「Nothing」と一致するもの

interview with MARQUEE BEACH CLUB - ele-king


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 ぶっ壊すとかNOを突きつけるとか背くとか、あるいは無言を通すとかのかわりに、ここ10年くらいのインディ・ミュージックにおいては、なにかと建設的で、計画的で、コミューナルなヴィジョンを感じることが増えた。破壊よりも設計がクールだというのは、音楽にかぎらずこの間の時代性を反映する志向だったとも言える。水戸の6人組バンドMARQUEE BEACH CLUBも、その名を構成する3語がすべて「人の集まる場所」を暗示するように、ひとつの「設計」を試みるバンドのようだ。マーキーのような、ビーチのような、クラブのような──バンドではあるけれども、そんな場所性をもった何かとして、音楽以外のものも巻き込みながら発展していきたいという発想。それはユートピア的でありながらもわりと切実な希望を含み、酷薄な時代を裏返しに見せてもいる。

 2008年から2010年あたりのインディ・ポップ──シンセ・ポップ・リヴァイヴァルに彩られ、パッション・ピットやフレンドリー・ファイアーズの対向にチルウェイヴが並走していた時期の影響を素直ににじませる彼らは、ロックとダンスの狭間で空想のダンスフロアを呼び寄せ、リヴァイヴァルでしか触れたことのないポストパンクやシューゲイズと戯れ、イーノを知らずしてシンセの輝きに目を細める。どこか冷めた視点も持ちながら、正直に自分たちのちいさな時代を呼吸し、控えめに楽園を夢見ている。
そもそもはコイブチマサヒロのベッドルーム・プロジェクトとしてはじまったこの音楽が、無邪気さと素直さを失わないままメンバーという個々のヴィジョンを得て肉付けられ、バンドとしてひとつの場所を開き、とりどりの花を咲かせていることを肯定したい。

 それでは、水戸からやってきた移動式ユートピアにしばし瞳を凝らしてみよう。

■MARQUEE BEACH CLUB / マーキー・ビーチ・クラブ
東京を拠点に活動するエレクトロ・ロック・バンド。2015年4月から都内で活動を始め、正式な音源リリース前でありながら、下北沢インディーファンクラブやGFB'15(つくばロックフェス)等のフェスに出演。2016年4月には自主リリースにこだわった初音源『wonder ep』を一部のタワーレコードやレコード店で限定販売。同年6月22日には7インチシングル「eye」をリリース、Apple Music「今週のNEW ARTIST」に選出される。8月、ファースト・アルバム『Flavor』を発表する。

メンバー:コイブチマサヒロ(Vo.Gt.Syn.)、シマダアスカ(Vo.Per.) 、ミヤケマサノリ(Gt.Syn.Per.Cho.)、カワマタカズヤ(Gt.Cho.)、マコトニシザワ(Ba.Syn.)、イシカワヒロヒサ(Dr.Cho)


曲をつくるならずっと残るものにしたい、っていう思いが根本にあったんですよ。それには、みんなが歌える曲──たとえば合唱とか、男女が歌えるものじゃないといけないなと。(コイブチマサヒロ)

男女ヴォーカルでいこう、っていうのは最初から決まっていたコンセプトなんですか? バンドを大きく特徴づける部分ですよね。

コイブチマサヒロ(以下、コイブチ):そうですね。曲をつくるならずっと残るものにしたい、っていう思いが根本にあったんですよ。それには、みんなが歌える曲──たとえば合唱とか、男女が歌えるものじゃないといけないなと。前提として男女が歌えるようなバンドをつくって、それからリリースしなきゃなって思いました。

それはおもしろい考え方ですね。「男女が歌える」というのは、キー的な意味で?

コイブチ:キー的な意味ですね。僕ら二人が歌えれば、基本的には男性も女性も歌えるなって思って。

なるほど、口ずさめるようにする取っ掛かりですね。コイブチさんの自我を薄めたいというようなことではなくて?

コイブチ:そういうことではないんですけどね(笑)。憧れている海外のバンドが女性ヴォーカルを入れていたりするので、そういう影響はあるかもしれません。

なるほど。声なんかも、ある程度「こういう人がいいな」って思い描いていたわけですか?

コイブチ:いえ、あまりそこはなかったんですけど、ふたを開けてみたらすごく声の性質とかが合っていて……すごくいい感じに声が乗ったし、彼女は僕に無い部分を持っているなって感じたりしました。何より、僕らは茨城の水戸の人間が集まっているバンドなんですけど、水戸の中でいちばん僕の曲を解釈してくれるのが(シマダ)アスカちゃんなんじゃないかなって思えたところがあったんですよね。

へえ。すでにシマダさんは活動されてたんですね。

コイブチ:シンガーソングライターとして活動されていて、そのライヴはよく観に行ったりしてたんです。

シマダアスカ(以下シマダ):コイブチさんはお世話になっている先輩、という感じでした。コイブチさんの前のバンド(STELEOGRAM)も観に行ったりしていて、とても好きだったので、誘ってもらえてうれしかったです。

コイブチ:なんか、改まった感じになって恥ずかしいですね(笑)。

あはは。しかし、ハモる部分もありつつも、かなりびっしりユニゾンでいきますよね。

コイブチ:そうですね、あえてユニゾンにしていて。やっぱり「みんなが歌えるように」っていうところを意識してるんです。二人あわせて一つのヴォーカルみたいなイメージで曲はつくってますね。レコーディングしたものをどのテイク、どの段階でOKにするかっていうのも二人で決めてます。

「コーラス」って言われちゃうと、違うなって思います。ヴォーカルだと思って歌ってて。(シマダアスカ)

たしかに二つで一つですね。そうなると、シマダさんの歌い手としてのエゴってどんなふうに出てくるんですか?

シマダ:そうですね……「コーラス」って言われちゃうと、違うなって思います。ヴォーカルだと思って歌ってて。コイブチさんがメイン・ヴォーカルとして前に立っていますけど、私はそれを食うぞ! って思ってます。

(一同笑)

シマダ:コイブチさんがいないとマーキーじゃないんですけど、私も、私の声がないとマーキーじゃないって思ってますね。

そうですね。それはすごくわかります。詞だったりメロディみたいな部分にシマダさんが浸食していくことはないんですか?

シマダ:コーラス……ですかね。コイブチさんがメロを出してくださるんですけど、ハモりどうしようかねって話になると「こういうのどうですか!」って提案します。それが、コイブチさんにとっては新しいものだったりすることはあるみたいですね。

コイブチ:やっぱりシンガーソングライターとして活動してきたから、「曲をどう解釈して(コーラスを)付けていこう?」ってふうに考えてくれるんですよね。だからコーラスについてはおまかせしている感じです。いいメロをつけてくれますから。そういうところにエゴみたいなものは出してもらえているのかなと思います。

バンドだからこそ出せるエゴですね。そのあたり他のメンバーの方にもお訊きしたいんですが、まず前提として、このバンドのそもそもの出発点は、コイブチさんのベッドルーム・プロジェクトみたいなものだったんですかね?

コイブチ:そうですね。

それを肉付ける存在が5人集まってくれたという。それはコイブチさんからのお声掛けですか?

コイブチ:みんな、「この人だったら」ってところで声をかけさせてもらって。ドラムのイシカワくんとかは前のバンドからいっしょにやってたんですけどね。前のバンドではヴォーカルもやったことがなくて、ギターしか弾いてなかったんです。で、新しくバンドをはじめるにあたっては、やっぱりずっといっしょにやってきたドラムじゃなきゃ歌えないなって思ったんですよね。あとは、家でいっしょに音楽の話をしながら飲んだりした間柄というか(笑)、音について共有できる仲間を集めた感じですね。

新しくバンドをはじめるにあたっては、やっぱりずっといっしょにやってきたドラムじゃなきゃ歌えないなって思ったんですよね。(コイブチ)

ドラムが大事というのは、やっぱりリズム・コンシャスなバンドなわけですしね。特に重要だというのはわかります。カワマタ(カズヤ)さんはどんな感じで入られたんですか?

コイブチ:カワマタさんは大学の先輩で、同じ研究室の一コ上の人なんです。いつもいっしょにご飯を食べたりしながら音楽の話をしてた、僕の大学時代でいちばん近かった人です。

学部はどちらなんですか?

コイブチ:工学部なんですよ。

シマダ:ははは。

コイブチ:なんで笑うの?

(一同笑)

そっちの選択肢はなかったんですか?

カワマタカズヤ(以下カワマタ):そっちはぜんぜんで。ふらふらしてたんです(笑)。

コイブチ:だから、これは声を掛けるしかないなと思って。突然連絡して、新しいプロジェクトをやろうと思うんですけど、ギター弾いてもらえませんかって誘いました。学生時代から活動していて、オリジナルをやっていたわけではないんですけど、いろんなバンドでギターを弾いて、どこでも一つ抜きんでるというか、目立っていたんですよね。

へえ。印象ですけど、カワマタさんにはちょっとポスト・パンク的な根っこがあったりします?

