「R」と一致するもの

MEITEI - ele-king

 4月に最新作『瑪瑙(めのう)』のリリースを控える音楽家・冥丁が、アルバムより先行シングル“新花魁”をリリース。6年の月日をかけて研ぎ澄まされた2020年作「花魁Ⅰ」を下地とする楽曲だという。戸谷光一によるミュージック・ヴィデオも公開中。

 「失われつつある日本の雰囲気」をテーマに活動を続け、昨年には新たなシリーズ「失日本百景」をスタート。温泉をモチーフにしたアンビエント作品『泉涌(せんにゅう)』を発表するなど、その独自の世界観の行く末が気になるところ。つぎは、いったいどんな「失日本」を表現するのだろうか。

Artist: 冥丁
Title: 新花魁
Label: KITCHEN. LABE
Format: Single / Digital
Catalog:: KI-050S1
Release Date: 2026.2.6
Buy / Stream : https://www.inpartmaint.com/site/42429/
https://kitchenlabel.lnk.to/52P3moDM


4月17日発売予定の冥丁のニューアルバム『瑪瑙』(めのう)より、先行シングル「新花魁」(しんおいらん)が2月6日にデジタル配信にてリリースされる。三部作『古風』に通底する哀愁と、その先に切り開かれた影。本作「新花魁」は、冥丁がこれまで継続して取り組んできた主題“失日本”が、時を経てひとつの像を結ぶ楽曲である。

古風編初作に収録された「花魁Ⅰ」(2020年作)を原型とし、公演を重ねる中、舞台上で何度も披露され、磨き上げられてきた本楽曲は、五年を経て「新花魁」という名を持つに至った。この楽曲を通じて、歴史上で語られる花魁という存在の先に表現されたのは、「私」と「非私」との、そして冥丁自身が現代で見た日本の自然美の連なりと、麗しくも咲き誇る鮮烈な哀愁である。

朽ちゆく質感の層を漂う遠い声、古楽器の音を使いながらも伝統的手法とは異なる独自のパーカッシブなリズム、そして現れては消えていく旋律の連なり。それらは明確な物語を語ることなく、リスナーの感覚に直感的に触れてくる。

アルバム『瑪瑙』の序章として位置づけられる「新花魁」は、実直で創造的な営みを止めることなく仕上げられた一曲である。ここにあるのは、再構築された歴史ではなく、自明でありながら幽美な印象として漂う日本の姿“失日本”であり、日本的な感性と現代的な表現が織り成す新たな輪郭である。

ミュージックビデオ「新花魁」(映像:戸谷光一)も同日公開される。本作のミュージックビデオやアーティスト写真に映し出された、冬の日本海や、孤高の断崖に舞い散る霰、波飛沫などの情景は、冥丁自身が10年間にわたり広島で過ごした日々の葛藤と、自身の創造する音と孤独に向き合った有様を象徴している。

【冥丁(めいてい) プロフィール】

冥丁は、“自明でありながらも幽微な存在として漂う日本”(誰もが感じる言葉では言い表せない繊細な日本)の印象を「失日本」と名付け、日本を主題とした独自の音楽表現を展開する、広島 尾道出身・京都在住のアーティストである。現代的なサウンドテクニックと日本古来の印象を融合させた、私的でコンセプチュアルな音楽表現を特徴とする。『怪談』『小町』『古風(Part I, II, III)』からなる三部作シリーズを発表し、その独自性は国際的に高く評価されている。TheWireやPitchforkなどの海外主要音楽メディアからも注目を集め、冥丁は近年のエレクトロニック・ミュージックにおける特異な存在として確立された。音楽作品の発表だけにとどまらず、国際的ブランドや文化的プロジェクトのための楽曲制作に加え、国内外における公演活動や音楽フェスティバルへの出演、ヨーロッパやアジアでのツアーを通じて活動の幅を広げてきた。さらに近年は、寺院や文化財、歴史的建造物といった空間での単独公演へと表現の場を拡げ、日本的感性と現代的表現の新時代を見いだし続けている。

heykazma - ele-king

 ミレニアル世代、Z世代が音楽文化を一変させていったのがここ十数年のこと。次はいよいよ、10年代生まれのアルファ世代が華々しいデビューを飾る時代を迎えたようだ。

 ele-kingでもレギュラー・コラム(https://www.ele-king.net/columns/regulars/heykazma/)を連載中の2010年生まれ、アルファ世代の新星DJ・ヘイカズマがデビューEP『15』を〈U/M/A/A〉からリリース。以下、作品詳細と、北村蕗、食品まつり、山辺圭司(LOS APSON?)などによる関係者コメント。期待の新星の今後に注目だ。

Artist: heykazma
Title: 15
Label: U/M/A/A
Format: Digital
Release Date: 2026.2.2
Buy / Stream : https://lnk.to/heykazma_15

Tracklist:
1. 15
2. Pre Pariiiiiiiiiiiiiiin
3. Pariiiiiiiiiiiiiiin
4. Cat Power
5. Acid Noise

Credit:
Maiya Toyama(illiomote) - Bass(Track 1)
Case Wang - Mix&Mastering
ALi(anttkc)- MV Director
Yuki Kawamura - Produce

写真:飯田エリカ
デザイン:Manami Masuda
hair&make:hitomi andoh
Costume cooperation:miku moritake, Chiiika., chichiiiiichichi, ALIGHT
from 「Eternal Girl Meets Mermaid」


「heykazmaと書いて未来と読む」

3歳で音楽やカルチャーに開眼、幼少期より自発的に親同伴のもと震災や風営法摘発以降に増加した未成年入場可のデイイベントやパーティに通い詰め、15歳で音楽系の高校入学と共に仙台から上京。その後は学業の傍ら、都内を中心に東北各地や北海道までジャンルの枠を飛び越えて、カルチャー愛に溢れる現場でのDJを展開!エレクトロニックミュージックの中でもテクノを中心に、ノイズからフットワークまでをミックスアップする自由な感性と、類まれなファッションセンスが、既に各地のリスナーや関係者の間で話題を呼んでいる。

2026年2月に16歳の誕生日を迎えるZ世代の次「アルファ世代の新星DJ」が、満を持して5曲入りデビューEPを配信リリース。エクスペリメンタルからジュークまで豊富な音楽経験値を活かした一筋縄ではいかないオリジナルのダンスミュージック!自身によるポエムコアやラップをフィーチャーした新しい世代の幕開けを宣言するかのような「15」に始まり、DTMを覚えたての中学生の頃に作った楽曲を再構築した「Cat Power」では幼少期より共に育った愛猫への想いをビートに乗せて。アーティストのシシヤマザキのお絵かき教室に参加していた経緯から、アトリエを訪ねる際に立ち寄った益子焼の工房での皿が割れる音の鮮やかさに着眼し、15年間の思い出が弾ける瞬間の音に準えた「Pariiiiiiiiiiiiiiin」、目を瞑って聴けばドープすぎて作者の年齢とか関係なくなるほどに衝撃的なノイズトラック「Acid Noise」など、未来への希望とディストピアの存在が混在する2025年らしい作品に仕上がっている。

タイトルの「15 EP」とは、heykazma自身が育ってきた15年を総括した音楽たちを此処に刻むという意味を込めて付けられた。すべてのトラックは自身で作成し、ミックスはレーベルメイトであるWang OneのCase Wang氏が担当。荒削りながらも確固たる生命力を感じる作品たちは、先ず先入観を取っ払って一聴をおすすめする。

コメント:

EPリリースおめでとう!!
DJ、パーティーオーガナイザー、コラムニストなど、様々な視点からカルチャーを俯瞰している。その中で自由な泳ぎ方を見せている。決して誰かを強制したり、価値観を押しつけているわけではなく、私はあくまでこうあり続けるという一つの個として音楽を表現しているように感じる。その異色でありながら、色彩を選び抜く力というものは、オーガナイザーとしても培った、出会うことを知らない引力を、引き合わせる力を持ち合わせているからこそ生まれてくるものだと思う。 これからまだ見ぬ化学反応を起こしてくれることでしょう。
それを目撃し続けたいです。(北村蕗)
ビートのバリエーションの豊富さ、サウンドもトライバル感ありつつ、フィールドレコーディング的なサウンドも織り交ぜて音響的にもめちゃくちゃヤバいepです (食品まつり a.k.a FOODMAN)
ここにエレクトロニック・ミュージック界の新星、耳を澄ませ! (野田努 / ele-king 編集長)
最初の輝きはいつまでも色あせない――期待の原石がついに転がりはじめた (小林拓音 / ele-king 編集部)
衝撃の15歳!!! 1st EPリリースおめでとうございます!!!
この年齢で、ここまで自分の世界観と音を持っているなんて、可能性しか感じません!!!
これからどんな景色を見せてくれるのか、どんな進化をしていくのか、今から楽しみすぎます!!!
心からのリスペクトと応援を込めて。🔥🎶
(もりたみどり / WAIFU)
ついにこの時が来た!!!hey様の、踊りながら飛び出してくるような立体的な躍動エネルギーを、世界が、浴びたがっている!!!!
(ShiShi Yamazaki)
高円寺のあれこれレコードショップLOS APSON?周辺にて勃興するイベント、DDMメンバーとしても登場してもらっている高一エクスペリメンタル妖怪系クリエイター!?heykazmaが、新しいEPをリリースするというので聴いてみたっ!!! 現代のテンポ感で刻まれる鳴りの良いフレッシュダンサブルサウンドと、ライトなコラージュ感覚で、ポジティブなバイブスを無限に放っています!
(山辺圭司 / LOS APSON?)
heyちゃんの楽曲でベースを弾きました!
オファーをもらった時にえ、ベース!?
となったんですがheykazmaの頼み断るわけがない!みんなを新しい世界に引き込んでしまうようなheyちゃんにいつもパワーをもらっているし、こうした形で大きなスタートに関われて嬉しいです。ありがとう。
未来でしかない!EPリリース本当におめでとう。
(Maiya Toyama / illiomote)
素晴らしいスタートライン!ポップなフットワークビートも、エクスペリメンタルなノイズも、heykazmaの血肉となって通過した痕跡を残し、めちゃくちゃエネルギッシュ!heykazmaが本格的にプロデューサーとして活動を始めたことは、これからのテクノの希望でしかない˚. ✦
(壱タカシ )

interview with Autechre - ele-king

 真っ暗闇が最高の照明であるという逆説は、何回体験しても心地よいものだ。贅沢な闇に包まれながら、オウテカのマシン・ミュージックにおけるその驚異的な乱雑さ、マキシマリズム的特性には、懐古的な匂いはなく、たしかに現代的かもしれない、と思った。これは孤立したサウンドではないのだ。ソフィーやイグルーゴースト、フットワークやジャージー・クラブといった今世紀のエレクトロニック・ミュージックとどこかで共鳴しているモノを感じたし、その解放感がぼくの考え方を拡張しくれたこともわかっている。長いあいだオウテカのような音楽は、禁欲的で、男性的で、パートナーがいないときに男がひとりで没入する、肉体不在の前衛音楽だと考えられてきたとしたら……しかしながらいまぼくが挙げた例には、多かれ少なかれエロティシズムがある。時代は変わっているのだ。会場には多くの男性以外の姿があった。
 今回の取材、場所はZepp DiverCityの楽屋、ときは2月4日の夕方、ライヴの本番前に時間をもらった。楽屋に入ってお互い挨拶しながら、そして質問に入るわけだが、何度も取材しているので、はっきりと言えることがある。オウテカはつねにリスナーと真摯に向き合っている、ということだ。ショーンとロブから、有名人にありがちな傲慢さを感じたことはいちどもない。
 また、以下の話を読んでいただければわかることだが、彼らの大衆文化を尊重する態度も一貫している。面白いのは、これだけ実験的な音楽をやっていながら、なぜか彼らは、人間的な温かさを高潔な思想ないしは実験性という虚勢や、自分たちは●●とかよりも優れているという盲目的な確信で隠そうとなどは決してしない。抽象的なサウンドかもしれないが、オウテカのどこかにエロティックなファンタジーを感じるとしたら、その音楽の出自には、ボディ・ソニックなダンス・カルチャーがあるからだろう(なにせその出発点はマントロニクスなのだからね!)。
 さて、能書きはここまでにしよう。我らがオウテカ──30年以上もエレクトロニック・ミュージックと向き合ってきた人たちの奥行きのある言葉をお楽しみください。

昨夜は眠れましたか?

ロブ(以下、R):いや、ぼくたち2人とも眠れなかったんだ。

昨日はオフだったんですよね?

