昨年の紙エレキングにおける(筆者は参加していない)ヤング・チームの座談会において、「ヨウガク耳」と題された項目を興味深く読んだ。奇しくも、老害チームの座談会でも紙面には字数の都合でならなかったが、洋楽を聴く若者が減ってきているという話題が出ていたからだ。「若者の洋楽離れ」をおじさんリスナーが危惧するなか、海外の音楽を聴いている20代のリアリティが余すことなく詰められたインディ・ポップが一定の成果をあげているのだとすれば、それはシーンで起こっていることこそが状況を軽やかに刷新していることを示唆しているのではないかと思う。
![]() Hotel Mexico Her Decorated Post Love BounDEE by SSNW |
だから、ホテル・メキシコがはじめ鳴らしていた無邪気にインディ然としたシンセ・ポップを、僕は戦略的なものではないかと感じていた。ゼロ年代終盤からのディスコ・リヴァイヴァル~チルウェイヴ、あるいはローファイという流れに見事に同調して現れたバンドは、ポップの現在地点がネットを介してシェアされるいまを意識的に射抜いているのだろう、と。だが、実際に会ってみた彼らは、あくまで自分たちの現在を音に反映することでこの音を鳴らしているのだという。この、フェミニンで、スウィートで、夢想的な音を。
ホテル・メキシコのセカンド・フルとなる『Her Decorated Post Love』は、チルウェイヴ以降拡散していくインディ・ポップのひとつの見事な回答例を出している。ギター・サウンドをより前に出し、80年代ギター・ポップやいまっぽいAOR感をまぶしながら、甘ったるい恍惚はより純度を増しているように聞こえる。メンバー間でのキーワードは「ロマンティック」だったそうだが、訊けばそれもイノセントな感覚だったそうである。自覚と無自覚の狭間でファンタジーを浮かび上がらせるホテル・メキシコは、ポップ・ミュージックのいまを愛することのリアリティを、ごくナチュラルに体現し、謳歌している。
当時の〈イタリアンズ・ドゥ・イット・ベター〉なんかをすごくよく聴いてて、なんかああいうのができればと思って。(石神)
■では自己紹介ということで、お名前と生まれ年と、あと去年のベスト・アルバムを教えてください。
菊池:菊池史です。84年生まれです。去年のベスト・アルバムは、たぶんブラックブラックのLPがすごく好きだったので、それかなと思います。
石神:石神龍遊です。84年6月生まれです。ベスト・アルバムは......なにがあったっけ?(笑) あ、トップスのLPがすごく良かったですね。
伊藤:伊東海です。生まれ年は83年。ベスト・アルバムは......えっと、ないですね(笑)。
■(笑)メンバー同士でそういう話はあまりされないですか?
伊藤:いまこれを聴いてるとかって話はするんですけど。とくに僕は遅れて聴くことが多いので、いつ出たって話はあまりしないですね。
■なるほど。去年のベスト・アルバムを訊いたのは、ホテル・メキシコってリアルタイムのリスナー感覚が音に反映されるバンドなのかなって思うので。ちなみに僕が84年生まれなので、リスナーとして通ってきたところも近いと思うんですね。基本的なことから訊こうと思うんですが、結成が2009年ですか?
石神:2009年ですね。
■そのときからメンバーの音楽的なテイストって共通していたんですか?
石神:いや、もうまったくバラバラですね。もともと同じサークルで、バンド活動みたいなことをしているような子たちもいて。メインになってバンドを起こしたのは菊池とかで、「こういう音楽をやりたいな」ってなったときにメンバーを自然に集めていった感じですね。比較的仲のいい子たちで集まって。
■当初音楽的な方向性っていうのはあったんですか?
石神:方向性を決めてやってたわけじゃなくて、当時の〈イタリアンズ・ドゥ・イット・ベター〉なんかをすごくよく聴いてて、なんかああいうのができればと思って。いっしょのものをやりたいわけじゃなかったんですけど。
■2008年、2009年ってディスコ・リヴァイヴァルがあったりとか、シンセ・ポップが賑わったりって頃でしたね。その同時代の音をやりたいっていう?
