「K Á R Y Y N」と一致するもの

『ボレロ 永遠の旋律』 - ele-king

 フランスの作曲家、モーリス・ラヴェルに興味を持ったのは坂本龍一が音楽百科『スコラ』で大きなパートを与えていたからだった。バッハやベートーヴェンはわかるけれど、ラヴェルがそんなに大事なのかと最初はちょっと不可解な気もした。クラシックに多少の興味があっても、若い頃はメシアンやシェーンベルクに手を延ばしがちで、ラヴェルという選択肢はそうはない気がするし、学校の授業か何かで “Boléro” に触れてユニークだなと思うことはあっても、それなりの環境にいなければ彼の作品をもっと聴いてみようとはならないのではないだろうか。『スコラ』で取り上げられたラヴェルを、まあ、でも、坂本さんだしと思って素直に聞いていると “戦場のメリークリスマス” が生まれた背景を多少とも想像させるところがあり、その後も “水の戯れ” などを繰り返し聴きながら、なるほどロマン派を批判して印象派が訴えようとした主観性からの脱却が “戦場のメリークリスマス” には受け継がれているということが少しはわかった気がしてきた。坂本龍一が『エスペラント』をつくる時にマーラー解体というテーマを内包していたことと裏表の発想だったのだなと。

 アンヌ・フォンテーヌがラヴェルの生涯を描いた『ボレロ 永遠の旋律』はロシアのバレエ・ダンサー、イダ・ルビンシュタイン(ジャンヌ・バリバール)の足元から始まる。ルビンシュタインは雨の中を工場に向かって歩いている。映像には青のフィルターがかけられている。建物の入り口にはラヴェル(ラファエル・ペルソナ)が待っていて彼女を内部に招き入れるとフィルターは外され、機械類が色鮮やかに映し出される。そして、機械が立てる繰り返しの音を賞賛し、これが音楽だと彼女に伝える。ルビンシュタインはこれに同意しない。彼女には機械の音は音楽には聞こえない。ラヴェルは機械の音が「繰り返し」であることに価値を見出している。ここで観客は “Boléro” が同じモチーフの繰り返しだということをいやでも思い出す。ラヴェルはサティのミニマル・ミュージックに触発されて “Boléro” を構想したとどこかで読んだことがあるので、あれはガセだったのかなと僕は戸惑い、リー・ペリーがドキュメンタリー映画『The Upsetter: The Life and Music of Lee Scratch Perry』(08・日本未公開)でツルハシを振り下ろす音の繰り返しがレゲエの起源だと語っていたこともついでに思い出す。「労働=繰り返し」をチャップリンが『モダン・タイムス』で主題化したのは “Boléro” が作曲された8年後。ラヴェルは幼少期を工場の近くで過ごしたそうで、意識下に機械の音が刷り込まれていたということなのだろう。クラフトワーク『Man-Machine』がリリースされた時点でもまだドイツでは「労働=ロボット」問題は議論されている。

 時制は過去に戻って1903年。30歳手前のラヴェルは大きなピアノの賞に挑み、受賞することができなかった。審査会場となっていた建物から転げ落ちたラヴェルは母親に自殺未遂を疑われる。彼は東洋風のメロディが聞こえてきて思わず身を乗り出してしまい、自分が2階にいたことを忘れていたと母親に説明する。ラヴェルについては表面的なことしかわかっていないそうで、この辺りはどっちが真実なのかわからない。ちなみにほとんどの人は彼を「モリース」と呼んでいて「モーリス」と呼ぶ人も何人かはいた。さらに20年以上が過ぎ、50歳を過ぎたラヴェルは売れっ子の作曲家になっている。本作ではものの見事に省略されているけれど、 “水の戯れ” など彼の代表作はほとんどが30歳前後の一時期に作曲され、それらをレパートリーとするピアノのソロ・コンサートが大人気を博している。つまり、ピアニストとしては評価されなかったけれど、作曲で大きな知名度を得、友人たちは彼が5回も受賞を逃したことが成功の要因だったと楽しげに話す。ラヴェルはアメリカに招聘されて全米各地をツアーで回り、コンサートの合間にはジャズの演奏も聞きに行く。機械の音を音楽だといい、ピアノ・ソロのコンサートを行い、ジャズに興味を示しているあたりも完全に坂本龍一とイメージがダブる。みんなと流行歌を楽しげに弾きながら歌うシーンも後半には出てくる。
 アメリカにツアーへ出かける前、ラヴェルはルビンシュタインにバレエ用の新曲を書いて欲しいと頼まれ、承諾の手紙を彼女に送っていた。当初はツアー中に書き上げてしまうつもりだったものの、まったく曲は書けず、パリに戻ってからもライターズ・ブロックからは抜け出せない。作曲家や小説家がスランプに陥るシーンはなぜか絵になるので、『ボレロ 永遠の旋律』でもそのあたりはかなり楽しんで撮られている。海岸に何度も波が打ち寄せるシーンはなかなか丁寧に撮られているので “Boléro” の繰り返しと直結するシーンなのかと思っていたら、ぜんぜんそうではなかった。本作は時系列がバラバラに配置されているので、素直にストーリーが流れていくわけではなく、第1次大戦に志願して出兵するシーンやその前後からラヴェルがミューズとして慕っているピアニスト、ミシア・セール(ドリヤ・ティリエ)とのやりとりが細切れに挿入される。2人の関係は複雑で、ミシアには夫がいて、その夫には複数の愛人がいる。ラヴェルはミシアに好意を寄せているものの、ミシアはその気持ちには応えない。

ラヴェルはミシアが忘れていった赤い手袋を携えて売春宿に出掛けて行く。ピアノを弾いて娼婦たちとさんざん騒いでからそのうちの1人と個室に入り、服は脱がなくていいと優しい口調で告げ、彼女にミシアの赤い手袋をつけてもらう。それ以上の描写はないものの、ラヴェルがフェティシズムを満足させたことは明らかに推察できる。前後してオーケストラを指揮するリハーサルのシーンがあり、エナメルの靴を家に忘れてきたとラヴェルは癇癪を起こす。これもラヴェルのフェティシズムに由来するものだったと、この時に初めてわかる仕掛けになっている(最後まで観るとマザコンがその根本にあったのかなという想像も湧き上がってくる)。その時のリハーサルではラヴェルがメロディよりもテンポを重視しろと楽団員たちに強く訴えるシーンが印象的で、これも明らかに “Boléro” がどんな曲になるのかという伏線になっている。ラヴェルが指揮棒を止め、口を開くまでの沈黙はまだその後の展開がわかっていないためにかなり恐ろしい。そして、オーケストラは爆発的な調子でエンディングだけを演奏する。

 “Boléro” が完成するまでのプロセスはサンプリングみたいでとても興味深い。彼がようやくとっかかりを掴むのはハウスメイドのルヴロ夫人(ソフィー・ギルマン)がクラシックよりも流行歌の方が好きですといって2年前にヒットした “Valencia!” を2人で演奏するところから。 “Valencia!” のリズムがラヴェルの指先から離れなくなり、彼は指先でピアノのボディを叩き続ける。当時の演奏をいくつか聴き比べてみると、トン、トトトトン、トトトトン……というフラメンコを思わせるリズム(母親はバスク出身)はポール・ホワイトマンのヴァージョンが “Boléro” とほとんど同じに聞こえ、ホーンのアレンジもこれにかなり近い。試行錯誤を重ねた末にメロディも完成し、クレッシェンド(だんだん強く)しながら17回繰り返すだけという発想にラヴェルはようやくたどり着く(締め切りまで時間がないからそうしたようにも受け取れたけれど、さすがにそのような言及はなかった)。完成した楽譜をラヴェルがルビンシュタインに渡すのが冒頭のシーン。ラヴェルはこの楽譜を渡すのに最もふさわしい場所が工場だと思ったと告げ、ルビンシュタインはすぐに楽譜に目を通し、とても気に入った様子。