R:一応はね。でも身体は休息が取れていない状態だったね。

ショーン(以下、S):その前の日は飛行機で3時間くらい寝て、夜6時間くらい寝られたんだけど、昨夜は全然眠れなくてね。少しはウトウトしたのかもしれないけど、頭が全然休まらなくて。

R:食事も取れないし、体内時計がめちゃくちゃになっちゃって。昨夜は11時頃に遅い食事を取ったんだけど、食欲もあまりないし、食後にベッドに入って休んでみたものの、2時間半くらいで起きちゃって、それからは全然眠れなかった。いまが今日なのか何なのか、ずっとフラストレーションが溜まっている感じだよ。

S:でもまあ、今夜プレイできるくらいには生きているから大丈夫(笑)。

それは良かった。とにかく、久しぶりに会えて嬉しいです。最後に直接会って話したのは、2018年だったかな……。

R:ぼくも会えて嬉しいよ。

ただ、歳を取るとどんどん時間の感覚もわからなくなってきて、5年前っていつだっけとか(笑)。

R:ぼくもつい最近来たような気がしていたよ。時々、続けざまに来ることもあれば、かなり長い期間が空いてから来ることもあるからね。前回の取材は何年だっけ? 

2020年、『Sign』をリリースしたあとぐらいにもやっているんですけど、そのときは坂本麻里子さん通しての取材で(『ele-king vol.26』に掲載)、直接会って話すのは2018年以来ですかね。

R:そうかそうか。

カラオケでは、ぼくは前回モーターヘッド。(ロブ)
ぼくはストーン・ローゼズの“Fools Gold”を歌ったね。(ショーン)

日本に来たときの楽しみってあるんですか?

S:今回は1日オフがあるんだけど。いや、2日か。正確には昨日はオフだったけど、体調を整える日という感じだったからね。このあともう1日オフがあるけど、とくに何も予定はないよ。たぶんショッピングにでも行くかな。つまらない答えだけど、いつもだいたいショッピングして終わる感じだからね。イギリスでは手に入らないものがたくさんあるし、しかも安い。ぼくはパートナーからカメラのレンズを入手するように言われてるから、それを探しに行こうと思って。他にはとくに予定はないかな。

R:ぼくに関して言えば、日本に来たことのある友人や、しばらく滞在したことのある親戚から「これをやるといいよ」っていうおすすめをたくさん聞いて来たよ。どれも面白そうなことばかりで。でも、今回のようなライヴの前後は、何週間も準備期間があって、そのあと移動があって、さらに公演の前後に少しオフがある、みたいな流れになるよね。そういう状況だと、「せっかくだから特別なことをしなくちゃ」と無理に駆け足で何かをやろうとする感じになる。でもそれって、あまり意味がないと思う。むしろ、いつかまた改めて日本に来て、1週間くらいがっつり滞在して、きちんと時間をかけて楽しむ方がいいんじゃないかな。

S:さっきも話してたんだけど、次に来るときは、東京の中心じゃなくて郊外か、いっそ東京の外にホテルを取って、1週間くらい滞在する方がいいんじゃないかと思って。そうすれば、まず時差ボケの問題を解消出来るし、それに普段はあまり見ることのない日本の違った一面も見られるかもしれないしね。もちろん東京にいるとはいえ、渋谷とか、今回のこのエリアにいるだけだと、東京という街の中でも本当にごく一部をかすめているに過ぎないし、ましてや日本全体を象徴するようなエリアでもないと思うから。以前にもう少し遠出をして日本を廻ったこともあるんだけど、少なくともぼくにとっては、東京の外に出た途端にすごく面白くなるんだよね。

R:うん、北海道にも行ってみたいし、南のビーチも見てみたいね。いままでとは全然違うタイプの日本を体験してみたい。でも、そうするにはやっぱり時間がかかるし、本来は面白くて、しかもゆったり出来る旅になるはずなのに、これまで一度もそこまでの時間が取れたことがないんだ。結局いつも、サッと来てサッと何かを済ませるだけ、みたいな感じになってしまって。それだと上手くいかないんだよね。だから、また別の機会を狙うよ。

カラオケとか行ったりしないんですか?

S:今回は行ってないけど、前回来たときに何回か行ったよ。小さなバーが何軒もずらっと並んでいるエリアがあるでしょ。東京のどこだったかな。思い出せないんだけど……とにか、小さなバーがものすごくたくさん並んでる通り。

通訳:新宿のゴールデン街ですかね?

S:いや、渋谷だ。渋谷駅の近くだったよ。小さな通りで、すごくちっちゃなバーが並んでいて。

R:3人か4人入れば満員になってしまうような小さなバーで、カラオケが置いてあって。そこに何度か行ったね。まあ、カラオケを歌うにはめちゃめちゃ酔っ払っている必要があるんだけど(笑)。

何を歌うんですか?

R:ぼくは前回モーターヘッドの“Ace of Spades”を歌ったよ(笑)。

(笑)

R:悪くないでしょ(笑)。

S:ぼくはストーン・ローゼズの“Fools Gold”を歌ったね。

数年前にソニックマニアに出演したんだけど、あれは実質ポップ寄りのフェスだよね? 正直、ちょっと驚きだったよ。出番前は少し緊張してたんだ。自分たちの客層とは違う、いわゆるポップ寄りの観客が多いだろうと思っていたから。

ハハハハ。ところで、いまここに来るとき、すでにお客さんが階段に並んでましたね。チケットもすぐにソールドアウトになったし、相変わらず人気あるなと思いました。これまでにとくに思い出に残っているライヴというと何になりますか。

S:日本でのライヴは、いつでもとても良い体験になっていると思う。曖昧な意味で言っているわけではなくて、本当にそう感じているよ。ぼくはつねに観客の反応を気にかけているけど、日本のオーディエンスは基本的にすごく静かで礼儀正しくて、ぼくたちの音楽に対するリスペクトがある。でも、最後には大きな歓声をくれるし、ちゃんと届いているように感じられるんだ。
数年前にソニックマニアに出演したんだけど、あれは実質ポップ寄りのフェスだよね? 正直、ちょっと驚きだったよ。出番前は少し緊張してたんだ。自分たちの客層とは違う、いわゆるポップ寄りの観客が多いだろうと思っていたから。ぼくたちの後には違うタイプのGrimesも出ていたし、正直このイベントに自分たちが合っているのかな? という感覚もあった。でも、その観客に向けてやってみたいと思って出演したら、結果的にすごく上手い具合にいったんだ。だから、日本の観客に対してがっかりしたことは一度もないよ。もちろん、リキッド・ルームみたいな会場だとやりやすいよね。ある程度、自分たちのことを知っている人たちが足を運んでいることがわかっているから。

R:リキッド・ルームでも何度かやったし、初期の頃はもっと大きなヴェニューでやったりもしたから、いろいろだね。

S:とにかく、カルチャー的にはリキッド・ルームのようなヴェニューはすごく安心するというか。タイコクラブとかエレクトラグライドみたいなフェスだと、観客は基本的にテクノ寄りの人たちが多いんだけど、日本ではそれなりに作品も聴かれていたから、大体どんなことをやるのかわかって来てくれていることが多いんだ。少なくとも何が起こるのかわからない、という感じにはならない。でも、あのソニックマニアは驚きだったし、すごく嬉しい経験でもあったね。いわゆるポップ系の観客と自分たちがちゃんと繋がれた、というのは不思議な感覚だったよ。
どこでもあっても、そういうことが起こると毎回ちょっと信じられない感じはするんだけど。最近だと、ヘルシンキでも同じようなことがあって。フロー・フェスティバルに出演したんだけど、そこもかなりポップ寄りの観客が多かったんだ。出演者の多くはポップ系で、少なくともぼくたちよりずっと知名度のある人たちばかりだったしね。

R:それに、かなり商業的だったよね。

S:そうそう。そういう場でも、ぼくたちはいつも通りのセットをそのままやる。わざわざポップな音楽に寄せて、観客に合わせる必要はないと思っているんだよ。変な風に聞こえないといいんだけど、ここ最近は音楽シーン全体が、少しずつぼくたちに近づいてきている部分もあるんじゃないかと思うんだ。たとえばSOPHIEとかCharli XCXみたいなアーティストが出てきたりしてね。もちろん、ぼくたちの音楽が彼女たちに似ているわけではまったくないんだけど、どこかに影響を感じさせる細い糸のようなものがあって、それを通してぼくたちの音楽と繋がる人がいるのかもしれない。そういう変化みたいなものは、ぼくたちにとってもとても良いことだと思うんだよね。

R:日本は、ぼくたちにとって常にiTunesでの最大市場のひとつなんだ。実際、記憶にある限りずっと、日本はニューヨークやロンドンと並ぶ最強の都市のひとつで、東京はほぼいつもトップクラスに入っている。うん、日本ではよりアンダーグラウンドというか、マニアックなアーティストのほうが、むしろしっかり紹介されているように感じるよね。

S:日本は、海外のものを受け入れる際にとても選別的だ、という感覚がずっとあるよ。というのも、シーン全体がそのまま入ってくるわけではなくて、すべてが紹介されるわけじゃない。でも、たとえばジェフ・ミルズのような存在はちゃんと入ってきているよね。つまり、あらゆるテクノやエレクトロニック・ミュージックが紹介されているわけではないけれど、選ばれているもののセンスがとてもいい。ちゃんと良いものを見極めている感じがするんだ。そういう意味で、ぼくらの感覚や美意識は、日本のオーディエンスの感性とかなり合っていると思う。自惚れに聞こえたら申し訳ないけど(笑)、少なくともある程度は本当だと思っているよ。

R:ひとつ補足しておくと、ぼくがiTunesと言っているのは、実際には彼らが教えてくれる Shazamのヒット数のことなんだ。Shazamは流れている音楽を認識するアプリなんだけど、東京では、そのShazamの数値がいつも非常に高い。ロンドンやニューヨークが1位を争うこともあるけど、東京はほぼ常にトップにいるんだ(笑)。iTunesではアーティストごとの統計データが見られるし、Shazamは東京の状況をすごくわかりやすく示してくれる指標だよ。それで、Shazamのデータを見ると、少なくとも2つ、もしかしたら3つのことがわかる。ひとつは、人びとがサンプリングされたものを耳にして、「これは何だろう?」と調べた結果。もうひとつは、そもそもぼくたちの楽曲がどこかで流れている、という事実だね。お店やラジオ、あるいは街中のどこかで流れていなければ、Shazamされることはない。だから、どういう経路で広がっているのかを正確に把握するのは難しいけれど、確実に起きている、ということだけははっきり見えるんだ。

クラブでもDJがかける曲をShazamでチェックしてる人が多いかもしれない(笑)。

R:街中にもビルボードがたくさんあるから、3〜4曲同時にチェックしてる人もいるかもしれないね(笑)。

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松永コーヘイはすばらしいアーティストだね!

今回の来日でひとつ嬉しかったのは、Kohei Mastunagaをブッキングしてくれたことだったんですね。彼は非常に良いアーティストなんですけど、日本では不当な評価を受けているアーティストのひとりなんです。本当にこのライヴにブッキングしてくれてありがとうと言いたいです。

S:それが今回彼をブッキングした理由なんだけど、もうかれこれ20〜25年くらいになるかな、とにかく長い付き合いなんだ。2000年代初頭のことをいまでもよく覚えているけど、当時から彼の作品が本当に大好きだった。彼はとにかく驚異的なアーティストだと思う。ものすごく多作だし、しかもクオリティがつねに異常なほど高い。とても短いトラックをたくさん作るんだけど、そのひとつひとつに込められているアイデアやグルーヴが、本当に息をのむほど素晴らしいんだ。ぼくにとっては、間違いなく最高峰のアーティストのひとりだし、これまでにも何度か、さまざまな形で一緒にコラボレーションしてきたんだよ。人としてもすごく気が合うし、純粋に彼の音楽が大好きだから、今回のブッキングは僕らにとってはごく自然で、迷いのない選択だった。それに、日本でもっと多くの人に彼の音楽が届くきっかけになれば、それは素晴らしいことだと思っている。日本での彼のオーディエンスがどんな規模なのかは正直わからないけれど、ただ、彼にその機会を提供したかったんだ。もちろん、彼はぼくらの助けなんて本当は必要ないくらいの存在だけどね。それでも、ぼくたちにできることがあるなら、それをやるだけさ。

R:彼は、ぼくらのより広い音楽的嗜好をそのまま体現してくれる存在でもあって、その点でも本当に素晴らしい例だと思う。だから、今回こうして同じ場所で一緒にプレイできるというのは、ぼくらにとってはある種の贅沢なんだ。これまでにも、ベルリンやイギリスで彼のプレイを観てきたけれど、実は最初に一緒に演奏したのは大阪だった。そのときぼくらを引き合わせてくれたのが、Russell Haswellだったんだ。その後、たしか彼はかなり早い段階でドイツに拠点を移して、そこからずっとヨーロッパで活動してきたんだよね。だから今回、ぼくらがこうして来日するタイミングで、また彼と日本で再会できたのは、本当に嬉しいことだよ。

同世代の友人たちは「このハイパーポップってやつ、変だよね」って言う。でも、ぼくたちは「いや、すごく良いからちゃんと聴いてみて」って感じなんだ。

ちょっと話が変わりますが、チャーリーXCXがブリット・アワードを受賞したとき、スピーチで自分の影響源を、ソフィー(SOPHIE) 、エイフェックス・ツイン、オウテカと言っているんですよ。そのことは当然ご存知ですよね?