石神:そうなんですよ。そこにかなり引っ張られて。
■なるほど。その後デビューされたとき、すごく「チルウェイヴ」って単語で説明されましたよね。「日本からのチルウェイヴへの返答」というような。そこに抵抗はなかったですか?
伊藤:抵抗っていうか、「違うよね」っていう話はしていましたね。そこら辺の音は聴いてましたし、反映はされてるとは思うんですけど。自分たちがそれっていうのは、なんか違うよねって言っていました。
■その違いがあるとしたら、ポイントはどこにあると思いましたか?
石神:チルウェイヴの定義っていうのがよくわかんなかったですよね(笑)。
菊池:でもたぶん、”イッツ・トゥインクル”を聴いてくれたひとが、チルウェイヴっていうのに当てはめてくれたんだと思うんですけど。ファースト・アルバム全体で言ったら、チルウェイヴ感っていうのはないのかなって。
■実際、ウォッシュト・アウトなんかはどうでしたか? メンバーでは人気はありました?
石神:めちゃめちゃ聴いてましたね。
■じゃあパンダ・ベアは?
菊池:パンダ・ベアはそんなに聴いてなかったかもしれない。
■じゃあ、メンバーの間で当時いちばん盛り上がっていたのは〈イタリアンズ・ドゥ・イット・ベター〉あたりのディスコ?
石神:そのあたりの、暗い感じで踊れるものを聴いてましたね。
■なるほど。バックグラウンドはみなさんではバラバラなんですか?
伊藤:そこがほんとにバラバラですね。
菊池:僕は日本の音楽から入って、YMOなんかから買い始めた感じだったんで。洋楽を聴きはじめたのは高校の後半とか、大学入って周りがみんな聴いてたから、影響されて聴き始めたんです。
■高校あたりのインディ・ロックですか?
菊池:ほんとストロークスとか。
■ですよね。
石神:僕は中学校のときはメタルばっかり聴いてて(笑)。地元のCD屋さんではメタリカとかニルヴァーナとかしか置いてなくて、その後に「これじゃいかんな」とポスト・パンクとかニューウェーヴとかを聴き出して、で、ネオアコとか浅く広く通ってきた感じです。
伊藤:僕はそれこそ、高校だったらJロック育ちですよね。その後ガレージ・リヴァイヴァルを通って、スーパー・ファーリー・アニマルズに会ってからは、自分はポップなものが好きなんだなと気づいて。それからはジャンルを問わずに自分がポップだと思うものを聴いていました。
■そのバックグラウンドがバラバラななかで、ホテル・メキシコっていうバンドにはこの音がハマったなって感覚はありましたか?
石神:なんだろうな。当初曲作りそのものはみんなでやるって感じではなくて。個人が作ってきたのを聴いて「いいね」みたいな。音的なものでハマったっていうのは、それこそローファイ的な音色だったりとか。
■ヒントになったアーティストっています?
石神:さっき出たウォッシュト・アウトとか。音的なもので言うと。
■するとウォッシュト・アウトのEPですよね? 『ライフ・オブ・レジャー』。ウォッシュト・アウトのデビュー・アルバムと、ホテル・メキシコのデビュー・アルバムがほぼ同時に出てるのは面白いですね。じゃあ、ここ数年でメンバー間で共通項としてあったものってどのあたりになりますか?
石神:それはアーティストですか?
■アーティストでもシーンでも、あるいはフィーリングみたいなものでもいいんですが。
石神:フィーリングは、ロマンティック。たとえば、僕が今回アルバム作るときに聴いていたのはプリファブ・スプラウトで。新譜だったらキング・クルーとか、ああいうギター・サウンドというか、ロマンティックなイメージがあるものを意識して作りましたね。それはたぶんみんなも共有してたし、作る前に話し合ったりもしましたね。
[[SplitPage]]いまのシーンがどんなだっていうのは見てますけど、でも今回に関しては「いま」っていう意識ではそんなに作ってない。むしろ「何がいまなのかわからん」って話をしてたぐらいで(笑)。(伊東)
■今回はギターが前より出てるなと思ったんですけど、そこに何かポイントはあったんですか?
