最近の流れであるとか傾向とかトレンドのようなものと、このアルバムはいっさい関係ないところにあるので、極めて主観的なレヴューになってしまうだろうが、まず言っておきたいことは、ここ数年間でもっとも軽い音楽、空気のように軽い音楽がこれで、その軽さゆえに人は選曲を間違えたDJのように戸惑いを覚えるだろう。みんなが怒っている/もしくはどうでもよくなっている/もしくは不安がっている/もしくはやる気満々のこの時代に、いやなにこの軽さ……である。個人的に追い続けている音楽のひとつ、ギャビー&ロペスの5年ぶりの新譜を一聴したときに感じたのは、自分がふだん聴いている(ある種ファナティックな)音楽とのあまりの落差からくる違和感だった。
なに言ってるんだよ、これがいつものギャビー&ロペスじゃないか。さてそうだろうか? (故・中西俊夫氏の功績のひとつと言える)ナチュラル・カラミティの時代から大筋は変わっていない森俊二のギターの音色……石井マサユキとのギャビー&ロペスを結成し、自分たちの表現を追求し、思い出したかのように作品をぽつぽつと出し、そしてぼくは毎回同じように個人的に好きになり……だが、時代と格闘している音楽がとくに印象深かったここ1〜2年の流れで聴いたときは、うーん、これでいいのだろうか、と思ったのが正直なところだった。時代と切り離されているということは、孤立しているということである。庶民的なるものからは隔絶されているということだ。
が、2回、3回と通して聴いて、4回目を聴いたころには、リフティングを10回できるようになった少年がすぐさま100回できてしまうように、むかつくぐらいリラックスしているこの新作をぼくは何回も繰り返し聴いているのである。そしていまは、本作が彼らにとってのひとつの高みではないかとさえ思っている。一聴したところ地味に思えるこの音楽は、じつに繊細な構造を持っており、変化の乏しく思える曲調もじつは華麗に変化する。前作までにあった物語性はさらにまたミニマルに、つまり何かが起こることのないものへと発展している。深読みすればそれは、これだけ何もかもが起きている時代への、涙と汗に濡れたTシャツと過剰さへの反論とも受け取れる。
ふたりのギタリストは、さらにまた引くことで足しているのだ。ストイック、とも違う。出しゃばることはないが、自由に弾いてもいる。ふたりはこの30分強のなかで、混沌とした調和の境地に達している。ベスト・トラックは“DROPED BLUE”だろう。メロウで非日常的な“ACROSS THE RIVER”よりもこの曲だ。なぜならこの曲は、本作の1曲目の“SWEET THING”における日常的ミニマリズムの註釈とも言える。つまり、何も起こらないことの逆説的なドラマ。ギャビー&ロペスがこの作品で教えるのは、日常こそが最高のトリップということである。騙されたと思ってやって欲しい。このアルバムを聴きながらいつものように駅に向かい、電車やバスに乗ることを。
「!K7ã€ã¨ä¸€è‡´ã™ã‚‹ã‚‚ã®
思春期を失敗したひとにありがちな、これは僕だ、という誤解がある。青春パンクに悪態をついた15歳のころ、「冷凍都市」とは何かを知りたくて上京した19歳のころ、中古のアナログ・ターンテーブルを捨てたあとでも MUJI の据付ラックに飾り続けた『スピッツ』、ブルー・クリア・ビニール仕様の12インチ、よしもとよしとものオマケ漫画つき。そういえば漫画『青い車』は生活に困った学生時分に泣く泣く売ろうとしたらなぜか売れなかったから、まだ本棚に残っている。だから20歳を越えれば〈Plus 8〉や〈Minus〉レーベルのカタログを漁るものだと思い込んでいた。結果、Beatport にばかり課金した。東京での学生生活は沙村広明の『おひっこし』のような世界のはずだと夢見ていたが(それもそれでディストピア・コメディだけど)、異界の果て、コンクリート・ジャングルの見えない東京砂漠を体感した以外、だいたい予想ははずれた。三億円事件が起きた現場のすぐ近くでした。
おそらく後半はズレている。けど、東京のすみっこかその周辺、小田急線、京王線、そして西武線の風景に転がり込んだオールド・スクールの音楽マニア志望などこんなもんだろう。とタカをくくったうえで、スカートこと澤部渡は僕だと誤解した。4、5年前の渋谷、たぶん O-Crest あたりのミツメ目当てで見に行ったライヴ以来、そう思っていた。一聴してわかる雑多かつ重厚な音楽的背景と素養、ある意味で向井秀徳的なルックス、何より圧倒的な曲の素晴らしさ。何度も何度でも聞くに耐えうる曲自体とアルバム全体の構成、のひねくれたあの感じ。列挙すればするほど自分がかつて持ったことないものばかりだけれども、それでも同い歳の僕は澤部渡だと信じてやまなかったのだ。ポップ・スターはそういうものだということにしておいてほしい。
先日、広島にある STEREO RECORDS に12インチを売りに行こうとした。手持ちのそれらの相場をいやしくも調べていたら、スカートが『CALL』のアナログを出すことを知った。
〈カクバリズム〉の一員となって以降の澤部渡が、さらなる名曲を量産しているのは周知のとおりで、2016年にCDで発売された後、先述のとおりアナログで再発される予定の『CALL』はこれまでの総決算であると同時に、新たなデビュー・アルバムのような作品だった。収められた曲たちの多彩さ、ポップネスはそのままに、あきらかに豊穣になったサウンド・プロダクションを武器に、一粒一粒の音の輪郭がより聴き手に馴染みやすいものとなっていた。メディアのベスト・アルバム・ダービーには意外にもあまり顔を出していなかったけど、それはこのアルバムのポップネスのひとつの機能だと考えている。つまり、いかなる流行、潮流、世界的な趨勢とも切り離されながら、それでも必然しか感じないポップ・ソング。8分のルートを走るベースラインが印象的な表題曲の“CALL”は、これまでの複雑性から解放されたかのようなストレートなうたで、そこには衒いなど突き抜けた強度があった。
それから約半年の短いスパンで上梓された初の全国流通シングル「静かな夜がいい」の表題曲は、ディスコグラフィー上では“都市の呪文”(『サイダーの庭』)から“回想”(『CALL』)につらなるような、ギターのカッティングで運ぶアーバン・ファンク・マナーの1曲だった。イントロのリフ、そしてブレイク後の跳ねるベース・ソロなど、一聴して誰しもが思い浮かべるのはシュガーベイブの“DOWN TOWN”に違いない。しかしその元ネタの下敷きとされた The Isley Brothers から滲むような「黒さ」は、“静かな夜がいい”からは感じない。むしろ Bruce Roberts の“Cool Fool”あたりを引き合いに出したくなるような、「白い」ファンクネスやAORの趣をもっている。この点は D'Angelo からの影響をもとに、『Obscure Ride』から「街の報せ」にいたる、cero の提示する曲群との分岐点ともなるのだろう。
澤部のフェイバリットのひとつだろうムーンライダーズの『DON'T TRUST OVER THIRTY』は1986年の作品で、その1年後に生まれた僕たちは今年30歳になる。15歳のときに遠くに聞こえた青春パンクのバンドも、同じ名前の違う曲を歌っていた。
そういえば前田司郎による映画『ジ、エクストリーム、スキヤキ』(2013年)は、30歳を超えた大学の同級生たち(とひとりのカノジョ)が、ただ最高のスキヤキを食べるために繰り広げるロード・ムービーだった。こう書くと未見のひとはいったい何の映画だと思うに違いないが、岡田徹が劇中音楽を手がけていて、いくつかムーンライダーズの曲がかかる。それらがこの映画の中の風景に完全に溶け込んで、思い当たる節のある(と誤解する)僕たちは幾度となく涙腺が緩んでしまう。エンディングに“Cool Dynamo, Right on”のギター・イントロがかかるところなんかもう嗚咽が止まらない、なんて、何かしらの病である。
その曲には、こんな歌詞がある。
Coolなはずの 今日のパーティ
道に迷った みたいだな
君のスカートの
中に地図は 宿るかい
“静かな夜がいい”は30歳を目前にした澤部渡が、ポップ音楽家としてさらなる成長を遂げていく最中に残した1曲となった。この表題曲を含めた4つの曲を地図に、さらなる旅程をかさねていくスカートを同じ時代に遠くから見続けられることが素直に嬉しいし、3月25日に最終回を迎える『山田孝之のカンヌ映画祭』に提供した“ランプトン”(名曲!)では、早速の新機軸を打ち出したようにも思える。しかしまずは「静かな夜がいい」こそが、僕にとって『ジ、エクストリーム、スキヤキ』と同様、不意に見返す、聞き返す作品となってしまうだろう。それはもう、すでに重ねすぎている過去を思い出すための大切な道標として。
君に預けた 僕のハッピー
冷凍にして 持ってておくれ
そうすれば いつでも
あの頃が 戻るだろう
(ムーンライダーズ“Cool Dynamo, Right on”)
いい意味でぶっ壊したかなとは思います。──Ryugo
うん。ぶっ壊した。──Sophiee
![]() ゆるふわギャング Mars Ice House SPACE SHOWER MUSIC |
ele-king読者の耳にはもう届いているに違いない。ゆるふわギャング(Ryugo IshidaとSophiee、ビートを手掛けるAutomaticのユニット)の1stアルバム『Mars Ice House』が4月5日にリリースされる。クラウドファンディングで制作資金を募集するや即座に目標金額を上回り、すでに話題沸騰のゆるふわギャング。フロント・メンバー、Ryugo IshidaとSophiee、インタヴューでこちらの質問に答えるふたりを見ていると、いつの間にかその場の空間全体を俯瞰しているもうひとりの視点に気付かされる。あるいは映画をVRで見ているような感覚に陥るとでも言えばいいのか。ふたりの紡ぎだす空気はまるで映画のようだ。「ね?」とSophieeが横のRyugo Ishidaに微笑みかけると、「うん」とRyugo Ishidaが答える。言葉は少ないがこのやりとりが醸す空気は雄弁で温かい。新作アルバムの話からふたりの生い立ちにまで遡ってのロング・インタヴュー!