S:正直に言うと、知らなかったんだ。でも、発言があった直後にすぐ周りから「見た?」ってメールがたくさん来たよ。ぼくらがああいう文脈で名前を挙げられることって、かなり珍しいんだよね。
 ただ、プロデューサーのA.G. Cookについては、彼がぼくらのファンだということはかなり前から知っていた。〈PC Music〉を運営している人物とぼくが知り合いだったという縁もあってね。たしか、彼らの存在を最初に耳にしたのは2014年頃だったと思う。それ以来、AGやソフィーがぼくらの大ファンだということは聞いていたんだ。
 とくにソフィーの作品については、音を聴けばなるほどと思えるような影響が感じられて、ぼくにとってはわりとわかりやすかった。一方で、A.G. Cookの方はもう少し人工的というか、すごくクリーンなポップ・ミュージックの方向性で、影響の出方は少し違うように感じていたよ。ただ、彼の作品のテクスチャーには、個人的にかなり惹かれるものがあるんだ。
 いずれにしても、今回こうして言及してもらえたのは素直に嬉しいし、こちらからもその賛辞を返したい気持ちがあるよ。彼らは本当に優れたポップ・ミュージックを作っていると思うし、正直に言って、ぼくらが彼らに影響を与えていることが一目瞭然だとは思っていない。それでも、彼らのやっていることは本当に良いと思う。何かしら共鳴するものがあるんだよね。ただ、それが具体的に何なのかを言葉で説明するのは少し難しいな。結局のところ、ある種の感覚や好みの問題だと思うから。

R:あの場で彼女がああいう発言をしたのは、本当に大きな驚きだったよ。若い娘がいる友人たちがちょうどブリット・アワードを生で観ていて、いっせいに20件くらいメッセージが届いたんだ。「あれって、パパの友だちなんだよ」って子どもに言ったら、「じゃあ結構いい感じの人たちなんだね」みたいな反応があったみたいで(笑)。それに、家族ぐるみで付き合いのある友人の子どもたちとか、個人的に知り合いの若い世代の人たちからの反応もあった。
 ショーンがA.G. Cookについて解説してくれたけど、背景やソフィーの影響力や活動の規模まで含めて、あそこまで広い文脈で説明する必要は彼女にはなかったかもしれない。それでも、あの場でオウテカの名前を口にしたというのは、彼女にとっても大きな一歩だったのかもしれないね。

S:そもそも、ヴォーカリストがああいった場所で、あのような発言をすること自体がかなり異例なんだよね。とても驚いたよ。

R:本当にそうだよね。

彼女に代表されるハイパーポップと呼ばれる新ジャンルがありますよね。あのスタイルに、オウテカの影響があると感じますか?

S:かなり繊細でかすかな影響は見て取れると思う。それは音の選び方、サウンドの感覚みたいなところに関わっているんじゃないかな。もちろん、音楽の形式としては完全に“ポップ”だと思うし、K-POPや日本のポップ・ミュージックからの影響もとても大きいと思う。コードの感覚や、使われているメロディやハーモニーにも、独特の感触があるよね。一方で、プロダクション自体は少しだけラディカルなんだ。本当にちょうどいいところを突いている感じ。やり過ぎるとポップじゃなくなってしまうからね。
 とくにSOPHIEが素晴らしかったのは、僕たちだけではなく、同世代のいろいろなアーティストから受け取ったサウンドの嗜好性や音のパレットを……かなり大雑把に言えばだけど、理解した上で、それがポップの文脈でも使える、と示した点にあると思う。それは、正直に言ってぼくたちだったら様々な理由から絶対にやらないことだから。でも、彼女たちはそれを本当に見事にやってのけたんだ。気が付いたら、ぼくは完全なファンになっていたよ。
 それってすごく不思議なことでもあるけどね。同世代の友人たちのなかには「このハイパーポップってやつ、変だよね」って言う人もいる。でも、僕たちは「いや、すごく良いからちゃんと聴いてみて」って感じなんだ。単純に、ものすごく美しく作られているからね。
 ぼくは基本的に、ポップとアンダーグラウンド・ミュージックを区別して聴いたりはしない。ただ、良く出来ている音楽が好きなだけで。そういう意味では、彼らは本当に素晴らしいものを作っていたと思う。しかも、それは明確にメインストリーム向けに作られていて、その文脈のなかでしっかり成功も収めている。だから、彼らが成し遂げたことは本当に見事だったと思うんだ。アンダーグラウンドのアーティストが、自分たちの音楽がメインストリームに吸収された、と感じることはよくあるけれど、このケースはそれとは少し違っていたと思う。彼らは、ある意味で“外部の人間”としてポップ・ミュージックを捉えていた。もぼくがポップを創るとしたら、きっと同じ立ち位置を取ると思うけど、ぼく自身は一度もそういうことをやろうとしたことはない。彼らは、それを見事にやり遂げたし、だからこそ、ぼくはおそらく今後もポップを作ることはないだろうね。彼らがそこまでやってしまったから。そういったアイデアをあそこまで押し進めたことに、心から敬意を払っているよ。

R:ぼくたちが子どもの頃からスタジオでトラックを作ってきたなかで、時々すごくポップというか、とてもキャッチーな音が自然に生まれる瞬間があるんだ。短いフレーズやセクションがふっと立ち上がって、そこからいっきに展開していく。理論的には、そういう瞬間を切り取って、それを核にポップ・トラックを組み立てることも十分可能だろうね。実際、そうしたアイデアの断片を組み合わせれば、ポップは作れる。でも、ぼくたちはそれをしない。というのも、ぼくらは変化していくことや、別の場所へと向かう旅の方を選びたいからなんだ。ひとつの要素を何度も反復して強調することには、あまり興味がない。だからこそ、彼らの音楽のなかに、ぼくたちとの繋がりを感じる瞬間があるのも理解できるんだ。そういうリンクみたいなものは、何度も、いろいろな面で垣間見えると思うよ。

S:ある意味で、自由の種類が違うんだろうね。ぼくたちにとっての自由は、ただ自分たちが自分たちであり続ける、という自由なんだ。彼らも、基本的には同じことをしていると思う。ただ、ぼくたちよりずっと若いし、さっき言ったように、K-POPをはじめとする東洋の音楽からの影響も多大に受けているよね。そうした要素をどんどん貼り合わせるように音楽を作っていったんじゃないかな。でも、それはぼくたちが辿ることのない道だし、追いかけようとも思わない旅なんだ。ぼくたちには、ぼくたち自身のアイデアがあるからね。もちろん、制作の途中でこの瞬間を切り取ったら、別の文脈ではすごく良かったかもしれない、と思うことはあるよ。でも、ぼくたちはそこに落ち着こうとはしない。ぼくたちはポップ・ミュージックが好きで育ってきたし、デペッシュ・モードやヒップホップ、ラップも聴いてきた。だから、そういう音楽を作る能力がないわけではないと思う。ただ、それを自分たちの仕事にしたいかと言われると、やっぱり違うんだよね。それはぼくたちの興味の向かう先ではないし、彼らのように上手くやれるとも思ってないから。

R:思っているほど簡単なことじゃないと思うよ。

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『Untilted』は、たくさんのハードウェアを使ってはいるものの意図的にシーケンスされた作品なんだ。96〜97年頃からはじまった、構成をどんどん緻密にしていく長い章の、いわば最後の部分だった。『Quaristice』は、そこから再び自由さへと戻っていく動きを反映した作品だった。それはいまのぼくたちにも繋がっているよ。

昨年、『Untilted』と『Quaristice』というアルバムがリイシューされました。どちらも2000年代の力作なんですけれど、あらためて現在の視点から、これら二作にどういった感想をお持ちでしょうか。

S:かなり違う感じの2枚だよね。『Untilted』を作った頃は、個人的にかなりつらい時期だったんだ。父が亡くなった直後でね。その頃は、ものすごく細部まで作り込むタイプの制作をしていて、ドラムマシンを大量に使っている時期だった。ちょうどElektronのドラムマシンを使いはじめた頃で、そうしたハードウェアをどう使うか、いろいろな方法を探っていた。ぼくは、感情的にかなり厳しい時期にいるときほど、すごくテクニカルな作業に没頭する傾向があって、それが自分にとっては救いになるんだよね。注意を別のところに向けるという、ある種の対処法みたいなものなんじゃないかな。だから、『Untilted』にはそうした要素が詰め込まれていると思う。
 一方で、『Quaristice』は、全然違うレコードになった。あれだけ長い時間を掛けて、ああいった制作をしたことへの反動のような作品だと思うんだ。それに加えて、ぼく自身の生活にもいろいろな変化があった。引っ越しをして、新しい場所でしばらくぶりに一人で暮らすようになって。ちゃんとしたスタジオも持っていなかったから、ライヴ用の機材をそのままテーブルの上に並べて、ライヴでやっているのと同じやり方でトラックを作っていったんだ。実は、そこがいまのぼくたちに繋がる起点になったと思う。その時点で、ぼくたちがライヴでやっていたことが、少なくともレコードとしてリリースしてきた作品と同じくらいには完成度が高い、という点に気付いたんだ。それで、『Quaristice』ではその境界線を意図的に曖昧にしたいと思ったんだよね。2008年にアルバムに合わせて制作したライヴセットをツアーに持ち出したとき、観客から「アルバムよりライヴの方がいいね」と言われてしまって。それが、ぼくたちが自分たちのやり方を少し違った角度から考えはじめるきっかけになった。ある意味で、『Quaristice』は、1990年代前半から1996年くらいまでぼくたちがやっていたことへの回帰でもある。当時は、すべてがライヴで、一発録りだったからね。マシンのなかにパターンを入れて、それをライヴで走らせて、パターンの切り替えもミックスも音の微調整も、すべてリアルタイムでやっていたんだ。これはDAWのようなデジタル・オーディオ・ワークステーションが登場する前の話だね。だから、その場で一発で録音するしかなかった。『Quaristice』は、かなりそのやり方に寄せた作品なんだ。もちろん編集はしているけれど、ライヴ的な作業が非常に多い作品だったよ。


『Untilted』


『Quaristice』

S: それに対して『Untilted』は、たくさんのハードウェアを使ってはいるものの、非常に意図的にシーケンスされた作品なんだ。だから、『Untilted』は、’96〜’97年頃からはじまった、構成をどんどん緻密にしていく長い章の、いわば最後の部分だったと言えるんじゃないかな。『Quaristice』は、そこから再び自由さへと戻っていく動きを反映した作品だった。それは、いまのぼくたちにも繋がっているよ。
 いまでも僕たちは、何がライヴで何がリアルタイムで、何が自発的な即興なのか、その境界が曖昧な領域を探り続けている。現代のテクノロジーによって生まれる、そうした不思議な“どこでもない空間”にとても興味があるよ。作曲と即興が同時に成立するような状態にね。
 最近ようやく理解しはじめたのは、作曲というものには明確な始点があるわけじゃない、ということなんだ。多くの場合、最初は即興的なアイデアからはじまるよね。たとえ紙に音符を書くとしても、そこには必ず即興性が含まれている。それを認識することが、ぼくたちにとっては本当に大きいことだったんだ。以前から薄々はわかっていたけれど、初期の頃は技術的な選択肢がなかったから、敢えて問い直すこともしなかった。でも、いまはDAWが普及して、極端に意図的な制作方法が当たり前になっている。だからこそぼくは、ラフさや即興性、未加工の生々しさにより強く惹かれるようになったんだ。物事があるがままに起こる感じ、そのことにとても興味があるよ。コンピュータというのは、どうしても人を意図的な思考へと導いてしまう。
 ぼくたちが自分たちでソフトウェアを作っている理由もそれだ。DAWをまったく使わないわけではないけれど、ぼくが本当に興味があるのは瞬間を捉えることだから。瞬間というのは、とても貴重なものだ。それが年齢のせいかどうかはわからないけどね。昔の作品を聴き返すと、ああした一回限りの、風変わりな選択の瞬間が聴こえてくる。ほとんど再現不可能な出来事がたまたま起きて、それを記録出来た感じだよ。そのことは、本当に価値のあることだと思っている。『Quaristice』は、そうした瞬間を、技術的な制約にとらわれず、意図的に選んでやった作品なんだ。その後のアルバムほど成功したとは言えないかもしれないけれど、間違いなく正しい方向へ進む第一歩だったと思うね。

R:うんうん。実質的には“ランタイム無制限”みたいなものだよね。面白いのは、タイトルがほとんど同じに見えることなんだ。トラック同士も、ちょっと似たような感じがあるし。だから、誰かがどのヴァージョンの話をしているのか、聞き間違えたり読み間違えたりして、混乱することもあると思う。でも、それで良いというか、むしろそういう状態を楽しんでいるんだよね。たとえば、一箇所を聴いていて、「あれ? こっちは9分あるけど、自分のは4分しかないぞ」って気付いたりする。すると、ところどころは正確にわかるんだけど、「ああ、こう来るのか、なるほど」みたいな。そういう聴き方やその感覚自体を、ぼくたちは面白がっているんだよ。

S:その頃、ぼくはアート・オブ・ノイズのことを考えていたんだ。’80年代にすごく好きだったし、彼らがやっていたこと……とくにトレヴァー・ホーンがグループに関わっていた時期の作品には、かなり影響を受けていると思うんだよね。後期の作品にも言えることだけど、とくにその時期のアート・オブ・ノイズのトラックには、ものすごくたくさんのオーバーラップするヴァージョンがあったんだ。たとえば“Moments in Love“”なんて、合計したら90分くらいの別ヴァージョンがあるんじゃないかな。あまりに数が多いから、いま自分が聴いているのがどのヴァージョンなのか、正確に判断するのが難しいくらい。違いはほんの些細な部分だけ、という場合も多くて。
 でも、ぼくはそういう状況がとても好きなんだ。聴き手が少し混乱する感じ。いまどの地点にいるのか、どの展開に入ったのかがはっきりわからないような感覚。聴き手が次はこう進むはずだ、と思っていた方向とは、ほんの少し違う展開をする。そういうことが起こるのが、ぼくは面白いんじゃないかと思っているんだ。物事が反復的で、しかも決定版が存在しない、という考え方が好きだから。ひとつの正解のヴァージョンがあるわけじゃなくて、ただたくさんの異なるヴァリエーションがある。それは、たとえば同じ出来事を目撃した複数の人が、それぞれ違う証言をすることに少し似ているね。みんなが、自分なりのヴァージョンを持っている、という感じかな。

AIに欠けている要素というのは、思いついたことを試して、すぐに録音することで生まれる生々しさだよ。

AIの問題をどうお考えですか? BandcampがAI作品を排除することを公表しましたが、あなた方は現時点でAIというものをどう考えているのか教えてください。

S:えっと、あとどれくらい時間残ってる(笑)? 