(以下、ネタバレのような解釈) “Boléro” のリハーサルを見ていたラヴェルは自分の曲がまったく理解されていないと激昂する。ラヴェルにとってはオートメイションのイメージだった “Boléro” がルビンシュタインにとっては「ヴードゥー教の儀式を思わせるエロティックな音楽」と解釈され、振り付けもストリップまがいのものになっていた。それこそ1890年代から30年近くパリを熱狂で包んだムーラン・ルージュからキャバレーのダンスを借りてきたようなものになっていて、ルビンシュタインの “Boléro” は平和とオプティミズムの表現に変わっていたのである(ラヴ&ピースの発信地だったムーラン・ルージュは1920年代に入って再建され、 “Valencia!” も再開したムーラン・ルージュが生んだヒット曲である。また、ムーラン・ルージュは、世界中で進行している性教育の後退に対して「性の喜びと同意」をテーマに掲げた今年のパリ・オリンピックでも文化の象徴として看板を新しく付け替えられている)。

 初演の日になってもラヴェルは怒りが収まらず、曲の途中で耐えられなくなって劇場の外に出てしまう。しかし、明らかに聴衆は “Boléro” に魅了されている。ミシアはラヴェルを劇場に連れ戻す。実は長い間、僕は “Boléro” のエンディングがずっこけギャグのように思えて、せっかくの優雅な雰囲気が最後の最後で台無しだと感じていた。坂本龍一が(映画音楽用にアレンジした “Bolerish” はそうでもなかったけれど)洋服の青山50周年のために手掛けたアレンジではさらっと終わらせていて、さすがだなとも思っていた。しかし、ラヴェルの意図は違っていた。ラヴェルにとって “Boléro” のエンディングは破滅や消滅を意味し、工場で演奏して欲しいという希望さえ持っていた。パフォーマンスが終わり、聴衆が熱狂に包まれると、しかし、ラヴェルもようやくルビンシュタインの解釈が正しいことに気がつく。ラヴェルは「自分でも気がついていなかった曲の魅力を引き出してくれた」とルビンシュタインに謝り、2人は終演後にようやく和解する。ここで少し穿った見方をしてみたい。この作品を通してラヴェルは何度も売春宿に足を運びながら一度もセックスをせず、売春宿の女将に礼まで言われている。フェティシズムだけが彼のセクシュアリティであるかのように描かれ、もしかして童貞だったりするのかという疑いが頭をもたげてくる(前にも書いたようにラヴェルについて詳しいことはわかっていない)。ミシアと結ばれることがないラヴェルはいわば彼の愛を観念的なものとして捉えるしかなく、彼女との仮想のセックスを “Boléro” に昇華させたと考えることはできないだろうか。そして、そのことに本人も気づいていなかったのかもしれない。クレッシェンドはまさにセックスの高まりを示し、エンディングは射精して果てた状態を表しているのだと。実人生で求めていたことがどうしても叶わず、音楽にかたちを変えたもの、それが “Boléro” だったのだと。そうだとすれば印象派として認識されることでも対立し、ココ・シャネルと不倫を重ねながら “Le Sacre du printemps(春の祭典)” を書き上げたストラヴィンスキーとはことごとくが対照的だったともいえる。また、フォンテーヌ監督は若い頃に観たモーリス・ベジャールとジョルジュ・ドンによる “Boléro” があまりに官能的で心に残ったことが本作を撮る動機になったとも話している。

 “Boléro” の成功は、そして、ラヴェルの人生をゆっくりと狂わせていく。ラヴェルは神経変性疾患にかかり、ネクタイが結べなくなり、すぐにコーヒーカップを割ってしまう。最終的にはこれが原因で生涯を閉じることになっていく。記憶障害を伴うようになったラヴェルは自分が “Boléro” を作曲したことも覚えていない。ここからはあまりにも悲しい場面の連続で、最後まで観るのはちょっと辛かった。エンディングはまるで “Boléro” のミュージック・ヴィデオのような終わり方で、ラヴェルは亡くなっても “Boléro” は永遠に生きていると言わんばかり。

 本作を観るまで “Boléro” が最初はバレエのために作曲されたということを僕は知らなかった。バレエである以上、どうしたって肉体を表現することになるわけだから、ブラック・ミュージックとは別な意味で身体性とは不可分の音楽が編み出されていく。ピエール・アンリ、ラルフ・ルンゼン、スティーヴン・セヴェリン(バンシーズ)、アート・ウィルソン(アンドラス・フォックス)、最近だとJ・リンもウェイン・マグレガーのために『Autobiography』を書いている。冒頭で挙げた坂本龍一『エスペラント』もバレエのために書いたもので、踊れるものなら踊ってみろというつもりで坂本は書いたらしい。それをいったらクリスチャン・ヴォーゲル『Music for The Creations of Gilles Jobin』で、これをイダ・ルビンシュタインに聞かせたら、それこそ「工場の音にしか聞こえない」と言われそうである。

Mighty Ryeders - ele-king

 レアグルーヴ史の頂点に輝くとも言われるのがマイアミの8人組ファンク・バンド、マイティ・ライダースのアルバム『Help Us Spread The Message』(1978)だ。同作収録曲 “Let There Be Peace” にはアルバムとは異なるシングル・ヴァージョンが存在するのだけれど、その貴重なヴァージョンが最新リマスタリングを経てオリジナル7インチとして蘇ることになった。7月24日発売、B面にはデ・ラ・ソウルにサンプリングされたことでも知られる “Evil Vibrations” の、MUROによるエディットが収録される。
 またこのリリースを記念し、Tシャツも発売されることが決定。完全受注生産とのことなので、早めにチェックしておきましょう。

レア・グルーヴ“究極”の1枚として燦然と輝くMIGHTY RYEDERS『Help Us Spread The Message』からさらなる謎が解き明かされる! アルバム未収録の「Let There Be Peace」シングル・ヴァージョンが奇跡の再発!

アルバム同様にプレミア化している7インチシングル「Let There Be Peace」が実はアルバムとは異なるヴァージョンでカットされていたことが判明! そのシングル・ヴァージョンをそのままに最新リマスタリングを施したオリジナル7インチ以外ではこの盤でしか聴くことができない奇跡の再発!
さらに楽曲の素晴らしさはもちろんのことDe La Soul「A Roller Skating Jam Named“Saturdays”」でサンプリングされたことでも有名なスーパーキラー「Evil Vibrations」を、日本が世界に誇るKing Of Diggin'ことMUROが新たなグルーヴを注ぎ込んだ最新キラー・エディットも収録!
完全初回限定生産! 即完・プレミア化必至のダブル・サイダー!!

MIGHTY RYEDERS
Let There Be Peace(Single Version) / Evil Vibrations(MURO edit)

2024/07/24
7inch
P7-6613
¥2,420(税抜¥2,200)
★初回完全限定生産 ★ペラジャケット仕様 ★最新リマスタリング


MIGHTY RYEDERSの7インチの発売を記念してTシャツを2種類販売!

