きとか(笑)。

ほう!

菊池:そんなのいた?(笑)

石神:いるいる。よくいるよ。

菊池:あとライヴ終わったときに、50歳ぐらいのおっさんから「苦労してんな」って言われました(笑)。

(一同笑)

菊池:「そんな音出ーへんぞ、ふつう」みたいな(笑)。

じゃあ、自分たちみたいに洋楽を聴いている層に向けているっていう意識もない?

石神:まあもちろん、海外にも向けていきたいっていうのはありますけど――。

菊池:まず自分たちが作りたいものっていうものが先にありますね。

石神:とくに誰に聴いてほしいっていうのは考えてないですね。

では、リスナーにどういうときに聴いてほしいアルバムですか? もちろん自由っていうのが前提だとして。

石神:高速で車がパンクしたときに聴いてほしいですね。

それはなぜ?(笑)

石神:なんかこう、イメージとして広い景色を見ながら聴いてほしいかなと。狭いところで壁向いたまま聴くんじゃなくて。

菊池:それはなんかわかる。

石神:開放的な感じで聴いたら、すごく気持ちいいんじゃないかなと思って。でも何でもそうか。

伊藤:ははははは! けっこう共感してたのに(笑)。

菊池:僕もでもけっこう広い景色っていうのはあって。作ってるときに水辺の映像を作ったりもしていたので、そういうイメージが強いですね。そういう部分を聴いてほしい。

伊藤:僕は空いてる電車のなかで聴いてほしい。僕は電車に乗ってるときに音楽を聴くのが好きなので。空いてるほうがいいんじゃないかなと。

そのココロは?

伊藤:単純にイメージしたときに混んでる画が出てこなかったですね。けっこうガラガラぐらいの電車のほうが思い浮かびましたね。

石神:このアルバムを、みんなで聴いてるイメージってなくないですか?

伊藤:それはあるね。一人称だね。

石神:やんなあ。

パーソナルなイメージ?

石神:できれば、かわいい女の子が聴いている感じ。

かわいい女の子が恋をしているとき?

伊藤:いや、恋してるときは――(笑)。

石神:恋しているときは、聴いちゃダメ(笑)。恋が終わったあとですね。

それはなぜ終わった恋なんですか?

伊藤:いや、してるときじゃないと思うんですよね。終わったときか、してないときなんじゃないかなあ。

たとえばロックンロールは基本的には恋のはじまりの歌ですよね。それとは違うものだと?

石神:そうですね。どっちかと言うと、僕ははじまる前ですね。デートする前の家で化粧してるときとか(笑)。そういうときでいい。会ったら聴くなと(笑)。

でも家で化粧してるときだったらすごくワクワク感があるじゃないですか。

石神:まあそうですね。でも――。

伊藤:だから家で戦略を立ててるときじゃなくて?

石神:いやだからね、僕の想像している女の子はね、ギャルとかじゃないよね。娼婦かな。

じゃあ化粧は武装としての化粧なんですか?

石神:いや、武装っていうかね、本人もたぶんわかってない。

(一同笑)

することになってるから(笑)。

石神:することになってるから、やってるだけであって。そういう戦略なんかも考えない、女の子に聴いてほしいなと。

それは面白いですね(笑)。恋愛の最中でないフィーリングをロマンティックと呼ぶのは。複雑な回路が出来てるなと思って。

伊藤:ロマンティックって言っても、恋愛に対して盛り上がってるっていうのではなく。恋にがっつこうとか、盛り上がってるっていうものではないですね。だから僕のイメージだと酸いも甘いも経てしまっているひとのイメージなので、どちらにしても、最中じゃない感じはしますね。

なるほど。じゃあ恋愛の最中のひとが聴くと言うよりは――。

石神:いや、最中でも大丈夫(笑)。でも、このCDを買うひとはたぶん恋愛できない。

(一同笑)

菊池:失礼やな(笑)!

石神:たしかに何がロマンティックかっていうことを意味づけするのは難しいと思うんですけどね。ただ、目に見える現実だけがすべてじゃないと思ってるんで。その化粧をしているときに、たとえば鏡が喋ったりするとロマンティックになるわけじゃないですか。そういうことがいつ起こるかわからないよっていうか。そういう、どこにでもあるものだと思うので。心の美しさみたいなものは。

ファンタジーみたいなもの?

伊藤:それはあると思います。

石神:そういう方向に持っていければいいかなと(笑)。

(笑)なるほど、わかりました。では最後に、バンドとしての野望があれば聞かせてください。

伊藤:そうですね、7インチは去年の春に海外レーベルから出せたんですけど、LPはまだ出せてないので、次は海外からLPを出せるように頑張っていきたいです。

■ライヴ情報

*2013年3月8日(金)

「HOTEL MEXICO "shows in California"」
会場:Insight Los Angels store (LA)
LIVE:HOTEL MEXICO
and premiering new surfing documentary video KILL THE MATADOR
https://killthematador.com/
info : https://www.facebook.com/insightlosangelesstore

*2013年3月9日(土)

「HOTEL MEXICO "shows in California"」
会場:Detroit Bar (Costa Mesa)
LIVE:HOTEL MEXICO / BRONCHO / THE BLANK TAPES
adv : $7
ticket : https://ticketf.ly/Wktl4P

*2013年3月15日(金)

「SECOND ROYAL」
会場:京都METRO
開場:21:00
前売:1,800円 / 当日:2,000円(1ドリンク付)
LIVE:HOTEL MEXICO ※Special Long Set
Guest:OZ Crew (zico / O.T.A. / Yusuke Sadaoka / RIE / nobuyo)
DJ:HALFBY / Handsomeboy Technique / kikuchi(HOTEL MEXICO) / 小野真 / 小山内信介
お問い合わせ:METRO(075-752-4765)

*2013年3月23日(土)

「CUZ ME PAIN × HOTEL MEXICO」
会場:下北沢 THREE
開場:24:00
当日:2,000円(1ドリンク付)
LIVE:THE BEAUTY / HOTEL MEXICO / JESSE RUINS
DJ:YYOKKE(WHITE WEAR/JESSE RUINS) / NOBUYUKI SAKUMA(JESSE RUINS) / TSKKA(MASCULiN) / ODA(THE BEAUTY) / APU(NALIZA MOO) / COZZY(OHIO PRISONER) / ANARUSHIN and more
お問い合わせ:THREE(03-5486-8804 ※16時以降)

SónarSound Tokyo 2013、出演情報第3弾が発表 - ele-king

 エイドリアン・シャーウッドとピンチという大御所から、ロンドン・オリンピック開会式においてもあらためて大きな存在感を見せつけたカール・ハイド、そしてアクトレスやニコラスジャー、ダークスターといった俊英までをきっちり押さえるソナー・サウンド・トーキョー2013。第3弾となる今回の出演者発表ではLFOやジョン・タラボットに加え、日本勢においてもトーフビーツやサファイア・スロウズらが名前を連ね、じつにかゆいところに手の届いたラインナップを見せつけてくれている。今後も映像上映や展示、トークショーなど続報が段階的に発表されるとのことだ。目が離せない!

SónarSound Tokyo 2013 :: 4/6 & 4/7 ::
at ageHa | Studio Coast

ミュージック+アート+テクノロジーの祭典、
SónarSound Tokyo 2013 第3弾出演者発表!

LFO、Shiro Takatani、John Talabot、Toe... 一挙16組の追加アーティストを発表!
そしてRed Bull Music Academyがキュレーションする"SonarDôme"の出演者も明らかに!
そして大阪公演『A Taste of Sonar』開催決定!

