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interview with YURUFUWA GANG

interview with YURUFUWA GANG

ゆるふわギャングがぶっ壊しにキタ!

山田文大    Mar 24,2017 UP

いい意味でぶっ壊したかなとは思います。──Ryugo
うん。ぶっ壊した。──Sophiee


ゆるふわギャング
Mars Ice House

SPACE SHOWER MUSIC

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 ele-king読者の耳にはもう届いているに違いない。ゆるふわギャング(Ryugo IshidaとSophiee、ビートを手掛けるAutomaticのユニット)の1stアルバム『Mars Ice House』が4月5日にリリースされる。クラウドファンディングで制作資金を募集するや即座に目標金額を上回り、すでに話題沸騰のゆるふわギャング。フロント・メンバー、Ryugo IshidaとSophiee、インタヴューでこちらの質問に答えるふたりを見ていると、いつの間にかその場の空間全体を俯瞰しているもうひとりの視点に気付かされる。あるいは映画をVRで見ているような感覚に陥るとでも言えばいいのか。ふたりの紡ぎだす空気はまるで映画のようだ。「ね?」とSophieeが横のRyugo Ishidaに微笑みかけると、「うん」とRyugo Ishidaが答える。言葉は少ないがこのやりとりが醸す空気は雄弁で温かい。新作アルバムの話からふたりの生い立ちにまで遡ってのロング・インタヴュー!

昔から学校嫌いで、小学校5年生ぐらいから学校行ってない……学校はとりあえず嫌いでしたね。中学校いっても、常にひとりでいるのが好きだったから、保健室にいるかどっかで寝てるか。──Ryugo

ゆるふわギャングの1枚目ですね。

Ryugo Ishida(以下、Ryugo):やっと……

Sophiee:やっと……

Ryugo:……できたっていう。

ゆるふわギャングのはじまりは去年(2016年)の夏……でしたよね? 

Ryugo:……ぐらいにふたりで“Fuckin’ Car”という曲を作ったのがきっかけです。PVも撮ったんですけど、この曲をゆるふわギャングで出そうというのがきっかけで、そこから色々曲ができていって、名前もそのままゆるふわギャングでという感じです。

ゆるふわギャング“FUCKIN CAR "

でも、楽曲ができたのとゆるふわギャングの結成はほとんど同時で……と、そこからのアルバムと考えると早いですよね。

Ryugo:早いんですけど……やっぱり1枚目だし、ちゃんとした形でリリースするのは初めてだから嬉しいですね。いままでとは全く違うっていうか、気持ちが……

Sophiee:ね? 気持ちが全然違うっていうか、アーティストだ! っていう(笑)。

Ryugo:まず最初のクラウドファンディングでふたりで出したやつよりもこれは自信が違う。俺たちはこれっていう……

Sophiee:うちらがこうです! みたいな……たぶん一番クラシックだと思う。次に何が出ても(笑)。

Ryugo:それはある。

Sophiee:固い……

Ryugo:すべての始まりでもある……

Sophiee:まだ序章に過ぎない……

Ryugo:実際のところこのアルバムができてからも、別の曲もバンバン作っちゃってるから、俺たちの中では初めてだけど、もう古いというか(笑)。どんどん自分たちがアップグレードしていってるから。

Sophiee:ネクストレベル。常に先を見て曲を作ってる。

Ryugo:でもなんか戻れる場所がちゃんとあるっていうか、このアルバムを聞けばこの感じだなっていうか。わかるというか。

Sophiee:たしかに。

バンバン作ってるということですが、もう何曲くらい録りましたか?

Ryugo:10曲いかないくらいはもう録りましたね。

Sophiee:10曲くらいは作ってるか……曲作りの仕方自体はあまり……スタイルは変わらないんですけど、気持ちも変わったし、前よりも全然楽に曲を作れるようにもなった。いい意味で。

それはコミュニーケーションがよりスムーズに取れるようになったということですか?

Ryugo:コミュニーケーションというよりは感覚というか、自分たちの曲を何か作ろうと思った時の曲作りの仕方が決まったというか。いままではリリックを書くのも大変とかもあったけど、いまはもうないもんね。よっぽど集中力が切れてなければリリックが出てこないっていうことは滅多にないし。曲を作ろうってなったときには、大体自分たちの力がバーンって、100%出せるようになったというか。どのタイミングでも。いまなんかその調整をしているというか。

Sophiee:ね。何か細かいところまで目がいくようになった。前はリリックを書くのに精一杯、でもいまはもっと余裕ができて、音の聞こえ方だったり声の出し方だったりとか、そういうところまでちゃんと気を使えるようになった。そういう意味でも100%の自分で曲を作れるようになった。

このアルバムを作ったのが大きかったんですね。

Ryugo&Sophiee:ですね。

Ryugo:これを作って、スーパーモードになったっす。サイヤ人モードに常に入れるようになったっす。

Sophiee:ワンナップキノコみたいな。このCDが(笑)。

アルバムの内容に踏み込む前に、ここで一度生い立ちまで遡って少しお話を聞かせてください。まずRyugoさんの地元は土浦でしたよね。

Ryugo:土浦ですね。

ご兄弟はいらっしゃいますか?

Ryugo:妹と弟がふたりいます。4人兄弟の長男です。

土浦にいたときはずっと実家にいたんですか?

Ryugo:そうですね。自分でアパート借りたりとかもあったけど、基本的には実家ですね。

どういう子供でしたか?