レア・グルーヴ史上、最高峰の完成度を誇るアルバム『Help Us Spread The Message』を1枚だけ残してそのまま謎に包まれたマイアミ出身のバンドMIGHTY RYEDERS。

彼らの幻のシングル、「Let There Be Peace」と日本が誇るDJ、MUROによってエディットされた「Evil Vibrations」のカップリング7インチの発売を記念してTシャツを販売します。

Type Aの「Let There Be Peace」ヴァージョンは今回の7インチを元にしたデザイン、Type Bの「Evil Vibrations」ヴァージョンは『Help Us Spread The Message』のジャケットをベースにしたデザインです。
今回も完全受注生産になりますのでお早めにどうぞ。
https://vga.p-vine.jp/exclusive/vga-1043/


Mighty Ryeders
Official T-Shirts

Type A (VGA-1043)
Black / White / Dark Chocolate / Stone Blue / Cornsilk
S/M/L/XL/2XL
¥4,500 (With Tax ¥4,950)


Mighty Ryeders
Official T-Shirts

Type B (VGA-1044)
Black / White / Olive / Mint Green / Sport Gray
S/M/L/XL/2XL
¥4,500 (With Tax ¥4,950)

※1万円以上のお買い上げで日本国内は送料が無料になります。
※商品の発送は 2024年8月下旬ごろを予定しています。
※Tシャツのボディはギルダン 2000 6.0オンス ウルトラコットン Tシャツになります。
※期間限定受注生産(〜2024年8月4日まで)
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。

Lusine - ele-king

 近年ではロレイン・ジェイムズがフェイヴァリットにあげていたことを憶えているだろうか。そうした新しい世代にも影響を与えているエレクトロニカのヴェテラン、〈Ghostly International〉からリリースを重ねるルシーンの来日公演がアナウンスされた。2013年以来とのことなので、じつに11年ぶり。今回はドラマーを従えての公演で、迫力あるパフォーマンスが期待できそうだ。8/30(金)@CIRCUS Tokyo、8/31(土)@落合Soup、9/1(日)@CIRCUS Osakaの3公演、詳しくは下記をご確認あれ(なお落合Soup公演はソロでのパフォーマンスです)。

LUSINE JAPAN TOUR 2024 | エレクトロニカの重鎮11年ぶりにして、初のサポート・ドラマーを率いての来日決定!

昨年6年ぶりのニュー・アルバム『Long Light』をリリースしたエレクトロニカの重鎮LUSINEの、2013年の『EMAF TOKYO 2013』以来となる、およそ11年ぶりの来日公演が決定致しました。

今回はサポート・ドラマーのTrent Moormanを率いての初来日。エレクトロニクスとライヴ・ドラミングを組みわせてダイナミックなパフォーマンスが展開されます。(落合Soup公演はドラマー無しのソロ・エレクトロニック・セットです)
貴重な機会を是非お観逃しなく!

Ghostly International 25th Anniversary in Japan vol.2
LUSINE JAPAN TOUR 2024

LUSINE 東京公演①
feat. live drumming
日程:8/30(金)
会場:CIRCUS Tokyo
時間:OPEN 19:00 / START 20:00
料金:ADV ¥4,800 / DOOR ¥5,300 *別途1ドリンク代金700円必要

出演:
LUSINE (feat. live drumming)
and more…

前売りチケットのご購入はこちらから:
https://www.artuniongroup.co.jp/plancha/shop/?p=3165


LUSINE 東京公演②
solo set

日程:8/31(土)
会場:Ochiai Soup
時間:OPEN 18:30 START 19:00
料金:ADV ¥4,500 / DOOR ¥5,000

出演:
LUSINE (solo set)
and more…

前売りチケットのご購入はこちらから:
https://www.artuniongroup.co.jp/plancha/shop/?p=3165


LUSINE 大阪公演
feat. live drumming

日程:9/1(日)
会場:CIRCUS Osaka
時間:OPEN 18:00 / START 19:00
料金:ADV ¥4,500 / DOOR ¥5,000 *別途1ドリンク代金700円必要

出演:
LUSINE (feat. live drumming)
and more…

前売りチケットのご購入はこちらから:
https://www.artuniongroup.co.jp/plancha/shop/?p=3165


Lusine - Full Performance (Live on KEXP)

LUSINE:
テキサス出身のJeff McIlwainによるソロ・プロジェクト。L’usineやLusine Iclなどの名義でも活動を続してきた。デトロイト・テクノと初期IDMの影響を受けて制作を始め、メランコリックでメロディックなダウンビート・テクノとでも呼ぶべき独自のサウンドを生みだしたエレクトロニック・ミュージック界の才人のひとり。1998年よりカリフォルニア芸術大学で20世紀エレクトロニック・ミュージックとサウンド・デザイン、映画を専行、そこでShad Scottと出会い、1999年にL’usine名義でファースト・アルバム『L’usine』をIsophlux Recordsよりリリース。新人アーティストの作品としては異例なほど高い支持を受ける。2002年には、URB誌恒例のNext 100にも選出され、アメリカのエレクトロニック・ミュージックの今後を担う重要アーティストと位置づけられた。その後2002年後半からシアトルに移り現在に至るまで拠点にしている。様々なレーベルを股にかけ活動し、『A Pseudo Steady State』、『Coalition 2000』(U-Cover)、『Condensed』、『Language Barrier』(Hymen)、『Serial Hodgepodge』、『Podgelism』、『A Certain Distance』、『The Waiting Room』、『Sensorimotor』(Ghostly International)などのアルバム、数々の12インチ・シングル、EPなどをリリース。また、Funckarma、 Marumari、Lawrence、School of Seven Bells、Tycho、Max Cooper、Loraine Jamesなどのリミックス、McIlwainは、Mute、!K7、Kompakt、Asthmatic Kitty、Shitkatapultなど様々なコンピレーション、さらにはフィルム・プロジェクトのスコア制作など、多岐にわたる活動を展開。シアトルに移ってからはエレクトロニック・ミュージックの優良レーベルGhostly Internationalを母体にリリースをしており、
2023年にはおよそ6年ぶりとなるアルバム『Long Light』をGhostlyから発表。2017年の『Sensorimotor』で確立したインテリジェント且つエレガントなスタイルをさらにアップデートしたサウンドをみせた。また、Loraine Jamesなど、エレクトロニック・ミュージックの新世代からもリスペクトされている存在だ。

Meitei - ele-king

 首を長くして待っていたみなさんに朗報です。冥丁が無事快復を遂げたようで、本人の急病により延期となっていた最新作『古風III』を引っ提げてのツアー日程が、あらためてアナウンスされている。8月2日から9月22日にかけ、新たに京都も加えた全国11都市での開催(札幌、前橋、東京、名古屋、大阪、和歌山、京都、岡山、福岡、別府、熊本。ただし東京および和歌山公演はすでに完売。詳細は下記より)。同ツアーでは「静」と「動」にフォーカスした2つのセットが披露されるという。各会場によっても変わるそうなので、冥丁の最新パフォーマンスをあなた自身の目で確かめておきたい。

 『古風III』をめぐる冥丁のインタヴューはこちらから。

冥丁 『古風』 完結編 TOUR 〜瑪瑙〜 [明・暮 二演目展開制]

日本の古い文化をモチーフにした唯一無二のオリジナリティーで脚光を浴びるアーティスト・冥丁の『古風』編三部作の最終章となるアルバム『古風 Ⅲ』の発売を記念した国内ツアーが全国11都市で開催!

冥丁の急病のため、開催延期となっておりました『冥丁「古風」完結編TOUR〜瑪瑙〜』ですが、冥丁本人の体調も回復し、延期日程が決定致しました!
 


「失日本」(LOST JAPANESE MOOD) = “失われつつある日本の雰囲気”をテーマに、時とともに忘れ去られる日本の古い文化や心象風景をノスタルジックな音の情景に再構築した作品群が高い評価を得ている冥丁が、『古風』編三部作の完結を記念し、札幌、前橋、東京、名古屋、大阪、和歌山、京都、岡山、福岡、別府、熊本の全国11都市で国内ツアーを開催致します。
 
本ツアーでは『古風』編3部作の動のエネルギーを展開する『明』(あけ)、静のエネルギーを展開する『暮』(くれ)と題した2種類の特別セットをご用意し、各地会場の雰囲気によってセットを変えてお届け致します。さらにヴァージョンアップしたライブセットをご期待ください。さらに、東京、京都公演には冥丁のライブでは初となるオーディオ・ヴィジュアルセットを披露します。(*東京、和歌山公演はすでに完売。)
ぜひこの機会をお見逃しなく!