カワマタ:僕は、何ですかね、ポスト・パンクとか。でも基本的にはオルタナですね。アメリカの方の、うるさそうなバンドが好きですね。

グランジ的な。

カワマタ:グランジ的な。

髪型とかそうですよね。

カワマタ:けっこう最近なんですけどね、これは(笑)。どこまで(伸ばしっぱなしで)許されるのかなって。

(一同笑)

いざ入ってみたら「ミヤケ、シンセサイザー弾いてみようか」って言われて。「僕、弾いたことないんですけど」って言ったら、「こうやれば音が鳴るから!」って(笑)。(ミヤケマサノリ)

ははは、いいですね。ミヤケさんは?

ミヤケマサノリ(以下ミヤケ):僕はギターにシンセに……いろいろやっている人です(笑)。

シンセの果たす役割も大きいですよね。アナログな機材をつかったりもしているんですか?

ミヤケ:完全にそうですね。

シンセ体験はどのあたりからなんでしょう。イーノが好きで……って感じでもないじゃないですか。

ミヤケ:シンセ体験っていうことでは、このバンドからですね。「バンドやろう!」「OK!」ってなって、いざ入ってみたら「ミヤケ、シンセサイザー弾いてみようか」って言われて。「僕、弾いたことないんですけど」って言ったら、「こうやれば音が鳴るから!」って(笑)。

ははは、その時点でピアノの嗜みもなく?

ミヤケ:そうですね。いままで鍵盤というものをやったことがなく。

コイブチ:彼は音楽を広く聴いている人なんですよね。海外のバンドって、メンバーがいろんな楽器をやっていたりするじゃないですか? 楽器経験のあるなしに関わらず、表現の手段として。そういう役割というか、場所になる人が一人いなくちゃなと思って、それなら彼しかいないとお願いをしました。なんでも任せたみたいなところがありますけれども(笑)。

へえ。ミヤケさんは「どんな音楽が好きなんですか?」って訊かれたらなんて答えます?

ミヤケ:邦楽ならスーパーカーですね。あと、ベースの(マコト・)ニシザワとかカワマタとかと共通して好きなのはシューゲイザーですね。

なるほど、それは若干反映されていますよね、シューゲイジンな雰囲気が。

ミヤケ:3人がほんと、めちゃくちゃ好きなんですよ。

カワマタさんなんて、めちゃめちゃ歪ませてやりたい、みたいな欲求とかないんですか?

カワマタ:もうずっとリヴァーブかけてますよ。そういう曲も何曲かあるんですけど、元気になっちゃいますね(笑)。

(一同笑)

もうずっとリヴァーブかけてますよ。そういう曲も何曲かあるんですけど、元気になっちゃいますね(笑)。(カワマタカズヤ)

そういえば歌詞で「slow dive」(“dive”)って出てきませんでした? あれはスロウ・ダイヴなんだ。

ミヤケ:そう……ですね(笑)。

コイブチ:まあ、別々の単語のイメージなんですけどね。

あれ、そうでもなかった(笑)。わかりました。ではベースのニシザワさん。ニシザワさんはどんなふうな経緯で?

マコト・ニシザワ(以下ニシザワ):僕はコイブチさんの後輩なんですけど、4歳くらい下で。だから自分は3人よりはコイブチさんと関わる機会がなかったんですけど、前のバンドのSTELEOGRAMのライヴを観に行って、初めて話したんです。その後ツイッターとかでもやりとりしたり、お互いに機材が好きなのでそんな話をしたりもして。そんな中でバンドやろうというメールが来たんです。最初は誰が何をやるというのもぜんぜんなかったんですけど、「ベースやる?」みたいなことになり(笑)。ギターもやったことはあったんですけど、ベースからはじめたこともあって、ベースに決まったときには「よかった!」って思いました。

ダンス寄りのバンドであればあるほど、ベースの役割もすごく重要になりますよね。プロダクションもとてもクリアにベースを出しておられますけど、これはどなたかのディレクションなんですか?

コイブチ:ベースとドラムについてはすごくこだわってて、クラブ・ミュージックとの融合というか、普通のポップ・ミュージックの歌メロとクラブ・ミュージックのよさを混ぜ合わせたい──そう思うとベースとリズムに焦点が当たりますね。僕自身がベースの音が好きで、曲の中で全体を支えてまとめる存在だと思っていることも反映されていると思います。あとは、彼に与えた最初の試練でもありました。彼はピッキングしかやったことがなかったんですけど、「マーキーっていうのは指弾きの音楽だから」って(笑)、指弾きだけしかやっちゃダメって言ったんです。

ニシザワ:大学時代にコピーをやっていたときは、ナンバー・ガールとか、パワー重視の演奏をやっていたんですけど、指弾きはやったことがなかったんですよね。

じゃ、指弾きのコンセプトには惹かれるものがありました?

ニシザワ:ブロック・パーティとかMGMTとかも好きなので、そうですね。

初めて海外のいろんなサウンドに触れた感じ──「こういうものがあるんだ!」って驚いた感覚をマーキーにも出していきたいんです。(コイブチ)

なるほど、パッと聴いたときに思い浮かべるのはパッション・ピットとか、あとフレンドリー・ファイアーズとかなんですけど──

コイブチ:ああ、そうですねえ。

あるいはチルウェイヴとか、男女で大所帯ってところだとロス・キャンペシーノスとかね。なにか、2008年前後の音楽に感じていたときめきがいっぱい詰まっている感じがするんですよね。そのあたりの時期って、やっぱりリスナーとしても濃い体験があったんでしょうか?

コイブチ:そうですね、僕がほとんどの曲のディレクションとかをやっているんですけど、僕は2008年から2010年にかけての音楽シーンっていうのがすごく好きで、ちょうどその頃はロックとエレクトロニックなものが混ざっているんですよね。僕自身、それは大学に入って音楽を広く聴きはじめた時期でもあって、初めて海外のいろんなサウンドに触れた感じ──「こういうものがあるんだ!」って驚いた感覚をマーキーにも出していきたいんです。それがそういうあたりが音に出ているとすれば、狙いでもあり、自然で必然的なことでもあるんですよね。

なるほど。単純にマネしてできるものというよりは、いまおっしゃったような憧れみたいなものの手触りが生々しく感じられますね。一方で、たとえばフレンドリー・ファイアーズなんかはその後もうちょっとハウスっぽい方向に行きますけど、みなさんは少しファンクっぽいところでやってますよね。このあたりは何なんでしょうね、時代性?

コイブチ:それはあるんじゃないですかね。あとは、コンセプトをあんまり曲げたくないというか、変化していくことは大事ですけど、あれもこれもやるような急激な変化はできないなと思っていて、僕はやっぱり最初のときめきを大切にして突き詰めていきたいですね。あとは、6人の共通項もそこで、自然に音をならすとこうなるんです。それがブレないところですかね。

みなさんの嗜好なんですね。

MARQUEE BEACH CLUB 『Flavor』 / Album Trailer

「マーキー」も「ビーチ」も「クラブ」も、全部人が集まるところを指す単語なんですよね。結果的には僕らのバンドの展望というか、僕ら自体がひとつの場所になればいいかなってイメージかもしれないです。(コイブチ)

ところでバンドの名前なんですけど、他誌さんのインタヴューで由来をちらっと見かけまして。「マーキー」っていうのは〈フジロック〉のステージ名から、「ビーチ」っていうのは、なんかバカみたいから(笑)。

ミヤケ:そうですね(笑)。

はは。で、「クラブ」っていうのはどうしてもつけたかった、と。

コイブチ:親しみやすいし、その頃のバンドに「クラブ」ってつくものがいくつもあったし……ただ、そういう風潮がありすぎてちょっとどうしよう、みたいな感じになっちゃいましたけれども。

まあまあ(笑)。でも、クラブにどんな思いがあったのかなって思って。だって、みなさんはクラブ遊びをするって感じでもないじゃないですか。

(一同笑)

イシカワ:わりと静かな人たちです。

わりと静かな人たちですよね? だから、「クラブ」って言葉にどんな思いとかイメージを乗せてたのかなと思って。

コイブチ:そういう言葉への憧れがあった部分はあると思うんですけど、なにかしっくりきたんですよね。けっこうめぐりめぐって落ち着いた名前ではあって。「マーキー・ビーチ」は決まっていたんですよ。それで最後の言葉を探していたんです。最初の候補に「クラブ」があったものの一回ボツになって、また戻ってきた名前なんですね。

へえ。「部活」とかに近いニュアンスでもなく?