菊池:単純に曲の作り方が変わったっていうか、前はシンセで作ってたのが多くて、今回ギターを中心に作るのが多くなって、そういうのが集まってきた感じですね。
■ちょっと80年代のギター・サウンド的なニュアンスが目立つかなと思ったんですが。
石神:それはあると思いますね。
■80s感で言えば、いまだったら、たとえばワイルド・ナッシングスとかどうですか?
石神:好きですね。
■いまこの音になるのは「わかるぜ」って感じですか?
石神:ああー。共感できるところもあるけど、彼らは狙ってやってるから。自分たちが取り立てて80sをやるバンドっていう風に思ったりはしないですね。
■ホテル・メキシコって同時代の音楽とすごくナチュラルにシンクロしていますよね。それは狙ってやっているんじゃなくて、自分たちのモードとしてやっているとそうなったって感じですか?
伊藤:いまのシーンがどんなだっていうのは見てますけど、でも今回に関しては「いま」っていう意識ではそんなに作ってない。
石神:ほとんど意識してない。
伊藤:むしろ「何がいまなのかわからん」って話をしてたぐらいで(笑)。
石神:たとえば80年代にやってたひとたちって、いまやっているひとたちに比べてハンデがあると思っていて。いまやっているひとたちっていうのは昔の音楽を参照してやれるけど、当時のひとたちは過去を知らずに作っていて。僕らもその感覚に通じているところがあるのかなと。そういう意味では素直に、あまり狙わずに作りましたね。
■じゃあ、さっきおっしゃったプリファブ・スプラウト以外に何か参照点があったわけでもない?
石神:うーん。今回はこれを参考にして作ろう、みたいなものはあんまりなかったかなって感じですね。
■なるほど。ちなみに前作では?
石神:うーん、前回もなかったかも。最初の入り口は「こういうものがやりたい」っていうのがあったんですけど、最終的に出来上がるときにはまったく違うことを考えながらやっているっていう。
■じゃあ、ほんとにシーン的なものは気にしてないんですね。今回、AOR感もあって、それもいまっぽいなと思いましたけどね。
石神:最初、AOR感が欲しいって話をちょっとしたりはしましたけどね。それがたぶんちょっと入ってるんでしょうね。
■日本の同世代で、共感するバンドやシーンはありますか?
石神:東京の〈コズ・ミー・ペイン〉というレーベルですね。
■ああ、なるほど。それはどういったポイントで?
石神:まあ単純に好きなものがいっしょだったりとか、あと〈コズ・ミー・ペイン〉は海外に対する意識みたいなものが強いですね。そういうところも話していて楽しいし。
■日本のインディ・シーンも盛り上がってる印象もあるんですけど、そのシーンの一部にいるっていう意識はありますか?
一同:ないです。
石神:僕はまったくないですね。
伊藤:(日本のインディは)まだ括れるほどはっきりしたものじゃないんじゃないかな、と思いますけどね。
■なるほど。同時代のものとリンクしているって感じもあまりない?
伊藤:ないですね。いまは〈コズ・ミー・ペイン〉と仲良くやっていけてるし、お互い好きだし、それでいいやと思ってますけど。最初はいっしょにやるバンドがいなくて困ってたぐらいだし、リンクしている感覚はないですね。
■ふむ。じゃあ、アルバムの話に戻ろうと思うんですけど。コード進行とか、音色がフェティッシュな感じがするんですよね。やっぱりすごく、甘いじゃないですか。1曲目の“スーサイド・オブ・ポップス”の最初のコードが聴こえてきたときに「これだ」って思うわけですけど、あれを1曲目にしたのはどうしてなんですか?