昔から学校嫌いで、小学校5年生ぐらいから学校行ってない……学校はとりあえず嫌いでしたね。中学校いっても、常にひとりでいるのが好きだったから、保健室にいるかどっかで寝てるか。──Ryugo
■ゆるふわギャングの1枚目ですね。
Ryugo Ishida(以下、Ryugo):やっと……
Sophiee:やっと……
Ryugo:……できたっていう。
■ゆるふわギャングのはじまりは去年(2016年)の夏……でしたよね?
Ryugo:……ぐらいにふたりで“Fuckin’ Car”という曲を作ったのがきっかけです。PVも撮ったんですけど、この曲をゆるふわギャングで出そうというのがきっかけで、そこから色々曲ができていって、名前もそのままゆるふわギャングでという感じです。
ゆるふわギャング“FUCKIN CAR "
■でも、楽曲ができたのとゆるふわギャングの結成はほとんど同時で……と、そこからのアルバムと考えると早いですよね。
Ryugo:早いんですけど……やっぱり1枚目だし、ちゃんとした形でリリースするのは初めてだから嬉しいですね。いままでとは全く違うっていうか、気持ちが……
Sophiee:ね? 気持ちが全然違うっていうか、アーティストだ! っていう(笑)。
Ryugo:まず最初のクラウドファンディングでふたりで出したやつよりもこれは自信が違う。俺たちはこれっていう……
Sophiee:うちらがこうです! みたいな……たぶん一番クラシックだと思う。次に何が出ても(笑)。
Ryugo:それはある。
Sophiee:固い……
Ryugo:すべての始まりでもある……
Sophiee:まだ序章に過ぎない……
Ryugo:実際のところこのアルバムができてからも、別の曲もバンバン作っちゃってるから、俺たちの中では初めてだけど、もう古いというか(笑)。どんどん自分たちがアップグレードしていってるから。
Sophiee:ネクストレベル。常に先を見て曲を作ってる。
Ryugo:でもなんか戻れる場所がちゃんとあるっていうか、このアルバムを聞けばこの感じだなっていうか。わかるというか。
Sophiee:たしかに。
■バンバン作ってるということですが、もう何曲くらい録りましたか?
Ryugo:10曲いかないくらいはもう録りましたね。
Sophiee:10曲くらいは作ってるか……曲作りの仕方自体はあまり……スタイルは変わらないんですけど、気持ちも変わったし、前よりも全然楽に曲を作れるようにもなった。いい意味で。
■それはコミュニーケーションがよりスムーズに取れるようになったということですか?
Ryugo:コミュニーケーションというよりは感覚というか、自分たちの曲を何か作ろうと思った時の曲作りの仕方が決まったというか。いままではリリックを書くのも大変とかもあったけど、いまはもうないもんね。よっぽど集中力が切れてなければリリックが出てこないっていうことは滅多にないし。曲を作ろうってなったときには、大体自分たちの力がバーンって、100%出せるようになったというか。どのタイミングでも。いまなんかその調整をしているというか。
Sophiee:ね。何か細かいところまで目がいくようになった。前はリリックを書くのに精一杯、でもいまはもっと余裕ができて、音の聞こえ方だったり声の出し方だったりとか、そういうところまでちゃんと気を使えるようになった。そういう意味でも100%の自分で曲を作れるようになった。
■このアルバムを作ったのが大きかったんですね。
Ryugo&Sophiee:ですね。
Ryugo:これを作って、スーパーモードになったっす。サイヤ人モードに常に入れるようになったっす。
Sophiee:ワンナップキノコみたいな。このCDが(笑)。
■アルバムの内容に踏み込む前に、ここで一度生い立ちまで遡って少しお話を聞かせてください。まずRyugoさんの地元は土浦でしたよね。
Ryugo:土浦ですね。
■ご兄弟はいらっしゃいますか?
Ryugo:妹と弟がふたりいます。4人兄弟の長男です。
■土浦にいたときはずっと実家にいたんですか?
Ryugo:そうですね。自分でアパート借りたりとかもあったけど、基本的には実家ですね。
■どういう子供でしたか?
Ryugo:昔から学校嫌いで、小学校5年生ぐらいから学校行ってない……学校はとりあえず嫌いでしたね。中学校いっても、常にひとりでいるのが好きだったから、保健室にいるかどっかで寝てるか。高校は仲良い先輩が行ってて、誰でも入れる高校だったからただちょっとノリでいって、適当に卒業したって感じなんですけど。そうですね……遊ぶのは好きだったけど、とりあえず勉強とかもすごい嫌いだったし……っていうのはありますね。あんまり人と関わりたくなかった。グレてたし。
■いつ頃からグレてました?
Ryugo:自分は中1ぐらいですかね。サッカーをやってたんですけど、サッカー辞めて、中1ぐらいの時に本格的にグレ始めた感じですね。
■グレるというのは具体的にどんな感じだったんですか?
Ryugo:学校は嫌いだったけど、先生がいちばん仲良かったから、グレてても何してても絶対怒られなかったというか、逆に(笑)。もうそれでいいからみたいな。放っといてくれたというか……どうグレてたんだろう? とりあえず先生も仲が良い先生としかいなかったし……それ以外の先生とか先輩が嫌いでしたね。
■上下関係みたいなのが気持ち悪いんですかね。
Ryugo:そうですね。ちょっとあんまり得意じゃないですね。難しいです。
■サッカーが好きだったんですか?
Ryugo:サッカーはすごい好きでしたね。小学校のとき少年団に入ってサッカーやってました。フォワードやってましたね。下手くそだったんですけど足が速かったんで(笑)。
■ああ、足速そうです。
Ryugo:100m11秒台でした。
■それは速いですね。
Ryugo:そうなんですよ。めちゃめちゃ速かったんです。100m走で県大会の決勝戦まで行きました。だからサッカー下手くそでも足速かったんで選抜チームにも入ってましたね。
■ボール持ってゴールまで運ぶ感じですね。
Ryugo:そういう系ですね。それしかできなかった逆に。
■なかなかかっこいい不良ですね。
Ryugo:でも不良ってわけでもないんですけどね。ただなんかちょっとヤンチャなだけだったというか。とりあえず昔っから人が嫌いだったというか。目が悪かったからよく喧嘩とかも売られてたけど、喧嘩はそういうときにするぐらいでした。
■暴走族とかはやってないんですか?
Ryugo:自分たちの地元に暴走族もなかったし、バイクにも興味なかったんですよ。どっちかっていうとそのときギャングの方が興味があって、上下のディッキーズとか着て溜まってるのが好きだったというか。
Sophiee:カルチャー?。
Ryugo:そうですね。カルチャーにすごい憧れていたんですよね。従兄弟がちょっとやんちゃだったんですけど、そういうファッションをしていて、それにすごい憧れてたから。従兄弟は2つか3つ上なんですけど、ヒップホップが好きで、俺もそれに憧れて改造した制服を着たり、ディッキーズとか着て街でたむろってるのが好きでした。
■それが中学ですか?
Ryugo:はい。高校の頃はもう割と落ち着いちゃってて、その頃には音楽のことばっか考えてました。
Ryugo Ishida "Fifteen"
■ラップをはじめたのは15歳とおっしゃってましたね。
Ryugo:中学校終わるぐらいの頃にはラップが好きになってたから、みんなは高校に入ると同時にバイクに走っていくけど、俺はクラブ遊びに走っちゃって……ハマっちゃってというか。そうですね……って感じでした。
■DEAR’BROさん(※ディアブロは土浦のラッパー。Ryugo Ishidaがラップをはじめるキッカケとなった)と会ったのは?