コイブチ:ははは。後付けではありますけど、「マーキー」も「ビーチ」も「クラブ」も、全部人が集まるところを指す単語なんですよね。結果的には僕らのバンドの展望というか、僕ら自体がひとつの場所になればいいかなってイメージかもしれないです。僕らはマーキー・ビーチ・クラブっていう名前を通して音楽を演奏する。そこに映像作家とか写真家とかが来て、僕らという場所を通して何かを発信していく。そういう感じになっていけばいいなって思っているので、結果として「クラブ」でぴったりきましたね。

歌詞の世界観としては、どこに脱出するわけでもなく、かといってここにいるわけでもなくっていう、不安定なものを歌っているでしょうか。アップ・ダウンの中間あたり──日常みたいな部分を地道に行くことで、いつかいい景色が見れるだろう、というか。(コイブチ)

なるほど、ひとつの社会の単位なんですね、きっと。一方で、詞を見たりすると、「クラブ」にこだわるわけじゃないんですけど、やっぱりナイトライフ的なものへの言及が出てくる。朝まで踊ろう、みたいなことが歌われるでしょう? フレンドリー・ファイアーズの「パリス」じゃないですけれども、そういう夜のクラブと音楽の高揚感みたいなモチーフが出てくるのはなぜなのかなと。

コイブチ:音像とかにはやっぱり憧れる部分はありますね。クラブでは遊ばないんですけど、僕らのフィルターを通したダンス・ミュージックへの憧れはあって、そういうものが詞にも反映されるのかもしれないですね。

歌詞っていうところではもうひとつ、「ユートピア」ってコンセプトも何度も出てきますよね。これは……なにか脱出願望があるんですか?

(一同笑)

いやマジに(笑)。かと思えば、まさに“utopia”って曲では、べつにユートピアも信じてないみたいなことが歌われるじゃないですか(「I do not believe in utopia」)。

コイブチ:そうですね……。歌詞の世界観としては、どこに脱出するわけでもなく、かといってここにいるわけでもなくっていう、不安定なものを歌っているでしょうか。アップ・ダウンの中間あたり──日常みたいな部分を地道に行くことで、いつかいい景色が見れるだろう、というか。僕は日常に寄り添った曲を書きたいので、歌詞によってばらつきがあるのもそのせいなんですよね。そこにいたい、変わらない生活をつづけていきたい、みたいな気持ちの中で書いているので、どっちにも振れないのはそのせいかもしれないです。

へえ。まんま“escape”って曲もありますけど、そう逃避願望があるわけでもないと。

コイブチ:そういう気持ちも抱いている、その瞬間も切り取っているという感じでしょうか。

そうか、何かどこに行っても何もないみたいな、クールな現実認識の下に書かれているのかなと想像させる部分があるんですけどね。

イシカワ:そういう部分もあると思います。その中で自分がどうやっていくか、動いていくか、ということなんですよね。もちろん聴き手によって解釈が変わっていいように話しかけてはいるんですけどね。

めちゃくちゃざっくり言えば、大変なこともたくさんあるけど、なんとかなるさって。そこで楽しいことを見つけていこうって……。(イシカワヒロヒサ)

では、個人的な展望としてはどうですか? この世界は。

イシカワ:めちゃくちゃざっくり言えば、大変なこともたくさんあるけど、なんとかなるさって。そこで楽しいことを見つけていこうって……前向きかと言われればけっして前向きというわけでもないんですけどね。けど、後ろ向きというのも個人的にはあんまり好む考え方ではなくて。そういう意味で本当に中間なんですよね。

コイブチ:レット・イット・ビーなんだよね(笑)。

イシカワ:そうだね(笑)。聴き手の中で、それぞれはっとしてもらえる歌詞ならいいなって思います。解釈はちがっていてもいいけど。そういうものを提示できたらうれしいですね。

そういう感覚はみなさんで共有されているものなんですか? 歌われる内容については何か協議があったりします?

コイブチ:僕が歌詞をつくっているんですけど、メンバーにはそんなに多くは説明しないんですよね。説明しちゃうと僕の曲になっちゃう。僕はみんなにそれを強要するわけじゃないし、みんなの曲にしたいので……。たぶんそこを説明しないことでバラバラな詞になっているのかもしれないですね(笑)。

なるほど、逆にみなさんからフィードバックがあったりします?

コイブチ:「こういう曲ですか?」って、妄想をふくらませて訊いてくるひともいますけどね(シマダさんを見ながら)。

(一同笑)

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世界観を強要してしまうと、音がオープンではなくなるのかなって。音楽に関して言えば、オープンでいたほうがよりよいものができると感じます。コンセプトに向かっていくよりも。(コイブチ)


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妄想って、ストーリーみたいな部分で?

コイブチ:ストーリー的な部分ですね(笑)。あとは、みんなから返ってくる音の感じで、ああ、こんなふうに解釈しているのかなって思ったりします。僕個人としてはそれがすごくおもしろいし、それがMARQUEE BEACH CLUBかなって思いますね。たぶん、ここで世界観を強要してしまうと、音がオープンではなくなるのかなって。音楽に関して言えば、オープンでいたほうがよりよいものができると感じます。コンセプトに向かっていくよりも。

なるほど、それはひとつの真理ですね。オープンなことが、むしろみなさんの音が構築される条件だと。

コイブチ:そうですね。マーキーの曲は、ライヴでどんどん変わっていくみたいなところもあって。それはお客さんから返ってくるものに対してどう投げていくかということでもあります。そうやって曲がみんなの求めるかたちになっていくというか。
でも、リズムには本当に意識を置いているので、曲はまずイシカワに投げるんですよね。そしたら、渡したものと180度違うものが返ってくる(笑)。

イシカワ:こういうリズムはどうですか? っていう問いかけですね(笑)。

コイブチ:やっぱり僕はドラムじゃないんで、わからないことも多いし、新しいフィードバックがうれしいですね。

それは楽しそうですね。ニューオーダーなんかだと、ドラマーのスティーヴン・モリスはそのうち叩くのをやめて打ち込みはじめるわけですけれども、そういう方向はとくに見えてないんですか(笑)?

イシカワ:いや、打ち込みは憧れはありますけどね。ツマミをいじってみたい。僕はシガー・ロスとかも好きなので、ドラムを叩きながら鍵盤とかもできたらいいなと思いつつ、でもまあ、まずは僕のMARQUEE BEACH CLUBでの役割──ドラム・セットでのリズムなのかなと思って。生でのリズムなのかなと。そこはいちばん根底にあるものとして考えたいですね。

歌い方もずいぶん変わったと思います。自分を残しておきながらも、マーキーに……コイブチさんに寄せていくにはどうやって歌えばいいんだろうって。(シマダ)

妄想型のシマダさんは(笑)、でも萌えヴォーカルとかアイドル・ヴォーカルが主流の中、まっすぐ伸びる声ですよね。たとえばダーティ・プロジェクターズのエンジェル・デラドゥーリアンとかみたいに。

シマダ:そういう、息がいっぱい入ったような声のヴォーカルもすごく好きなんですけど、自分が歌うとなるとちょっと違うというか。

なるほど。声楽をやっていたとか?

シマダ:いえ、単に歌うのが好きで、年中歌ってたんです。

ソロでのご活動ではどんな形態だったんですか?

シマダ:ギターと声で……弾き語りですね。

へえ、ソングライティングもされるんですね。じゃあ、MARQUEE BEACH CLUBの音楽って、ずいぶん文法がちがうんじゃないですか?

シマダ:新鮮でした(笑)。歌い方もずいぶん変わったと思います。自分を残しておきながらも、マーキーに……コイブチさんに寄せていくにはどうやって歌えばいいんだろうって。だからクセも減ったと思いますね。

クセをなくした?

シマダ:いや、クセを突き詰めていってなくす、みたいな感じですかね。尖ったものをまるくするというか。

コイブチ:コントロールできるようになったってことだよね。

シマダ:シンガーソングライターとして活動しているときはぜんぜんそんなことはなくて、いつもどおりなんですけどね。

コイブチ:本当に、二つの声で一つのヴォーカルという感じなので、デモの段階ではアスカちゃんだけが歌っているところもあるんですけど、なんかそれだとマーキーじゃないねって感じになって。僕だけでもやっぱりマーキーではなくて、二つがハマったときなんですよね、あくまで。

どことなく合成されているような感じすらしますからね。それこそシンセサイズということですが。

コイブチ:そうですね、合わさらないとダメですね。

MARQUEE BEACH CLUBのいまの音を詰め込みつつ、いろんな色や匂いを出せればと思って……。(コイブチ)

ところで、ジャケットのアートワークについてもおうかがいしたいところですね。それこそトゥー・ドア・シネマ・クラブとか、ヴァンパイア・ウィークエンドとか、あるいはシーヴズ・ライク・アスとかを連想させます。

コイブチ:やっぱりそのあたりのバンドへの憧れも反映されていると思うんですけど、ソロ・プロジェクトではじめたときから、自分の日常を切り取ったものとか、好きなものをアートワークにしたいと考えていたんですよね。僕はわりと山とかへ写真を撮りに行ったりするのが好きで、花や自然を出すのがいいかなって感じたんです。そういう自分を取りまくものと撮りたいものの中心にいたのが花だったというか。

へえ。でも、けっして道端の花ではないじゃないですか? このジャケをして日常だと言われると、ちょっとすごい日常ですよ。

コイブチ:ははは。

完成された世界観があるじゃないですか。これはある種のユートピア観なのかなと……まあ、ユートピアの不可能性なのかもしれないけど(笑)。

コイブチ:そうですね、それはあるかもしれません。今回のアルバムは、いつも僕らを撮ってくれているカメラマンの瀬能啓太くんといっしょにイメージをふくらませたもので、その粋がこの世界観になったのかなと。ジャケットでもリスナーに語りかけられるようなものにしたいなと思っていたら、こういうかたちにまとまりました。

いろんな種類の花が溢れてますからね、これも「クラブ」っていうイメージに重なるようにも思いますね。

コイブチ:今回のアルバム名が『フレーバー』なんですけど、MARQUEE BEACH CLUBのいまの音を詰め込みつつ、いろんな色や匂いを出せればと思って……そんなこともあっていろんな花を散りばめましたね。

なるほど、いろんなものがあるけど統制がとれてる感じとか、細部が考えられていてつじつまが合ってる感じとか、いまらしいのかなとも思うんですが。バンド自体にもトラブルやケンカもなく?