(笑)

S:かなり壮大な話題だからね(笑)。えー、まず、当然だけど、盗用は良くない。テック系の連中が、他人の作品を片っ端から盗用しているようなケースは明らかに問題だし、それについてはわざわざ言うまでもないね。Bandcampがああいう判断を下した理由も、そこにあると思う。ただ、それだけではなくて、もっと深い議題がいくつもあると思うんだ。ぼくにとって、AIに関する最大の問題は、既存の作品を学習データにしているという点だ。つまり、AIは探索的ではなく、参照的なんだよね。それ以上のことはしていない。その意味で、正直あまり面白いものじゃないと思う。
 とはいえ、誤解して欲しくないのは、機械学習(マシーン・ラーニング)やそれに近い技術の使い方には、いまテック野郎たちがやっていることとはまったく異なる、正当で創造的な道筋もあるということだよ。そうした使い方のなかには、将来的に実りのあるものも存在すると思う。実際、ぼくたち自身もこの15年くらい、文脈は違うけれど断続的に機械学習を使ってきた。いま主流になっているTransformerモデルが登場する前から、コンピュータ・ミュージックの世界には、機械学習を使う幾つかの方法が存在していたんだ。でも、いまみたいにどこかにログインして「こんな感じのトラックが欲しい」と入力したら、他人の音楽の寄せ集めみたいなトラックが返ってくる——そういうものには、僕はまったく興味がないね。
 それからもうひとつ重要なのは、AIが多くのアーティストの生計を脅かしているという点だ。これは決して軽い気持ちで言っているわけじゃなくて、非常に大きな問題だと思っているよ。ただ、ぼくたち自身に関して言えば、恐らくそこまで深刻な問題にはならないと思っているんだ。僕たちの仕事は、基本的に探求的で、これまでに聴いたことのないものを試してみて、それを自分たちが好きかどうか判断する、というところにある。その好みや判断の要素が、Transformerモデルには完全に欠けているんだ。だから、ぼくたちは今後も、これまでと同じようにやっていけると思う。但し、影響が出るとすれば、誰かがぼくたちの音楽に辿り着く可能性の方だろうね。とにかく大量の音楽が溢れかえることになるから、それは誰にとっても問題になるだろう。
 皮肉なことに、AIに欠けている要素というのは、まさにこの10年……15年、いや20年くらい、ぼくたちが意識的に取り組んで来たことなんだよね。それは粗さや即興性、思いついたことを試して、すぐに録音することで生まれる生々しさのことだよ。そういう、制作のダイナミクスは、僕たちが自然に辿り着いたものだけれど、結果的にそれは、大規模な言語モデルが音楽を作るやり方とはほぼ真逆に位置している。だから、ある意味では、ぼくたちはかなり運が良い立場にいるとも言えるね。ただ、AIという言葉は、あまりにも広域過ぎる。Transformerモデルの話に限るなら、あれ自体に本当に問題が多いし、ひどく参照的で、聴く気にもならない音楽を大量に生み出すことになる。そういうものがストリーミング・サービスや、ヨガ用のプレイリストなんかを占拠することになるだろう。でも、そこはぼくvの居場所じゃない。そういう世界が存在していることは理解しているけどね。だからまあ、ぼくたちはヨガのプレイリストのリスナーを多少は失うことになるかもしれないけど(笑)、正直、そう言う人たちは音楽そのものを気にしているわけじゃないだろうから。結局のところ、ぼくたちのやっていることにほとんど影響はないだろうね。
 一方で、もっと広い意味では、AIは有用なツールにもなり得ると思っているんだ。特定の用途に於いてはね。データのなかのパターンや類似性を見つけることには向いているし、音のカタログ化や、DJミックスの中で相性の良いトラックを見つける、といった使い方も出来るよね。あるいは、大量の音楽を学習させて、ひとつのトラックのなかからレイヤーを分離するなんていう用途もあって、実際にそうした使い方はすでに増えている。慎重に使えば、機械学習はとても強力なツールになり得るんだ。でも、いまの億万長者のテック連中は、全然慎重な使い方をしていない。考え得る限り、いちばん雑で無責任な使い方をしているよ。結局のところ、問題は技術そのものじゃなくて、それを使っている人間と、その使い方なんだ。

『Confield』は、いまでは発売当時ほど過激な作品ではなくなっているけれど、それでも音楽でここまでやれる、という可能性を垣間見せてくれるアルバムだと思う。


『Confield』

では、最後の質問です。前回インタヴューしたときに、「15歳の若者にオウテカのアルバムをプレゼントするとしたら何にしますか?」という質問をしました。そのときの答えは、ファースト・アルバムの『Incunabula』と当時の最新アルバムの『Sign』でした。いま、同じ質問をしたらどれになりますか?

S:良い質問だね。いまだったら、そうだな……正直、前回とは同じ答えにはならないかもしれないね。う〜ん……『Confield』かな。15歳くらいの若者には、もう少し背伸びしてもらってもいいんじゃないかと思うんだ。『Confield』は、いまではぼくたちにとっての転換点として語られることが多いアルバムだけど、当時の僕たち自身は、そこまで意識して作っていたわけじゃなかった。でも、なぜいまそういう語られ方をしているのかは理解できるよ。いまのメインストリーム文化も、たしかにいろいろな刺激や挑戦を提供してはいるけれど、必ずしも正しい種類の挑戦ばかりではないと思うんだ。だからこそ、『Confield』は、彼らのとっての良い入り口になるかもしれない。発表から十分に時間が経ったいまでは、当時ほど過激な作品ではなくなっているけれど、それでも音楽でここまでやれる、という可能性を垣間見せてくれるアルバムだと思う。25年前に作られた作品だということを考えると、さおさらだね。あのアルバムは本当に、まったく異なる時代の産物だったんだ。

R:うん、それでいいと思う。ぼくもその意見に賛成だね。仮にあのアルバムがひとつの転換点だとするなら、過去を振り返りながら同時に未来を見渡すのに、これ以上相応しい作品はないんじゃないかな。

S:そうそう、ちょうど蝶番みたいなものだね。

R:そう、ちょうどその言葉を使おうと思っていたんだ。でも、当時はそういう瞬間だなんて気付かないものなんだよね。

クロスロードの旅へと誘う
ブルース探究書の決定版

世界中の、あらゆる世代の
音楽ファンを魅了する
ブルースの神話が鮮やかに説かれる

ブラック・ミュージック──
その深き魂、その背後に広がる
重みある歴史と社会をたずねながら、
ここに伝説のすべてが蘇る。

Pヴァイン設立50周年記念出版

日本随一のブルース研究家が
心血を注ぎ尽くした名著、改題による復刊。

解説:濱田廣也(『ブルース&ソウル・レコーズ』)

「アメリカ黒人社会およびそのコミュニティの文化や風習を理解することなしにブルースを語ることはできないという日暮の姿勢はその生涯を通じて一貫したものであった。(略)ブルースを成立させる黒人コミュニティとその背景にあるアメリカ社会を常に意識すること、この姿勢こそが日暮泰文のブルース論に確かな説得力と奥行きを与えている。ブルースをどう聴き、その詩をどう読み解くかを自らのテーマとして課し、読者にも問うてきた日暮にとって、ロバート・ジョンスンのブルースに向き合うことはライフワークそのものだった」(本書解説より)

四六判/504ページ

[著者プロフィール]
日暮泰文(ひぐらし やすふみ)
1948年10月東京生まれ、神奈川県育ち。ブルースを始めとするブラック・ミュージック逍遥に生きる。慶應義塾大学卒。在学中の1969年『ニューミュージック・マガジン』創刊と同時にレコード批評等の執筆活動開始。1970年、日本初の黒人音楽専門誌『ザ・ブルース』を創刊。1975年ブルース・インターアクションズ(Pヴァイン・レコード)を髙地明とともに創業、2004年まで代表取締役、2007年M&Aによりリタイア。以後も執筆活動のかたわら、ブルース/ソウルの原盤制作にも携わる。著書に『のめりこみ音楽起業』(同友館)、『ブルース百歌一望』(Pヴァイン)、共編著に『ニッポン人のブルース受容史』(Pヴァイン)、訳書に『ブルースと話し込む』、『ブルースの歴史』(ともにポール・オリヴァー著、土曜社)など。2024年5月永眠。

Intro
Ⅰ デルタの細道
Ⅱ 悪魔を魅入った男
Ⅲ 土曜の夜のデルタ・ブギ
Ⅳ 生きのびたロバートの幻を追う
Ⅴ 29曲全訳
Ⅵ 29曲を聴く
Ⅶ デルタ・デイズ~RLの生きた時代
Ⅷ ブルースに追われ続けた男
Outro

Me and Mr. Johnson──RLにまつわる証言
RLランブリン・マップ
解説 濱田廣也(ブルース&ソウル・レコーズ)

人名・曲名索引

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Flying Lotus - ele-king

 フライング・ロータスが新たなEP「BIG MAMA」を送り出す。今回はなんと自身が設立した〈Brainfeeder〉からのリリースで、同レーベルからフライング・ロータス名義の作品が発表されるのは初めて。EPとしては(ハウスに挑戦した “Ajhussi” と “Ingo Swann” を含む)2024年の「Spirit Box」以来の作品となるが、ティーザーを聴くかぎりこたびもまた新たな方向性にチャレンジしているようで、目が離せない。

FLYING LOTUS

自らが主宰する〈Brainfeeder〉からフライング・ロータス名義として
正式リリースとなる記念すべき第一弾作品
待望の最新EP『BIG MAMA』を発表!
3月6日リリース!