一昨年、昨年と二年連続で入場制限までかかるほどの大人気を博した" SonarDôme "今年もRed Bull Music Academyがキュレーションを務めることが決定!

今回もRed Bull Music Academyの卒業後も確実に実力と可能性を拡げながら、精力的に世界中で活躍しているアーティストたちをラインアップ。

日本からは、アキコ・キヤマ、ダイスケ・タナベ、ヒロアキ・オオバ、sauce81、ヨシ・ホリカワが出演。さらに、現在ベルリンを拠点に活動し、サイケでムーディでベースへヴィーなビートミュージックで知られ、昨年<Ninja Tune>との契約が話題となったテクノ・プロデューサー、イルム・スフィア、ロンドンで活動するエレクトロニック・ミュージックのプロデューサー/DJ、OM Unit、UKよりエレクトロニック・ミュージックのプロデューサーxxxy、そしてアカデミーが縁で生まれたダイスケ・タナベとのユニット、キッドスケより、UKのキッドカネヴィルが来日。世界で4,000通を超える応募者の中から狭き門をくぐりアカデミーへと選ばれた才能が、SonarDômeで炸裂します。Red Bull Music Academyが誇る、最先端の音楽を堪能してください。また、追加ラインナップ等も近日発表しますので、ご期待ください。

*Red Bull Music Academyより特典として、SonarDômeに出演するキッドスケのエクスクルーシブ・トラック「Mighty」が以下URLよりフリーダウンロード!
【2月22日(金) 日本時間 19時より】
https://www.redbullmusicacademy.com/magazine/kidsuke-mighty-premiere


今後も驚くべきハイクオリティなラインナップを続々発表予定。
また映像上映や、メディア・アート作品の展示、トーク・セッションなどなど、今後の発表にも注目!

SónarSound Tokyo 2012 の初日はソールドアウトし、残念ながら会場に行けなかった方もおりますので、お早めにチケットをお買い求め下さい!

■日時
4/6 sat
Open/Start 21:00
LFO NEW
Sherwood & Pinch
Boys Noize DJ Set
Actress
John Talabot NEW
Submerse NEW
Sapphire Slows NEW
and much more...
4/7 sun
Open/Start 14:00
Karl Hyde
Nicolas Jaar
Darkstar
Shiro Takatani:CHROMA NEW
Toe NEW
Green Butter NEW
Tofubeats NEW
and much more...
Red Bull Music Academy presents SonarDôme NEW
Akiko Kiyama, Hiroaki OBA, ILLUM SPHERE, Kidsuke, Om Unit, sauce81, xxxy, Yosi Horikawa and more...

Produced by: Advanced Music / Beatink


■チケット詳細

[前売チケット]
1Day チケット: ¥7,750
2Day チケット: ¥14,500

[当日チケット]
1 Day チケット: ¥8,500

*2DAY チケットは、BEATINKオフィシャルショップとe+、チケットぴあのみでの販売。
*4月6日(土)の1DAYチケット及び2DAYチケットは、20歳以上の方のみ購入可

■前売チケット取扱い
BEATINK On-line Shop “beatkart” (shop.beatink.com)
チケットぴあ(P:189-692) t.pia.jp, ローソンチケット(L:74641) l-tike.com, e+ (eplus.jp),
イベントアテンド (atnd.org) *Eチケット

■注意事項
4月6日(土)は、20歳未満入場不可となり、入場時に年齢確認のためのIDチェックを行います。運転免許証・パスポート・顔写真付き住基カード・外国人登録証のいずれか(全てコピー不可)を ご持参ください。
You Must Be Over 20 Years Old With Photo ID To Enter for 6 Apr (sat) show!

■MoreInformation
BEATINK www.beatink.com 03-5768-1277
www.sonarsound.jp www.sonar.es


■大阪公演決定!!!
バルセロナ発、今や世界的に高い評価を集める最先端のフェスが遂に大阪に上陸!そして2日間のイベントとして開催が決定!日本初となる今回のA Taste of Sónarは、SónarSound Tokyo 2013の出演アーティストの中から特に強力なラインナップを選出し、二つの異なる会場で行われる。
1日目はニコラス・ジャー、シャーウッド&ピンチ、アクトレスはじめ、過去ソナーに出演経験のある日本人アーティスト達が出演。
2日目は、ソロ・アルバムをリリースすることで話題のアンダーワールドのカール・ハイドがバンドと共に出演する他、ダークスター、日本からはアルツが出演。

A Taste of Sónar in Osaka
Day1 4/5 Fri

Universe
open/start 18:00 ticket: tbc
Nicolas Jaar
Sherwood & Pinch
Actress
and more...
Day2 4/8 Mon
Umeda Club Quattro
open/start 18:00 ticket: ¥5,800 Adv.
Karl Hyde
Darkstar
ALTZ

A Taste of Sónar
ソナーのサテライト・イベントとして、これまでロンドンなどでも開催されてきたA Taste of Sónar(テイスト・オブ・ソナー)。本家ソナーのDNAを受け継ぐイベントは、今回の大阪開催が日本初となる。



Fragment - ele-king

 昨年は、キャリア10年にして初のインストゥルメンタル・アルバムをリリースしたフラグメントによる6作目。ブレイクビーツを軸にヒップホップとエレクトロニカを繋ぐ「架け橋」になろうとしているアルバムだろう......か。それは雑多な傾向のミュージシャンを一同に集めたササクレ・フェスティヴァルにも通じている。そして、ササクレ・フェスティヴァルが彼らの趣旨をもうひとつ誰にでも理解できるようなコンテキストに落としこめたとはいえないように、このアルバムもどのような価値観でジャンルを横断しようとしているのか、直観的に把握できるコンテキストは見えてこない。フラグメントというユニット名が示す通り、どこか「断片的」なのである。

 いいところはたくさんある。しかし、なかなか腑に落ちなかったので、この1ヵ月、何度か聴き返しているうちに、ふと逆から聴いてみることを思いついた。そして、「あッ」と思うほどアルバムの表情が変わってしまったのである(すでに持っているという人は一度、お試しあれ)。厳密にいうと、M12、M11、M10、M9、M8、M5、M7,M6、M4、M3、M2、M1の順かな(似たようなことは、過去にパフィのアルバムを聴いていた時にもあった。逆から聴いたら、言いたいことが急にはっきりしたような気がしたのである。フィッシュマンズ『空中キャンプ』でも最初と最後はそのままにして、ほかの曲順をいじくってみるとかなり発見があります。とくに"ベイビー・ブルー"を最後から2曲目に置くととんでもないですから!)。

 ひと言でいえば、フラグメントの考えた構成は内省的な面を隠すような曲順になっている。逆から聴くと、それが剥き出しになる。たまたま、僕も5月にリリースされるホワイ・シープ?『リアル・タイムス』の曲順を考えるはめになり、同じ問題にぶつかっていたので、ここはよくわかるところなんだけれど、少しでも東北大震災や福島原発に触れる部分がある場合、それとは相反する部分から誘っていって、そこに導こうとするよりも、現状はすでに内省や後悔に満たされているんだから、そこから入って違う世界へと導いた方が、自分たちがどう考えているかということが伝わるのではないかと思うのである。『感覚として。+ササクレ』には福島に住む狐火が福島の日常を淡々とラップしている曲があり、これが良くも悪くも重みがあり、それまでの流れを一変させてしまう。現在の曲順では、そうなると、それまでの曲がなかったことのようになってしまう。悪くすると、それまでの陽気さに反省さえ促しているとも受け取れない。