コイブチ:そうですね……(笑)。

これが社会だったらいいのにね。

ミヤケ:ユートピア……。

いい意味で遊びの延長になればいいなっていう感じかな。ジャケットの写真家の瀬能くんとかも、音楽の話だけしているわけじゃなくて、展示もできたらいいですよねっていうこととか、あるいはこういうものを僕らのバンドに入れられたらいいよねとか。(コイブチ)

ははは! ほんとにね。6人いたらすでに社会ですけども。

コイブチ:僕らは〈utopia〉っていうイヴェントをやっているんですけども、それは僕らの中にあるものとか、好きなものをその空間で表現するというものなんです。呼ぶバンドにしても、「こういうイヴェントでこういうセットでやりたいな」っていうところで選んでお願いしているという感じで。そうやって、好きなものをきゅっと集めてやっていると、意外と闘わないというか。「いいよね」っていうのが重なった延長でやっているんですよね。ひとつのゴールに向かってやっていると、ああでもない、こうでもないってなって摩擦が生まれると思うんですけど、わりと自然な流れの上で出会って、音楽をつくっているので、まとまるんでしょうね(笑)。

へえ、そんなふうに音楽をつくっていく上で、5年後、10年後の姿って想像できたりします?

カワマタ:MARQUEE BEACH CLUBっていう根底にあるものは、基本的には変わらずに、でも進歩はしていて、楽しく新しいことをいろいろ巻きこんでやれたらいいなって思ってます。

すごくポジティヴでいいですね。

コイブチ:いい意味で遊びの延長になればいいなっていう感じかな。ジャケットの写真家の瀬能くんとかも、音楽の話だけしているわけじゃなくて、展示もできたらいいですよねっていうこととか。あるいはこういうものを僕らのバンドに入れられたらいいよねとか。そのへんは遊びの延長で考えている部分もあるので、そんなことを考えていける輪が広がればいいのかなって思います。フィルターの中心になれればと。

その輪が、MARQUEE BEACH CLUBっていうコンセプトでもあるのかもしれないですね。自然にそういう場所になっていければ、ということなのかな。──マーケットみたいな部分は意識しますか?

コイブチ:残るものをつくるには、そういうところとの絡みは課題でもあるかもしれませんね。でも、僕らは表現者としてひとつ突き詰めていけばいいだけだと思うんです。その道のプロになれれば。あとはエンジニアとかがそういう地平へ寄せてくれたりするものだと思うんですね。もちろん、広い人たちに聴いてもらうという意味では、考えぬいていこうとは思いますけどね。音楽をつづけていく上で。……でも、答えを出すのが難しいな。

僕らは表現者としてひとつ突き詰めていけばいいだけだと思うんです。その道のプロになれれば。あとはエンジニアとかがそういう地平へ寄せてくれたりするものだと思うんですね。(コイブチ)

メーカーのインフォメーションとかには、わりと明確なメッセージとして「消費されたくない」ってことが謳われてますね(「音楽を消費される商品でなく、愛される作品に」)。

コイブチ:いまはネットですごく簡単に音楽が聴けてしまうので、もうちょっと重いものというか大事なものにしたいと思ってますね。商品としてではなくて、作品としてのクオリティをつくっていきたいなと。アートワークもしかりで、誰かにCDを貸すとか、盤を買ったときの感動とか、そういうものを僕らと同じ若い人に広げたいなと思っているんです。僕自身が、CDとかレコードで音楽を聴くことのほうが多いんで……。だからそういうところの文化を残さなきゃって思ってます。そこにマーキーが入っていけたらいいですね。

「残る」っていう部分でアナログ志向を語られる方は多いですけれども、みなさんがおもしろいと思ったのは、そうやって「残す」ために、男女で歌うとかメロディを強くするってふうに思考されるところですね。それって、つまり記憶というメディアが最強だというか、みんなの耳に残すことが一番だろっていう考え方なのかなと思いまして。                                              
コイブチ:メロディはやっぱりすごく大事なものだと思っていて、覚えやすいものにしたいというのは意識していますね。鍵盤を見ながら、わざわざ音の数を減らしたりもしていて。ルールを設けてつくってはいるんですよね。オクターブに上下するのはいいんですけど、オクターブの中で音の数を減らしていったりとか。

リフレインも多いですよね。憶えちゃう理由はそのあたりも大きいというか。

コイブチ:1番と2番の歌詞が同じだったりしますしね。最低限のことしか言わないようにしているという部分はあると思います。曲のメッセージ性というところでは、大事なことは何回も言ったほうがいいということもあるかなと(笑)。海外のアーティストとかもそうだと思うんですよね。日本のアーティストだと、歌詞がいろんな方向に流れて、ストーリー性に重点が置かれる感じがするんですけど、それよりはもっと強い一単語で何回でも言ってもいいと思うんです。けっこうそこはオープンな感じで考えていて、伝われば何でもいいかなと。そういうところを大事にしていますね。

そこのことがリズムも生み出していますしね。

コイブチ:それも大きいですね。

僕自身がリスナーとして海外の音楽を聴くときに、それぞれのルーツをたどって新しい発見をしたりするように、マーキーの今後のアルバムも世界の音楽を取り入れていって、リスナーの視野を広げていっていきたいというか。(コイブチ)

あと、脱出の呪文みたいにも聞こえますよ(笑)。2008年頃を特徴づけたトレンドとして、チルウェイヴみたいな音には逃避のモチーフもあったわけなんですけど、世界の中で、マーキーの音楽はどんなふうに鳴っていてほしいですか?

コイブチ:イメージとしては、僕らのアルバムを聴けば世界の音楽がわかるというか。MARQUEE BEACH CLUBの音楽を通して、リスナーの方々に世界のいろんな音楽が伝わるようなものを目指したいですね。貪欲な感じになっちゃうんですけど、そんなふうにしたいです。僕自身がリスナーとして海外の音楽を聴くときに、それぞれのルーツをたどって新しい発見をしたりするように、マーキーの今後のアルバムも世界の音楽を取り入れていって、リスナーの視野を広げていっていきたいというか。……上から目線な発言になっちゃいましたけど(笑)。

その「世界」というのは、ワールド・ミュージックという意味ですか?

コイブチ:そうですね。いいと思ったものはどんどん取り入れていきたいと思っていて、今回のアルバムもそうなっているので、その輪をもっと広げたいですね。僕ら自身ももっと勉強していきたいですし。

へえ、ワールド的な興味がどんなふうに吸収されていくのか楽しみです。ちなみに水戸には地元のシーンみたいなものがあるんですか?

コイブチ:ギター・ロックみたいなあたりが根強いシーンですけどね。「水戸ロック」っていう言葉があったりもして。だから、その中ではマーキーってわりと突然変異というか……。でも最近は、僕たちの後輩とか、わりとシンセを使ったりするバンドも出てきました。

へえ。それはきっとみなさんの影響なんでしょうね。最初に活動をはじめられたときは、まずは地元で、っていうスタンスだったんでしょうか? 東京でいつか活動する前提で?

コイブチ:ゆくゆくは東京でやりたいっていう気持ちからはじまってはいますね。もともとは僕のソロ・プロジェクトだったわけですけど、その時点で頭の中では「メンバーはこの人たち」って決まっていたんで、このバンドがバンドとして固まったら、音源もリリースして東京に出ていこうと思っていたんです。だからイメージとしてはこのバンドが正式なかたちというか。で、早耳……と言ったらちょっと思いあがった感じに聞こえますけど(笑)、僕たちを見つけてくださった方がいて、東京に出てきたんです。出てきてみたら、すごくレスポンスが早かったので、じゃあ東京でやっていこうと。だから、思ってたより早くこっちに来れた感じですね。

では音源が話題を集めたというよりも、現場での演奏がアピールになった?