コルトレーン一族の末裔であり、2000年代後半にその独創的なビートで世界をリードしたビート・ミュージック・シーン最重要アーティスト、今では電子音楽界を代表する鬼才、フライング・ロータスが最新EP『BIG MAMA』を3月6日にリリースすることを発表した。本作は、フライング・ロータスことスティーヴ・エリソンが、自ら設立したロサンゼルス拠点のレーベル〈Brainfeeder〉から発表する初の正式リリース作品となる。〈Brainfeeder〉は約20年前にエリソンが設立し、これまでにサンダーキャット、カマシ・ワシントン、ルイス・コール、ハイエイタス・カイヨーテなど、数多くの名だたるアーティストの作品を世に送り出してきた重要レーベルだ。

『BIG MAMA』は、フライング・ロータスが衝動と勢いに突き動かされた瞬間を捉えた作品だ。無数のサウンド、リズム、エフェクトが高密度に詰め込まれた本作は、彼自身の言葉を借りれば「実験的で、マキシマリストで、超高速なエレクトロニック・エネルギーの爆発」。全7曲はひと続きの構成として展開され、一切のループを用いず、すべての小節が異なるという大胆なアプローチが取られている。

大砲から撃ち出されたみたいな感覚にしたかった。
ただただ爆発的で、予測不能なエネルギー。
完全にバグったコンピューターみたいな、正気を失った機械のような感じだね。
- Flying Lotus

Flying Lotus - BIG MAMA
予約リンク https://flyinglotus.lnk.to/bigmama

本作は、最新長編映画『Ash』の監督・作曲を務めた後の、ある種の“隔離期間”を経て制作された。ニュージーランドで、ラップトップとコントローラーだけを使い、ほぼ一人で映画音楽を完成させるという原始的な制作環境が、彼を原点回帰へと導いた。

ひとりで丸ごとサウンドトラックを作るという、大げさに拡張された時間感覚の中にいた感じだった。その反動で、直前にやっていたこととはまったく違うことがしたくなった。このプロジェクトを始めて、内側に溜まっていたカオスを吐き出せる場所を見つけたような解放感があった
- Flying Lotus

制作期間は約2か月。従来の“曲単位”の制作ではなく、まず金属的で複雑な音色や、変化し続ける音の質感を探求するソフトウェア・シンセや、中古のドラムマシンを駆使し、音そのもののアイデアを書き留めるスケッチブックを作ることからスタートした。その後、1日に10~15秒分の音楽を丹念に積み重ね、最終的に13分に及ぶ、テンポやジャンルに縛られない意識の奔流のような作品へと結実させている。

自由で、生きている感じにしたかった。サウンドデザインとして考えて、予測不能で圧倒的な密度を持つものを作りたかったんだ。音楽がどんどん“完璧”で無菌的になっていく中で、電子音楽における“人間らしさ”をどう残すか、それを考え続けたい
- Flying Lotus

アートワークは、イラストレーターのクリストファー・イアン・マクファーレンが担当。フライング・ロータスは、幼少期に親しんだカートゥーンへの共通の愛を通じて彼と意気投合したという。

『レンとスティンピー』とか、サタデー・ナイト・ニコロデオン(SNICK)みたいな感じ。
俺と同世代なら分かるはず(笑)。とにかく才能ある人で、ずっと一緒に仕事したかったんだ。
- Flying Lotus

このいたずら心に満ちたカートゥーン的美学は、フライング・ロータス自身が敬愛する『ザ・シンプソンズ』の影響とも共鳴し、『BIG MAMA』を2010年作『Pattern+Grid World EP』の精神的続編とも言える作品へと位置づけている。ブレイクコアとIDMを自在に横断する、フライング・ロータスならではのダンサブルで遊び心あふれる側面が前面に押し出された一作だ。

さらに本作『BIG MAMA』は、フライング・ロータス名義として初めて〈Brainfeeder〉からフルリリースされる記念碑的作品でもある。

自分が作ったレーベルと、もっと近い距離で一緒にやるタイミングだと思った。
グラミーにも何度も行ったし、大きな作品とも肩を並べてきた。
いい環境を築けたと思うし、もう十分その時が来たんじゃないかな
- Flying Lotus

『BIG MAMA』は、3月6日(金)に12inch(ブルー・ヴァイナル)、デジタル配信で発売。12inchは数量限定・日本語帯付き仕様でも展開される。

フライング・ロータス|Flying Lotus
ロサンゼルス出身のスティーヴ・エリソンことフライング・ロータス(別名キャプテン・マーフィー)は、この20年にわたり21世紀音楽の形を決定づけてきた重要人物の一人だ。アリス・コルトレーンやマリリン・マクロードといった音楽的レジェンドを家族に持ち、ビートメイキングからアニメまで幅広い影響を受けながら育った。
2000年代後半には、ジャズ、ヒップホップ、未来的サウンドを融合させた独自の表現でLAの【Low End Theory】を中心に注目を集め、〈Warp Records〉からリリースされたアルバムにはケンドリック・ラマーやデヴィッド・リンチ、サンダーキャット、エリカ・バドゥら錚々たる面々が参加。ケンドリック・ラマー『To Pimp A Butterfly』へのプロデュース参加など、現代音楽史に残る作品を数多く手がけてきた。
音楽のみならず映像表現にも強いこだわりを持ち、立体映像やアヴァンギャルドな照明を用いたライブ演出でも高い評価を獲得。近年は映画・アニメ分野へも活動を拡張し、『V/H/S 99』への参加や、主演アーロン・ポール、エイザ・ゴンザレス出演の映画『Ash』では監督・作曲を兼任。Netflixアニメ『Yasuke』やのNBAのレジェンド、マジック・ジョンソンのドキュメンタリー「マジックと呼ばれる男(原題:They Call Me Magic)の音楽も手がけている。
2024年秋には、ドーン・リチャードとシッド・スリラムを迎えたハウス寄りのEP『Spirit Box』を発表。ジャンルや表現手法に縛られない、予測不能な創作姿勢は今なお進化を続けている。

label : BEAT RECORDS / Brainfeeder
artist : Flying Lotus
title : BIG MAMA
release:2026.3.6
TRACKLISTING:
01. BIG MAMA
02. CAPTAIN KERNEL
03. ANTELOPE ONIGIRI
04. IN THE FOREST - DAY
05. BROBOBASHER
06. HORSE NUKE
07. PINK DREAM
商品ページ: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15637
配信: https://flyinglotus.lnk.to/bigmama

12inch(ブルー・ヴァイナル/片面スクリーンプリント)

Shintaro Sakamoto - ele-king

 ニュー・アルバム『ヤッホー』が話題の坂本慎太郎、今年最初の国内ツアー、『坂本慎太郎 LIVE 2026 "Yoo-hoo" ツアー』の開催が決定した。今回のツアーは、初の仙台公演を含む、神奈川、東京、名古屋、大阪、福岡、沖縄の全国7都市で開催です。


坂本慎太郎 LIVE 2026 “Yoo-hoo”ツアー

5月5日(火/祝)神奈川県立音楽堂(横浜) 
開場: 16:30 / 開演: 18:00 / チケット: 5,500円 (全席指定)
お問い合わせ先: TONIKAK info@tonikak.com

5月14日(木)Rensa(仙台)
開場: 18:00 / 開演: 19:00 / チケット: 4,800円 (スタンディング)
お問い合わせ先: WESS info@wess.co.jp

5月26日(火)ダイアモンドホール(名古屋) 
開場: 18:00 / 開演19:00 / チケット:4,800円 (スタンディング)
お問い合わせ先: JAILHOUSE https://www.jailhouse.jp/

5月27日(水)なんばHatch(大阪)
開場: 18:00 / 開演: 19:00 / チケット: 4,800円 ( 1F: スタンディング / 2F指定)
お問い合わせ先: GREENS https://www.greens-corp.co.jp

6月9日(火)昭和女子大学 人見記念講堂(東京) 
開場: 17:30 / 開演: 18:30 / チケット: 6,000円 (全席指定)
お問い合わせ先: SMASH https://smash-jpn.com

6月19日(金)桜坂セントラル(沖縄) 
開場: 18:00 / 開演: 19:00 / チケット: 4,800円 (スタンディング)
お問い合わせ先: 桜坂セントラル http://www.nahacentral.com

6月21日(日)Drum Logos(福岡) 
開場: 17:00 / 開演: 18:00 / チケット: 4,800円 (スタンディング)
お問い合わせ先: BEA https://www.bea-net.com/


●オフィシャル抽選先行特設サイト
先行受付URL: https://eplus.jp/ss-yoo-hoo/

- オフィシャル先行予約→ 2月5日(木) 20:00 ~ 2月11日(水/祝) 23:59
- 一般発売: 2月28日(土)10:00  

※仙台、名古屋、大阪、福岡、沖縄公演は別途ドリンク代が必要となります。
※枚数制限 / お一人様2枚まで
※年齢制限: 未就学児入場不可、6歳以上チケットが必要

〜私にとっては、サブスクで日々大量に聴いている音楽が街ですれ違う人々だとしたら、レコードは友人や大切な人のような存在です〜

「VINYLVERSEユーザーのリアルな声を聞きたい」そんな思いからスタートしたこの連載も、第4弾を迎えました。
今回お話を伺ったのは、都内でDJとしても活動している kanako__714 さんこと、KANAKO さんです。
SoulやR&Bを軸に、和モノ、ラヴァーズロック、Houseまでジャンルレスに音楽を掘り下げ、DJとしても独自の選曲で現在急成長中。そんなKANAKOさんのVINYLVERSEギャラリーは、あえて邦楽にフォーカスしたセレクトとなっています(2026年1月現在)。
ギャラリーのジャケットを一覧で眺めていると、今、聴くべき音楽を自然体で選んだようなレコードの並びが印象に残ります。主張しすぎるわけではないのに、なぜか気になるその感覚の奥に見えてくるのは、KANAKOさんならではのパーソナルなセンスかもしれません。

今回のインタビューを通して見えてきたのは、「どんな音に惹かれ、どのようにレコードと付き合ってきたのか」という、多くの音楽ファンに共通する問いでした。
DJとしての視点、そして一人のリスナーとしての視点。その両方から語られるレコードの魅力を紐解いていきます。


---まず、VINYLVERSEをどんなふうに使っていますか?

KANAKO(以下K):今は自分が持っているレコードの中から、和モノに絞って投稿しています。ジャケットを一覧で一気に見られるので、DJの選盤を考えるときにもすごく助かっていますね。

---アプリの使い方はすぐに理解できましたか?

K: 特に迷うことなくできました。

---操作で迷った点、不便に感じた点はありますか?

K: 検索してもなかなか出てこないアーティスト、アルバムなどがあり少し苦戦しました。

---使っていて「これは良いな」と感じた機能はありますか?

K: お気に入り登録や、「欲しいもの」をギャラリーに追加できるところです。今持っているものと、これから欲しいものを同じ感覚で管理できるのがいいなと思いました。

---他のコレクターと交流する機能についてはどうでしょう?

K: コメント機能などはあってもいいかなと思います。ただ、正直SNSがあまり得意ではないので、無理に交流しなくてもいいのかなと思いました(笑)。

---今後欲しい機能はありますか?

K: ギャラリーの順番を自由に動かせたり、Instagramのように気に入っているレコードを一番上にピン留めできるような機能があればいいなと思いました。

---VINYLVERSEの一番の魅力は何だと思いますか?また、どんな人にこのサービスをおすすめしたいですか?

K: 自分の持っているレコードとあらためて向き合い、自分はこういう音楽が好きなのだと再発見することができるアプリだと思いました。また、他の人のレコード棚を覗いているような気持ちになれるのも楽しいです。レコードが好きな方ならみんな楽しめるアプリだと思います。

---そもそもレコードを集め始めたきっかけは? 最初に買った1枚も教えてください。

K: 4年ほど前、渋谷のRECORD SHOP & DJ BAR「BLOW UP」に行ったのがきっかけです。Black Musicやレコードに興味を持って、最初はクラブやミュージックバーでレコードを聴く側でしたが、その後自分でも集めるようになりました。DJを始めた時期とレコード収集を始めた時期がほぼ同じで、最初は一気にたくさん買っていたので少し記憶が曖昧なのですが……たぶん、ミニー・リパートンの『LOVE LIVES FOREVER』が最初に買った1枚です。

---主にどんなジャンルを集めていますか?

K: あえて言うならSoulですが、和モノ、R&B、ラヴァーズロック、Houseなど、ジャンルはさまざまです。

---特に思い入れのある1枚を教えてください。

K: ORCHIDSの『LIFE IS SCIENCE』です。去年の夏、池尻のJuly treeというギャラリーで90年代クラブイベントのフライヤーの展示を見に行ったとき、会場でこの曲がかかっていて。ギャラリーの方に教えていただき、すぐに買いました。そこからMAJOR FORCEの音楽にどっぷりハマって、今も少しずつ集めています。

---今、個人的に一番欲しいレコードは?

K: Sly, Slick & Wickedの『Sho’ Nuff』の7インチです。ずっと欲しいと思いながら高くて手が出せなくて……気づいたらさらに高騰していて、早く買えばよかったと後悔しています。

---あなたにとって「レコードの魅力」とは何でしょう?

K:音質の良さはもちろんですが、それ以上に「音楽が物質としてそこにある」ことに魅力や安心感を感じます。私は根本的にモノが好きな人間で、音楽だけでなく、雑誌や漫画も本当に気に入ったものは物理的に手元に置いておきたい。ライナーノーツやジャケットを眺めて楽しめるのも、レコードならではだと思います。

---レコードで聴く音楽と、他のメディアで聴く音楽の違いについて、どう感じていますか?

K: 音質の違いはもちろんあると思います。特にクラブやミュージックバーでレコードを聴くことは、立体感やひとつひとつの楽器の音をクリアに感じることができる、特別な体験だと思います。ただ、サブスクでたくさんの音楽に出会えることも素敵な体験であることは確かで、サブスクで出会った曲をレコードで購入し、思い入れのある曲になるということも頻繁にあります。私にとっては、サブスクで日々大量に聴いている音楽が街ですれ違う人々だとしたら、レコードは友人や大切な人のような存在です。

---音楽以外で好きなカルチャーはありますか?

K: 90年代のカルチャーが好きです。日本のドラマや映画、古着、雑誌だと『relax』とか。

---VINYLVERSEのギャラリーを「誰かに見せたい」と思うことはありますか?