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石神:理由はね......ないです(笑)。
■あ、そうなんですか?(笑)
石神:僕らアルバムの流れを意識してアルバムを作ってなくって。とくに曲順とか流れは考えていなくて。「これ一発目じゃないな」っていう消去法でいって、あれが残ったっていう感じが強いですね。
■あの曲の最初のビートがLCDサウンドシステムの“ルージング・マイ・エッジ”のイントロと似てるじゃないですか。で、そこにあのチルウェイヴ以降を思わせる甘いコードが入ってくるっていうのが、リスナー遍歴を表しているのかな、って勝手に思ったんですけど(笑)。
石神:(笑)そういう風に聴くんだ。そういう想像するのが楽しいんだと思いますけどね(笑)。
■そういうのも、自然に出ているんですね。
石神:そうですね。狙ってはなかったですね。
■メンバーのバックグラウンドがバラバラななかでも、出るフィーリングっていうのは甘いポップスになるわけじゃないですか。バンドとしてそういう音をやるんだっていうメンバー間でこだわりっていうものがあるんですか?
一同:うーん......。
■少なくとも、マッチョな感じはない音じゃないですか。シンセ・ポップ・リヴァイヴァルが出てきたときに、マッチョな音に対する違和感を表現しているって言われたりもしたんですけど。その感じにリンクするというか。根っこにはメタルもあるひとたちなのに(笑)、ホテル・メキシコっていうバンドでやるときに非マッチョな音になるのはどうしてでしょう?
石神:うーん、どうなんだろう。考えたことないな。
■じゃあ、ホテル・メキシコっていうバンドは、ストーリーや場景っていう具体的なものよりも、曖昧なフィーリングを鳴らしているんでしょうか?
伊藤:フィーリングなんじゃないですかね。
石神:でもたとえば、こっちがストーリーを作ったとしても、聴いたひとがどういう解釈をしてくれても全然よくって。想像力を刺激できるような音だったり展開だったりっていうのには気を遣っているつもりですね。
[[SplitPage]]それぞれのロマンティックを持って来いみたいな感じになって。僕の意見では、先ほど言ったみたいに逃避的なものがすごくロマンティックだったりもするし。攻めてるだけが音楽じゃないって思うし。そこに埋もれたものの受け皿みたいなものがあってもいいなって思うし。(石神)
■たとえば、多くのJポップにあるような、共感をベースにした歌詞や物語からは遠いところにあるんでしょうか?
石神:でも個人的には、遠くはないとは思うんですよ。そういうものがないと面白くないと思うし。Jポップとの違いで言うと、あれはオリジナリティがないっていうか。
■では、歌詞やフィーリングは自分たちに起こっていることですか? それともフィクションが多いですか?
石神:完全にフィクションですね。
■それはどうしてなんでしょうか?
伊藤:「普段起こっていることを歌うのはやめとこう」って思わないくらい、そういう実際起こっていることを歌にしようっていう意識はないですね。最初からそれは考えにないです。曲のフィーリングは普段の考えからぱっと出てくるのかもしれないですけど、具体的なことを歌おうっていう考えはないですね。
■では、ホテル・メキシコの音楽がドリーミーだって言われることに抵抗はありますか?
石神:まったくないですね。ドリーミーな音楽だと思ってくれたらいいですね。
■「逃避的だ」って言われるのは?
石神:それはそれで、逃避したいひとが聴いてくれれば(笑)。
(一同笑)
■みなさん自身はどうですか? 逃避的な音楽をやっているっていう意識はありますか?
菊池:そういう部分もあるんじゃないですか?
石神:客観的に見たらそうかもしれないですけど、主観的にはそういう感覚は全然ないんですけど。世間から見たらそうなのかなーって(笑)。
■では、少しいやらしい訊き方ですけど、震災以降、音楽に限らずシリアスな表現が増えましたよね。具体的な状況を織り込んで、それに対するステートメントを表明するものが。そんななかで、ホテル・メキシコがやっている音楽はただ逃避的なだけじゃないかっていう批判があったとしたら、それに対する反論はありますか?