Ryugo:中2か中3どっちかですかね。そのときは……初めてクラブに行って、クラブから自転車に乗って帰ろうとしたときに、いきなり「おまえ待て」って言われて、「おまえいくつだ?」って。「14です」って言ったら、「俺の曲聴け」って言われて、怖って(笑)……思ったのがきっかけだったんですけど。なんだこのおっさんはって思って。帰って先輩の家でもらったCD聴いたらめちゃめちゃかっこいいと思って、CDの裏に書いてあった番号に速攻電話して、で、その次の日に飯に連れてってもらったんです。1週間後ぐらいには「俺のステージ立て」って言われて、サイドMICとかをやってたりとかしたのがはじまりで、あとは自分の同級生に音楽を勧めて、「一緒に曲をやろうよ」って言ったりして、やったりとかもしてたんですけどね。いつの間にかみんないなくなっちゃって……って感じでした。結局先輩と一緒にいるか……って感じでしたね。仲良いのは地元の1個上の人たちで、3人仲良い人がいるんですけど。その人たちとしかほとんど遊ばなかったです。この先輩たちはいまも仲良いですね。だから孤立はしてたかもしれないです、常に。グレてるときもひとりだったし。
■そういうひとりのときって何を考えてたんですか?
Ryugo:クソだな〜と。毎日つまらないなーと思ってました。ずっと。なんか面白いことないかなぁーと思って。だから学校の先生が鍵をいっぱい持ってるんですけど、それを盗んでひとりで学校を冒険したりしてました。みんなが勉強をしている間とかにひとりで鍵のかかった部屋に忍び込んだり、ひとりでサボってましたね。
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Sophieeはお兄ちゃんがギャングスターで、悪いんですよ。地元でけっこうボス的なお兄ちゃんがいて、妹もいて……妹はまったく真逆で超まじめで勉強もできる。でも私は何もできなかったんですよ。──Sophiee
![]() ゆるふわギャング Mars Ice House SPACE SHOWER MUSIC |
■音楽を最初にかっこいいと思ったのはいつなんですか? 最初にCDを買った音楽というか。
Ryugo:ああ。小学校6年生ぐらいの時に同級生がロスだかどっかに行ったときに2パックのCDを買ってきてくれたんですよ。「好きそうだよ」って。それがはじまりだったかもしれないですね。いちばん最初のCDはそれで、あと従兄弟がヒップホップを聴いてたんですけど、その影響でZEEBRAの『STREET DREAMS』とかEMINEMの『カーテンコール』を聴いたり。それで学校には行かずに夕方まで寝て、夜中はどっか遊びに行くかみたいな感じでしたね。ずっとそんな感じでした。
■2パックが原体験というのは少し秘密に触れた感じがしますね。では、ここからはSophieeさんにはお話を伺いたいです。Sophieeさんはどんな子供でしたか?
Sophiee:Sophieeはお兄ちゃんがギャングスターで、悪いんですよ。地元でけっこうボス的なお兄ちゃんがいて、妹もいて……妹はまったく真逆で超まじめで勉強もできる。でも私は何もできなかったんですよ。なんかもう本当に……なんていうんだろう? 悪さしかしないし、親にもずっと怒られてた。けど、お兄ちゃんとは気が合ってて……って感じで。学生のときもとくにやりたいこととかもなくて、私も毎日つまんないなって感じでした(笑)。
■ずっと品川ですか?
Sophiee:品川ですね。本当東京にしかいなくて、ずーっと。地方遊びに行ったりとかも全くなかったし、東京から出なくて、地元で遊ぶとかもなくて、遊ぶってなると渋谷とか、ほんと東京のただの女の子みたいな感じなんですけど。
■品川の、駅でいうとどの辺りになるんですか?
Sophiee:駅だと天王洲アイルっていうところですね。お父さんは離婚していなくなったんですけど、それまでは親もずっと喧嘩してるし、なんか部屋でずっとぼーっとしてるとかそんな感じでしたね。
■地元の中学校に通ってたんですか?
Sophiee:地元の中学に行ってて、昔からずっと海外に興味があって。そのときくらいから日本を出たいなと思いはじめて、それで自分でバイトをして海外行こうと思って、そのためにバイトを中学生からしてました。Sophieeもけっこうひとりが好きで、そうやって貯めたお金でひとり旅とかしに行ってましたね。最初に行ったのがスペインなんですけど、それが高校1年生の頃です。あとはニューヨーク行きたいなと思って、そのためにまたアルバイトしてお金貯めてニューヨーク行ったりとか。
■英語やスペイン語が話せるんですか?
Sophiee:海外にはずっとすごい興味があったから英語の授業だけはめっちゃ真面目にやってて、自分でネットを使って海外の人とSkypeしたりして喋ったりして……独学? で、英語は多少、ほんとちょっとだけど喋れるようになりました。でもスペインに行ったときに痛感したのは、スペインは英語が全く通じないんですよ。英語で喋りかけてもスペイン語で返してくるし、意地悪でした。あっちの人はプライド高いっていうか、スペインだったらスペイン語話せよみたいな。すごい冷たくされて。そういう国なんだなと思って、それでちょっとスペイン語も勉強しなきゃなと思って、スペインにいる間は自分でスペイン語の本を買って読んだり、それでちょっとですけど覚えましたね。高校で選択授業というのがあって、何か国語の中から選択して自分で勉強できるコースがあって、それで私はスペイン語を選択して、ちょっと勉強したりとかしてました。
■スペインに行ったのは高校1年の夏休みとかですか? どのくらい行ってたんですか?
Sophiee:2週間くらいですね。夏休みとかじゃなかった気がしますね。普通に高校に行かないで行ったと思います。それで高校も途中で辞めたんです。ひとり旅が楽しくなっちゃって。別に高校行ってるんだったら、海外遊びに行ったほうが面白いかなと思って。友だちとかも普通に仲良かったし、成績もそんなに悪くなかったし、先生ともそんなに仲悪くなかったけど、いきなり友だちとかにも言わないで高校辞めちゃって。けっこうびっくりされたんですけど。「辞めたの?」みたいな。突発的なんですよ。行動が。あんまり先を考えない。高校も辞めるって言ったら辞めるし、親も私がなんかやるとか辞めるとか言ったら、もう聞かないってわかってるから。(高校を辞めるって言ったときも)「はい、わかりました」みたいな感じでした(笑)。
■それが高校何年の時ですか?
Sophiee:2年生に上がってすぐですね。けっこう変わってましたね。友だちを作ろうともあんまり思ってなかったけど、自然にできて。高校の友だちとかも普通に仲良かった。周りにも変わってる友だちしかいなかったですけど。でもそんなに派手ではなかったですね。
■少し話戻りますけど、海外に行きたくて中学2年からアルバイトしてたんですよね。
Sophiee:お兄ちゃんの仲良い友だちがやってるピザ屋に年齢嘘ついてアルバイトやったりとかしてて、もう15歳くらいからけっこう六本木で遊んだりしてました。クラブに行ったりとか。そのときはIDチェックとかもあまり厳しくなかったから。でもそういう話を高校ではしなかったですね。なんか夜遊ぶ友だちと学校の友だちみたいな感じで分けてました。
■ニューヨークはいつ行ったんですか?
Sophiee:ニューヨークは高校辞めてすぐですね。ニューヨークは初めて行ったアメリカだからかもしれないけど、すごい好きなんです。音楽とかヒップホップを知りはじめてすぐ行って、ビギーの映画を見てかっこいいなと思ったり……すごい影響を受けましたね。アメリカの音楽がずっと前から好きだったから、日本人の音楽はあんまり知らないんですよね。今もアメリカの音楽しかあんまりわからないです。
■Sophieeさんは独特の言語感覚がある気がしますね。
起きてる時間を今日と呼ぶなら
今日は続くよね all night long
“Go! Outside”
ミシュランにも載らないようなメニューで
星じゃ表せられないようなテイスト
処女みたいなpureな心
見る世界はゴミの紙袋
“Dippin’ Shake”
ゆるふわギャング "Dippin' Shake"
■こういったリリックにそれを感じます。日本語だけどメタファーが日本語の感覚にとどまっていないというか。
Sophiee:英語とかだといろんな言い方があるじゃないですか。アメリカの音楽が好きなのも歌詞とか上手いなと思って。言い方とか伝え方が、日本人ってけっこうストレートじゃないですか。そっちの方が伝わりやすいのもあるし。Sophieeはアメリカの言い回し方が好きで、ちょっとくどい言い方みたいなのを日本語でもできたらいいなと常に思ってて、けっこうリリックもくどい言い方をしているんですけど。そういうのは常に意識してます。
■昔からそういうのが自然な感じでしたか?