K: 正直私は自分のことを人に話したりとか、自分のパーソナルなところを人に知られるのがあまり好きではなくて。自分のことを言葉で説明するのがすごく苦手なんです。でも、ギャラリーを一覧で見てもらえたら、「この人、こういう音楽が好きなんだ」って自然に伝わる。それは逆にいいなと思いました。人からDJのスタイルやジャンルについてもよく聞かれるのですが、例えば「和モノ」と言うと、シティポップや歌謡曲を想像されがちで。でも実際は、そのどちらもそこまでレコードを持っているわけではなくて、自分でも「和モノの中のどういう音楽が好きなのか」を言葉で説明するのが難しかったんです。
でも、ギャラリーを見てもらえれば、自分で説明するよりも分かりやすいかもしれないな、と思いました。

---VINYLVERSEギャラリーのセレクトを和モノにフォーカスした理由はどうしてですか?

K: 今、毎月第一金曜日にアマランスラウンジというお店の和モノのイベントでDJをやらせてもらっていて、その流れもあって毎月コンスタントに邦楽レコードを買うようになったんです。そうすると、だんだん自分でも何を持っているのか分からなくなってきて(笑)。
頭の整理という意味でも、一度「自分がどんな和モノを持っているのか」をまとめてみたいと思って、一旦和モノに絞りました。

---邦楽と洋楽の捉え方に違いはありますか?

K: あまりないですね。いわゆる和モノってジャンルというより、その中にSoulっぽかったり、R&Bとかシティポップ、四つ打ちなどがある、という感覚で。私は和モノだから集めているというより、「好きな音」に反応して集めているので邦楽も洋楽も関係なく聴いています。

---家ではどんなふうに音楽を聴いていますか?

K: 家ではレコードも聴くし、ラジオも聴くし、サブスクも使います。常に何かしらの手段で音楽が流れている感じですね。
DJの練習としてかけることもあれば、ただゆっくり聴くこともあります。DJをするようになってからは、「この曲をどう繋ぐか」「次に何をかけるか」を考えながら聴くようになりました。途中でブレイクが入ると使いやすそうだなとか。でも、ただ聴いていて良い音楽と、DJで使いたい曲っていうのはまた違う気もしますね。

---DJでは使わないけど、欲しくて買うレコードもありますか?

K: あります。例えばMitsukiの『Land Is Inhospitable And So Are We』は、私がDJ中にかけることはありませんが、寝る前に聴きたくなるような音楽ですごく好きなので買いました。

---レコードを買う場所についてのこだわりはありますか?

K: ディスクユニオン、BLOW UP、地方のレコードショップのオンラインストアなどで買います。ごくたまにDiscogsも使いますね。メルカリやヤフオクは、基本的にはあまり使いません。もちろんレコードが本当に好きな人が売っている場合もあるとは思うのですが、レコードをよく知らない人や、あまり好きじゃない人が売っていることも多そうで、そういう人からは買いたくないんです。気分が乗らないというか。ただ、単に気持ちの問題だけではなく、盤質の基準も人によってバラバラだし、品質面で不安があるのも理由のひとつです。

---VINYLVERSEも「レコードが好きな人から、レコードが好きな人へ渡る」という感覚を大事にしたく思っています。それがどういうアプリにしたらそうなるのかは今でも試行錯誤中ですが、VINYLVERSEが、そういう人から人へ、レコードを気持ちよくバトンタッチできる場所になったらいいな、と思っています。
ちなみに手に入れたとき一番嬉しかったレコードって何ですか?

K: 一番嬉しかったのはセルジオ・メンデスの『Brasileiro』ですね。とあるDJの方がかけていて知って、それからレコードを探し始めて、1年半くらい探して見つかりました。でも結局買えたのはメルカリなんですが(笑)。一度、ヤフオクで見つけて入札したのですが、4万円以上までいってしまって。途中で無理だなと思って諦めました。その後メルカリに、それよりはだいぶ安く出ていたので買いました。

---DJは主にどのような場所でプレイされているのでしょうか?

K: 主に夜帯の時間で、お酒を飲む場所、BARやクラブが多いです。

---こういうところでDJしたいという場所はありますか?

K: 先日、ラテンミュージックと社交ダンスのイベントがあって行ってきたのですが、DJがラテンミュージックをかけて、間にラテンダンスのパフォーマンスを挟むという感じだったのですが、雰囲気がとてもハッピーで、場所もオープンなスペースだったので通りすがりのお客さんも見ていて。そういうオープンな場所で自分のこと全然知らない人に聴いてもらえる機会があったら、すごく楽しいだろうなと思いました。

---昔から変わらず好きな音楽の傾向って何かありますか?

K: 全体的にアフロっぽいパーカッションが入ってたり、途中で長めのブレイクがある曲はめちゃくちゃ好きです。ファミリー・ツリーの「Family Tree(Norman Cook Disco Edit)」とか、ワンネス・オブ・ジュジュの「African Rhythms」とかですかね。

---とてもヒップホップ的ですね(笑)。ある視点から言えば、ヒップホップって「このブレイクをずっと聴いて踊っていたい」という衝動から生まれたものですからね。DJに向いているのかもしれません。ところで楽器経験はあるのですか?

K: ピアノとトランペットをやっていました。

---それはDJをすることに何か役に立っていますか?

K: 拍とか小節の感覚は役立っていると思いますが、私がやっていた楽器の演奏とDJをすることは全然違いますね。私はジャズをやっていたわけではないので、ピアノは譜面通り、トランペットも先生の指示通り。でもDJの場合、どんな展開にするのか、どこで繋ぐのかはすべて自分次第。そこが一番違うと思います。

---では最後に、これからレコードを買いたい、DJを始めたいというビギナーへアドバイスがあればお願いします。

K: 機材を揃えたり、レコードが増えると場所を取ったりとサブスクに比べて少しハードルが高い部分はあるかもしれませんが、その分音楽との向き合い方は変わるような気がします。まずは好きなアーティストのレコードを手に取ってみていただきたいです。DJに関しては、この曲が流行ってるからとかではなく、自分が本当に好きな曲をみんなに知ってもらう。この曲、本当にいい曲なんだよっていうのが人に伝わるような曲の順番とか、音のバランスやボリュームとかを気にしながら、プレイする。どうすればこの自分の好きな曲が一番いい状態で相手に聞いてもらえるかみたいなことを大事にしたいと思っています。


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Thundercat - ele-king

 前作『It Is What It Is』からじつに6年ぶり。サンダーキャット5枚目のニュー・アルバム『Distracted』が4月3日に〈Brainfeeder〉よりリリースされる。マック・ミラー、エイサップ・ロッキーなど豪華なゲストが参加している模様。さらに、5月19日から22日にかけ、東名阪をめぐる来日公演も決定している。サンダーキャットの最新型を、その目その耳でたしかめたい。

THUNDERCAT

6年ぶりとなる待望のニュー・アルバム完成!
最新作『DISTRACTED』をひっさげ、
東名阪の来日ツアーが5月に決定!!

マック・ミラー、エイサップ・ロッキー、リル・ヨッティ、
テーム・インパラ、ウィロー、チャネル・トレスら豪華ゲスト参加
新曲「I DID THIS TO MYSELF (FEAT. Lil Yachty)」解禁
ニュー・アルバム『DISTRACTED』は 4月3日リリース
Tシャツ・セットや日本語帯付限定LP、
購入特典 (先着) にアクリル・スタンドも決定!

前作のリリースからちょうど6年。サンダーキャットが、通算5作目となるスタジオ・アルバム『Distracted』を完成させた。4月3日に〈Brainfeeder〉よりリリースされる。

本作には、惜しくも2018年にこの世を去った盟友マック・ミラーとの未発表コラボレーション楽曲をはじめ、エイサップ・ロッキー、リル・ヨッティ、テーム・インパラ、ウィロー、チャネル・トレスといった、時代とジャンルを横断する豪華アーティストが参加している。

アルバム制作の軸となったのは、サンダーキャットにとって新たなクリエイティヴ・パートナーとなる大物プロデューサー、グレッグ・カースティンとの緊密なコラボレーションだ。アデル、ポール・マッカートニー、シーア、ビヨンセ、ベックなど、ポップス史を代表するアーティストたちとの仕事で知られる彼との共同作業によって、本作はこれまで以上に洗練されつつも、サンダーキャットらしい自由さと遊び心を失わない作品へと結実している。

さらに、〈Brainfeeder〉主宰であり親友のフライング・ロータス、昨年ギースの最新作を手がけ話題を呼んだケニー・ビーツことケネス・ブルーム、そして天才ダダリオ兄弟によるザ・レモン・ツイッグスもプロダクションで参加。多彩な才能が集結しながらも、作品全体は明確に“今のサンダーキャット”を映し出している。

アルバム発表と同時に、リル・ヨッティ参加のリード・シングル「I Did This To Myself」が解禁された。本楽曲では、フライング・ロータスが追加プロダクションを担当している。

Thundercat - I Did This To Myself (feat Lil Yachty)
配信: https://thundercat.lnk.to/distracted

「今夜は何してる?」という一言から始まるこのグルーヴィーな楽曲は、あまりにも忙しい“あの子”にはまったく届かない。派手なアクセサリーが好きで、インスタを頻繁に更新する彼女は、サンダーキャットやリル・ヨッティの必死なアプローチにも見向きもしない。ふたりは、状況を変えたいと思いつつも、自分たちがこの状況を招いたことを痛いほど理解している。

こうしたデジタル時代特有の気まずさやすれ違いこそが、『Distracted』の核となっているテーマだ。『Drunk』の混沌とした現代社会への視線と、『It Is What It Is』の深い喪失感。そのあいだに位置する本作は、サンダーキャットが「今という時代における自分の居場所」を見出したアルバムでもある。

現代を断罪するのではなく、「気が散ること (ディストラクション)」が、障害にも癒しにもなり得るものとして捉え直す視点が、本作を貫いている。

過剰な刺激と内省のあいだに生まれる緊張感。テクノロジーの“進歩”が想像力を広げるどころか、むしろ狭めてしまったことへの懐疑。『スター・トレック』や子どもの頃に抱いていた宇宙への夢を冗談交じりに語りつつ、レーザーのないドローン、カメラだけが進化するスマートフォン、監視とアクセスに集約されたイノベーションという現実へと視線を転じる。それはガジェットへの失望というより「約束された未来」と「実際に手にした現実」とのギャップへの違和感なのだ。

ときには、別の形で集中するために、あえて気を散らす必要があるんだ
- Thundercat

本作には、サンダーキャットと同じ感覚、創作志向を共有するのアーティストたちが数多く参加している。ウィローは「ThunderWave」で浮遊感あふれるヴォーカルを重ね、チャネル・トレスは「This Thing We Call Love」で軽快なグルーヴを生み出す。つい先日『サタデー・ナイト・ライブ』での共演も話題になったエイサップ・ロッキーは壮大な「Funny Friends」に参加し、テーム・インパラとのコラボレーション「No More Lies」も収録される。

アルバムのアートワークは、ラナ・デル・レイやテーム・インパラを手がけてきた、グラミー・ノミネート歴を持つフォトグラファー、ニール・クラッグが担当している。

ただ楽しんで、笑って、苦しみは形を変えながら続くものだってことを知ってほしい。それでも前に進み続けるんだ。
- Thundercat

混乱してもいい。疲れてもいい。“Distracted(気が散っている)”状態でも、その中から美しいものは生まれる。常に意見や発言を求められるこの時代に、サンダーキャットが差し出すのは、より静かで、しかし本質的なメッセージだ。

サンダーキャット待望の最新アルバム『Distracted』は、4月3日 (金) にCD、LP、デジタル配信で世界同時リリース。LPは、通常盤 (レッド・ヴァイナル)に加え、日本語帯付き限定盤 (クリア/ブラック・マーブル・スモークエフェクト・ヴァイナル)、限定盤 (クリア/ブラック・マーブル・スモークエフェクト・ヴァイナル)、タワーレコード限定盤 (クリア/ホワイト/ブラック・スプラッター・ヴァイナル)、ディスクユニオン限定盤 (クリア/ターコイズ/ブラック・スプラッター・ヴァイナル)も発売。国内盤CDと日本語帯付き限定盤には歌詞対訳と解説書が封入され、Tシャツ付きセットも発売決定。さらに、アルバム購入者は先着でサンダーキャットのオリジナル・アクリル・スタンドがもらえる。

CD+Tシャツセット / Tシャツデザイン(白)

LP+Tシャツセット / Tシャツデザイン(黒)

先着特典:アクリルスタンド

サンダーキャット、待望のニューアルバムを完成させ、来日ツアー決定!

