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三田 格   Dec 02,2011 UP

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 2011年を1曲で表せと言われれば(言われないけれど)、ホーリー・アザー「ウイズ・U」を僕は選んでしまうだろう(映画で1本と言われれば『スコット・ピルグリムvs元カレ軍団』か『メランコリア』か、マンガで1冊と言われれば桜場コハル『そんな未来はウソである』、ネコで一匹と言われれば......)。

 そして、ホーリー・アザーの新作が待ちきれないという人に似たようなものを(笑)。寡作ではあるものの、着実に話題作を送り出し続けているアレイ・キャットのレーベルからイレルヴァントのデビュー・アルバム。ダブステップとウィッチハウスの架け橋となったホーリー・アザーをさらにリヴァーブの海に沈めたような展開で(ウイッチネスが増したというか)、まさにベリアルのUKガラージ版といった内容になっている(ショップによってはチル・ステップ、もしくはハード・ワックスなどはアンビエント・UKガラージとアナウンス)。

 ドラムンベースのリズムを使っている曲もあったりするものの、リズム感があまり巧みとは言いがたいのでホーリー・アザーのような官能性には欠けるし、せっかく面白い音を多用しているわりには、ウィッチネスを強調したいせいか、音の分離もそれほどよくはないので、どうしても雰囲気モノとして聴いてしまいがちだけれど(別にそれでいいんだけど)、逆にいえば、チル・ステップというような呼称を持ち出してくるほど極端なものをダンスフロアが求めているともいえ、異形の存在感には事欠かない。"ノー・ラヴ""ゼロ以下""自傷""裏切り"と、曲名もネガティヴなことこの上なく、『多分、大丈夫だと思う』という意に取れるアルバム・タイトルも思春期の王道を醸し出す。

 映画『アンノウン』を観ていたら、ベルリンのクラブでクラウドがジョイ・ディヴィジョンを聴きながら踊りまくっているシーンがあり、そういえば僕もジョイ・ディヴィジョンはダンスフロアで出会った音楽だったということを思い出した。ダンスフロアで流れる音楽が内省的で重苦しいものを排除しているというようなことはいまも昔もなかった。コクトー・ツインズしかり、セイバーズ・オブ・パラダイスしかり。むしろ、ある種の雰囲気に埋没できることがダンスフロアの強みといえ、ウイッチハウスというのはそれを極端にしたシーンだといえる。外からの見た目はかなり気持ち悪いらしいけれど(ジョン・レイト談)、ジェイムズ・ブレイクといい、ボン・イヴァーといい、この種の雰囲気とリンクしてしまう傾向はあらゆる場面で散見できる。フェネスも関わり出したブラック・メタルがその背景にはどこまでも広がっている。

 ゴシックといわずにウィッチ(ネス)というのはなるほどで、ダンス・ミュージックに関する限りはどこかインダストリアルをオミットしている部分があるのだろう。インダストリアル・ミュージックのフロントラインはポスト・クラシカルに移行していると僕は思っているので、ゴシックが担うべき重圧感はそちらに任せられるという事情もあるのではないだろうか。ウイッチネスとは、まさにその予感であり、アニマル・コレクティヴやディプロに対するカウンターの位置にある。あるいはゼロ年代のアンダーグラウンドを主要な棲家としていたノイズ・ドローンの浮上ないしは変形と考えてもいいか。

 意外ななリンケージだけど、スペーシー・ドローンのマイ・キャット・イズ・アン・エイリアンもこの数年でじわじわとウィッチネス効果を高めてきた。『エレキングVol.2』にも書いた通り、トリノの工業地帯からアルプス山中にスタジオを移したことで、手法的には同じでもアーシーな響きへと様変わりしたことで、宇宙を漂うのではなく、森の中を彷徨っているようなニュアンスを放つようになってきたからである。イフェクターを通してギターやピアノが乱舞する"#3"の美しさは彼らのなかでも新境地といえる。そう、20年目のアリオ・ダイといい、ベルルスコーニのイタリアはIMFの監視下に入るというし、一体、国民感情に何をもたらしているというのだろう......(ベルルスコーニのニュー・アルバムも出るというのだから意味がわからない......)。

三田 格