Sophiee:アメリカかぶれじゃないけど……とにかくアメリカのカルチャーに憧れてて。だから子供のときは早い段階で@#$%もやったし、お兄ちゃんがギャングスタだったのもあるからその影響で@#$%とかを覚えて一回ちょっと頭おかしくなっちゃったときもあるし。いろいろ乗り越えていまがあるけど、ニューヨークに行ったことがけっこういまの自分に影響しているかもしれないですね。タフだったなぁと思って。
人間の汚さ……ですかね。昔から感じていたことはたくさんありますけどね。なんだろう、やっぱり信用していた、自分たちが心を開いた人が全部嘘だったりするときは、ああ、こんなもんなんだなっていう。──Ryugo
別にうちらワルぶってるわけでもないのに、まぁそう見えるのかもしれないけど……そう見てガッとくる人もいるし、別にそんな何もしてないのに……。──Sophiee
■いまお話に出た「早い段階。というのはどのくらいの年の頃なんですか?
Sophiee:うーん。もう中学生のときとかもバンバンいろいろやってたし、だからなんか普通にタメの人とは話合わなかったり。けっこう背伸びしてた時期はありましたね。そんなつまんない遊びしないみたいな。
■ずっと何かに「染まる」みたいな感覚が嫌なんですかね。
Sophiee:でもなんかそう、自分の意思は絶対だから、自分の中で。だから人に何を言われても、へーみたいな。そう思うんだぁみたいな。でも私は違うけどみたいなのはありました。
■ざっと振り返りましたが、いま聞いたお話だけでもふたりともけっこう共通するものがありますね。ひとりでいるのが好きだったり……
Ryugo:いまはいろんなものを乗り越えたっていうのはあるかな。見たし。
■いろいろ……何を見ましたか?
Ryugo:人間の汚さ……ですかね。昔から感じていたことはたくさんありますけどね。なんだろう、やっぱり信用していた、自分たちが心を開いた人が全部嘘だったりするときは、ああ、こんなもんなんだなっていう。そういうことは何度もありました。だから地元でも、こういう人間たちのなかに染まりたくないというのはありましたね。こうなりたくないというか。
Sophiee:ね。なんか……そういう人ってけっこう寂しがりじゃないですか。人に強く当たって満足するじゃないけど、なんかすごい冷めた目で見ちゃうんですよね。別にうちらワルぶってるわけでもないのに、まぁそう見えるのかもしれないけど……そう見てガッとくる人もいるし、別にそんな何もしてないのに……。うちら好きなことやってるだけなのに、何でこうなっちゃうんだろうって思うことはよくあったかもしれないですね。もっとうちらの素直な心を受け取ってほしいなっていう。まぁ別にそんな狭いとこを見てないし。うちらは世界行きたいだけだから。
■そういう発想でいた方が絶対良い気がします。いまSophieeさんのリリックに少し触れましたが、Ryugoさんのリリックの持ち味はまたSophieeさんとは違いますね。感じたことをまんま口にしているというか。
Ryugo:そうですね。基本的には、感じたことというか見たものですね。いちばんダイレクトにというのを心がけてるんですけど。
■ああ。「感じたこと」と「見たもの」はたしかに違いますね。言葉を工夫しているように聞こえないのがRyugoさんの個性かもしれないです……と思いました。
Ryugo:昔はやっぱり飾ってましたけどね。いろいろ経験してきたことが自分たちの中であって、自分が地元を離れて東京に来て、すべてこうゼロになったとき……ふたりでこうなったときに、今まで飾っていたものは必要ないんだというか。Sophieeのリリックを聞いてからも書き方も全部変わったんですよね。。こういう風に言えばいいんだみたいなのがわかってから、いまみたいなリリックになったんです。それまでは飾ってたやつばっかだったし、だからSophieeに会ってからですかね。こういう風に書けるようになったのは。
ai ai ai ai 俺らの世界
でかい海を支配する狙い
金金金金 財宝全部頂き
面舵一杯帆を上げな
風向きに全てお任せな
“パイレーツ”
■この曲も勢いあります。
Ryugo:俺はけっこう『グーニーズ』とかキッズが出てくる映画が好きなんですけど、そういうイメージですね。この曲は『パイレーツ・オブ・カリビアン』を見ててそっからできた。船が出てきて宝探しするとかそういうイメージというか。全部奪ってやろうと思って、そういう奴らから。
Sophiee:汚い大人?。
Ryugo:(笑)。
■(笑)。とにかくふたりが出会い、ゆるふわギャングになってからRyugoさんも完全にギアチェンジした感じですね。
Ryugo:ですね。
■出会いと曲を作りはじめたこと、ゆるふわギャングの結成がほとんど同時なんですもんね。
Ryugo&Sophiee:そうですね、同時です。
■ここで話がインタヴューの最初のところまで一周しましたね。では、ここからアルバム『Mars Ice House』を掘り下げさせて下さい。
好きなことに夢中
広がる妄想まるで宇宙
目に見えないことが普通
でもなぜか見えちゃってる
それに気づく大人
もちろん不機嫌な面
“Stranger”
■これはRyugoさんのリリックです。この曲はアルバムのなかでも重要な位置付けの曲だと思いました。
Ryugo:“Stranger”はまた悪魔みたいな人が…。
Sophiee:現れて……。
Ryugo:いい加減にもういいなと思って。どこに行ってもこういう人たちはいっぱいいるんだなと思って。ちょうどこの時に『Stranger Things』を見ていたんですけど……。
Sophiee:Netflixのドラマ。うちらあれ大好きで。『Stranger Things』の物語も汚い大人から子供たちが逃げるような物語なんですけど、悪魔とか。それとうちらをシンクロさせて。
Ryugo:遊びに行ってるときにそういう面倒くさいと思うようなことがけっこうあって、リリックが1回書けなくなったんですよ。そのときにKANEさんと会って、“Stranger”が書けたことによって、そこからまったく違うものになった。
■なるほど。ある意味ターニングポイントとなる曲ですね。
Ryugo:そうですね。“Stranger”“大丈夫”らへんはターニングポイントにはなってるかなとは思います。
■聴いていても“Strangerから“大丈夫”の流れは印象的です。KANEさん(今回のアルバムのジャケットはKANE氏のアートワーク。SDPのグラフィティライター)と会ってリリックが書けるようになったということですが、何か具体的なことがあったのですか?
Ryugo:山梨に『バンコクナイツ』っていう映画を見に行って、そこにすげえいろんな人たちがいたんですけど。みんなが俺たちのことをホメたりとかしてくれてて、号泣しながら帰ったんですよ(笑)。帰りの山梨の高速のパーキングエリアで温かい気持ちになって高まっちゃって……号泣しながら「大丈夫だよ」っていうことを言いたくなった(笑)。
Sophiee:山梨行ったときにKANEさんとかWAXさん(SD JUNKSTA)に会って、KANEさんは前から会って知ってたけど、WAXさんはこのとき初対面で「ゆるふわじゃん!」みたいにすごい温かく迎え入れてくれたんですよね。その山梨の帰り……パーキングに停めた車の中でリューくんがSophieeの方ずっと見て黙ってて。なに? なに? どうしたの? と思って。でもずっと黙ってて、リューくんのその顔を見てたら涙出てきちゃってまずSophieeが号泣して、そうしたらリューくんも号泣しだして。なんでうちら泣いてるんだろう? 1回考えようってなって。これ嬉し涙だって。そっからバーって泣けるだけ泣いて、これ曲作ろうみたいになって。そのとき送られてきていたAutomaticさん(※もうひとりのゆるふわギャング。Ryugo Ishida名義のアルバム『Everyday Is Flyday』から現在のゆるふわギャングのビートまで一貫して手掛けるプロデューサー)ビートでリリックを書いた。そのときSophieeが「大丈夫だよ、大丈夫だよ」ってリューくんにずっと言ってたんです。だから“大丈夫”っていうタイトルをつけた。車を走らせては泣いて、止まって曲書いて、また走らせて泣いて止まって曲書いてみたいな(笑)。
Ryugo:KANEさんと会ったのはいちばんデカかったかな。完璧に変われたっていうか。俺もハタチの頃からずっと自分で店をやったりしていたんですけど、自分がやってきたことを否定され続けてきたんですよね。何やってもダメなんだなぁじゃないけど、自分でこう表現しているのに、けっこうそういうもんなんだな、そっけないなと思っていたんですよ。でもKANEさんみたいに良いって言ってくれる人がいるっていう。それでけっこう変わったかな。ポジティヴなヴァイブスになったというか。いい大人の人たちとちゃんと出会って心を開けるようになったというか、少しづつ柔らかくなってったかなぁなと思います。
■そもそもKANEさんとの出会いはいつだったんですか?