[ツアー日程]
8/2(金)熊本・tsukimi
8/3(土)福岡・UNION SODA
8/4(日)別府・竹瓦温泉
8/24(土)大阪・CIRCUS Osaka
8/25(日)和歌山・あしべ屋妹背別荘 <完売>
8/26(月)名古屋・新栄シャングリラ
8/30(金) 東京・OPRCT<完売>
8/31(土)前橋・臨江閣 別館
9/7(土)札幌・PROVO
9/16(月・祝)岡山・東山ビル ニカイ
9/29(日)京都・京都文化博物館別館ホール

[全公演詳細 HP]
https://www.inpartmaint.com/site/38738/

[Tour Poster Design]
Ricks Ang (KITCHEN. LABEL)

Mica Levi - ele-king

 去る7月10日、ミカチュー名義でも知られる音楽家、ミカ・リーヴィが12分ある新曲 “slob air” をリリースしている。これまで自身の作品はむろんのこと、ティルザなどのプロデュース、種々のサウンドトラック制作など幅広く活躍、UKのアンガーグラウンド・ミュージックを支えてきたキイパースンのひとりが20周年を迎えた〈Hyperdub〉と契約を交わしたことは、ちょっとした事件といえよう。続報に注目です。

Cornelius 30th Anniversary Set - ele-king

 正直なところ、ライヴが始まるまでは30年という月日の重なりが何をもたらすのかを想像できていなかった。それは小山田圭吾というミュージシャンの30年であり、私たちの30年の一片でもあった。成熟だけではなく、未熟さも含めた年月だった。すべてが既に過去であり、見ている瞬間はすべてが今の出来事で、現在地を示すための指標でもあり、未来へと続く見通しのいい景色のようだった。それらのひとつひとつの点を線で繋いで描いた輪の中に、コーネリアスは私たちを招き入れてくれた。夢のような美しい時間だった。

 『The First Question Award』から30周年のアニバーサリーセットと題しながらも、ライヴはいつもどおり“Mic Check”からスタートした。ただし、映像は途中から30周年仕様にしっかりアップデートされていた。ステージ上の幕にデビュー時のコーネリアスの象徴でもある©️マークが映し出された瞬間、4人のシルエットが浮かび上がり、そこから音に合わせて歴代の作品のジャケットが次々と目まぐるしく現れる。コーネリアスのライヴのオープニングにはいつだって胸が高鳴る仕掛けが用意されている。他にも“Count Five Or Six”など、いくつかの昔の曲の映像にも過去のアルバムのジャケットを彷彿とさせる色やデザインが散りばめられていた。今回の会場では7枚のオリジナルアルバムのジャケットをモチーフにしたグッズを販売していたが(あまりの人気に開演前にはほとんど完売していた)、それがまるで伏線だったかのようにアートワークの面においてのキャリアも振り返る演出が随所に組み込まれていた。

 東京ガーデンシアターという会場のスケールは、音と映像と照明を連動させるコーネリアスのパフォーマンスの魅力を最大限に引き出すのに非常に効果的だった。特に圧巻だったのは中盤にお披露目された新曲「Mind Train」。『攻殻機動隊ARISE』のサウンドトラックに収録された“Star Cluster Collector”とメタファイブの“Chemical”を掛け合わせたようなハイブリッドで疾走感のあるこの曲は、今公演の2日ほど前に突如配信リリースされ、数週間前に発売したばかりのアンビエント中心の作品集『Ethereal Essence』の心地よさにどっぷり浸かったままのリスナーをあっと驚かせた。近年のライヴの定番で、映像と音をシンクロさせたスタイルの到達点でもある“Audio Architecture”を手掛けた大西景太氏が今回もミュージックビデオを担当している。線路の上を加速しながら走る列車に乗って進んでいく臨場感あふれる映像に合わせて、一糸乱れぬ演奏がさらに迫力を増して続いていく。音の構造を可視化したアニメーションが大きなホールのスクリーンに映し出されるのを目で追っていると、バンドのダイナミズムとの相乗効果で体ごと無重力の世界に放り込まれてしまいそうになる。その没入感たるやすさまじく、まるで未来空間へとトリップしたような感覚。この9分にも及ぶ力作をデビュー30周年のアニバーサリーライヴの最大の見せ場として用意し、客席を沸かせてみせるのが進化を続けるコーネリアスの強みであり、この日の何よりのサプライズだと感じた。

 演奏スタイル的に最近の曲が中心のセットリストになっていたが、30年間の活動の初期の部分は序盤の“Another View Point”で視覚的にもたっぷりと補完されていたし、2010年代の小山田圭吾の活動を示すサイドワークもしっかり組み込まれていた。まさかここにきて"外は戦場だよ”を披露してくれるとは誰も予想出来なかっただろうし、そのうえ大野由美子が歌い出した瞬間は息を呑んだが、他にも意表を突かれたのは “Turn Turn”のカヴァーだった。「スケッチ・ショーのおかげでYMOに入れてもらった」と本人が語っていたエピソードや、この曲をメタファイブで何度もカヴァーしていたことも含めて、YMOのサポートギターやメタファイブのメンバーとしての側面から、自身のキャリアを振り返る一環として選んだのではないかと思う。実際にアレンジはメタファイブの音にかなり近く、映像もメタファイブのステージで使われていたのと同じものを使用していた。いくつもの地球が回転しながら変化していき、途中から少しずつコーネリアス色に乗っ取られてしまう仕掛けはなんとも痛快だった。もう2度と見ることはないはずだった映像をリメイクして蘇らせ、引き継いでいこうとする意志も受け取った。加えて『Sensuous』から唯一演奏された“Wataridori”はこの日も精度が高い。リズムの高揚感に陶酔するあまり、どんな状況でもスピードを落とさずひたむきに前へと飛び続ける渡り鳥の姿にコーネリアスの長年の音楽人生を勝手ながら重ねてしまい、涙が出た。

 本編のラストは“Thank You For The Music”。『Fantasma』の最後を締めくくるこの曲は、アルバムを振り返るように途中で収録曲の短いフレーズが大量にコラージュされている。しかしここでは代わりにデビュー曲である"太陽は僕の敵”のイントロだけを演奏し、そのまま『The First Question Award』の曲を4曲ほどダイジェスト的にワンコーラスずつ披露してみせたのだ。長いこと封印していた扉をやっと開いたその瞬間は、まばゆい光に包まれてとても暖かい光景だった。そこから再び“Thank You For The Music”に戻り、アディオス!という挨拶と共に幕を下ろすという、いかにもコーネリアスらしい遊び心のあるクライマックス。全体を通して感傷的なムードや湿っぽい演出は一切なく、楽しい仕掛けやサービス精神に溢れた楽完璧なショーだった。30周年の節目の大きなライヴにも関わらず、豪華なゲストは特に呼ばずに、それこそ“外は戦場だよ”の歌唱や“Brand New Season”のテルミンのパートでさえ誰もステージに上げずに、4人のメンバーだけで出来ることをやり切ったことにも強く胸を打たれた。今のコーネリアス・グループこそが特別だという証のように見えた。