 最初にキャッチーな曲を置くという強迫観念があるのではないかと思う。これは、なにもフラグメントに限ったことではない。リスナーに対する期待値が低くなるのは仕方がないと思える音楽産業の低迷ぶりではあるし、サーヴィスがそれ以上の意味を持ってしまった現状では、ごく当たり前のことがリスクに思えてくるのだろう。しかし、最後のところでリスナーを信じなければ音楽をつくっている意味がどこかに行ってしまうんじゃないだろうか。その通り、僕は少しフラグメントを見失いかけた。それが言いすぎならば、新作で何を伝えたいのか、すぐにはわからなかった。そして、リリースから1ヶ月が経っていた。

 逆から聴いてみる。

 とても優しい雰囲気ではじまる。落ち着いて暖かい気持ちになれる。このまま1時間ぐらい続いてもいいと思っていたのに、急にドアの閉まる音。前の曲の余韻を受けて少しばかり身を引き締めるビート・ナンバーへ。気分が大きく変わることはない。物悲しさが増し、それを待っていたかのように新人の泉まくらをフィーチャーしたM10"このきもち"へ続く。ドアを開けて、しばらく歩いていたら、泉まくらに出会ったような感じ。その日、初めて会った人がこの人でよかったというか。そのことを反芻しているようなインスト曲に続いて、2人目が狐火。いつもなら、どこかでムダな抵抗をわめいているようにしか聴こえない狐火のフロウは、福島の日常を淡々と語ることで、それまではみ出していた部分が整理されたように聴こえ、不思議なほど静かなものに感じられる。冒頭で感じられた優しさがとても残酷なものを内包していたようにも思えてくる。2曲とばしてM5"Individuality?"へ。知らず知らずのうちにのしかかっていた重さから逃れるために、無理のない気分転換を試み、この曲ならそれが可能になる。余韻を打ち消してしまうわけではない。この微妙なニュアンスからM7"Rat Race"へ戻り、まったく意味のないSEをしばらく受け止め損ねていると、なにもかもをひっくり返すようなM6"調整"へ。躍動感に満ちたMacka-chinのラップはすべてを台無しにするほどは振り切れず、むしろデリカシーが狐火との連続性を保障してくれる(でも、少し、暴力的に感じられる人もいるかもしれない)。M4"Sharpens Pendulum"でスラップスティックに笑い転げ、M3"香車"で疾走モード、さらにM2"豚の頭"と、調子にのって飛ばすだけである。難しいのはM1"Rebel Rhythm"の置きどころ。フラグメントらしい曲なので、もったいないけど、外してしまうのも可かな。でも、それじゃ物足りないか......。

 久しぶりに原稿を書いたらレヴューにならなかった。「静かな生活から騒がしい場所へ出てきて、ツラい話でも人の話を聞いたことで、むしろその次に進むことができた」という構成案です。ということは、現在の曲順で聴くと、その逆の展開になるということです。大騒ぎしてたら、やがて、いたたまれなくなって、ひとりで......(すいません)。

 なぜ日本ではレコード・ストア・デイがもう少し一般化しないのだろうか? 2008年からはじまった、フィジカル・リリースとそのインディペンデントな流通を盛り上げるための祝祭は、途切れることなくしかも規模を拡大して今年も開催されるようだ。

 そもそもは限定盤の店頭流通によって近所の小さなレコード・ショップなど小規模(で良心的)なお店を活性化させようといったコンセプトがあったわけだが、アーティストも積極的にこの機会を活用したらいいのにと常々思う。「レコード・ストア・デイ限定」として、CD-RでもカセットでもMDでも、余裕があるならヴァイナルをプレスして、カジュアルにリリースするのは楽しいことである。

 海外では、ほとんど名前をきかないようなアーティストから大御所まで、リリース数は年々増えている。日本のショップだと早々に完売する商品すら珍しくない。だが日本のアーティストの作品はとても少ない。キャリアは関係ないのだ。音源をフィジカルでリリースしたことのない人も、レコード・ストア・デイ・デビューとして、この機会を活用してはいかがだろうか。

 坂本慎太郎が前回にひきつづき今回も「レコード・ストア・デイ限定」を打ち出しているのは、心強いことである。しかも彼の作品のうち、完全にリミキサーの手に委ねるかたちでのリミックスはこれまでリリースされたことがないということだから、コーネリアスと石原洋、ふたりが聴かせてくれる内容も非常に楽しみである。

坂本慎太郎remix 7inch vinyl『幽霊の気分で (コーネリアスMIX) & 悲しみのない世界 (石原洋MIX) 』発売決定!

1月11日にシングル『まともがわからない』、2月15日に同7インチ・ヴァイナルをリリースした、坂本慎太郎のリミックス7インチの発売が決定しました。
 
昨年、雑誌『Sound & Recording Magazine』の企画で付録CDとして発表され話題になった、『幽霊の気分で (cornerius mix)』が待望のアナログ化です。
アルバム『幻とのつきあい方』収録のオリジナル・ヴァージョンが、コーネリアスこと小山田圭吾の手により、完璧なコーネリアス・サウンドに。
そして今回新たに、ゆらゆら帝国のプロデューサーである石原洋が、最新シングル収録の(TX系『まほろ駅前番外地』OST曲)“悲しみのない世界”をリミックス。
音数を最小限に削ぎ落とした、石原にしかできない深淵でメロウなミックスに。
どちらも坂本と縁の深いアーティストによる、好対照で素晴らしいミックスが収録された、両A面7インチ・シングルに仕上がりました。

今回は両曲とも、バンド時代から数多の坂本作品にコーラスとして参加している、Fuko Nakamuraのヴォーカルが前面にフィーチャーされており、「坂本慎太郎 feat. Fuko Nakamura」名義でのリリースになります。

坂本本人が完全に他人に委ねたリミックス・ヴァージョンのリリースは初になります。 

また、今回「レコード・ストア・デイ2013」の限定7インチとして、店頭のみの販売になります(各店web/予約販売は行いません)。

https://www.recordstoreday.jp/index.html#a1

世界的にも再びアナログ盤が重要メディアになってきているいま、まさにこの春の最重要7インチ・ヴァイナル! 今回も特殊二つ折りジャケットで、全国のレコードショップ店頭にて4月20日(土)発売予定です! 