THUNDERCAT
JAPAN TOUR 2026

TOKYO 2026/5/19 (TUE) TOYOSU PIT
TOKYO 2026/5/20 (WED) TOYOSU PIT
OSAKA 2026/5/21(THU) NAMBA HATCH
NAGOYA 2026/5/22 (FRI) COMTEC PORTBASE

OPEN 18:00 / START 19:00
INFO:BEATINK [WWW.BEATINK.COM] / E-mail: info@beatink.com

数々のステージを駆け抜け、ジャンルもメディアも軽やかに越境しながら、音楽そのものと生き様で世界中のファンを魅了し続ける唯一無二の存在、サンダーキャット。

世界有数の超絶技巧を誇るベーシストでありながら、メロウでスウィートな歌声と、底抜けに自由なキャラクターで、常にシーンの中心に立ち続けてきた彼が、待望の最新アルバム『Distracted』(4月3日発売)を携え、2026年5月、ふたたび日本へ帰ってくる。

2020年という世界的混乱の年に象徴的なフレーズとも言える『It Is What It Is』は、第63回グラミー賞で【最優秀プログレッシヴR&Bアルバム賞】を受賞。その後も、エイサップ・ロッキー、テーム・インパラ、ゴリラズ、シルク・ソニック、ケイトラナダ、ジャスティスらとのコラボレーションを重ね、俳優としても『スター・ウォーズ』シリーズのスピンオフ作品『ボバ・フェット』に出演し、子供番組『Yo Gabba Gabbaland』にもゲストとして登場している。日本でもNHK Eテレ「シャキーン!」「天才てれびくん」への出演するなど、アニメやゲームを含むカルチャー全体を横断。その音楽、キャラクター、そして生き様そのものが、世代や国境を越えて支持されている理由だ。

2022年、まだ入国やイベント開催に制限が残る中で誰よりも早く実現させた来日ツアーは、熱狂と感動に満ちた“永遠に語り継がれる夜”として今も多くのファンの記憶に刻まれている。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーが「地球上で最高のベースプレイヤー」と称賛を送るサンダーキャット、そのライブは、超絶技巧とメロウネス、ユーモアとカオスが完璧なバランスで共存する、まさに異次元の体験だ。

そして2026年5月。その唯一無二のステージが、再び日本を震わせる。

ジャズ、ヒップホップ、ファンク、R&B、AOR、LAビート、あらゆる要素を溶かし込みながら、今この瞬間の音楽として鳴らされるサンダーキャットのステージ。世界を肌で感じるそのライブ・パフォーマンスを、どうかその目と耳で体感してほしい。

【チケット詳細】
TOKYO:前売:9,000円 (税込 / 別途ドリンク代 / オールスタンディング) ※未就学児童入場不可
OSAKA:前売:9,000円 (税込 / 別途ドリンク代 / 1階タンディング、2階指定席) ※未就学児童入場不可
NAGOYA:前売:9,000円(税込 / 別途ドリンク代 / 全席指定) ※未就学児童入場不可

先行発売:
★BEATINK主催者先行:1/30(FRI)18:00
[ https://beatink.zaiko.io/e/thundercat] (※限定枚数・先着、Eチケットのみ)
★イープラス・プレイガイド最速先行受付:1/31(SAT)10:00~2/4(WED)23:59
[ https://eplus.jp/thundercat/](抽選)

[東京]
LAWSONプレリクエスト:2/5(THU)10:00~2/8(SUN)23:59
イープラス・プレオーダー:2/5(THU)10:00~2/8(SUN)23:59

[名古屋]
ジェイルハウスHP先行:2/5(THU)12:00~2/9(MON)23:59
チケットぴあプレリザーブ:2/5(THU)11:00~2/9(MON)11:00
イープラス・プレオーダー:2/5(THU)12:00~2/9(MON)23:59
LAWSONプレリクエスト:2/5(THU)12:00~2/9(MON)23:59

[大阪]
イープラス・プレオーダー:2/5(THU)10:00~2/8(SUN)23:59
チケットぴあプレリザーブ:2/5(THU)11:00~2/9(MON)23:59
LAWSONプレリクエスト:2/5(THU)12:00~2/9(MON)23:59

一般発売:2月14日(土)10:00~

label:BEAT RECORDS / Brainfeeder
artist:Thundercat
title:Distracted
release:2026.04.03
商品ページ: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15625
配信:
tracklist:
01. Candlelight
02. No More Lies (feat. Tame Impala)
03. She Knows Too Much (feat. Mac Miller)
04. I Did This To Myself (feat. Lil Yachty)
05. Funny Friends (feat. A$AP Rocky)
06. What Is Left To Say
07. I Wish I Didn’t Waste Your Time
08. Anakin Learns His Fate
09. Walking on the Moon
10. This Thing We Call Love (feat. Channel Tres)
11. ThunderWave (feat. WILLOW)
12. Pozole
13. A.D.D. Through the Roof
14. Great Americans
15. You Left Without Saying Goodbye

CD+Tシャツセット

LP+Tシャツ

CD

限定盤LP
(クリア/ブラック・マーブル・
スモークエフェクト・ヴァイナル)

輸入盤LP
(レッドヴァイナル)

タワーレコード限定盤LP
(クリア/ホワイト/ブラック・
スプラッター・ヴァイナル)

ディスクユニオン限定盤LP
(クリア/ターコイズ/ブラック・
スプラッター・ヴァイナル)

shotahirama - ele-king

 20年にわたり活動してきたニューヨーク出身の電子音楽家、shotahiramaがなんと音楽活動に幕を下ろすという。ラスト・アルバムとして先週1月31日、『A Love Supreme』がリリース。「至上の愛」とはまた印象深いタイトルだけれども、同作はこれまでのソロ活動から厳選された20曲で構成されている(新曲にしてラスト・シングル “NERVOUS” も所収)。グリッチからヒップホップまで、独特の感性で活動をつづけてきた彼の、有終の美を見届けよう。

2006年にENG (エレクトロノイズ・グループ) を結成、09年にグループ解散以降はノイズ/グリッチミュージックシーンでソロアーティストとして活動を続けてきたニューヨーク出身の音楽家shotahirama。そんな彼が2026年1月31日をもって20年の音楽キャリアに幕を下ろすラストアルバムを同日リリースする。最終作は『A Love Supreme』と題され、10年代のグリッチミュージックシーンに大きな潮流を起こした「post punk」をはじめ、レゲエをフュージョンさせた傑作「Maybe Baby」やラストシングル「NERVOUS」など、ソロ転向後の作品から20曲を選曲したベストアルバムになっている。

YouTubeリンク:
『A Love Supreme』アルバムトレイラー
https://youtu.be/CC7C1YnB5Og

『NERVOUS』ミュージックビデオ
https://youtu.be/_J0BSe5a2Ag?si=z8wfw8gJ_5JzkDod

また、本作にも収録されているアンビエントトラック「Nothing But You and Me」が発売から14年の時を経て、映像作家Masashi Okamotoディレクションによる新たなミュージックビデオを公開しているのでこちらも併せて確認したい。

YouTubeリンク:
『Nothing But You and Me』ミュージックビデオ
https://youtu.be/WSxGIWsvwLM

A Love Supreme (Bandcamp Original) by shotahirama

Bandcampリンク:
https://shotahirama.bandcamp.com

1. Cut (from "Cut" SIGNAL DADA, 2018)
2. FIRE IN WHICH YOU BURN (from "GET A LOAD OF ME" SHRINE.JP, 2021)
3. IM ON FIRE (from "Stay On The Light" SIGNAL DADA, 2020)
4. KIDS TRUX (from "Conceptual Crap Vol,5" スローダウンRECORDS, 2017)
5. CRAZY (from "ZOOYORK" SIGNAL DADA, 2024)
6. THE WHOLE NINE YARDS (from by "GET A LOAD OF ME" SHRINE.JP, 2021)
7. You Dub Me Crazy (from "Maybe Baby" SIGNAL DADA, 2017)
8. Do The Right Thing (from "KETURON RIGHTS" SIGNAL DADA, 2018)
9. SLACKER (from "Rough House" SIGNAL DADA, 2019)
10. CANDY STORE (from "DON'T STRESS TOMORROW" SHRINE.JP, 2022)
11. BRAINFREEZEE (from "COLDVEIN" SIGNAL DADA, 2024)
12. FIRE AND ICE (from "APARTMENT" SIGNAL DADA, 2021)
13. STOP FRONTING (from "Rough House" SIGNAL DADA, 2019)
14. Start Breaking My Heart (from "Conceptual Crap Vol,1" スローダウンRECORDS, 2016)
15. Copernicus (from "post punk" SIGNAL DADA, 2014)
16. Nothing But You and Me (from "NICE DOLL TO TALK" SIGNAL DADA, 2012)
17. And The Elevator Music In The World Trade Center (from "Modern Lovers" Duenn, 2014 and Shrine.jp, 2016)
18. Neptune (from "Cluster" Shrine.jp, 2014 and 2016)
19. Cassini (from "Clampdown" SIGNAL DADA, 2014)
20. NERVOUS (from "NERVOUS" SIGNAL DADA, 2025)

about shotahirama:
ニューヨーク出身の音楽家・ビートメイカーshotahirama (平間翔太)。中原昌也、evala、野口順哉(空間現代)といった音楽家がコメントを寄せる。音楽批評家・畠中実による記事『デジタルのダダイスト、shotahiramaがパンク以後の電子音楽で継承するオルタナティヴな精神』をはじめ、音楽ライターの三田格やVICEマガジンなどによって複数のメディアで紹介される。Oval、Kangding Ray、Mark Fell、Ikue Mori等のジャパンツアーに出演。代表作にCDアルバム「post punk」や4枚組CDボックス「Surf」がある。

interview with Shinichiro Watanabe - ele-king

 どんな痛みだって消し去ってくれる万能薬。肉体的な苦痛はもちろんのこと、精神的なそれまで含めて。
 いや、そんなものがあったらそりゃあ使っちまうですよ。そりゃ世界じゅうに伝播しますよ。でも、これまであなたたち人類が重宝してきたそれ、じつはそろそろ体内で突然変異するんです。端的にいえば、服用経験者は死にます。一度でも使ったことがあったら──ご愁傷さま。
 2025年4月から6月にかけ放送されたアニメ『LAZARUS ラザロ』は、あわや人類滅亡という危機的な状況を、しかしダークになりすぎたり湿っぽくなりすぎたりしない絶妙なあんばいで、あくまでも明るい未来を探る方向で描いていく。
 そうしたアニメの世界を構築するうえで音楽が果たした役割は小さくなかったはずだ。絶望的なのに前向き──そんな機微をサウンド面で担うことになったのがカマシ・ワシントン、ボノボ、フローティング・ポインツの3組だったことは、すでに多くの視聴者の知るところだろう。放送から半年。ついにフィジカルでサウンドトラックがリリースされている。
 作中では場面ごとにばらばらに配置されていた曲たちが、今回のサウンドトラックでは作曲者単位で整理されている。つまりこの3枚は、カマシ・ワシントン、ボノボ、フローティング・ポインツそれぞれの新作として聴くこともできるわけだ。そもそも監督みずから「自分のアルバムを作るつもりでやってくれ」とオファーしていたそうだから、むしろそうした聴き方こそが本道かもしれず、アニメ自体を観ていないリスナーにとっても大いに発見のあるだろうリリースといえる(もちろんシーンを思い出しながら聴くのだっておおいにアリ)。
 これまでも音楽に強いこだわりをみせてきた渡辺信一郎監督が、みずから集大成と語る『LAZARUS ラザロ』。『別冊ele-king 渡部信一郎のめくるめく世界』では自身の半生を語っていただいたり、「オールタイム・ベスト100アルバム」を選んでいただいたりしているが、今回はまたそれとは異なる角度から、『LAZARUS ラザロ』のサウンドトラックについて話していただいた。

今回のサウンドトラックの3人はみんな、はみ出している人たちを選んだというか、むしろそのはみ出しの部分に可能性を感じてオファーしたと言えるんじゃないかな。

2025年は『LAZARUS ラザロ』が放送されましたが、1年を振り返ってみてよかったこと、嬉しかったことはありましたか?

渡辺:ひとつはもちろん、『LAZARUS ラザロ』がようやく放送できたこと。あとは『LAZARUS ラザロ』の主題歌、カマシ・ワシントンの “VORTEX” がエミー賞にノミネートされたことですね。アニメは苦労が多いわりに報われることが少ないんで(笑)、スタッフみんなで本当に頑張って制作した甲斐がありました。

これはカマシ・ワシントンも嬉しいのではないでしょうか。パートナーのアミ・タフ・ラも、彼が作った最高の音楽のひとつが『LAZARUS ラザロ』だったと言っていましたよ。

渡辺:いやあ、本当に良かったですね。

制作期間も踏まえると、1年以上経ってようやく、ですよね。

渡辺:カマシに限らず、ボノボフローティング・ポインツも、みんないい曲を書いてくれた。サントラになると、すごくよそ行きになっちゃう人もいるんですよ。だから発注するときにも、「いかにもサントラ風の曲、っていう意識は持たなくていい。自分のアルバムを作るつもりでやってくれ」と伝えてました。結果、遠慮せずやってくれたのが良かったかな。

今回のサントラの作り方は、通常と違うんでしょうか?