 アンコールは5年前の再発時の『Point』再現ライヴで久しぶりに演奏され、客席が歓喜の渦に包まれた初期の名曲“The Love Parade"をしっかりとフルで歌った。あれから様々な経験を重ねて『夢中夢』を経由したコーネリアスは、30年前のこの曲を違和感なく演奏していた。ノスタルジーではなく、今までの30年をもれなく肯定し、まるごと受け止めるような潔さと強さで。音楽には心をつなぐ瞬間がある。それが何度も何度も続けば30年になり、いずれ永遠になるかもしれない。エンディングの“あなたがいるなら”がこの日はまた少し違って聴こえた。

interview with salute - ele-king

 レイヴ・リヴァイヴァル、ダンス・ミュージックの復権は止まらない。パンデミックによる自制、あるいは社会的抑制からの開放。サルートのアルバム『True Magic』はこの動きと重なる一枚であり、ひとりの音楽家が正面突破を図り境界を越えようとする試みである。彼のキャリアを簡単になぞると、ナイジェリアから移住した両親のもとにオーストリア・ウィーンで生を受け、18歳でUKのブライトンに移り住み、後に現在の拠点であるマンチェスターに移住。UKに移住した動機は兄やゲームをきっかけとしてダンス・ミュージックと出会い自ら制作をはじめたからという根っからのプロデューサー気質。UKに移ってからは、様々な人たちと出会いつつ、ダンス・ミュージック、クラブ・ミュージックのセンスに磨きをかけていった。いくつかのEPを発表した後に最初に大きく注目されることになったのが2018年~’19年にかけてリリースされたミックステープ『Condition』。それまではオルタナティヴなR&Bやダブステップといったスタイルでトラックメイキングをおこなっていて、いわゆる4つ打ち成分は控えめだったが、『Condition』で大きくUKガラージやハウスを取り込みダンスフロアに大きく接近。初期作品ですでに感じられた郷愁的なメロディとクラブで磨かれたビート・メイキングにシーンのフォーカスが集まるのはあっという間だった。そんなタイミングで訪れたパンデミック。勢いにブレーキがかかると思いきや、チャーリー・XCXやリナ・サワヤマのプロデュースもおこなう傍ら、ジェニファー・コネリーによる80年代のテクニクスCM曲 “愛のモノローグ” をサンプリングした “Jennifer”、“Want U There”、そしてパンデミックにおけるアンセムのひとつとなった “Joy” など立て続けにフロアヒットを発表。加えて2022年に公開されたメルボルンでの Boiler Room で一気に人気が爆発、そして〈Ninja Tune〉と契約、発表されたのが『True Magic』というわけである。トラックリストを見てわかるとおり、ほとんどの曲がコラボレーションである。リナ・サワヤマやディスクロージャーといった大物アーティストが名を連ねるほか、日本からは個性際立つ才能であるなかむらみなみ、マンチェスターの人気ドラム&ベース・デュオのピリ&トミーのピリ、ブルックリンのオルタナティヴ・シンガーソング・ライターのエンプレス・オブ、“Joy” のヴォーカルでもありムラ・マサともコラボするレイラ、ジョイ・オービソンサンファやヴィーガン作品にフィーチャーされたレア・センなど、バラエティー豊かな存在が本作を支え、アルバムのポップさを次のレベルに押し上げている。
 インタヴューは、RDCこと Rainbow Disco Club で来日したタイミングで対面でおこない、RDCの感想からアルバムについて、そしてパンデミックがもたらしたもの、最近のDJでプレイしているフレンチ・ハウスについてなど、様々な方向から彼に迫ってみた。

いままでダンス・ミュージックにあまり触れたことがない人や、ハウス・ミュージックを聴いたことがないティーンも気軽に聴けるような、ダンス・ミュージックに興味を持ってもらえるようなアルバムにしたかったんだ。

初めまして。お会いすることができて嬉しいです。今回の来日で3回目ですよね。Rainbow Disco Club(以下RDC)でのプレイはいかがでしたか?

S:初日のトリでプレイできてとても光栄に思っているよ! 日本のオーディエンスはとてもエネルギーにあふれていて、私もよいセットでプレイすることができたんだ。

RDCのオーディエンスは様々なパーティを楽しんできた人が多いので、そのようなオーディエンスについて貴方からポジティヴな答えが返ってきて、私個人としても嬉しいです。

S:個人的にも、RDCは最も好きなフェスになったよ。というのも、みんな酔っ払って楽しむフェスももちろん好きだけど、RDCは音楽をじっくり聴く、いい音楽を味わいたいオーディエンスが多いところは素晴らしいね! 音楽をプライオリティのトップとしている点はRDCの評価すべきポイントだと思う。加えて、制作面やサウンド・エンジニアリング、照明も含めたすべてがパーフェクトじゃないかな。音をじっくり聴く、大きすぎない規模であるということも私は気に入っているよ。

当日出演したアーティストで、気になった日本人のDJがいれば教えて下さい。

S:今回は残念ながらタイミングが合わず聴けなかったんだけど、以前来日した際、大阪で私の前にプレイした SAMO が素晴らしかった。彼女は音楽のセンスもナイスで、速いものからスロウなものまで、いろいろなスタイルの曲を二時間のセットで組み立てていたんだけど、まるで旅に連れて行かれるような体験だった。曲の組み合わせ、流れ、パーフェクトだった。日本のDJは一般的にレベルやクオリティがとても高いと思うよ。今回のRDCで聴けたDJでは、DJノブとDJマスダによるB2Bのセレクト、あれは本当にアメージング!

ここからアルバムについて質問をしていきます。まず、〈Ninja Tune〉と契約することになった経緯はどのようなものでしょうか? レーベル側からコンタクトがあったのですか?

S:そうなんだ。彼らからコンタクトがあったんだけど、じつは以前から、私のDJを何度か聴きに来てくれていたらしくて。〈Ninja Tune〉はもちろん大好きなレーベルで、12~3歳の頃からずっと聴いていたんだ。というのも『SSX』ってゲームがとても好きでそのサウンドトラックを〈Ninja Tune〉のアーティストが手掛けていて(編注:ザ・ケミスツか)、それまでレーベルのことは全く知らなくて、それでこの曲を作っているのは誰なんだろう? と調べていって〈Ninja Tune〉にたどりついたって流れ。そこから〈Ninja Tune〉のアーティストはずっと追いかけていて、例えばヤング・ファーザーズはすごく好きなバンドのひとつ。つまり、自分にとって憧れのレーベルなんだ。このアルバムを〈Ninja Tune〉からリリースできたことはとても光栄なことだと思っているよ。

『SSX』ってゲームがとても好きでそのサウンドトラックを〈Ninja Tune〉のアーティストが手掛けていて、この曲を作っているのは誰なんだろう? と調べていって〈Ninja Tune〉にたどりついたって流れ。そこから〈Ninja Tune〉のアーティストはずっと追いかけていて。

アルバムを全曲聴いて思ったのは、これは凄い作品が出てきたぞ、というのが第一印象でした。ポップでエモーショナル、かつにじみ出るグルーヴもある、という私の意見です。あなたが感じている『True Magic』の手応えはどのようなものですか?

S:このアルバムを作っているときに念頭にあったのは、ポップなものにしたい、ポップ・ミュージックとダンス・ミュージックのクロスオーヴァーなものを作りたいということ。そして、ダンス・ミュージックを作るという視点、ポップ・ミュージックを作るという視点、どちらか片方からのアプローチではなくバランスを保ちながら、ダンス・ミュージックへの入口、として聴いてもらいたいという思いが強かった。例えば、いままでダンス・ミュージックにあまり触れたことがない人や、ハウス・ミュージックを聴いたことがないティーンも気軽に聴けるような、ダンス・ミュージックに興味を持ってもらえるようなアルバムにしたかったんだ。でも、最初はどのような音楽性のアルバムにするか、っていうアイデアは白紙で、実際に作る際のはっきりしたプランはなかった。ただ、強いポップなダンス・ミュージックを作りたいという思いは漠然とあって。でき上がったアルバムを実際に聴いた友だちからは、とてもエキサイティングなアルバムだって言ってもらっているよ。

やはりそうだったんですね! 私も同意見です!

S:ありがとう!