Ryugo:昔から学校嫌いで、小学校5年生ぐらいから学校行ってない……学校はとりあえず嫌いでしたね。中学校いっても、常にひとりでいるのが好きだったから、保健室にいるかどっかで寝てるか。高校は仲良い先輩が行ってて、誰でも入れる高校だったからただちょっとノリでいって、適当に卒業したって感じなんですけど。そうですね……遊ぶのは好きだったけど、とりあえず勉強とかもすごい嫌いだったし……っていうのはありますね。あんまり人と関わりたくなかった。グレてたし。

いつ頃からグレてました?

Ryugo:自分は中1ぐらいですかね。サッカーをやってたんですけど、サッカー辞めて、中1ぐらいの時に本格的にグレ始めた感じですね。

グレるというのは具体的にどんな感じだったんですか? 

Ryugo:学校は嫌いだったけど、先生がいちばん仲良かったから、グレてても何してても絶対怒られなかったというか、逆に(笑)。もうそれでいいからみたいな。放っといてくれたというか……どうグレてたんだろう? とりあえず先生も仲が良い先生としかいなかったし……それ以外の先生とか先輩が嫌いでしたね。

上下関係みたいなのが気持ち悪いんですかね。

Ryugo:そうですね。ちょっとあんまり得意じゃないですね。難しいです。

サッカーが好きだったんですか?

Ryugo:サッカーはすごい好きでしたね。小学校のとき少年団に入ってサッカーやってました。フォワードやってましたね。下手くそだったんですけど足が速かったんで(笑)。

ああ、足速そうです。

Ryugo:100m11秒台でした。

それは速いですね。

Ryugo:そうなんですよ。めちゃめちゃ速かったんです。100m走で県大会の決勝戦まで行きました。だからサッカー下手くそでも足速かったんで選抜チームにも入ってましたね。

ボール持ってゴールまで運ぶ感じですね。

Ryugo:そういう系ですね。それしかできなかった逆に。

なかなかかっこいい不良ですね。

Ryugo:でも不良ってわけでもないんですけどね。ただなんかちょっとヤンチャなだけだったというか。とりあえず昔っから人が嫌いだったというか。目が悪かったからよく喧嘩とかも売られてたけど、喧嘩はそういうときにするぐらいでした。

暴走族とかはやってないんですか?

Ryugo:自分たちの地元に暴走族もなかったし、バイクにも興味なかったんですよ。どっちかっていうとそのときギャングの方が興味があって、上下のディッキーズとか着て溜まってるのが好きだったというか。

Sophiee:カルチャー?。

Ryugo:そうですね。カルチャーにすごい憧れていたんですよね。従兄弟がちょっとやんちゃだったんですけど、そういうファッションをしていて、それにすごい憧れてたから。従兄弟は2つか3つ上なんですけど、ヒップホップが好きで、俺もそれに憧れて改造した制服を着たり、ディッキーズとか着て街でたむろってるのが好きでした。

それが中学ですか?

Ryugo:はい。高校の頃はもう割と落ち着いちゃってて、その頃には音楽のことばっか考えてました。

Ryugo Ishida "Fifteen"

ラップをはじめたのは15歳とおっしゃってましたね。

Ryugo:中学校終わるぐらいの頃にはラップが好きになってたから、みんなは高校に入ると同時にバイクに走っていくけど、俺はクラブ遊びに走っちゃって……ハマっちゃってというか。そうですね……って感じでした。

DEAR’BROさん(※ディアブロは土浦のラッパー。Ryugo Ishidaがラップをはじめるキッカケとなった)と会ったのは?

Ryugo:中2か中3どっちかですかね。そのときは……初めてクラブに行って、クラブから自転車に乗って帰ろうとしたときに、いきなり「おまえ待て」って言われて、「おまえいくつだ?」って。「14です」って言ったら、「俺の曲聴け」って言われて、怖って(笑)……思ったのがきっかけだったんですけど。なんだこのおっさんはって思って。帰って先輩の家でもらったCD聴いたらめちゃめちゃかっこいいと思って、CDの裏に書いてあった番号に速攻電話して、で、その次の日に飯に連れてってもらったんです。1週間後ぐらいには「俺のステージ立て」って言われて、サイドMICとかをやってたりとかしたのがはじまりで、あとは自分の同級生に音楽を勧めて、「一緒に曲をやろうよ」って言ったりして、やったりとかもしてたんですけどね。いつの間にかみんないなくなっちゃって……って感じでした。結局先輩と一緒にいるか……って感じでしたね。仲良いのは地元の1個上の人たちで、3人仲良い人がいるんですけど。その人たちとしかほとんど遊ばなかったです。この先輩たちはいまも仲良いですね。だから孤立はしてたかもしれないです、常に。グレてるときもひとりだったし。

そういうひとりのときって何を考えてたんですか?

Ryugo:クソだな〜と。毎日つまらないなーと思ってました。ずっと。なんか面白いことないかなぁーと思って。だから学校の先生が鍵をいっぱい持ってるんですけど、それを盗んでひとりで学校を冒険したりしてました。みんなが勉強をしている間とかにひとりで鍵のかかった部屋に忍び込んだり、ひとりでサボってましたね。

取材:山田文大(2017年3月24日)

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Profile

山田文大山田文大/Bundai Yamada
東京都出身。編集者・週刊誌記者を経て、現在はフリーのノンフィクションライター兼書籍編集者。また違う筆名で漫画原作なども手がける。実話誌編集者時代には愛聴する日本人のラッパーの生い立ちにフォーカスし、全国のラッパーのフッドを巡り取材していた。最近は興味の矛先が歌舞伎や演劇に向いているが、それでも日常的に聴きたいラップがあり、そうしたラッパーを気の向くまま取材している。皆様にはお世話になっとります。

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