伊藤:反論というか(笑)、それに対する反論をする必要があるのかって感じですね。
菊池:そういうひともいますよ、と。
伊藤:そもそも、そのひとがどうして逃避的なものをそこまで否定するのかがまずわからないです。
■たとえば、チルウェイヴなんかもすごく議論の対象になって。現実に対する抵抗としての逃避ではなくて、何となくの逃避ではないかっていう意見もあったぐらいで。それだったら、どちらに近いんでしょう?
石神:それは何となくの逃避でしょうね。とくに意識してやってるわけでもないし。それを意識しだすとフィーリングじゃなくなるので。
伊藤:何かをあえて意識してやるっていうのはないですね。
■アルバムを作っているときのゴールっていうのは何かあったんですか?
石神:うーん......期日。日程。スケジュール(笑)。
(一同笑)
石神:限られた時間のなかで、どこまでやれるかってことですね。自分たちの目標は立てたわけではなくて、むしろ間に合うかなっていう感じで。
■その期日が限られているなかで、いちばん重視したポイントっていうのは?
伊藤:作品全体としてのバランスですね。
菊池:今回はアルバム全体として聴けるものを作りたいっていうのがあったんで。全体的なまとまりを目指しましたね。
石神:トータルして言うと、抽象的だけどやっぱりロマンティックさですね。細かいんだけど、コーラスひとつのエフェクトにしても、1時間かけたりとか、ずーっとやってたりとかして。そのどれが正解っていうのはないんですけど、ギターの音なんかにしても、自分が納得するまでやるっていうのはありましたね。
■ロマンティックさにこだわったのはどうしてなんですか?
石神:うーん、気分ですね(笑)。
■(笑)でも、そこにメンバーが同調しないとまとまらないじゃないですか。バンドでロマンティックな気分になっていたのは何か理由は思い当たりますか?
伊藤:うーん、でも最初にその話をしたときに異論も出ませんでしたね。僕らも「あ、じゃあそれで行こう」と。すんなりと。
菊池:たしかに、誰も何も言わなかったね(笑)。
■じゃあそのロマンティックっていうもののイメージのモデルはあったんですか?
石神:そこについては話し合わなかったですね。
■気分として共有しているものだと?
石神:それぞれのロマンティックを持って来いみたいな感じになって。僕の意見では、先ほど言ったみたいに逃避的なものがすごくロマンティックだったりもするし。攻めてるだけが音楽じゃないって思うし。そこに埋もれたものの受け皿みたいなものがあってもいいなって思うし。それぞれが持っているものなんですよね、ロマンティックに対してのイメージっていうのは。そういう意味では、英語のロマンティックに当てはまらないものなのかもしれないですね。
■なるほど。ただ、それぞれのロマンティック持ち寄るって言ったときに、メンバー間でそれがバラけることはなかったですか?
石神:うーん、でも意識的なものではなく、かなり漠然としたものなので。そこで乱れるっていうことはなかったですね。
■じゃあ、アルバムを作っていくなかで、「この方向性で間違ってないな」って感じた瞬間はあったんですか?
石神:最初に出来た曲が6曲目の“ア・パーム・ハウス・イン・ザ・スカイ”っていうインストなんですけど。それは8月ぐらいから作りはじめていて。むしろ、この曲からロマンティックっていうテーマをインスパイアされた感じも少しあって。そのときにみんな、何となく感じるものがあったっていうか。
■それで方向性が出来たんですか?
石神:1曲1曲のモチヴェーションが違うんですけど、共有という意味では、きっかけとしてはこの曲だったかなと。
菊池:軸になった感じはしますね。
■その軸が、言葉がない曲だっていうのが面白いですね。
石神:そうなんですよ。
■歌詞に、曲ごとのテーマは設けるんですか?
石神:いやそれも、かなり感覚と、デモを作る段階で英語っぽく歌ってるやつを英語に直して、リズム感を重視して。
■英語である理由は何なんですか?
石神:それもよく訊かれるんですけど、とくにないですね。
■日本語になると意味の部分が大きくなってしまって、フィーリングの部分が削がれるからっていうところもありますか?