Sophiee:去年(2016年)です。
Ryugo:ですね。
Sophiee:なんか夏に、まだゆるふわギャングでアルバムを出すという話にもなっていない時期に、渋谷でリュー君がライヴに呼ばれていて、そのときにもう“Fuckin’ Car”ができてたんで、ライヴで1曲やろうみたいな。そこにゆるふわギャングで出て、そのライヴの後にKANEさんが声をかけてくれて、「いまのヒップホップってこうなんだ!」みたいな。すごい感動してくれたみたいで。目をキラキラさせながら話しかけてきてくれて。その時PE▲K HOUR(KANE氏プロデュースのブランド)の撮影とインタヴューの話をくれたんですよね。
Ryugo:それでモチベーションがバリ上がって……みたいな。そこからふたりでアルバム作っちゃおうみたいな。
Sophiee:うちらは絶対間違ったことしてないっていう、その自信がすごい湧いてきて。一気にそれから曲も書けるようになったよね。それまで良いものは良いみたいにちゃんと言ってくれる大人の人とかに触れ合うことが少なかったから、すごい嬉しかったんですよ。肥後さん(現ゆるふわギャングのA&R)が声をかけてくれた時もそういう感動があって、そういう人たちとずっと、常に一緒にいたいんで、ヴァイブスも下がんないし、好きなことを突き詰めてできるし。曲もそうだし、だからそういう面ですごい変わって。エネルギーを音楽だけに費やせるようになりました。
■お話を伺っていると、KANEさんはゆるふわギャングのキーマンかもしれないですね。
車を走らせてるEvery Night
助手席に座る彼女を見てたい
それだけで景色は2倍
目の前あった霧はもう俺は見えない
アクセルはベタブミであける未来
無理な事なんてほら1つもない
“大丈夫”
■これもRyugoさんのリリックですね。Ryugoさんは「感じたもの」というより「見たもの」を歌っているとお話していますが、これはまさに「見たもの。」すね。僕は「それだけで景色が2倍」というリリックが好きです。人を好きになるってそういうことだなと。
Ryugo:このリリックはSophieeに対してもあるし、Automaticさんに対してもあるけど、いちばんは地元の後輩でふたり捕まってる子がいて。その子たちがWAXさんのことをすごく好きだったんですよ。WAXさんたちに会った帰りに作った曲だし、ここまで来たんだなって思いもあって……だからみんなに対してありがとうじゃないけど……そういう気持ちが一気にパーンってなって、このリリックができましたね。
Sophiee:“大丈夫”に関しては溢れる想いがこもってる。エネルギーがあるから。
■“大丈夫”から後半の高揚感はこのアルバムの聴き所のひとつですね。
Ryugo:そうなんですよ。
Sophiee:後半の曲はどんどん高まって……。
Ryugo:前半の曲っていうか、クラウドファンディングで作った曲は、ほぼノリで作ってる曲だけど、それ以外の新曲は全部意味があって作られてる曲というか……。
Sophiee:前半は本当に遊びの延長線上で作った曲っていうか、ブンブンで飛ばしているような曲ばっかだもんね。
Ryugo:“Stranger”“大丈夫”からの流れで“Escape To The Paradise”は爆発したのかな。
■“Escape To The Paradise”は後半のクライマックス的な1曲ですね(インタヴュー後この曲を聴き直すと、この曲のフックは筆者にはOASISのリアム・ギャラガーを彷彿させた。自分の感情のままに歌い上げてしまっている感じだ)。これはどのタイミングでできた曲なんですか?
Ryugo:これはいちばん最後です。
Sophiee:最後に完成した曲です。
■いつ頃ですか?
Ryugo:年が明ける前ですね。
Escape To The Paradise
ぶっ飛びたい
Escape To The Paradise
これじゃいけない
Escape To The Paradise
ドア叩きな
Escape To The Paradise
抜け出しな
“Escape To The Paradise”
ゆるふわギャング "Escape To The Paradise"
■……となるとこのアルバムはちょうど2016年下半期の半年間で作り上げた感じですね。長い時間お疲れ様でした。最後にアルバム・タイトル『Mars Ice House』について伺いたいです。
Ryugo:『Mars Ice House』は……宇宙が好きで宇宙の博物館みたいなとこに行って……。
Sophiee:森美術館でやってて(※宇宙と芸術展)。そこにあった夫婦がつくった模型みたいな……。
Ryugo:美術品のタイトルが『Mars Ice House』(※「火星の氷の家。。2015年秋にNASA主催で行われた宇宙探査のための3Dプリント基地考案プロジェクトで優勝した、日本人建築家曽野正之・祐子両名含むニューヨークの建築家チームによる作品)。
Sophiee:火星に人が住めるようにするために研究するラボみたいな、火星移住計画の模型なんですよ。その夫婦ふたりともうふたりで火星で人が住めるように研究するみたいなプロジェクトで。うちらがやっているようなことと似てるなと思って。それにめっちゃくちゃ食らったんですよね。その模型を盗んで帰りたかったくらいなんですけど(笑)。ヤバかったよね。
Ryugo:うん。だから……そうですね。俺たちのプロジェクトにみんなを乗っけて、みんなを俺たちの曲のなかに住ましてあげるっていう(笑)。『Mars Ice House』は夫婦とプロデューサーの4人のチームの作品なんですけど、うちらもAutomaticと……。
Sophiee:肥後さんを入れて4人で。
Ryugo:作品を見たときうちらはまだ3人でしたけど、『Mars Ice House』を見ていて4人のプロジェクトだと気付いて、4人の力ってすごいんだなと思ったんですよ。それからすぐくらいに肥後さんと会った。
■そしてジャケットはこのインタヴューでもキーマンとして登場するKANEさんの作品ですね。
Sophiee:KANEさんの絵はエネルギーが出てるのが見えるんですよね。目で。キラキラがすごい出てる。
Ryugo:元々はアートブック(クラウド・ファンディングの出資者へのリターンとして作られた)用に提供してもらった作品だったんですが、KANEさんとの出会いから全部アルバムに繋がったっていうのもあって、ジャケットにさせて貰いました。
Sophiee:ジャケットにさせて下さいって。
Ryugo:あとジャケットにはクラウドファンディングで投資してくれた人たちの名前が入ってます。だからいろんな人のパワーが詰め込まれてるアルバムというか。
Sophiee:投資してくれた人にはすごい感謝してます。
■では、この作品について最後に締めの一言をお願いします!
Ryugo:いい意味でぶっ壊したかなとは思います。
Sophiee:うん。ぶっ壊した。
■何をぶっ壊したと思いますか?
Ryugo:それは聴いてみて下さい。
■オッケーです。ありがとうございました!
スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、ショバリーダー・ワン。3月8日にアルバム『Elektrac』をリリースしたばかりのかれらが、昨日3月23日、ボイラー・ルームにてライヴをおこないました。そのときの映像が YouTube に公開されています。いやー、バカテクですね。来日公演が楽しみです。下記よりチェック。

超 必 見!
スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、
ショバリーダー・ワンが
3月23日23時にBOILER ROOMに登場!
衝撃のパフォーマンスを披露!
待望の来日ツアーはいよいよ3週間後!
ライヴ・バンドのコンセプトを根底から改革すべく、スクエアプッシャーが招集した、凄腕ミュージシャンたち:STROBE NAZARD(キーボード)、COMPANY LASER(ドラム)、ARG NUTION(ギター)擁するショバリーダー・ワンが3月23日23時にBOILER ROOMに登場! 衝撃のパフォーマンスを披露します!
Shobaleader One @ Boiler Room
https://blrrm.tv/squarepusher
東京公演が即日完売で大きな注目を集めるジャパン・ツアーはいよいよ3週間後! 大阪公演も完売ペース! 東京公演のチケットをゲットできなかったファンは名古屋へGO!
スクエアプッシャー率いる超絶技巧バンド、ショバリーダー・ワン待望のデビュー・アルバム『Elektrac』は、3月8日日本先行リリース! 国内盤2枚組CD(ブックレット付の特殊パッケージ)には、オリジナルのシースルー・ステッカーが封入される。またスペシャル・フォーマットとして数量限定のTシャツ付セットも販売中。

label: Warp Records / Beat Records
artist: Shobaleader One ― ショバリーダー・ワン
title: Elektrac ― エレクトラック
cat no.: BRC-540
release date: 2017/03/8 WED ON SALE(日本先行発売)
初回生産特殊パッケージ
国内盤2CD(¥2,500+税):オリジナル・シースルー・ステッカー/解説書 封入
国内盤2CD+Tシャツセット(¥6,000+税)

iTunes Store:https://apple.co/2jzwuDa
【商品詳細はこちら】
https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Squarepusher/BRC-540
Tracklisting
Disc 1
01 The Swifty
02 Coopers World
03 Don't Go Plastic
04 Iambic 5 Poetry
05 Squarepusher Theme
Disc 2
01 E8 Boogie
02 Deep Fried Pizza
03 Megazine
04 Delta-V
05 Anstromm Feck 4
06 Journey To Reedham

SUPPORT ACT
にせんねんもんだい
東京公演 SOLD OUT!!!