■発売日
2013年4月20日 (土) zelone recordsより
■タイトル・詳細
坂本慎太郎 feat. Fuko Nakamura
Shintaro Sakamoto feat. Fuko Nakamura 
A: 幽霊の気分で / In A Phantom Mood  (Cornelius Mix)
AA: 悲しみのない世界 / World Without Sadness (You Ishihara Mix)
All Songs Written by Shintaro Sakamoto

A: Remixed by Cornelius
Additional Instruments: Keigo Oyamada
Recording, Programming & Mixing: Toyoaki Mishima

AA: Remixed by You Ishihara
Additional Instruments:
Piano: Fuko Nakamura
Guitar: Soichiro Nakamura
Guitar & Bass: You Ishihara
Recording & Mixing: Soichiro Nakamura at Peace Music

Mastered by Soichiro Nakamura at Peace Music, Tokyo Japan  2013

■品番
zel-009 (7inch vinyl)

■価格
¥1,050 (税込) 

■関連サイト
official HP: www.zelonerecords.com
official twitter: https://twitter.com/zelonerecords
official face book: https://www.facebook.com/zelonerecords
distribution: Jet Set Record : https://www.jetsetrecords.net/

■Cornelius (コーネリアス / 小山田圭吾) 
1969年東京都生まれ。'89年、フリッパーズギターのメンバーとしてデビュー。
バンド解散後 '93年、Cornelius(コーネリアス)として活動開始。現在まで5枚のオリジナルアルバムをリリース。
自身の活動以外にも、国内外多数のアーティストとのコラボレーションやREMIX。プロデュースなど 幅広く活動中。
https://www.cornelius-sound.com/

■石原洋(イシハラヨウ)
ミュージシャン、サウンド・プロデューサー。
80年代半ばよりWhite Heaven, その後The Starsを主宰。2008年The Stars解散後はソロ名義で不定期に活動。
96年の「Are you ra?」以降、最終作「空洞です」までのゆらゆら帝国の全作品やOgre You Assholeの近年の作品などのブレインとしてサウンド・プロデュース、アレンジ、リミックスを手がける。
他に朝生愛、Borisなどプロデュース、リミックス作品多数。

■RECORD STORE DAY
RECORD STORE DAYはCHRIS BROWNが発案し、ERIC LEVIN、MICHAEL KURTZ、CARRIE COLLITON、AMY DORFMAN、DON VAN CLEAVEとBRIAN POEHNERによって創始された、全米の700を超え、海外に数百を数えるレコードショップとアーティストが一体となって近所のレコードショップに行 き、CDやアナログレコードを手にする面白さや音楽の楽しさを共有する、年に一度の祭典です。限定盤のアナログレコードやCD、グッズなどが リリースされ、多くのアーティストが全米各地、各国でライブを行ったり ファンと交流する日です。
2008年4月19日にはMETALLICAがサンフランシスコのラスプーチン・ミュージックでオフィシャルにキックオフをし、以降は毎年 4月の第3土曜日にRECORD STORE DAYが開催される運びとなりました。
https://www.recordstoreday.jp/index.html#a1

■坂本慎太郎
1967年9月9日大阪生まれ。
1989年: ロックバンド、ゆらゆら帝国のボーカル&ギターとして活動を始める。21年間で、3本のカセットテープ、 10枚のスタジオアルバム、1枚のスタジオミニアルバム、2枚のライヴアルバム、1枚のリミックスアルバム、2枚組のベストアルバムを発表。
2006年: アートワーク集「SHINTARO SAKAMOTO ARTWORKS 1994-2006」発表。
2010年: ゆらゆら帝国解散。解散後、2編のDVDBOXを発表。
2011年: salyu×salyu「s(o)un(d)beams」に3曲作詞で参加。自身のレーベル、zelone recordsにてソロ活動をスタート、1stソロアルバム「幻とのつきあい方」を発表。
2012年: 以前から交流のあるYO LA TENGOのジェームズ・マクニューのソロ・プロジェクト”DUMP”の”NYC Tonight"にREMIXで参加。
NYのOther MusicとFat Possum Recordsの新レーベル”Other Music Recording Co" から、「幻とのつきあい方」がUSリリース。
2013年: 1月11日Newシングル「まともがわからない」リリース。



ホロノミックディスプレイが作動した - ele-king



 年明けから間もない2013年1月4日のことだ。日本時間の午後1時すぎに目が覚めて、僕はいつもどおりリヴィングへふらふらと歩き、ノートPCを立ち上げた。ヴェイパーウェイヴ周辺の連中がなにやら興奮してツイートをしているのを見て、貼ってあったURL(https://jp.tinychat.com/spf420)をクリックすると、ヴィデオ・チャットの画面へ飛んだ。ディスプレイに映されたのは日本企業のCM映像。高速で流れていく英文の会話。毒にも薬にもならない浮ついたスローな音楽。僕はおもわず誰もいないリヴィングで声をあげた。なんてこったい! そこは、ヴェイパーウェイヴの連中のフェスティヴァル会場だった。そのときはインフィニティー・フリークェンシーズ(Infinity Frequencies)がプレイをしているらしかった。

 〈#SPF420〉とタグで銘打たれたフェスティヴァルの形式はこうだ。ストレス(STRESS)と名乗る女性が司会として、次の出演者を生の音声会話で紹介する。あらかじめ『YouTube』にアップ済みの出演者紹介の映像を流す。それから出演者が演奏を開始する。プレイ中のVJは出演者みずからがチョイスしているときもあれば、ブラックサンセッツなるアカウントがVJをしていた。演奏が終わると、画面が真っ暗になり、観客はチャットに拍手の意(「CLAP」など)をみんないっせいに打ち込む。そして、ストレスがふたたび司会をはじめ、次の出演者紹介をする。最後までこれの繰り返し。

 集まったチャットの参加者(観客)はこのフェスティヴァルに興奮していたようだ。「ラグジュリー・エリート(Luxury Elite)がいるの? まじ?」などと言っている者もいた。現住国を発表する流れでは、アメリカはもちろん、ヨーロッパやアジアからの者も多かったが、日本と答えたのは僕のみ。しかしまあ、チャットの内容はだいたいがなんの意味も生産性もないやりとりだ。「Lana Del Gay」や「James Vaporro」などと、ミュージシャンの名前を(特に「Gay」で)もじった言葉遊びが多くを占めた。それが高速で行われる。ヴェイパーウェイヴとそこからの波を追いかけつづけている日本のブロガー・ポッセ『Hi-Hi-Whoopee』のアカウントも日本語でチャットに入ってきたが、「会話についていけない」とぼやいて消えてしまった。チャットでやりとりをするには一瞬にして文脈を読んでいかなければならなかった。僕も慣れるには時間を要した。このイヴェントは以前にも行われており、日ごろからチャットに手馴れているユーザーが多かったようだ。司会のストレスは、来場したユーザーのみんなに丁寧な挨拶をしていた。このフェスを開催できたことが心から嬉しかったのだろう。見ていて気分がよくなる雰囲気があった。

 出演者も興味深い。音楽評論家アダム・ハーパーによって「#Vaporwave」というタグが生まれる前から、それにあたる作品を発表していたプリズム・コープ(Prism Corp)ことヴェクトロイド(Vektroid / New Dreams Ltd.など名義多数)やインフィニティ―・フリークェンシーズのほかに、彼らに触発された、いわば第2波といえるアカウントのラグジュリー・エリートや福岡在住を自称するクールメモリーズ(coolmemoryz)(おそらく元「t r a n s m a t 思 い 出」名義)が混合している。そこに、〈アギーレ〉(Aguirre)からのリリースをひかえていたアンビエントやノイズのトランスミュート(Transmuteo)や、〈アムディスクス〉(Amdiscs)からのヴェラコム(VΞRACOM)などニューエイジな装いのメンツも合流している。そして、どうやらこのカオスに貢献していたのは、チャズ・アレンを名乗るビートメイカーであるメタリック・ゴースツ(Metallic Ghosts)のようだ。先のYouTubeのアカウント然り、フェスのアートワークも彼が担当していたと思われる。