コイブチ:同時ですかね。ユーチューブに上げた音源を聴いてくれた人が誘ってくれたんですよ。聴いてくれる人たちに届いたなって感触があったのがライヴですね。ライヴに来てくれたお客さんたちが、「いいね」って広げていってくれた感じです。

それは理想的ですね。しかし、あんまり地域性を意識して出てきたバンドというわけではないんですねぇ。音もそうですけど。

コイブチ:そうですね……ただ、水戸に住んでいて水戸から発信しているバンドだっていうことは大切にしたいんですよ。自然体でいたいので。東京のバンドだよってふうにはできないですね。そこは捨てたくないとこでしょうか。

なるほど。そこも自然なスタンスを感じますね。

僕は“escape”ですかね。超簡単にまとめると、いま夏なんで(笑)。(ミヤケマサノリ)

僕は“white”です。これまでとはちょっと違った感じのベースを弾いてて、レコーディングに苦労したこともあったり──ライヴでもキメたいですね。(マコトニシザワ)

それでは、最後にこのアルバムの中から、みなさんの好きな曲/それぞれの役割として思い入れのある曲を教えていただけますか?

カワマタ:僕は……“dive”ですね。

おお! 私も“dive”が好きです。ご自身の役割として何か思い入れが?

カワマタ:音源だとそこまででもないんですけど、最後の単音のトレモロピッキングのところはライヴだと爆音なんで(笑)。そこはライヴ補正というか。あとは曲としてもけっこうダウナーな感じで好きというか。

そうですね、ローファイな手触りもあったりして。なるほど。イシカワさんは?

イシカワ:“wonder”ですかね。ミドル・テンポの四つ打ちが好きで。中でもこの曲は、歌詞だったりメロディだったり、ギターのリフだったりも僕の中でとても噛み合っているんですよ。自分が曲になっている気分になるというか……ドラムを叩いていることを忘れるんですよね。どの曲もそうなんですけど、この曲はとくにそうなんです。本当に楽しくて、気持ちよくて。

へえ、その感じ方はいいですね。これもリフレインが印象的で、聴いた後も粘っこく耳に残ってくる曲ですよね。ミヤケさんはどうですか?

ミヤケ:僕は“escape”ですかね。超簡単にまとめると、いま夏なんで(笑)。

(一同笑)

ミヤケ:この清涼感というか、爽やかな感じが気持ちいいなと……超アタマ悪いですよね。

あはは! でもこれは、このアルバムのいくつかの要素の中で、「踊り明かそう、朝までいっしょにいよう」ってサイドの曲の代表ですね。アタマじゃない。ニシザワさんは?

ニシザワ:僕は“white”です。まだライヴでやったことないんですけどね。これまでとはちょっと違った感じのベースを弾いてて、レコーディングに苦労したこともあったり、個人的にも思い出のある曲です。ライヴでもキメたいですね。



“eye”ですね。僕らをここまで連れてきてくれた曲です。

なるほど、CDで表現できなかったことがまだやれそうですね。シマダさんは?

シマダ:決められなくて……。

自分の仕事として思い出深いものを教えていただければ。

シマダ:あ、それなら、歌ってて最高だと思うのが“pattern”。

それは、最高でしょうね(笑)。

シマダ:はい。コイブチさんとの掛け合いというかバランスというか、歌っていてすごくハマるんですよね。わたし、この曲ではパーカッションをやってるんですけど、チャカチャカってやってるだけでとっても楽しいんです。“city”も同じく、カウベルとかいろんな打楽器を叩くんです。でもとにかく曲が好きで、好みで。映画っぽいんですよね。初めて聴いたときになんてかっこいいんだって思って、それからずっと好きなんです。

なるほど。ここで出てくる海とかネオンなんかも、たしかに映像的ですね。ストーリーも感じさせる。どこにもない、一種の憧れのイメージとしての海、という感じがします。では、コイブチさんにもおうかがいしましょう。

コイブチ:“eye”ですね。僕らをここまで連れてきてくれた曲です。バンドがはじまって2~3ヵ月くらいの頃につくったもので、マーキーの方向性を提示できた曲でもあるかなって思います。最初はちょっと尖っちゃってた部分もあって、チルウェイヴっぽい感じでいきたいなという発想もあったんですけどね。でも“eye”が仕上がったときに、バンドが大きくなるなって感じました。

なるほど、バンドのステージを上げる曲だったと。

コイブチ:だと思います。あとは、全員のキャラがぎゅっと詰まってる曲なんですよね。ひとりひとりの持ち味が出てる。だから僕が挙げるのは、やっぱり“eye”ですね(笑)。

MARQUEE BEACH CLUB 1st Album『Flavor』発売記念アウトストアLIVE

日程:9月3日(土)
OPEN 14:30 START 15:00
会場:KATA[LIQUIDROOM 2F] https://kata-gallery.net/
〒150-0011 東京都渋谷区東3-16-6 LIQUIDROOM 2F

参加方法:アウトストアチケット(入場券)をお持ちのお客様に限り、イベント当日、会場にご入場頂けます。イベント参加費用は無料です。

お問合せ先: P-VINE RECORDS 03-5784-1250

MARQUEE BEACH CLUB 1st ALBUM「Flavor」
WONDERVER 1st ALBUM「FLASH」
ダブルレコ発 2マン

日付:2016年09月23日(金)
場所:下北沢GARAGE
時間:open 19:00/ start 19:30
料金:adv¥2,500/day ¥3,000
LIVE: WONDERVER / MARQUEE BEACH CLUB

チケット:
・プレイガイド 8/4~発売
イープラス https://sort.eplus.jp/sys/...
・各バンド予約
・ライブハウス店頭

Aphex Twin - ele-king

 2016年6月21日22時。12歳の少年が監督したエイフェックス・ツインの新曲MV“CIRKLON3”が、渋谷神南一丁目交差点、いわゆるスクランブル交差点で突如として上映された。当然、歓喜と混乱と無視が巻き起こる。いわゆるオン・ザ・コーナー的なカオスの生成。ああ、そんなことは00年代には想像すらつかなかった、やはりエイフェックス・ツインは「復活」したのだ、そう思った。むろん、“CIRKLON3”が収録されたエイフェックス・ツインの新作『チーターEP』は、話題性だけの代物ではない。この2010年代中盤におけるテクノ/IDMリヴァイヴァルの象徴として、欠くことのできない重要なピースである。

 そもそも、ここ最近、われわれの耳が、脳が、身体が、テクノを求めてはいなかったか。マシンのキックとベースがもたらす整合性による快楽が必要だったのではないか。チルウェイヴ、ヴェイパーウェイヴ、インダストリアル/テクノ、ポスト・インターネット、ベース・ミュージック、エレクトロニカ、アンビエント/ドローンなど──ジャンルの細分化が加速した現代だからこそ行き着いた「テクノへの回帰」?
 それは反動ではない。むしろ「分母」が明確になったとすべきだろう。2010年代のエレクトロニック・ミュージックは、すべてテクノが根底にあったとさえ言える。それのうちに内包されていたテクノが、明白な輪郭線を伴う分母のように、あらためて浮上してきたわけだ。

 〈エディションズ・メゴ〉傘下のシンセウェイヴ・レーベル〈スペクトラム・スプールズ〉からリリースされたマーク・フェル以降のテクノ=IDMサウンドを聴かせるセコンド・ウーマンのファースト・アルバムと〈ワープ〉からリリースされたプラッドの新作、〈タイプ〉からリリースされた90年代ドラムンベース・リヴァイヴァルのベーシックリズム『ロウ・トラックス』と圧倒的ヴォリュームで聴かせるオウテカ新作、〈モダンラブ〉からリリースされたロウジャックのアルバムとエクスペリメンタルIDMなペダー・マネーフェルト『コントローリング・ボディ』、ベルギーの〈アントラクト〉が送り出すロウ・テクノと石野卓球のエレガントセクシーでテクノなソロ新作『ルナティック』などが一堂に共存する時代、それが2016年なのである。まさにテクノ復権の時代。

 その契機のひとつをエイフェックス・ツインの復帰作『サイロ』(2014)としてみよう。『サイロ』には魅力的なビート、作りこまれたトラック、リチャードらしい繊細で牧歌的なメロディが折り重なり、フロア対応テクノとリスニング対応IDMが絶妙に交錯している。90年代と00年代の流れを継承しながらも、2010年代のテクノの可能性を探索する──それが、ほかならぬリチャード・D・ジェイムスによって、いきなり完成形を見せつけられたと言える。
 また、たとえばヴェイパー/ポストインターネット的な80年代~90年代頭の企業広報/CM的なクリシェ・イメージの反復は、『サイロ』にもあったし(RDJの世代的なものかもしれない。僭越だが同世代としてよくわかる気がする)、IDM的ともいえる緻密なサウンドは全編において鳴り響いていた。続く『コンピュータ・コントロールド・アコースティック・インストゥルメンツ・パート2 EP』においてはスティーヴ・ライヒ的ともいえるミニマリズム、エクスペリメンタル、現代音楽的な音響を追求し、AFX名義の『オーファンド・ディージェイ・セレク 2006-2008』ではアシッド・リヴァイヴァルともリンクした。
 そう、『サイロ』以降のエイフェックス・ツインは、テン年代後半仕様にしっかり対応・変貌しているのである。