石神:それもありますかね。
伊藤:うーん、でも僕が英語詞を作るんですけど。曲のイメージを作ったひとにもらうんですよ。で、さっき龍遊が言ったみたいに、語感であったりイントネーションだったり言葉のリズムだったり、っていうのを考えて仮歌を入れてるんで、それをいちばん大事にして言葉を入れていくんですけど。そのイメージをもらうときに、日本語詞でもらうこともあるので、べつに日本語詞になったからってフィーリングが削がれることはない。
石神:英語のほうがカッコいいからってだけですね。
[[SplitPage]]作ってるときに水辺の映像を作ったりもしていたので、そういうイメージが強いですね。そういう部分を聴いてほしい。(菊池)
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■なるほど。1曲目が“スーサイド・オブ・ポップス”っていう、けっこう意味深なタイトルなんですけど。これはどこから出てきたんですか?
伊藤:これはたぶん、「スーサイド」って言葉を入れたかっただけじゃないかな。
石神:僕らの曲って作り終わったあとにタイトルを決めることが多いんですけど、この曲はすごく暗いなと思って、自分で(笑)。で、僕アイドルがすごく嫌いなんですけど、そういう、表面的にもポップが死んでるみたいなイメージもあったし。アルバム全体のイメージとして、女の子が持つ世界観みたいなものを出したくて。すごくミーハーなものに対しての、アンチまで行かないけど、ちょっと......。そういうのを最後まで結論出さずに、「ま、これでいっか」みたいな(笑)。
(一同笑)
石神:すいません(笑)。
■いやいや(笑)。アルバム・タイトルに「ハー(Her)」ってついてるのはその女の子感を出したかったっていうのがあるんですか? 前作(『ヒズ・ジュエルド・レター・ボックス』)との対比っていうのももちろんあると思うんですけど。
伊藤:フェイスブックのホテル・メキシコのページを最初作ったときに、ジャンルに「世界中の女の子を幸せにするような音楽」って書いていたんですよ。ジャンルって縛れないから、そういうふうに書いたんです。女の子が楽しんでいるような感じ、何かしら女の子に行き着くようなイメージっていうのはもともと持っていますね。
■その女の子に向けてっていうところにこだわる理由は?
菊池:単純に、PVとか観ててかわいい女の子が出てるといいよね、っていうのはありますよね(笑)。
■(笑)でも、重要なところじゃないですか。誰に聴かせるかっていうのは。
石神:女の子ってやっぱ、未知数だと思うんですよね。メンバー全員男だし、女の子の気持ちなんかわからないじゃないですか。でも、女の子目線で作ったらなんか面白いっていう(笑)。その未知数の部分を、僕らはたぶん間違えてると思うんですよ、全部。
■イメージとしての女の子っていう?
石神:第三者から見たらそうなんだけど、でもやっぱやってるときは、もちろん女の子になったつもりで。
(一同笑)
石神:女の子の気持ちを最大限に汲み取ろうと(笑)。同じレンズから、こう。
■でもそれ、すごく大事なところですね。フィーリングとしては、自分の男じゃない部分を出しているってことですよね。
石神:でも結果としては、男の目線になってしまうというか。
■前作で“ガール”って曲があるじゃないですか。で、今回“ボーイ”っていう曲がある。少年少女っていうことに対しての、思い入れはあるんですか?
石神:思い入れはないですね。
菊池:思い入れは(笑)。
■いやいや、たとえば思春期的なものであるとか。
石神:ああ。少年少女が持つような、キラキラしたものっていうか、衝動みたいなものの感じ。それはいいなって。
菊池:惹かれるものはあるね。
■なるほど。じゃあ、アルバム全体が醸すフィーリングっていうのは? ロマンティックでもいろいろあるわけですが。
石神:そこについてもとくに話し合ってないんですけど、個人的には、ミーハーな女の子が見ている世界みたいなイメージで僕はこのアルバムを聴きますね。
伊藤:僕がこのアルバムに対して抱いているロマンティック感は、出来上がってから感じてるものなんですけど、退廃的なものっていうか。
石神:はははは(笑)。
伊藤:なんて言うんですか、ロマンティックなんですけど、純愛の絶頂期とかは過ぎてますよね、たぶん。
石神:たしかに。それはある。
伊藤:酸いも甘いも経てからの、ロマンティックのような気がしてます。
石神:はじめて知った(笑)。酸いも甘いも経た上でのピュアさ(笑)。
■なるほど。それぞれの勝手な女性像が出た結果みたいな(笑)
(一同笑)
■では、バンドとしては、不特定多数に向けて音楽を作っているという意識ですか? それとも、ある特定のリスナー層を想定している?