渡辺:いや、サントラの作り方には2種類あって、映画なんかだと先に画ができてて、それを見ながら作曲するフィルムスコアリングというのがひとつ。でも多くのTVシリーズなんかだと画ができるのがギリギリで、そこから作曲してたら間に合わないんです。だから画がないうちから先に曲をいっぱい作っておいて、それをうまく画にハメていくというのが多い。それで、通常はフィルムスコアリングのほうが高級で立派な手法だとされてますが、今回そういう意味ではフィルムスコアリングじゃないんで通常のパターンではあるんです。

そうなんですね。

渡辺:でも自分の意見としては、フィルムスコアリングってちょっと合いすぎるところがあるんじゃないかな。無難になってしまうというか、曲が画に従属してしまうというか。その分、先に作った曲をはめると、思ってもいなかったような効果が生まれるときもあるし、画に従属しない、バランスを崩しかねないような強い曲を、ギリギリ崩れないように使ったりすることもできる。もちろんこういうやり方は、時間がない、間に合わないってとこから生まれたんだけど、じつはそこに可能性があると思うし、自分はこのやり方もけっこう好きなんです。

なるほど。曲のエディットも、監督自身が手がけてるんですよね?

渡辺:そうです。たまに、「曲がいいとこでビシッとはじまってビシッとうまいこと終わるけど、どうやってるんですか?」って聞かれることがあるんですけど。

思います、それは。

渡辺:たまたまうまくいった、なんてことはあんまりなくて(笑)。苦労して、曲をエディットして合わせてるんですよ(笑)。やっぱり、音楽が映像に合わせてビシッとはじまり、終わるものが好きなんですね。

フェード・アウトではなく。

渡辺:そう。音と画のシンクロの快感って、はじまり方と終わり方が肝心だから、そこに細心の注意を払ってます。作曲家にいつも言ってるのは、「フェード・アウトは禁止」と。

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(細野晴臣との対談は)中学生の頃からのヒーローのひとりですから、ホント嬉しかったですね。2025年のもうひとつのハイライトでした。

今回、音楽をカマシ・ワシントンにオファーしたきっかけは?

渡辺:カマシはスピリチュアル・ジャズを継承しながらも、そこからはみ出すような音楽性を持ってると思うんですよ。ブルース・リーの映画(『ドラゴン 怒りの鉄拳』)の曲をカヴァーしたりしてるしね。やっぱりジャズでありつつジャズにとどまらない音楽性の拡がりみたいなものがある。だから、今回のサウンドトラックの3人はみんな、はみ出している人たちを選んだというか、むしろそのはみ出しの部分に可能性を感じてオファーしたと言えるんじゃないかな。

ボノボの場合は?

渡辺:ボノボは、クラブ系のなかでもひときわ音楽的才能がある人ですね。まあグラミー賞に8回もノミネートされてるぐらいなんで、メロディも書けるし、大半の楽器を自分で演奏できるし、オーケストラと共演したりしてて、普通のクラブ・ミュージックから明らかにはみ出してる(笑)。それで、上がってきたのはすごくいい曲ばかりでサウンド・テクスチャーもすごく凝ってたので、全体の基調になるムードは彼が作ってくれたと思ってます。ひとつだけ困ったのは、どれも切ない曲ばかりなんで、楽しいシーンとかオフビートなシーンの曲はどうするんだという(笑)。

どうしたんですか?

渡辺:スケジュール的に後半の作業になったカマシに「楽しいシーンとかオフビートなシーンもあるんで、そんな曲をどんどん作ってくれ」と(笑)。それで何とかバランスがとれた感じですね。

最初のほうの「悪魔に魂を売っちまった男みたいなのをかけてくれ」というシーンでかかるのがボノボの曲ですよね。

渡辺:あの1話冒頭は、当初はロバート・ジョンスン本人の “Me and the Devil Blues” を使うつもりだったんだけど、まあ大人の事情で実現できずで。……ラザロのターゲットの人物が、最初は聖人のようだったのに悪魔に魂を売ってしまった、と言われている人物で、そんな曲をダグがリクエストするシーンです。それでボノボに「ロバート・ジョンスンみたいな曲を作ってね」と依頼したら、だいぶ驚かれました(笑)。

それはそうですよ(笑)。

渡辺:「簡単に言うなよ」みたいな(笑)。最初は「やってみる」という返事だったんですが、途中で「やっぱ無理」とギヴアップ宣言が来て(笑)。でも「自分なりのブルースならできるので、それでいいかな?」ってことだったので、もちろんそれでいいよと。そうして生まれたのが “Dark Will Fall (ft. Jacob Lusk)” ですね。

ボノボはそれがこのアニメにとって重要なトラックだったと、『別冊ele-king 渡部信一郎のめくるめく世界』でも語っていました。

渡辺:もうひとつの挿入歌、9話冒頭の、街中をHQが歩いてくる長い長いワン・ショットのときにかかる曲、これもボノボにお願いしました。ここの当初のイメージはデイヴィッド・ボウイの “Five Years” だったんですよね。“Five Years” は「あと5年で世界が終わる」という曲で。街の描写があって、最初のほうは普通に見えるんだけど、曲が進んでいくと泣き叫んでる人がいたり、徐々に終末感が出てくる曲。今回は曲調は似てないと思うんですけど、コンセプトはあの曲みたいな感じで、「あと1ヶ月で世界が終わるかもしれない」という曲を作ってくれ、とオファーしました。

それが “Beyond the Sky (ft. Nicole Miglis)” ですね。

渡辺:終末をむかえるかもしれない世界は、一見普通に見えるけども、ほんのちょっとバランスを崩せば狂気をはらんでるということ、そしてここを平然と歩いてくるHQという男も、相当タガが外れた存在だというのを、ワンカットで見せるという冒険的なシーンなんだけど、ボノボはそれに合う良い曲を書いてくれました。

フローティング・ポインツはいかがでしたか?

渡辺:彼はすごい音楽マニアで、共感するとこも多くて(笑)。

ジャズとかソウルとかすごく掘っていますよね。

渡辺:いや、そういう感じだけじゃなくて、エクスペリメンタルなものとか音響系、現代音楽みたいなものまでけっこう全方位で、そのへんが共感するとこです(笑)。Chee Shimizuさんがやってる〈ORGANIC MUSIC〉って店で、レコードを見ながら3人でいろいろ話したときも、「武満徹のなかでどれがいいか」とか、エンニオ・モリコーネがやってた前衛音楽の話とか、そんなマニアック極まる話ばかりで(笑)。

彼にオファーした理由は?

渡辺:フローティング・ポインツもいわゆるクラブ・ミュージックの世界からはみ出すような、ジャンルに収まりきらない才能があるんですよね。ビート打ち込みの人ってイメージがあるかもだけど、音楽学校も出ているからストリングス・アレンジもできるし、生演奏の作品も出してるし、何よりファラオ・サンダースと共演したアルバムがすごく好きで、ぜひオファーしたいなと。今回、ちょっとスケジュール的な問題で新曲は少なかったんだけど、彼も楽しんでやってましたね。

いまはスピリチュアル・ジャズを聴き直していて、思えばこういう盤を全然入れてなかったな~と思ったり。

別冊ele-king 渡部信一郎のめくるめく世界』では、細野晴臣さんとの対談が実現しました。あれから時間が経ってみて、細野さんと話したことはどういう経験になっていますか?

渡辺:いやあ、もちろん自分が中学生の頃からのヒーローのひとりですから、ホント嬉しかったですね。2025年のもうひとつのハイライトでした。いろいろ刺激も受けたし、今後につながっていくといいなと思ってます。

同『別冊』では、人生におけるオール・タイム・ベスト100を選んでいただきましたよね。半年くらい経ってみて、心変わりはありましたか?

渡辺:ああいうのってそのときの気分で選んでるから、後から見ると後悔が多くて(笑)。あれを入れてなかった、これも忘れてたという感じで、毎日後悔してます(笑)。

例えば、いまだとどんなものでしょうか。

渡辺:いまはスピリチュアル・ジャズを聴き直していて、思えばこういう盤を全然入れてなかったな~と思ったり。ちょっと前までは、モード・ジャズ、ポスト・バップと言われるやつを聞き直してて、これがいま聴くと丁度いい塩梅なんです。当時新しいジャズをやろうとした人たちが、フリーにはいかなくてちゃんと作曲されたもので、音の響きとかアブストラクトな構成とかで新しい世界を開こうとした、その感じがいま聴くといいなと思って。いまのエクスペリメンタルとかアンビエントとかを聴き慣れた耳でそういうのを聴き直すと、再発見が多いんですよね。

それはもしかしたら、いまの「アンビエント・ジャズ」的な流れとつながる聴き方かもしれないですよね。

渡辺:そうですね。新しいものだと、コズミック・トーンズ・リサーチ・トリオとか、シャバソン&ケルコビッチとか、アンビエント通過後のジャズって感じで面白いですね。

他に、25年で印象深かった出来事はありますか?

渡辺:世界的に有名な『Ghost of Yotei』というゲームがあるんですが、そのなかの「Watanabe Mode」ってやつの音楽をプロデュースしたことですかね。

それは、どういう仕事なんでしょうか?

渡辺:そのゲームをつくったスタッフが、『サムライチャンプルー』の大ファンらしくて(笑)。それで、彼らの前作のゲームでは、黒澤明監督にリスペクトを表して、「Kurosawa mode」っていうのを作ったらしいんです。モードを切り替えると、白黒画面の粒子の荒い感じで、黒澤映画風になるという。それで今回は、『サムライチャンプルー』にリスペクトを評して、「Watanabe Mode」ってのをやりたいと。モードを切り替えると、音楽がインスト・ヒップホップになるという(笑)。

その音楽をプロデュースしたんですね。

渡辺:そうです。でも、昔の人をそのまま使うんじゃなくて、20年後の『サムライチャンプルー』という感じで、新しい人たちと組んでやりました。Sweet William、mabanua、DJ Mitsu the Beatsマーク・ド・クライヴ・ロウという、全員が初めて一緒にやった人たちだったんですけど、なかなかうまくいったんじゃないかな? と思ってます。

仕事以外では、どんな年でしたか?

渡辺:自分は旅が好きなんですけど、コロナのときにあちこち行けない状況になって、その後も仕事が忙しすぎてなかなか行けなくて(笑)。2025年はやっと一段落したんで、LA、サンパウロ、リオ・デ・ジャネイロ、京都、バルセロナ、NYといろいろ行けたんで、充電にもなって楽しかったですね。

ブラジルにも行かれたんですね?

渡辺:だいたい世界50都市くらいは行ったことがあるんですが、いちばん好きなのがリオ・デ・ジャネイロかも知れないな。3回目ですけど、何度行っても最高です。

リオといえば危険なイメージがあるんですが、どういうところが良いんですか?

渡辺:あの、真の快楽とはですね、危険ととなり合わせなんですよ(笑)。いつ泥棒が来るかわからない、いつひったくられるかわからない。そういう場所では、危険を察知しなきゃいけないから、すごいレーダーの感度が上がるわけです。そうすると人間の感性って研ぎ澄まされるんですね。そういう状態で快楽もやって来るわけです。食べ物はおいしいし、風景も建築物も美しいし、人びとは陽気で優しいし、美女たちは美しいし(笑)、音楽はそこらじゅうに溢れてて、どれも素晴らしいし。

そうなんですね。

渡辺:例えばラパ地区というところにはライヴハウスが集中してて、そういうところに大ヴェテランのアーティストが出てるんだけど、老若男女みんな大合唱するんですね。10代の子まで。DJがまわしてるようなクラブっぽいところにも行ったんですが、そういう場所でもやっぱり大合唱(笑)。みんな昔の、すばらしいブラジル音楽の古典をちゃんと知ってるんです。本当に音楽好きな人たちなんだなって感じました。

なるほど。

渡辺:あの、リオの人たちをカリオカって言うんですけど、基本アバウトというか、いい加減なんです(笑)。時間にもルーズで、現地の大使館の公式の打ち合わせでさえ、時間どおりに行くと誰もいない(笑)。で、1時間くらい経ってようやく人が集まってくるんだけど、誰も文句を言う人もいないし、まあいいんじゃないの、ちょっとくらい遅れても、という適当さで(笑)。それで、カリオカたちがジョークを言ってて「日本人って、打ち合わせに5分遅れただけで “どうなりました?” ってメールしたりするんでしょ」「ワッハッハ、マジかよ!」っていう感じなんです。だいたいの日本人は最初違和感を感じるんだけど、現地に1週間くらいいるとそれに馴染んでくるのね。彼らはいつもおおらかで楽しそうで、貧乏でも人生を楽しんでる。それにだんだん慣れてくるとね、「日本であんなにあくせく働いてたのは正しかったのか?」「なんかストレスためながら暗い顔して働いて、それで人生楽しいのか?」っていう価値観の変革に迫られるんです。

カルチャー・ショックですね(笑)。

渡辺:いい加減であることを日本人は悪だと思うわけだけど、本当にそうなのか? と考えてしまう。そういう経験がしたくて旅に行くわけだしね。

いま渡辺監督は、新しいお仕事をされているんですよね。

渡辺:多くは言えないんですが、短めの作品をふたつぐらいやりながら、次の大きい仕事の企画をいくつも作ってますね。まだまだ作りたいモノがあるんで……。あと『LAZARUS ラザロ』の第二期もぜひ作りたいと思ってるんで、グッズを買うとかサントラを買うとか(笑)、そういう形で支援してもらえたら嬉しいです!

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