 トランスミュートの瞑想的なノイズはすばらしく、熱狂的な歓迎を受けていた。しかし、この日もっともおおきな拍手喝采の言葉で迎えられた大本命は、やはり、ヴェイパーウェイヴで最も有名になってしまったプリズムコープ:ヴェクトロイドだ。ウェブカムの前に彼女/彼ははっきりとその姿を現した。ときどきFBIのマークをVJに出現させハプニングの音を混ぜる茶目っ気をみせながら、まさにホテルのラウンジやプラザのBGMに最適なミューザックのループを延々と披露した。それはつまり、市場において消費者である僕たちが知るかぎりこの世でもっとも退屈で決して家に持ち帰ることのない音楽=ミューザックだが、いまや世界各国の物好きが、それらをインターネットの画面の奥に集積したゴミのような情報のなかから拾い上げ、面白がっている。挙句の果てには、それをグチャグチャに歪め、ズタズタに切り刻み、垂れ流したそのクソに浸りながら深夜にPCの前でハッパをキメるわけだ。現にヴェクトロイドは、ボングを用いてウィードに火をつけて吸引する自らの姿を何回もウェブカムで生中継した。『facebook』では彼女の姉妹ということになっている司会のストレスも別枠で吸引の様子を一瞬だけ映す。情報デスクVIRTUALの曲名にあったとおり、彼女たちはミューザックをウィードブレイク(#WEEDBREAK)のBGMに活用している。自室でひとりPC画面の前でにやつきながらウィードを吸引するヴェクトロイドの姿は、まるで部屋の外のなにかから逃げようとしているようだった。

 この日、ヴェクトロイドは2回出演し、アンカーの際には衣装をレトロなスタイルに変えていた。彼女はなぜか全角英字でチャットに参加する。繰り返されるウィードブレイク。観客にもウィードや酒の摂取を呼びかける。僕は、ログインしたときに「Daniel Lopatin」なるアカウントが参加者のなかにいたことをチャットに書いた。彼らは知っているのだと思ったが「まじ?」「どうせ誰かの偽アカウントだろ」という反応がかえってきた。事実、僕はたしかに見た。ダニエルとヴェクトロイドのあいだには交流があった(註2)ようだし、彼が見ていても不自然な話ではないと思った。やがて観客たちは口々に「ありがとうダニエル」とつぶやきはじめる。ヴェイパーウェイヴがダニエルの「斜陽会社」=〈サンセットコープ〉からはじまったことを誰もが自明に感じていると言えるだろう。

 フェスティヴァルも終幕に近づき、ストレスがアフターパーティーの会場『Turntable.fm』のURLを告げる。同サイトは閲覧を米国ユーザーのみに限っているため、米国外の観客はここでお開きとなった。ストレスは米国外のユーザーへ丁寧に謝罪しつつ、来場者への感謝の意をなんども書き込んだ。やがてジオデジックとして知られる下城貴博がヴェクトロイドへのラヴコールを書き込んだ。ヴェクトロイドは握りこぶしに親指を立て、ニヤリとした笑みで応える。やがて、音楽は止んだ。時計を見ると午後4時をまわっていた。

 正直に言えば、このフェスティヴァルが終わった瞬間、僕はおおきな虚無感と倦怠感が心の奥底からこみ上げてきた。なにせ、結局のところただのチャットにすぎない。音楽なぞ、ほとんどミューザックの垂れ流しである(註3)。ただただ退屈を空回りするだけであった。部屋を1歩でも出れば、現実がしっかりと待っている。窓の外はいつのまにか夕方だった。日本ならまだ日中だが、米国時間では深夜に、こんなくだらないことを「世界中の孤独なティーンがベッドルームで行っている」(Tomad)(註4)のだ。しかも、ウィードと酒をあおりながら。
 後日、ダラー・ジェネラル=司会のストレスは、ヴェクトロイドの言葉を最後に引用しながら、こんな挨拶を『facebook』に残している。

 とにかく、本当にありがとうと、今夜のイヴェントに来てくれた美しい人々に言いたいです。きみらみんな本気で超最高だよ。タイニーチャットにに来てくれた一人ひとりの力添えなしにSPF420が成功することはなかったでしょう。(出演者への挨拶。斎藤により中略)
 我々は100を突破しました! 134人の参加者が集まったよ、みんな! (135のときにキャプチャーできればよかったけど、ああもう)

 またすぐにみなさんとインターネットで会えることを願っています、
 SPF420: SPF420: Welcome To The Workplace.™
(日本語訳:斎藤)
#SPF420FEST 2.0: WELCOME TO THE NEW ERA:
https://www.facebook.com/events/...


 おおきな喜びが伝わってくる文面だが、彼らにはディスプレイの外へ出てくるつもりがないようにも読める(註5)。はたして、彼らの指す「The Workplace.™」とは、ベッドルーマーにとって逃げ場となる仮想空間なのだろう。無職であることがうかがわれるようなツイートを何度もしているヴェクトロイドが自らへの最大の皮肉として言っているようにも思える。
 だが一方で、ヴェクトロイドはときおり現実空間のパーティーに出演しており、2月に入ってからもマジック・フェイズ(Magic Fades)とともにギャラリーでパフォーマンスをしている。さらに、〈トライアングル〉の主宰バラム・アキャブがヴェクトロイドとのスプリットで7インチをリリースする旨を発表したばかりだ。

 はたして、ヴェイパーウェイヴァーは現実において「仕事場™」を拡張することができるだろうか。
 日本ではプラモミリオンセラーズで知られる鈴木周二がventla名義でヴェイパーウェイヴに触発された作品を発表しつづけており、§✝§(サス)やジオデジックはライヴ(註6)でその地平を切り開こうとしている。それはまた、べつの機会に......。

今日、我々とともに新たな世界へ加わりましょう......よりよい明日のために。

Prism Corp. International
We Know Who You're Working For.™
(日本語訳:斎藤)
札幌コンテンポラリー | BEER ON THE RUG:
https://beerontherug.bandcamp.com/album/-

空はあなたに従います。。。
安全に走行
悔なし

Farewell,
New Dreams Ltd.

(原文ママ)
PrismCorp™ Virtual Enterprises | New Dreams Ltd.:
https://newdreamsltd.tumblr.com/post/38483741858

 2012年、ヴェクトロイドはウェイパーウェイヴのベッドルーマーを引き連れ、「よりよい明日」のための「新たな世界」を目指して飛行した。それが情報デスクVIRTUALであり、セイクリッド・タペストリーではついに空を(下に)従えることに成功したのだ。

 そして2013年、ホロノミックディスプレイが作動した


(註1)
特別編集号 2012 ソーシャルカルチャーネ申1oo The Bible』より。アルバート・レッドワインは『ザ・ニューヨーク・タイムズ』からもインタヴューを受けている

(註2)
昨年の11月末にはヴェクトロイドがOPN(=ダニエル・ロパーティン)に謝罪のメールを送ったとツイートし、同日にOPNも「ヴェイパーされた」とツイートしている

(註3)
なお、このフェスティヴァルの音源や映像の一部が『facebook』のイヴェントページからチェックできる

(註4)
紙『ele-king vol.8』の「キャッチ&リリース」より。ちなみに、トマドが主宰する〈マルチネ〉はシーパンクのイメージを模したダウンロード・ページや、限定Tシャツをリリースしたtofubeatsも情報デスクVIRTUALをお気に入りにあげている

(註5)
対照的に、アダム・ハーパーによってヴェイパーウェイヴの文脈でも語られてしまったファティマ・アル・カディリは、積極的にイヴェントへ出演している。その様子は工藤キキが本サイトでも伝えている

(註6)
サスは音楽的にはウィッチハウスやシンセウェイヴに近いがウェイパーウェイヴの意匠をまとったライヴを行っており、ジオデジックはヴェイパーウェイヴのイヴェントを開催したいとツイートしている