伊藤:でも逆に言えば、不特定多数のひとがどうして聴かないんだろうぐらいの気持ちでやってますけどね。好きでやってますし。でもやっぱり、こういう音楽を聴くひとたちの耳に届かないと意味がないなとは思ってますね。
[[SplitPage]]何がロマンティックかっていうことを意味づけするのは難しいと思うんですけどね。ただ、目に見える現実だけがすべてじゃないと思ってるんで。その化粧をしているときに、たとえば鏡が喋ったりするとロマンティックになるわけじゃないですか。そういうことがいつ起こるかわからないよっていうか。(石神)
■自分たちのリスナーってある程度見えていますか?
石神:いや、正直まったく見えてないです。
■たとえばライヴに来ている客層とか。
石神:ライヴの客層はかなり不特定のほうに入ると思いますね。たぶんやけど。
■もらったリアクションで面白いものはありますか?
石神:たとえば、ミスチルが好きっていうギャルが、ホテル・メキシコが好きとか(笑)。
■ほう!
菊池:そんなのいた?(笑)
石神:いるいる。よくいるよ。
菊池:あとライヴ終わったときに、50歳ぐらいのおっさんから「苦労してんな」って言われました(笑)。
(一同笑)
菊池:「そんな音出ーへんぞ、ふつう」みたいな(笑)。
■じゃあ、自分たちみたいに洋楽を聴いている層に向けているっていう意識もない?
石神:まあもちろん、海外にも向けていきたいっていうのはありますけど――。
菊池:まず自分たちが作りたいものっていうものが先にありますね。
石神:とくに誰に聴いてほしいっていうのは考えてないですね。
■では、リスナーにどういうときに聴いてほしいアルバムですか? もちろん自由っていうのが前提だとして。
石神:高速で車がパンクしたときに聴いてほしいですね。
■それはなぜ?(笑)
石神:なんかこう、イメージとして広い景色を見ながら聴いてほしいかなと。狭いところで壁向いたまま聴くんじゃなくて。
菊池:それはなんかわかる。
石神:開放的な感じで聴いたら、すごく気持ちいいんじゃないかなと思って。でも何でもそうか。
伊藤:ははははは! けっこう共感してたのに(笑)。
菊池:僕もでもけっこう広い景色っていうのはあって。作ってるときに水辺の映像を作ったりもしていたので、そういうイメージが強いですね。そういう部分を聴いてほしい。
伊藤:僕は空いてる電車のなかで聴いてほしい。僕は電車に乗ってるときに音楽を聴くのが好きなので。空いてるほうがいいんじゃないかなと。
■そのココロは?
伊藤:単純にイメージしたときに混んでる画が出てこなかったですね。けっこうガラガラぐらいの電車のほうが思い浮かびましたね。
石神:このアルバムを、みんなで聴いてるイメージってなくないですか?
伊藤:それはあるね。一人称だね。
石神:やんなあ。
■パーソナルなイメージ?
石神:できれば、かわいい女の子が聴いている感じ。
■かわいい女の子が恋をしているとき?
伊藤:いや、恋してるときは――(笑)。
石神:恋しているときは、聴いちゃダメ(笑)。恋が終わったあとですね。
■それはなぜ終わった恋なんですか?
伊藤:いや、してるときじゃないと思うんですよね。終わったときか、してないときなんじゃないかなあ。
■たとえばロックンロールは基本的には恋のはじまりの歌ですよね。それとは違うものだと?
