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You'll Never Get To Heaven

You'll Never Get To Heaven

You'll Never Get To Heaven

Divorce

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野田 努   Feb 01,2013 UP

 Head of Chezzetcook......という言葉をそのままコピペして画像検索する。〈ディヴォース〉すなわち「離婚/別離」を意味する言葉を名前としたレーベルは、カナダと言ってもずっと東、出島のように北米大陸から大西洋に突き出ているノヴァ・スコアシア州の海外沿いの小さな村、シェゼットコックにある。ダーシーは海でサーフィンするかたわら1993年からレーベルを運営しているらしい。昨年はマイ・キャット・イズ・アン・エイリアンのようなイタリアの電子音楽デュオのアルバムや、母国カナダのディーオンのカセットも出している。基本的にはエクスペリメンタルな方向性を好んでいる。昨年末にリリースしたユール・ネヴァー・ゲット・トゥ・へヴンのデビュー・アルバムは、このレーベルにとってポップにアプローチした数少ない1枚となったわけだが、これが日本でかなりの数売れた。と、ダーシーからメールが来た。

 ユール・ネヴァー・ゲット・トゥ・へヴン=バート・バカラックの作曲したなかでもよく知られる1曲だ。60年代の、ディオンヌ・ワーウィックが歌っているヴァージョンが有名だが、ジム・オルークのカヴァー・アルバムにも当然収録されている。
 ユール・ネヴァー・ゲット・トゥ・へヴン(YNGTH)は、シェゼットコックとは反対側の、モントリオールを越えて、トロントも越えて、そしてデトロイト方向に向かって進んでいくとある、ロンドンという町を拠点とする男女ふたり組だ。バカラックの曲名を引用していることから、レトロないまどきのドリーム・ポップを予想されることと思うが、それはたぶん正解で、たぶん間違っている。この、繭のなかのようなくぐもった音響とチリノイズとの協奏曲は、ザ・ケアテイカーを彷彿させる......ところもあり、同時にコクトー・ツインズめいたゴシックなニュアンスも含んでいる。
 近代社会の完成に抗うようにネオゴシックも際だったという論を読んだことがあるが、ローファイやリヴァーブというよりも、この"籠もった感覚"が昨今のDIY電子音楽の多くに共通しているもののひとつだ。そしてこの感覚は、3月上旬に発売予定の粉川哲夫と三田格の共著『無縁のメディア』で解明されていることかもしれない。

 先日、ある雑誌社から「渋谷」についてのエッセイを依頼された。僕は、90年代後半を渋谷と代官山のちょうど中間にあった集合住宅で暮らしていたので、渋谷、代官山、恵比寿あたりは散歩コースだったのだけれど、しかし、そこは、現在の渋谷、代官山、恵比寿あたりとはまるで別の町だった。景観も、住人も、家賃も、空気も、そして町というトポスの意味においても。僕が渋谷を歩かなくなったのではなく、僕が歩く渋谷がなくなったのだということをあらためて感じながら、YNGTHのぬるいダウンテンポを聴き続けた。この作品が日本で売れたのは、必然だったと言えよう。歩く町を失った人たちが彷徨う場所は......たとえ天国に行けなくても。

 それにしてもカナダの音楽シーンは、この10年素晴らしい。GY!BEやアーケイド・ファイヤー、グライムスばかりではない。ゲイリー・ウォー、グルーパー、USガールズ、ブラック・ダイスのエリック・コープランドもカナダのアンダーグラウンド・シーンと深く関わっている。詳しくは『Weird Canada』をチェック。

野田 努