ほとんどの曲がカルマ・キッド(Karma Kid)との共同プロデュースとなっていますが、どのような流れで楽曲制作をおこなっていったのでしょうか? 声とトラックのバランスが絶妙だと感じました。

S:カルマ・キッドは17歳ぐらいから付き合いのある個人的な親友。僕のやりたいこと、自分らしさをいちばん解ってくれているのが彼なんだ。僕のとりとめもない思いつきを整えてアルバムにまとめてくれて、この曲はインディっぽくやろうとか、もっとポップにしよう、ダンスぽいサウンドにしようというようなアイデアを形にできるプロデューサーなのが彼。付き合いも長いからコミュニケーションも円滑でとてもクリア。こうしないとダメとか、これは違うとか、そういったネガティヴなことは言わず、僕のやりたいことを尊重してくれて、その上でアドヴァイスをする、そのような彼の姿勢が『True Magic』を作るうえでとても大きな役割を果たしてくれたと思っている。
 特にヴォーカルに関しては、ポップなマインドを持った人たちに歌ってほしい、ポップなアーティストに歌ってほしい、ということがとても重要だったから、それをいろいろな方法で取り入れて形にできたのは良かったよ。この部分はとくに彼カルマ・キッドの力が大きく、正直、彼は天才! って思ってる。

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フレンチ・ハウスは10歳ぐらいの頃から YouTube で聴いてて、例えばダフト・パンクの “Around The World” とか “One More Time” は何度も何度も繰り返して聴いた大好きな曲。彼らはソウルやファンクとかロックをサンプリングしているけれど、僕も同じようなメソッドでサンプリングをしたいとずっと考えていた。

ヴォーカリストについても質問させてください。リナ・サワヤマとはとても仲がよいようですね。どのような経緯で本作に参加することになったのでしょうか?

S:10年ぐらい前から彼女とは付き合いがあって、彼女の曲のプロダクションを担当したこともあるし(アルバム『Sawayama』収録曲 “Snakeskin”)、彼女のファースト・アルバムの追加プロダクションを手掛けた経緯もあるんだ。彼女がビッグ・スターになっていく過程をずっと見てきたけど、素晴らしい魅力的な声の持ち主だよね。『True Magic』は友だちを集めて作りたかったところもあって、自分の音楽的な方向性、志向を世界に紹介するためのエキサイティングなポップ・スター、ということで彼女にはぜひとも歌ってほしかった。実現できてもちろん嬉しいし、とても特別なことだと思っているんだ。この曲 “Saving Flowers” は、『True Magic』のなかで二番目に書いた曲で、つまりかなり初期に書いた曲なんだけど、歌入れ前のインストの段階でスケールの大きなサウンドができ上がったから、この壮大なサウンドにふさわしい、僕の人生のスケール以上の規模で歌っている彼女がヴォーカリストとして浮かんだので彼女にオファーしたんだ。おかげでとても良い曲ができたよ。

今回のコラボレーションで驚いたことのひとつに、なかむらみなみとの “go!” があります。以前来日した際に彼女と Itoa のコラボ曲 “oh no” をプレイしていましたね。“Go!” の歌詞は彼女にすべて任せた形ですか?

S:彼女の声は特別だと以前から思っていて、インスタで連絡したんだ。この “Go!” のトラックができ上がったとき、エネルギーに溢れた声がふさわしいと考えていて、さっきも話したけど、ポップでソウルフルな力がある声の持ち主に歌ってほしい、という考えでヴォーカリストを選んだのだけれど、そのような才能が並ぶなかでも彼女の声はとても目立つんだ。なかむらみなみのような個性的なアーティストには好きなようにやってもらったほうがうまくいく、そう考えて。トラックを彼女に送って、ヴォーカルを入れて戻してきたわけだけど、まず感じたのは、期待以上のものが来たぞ、ってこと!

アルバム全体の歌詞についてですが、別れや喪失について歌われたリリックを多く感じました。あなたからテーマを提示して各アーティストが仕上げていくような流れで書かれたのでしょうか?

S:とくにテーマを決めてお願いをしたわけではなく、でき上がった詞がたまたまこのような内容になった、って感じかな。なにかはっきりした明確なイメージがあったわけではなかったけど、これまで経験した別れが反映されているのかな、といまは思う。意図したものではないけれど、エネルギーとかソウルとか心が動かされること、そういったことがテーマのように『True Magic』に現れているんじゃないかな。いちばん端的に示しているのがアルバム・カヴァーにも使われている車。映像や絵としてのインパクトがあって、そして車に乗って旅をするときのエモーションやエネルギーも込められていて、これらがテーマに含まれていると思う。

リナ・サワヤマとの “saving flower” ではカシオペアの “朝焼け” がサンプリングされています。あなたにとって大切な曲のようですが、このサンプリングにはどのような意味が込められているのでしょうか?

S:日本の80年代後半から90年代前半にかけてのフュージョンがとても好きで、日本の音楽シーンにとっても特別な時代だと思っているんだ。Tスクエアやカシオペアなどをよく聴いてて、日本に来たときは日本のフュージョン作品のレコードを買い漁ったりしていた。彼らのサウンドは、とてもドラマチックで艶っぽくて、こういった音楽性や音のパレットというものは少なからずダンス・ミュージックに取り込まれている、と個人的には考えている。
 “朝焼け” だけど、この曲のギターを聴いたとき、自分のなかでクリエイティブなアイデアが湧き出てきた。強烈なギターのサウンドをサンプリングできたことは本当に素晴らしいことで、おかげで『True Magic』のメインのひとつとなる曲に仕上がったよ。

ハウスやテクノを文化として認めた功績はとても大きいことだけど、私たちはそれがどこからやってきたのか、源流であるオリジナルを忘れがちなところがあると思う。

『True Magic』の収録曲にもエッセンスが色濃いですが、ダフト・パンクやフレンチ・ハウスからの影響を公言しています。フレンチ・ハウスの魅力とは何でしょうか?

S:フレンチ・ハウスはすごくヒプノティックな部分があるシンプルなスタイルだと思う。基本的には短い音楽の断片をループさせた、わかりやすくシンプルゆえに踊りやすいんじゃないかな。フレンチ・ハウスは10歳ぐらいの頃から YouTube で聴いてて、例えばダフト・パンクの “Around The World” とか “One More Time” は何度も何度も繰り返して聴いた大好きな曲。彼らはソウルやファンクとかロックをサンプリングしているけれど、僕も同じようなメソッドでサンプリングをしたいとずっと考えていた。僕はジャズをサンプリング・ソースとしてよく使っているんだけど、アプローチの方法としては彼らと同じだと自負しているよ。様々な音楽性をサンプリングで色鮮やかに組み合わせていきたい、というところがフレンチ・ハウスから僕が影響を受けている部分だと思うな。
もちろん、UKガラージからはとても強く影響を受けていて、『True Magic』がUKガラージとフレンチ・ハウスのコラボレーションといえるアルバムになったことは、とても自然な流れだったかな。

現在のような成功を手にするまでに、困難な状況もあったと思いますが、どのように乗り越えてきたのでしょうか?

S:実際のところ、なぜ、自分のキャリアが変化したのか、パンデミックのときに考えたことがあって。パンデミックが自分に与えた影響はかなり大きかった。あの時期、ショウも何もできず、外に出ることすらできなかった。自分とPCだけがある、音楽にとても集中した時間だった。あのような困難な状況で、音楽から自分が何を欲しているのか、音楽を使って自分が何をしたいのか。とてもじっくり考えた。
 まっさらな状態から、自分のやりたいこと、音楽で表現したいことを本当にじっくり考えた時間だった。それまで作った音楽はもちろん気に入っているし、作ったことを後悔しているわけではないけれど、ハッピーだったときに作った音楽がほとんどで、ハッピーじゃない状況で音楽を作る経験は初めてだったから、僕にとってそれはとても大きなことだったんだ。自らに嘘をつかず正直であればオーディエンスは音楽を受け入れてくれる。いまはそう考えているよ。

あなたにとってダンス・ミュージックとはどのようなものでしょうか? ある人は人生、ある人は仕事、またある人は喜び、など様々な意見があります。

S:中央ヨーロッパで育ったものとしてダンス・ミュージックはいつもそこにあった大きな存在だったことは確かだね。僕の兄はいつもハウスを聴いていたから生活のなかでもダンス・ミュージックは身近な存在だった。大人になって改めてダンス・ミュージックと向き合ってみると、僕にとっては「逃げ場」だった。例えば、DJをするときはポジティヴなマインドになるし、ハウスをかければ自由な気持ちが湧き上がってくる。一方で、ダンス・ミュージックには人と知り合うための手段という側面があって、コミュニティを形成するための存在でもあると思う。マンチェスターのお気に入りのクラブにいって、人と新しく出会ったり馴染みの友人と楽しんだりとか、そういうことが好きなんだ。すべての音楽にそういった部分はもちろんあるけど、僕にとってのダンス・ミュージックは、素晴らしい気分を味わうための手段、辛いときの逃げ込める場所、そう思っている。

最後の質問になります。先日ベルリンのテクノ・カルチャーが、ユネスコの世界無形文化遺産に登録されました。他方で、オリジナルであるデトロイト・テクノに対する言及がないことについて批判も上がっています。これについて、あなたの意見を聴かせていただけますか?