 本作『チーターEP』は、テイスト的には『サイロ』に近い。イギリスのシンセサイザー・メーカーの名を冠する本作は、同社のレアなシンセサイザーMS800を用いている。そのせいか、90年代初頭的な音色が、2016年的解像度と音圧で鳴っているかのようだ、と言えよう。私はクラフトワーク『ザ・ミックス』みたいだと思った。最近までダサいと言われていた90年代頭の音色が、何周かしてイケてる音になったのかもしれない。とくにMS800の生々しさが脳を揺さぶる3曲目“CHEETA1b ms800”と4曲目“CHEETA2 ms800”は圧倒的。いや、どのトラックも、斬新なビート・プログラミングとベースの巧さ、サウンドの中毒性が強烈だ。あわいメロディ、渋く盛り上がる構成の妙技も、ほかの追随を許さない。まさに「作曲家としてのリチャード・D・ジェイムス」の面目躍如といったEPだ。
 全曲通してベースラインがトラック/楽曲の背骨になっている。そこから上のメロディと下のビート・プログラミングが生成されているように思える。彼のトラックメイク/コンポジションの手つきを生々しく感じることができのだ。さらに、80年代の企業広告的なアートワークにはヴェイパーウェイヴ的なフェイク感も漂っている。彼がここまで同時代(若手世代)のイメージに衒いなくアプローチしたのは初めてのことかもしれない。このフェイク感/ポップな装いからは、ポスト・インターネット的な感性も楽しめるだろう。

 近年におけるアンダーグラウンド・ミュージックの細分化を経て、それらの音楽の分母としてテクノが(再)浮上した2016年、エイフェックス・ツインがウソのような自然さで、時代の先端に返り咲くことになろうとは誰にも予想できなかっただろう(カセット版は即売!)。こんなことがあるから、ますます新しい音楽(の状況)を追い続けることを止められない。音楽のサイクルには、抑圧された無意識が解放されるようなスリリングさがある。そう考えると、リチャード・D・ジェイムス=エイフェックス・ツインは、90年代以降のわれわれのテクノ、電子音楽の無意識領域だったのだろうか……。
 そんな妄想がどうであれ、2016年のテクノを象徴する1枚は、間違いなく『チーターEP』である。まさに全テクノ/IDMファン必聴のEPだ。

WALL & WALL - ele-king

 渋谷のコンタクトみたいなキャパのヴェニューって良いよね。あのぐらいの大きさが、うちらみたいな音楽が好きな連中にはちょうどいいい。で、来たるべく9月、表参道にWALL & WALL”(ウォールアンドウォール)が誕生する。最高峰の音響を味わえる、多目的スペースだ。
 表参道駅から徒歩1分という好立地にオープンするWALL&WALLは、総面積70坪、収容人数400名の、2フロアで構成されるイベントスペース。
 メインフロアには、世界初となるアルミハニカム平面駆動ユニットを採用した新機構スピーカーが設置され、サブフロアにはDJイベント、物販スペース等、様々な要望に対応できるよう設計されているとのこと。
 最新鋭・最高峰の音響ではどんなイベントが企画されているのだろうか、注目しよう。

正式名称:WALL&WALL
読み:ウォール アンド ウォール
総面積:233.5m² / メインフロア:89.6m² / サブフロア:33.9m²
所在地:〒107-0062 東京都港区南青山3-18-19 フェスタ表参道ビルB1F
TEL:03-6438-9240
OFFICIAL HP:wallwall.tokyo
お問い合わせ:info@wallwall.tokyo


ANDERSON .PAAK - ele-king

 西海岸の才人が日本にやって来ます。昨年8月に発売されたドクター・ドレーの復帰作『Compton』に6曲参加し、大きく注目を集めたアンダーソン・パークが、渋谷WWWXのオープニング・シリーズに登場、まさに待望の初来日公演だ!
 アンダーソン・パークといえば、今年1月には、シンガー、ラッパー、プロデューサー、ドラマーとして、その才能をいかんなく発揮した『Malibu』を発表。さらに、トラックメイカー/プロデューサーであるノレッジとのスウィート・イルネスなユニット、ノーウォーリーズのアルバムを完成させたということで、今回の来日公演は脂の乗ったパフォーマンスが期待される。
 今回は自身のバンド、ザ・フリー・ナショナルズを引き連れての公演ということで、ゴスペル・ミュージックを通過した、アンダーソン・パークのドラミングにも注目したい。最先端の生のビートを聴かせてくれるはずだ。

KOHH - ele-king

 プレイボタンをクリックすると、聞こえてくるのはナチュラルに歪んだエレクトリックギターのアルペジオ。あなたはニヤリとするだろうか。それとも、狐に摘まれたような表情を浮かべる? KOHHはブルー・ハーツやカート・コベインからの影響を公言している。そして前作『DIRT』の“Living Legend”などで披露していたのは、喉が裂けんばかりのシャウト。繰り返される自分はヒップホップアーティストだと思っていないとの発言。遂にサウンド面でもロックに舵を切るのか。そのように連想するのが自然かもしれない。しかしわずか4小節、16秒ばかりで、そのアルペジオは残響音を残しながら呆気なく途切れる。そして聞こえてくるのは鐘の音だ。半音ずつ高くなったり低くなったり。一体誰のためにこの鐘は鳴らされる?

 かつてないレベルでディストーションがかったKOHHのヴォイスは、同じくらい歪んだギターサウンドを呼び寄せる。トラップ・サウンドとディストーション・ギターのミックスに、彼の歪んだヴォイスはいつになくフィットする。しかし渾身の「ダーイッヤァァーーーーーーンッッ」という叫びのテンションが頂点に達すると同時に、ビートまでもがドラムマシンのTR-808ライクなハットが乱打されまくるトラップサウンドから生ドラムに取って代わられる。そして再び鳴り響く鐘の音。歪んだギターサウンドにラップに鐘の音。この風景には既視感がある。1983年リリースされた映画『ジャッジメント・ナイト』のサントラの1曲目、ヘルメットとハウス・オブ・ペインが共演した“Just Another Victim”に、僕たちはミクスチャーと呼ばれるヒップホップとハードコア/メタルの融合体の原風景を見なかったか。

 イントロの冒頭からわずか1分半のこの間にさえ、僕たちは何度も予想外の展開に裏切られ続ける。そして僕たちは気付かされる。このサウンドは「ミクスチャー」という呼称がいつの間にか纏ってしまった「どっちつかずで中途半端である=ヤワである」ことを言外で示すようなものではなく、ガチであると。『ジャッジメント・ナイト』やアイス-T率いるボディ・カウント以来悲願であった、ラップとハードコア/メタル両者の単なるミックスではなく、ガチな境界の無効化を、彼は軽々とやってのけるのだ。

 そしてKOHHは自身の言葉をも、故意にせよ過失にせよ、簡単に裏切って/乗り越えてみせる。“Business & Art”で「ラッパーなんかじゃない」と歌いながら“I Don't Get It”では変則的な譜割りのラップ・スキルを見せつけ、「I'm not a rockstar」と高レベルでヴォイスコントロールされた地声で呟きながらも“Die Young”のMVでは誰よりもロックスター然とした輝き方をしてしまう。そう、KOHHはかつて降神が「ロックスターの悲劇」で歌った「もう誰も喋れない」状況を見事に裏切ってくれる。才気溢れるアーティストたちは僕らを何度でも裏切る。ラストの「Hate Me」では不敵にもコインの裏表の関係にあるファン/ヘイターの裏切りを称揚している。KOHHの言葉もまたコインの表裏を行き来するが、それが嫌なら「殺せるもんなら二度殺せ」と呼びかける。一度目はコインの表面のKOHHを、そして二度目はコインの裏面の彼を殺せと言わんばかりに。

 イントロ込みで全9曲、32分弱で駆け抜けるディスク1は、生死を歌った楽曲が13曲中で約半数を占めた前作『DIRT』の続編であり、今作でも“Die Young”“Born to Die”といった楽曲群では同様に死がモチーフとなる。“Die Young”は1980年にロニー・ジェイムス・ディオ時代のブラックサバスが残した名曲のタイトルでもある。メタルの持つ様式美を象徴するような同曲。KOHHは自らのスタイルがそのような様式美に陥ることを、徹底的に回避しようとしているようにも見える。自らの露悪的な屈折したリリック群は「ドブネズミの美しさ」のように存在感を誇示し、様式美には回収されない。