4/12 (WED) 渋谷 O-EAST
OPEN 18:30 / START 19:30
前売TICKET¥6,000 (税込・1ドリンク別途)
主催:シブヤテレビジョン
INFO: BEATINK 03-5768-1277 [ www.beatink.com ]
●チケット情報 SOLD OUT!!!
beatkart / イープラス / チケットぴあ (P:320-948) / ローソンチケット (L:75929) / clubberia
名古屋公演
4/13 (THU) 名古屋CLUB QUATTRO
OPEN 18:30 / START 19:30
前売TICKET¥6,000 (税込・1ドリンク別途) ※未就学児童入場不可
INFO: 名古屋クラブクアトロ 052-264-8211 [ https://www.club-quattro.com/ ]
●一般販売:2/4 (土)~
beatkart / イープラス / チケットぴあ (P:321-025) / ローソンチケット (L:42769) / 会場
大阪公演
4/14 (FRI) 梅田CLUB QUATTRO
OPEN 18:30 / START 19:30
前売TICKET¥6,000 (税込・1ドリンク別途) ※未就学児童入場不可
INFO: SMASH WEST 06-6535-5569 [ https://smash-jpn.com ] [ https://smash-mobile.com ]
●一般販売:2/4 (土)~
beatkart / イープラス / チケットぴあ (P:321-141) / ローソンチケット (L:53230) / 会場
これは朗報。1988年に〈Ama Romanta〉からリリースされ、1998年にジム・オルークが自身のレーベル〈モイカイ〉からリイシューしたことで一躍脚光を浴びたポルトガルのキイボーディスト、ヌーノ・カナヴァーロのあまりにも早すぎた名盤『Plux Quba』が3月19日に改めてリイシューされた。『AMBIENT definitive 1958-2013』でも「1988」のページにどかんと取り上げられているこのアルバムは、オリジナル盤はもちろんリイシュー盤の方も長いこと入手困難な状態にあったので、これは嬉しいニュースである。今回の再発盤もいつ売り切れてしまうかわからないよ。いますぐレコ屋に走ろう。
1998年にジム・オルークのレーベル〈Moikai〉より再発された、ポルトガルの音楽家ヌーノ・カナヴァーロによる音響エレクトロニカの大傑作『Plux Quba』が再・再発決定!
1988年にひっそりとリリースされ、その10年後1998年にジム・オルークのレーベル〈Moikai〉より再発されたポルトガルの音楽家ヌーノ・カナヴァーロによる音響エレクトロニカの大傑作『Plux Quba』。その再発盤も長らく廃盤となり、コアなリスナーの間で神話のような地位を築いてきたこの不朽の傑作が再びCD盤で発売される(※2015年に〈Drag City〉よりヴァイナルで再発)。
1988年にポルトガルのレーベル〈Ama Romanta〉よりひっそりとリリースされた本作がなぜ名作として世に知られたのか? その背景には興味深いいきさつがあった。1991年頃ドイツ・ケルンで、レコードショップ兼レーベルの〈A-Musik〉周辺の主要人物: Jan St. Wener (Mouse On Mars)、C-Schulz、Frank Dommert (〈sonig〉レーベル運営)、George Odijk (〈A-Musik〉創設者)たちと、Jim O'Rourke と Christoph Heemann らが一緒にいた時に、Heemann がポルトガルから持ってきた『Plux Quba』と書かれた謎のレコードを聴いていた。誰もポルトガル語が分からなかったためそれがグループ名なのか、アルバム名なのか、レーベル名なのか不明だったが、ミニマルで、穏やかで、メロディアスなアブストラクト・サウンドは、これまでに聴いたものとは完全に異質で、彼らは強い好奇心を示したという。何か参照になるものがあるかと試みると、クラウトロックや実験~即興音楽の最先端のすべてが詰め込まれていながらも、とらえどころが無く、電子音楽のパイオニア Robert Ashley の後期作品との類似点を彷彿させながらも、それは思い違いだと気づくだろう。
90年代後半より広がりを見せたエレクトロニカ~音響シーンを予言するような本作は、88 年では早すぎた内容だったが、幸運にも1998年に〈Drag City〉傘下の Jim O'Rourke のレーベル〈Moikai〉より再発され(リマスタリングはポルトガルの音響アーティスト Rafael Toral が担当)、名作としてコアなリスナーたちに語り継がれ、その後のエレクトロニカ~音響シーンにも影響を与えている。
★2010年に出版されたディスク・ガイド『裏アンビエント・ミュージック 1960-2010』では〈裏1988年〉を代表する1枚に選出。
★2015年に〈Drag City〉より再発されたアナログ盤は、その年の『Fact Magazine』「The 25 Best Reissue」の6位に選出。
発売日:2017年3月19日(日)
品番:PDIP-6569
アーティスト:Nuno Canavarro(ヌーノ・カナヴァーロ)
タイトル:Plux Quba(プラックス・キューバ)
フォーマット:国内盤CD
本体定価:2,300円+税
バーコード: 4532813535692
発売元:p*dis / Inpartmaint Inc.
◎ライナーノーツ付き(解説:松村正人)
トラックリスト:
01. (Untitled)
02. Alsee
03. O Fundo Escuro De Alsee
04. (Untitled)
05. (Untitled)
06. (Untitled)
07. (Untitled)
08. Wask
09. (Untitled)
10. Wolfie
11. Crimine
12. Bruma
13. (Untitled)
14. Cave
15. (Untitled)
(小川充)
2016年はジ・インターネットとしての作品リリースはなかったが、その中心人物でリード・シンガーであるシド・ザ・キッド(シドニー・バーネット)の活動は精力的だった。昨年から今年にかけてリリースされたものでも、ケイトラナダ、ジェシー・ボイキンス3世、ヒュー・オースティン、コモン、リトル・シムズ、キングダムなど、いろいろなアーティストの作品に参加している。タイラー・ザ・クリエイター率いるオッド・フューチャー出身のシドは、もともとプロデューサー/DJとして頭角を現わしてきたのだが、マット・マーシャンズ(マシュー・マーティン)と組んだオルタナR&Bユニットのジ・インターネットで初めて歌を歌い、その成功によって今ではシンガーとしての活動に重きを置いている。
ジ・インターネットは2011年に『パープル・ネイキッド・レディーズ』でアルバム・デビューするが、2013年のセカンド・アルバム『フィール・グッド』では生演奏のバンド・スタイルへと移行し、ソウル/ファンクやジャズ/フュージョン、ブギーの要素が強くなった。この頃からライヴも活発におこない、2015年のサード・アルバム『エゴ・デス』にはロナルド・ブルーナー・ジュニアやサンダーキャットの兄弟でもあるジャミール・カーク・ブルーナーなど、ミュージシャンも多く参加したバンド・サウンドを確立している。グラミーにもノミネートされた『エゴ・デス』リリース後は、ツアーの合間に新作の準備に取り掛かるとともに、シドの外部客演に見られるように、メンバーそれぞれのソロ活動も動き出した。そうして今年の頭、シドがソロ・シンガーとしての初アルバム『フィン』を発表するのとほぼ時を同じくして、マット・マーシャンズがファースト・ソロ・アルバム『ザ・ドラム・コード・セオリー』、ギターとベースのスティーヴ・レイシー(1970年代に活躍したフリー・ジャズのサックス奏者とは同名別人)が初のミニ・アルバム『スティーヴ・レイシーズ・デモ・EP』をリリースした。スティーヴ・レイシーは『フィン』と『ザ・ドラム・コード・セオリー』にも参加し、シドは『ザ・ドラム・コード・セオリー』でも1曲歌っているのだが、ジ・インターネットとはまた別の形でそれぞれの表現をおこなったものとなっている。
『フィン』はジ・インターネットと同じく〈コロンビア〉からのリリースということで、ある程度メジャーを意識した作品である。ビヨンセと組むメロー・Xやヘイズバンガ、カニエ・ウェストやジェイ・Zと組むヒット・ボーイ、ケンドリック・ラマーと組むラーキなどのプロデューサーの起用にそんな一端が窺える。とは言っても、シドの持味であるクールでアンビエントなテイストが出ており、バンド化する以前のエレクトリックなジ・インターネットの『パープル・ネイキッド・レディーズ』に近い雰囲気である。もともとはほかのアーティストへの楽曲提供としていろいろ曲を書き貯めていくなか、自身のアルバムの構想が芽生えたそうだ。シド自身がプロデュースと作曲を手掛ける以外に、アンソニー・キルホファーほか前述の外部プロデューサー陣と曲ごとにコラボし、またジ・インターネットのスティーヴ・レイシーと、『エゴ・デス』にも参加して重要な役割を担ったニック・グリーン(ニッキー・デイヴィ)が曲作りに関わっている。リード・シングルの“オール・アバウト・ミー”はスティーヴ・レイシーのプロデュースで、ドレイクあたりに通じるメジャー感のあるR&Bナンバー。ティンバランドを彷彿とさせるビートを現在のトラップへと発展させたような曲だが、シンセなどでエキセントリックな味付けを加えているのがスティーヴの腕前で、ジ・インターネットのメンバーのなかでも最年少という彼の、今後の活躍を予感させる曲だ。同じくスティーヴ参加の“ダラー・ブリス”は、彼のギターがアクセントとなったポップなテイストの作品。同じくポップななかにトリッキーさを見せる“ノウ”はニック・グリーンが手掛けており、ティンバランドを彷彿とさせるプロダクションとアリーヤを想起させるシドの歌が好マッチを見せる。“ナッシン・トゥ・サムシン”や“ゴット・ハー・オウン”、そして“ボディ”や“オーヴァー”では、シドならではの覚醒感に満ちた世界を展開している。クールでエレクトリックなプロダクションが真夜中のチル・アウトなムードを見事に表現しているが、特にメロー・Xと組んだ“ボディ”はFKAツイッグス×アルカ、ケレラ×キングダムといった名コラボに匹敵する出来栄えだ。メロウやジャジーということでは、“スマイル・モア”や“インセキュリティーズ”が抜きんでている。これらはジ・インターネットで培った生演奏がバランスよく配合されており、“インセキュリティーズ”にはロバート・グラスパーも客演している。