S:その批判には僕も同意見だよ。ハウスやテクノを文化として認めた功績はとても大きいことだけど、私たちはそれがどこからやってきたのか、源流であるオリジナルを忘れがちなところがあると思う。ハウスやテクノは、クィアやブラックが集まって皆でひとつになれる場所を見つけるために生み出した音楽。(編注:ニューヨークやシカゴや)デトロイトのクィア・シーンやブラック・シーンが作ってきた音楽だと僕は考えていて、このふたつをスルーすることにはとても失望したよ、正直。
 ベルリンのテクノ・カルチャーは重要で、ベルリンもデトロイトがなければそこには存在していなかったのに、本当に残念な話だと思う。私たちは、ブラックの人びと、アフリカン・アメリカンの居場所に光を当てることを決して忘れてはいけないんだよ。

Tribute to Augustus Pablo - ele-king

 1999年5月18日に永眠したルーツ・レゲエの偉人、オーガスタス・パブロ。そのご子息であるADDIS PABLO が今週末から日本をツァーする。それに連動してADDIS PABLO PRESENTS “TRIBUTE TO AUGUSTUS PABLO”、「Rockers International 51st year anniversary pop up & photo exhibition & Additional」が7月15日より神泉の JULY TREE(ロゴは坂本慎太郎デザイン)にて開催される。
 Rockers InternationalやADDIS PABLO関連グッズ、音源の販売、カメラマン菊地昇、石田昌隆、仁礼博による往年のオーガスタス・パブロのポートレイト、さらに生前のパブロと親交の深かった石井“EC”志津男(OVERHEAT RECORDSプロデューサー、雑誌『Riddim』発行人)によるパブロゆかりの品々を展示。また、7月15日にはADDIS PABLOのサイン会とDJによるウエルカム・パーティ。7月19日にはADDIS PABLOほか、石井“EC”志津男、石田昌隆をゲストに招きトークショー、およびADDIS PABLOによるミニ・ライヴもあり。
 ちなみに、ただいま絶賛発売中の、早くも売り切れ店が出てきているele-king books刊行の『キング・タビー――ダブの創始者、そしてレゲエの中心にいた男』も会期中に JULY TREEにて販売されます。

■ADDIS PABLO:プロフィール
メロディカ・キーボード奏者でレゲエミュージシャン、作曲家でプロデューサーでもあるAddis Pablo。ルーツレゲエの代名詞の1人でダブの先駆者であるAugustus Pabloの息子である。 早くに夭折した父と過ごした日々の中で父の創作活動過程を目の当たりにしてきた事を基に、2005年に父親の作品を練習し始めてメロディカとキーボードにおいて自身の音楽スタイルを発見し始め、2010年にはそのキャリアをスタートさせた。 2013年からは多数のヨーロッパの主要フェス、日本を含めたアジア、アメリカ、メキシコやプエルトリコをツアーして、2014年にEarl 16などのベテランゲストアーティストを迎えて録音したデビューアルバム“In My Fathers House”をリリース。2022年5月にドロップした2枚目のアルバムLPの “Melodies from the House of Levi”は自身の成長と音楽的成長を示すものになった。 父、Augustus Pabloが創立したRockers International Labelの51周年である今年2024年は、 その歴史の新たな歩みを刻み始める為に父の誕生日である6月21日のロンドンの老舗クラブ Jazz Cafe でのAugustus Pablo Tribute Showを皮切りに アディスは日本でも7月13日のGEZANとの共演によるSUPERNOVA KAWASAKI でのB.O.B. (Blessings On Blessings) vol.2から父A.Pabloと録音、セッション経験がある日本人ラスタミュージシャンを中心メンバーにRockers Far East名義で活動するベテランバンドを従えてのフルバンドショーを中心とするツアーを予定している。 同バンドでのFUJI ROCK出演も決定している。

■展示情報
ADDIS PABLO PRESENTS
TRIBUTE TO AUGUSTUS PABLO
Rockers International 51st year anniversary
pop up & photo exhibition & Additional
会期:7月15日(月)〜7月25日(木)*予定
会場:JULY TREE(ジュライ・トゥリー)
*詳しい営業日等詳細はSNSをご参照下さい。

■イベント情報
2024.7.15(mon)サイン会+DJ
出演:ADDIS PABLO
START:18:00
ENTRANCE FEE:\1,500+1drink

2024.7.19(fri)TALK & MINI LIVE
出演:ADDIS PABLO
TALKゲスト:石井”EC”志津男、石田昌隆
START:19:00
ENTRANCE FEE:\2,000+1drink

お申込み方法:こちらのインスタグラムDMにてお名前と人数をお伝えください。
19日のみ定員20名予定となります。

■ライヴ情報

STANDARD WORKS CO. LTD.
presents
=B.O.B. (Blessings On Blessings) vol.2=
-Tribute to Augustus Pablo - Rockers International 51st year anniversary Japan Tour with ADDIS PABLO
associated with All Di Best Music
7/13(sat)
17:00-22:15
Ticket:
advance / 4,500yen
at door / 5,500yen
別途1ドリンク

-Live Act-
•ADDIS PABLO(from JAMAICA)
with ROCKERS FAR EAST
•GEZAN
Sound Engineer : 内田直之(NAOYUKI UCHIDA)
-Selector-
ITAK SHAGGY TOJO @itaktojo KEN-ROOTS @abyssinia_jah_rising RAS KOUSKE
-Soundsystem-
JAH RISING S.S

-Food-
JAMAICAN FOOD
RICE&PEAS

Live House
SUPERNOVA KAWASAKI
神奈川県川崎市幸区大宮町1-13,
1-13, Omiyacho, Saiwai-ku, Kawasaki-city, Kanagawa
@supernova_kawasaki

招聘:(株)錦コミュニケーションズ @nishikicommunications

〈店舗情報〉
JULY TREE(ジュライ・トゥリー)
住所:153-0042
東京都目黒区青葉台4-7-27 ロイヤルステージ01-1A
・HP: www.julytree.tokyo
・Instagram:@july_tree_tokyo
・Twitter:https://twitter.com/julytree2023
営業日: 基本月火休館13時~18時ではございますが不定期での営業となります。
*営業日等お問い合わせについてはJULY TREE 公式Instagram、Twitterにてお願いいたします。

High Llamas - ele-king

 相変らずショーン・オヘイガンが作る音楽は、誰にも似ていない。
 2003年の『Beat,Maize & Corn』においてショーン本人の言葉で、「じゃがいもの袋は変わったけれど、それでも中に入っているのはじゃがいもだ」とあったが、この変化に対しての冗談めいた意志表明(タイトルを訳すと『甜菜、とうもろこし、そして穀物』となる)は、『Hey Panda』を聴くと予言として機能していたのではないかとさえ思えてくる。いや、もちろん変わり続けてきたのがハイラマズで、90年代の初期ハイラマズから、98年『Cold and Bouncy』、99年『Snowbug』、2000年『Buzzle Bee』あたりのエレクトロニックに影響を受けたサウンドはわかりやすく変化として捉えることができたし、雰囲気はどこか初期に戻りつつも明らかにポップスとしての画角を押し広げた『Beat, Maize & Corn』、2006年『Can Cladders』、2011年『Talahomi Way』は、変化を感じさせる間もなく、驚くほど自然な形でリスナーをラマズの世界に引き込んだ。レコード屋のソフト・ロックのコーナーで偶然発見した『Hawaii』に衝撃を受け、初めてのリアルタイム・ラマズは『Talahomi Way』だった自分も、遡るにあたってエレクトロニックに影響を受けたアルバムに多少のハードルを感じた薄い記憶ならある。でも「これほどまでにハイ・ラマズの音楽に焦点を当て直したものはない」というのは事実だろう。問題作というインフォメーションにも頷ける。