 それは、本作で抒情的な旋律やコード進行を捨てていることからも明らかだ。かつての“Real Love”や“I'm Dreamin”のようなメロディアスなビートに乗せたラブソングや身近な生活に見出すある種の抒情を綴る歌はここにはない。不穏な旋律をメインに据えること。不協和音のワンコード/ループで突き進むとは、言葉の自立性を誇示しているに等しい。誰にも媚を売らず、自らをも裏切りかねない言葉の自立性を。ここにはかつて彼が描いていたような生活感はない。彼は音楽に対して、自らを尽くしている。

 さらに、本作を象徴する裏切りの発露は「暗い夜」に顕著だ。この曲を聴いていると、数年前、バンコクのスワンナプーム空港まで向かうタクシーの中、深夜の街並みを背景にローカルラジオ局から流れて来た楽曲群を思い出してしまう。ここにあるのは如何にもオリエンタルな旋律なのだが、それはアジアのどこかの国のカラオケで、現地語で歌われるところが想像されるような、ローカル感溢れるオリエンタリズムだ。もちろん共演のジャマイカン、Tommy Lee Spartaからインスパイアされた部分も大きいだろうが、このメロディの音符を選んだのは確かにKOHHなのだ。彼にとって異国のメロディ、アウェイの音符を拾い上げるのは難しいことではないのだろう。本来アウェイであるはずのハードコアトラックにヴォーカルを乗せるのも「ラッパーなんかじゃない」彼にとっては簡単なことであるように。

 この曲で僕たちに提示される情報量は少ない。“静かな暗い夜”と“お腹にナイフ”の二つのフレーズが先導する文字数の少な いKOHHのヴァース。これはロックなどに比較して言葉数が極めて多いラップ曲のフォーミュラを裏切るものであることは自明だ。しかしKOHHは言葉少なげに朗々と歌い上げ、静かな暗い夜”と不気味に光る“お腹にナイフ”の対のイメージを立ち上げている。あるいは、言語の国境やジャンルのボーダーを軽々超え、アウェイな環境の腹部に突きつける彼の才覚こそが、この「ナイフ」なのではないか。

 締めの1曲“Hate Me”で彼は「俺のこと好きになるなよ/まずあんたに興味ない/好かれるより嫌われたいから綺麗事は嫌い」と歌う。このKOHHのラインから遡ること17年前、Nasは彼のサードアルバム『I Am...』収録曲の“Hate Me Now”で「俺を憎むな/俺の視線先にある金を憎め/俺の買う服を憎め」と歌った。Nasはこの曲において、Puff Daddyをフューチャリングすることで自身の商業的な成功を示しつつ、その成功を齎した彼のリリックと音楽が如何に偉大なものかであるかを誇示したのだ。ポップになった/金の匂いがするといった批判に対して、Nasはある種の開き直りをもって対抗した。

 KOHHの立ち位置はこの延長であると同時に、それが行き着く隘路をも軽々と越えてみせる。Nasのリリックにおいて問題視されていた、成功したMCがどのような現実を歌い得るかという従来の問題設定は、KOHHにおいては「地獄までサイフは持ってけない」というステートメントと共に、無効化される。目の前で、富はひたすらに消費される。もっと言えば、消尽される。古代の部族の長が、自身の力を見せつけるために、敵対する部族に見えるように財産を焼き尽くしたように。

 僕らの目の前で、彼の富は消尽される。僕らの目の前で、彼の才能は消尽される。その危うさを、僕らは見ている。しかしこれも、僕らの期待が僕ら自身に見せている幻影に過ぎないのかもしれない。KOHHはこの後、彼の音楽によって、彼のリリックによって、彼の立ち振る舞いによって、僕らに一体、どんな裏切りを見せてくれるのだろうか。

Wild Beasts - ele-king

 ワイルド・ビースツは、いまもっともロックに懐疑的なロック・バンドのひとつだ。自嘲的と言い換えてもいいかもしれない。それはたとえばポストロックにおけるロックの意味性の剥奪のようなものではなくて、相変わらず死滅しないロックのマッチョイズム、男性性に対してのものである。フェミニンあるいはクィアな男はR&Bシンガーとして自らを解放し、あるいはシルベスター・スタローンのようなひとでさえマッチョな男は『エクスペンダブルズ』(消耗品)だと言って自虐しているこの時代に、ロック・バンドをやろうなんて男(たち)はまだ幻想にすがっているのか? 2008年、「ニュー・エキセントリック」なんてタームが有効だった時代にアルバム・デビューしたワイルド・ビースツははじめからそうしたテーゼを内包しており、しかしあくまでフォーマットとしてはアート・ロックをやるという矛盾を抱えていた。そのねじれ方こそが彼らのおもしろさであり、批評家受けする所以でもあるのだろう。フォールズなどのごく一部の例外を除き、2008年前後にデビューしたアート・ロック・バンドの生き残りとしてワイルド・ビースツは、そうした問いを深めてきた。単純に、いまのUKロック・バンドが5枚めのアルバムを出せるということ自体が快挙だ。
 もちろん、ワイルド・ビースツの息の長さは何よりも音のユニークさによって獲得してきたものだ。とくにマーキュリー・プライズにノミネートされた『トゥ・ダンサーズ』(09)のイメージが強いだろう、金属的な質感ながら妙な粘りけを持った奇妙なファンク・ミュージック。エロティック、と言うよりはいかがわしさすら覚える強烈なファルセット・ヴォーカル。ワイルド・ビースツの纏う官能性は、いまどきのロック・ミュージックとしては生々しくフィジカルであることから来ている。知性的だがじつはバキバキに肉体派でもあり、それこそが自分たちを「野獣」と呼んだ理由にちがいない。

 プロデューサーに売れっ子ジョン・コングルトンを迎えた5作め『ボーイ・キング』は、プロダクションのメジャー感を強めたことによりまさに「ワイルド」な印象を前に押し出している。エレガントな風合いだった前作とは対照的だ。が、フォールズがハードロック化(マッチョ化)したのに対してワイルド・ビースツは、演奏と音色がハードになっても艶めかしさを失っていない。1曲めの“ビッグ・キャット”を聴いてみよう。ゆったりとしてシンプルなシンセとリズムのなか、シンコペートするメロディを歌うヘイデン・ソープの高音が聴き手の身体を撫でる。ビッグ・キャットとはイチモツのデカさに頼るしかない男への皮肉だそうだが、どこかしらその視線には憐憫も含まれているようだ。ぶっといエレキのせいかストーナーめいた質感もあるファンク・トラックの2曲め“タフガイ”もまた、逞しい男を演じることにすがる男の悲しみを異化する。ヘヴィなベースがドラムと地を這う3曲め“アルファ・フィメール”では群れの頂点に立つ女に屈する……。アルバムの前半はとくにそうだが、マッチョを装ったサウンドに乗せて、しかしフェミニンな歌を絡めながら男の存在意義を揺さぶっていく。
 転換となるのは6曲めの“2BU”で、この曲はアルバムのハイライトでもある。多くのひとがアノーニを連想するだろうトム・フレミングが深い声で、ロウなコミュニケーションを情熱的に求めてみせる。その様は両性具有的な佇まいを獲得していると言えるだろう。もう一曲フレミングがリード・ヴォーカルを取る“ポニーテイル”もまた、メランコリックに切実に愛を希求する狂おしいラヴ・ソングだ。そこではエフェクトのかかった声のループやシンセなどもかぶせながら、しかしたしかにヘヴィなロック・サウンドが鳴らされている。そしてラストのピアノ・バラッド“ドリームライナー”。はじめは男性性を対象化していたはずのアルバムは、やがて男(たち)の弱さや情けなさ、頼りなさを晒して幕を閉じる。

 『ボーイ・キング』は旧態然とした男の悲哀を皮肉りつつも、同時に共感と同情を滲ませながらゆっくりと浮かび上がらせていく。それは結果的に、中年化していくロック・ミュージックへの眼差しでもあるように僕には感じられる。そこで男たちはたしかに傷ついている。苦悩もしている。それがいまの時代におけるアート・ロックのアクチュアリティのひとつと言えるのではないか。それをたんなる観念の産物にすることなく、ファンキーかつセクシーなサウンドを遵守するのは野獣たちの意地のようだ。まったくもって独自の道を追求し続けるバンドである。

 ジョン・グラントは、ゲイとして歌うことを少しも恐れていないシンガーだ。その痛み、喜び、孤独、愛を赤裸々にさらけ出し、HIVポジティヴであることも公表し、さらにはその心境をも歌っている。だから彼が日本に来ると聞いたとき、僕が会ってほしいと真っ先に思ったのが田亀源五郎氏だった。田亀氏こそ、日本でゲイとして表現することをもっとも恐れていないアーティストのひとりだからだ。ゲイ・エロティック・アートというのは、ゲイであるということを肯定する、その支えになるはずのものだ。形は違えども、両者の表現にはゲイとして生きることがたしかに刻まれている。
 そうして実現した対談は、想像していた以上に熱を帯びたものになった。ゲイ・カルチャーの現在をヴィヴィッドに伝えるものになったとも思う。僕は立ち会いながら真摯な対話に胸を打たれるばかりだった。