『ザ・ドラム・コード・セオリー』と『スティーヴ・レイシーズ・デモ・EP』は、〈スリー・クォーター〉というレーベルからの配信限定リリースで、『フィン』に比べてより個人の趣味性の高い作品である。『ザ・ドラム・コード・セオリー』はドラムのほか、多種の楽器を扱うマルチ・ミュージシャン/プロデューサーで、イラストレーターでもあるマットの多才ぶりが表われた作品で、スティーヴ・レイシー、シド、タイラー・ザ・クリエイターら仲間が一部に参加するものの、ゲストは最小限に留めて、自宅スタジオで好きなように作ったミックス・テープやビート・テープに近い形態。“スペンド・ザ・ナイト/イフ・ユー・ワー・マイ・GF”や“サザン・アイソレーション”のように、生ドラムやパーカッションと電子ビートを巧みに融合させたトラックメイカーという部分と、“ダイアモンド・イン・ダ・ラフ”や“ホワット・ラヴ・イズ”に見られるバンド/ミュージシャン的な部分がミックスされている。ただ、“ダイアモンド・イン・ダ・ラフ”も“ホワット・ラヴ・イズ”も、前半と後半で曲調がガラっと変わり、全く異なるふたつの曲を強引にひとつに繋ぎ合わせた構成だ。こうした変則的な曲が多いのも本作の特徴で、そのあたりにマットのエキセントリックさが表われている。シドとスティーヴ・レイシー参加の“デント・ジュセイ”は、比較的ジ・インターネットの作品に近いものの、途中でブッツリと途切れてしまい、あとはストリートでの会話が延々と続いていく。電子ファンク・サウンドの“ホエア・アー・ヨー・フレンズ”や“ベイビー・ガール”など、コズミックな質感とコミカルな質感が同居するのはPファンク的でもあり、自身で手掛けたジャケットのアートワークにも通じている。レイジーなソウル・ミュージックとしての骨格を持ちながらも、テープの逆回転などを用いた“ダウン”のように、至るところで音遊びや音楽実験をやっている印象だ。こうした前衛的な音楽実験を経ていくなか、いろいろと整理をおこなって分かりやすくし、ポップ・ミュージックへと完成させていったのがジ・インターネットの作品とすると、その原型ともなる部分をカットしたり希釈せず、ダイレクトに形にしていったアルバムが『ザ・ドラム・コード・セオリー』ではないだろうか。
『スティーヴ・レイシーズ・デモ・EP』は2分前後の曲を6つ収めた小作品で、文字どおり完成前のデモ的な意味合いが強いもの。そうしたなかでもスティーヴの才能の片鱗を見せており、特にソングライター、メロディ・メイカーとしての能力がとても優れていることを窺わせる。ギタリストとしての能力を生かした曲が多く、“サム”あたりを聴くと、彼がジ・インターネットで果たす役割がとても大きいことがわかるだろう。この“サム”はカーティス・メイフィールドからプリンスの影響を窺わせるところもあるが、そのほかスライ・ストーンやシュギー・オーティスあたりを連想させる“ルックス”や“ダーク・レッド”、ディアンジェロのドープなところを抽出したような“サングス”などが並ぶ。ソウルやファンクのアーシーで骨太な側面を見せる一方、“ヘイターラヴィン”はオルタナ・ロックやニュー・ウェイヴ的な作品で、スティーヴの実験的な部分が表われている。ブラック・ミュージックだけではない彼のフィールドの広さを示す好例だろう。なお、この後にもジ・インターネットのドラマーのクリストファー・スミス、ベースのパトリック・ペイジ2世のソロ・アルバムも予定されており、それらがリリースされてから満を持してジ・インターネットのニュー・アルバムを完成させるという。ソロ作でそれぞれのスキルを高めていき、それが集まった先にジ・インターネットのさらなる進化をヴィジョンしているようだ。
小川充
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(野田努)
ブリアルの初期の作品ではR&Bサンプルが効果的に使われているが、彼がR&Bのコレクターというわけではない。その点が基本自分たちが好きなモノを使っているであろう『ブルー・ラインズ』におけるサンプリング・リストとは違っていて、また、コマーシャルなR&Bが真夜中の幽霊の歌声にもなるという実験はさすがのマッシヴ・アタックも手を付けていない。このブリアルのR&Bサンプリング・メソッドを継承したのが初期のジェイムス・ブレイクなわけだが、それから5~6年を経てからの、最近のフランク・オーシャンやソランジュといった“オルタナティヴR&B”は、音の開拓/実験にもぬかりはない。いまR&Bはアンダーグラウンド・ミュージックのカッティングエッジなセンスをティンバランドの時代よりも意欲的に取り入れているように見える。そのひとつの契機を探せば、ヒップホップのなかにパンクとチルウェイヴを混入したLAのオッド・フューチャーが思い当たる。オーシャン同様にそのメンバーのひとりで、そして当時はまだ10代だったのが彼女、シド・ザ・キッド(シドニー・ベネット)である。
タイラー・ザ・クリエイターの『ゴブリン』(2011年)で歌い、最近ではコモンの『Black America Again』でも歌っている彼女は、スライ&ロビーやシャバ・ランクスとも共作しているほどのキャリアを持つジャマイカのプロデューサー、マイキー・ベネットを叔父に持ち、10代の頃からスタジオ・プロダクションを学んでいたという。オッド・フューチャーを去ったシドは、ジ・インターネットのヴォーカリストとして活動していたが、先日、最初のソロ・アルバムとなる『フィン』を発表。24歳となった彼女は、何人かのサポートを得ながらも、歌からプロダクションまでのほとんどを自分で手掛けている。
『ブルー・ラインズ』がやがてトリッキーによるニアリー・ゴッドへと展開したように、『フィン』はより深く地下街を彷徨しながらも、そしてエロティックだ。ゲイの女性がセックスを題材にしていることも作品の特徴のひとつだという話だが、歌詞を理解せずともエロさは伝わってくる。が、注意しなければならないことは、彼女が旧来の世界が望むジェンダーを拒絶している(ジャケやブックレットの写真からもわかるように)、ということである。
そして、アルバムにはなかなかの暗闇が広がっている。エッジの効かせ方とその甘美さにおいてFKAツイッグスと似ている側面もある。しかし、シドはさらに甘い。歯医者から甘い物は控えろと言われたとしても、1曲目の“Shake Em Off”の最初の4小節で彼女の世界に引きずり込まれるだろう。まあ、5曲目の“All About Me”までは完璧な流れで、トラップを崩した感じの“Know”、ベースとアトモスフェリックな電子音で構成される“Nothin To Somethin”など、次から次へとメロウかつ洗練されたミニマリズムが展開される。ネオソウル的でキャッチーな“Smile More”、6lackの瞑想的なライムをフィーチャーしたトラップの“Over”も悪くはないし、最後までベースだけで引っぱる“Body”は目玉の1曲である。
R&Bにありがちな歌い上げてしまうところはない。紋切り型に陥ることなく低空飛行を最後まで貫き、その低さでもって魅了する。2016年のR&Bに顕著だった政治的なステイトメントは見あたらない。この1ヶ月、ひたすらよく聴いていたのがシドの『フィン』だった。
野田努
小山田圭吾=コーネリアスが動いた。2006年の傑作(いま聴くとさらにその凄さわかる)『センシュアス』から11年、コーネリアスがニュー・シングル「あなたがいるなら」をリリースする。タイトル曲は坂本慎太郎が作詞を担当、つまり歌モノ。
昨年はMETAFIVEメンバーとしての活動もあり(また、その作品とライヴは大いに反響を呼んだこともあり)、コーネリアスってまたしばらく動かないんじゃないかと決めつけていたあなた、どうぞご安心を。
詳細がわかり次第にまた報告しますが、これは注目です。『ポイント』~『センシュアス』でひとつに頂点に達したと言えるコーネリアスだけに、次に何をやるのか? というのはひじょうに気になるところですが、まずはオヤマっちゃんの復帰、良かった良かった。
SINGLE「あなたがいるなら」
A1 .あなたがいるなら (作詞: 坂本慎太郎 / 作曲: 小山田圭吾)
B1 .Helix / Spiral (作詞作曲: 小山田圭吾)
発売日:2017年04月26日
価格:\1,400(本体)+税
規格番号:WPJL-10041
あ、これはヤバいやつだ。公開された !!! (チック・チック・チック)の新曲“The One 2”を一聴して思った。頭で処理しようと思っても、まず先に身体が動いてしまう。ワン・トゥ、ワン・トゥ。かなりディスコ色が強まっている。でも彼ららしさは失われていない。これは素直に、アがる。
チック・チック・チックが待望のニュー・アルバム『Shake The Shudder』を5月19日にリリースする。タイトルには「恐れを振り払え」というメッセージが込められているそう。かつてジュリアーニを批判する曲で脚光を浴びた彼らのことだ。いまこんなにもソウルフルかつダンサブルなサウンドを鳴らすのにはきっと彼らなりの理由があるのだろう。あー、はやく他の曲も聴きたいぜ。ワン・トゥ、ワン・トゥ。
!!!(チック・チック・チック)が新作とともに帰還!