以上-----------------------------------------------

可聴域をこえて - ele-king

「湧声」とは何だろう?
サウンド・アーティストtmymturによる音響作品『呼応』が来月リリースされる。サウンド・アートとリラクゼーション・ミュージックとの間をきわどく縫い合わせる実験作の登場だ。「声」というものが持つ一種の神話性を、周波数という科学で微分しながら、さらに強固な神話として再度呼び込むかのような音響構築。タネも仕掛けも精緻に施されているが、タネや仕掛けだけでは分け入れない「湧声」という音の森に、身体と心を預けてみたい。

幾千の声が織り成す音の創造物「湧声」

人間の可聴域をこえる超音波を含むtmymtur独特の声を5000層以上重ね生み出される音の創造物『湧声』。
そのひとつである"05.09.2012/0"が、様々なサウンドアーティストたちの意思、またその奥にある無意識の領域と呼応し、新たな創造物へと変化を遂げる。

【「湧声」とは】

tmymtur独特の声を、超音波を録音可能なマイク、録音機器を使用し、5000層以上重ねることで有機的に溶け合い生まれた、声のみによる音の創造物。
tmymtur独特の声質は、超音波領域を含み、周波数20kHz以上の人間の耳では聴き取れない可聴域を超える高周波が発生しています。
自然の音にも超音波は多く含まれ、川のせせらぎや木の葉の間をそよぐ風の音など、人間が心地よいと感じる自然音のほとんどに含まれています。これらの成分は人間の脳をリラックスさせる効果をもつともいわれています。

【Profile
tmymtur
website : https://ensl.jp/tmymtur

声に含まれる超音波による知覚のない感覚と、多重声の生気溢れる音楽的共感覚を作用させる独自の手法で、心の深層に真理を導く音楽を探究する。
2012年超音波を録音可能なマイク、録音機器を使用し、人間の耳では聴く事の出来ない超音波を含む声を5000層以上重ね、声のみで発生させる音の創造物「湧声」を発表。
2013年には、可聴域を越える20kHz以上の高周波の発信を可能にした音響設備をアサヒ・アートスクエアに構築。「湧声」を発生させ、意識の領域にはない、すべてのものが繋がる共有する何かを感じさせる音響空間創出サウンドアート・ライブを試みる。

【作品情報】
アーティスト名: tmymtur
タイトル名: 呼応
リリース日:2013年3月18日
フォーマット: digital (96kHz/24bit)
時間: 64:41.622
レーベル名: ENSL AMDC
品番: en005
値段: 3,150 JPY (Tax in)
バーコード: 4582466630015

Track listing:
"05.09.2012/0" Taylor Deupree remix
"05.09.2012/0" Yui Onodera remix
"05.09.2012/0" i8u remix
"05.09.2012/0" Celer remix
"05.09.2012/0" Christopher Willits remix
"05.09.2012/0" Mark Harris remix
"05.09.2012/0" Sogar remix
"05.09.2012/0" Opitope remix
"05.09.2012/0" Stephan Mathieu remix



Felicity Live - ele-king

 七尾旅人や前野健太、やけのはらやドリアンなどのリリースで知られる〈フェリシティ〉主宰のイヴェントが3月6日、渋谷のwwwで開催される!!! その日、新作『NEWCLEAR』をリリースするアナログフィッシュ、3月18日に待望のセカンド・アルバム『SUNNY NEW LIFE』をリリースするやけのはら、そして、その日に雑誌『快速マガジン&東京ビデオ』を刊行する快速東京(いまもっとも好き嫌いが分かれているダンス・ロック・バンド)の3組が出演です。みなさん、新曲をひっさげてのライヴなので、要チェックですね。ちなみに横浜Fマリノスのゲームシャツを着て行くと割引が......ないそうですね、はい、お間違えなく。
 蛇足ですが、『快速マガジン』内では『ニュー速東京』という、くっだらない愚にもつかない企画ページを野田努+三田格が担当しています(採用されていればですが......)。ele-ingとしては、見るのが怖いです。しかし、快速東京のライヴは見たほうがいいでしょう。会場が踊ってばかりの国になります。新曲を聴きたいです。

 会場では快速東京、一ノ瀬雄太デザインによるTシャツも発売します。3月6日、会場は渋谷www。

3.W.3. Felicity Live At WWW, March 2013.
THREE IMAGINARY ACTS. フェリシティ、三月の発売記念スリーマンライヴ!

出: Analogfish 快速東京 やけのはら

日程:3/6(水)
会場:東京 shibuya www
開場 / 開演:18:00 / 19:00
料金:前売 ¥3,000(税込・1ドリンク別/整理番号付)

チケットぴあ(189-990 ):https://t.pia.jp/ 電話予約:0570-02-9999
ローソンチケット(74995):https://l-tike.com/ ※電話予約なし
e+:https://eplus.jp/

お問合せ:会場:03-5458-7685

企画制作:felicity / SPACE SHOWER NETWORKS INC.

新しい宇宙が見えるかもしれない - ele-king

 ジェフ・ミルズ×毛利衛。思えば意外な組み合わせではないのかもしれない。昨年ふたりは初めて対面し、お台場の日本科学未来館ではトーク・セッションも行われたが、ジェフが宇宙に寄せるあまりにも一途で純粋な思いは、彼の質問や、毛利の回答に目を輝かせる様子からもありありと伝わってきた。また一方で、毛利の宇宙観も近年では「ユニバソロジ」という科学者としてはいっぷう変わった概念へと結実していて、その広がりのなかに今回のようなコラボレーションが生まれたことは不思議ではない。

 トーク・セッションで印象に残った話のひとつに、光(闇)の体験談がある。それは「宇宙の黒を知っていますか」――言い回しに異同はあるかもしれないが――というような問いかけからはじまる。われわれが普段「黒」と認識している色は、光の反射によって認識されている「黒色」だ。ざっくりと言えば、光が黒いものに当たり、それが反射され、われわれの目に「黒」という色が映っている。だが宇宙の黒は違う。宇宙では光が返ってこない。光は行ったきり戻ってこず、そこに存在するのは、何の反射でもない、まさに無の光(闇)。あの真っ暗さは黒とは明らかに違うのだ......。
 『ホエア・ライト・エンズ』というタイトルからは、思わずこの話が思い出された。光が終わるところとは宇宙なのか、それとも。

 毛利衛によるオリジナル・ストーリーと、それをもとに制作されたというジェフ・ミルズの最新音源を収めた『ホエア・ライト・エンズ』。これは貴重なコラボレーションであるばかりでなく、新しい宇宙のイメージが歴史に書き重ねられる瞬間であるかもしれない。アルバム収録は初だというリミックス音源も期待される。

ジェフ・ミルズの新作『Where Light Ends』は日本科学未来館館長・宇宙飛行士 毛利衛氏とのコラボ!!