 そして、その貴重な出会いは思わぬ続報をもたらしてくれた。ジョン・グラントは今月のHOSTESS CLUB ALL-NIGHTERで再来日することが決まっているが、その際に田亀源五郎氏がイラストを手がけたジョン・グラントの日本限定Tシャツが発売されるそうだ。田亀源五郎のタッチがたしかに感じられるクールな仕上がり。率直に言って、大手アパレルが手がけたプライド・コレクション系のアイテムよりも、ひと癖もふた癖もある絶妙なものになっていると思う。両者のファンだけでなく、先日の対談で興味を持たれた方にもぜひチェックしていただきたい。

 フロリダのゲイ・クラブで起きた銃乱射事件の数日後、ジョンはコンサートでカイリー・ミノーグをゲストに迎えて“グレイシャー”を歌いあげた。対談でも話題になった曲だ。僕は田亀氏の『弟の夫』の連載を毎月読みながら、その曲の歌い出しのことを思い返す……「自分の人生を生きたいだけ 知る限りのいちばんいいやり方で」。そして『弟の夫』に目を戻すと、そこではゲイたちの「自分の人生」が丹念に描かれている。あらためて、この特別な出会いを祝いたいと思う。 (木津 毅)



屍体×埋葬=? - ele-king

 ゾンビー=屍体、ベリアル=埋葬というわけで、この10インチは墓場のダンスホール、この10年間のUKアンダーグラウンド・シーンにおいて、そのダークさ、そのアンダーグラウンドさでもって、先へ先へ行こうという態度によって、リスナーを魅了してきた2人のキーパーソンによる大注目の曲だ。ベース・ミュージックがどこに行くのかという点、そしてポスト国民投票/ブリグジットのアンダーグラウンド・ミュージックを聴くという点において、まったく興味深い。聴かなければならない1曲である。

 シカゴ・ゲットー・ハウス的な声ネタの反復とベース・ミュージックのもっとも精鋭的な響きとが溶接する。テクノと呼ぶにはダンスを欠いて、ベース・ミュージックと呼ぶにはビートはミニマリスティック。そしてそれは深く深く沈んでいく。BPM的にはクラブでかけられるが、動くのは腰ではなく頭だろう。ひとつ言えるのは、このきつい社会からこぼれ落ちた者たちの居場所を拡張するのは、たとえばこういう音楽だということ(ここまでやってもいいんだという意味で、はみ出すことを恐れないという意味で)。とにかく、まあ格好いい。UKのアンダーグラウンド・ダンス・ミュージック、動いてますねー。

 なお、この曲は9月初旬に〈ハイパーダブ〉からリリースされるゾンビーの4枚目のアルバム『Ultra』からの先行リリース曲。そのアルバムには、ダークスターやテクノ系のRezzett(トリロジー・テープスからの作品で知られる)も参加している。否応なしに期待は高まる。

坂本慎太郎 - ele-king

 世界は転機を迎えている、それは間違いない。日本は自分が望まなかった未来へと進んでいる。ただでさえ中年になるとマイナス志向になってしまうというのに、せめて清水エスパルスが毎回快勝してくれればいいのだがそういうわけにもいかず、現実は厳しいのう。

 『ナマで踊ろう』よりも反復するリズムをいっそう活かし、さらに空間的で艶めかしい音響をモノにした本作『できれば愛を』(の1曲目)を最初に聴いてぼくが真っ先に思ったのは、カンの『フロウ・モーション』だった。それはクラウトロックの王様が、ハワイアン/レゲエ/ディスコに接近した作品で、老練なゆるさがある。が、『できれば愛を』から見たら、『フロウ・モーション』でさえも、やかましい/うるさい/説明的で押しつけがましいな音楽かもしれない。
 これはまず音響的冒険であり、最高のダブ・ミキシングだ。テンポの遅いミニマルなドラムは魅力たっぷりで、そのリズムに絡まるベースがまた独特な間合いで、しかも絶妙にディレイがかけられている。この、あたかも無重力の別世界で生成しているかのようなドラム&ベース=グルーヴは、唯一無二の素晴らしさだ。舌を巻いてしまう。が、アルバムの脱力感は、いま現在のぼくの無気力さと紙一重でもある。その空しさは、後任も決まらないうちに編集部から姿をくらました橋元優歩さん(長い間お疲れ様でした~)が原因ではない、政治的な理由からだ。
 もっとも坂本慎太郎は、表面上は、『ナマで踊ろう』以上に社会問題に深入りすることはしなかった。「できれば愛を」という言葉は、例によって坂本節というか、ある意味ソツがなくカドが立つ言葉ではない。それは彼の一貫した美学でもある。『ナマで踊ろう』はある意味自ら掟を破った作品だったわけだが、今回は、音楽的には前作をアップデートさせながら、じつは言葉的にも引き続き絶望的な気持ちを代弁している。東京都知事選後のいま聴けば特別な意味を帯びてくるだろう。

自分のしたことが招いている
悲しいくらい俺は
恥ずかしいくらい俺は
さみしいくらい俺は
無力だ “超人大会”

 坂本慎太郎がニヒリスティックなのは、いまにはじまったことではない。彼にユーモアがあるのもわかる、それでも、すべてが馬鹿に見えてしまっている“マヌケだね”のような曲に、いまのぼくはどうしても乗れない、愛想笑いすらできない、本当に落ち込んでくるのだ。自分に余裕がないからだろうか。中年だからだろうか。自分が本当に無力でマヌケだかろうだか。いまはそんなふうに抽象的に、自分たちはダメだダメだダメだと繰り返することに意味があるのだろうか……いや、坂本慎太郎には意味があるのだろう。なにかそれなりに強い気持ちがなければこの作品は生まれない。だが、あまりにも現実がひどいせいだ、いまはその抽象性にぼくは違和感を覚える。

 ディスコというのは70年代の音楽であり、ソウルの発展型だ。2016年、ダンス・ミュージックはいまも動いている。カンはさまざまな世界の音楽にコネクトしようとしたし、『フロウ・モーション』にもその痕跡がある。今年のグランストンベリー・フェスティヴァルにおけるデイモン・アルバーンはシリアのオーケストラを招いて演奏した。それは、世界の転機にいる現在の、彼なりのひとつの回答だろう。もちろんそんなことだれもができるわけではないけれど、音楽にはまだできることがある。わかった! 年末号の紙エレキングの特集はこれでいこう。だったら、いまぼくたちに何ができるのか? ただ本当に無力でマヌケなだけなのか?

白川まり奈 妖怪繪物語 - ele-king

オカルト・SF・怪奇漫画界伝説の奇才・白川まり奈、驚愕の未発表作品を発掘! ここに刊行!!

『百鬼夜行絵巻』から鳥山石燕や
『稲生物怪録絵巻』を経て水木しげるに到る、
絵物語としての妖怪画の伝統を受け継ぐ偉業
―東雅夫(アンソロジスト、文芸評論家)

カバーは前面金箔押し+2色印刷
本文は6種類の紙を使い分けた、豪華特殊仕様!

没後15年以上経過する、このミステリアスな作家の作品のほぼすべて絶版。熱狂的なファンが血眼になって古書を探しているなか、未発表原稿が存在した。この「妖怪繪物語」は、白川まり奈が生前にライフワークとして取り組んでいた、幻の原稿である。ミントコンディションにて10数年眠っていた驚愕の内容が今明らかになる!! 解説はアンソロジストの東雅夫。妖怪研究家としての白川まり奈の魅力を解き明かす。

封入特典:
『侵略キノコ新聞』と題した投げ込み特別付録付き。マニア必読の知られざる白川まり奈の世界を紹介する。さらにここには、90年代にある雑誌に発表された、誰も読んだことのないであろう、超短編漫画作品を発掘し収録する!

■目次
第一話 鬼 
第二話 鉄鼠
第三話 九尾狐
第四話 付喪神
第五話 天狗の呪い
第六話 八人坊主ひとねぶり
第七話 輪入道
第八話 ムジナの祟り
第九話 河童

解説:東雅夫
未発表原稿との出会いから書籍化まで:古書ビビビ・馬場幸治



■著者プロフィール
白川まり奈(しらかわ・まりな)
一九四〇年長崎県生まれ。二〇〇〇年没。武蔵野美術大学を中退した後、漫画家、イラストレーターとして活動。オカルト系、SF系作品を曙出版、ひばり書房(二〇〇四年閉業)から多数発表。二〇一六年、現在多くの著作が絶版であるなか、幻の未発表原稿を発掘。今回、生前にライフワークとして取り組んでいたという幻の未発表原稿『妖怪絵ばなし』が『白川まり奈 妖怪繪物語』として書籍化される。

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