 散々語られている通り、現行 R&B やヒップホップからインスピレーションを得たということも、仮にハイラマズの作品だと知らずに聴いたとして、これはハイラマズだろうということも、一聴してわかる。今作にも参加しているフライヤーズ、レイ・モリス、ボニー“プリンス”ビリーとの仕事や、ロックダウン中に家の中で子供たちが聴いていたというSZAやソランジュ、ノーネーム、スティーヴ・レイシー、エズラ・コレクティヴ等々から影響を受けたそうだ。2000年代に感銘を受けたというJ Dillaへの思いが時を経て伏流水のように湧き上がったロマンもある。
 第一印象は、サブベースやトラップぽいビート、オートチューンに多少の驚きを感じつつも、ラマズらしいストリングスやピアノ、シンセの響きに耳を傾けると鳴らしっぱなしにされているというよりは細かい単位で配置されながら曲が展開されていくことに気付いてくる。たしかに新しい魅力だと感じた。それでいて、全然煽られる瞬間がなくて、むしろ展開に対してとても豊かな時間の流れがアルバム全体に通底している印象を受けた。BPMがゆったりなこともあるが、現行のプロダクションを抑制をよく効かせながら深く取り込みつつ、やはりハイラマズのポップスとして聴かせるショーンの手腕は流石であるということまではわかった。「僕は、毎日巨大なニンジンを食べるパンダのTikTokファンとして、ロックダウンと回復を過ごした。とても幸せだった。」となんとも言えない安堵感を誘うコメントから察するに、ロックダウンの束の間の豊かな時間も反映されていそうと思ってしまうが、深読みだろうか。

 ところで、この機会でハイラマズを久しぶりに聴きなおしてみると、よく覚えていることに自分自身驚いた。アウトロで次の曲のイントロが脳裏に浮かぶあれだ。思っていたよりもよく聴いたのだろう。いまよりも時間の流れがゆっくりだったのかもしれない。ハイラマズ以降そういうアルバムが何枚あるだろうか。わざわざレコードで買った新譜の何枚を2回以上聴いただろうか。問題作は自分自身だった。
 レーベル〈Drag City〉のインスタグラムには、「現代のポップ・ミュージックの魅惑的な錬金術で幕を開けた『Hey Panda』は、定義が時間とともにどのように変化するかを多角的なレベルで反映した素晴らしい曲集です。喜びを広げ、自信をかき立てることを目的としたアルバムで、若くて勇敢な世界へのラヴレターです」とあった。リスナーもまた時間と共に、楽しみながらラマズの変化を感じていけばよいというか、そうするしかないというか、なんとも楽観的で核を突くメッセージを受け取りました。
 いや、アルバムは相変わらずのポップ・センスを充分に湛えていて、これからの季節にぴったりだと思うし、素直に飛び込んでくる作品だとも思います。ただ、偏屈な僕にはありがたい棘が少し残りました。ラスト・トラック“La Masse”は南米の香りが感じられる(個人的にはエドワルド・マテオを想起した)必ず救われるキラーチューンだし、アウトロのらしいコーラスワークからのフェイドアウトは、まだまだハイラマズは続くという暗示を感じます。レコードは買う。

John Carroll Kirby - ele-king

 2010年代後半、ニューエイジとジャズのあわいを行く作風で徐々にその名を広めていったジョン・キャロル・カービーソランジュのプロデュースからコーネリアスのリミックスまで幅広く手がけるこのLAの鍵盤奏者、近年は〈Stones Throw〉から着々とリリースを重ねている彼の単独来日公演が決定した。しかもバンド・セットと聞けば、どんなパフォーマンスが披露されるのか気になってしかたがなくなる。《朝霧JAM 2024》への出演を控える10月11日、渋谷WWW Xでそのステージを目撃しよう。

ジャズ、ソウル、アンビエントからエレクトロニックまで横断するメロウなサウンドに、どこか癖になる不思議な魅力を携え注目を集めるJohn Carroll Kirby。フルバンドセットでは初となる単独公演が10/11(金)東京・WWW Xにて決定!

SolangeやFrank Oceanのコラボレーターとしても注目され、多くのソロ作を世に送り出し、多方面の音楽ファンやミュージシャンから愛される音楽家・John Carroll Kirby。今年、USではKhruangbinのツアーサポートを務めライブパフォーマンスの実力を示し、またYMOのメンバー細野晴臣のトリビュート企画への参加や、高円寺の街中で撮影したミュージックビデオの公開で話題を呼ぶなど、日本のシーンとの交流も窺える中での待望の来日公演が決定した。昨年のフジロック出演以来の来日となり、フルバンドセットでの初の単独公演となる。

出演が予定されている朝霧JAM 2024直前となる10月11日(金)、東京・WWW Xにて開催。チケットはただいまより抽選先行予約の受付を開始。

John Carroll Kirby
出演:John Carroll Kirby (Band Set)
日程:2024年10月11日(金)
会場:WWW X https://www-shibuya.jp/
時間:open 18:30 / start 19:30
料金:前売 ¥7,800(税込/ドリンク代別/オールスタンディング)

<<チケット>>
先行受付(抽選)
受付期間:7月9日(火)17:00~7月15日(月祝)23:59
受付URL:https://eplus.jp/johncarrollkirby/

一般発売:7月20日(土)10:00-
e+ https://eplus.jp/johncarrollkirby/
Zaiko https://wwwwwwx.zaiko.io/e/johncarrollkirby (English available)

主催:WWW X
協力:SMASH / STONES THROW

お問い合せ:WWW X 03-5458-7688
公演詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/018045.php


John Carroll Kirby(ジョン キャロル カービー)
LA出身の鍵盤奏者/プロデューサー/作曲家のジョン・キャロル・カービー。
これまでR&B界のイノベーターでもあるソランジュやフランク・オーシャンとのコラボ、多作のソロ作品リリース、2023年フジロックの出演、クルアンビンとのUSツアーなどで、ジャズ~ソウル/R&B~アンビエント~ニューエイジ~エレクトロニックなど多方面の音楽リスナーから大注目のアーティストの一人である。
2020年、LAの優良レーベルStones Throwからデビューアルバム“My Garden”をリリース。メロウでドリ-ミーなサウンド、ジャズからアンビエントまで飲み込んだこれまでにないフレッシュなスタイルで大きな話題を呼んだ。その後も不思議な魅力に溢れたバンドサウンドや、独創的なエレクトロニックなど、様々なスタイルを取り入れたアルバムやサウンドトラックを次々と発表。現在、6作の作品がリリースされている。2023年には、各方面から称賛されたエディ・チャコンの最新アルバムのトータルプロデュースを行ったほか、自身の最新アルバム”Blowout”も立て続けにリリース。本作はインディー音楽界のグラミー賞と呼ばれる「A2IM Libera Awards」で、Best of Jazz Albumを受賞し高く評価された。2024年にはYMOの細野晴臣氏のトリビュート企画に参加し、カバー曲をリリースしたばかりだ。

Spotify
Apple Music

"Rainmaker"
"Sun Go Down"
"Mates"
"Oropendola"
"Blueberry Beads"

John Carroll Kirby - Fuku Wa Uchi Oni Wa Soto (feat. The Mizuhara Sisters)
*Haruomi Hosono cover song 細野晴臣トリビュート企画 カバー曲
https://youtu.be/TLxa-jEgAgY?feature=shared

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