テクノシーンを代表するDJ/プロデューサーであるJEFF MILLS(ジェフミルズ)。伝説的なテクノ・ユニット、Underground Resistanceの一員として活動していた活動初期、そしてソロとして活動を開始してから現在に至るまで、“宇宙”というテーマにこだわり続け、多くの作品の中で表現し続けてきたアーティストだ。

昨年、自ら主宰する音楽レーベル〈Axis Records〉が創立20周年を迎え、その活動の集大成として20周年記念盤『SEQUENCE』をリリースし、同時に新章へと向けた展開を開始、その第一弾となる作品はなんと、1992年、スペースシャトル、エンデバーに日本人として初めて搭乗した毛利衛氏とのコラボ作品だ。

現在、日本科学未来館館長を務める毛利衛氏とJEFF MILLSは昨年2012年に初対面。様々な意見が交換されると同時に、毛利氏はJEFF MILLSに未来館の「Geo-Cosmos」(1000万画素を超える高解像度で、宇宙に輝く地球の姿を映し出す有機ELパネルを使った世界初の地球ディスプレイ。日本科学未来館のシンボル展示)が展示されるシンボルゾーンで流れる音楽の制作を依頼(これまでは坂本龍一氏によるオリジナル音楽が流れていた)、またJEFF MILLSは、エレクトロニック・ミュージックとスペーストラベルを毛利氏とミックスしていくというアイデアを提案、毛利氏が快諾したことにより、2つの音楽プロジェクトが始動することになった。

JEFF MILLSが音楽を製作するにあたり、実際に宇宙空間に身をおいた毛利氏の宇宙観を共有するため、毛利氏がオリジナル・ストーリーを作成、これを元にジェフ・ミルズは最新作『Where Light Ends』を制作したということで、2人の出会いによって誰も想像し得なかったコラボレーション作品が誕生することになる。

なお、この作品は2CDとなっており、DISC2には日本人リミキサー陣による作品が収録される予定。過去、JEFF MILLSの作品をリミックスしたのは、KEN ISHIIとBEN SIMSの2人のみで、これらの楽曲も数量限定の12インチアナログとして発売されたのみ。JEFF MILLSの楽曲のリミックス作品が収録されるのは今回が初めてとなるということなので、そのラインナップが気になるところだ。

JEFF MILLSの新作「Where Light Ends」は3月27日にU/M/A/Aより発売される。

【商品情報】
テクノシーンを代表するDJ/プロデューサー ジェフミルズと日本科学未来館館長・宇宙飛行士 毛利衛による最強宇宙コラボ!

JEFF MILLS
「Where Light Ends」

2013.3.27 release


Cat No.:UMA-1015-1016
価格:¥2,580 (税抜 ¥2,457)
仕様: 2CD / ブックレット / ジュエルケース

[DISC 1] "Where Light Ends" オリジナルアルバム
1. T-Minus And Holding
2. STS-47; Up Into The Beyond
3. Light Of Electric Energy
4. Black Cosmic Space
5. Earth And The Geo-Cosmos
6. Life Support
7. Centerless
8. The Inhabitants
9. Deadly Rays (Of A Hot White Sun)
10. Extra Solar Planets (WASP 17b)
11. Way Back

[DISC 2]リミックス集
日本人アーティスト達によるリミックス曲を収録。

[ブックレット]
毛利衛(日本科学未来館館長・宇宙飛行士) によるオリジナルストーリーを収録したブックレットを封入、Jeff Millsによる作品解説、各リミキサーによる作品解説収録予定。

interview with DIVORCE Music (Darcy Spidle) - ele-king

「モントリオールは不正な行政の不正な都市であり、多くの狂った計画と同時に、しかし、多くのマイナーな奇跡がある美しく腐った町だ」と、GY!BEは語っているが、その「多くのマイナーな奇跡」は、モントリオールからずっと東の小さな小さな町、日本人のほとんどが記憶にないであろう、ハリファックスでも起きている。その小さな小さな町からさら東に離れた、北大西洋沿いの小さな小さな小さな村のシェゼットコックには、20年以上も続いているレーベルがある。名前は〈ダイヴァース〉、昨年末リリースされたユール・ネヴァー・ゲット・トゥ・へヴンのデビュー・アルバムが都内のレコード店で話題となったことで、ささやかながら注目を集めている。

 〈ダイヴァース〉のレコードを手にして、鼻を近づければ、潮のにおいがするかもしれない。いや、気のせいだろう。だが、レーベルを主宰するダーシー・スパイドルが、近場の海でサーフィンをやりながら、作品を出していることは本当だ。その合間に彼は、地元のライヴやフェスティヴァルに協力している。
 それにしても、ウェットスーツを着たごつい男が、ティム・ヘッカーやグルーパーを愛聴するというライフスタイルは、趣味の良い日本人からすると奇妙に見えるかもしれない。波に乗ったあと部屋に戻って、マイ・キャット・イズ・アン・エイリアンを聴くなんて。
 しかし、波の音とドローンはミックスされ、北海道よりも緯度が高い場所で暮らしながら、サーフボードはエレクトロニック・ミュージックの海を浮かび、レイドバック音楽を背後に、ピエール・バスタインやエイメン・デューンズを聴いている。それは、インターネットが普及したとんに、わざわざ限定のアナログ盤やカセットのリリースが拡大したこととも関連しているだろう。つまり、「多くのマイナーな奇跡」が起きたことで切り崩され、創出された。それがいま我々が接しているDIY文化、いわゆるアンダーグラウンド(インディではない)・シーンなのだ。

多くの、そして小さなレーベルがカナダにはある。それらレーベルはこの国に、強いシーンを育てようとしている。君が知っているようなカナダのアーティストは、最初はみんなカナダの小さなレーベルからデビューしている。この数年で、カナダの音楽シーンはとんでもない成長を遂げている。

あなたのバックボーンについて教えてください。

D:もともとは、自分の音楽を発表するために〈ダイヴァース〉をはじめた。僕はまだ若く、地元の音楽産業をちょっと経験したぐらいだった。でも、産業は僕のものではなかった。僕の求めているものではなかったんだ。そのとき、僕は、音楽ビジネスの怖さを覚えたと言っていい。
 僕は自分の作品を出して、それをひとりでやりたかった。最初はCDRのリリースからはじめた。初期のリリースは、まったくの手作りだった。リリースのスケジュールを守るために、ずいぶんと労力を要したものさ。
 やがて、僕はディストリビューターや製造業者と付き合うようになった。そして、自分以外のアーティストの作品のリリースもはじめる。だけど、基本は変わっていない。僕は、ブラック・フラッグの〈SST〉から大きな影響を受けている。80年代前半、アメリカのパンク・ロックは、北米におけるインディペンデント・レーベル文化の基礎を築いた。その流れで生まれたモンリオールの〈エイリアン8〉というレーベルからもインスピレーションを受けた。日本のメルツバウ、マゾンナ、中嶋昭文など、素晴らしい実験的な音楽をたくさん出していたからね。

レーベルは何故〈ダイヴァース〉(別離/離婚)と名付けられたのでしょう?

D:僕がメインストリームの音楽産業から離れたかったからだ。僕は、本当に産業を嫌悪した。〈ダイヴァース〉は、絶対的な「別離」の試みだった。レーベルをはじめたばかりの週末のことだった。僕は自分の住んでいる町のポストにこんなフライヤーを投函してまわった。「音楽はゴミだ。音楽と絶縁せよ(Music is Garbage.DIVORCE Music)」。ずいぶん愚だったけれど、それがそのときの僕だった。


シェゼットコックにあるこの家で暮らしながら、レーベルを続けている

この10年、カナダのアンダーグラウンド・シーンは他国との交流も盛んで、とてもたくさんの成果を生んでいると思います。

D:まさにその通り。この10年はカナダの音楽にとってとても重要な時期だった。大きな都市のシーンはそれぞれ特徴を持って発展している。また、インターネットによって、アンダーグラウンドの音楽家たちは10年前より自由な活動をなしえるようになった。また、ここカナダには、若干とはいえ、適切なアート資金提供プログラムがある。カナダの才能ある人がアーティストでいられることは現実的なオプションのひとつなんだ。
 といっても、それは簡単なことではない。ライヴ・シーンは、アンダーグラウンド・ミュージックをサポートするにはまだ小さい。本当に成功するためには、アメリカとヨーロッパに進出しなければならない。いくつかの実務業務と財政のため、それは多くのカナダのアーティストにとって大きなタスクとなっている。

あなたは、レーベル活動のため、音楽が盛んなモントリオールに引っ越しませんでしたよね?