最新アルバム『Shake The Shudder』完成&新曲公開!
数量限定Tシャツ付セットの販売も決定!
ニューヨークが生んだ最狂のディスコ・パンク・バンド、!!!(チック・チック・チック)が最新アルバム『Shake The Shudder』の完成を発表! アルバムのオープニングを飾る新曲“The One 2”のミュージック・ビデオを公開!
!!! - The One 2
https://www.youtube.com/watch?v=zPn_AnP9N9I
「恐れを振り払え!」というメッセージが込められた今作のタイトル『Shake The Shudder』は、彼らの座右の銘であり、そのキャリアを通して示してきた言葉である。彼らのDIYなパンク・スピリットが炸裂した今作では、ここ最近のお気に入りだというニコラス・ジャーやケイトラナダなどからの影響を反映した様々なエレクトロニック・ミュージックの要素に加え、自由な精神の象徴としてハウス・ミュージックを取り入れ、「ビートに乗ってりゃ何でもあり!」というオープンな姿勢から生まれた痛快なアルバムとなっている。
リスクが大きければ大きいほど、得るものも大きい。そして、究極に楽しい経験になる。改革は次の改革を導き、それが繰り返されるんだ。
- Nic Offer
バンドのホームタウンであるブルックリンでレコーディングされた今作には、UKのシンガー、リー・リー(Lea Lea)、シンガーソングライターで女優でもあるミーア・ペイス(Meah Pace)、グラッサー名義での活動も知られるキャメロン・メジロー(Cameron Mesirow)、チェロ奏者でシンガーでもあるモリー・シュニック(Molly Schnick)といった個性豊かな女性ヴォーカリストが多数参加している。
一貫して変わることのないパンクなアティテュードと、アルバムごとに進化を続け、シーンの変化とも巧みにリンクするサウンド。移り変わりの激しい景観の中、その状況を楽しむかのようにキャリアを重ねてきたチック・チック・チックの最新作は、そのキャリアの全てを反映させた集大成でありながら、歌詞とサウンドの両方にさらにエッジを効かせ、「この打ち砕かれたような状況から、何か美しいものが育ってほしい」という、混迷を極める世界に対するバンドの願いが込められた一撃でもある。
チック・チック・チックの7枚目のアルバムとなる本作『Shake The Shudder』は5月19日(金)に世界同時リリース! 国内盤にはボーナス・トラック“Anybody’s Guess”が追加収録され、歌詞対訳と解説書が封入される。またiTunesでアルバムを予約すると公開された“The One 2”がいちはやくダウンロードできる。またスペシャル・フォーマットとして数量限定のオリジナルTシャツ付セットの販売も決定!


label: Warp Records / Beat Records
artist: !!! ― チック・チック・チック
title: Shake The Shudder ― シェイク・ザ・シャダー
cat no.: BRC-545 / BRC-545T
release date: 2017/04/19 FRI ON SALE
国内盤CD: ¥2,200+税
国内盤2CD+Tシャツセット: ¥5,500+税
国内盤特典: ボーナス・トラック追加収録 / 解説書・歌詞対訳封入
【ご予約はこちら】
[CD]
beatkart:https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002157
amazon:https://amzn.asia/1pkC7yM
[T-SHIRTS SET]
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002158
amazon
Sサイズ:https://amzn.asia/a3FW1qt
Mサイズ:https://amzn.asia/cdKZ86q
Lサイズ:https://amzn.asia/cnThNsN
XLサイズ:https://amzn.asia/73ojhfm
[DIGITAL DOWNLOAD]
iTunes Store:https://apple.co/2o3PE2A
【商品詳細はこちら】
https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Chk-Chk-Chk/BRC-545
[Tracklisting]
01. The One 2
02. DITBR (Interlude)
03. Dancing Is The Best Revenge
04. NRGQ
05. Throw Yourself In The River
06. What r u up 2Day?
07. Five Companies
08. Throttle Service
09. Imaginary Interviews
10. Our Love (U Can Get)
11. Things Get Hard
12. R Rated Pictures
13. Anybody’s Guess (Bonus Track for Japan)
半野喜弘や田中フミヤら日本人アーティストにとどまらず、リッチー・ホーティンやリカルド・ヴィラロボスといった海外のトップDJたちから高い評価を獲得してきたキヤマアキコが、既存の音楽カテゴリーにとらわれることなく、音そのものがもつ純朴な響きにフォーカスした作品を発表するために始動したケブコ・ミュージック。これまでにカセットテープを中心にリリースを重ねてきた同レーベルがマガムラのアルバムを初めてヴァイナルでリリースする。
ラドゥ、ペトレ・インスピレスク、ラレッシュらの拠点であり、現在のミニマルテクノ/ハウスを語るうえで避けて通ることのできない東欧シーン。同シーン屈指のレーベルであるオール・インから2013年に発表した「The Orphans」で話題を呼んだコールドフィッシュことローリン・フロストと、彼の盟友ギタリストであるエリル・フョードが結成したマガムラは、テクノ/ハウスに限定されない視点でとらえたエレクトロニックミュージックをフェスティバルやクラブで披露してきた。オフィシャルリリースは今回限りとして特別に発表される「Supernaturals」には、サウンドコラージュやドローンの要素も含んだ多彩な電子音楽が収録。現在ケブコ・ミュージックのバンドキャンプ・ページにて先行予約を受け付け中だ。
Magamura(マガムラ)

古くからの友人であるローリン・フロストとエリル・フョードが既成概念にとらわれない音楽を生み出すべく結成したプロジェクト、マガムラ。ハンガリー出身のふたりが初期電子音楽からの要素を取り入れたサウンドデザインと楽曲構造からは従来の音楽にはないフューチャリスティックなサウンドスケープが描き出される。ライブパフォーマンスに特化した活動を行ってきたマガムラは、様々なジャンルを絶妙なバランスで融合しながら、物語性のある音楽を紡いできた。2011年の結成以来、ライブごとの状況に応じて異なる即興パフォーマンスを繰り広げることで、音源のリリースに頼ることなく、多方面から高い評価を獲得してきた彼ら。2017年、キヤマアキコ主宰ケブコ・ミュージックのビジョンに共鳴したマガムラが待望のアルバム『Supernaturals』を遂にリリース。
4月3日(月)午前10:05~10:55 、NHKラジオ第一の「すっぴん!」に戸川純の生出演が決定しました。カレンダーにメモっておきましょう。
出演:宮沢章夫、藤井彩子。 ゲスト:戸川純。
https://www.nhk.or.jp/suppin/