石神:そうですね。どっちかと言うと、僕ははじまる前ですね。デートする前の家で化粧してるときとか(笑)。そういうときでいい。会ったら聴くなと(笑)。
■でも家で化粧してるときだったらすごくワクワク感があるじゃないですか。
石神:まあそうですね。でも――。
伊藤:だから家で戦略を立ててるときじゃなくて?
石神:いやだからね、僕の想像している女の子はね、ギャルとかじゃないよね。娼婦かな。
■じゃあ化粧は武装としての化粧なんですか?
石神:いや、武装っていうかね、本人もたぶんわかってない。
(一同笑)
■することになってるから(笑)。
石神:することになってるから、やってるだけであって。そういう戦略なんかも考えない、女の子に聴いてほしいなと。
■それは面白いですね(笑)。恋愛の最中でないフィーリングをロマンティックと呼ぶのは。複雑な回路が出来てるなと思って。
伊藤:ロマンティックって言っても、恋愛に対して盛り上がってるっていうのではなく。恋にがっつこうとか、盛り上がってるっていうものではないですね。だから僕のイメージだと酸いも甘いも経てしまっているひとのイメージなので、どちらにしても、最中じゃない感じはしますね。
■なるほど。じゃあ恋愛の最中のひとが聴くと言うよりは――。
石神:いや、最中でも大丈夫(笑)。でも、このCDを買うひとはたぶん恋愛できない。
(一同笑)
菊池:失礼やな(笑)!
石神:たしかに何がロマンティックかっていうことを意味づけするのは難しいと思うんですけどね。ただ、目に見える現実だけがすべてじゃないと思ってるんで。その化粧をしているときに、たとえば鏡が喋ったりするとロマンティックになるわけじゃないですか。そういうことがいつ起こるかわからないよっていうか。そういう、どこにでもあるものだと思うので。心の美しさみたいなものは。
■ファンタジーみたいなもの?
伊藤:それはあると思います。
石神:そういう方向に持っていければいいかなと(笑)。
■(笑)なるほど、わかりました。では最後に、バンドとしての野望があれば聞かせてください。
伊藤:そうですね、7インチは去年の春に海外レーベルから出せたんですけど、LPはまだ出せてないので、次は海外からLPを出せるように頑張っていきたいです。
■ライヴ情報 *2013年3月8日(金) 「HOTEL MEXICO "shows in California"」会場:Insight Los Angels store (LA)
LIVE:HOTEL MEXICO
and premiering new surfing documentary video KILL THE MATADOR
https://killthematador.com/
info : https://www.facebook.com/insightlosangelesstore *2013年3月9日(土) 「HOTEL MEXICO "shows in California"」
会場:Detroit Bar (Costa Mesa)
LIVE:HOTEL MEXICO / BRONCHO / THE BLANK TAPES
adv : $7
ticket : https://ticketf.ly/Wktl4P *2013年3月15日(金) 「SECOND ROYAL」
会場:京都METRO
開場:21:00
前売:1,800円 / 当日:2,000円(1ドリンク付)
LIVE:HOTEL MEXICO ※Special Long Set
Guest:OZ Crew (zico / O.T.A. / Yusuke Sadaoka / RIE / nobuyo)
DJ:HALFBY / Handsomeboy Technique / kikuchi(HOTEL MEXICO) / 小野真 / 小山内信介
お問い合わせ:METRO(075-752-4765) *2013年3月23日(土) 「CUZ ME PAIN × HOTEL MEXICO」
会場:下北沢 THREE
開場:24:00
当日:2,000円(1ドリンク付)
LIVE:THE BEAUTY / HOTEL MEXICO / JESSE RUINS
DJ:YYOKKE(WHITE WEAR/JESSE RUINS) / NOBUYUKI SAKUMA(JESSE RUINS) / TSKKA(MASCULiN) / ODA(THE BEAUTY) / APU(NALIZA MOO) / COZZY(OHIO PRISONER) / ANARUSHIN and more
お問い合わせ:THREE(03-5486-8804 ※16時以降)



アーティスト名: tmymtur

