D:モントリオールはたしかにカナダでもっとも栄えた音楽都市だ。多くの友人、バンド仲間もモントリオールに移住している。しかし、僕はモントリオールに行かなかった。ノヴァスコシアに留まって、ここを離れるつもりはない。

ハリファックスがもっとも近い地方都市ですが、そこには音楽シーンがありますか?

D:ハリファックスには、強い音楽シーンがつねにある。ホントに小さな町だけれど、そこには、何百ものバンドとアーティストがいる。アンビエント、エレクトロニック、それからハードコア・パンクまで、あらゆるジャンルがある。
 レーベルもいくつもある。たとえば〈Electric Voice〉〈Snapped in Half〉なんか。しかも、たくさんの国際的なフェスティヴァルもある。「Halifax Pop Explosion」、我々が関わっている「OBEY Convention」。いろいろある。
 僕たちの町は小さいから、カナダの大都市からもアメリカからも孤立しがちになる。そこからバンドを連れてくるのも難しい。だからこそ逆に、地元のオーディエンスとバンドは互いに深くインスピレーションを与え、支え合っていると言える。それが音楽コミュニティの形成に役立っているんだ。


USのフリー・ジャズ・ドラマー、Jerry Granelliも〈ダイヴァース〉から作品を出している。
ハリファックスでの演奏 (photo by Pierre Richardson)


アルバムを控えているJfm@OBEY Convention 5 in Halifax (photo by Pierre Richardson)


Darcy and Courtney@Electric Voice in Halifax

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大量生産の果てに生まれたCDは、いまや無限に複製されるデジタル音楽となっている。ゆえに、アナログ盤とカセットが限定盤(有限)としてリリースされることには意義がある。リスナーにとっても、100個しか作られないカセットのひとつを買うことは、急進的で、冒険的な行為なんだ。

グルーパー、USガールズ、ゲイリー・ウォーなどといった僕らの大好きな実験的なアーティストと〈ダイヴァース〉はとても友好的な関係にあるようですね。

D:僕はハリファックスでその人たちがやるときはいつもサポートしている。その人たちの演奏を聴いたときは、本当にぶっ飛ばされた。彼らはすでに世界的クラスのアーティストだった。
 僕が彼らの音楽を好きな理由は、音楽のなかで自分の本当の感情を伝えるために実験的な手法を取っているというところにある。進歩的な考えと感情との組み合わせが、僕は彼らの音楽のなかでもっとも惹きつけられる点だ。

いままでどのくらいリリースしているんですか?

D:正確な数はもう憶えていない。カタログ上では、いま52枚リリースしたことになっている。そこには、2~3のデジタル・リリース、アナログ盤、カセット、それからジンも含まれる。あともうすぐ発表される『Lowlife』という映画との関連作品もある。


映画『Lowlife』から

インターネットの普及がいろいろなものを破壊的なまでに変えてしまいました。カナダはいかがでしょうか?

D:カナダも日本と同じだと思う。ほとんどの音楽はネット上にある。音楽リスナーにとっては良い時代だと言えるだろう。アーティストにとっても自分の露出が増えたわけだから、ポジティヴな効果もあると言えばある。だが、供給は増え、需要は減少している。しかも、多くのリスナーは、アルバムが商品だった時代にくらべて、音楽にありがたみを感じていないかもしれない。
 とはいえ、こうしたなかで前向きな活路を見いだしているアーティストもいる。たとえばティム・ヘッカー。ツアーをして、限定盤を発表する。グルーパーもそういうタイプだ。彼らは実験的なやり方で生計を立てている。10年前、彼らのような規格外のアーティストが世界的な支持を得ていたとは思えない。これは、自分たちが本当に尊重したいアーティストとレーベルを自分たち自身でサポートするという、リスナーの純粋な気持ちがもたらしている事態だ。実際、多くのリスナーはその選択を選んでいるし、ますますそのようになると僕は思っている。

オンライン・マガジンの『Weird Canada』を見ると、多くのレーベルやアーティスト、たくさんのカセットのリリースも見つけることができます。カナダのアンダーグラウンド・シーンは健康な状態だと言えますか?

D:そう思う。多くの、そして小さなレーベルがカナダにはある。それらレーベルはこの国に、強いシーンを育てようとしている。君が知っているようなカナダのアーティストは、最初はみんなカナダの小さなレーベルからデビューしている。『Weird Canada』は、アンダーグラウンド・コミュニティを育て、そして繋ぐ役割をしている。この数年で、カナダの音楽シーンはとんでもない成長を遂げている。

今日、アンダーグラウンド・シーンでは、アナログ盤とカセットでのリリースが主流になっています。こうした傾向に対するあなたの意見を聞かせてください。

D:デジタルの飽和状態が続くなか、アナログ盤のリリースは有益だと思う。単純な話、音楽リスナーにとって本当に好きな盤であるなら、手元に置きたいと思うだろう。そして、アナログ盤があって欲しいと願うと思う。大量生産の果てに生まれたCDは、いまやデジタル音楽として無限に複製されている。ゆえに、アナログ盤とカセットが限定盤(有限)としてリリースされることには意義がある。リスナーにとっても、100個しか作られないカセットのひとつを買うことは、急進的で、冒険的な行為なんだ。
 作品とリスナーとの関与の仕方についても、こうしたリリースには考えさせられるものがあるんじゃないかな。デジタルに複製され、ばらまかれたものを「黙って買え」と言われるより、よほど身体的な関係性が生まれるわけだから。

あなたが昨年出したYou'll Never Get To Heavenのデビュー・アルバムがとても気に入りました。あなたは彼らのどこが好きなんですか?

D:YNGTHは、その実験性と感情へのアクセスがスムーズなところが良いと思う。実に珍しい混合の仕方をしている。初めて聴いたとき、瞬く間にその世界にハマってしまった。従来のポップス構造の範囲内で、彼らのような合成の仕方でアンビエントの組成物を利用することは、珍しいと思っているんだ。彼らは大きなバンドだと思っている。この先、将来、彼らといっしょに何かできると良いと思っている。

この先の予定について教えてください。

D:4月は、トロント電子音楽とヴィジュアル・アーティスト、JfmのためのLPを控えている。そして我々は、ベルリン/トロント作曲家エイダン・ベーカーによるとびきり重たいドローンのLPも出すよ。



最後に、あなたのオールタイム・トップ10を教えてください。

D:それはタフな質問だ。以下、大きな影響をもらった作品を挙げておく。これらの作品はつねに聴いている音楽ではない。しかし、明らかに自分が取り憑かれたように聴いた作品だ。僕に新しい世界の扉を開けてくれた作品なんだ。

Alice Coltrane - Journey in Satchidananda
Kraftwerk - Radio Activity
Ornette Coleman - The Shape of Jazz to Come
John Fahey - Days Have Gone By Vol. 6
Black Flag - In My Head
Pharoah Sanders - Karma
The Boredoms - Vision Creation Newsun
Merzbow - Pulse Demon
Discharge - Hear Nothing See Nothing Say Nothing
Peter Brötzmann - Machine Gun


ダーシー・スパイドル

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