「!K7」と一致するもの

vol.71:RIP DIY - ele-king

 RIP DIY、などと書き出すと「また、この話題? ウィリアムスバーグが終わってるのはわかってる」と言われそうだが、DIY世界の近況である。たしかに、ウィリアムスバーグのDIY会場はほとんどなくなった。
 先週(3/5-3/15)、その時代のDIY会場のドキュメントを展示した「RIP DIY」というアートショーが、ウィリアムスバーグのクラウドシティ・ギャラリーで行なわれた。
https://facebook.com/events/412237698952966


ニッキ・イシュマエルと「RIP DIY」(Photo: Nicole Disser)


「RIP DIY」に集まってくる人びと。

 主催者は、自身も写真を提供しているニッキ・イシュマエル。
 彼女は2006年にNYに引っ越すと、すぐにアンダーグラウンド・ミュージック・シーンにどっぷり浸かった。デッド・ヘリングというDIYスペースに住んでいた彼女は、そこが2013年にクローズした後も、仲間と、ヴィジュアルアート展覧会、シアター・パフォーマンス、フィルム上映、小さなライヴなどを催すクラウド・シティ・ギャラリーを始めた(著者のスタジオの1ブロック先!)。
 「(DIY会場が)もちろん永遠に続くとは思っていないけど、この思い出をなんとか残せないか」と考えた彼女は、知り合いの写真家に声をかけ、今回の展示が開催されたのである。
 20アーティストによる30のブルックリンのDIY会場。
 285 ケント、ビッグ・スノウ・バッファロー・ロッジ、デッド・ヘリング、デス・バイ・オーディオ、フィットネス、グラス・ハウス、グラス・ランド、ホセ、モンスター・アイランド、サイレント・バーン(移転前)、パーティ・エキスポ、グラス・ドア、グッバイ・ブルー・マンデー、シークレット・プロジェクト・ロボット(移転前)、ウッザー……。
 全てここ10年間でクローズした会場である。

 ニッキは、デス・バイ・オーディオがクローズした後、何ヶ月もみんなに会わなくなった。このロスをただ受け止めるだけでいいのかと考え、あらためてこれらのDIY会場がシーンに与えた重要さに気づき、ただの写真展ではなく、コミュニティの「再結合」をキュレートした。
 実際、その当時ショーに通った層(最近ではあまり外出しない)、当時は知らないが興味のある層、その友だちなど、現代と過去のDIYを通しての交流場所になった。

 写真からは、今にも動き出しそうな、生々しいライヴ感、台所やリビングルーム、フロアでのぎゅうぎゅうになったバンドとオーディエンスの塊から発せられるエネルギーから、DIYのコミュニティにいる自分たちの存在を再確認しているようだった。

 著者は、ニッキの住んでいたデッド・ヘリング、グラス・ハウス(グラス・ランドの前身)、シークレット・プロジェクト・ロボットは、誰がプレイするなど関係なく、毎日のように通ったので、名前を見るだけで、当時の記憶が鮮やかに蘇る。


オヤジ大集合。ザ・ポップ・グループのライヴ。


@palisades bk


@bohemian grove


@bohemian grove


ザ・ポップ・グループ(photos by Greg Cristman)

 昨日(3/17)、ポストパンクのアイコン、ザ・ポップ・グループを見に行ったのだが、会場は90%おじさん(40アップ)で埋め尽くされていた。
 ザ・ポップ・グループは、タオルを振り回しながら、叫び、踊り、脅した。ショーはエネルギーの塊で、最後の音まで活きていた。オーディエンスの中には、「DIY」時代の人がたくさん来ていた。「最近どうしてる?」と尋ねたら、テック関係の仕事をしていたり、相変わらず音楽をやっていたり、様々だった。ひとつ言えるのは、ザ・ポップ・グループのショーが、80年代~90年代の世代、その時代を生きた人たちのその時代への感謝の場所となり、また、DIY精神の確認の場でもあったこと。
 オープニングのリーガル・ディーガルは、ノーエイジのPPMやテリブル・レコーズから作品をリリースしているし(DIY万歳)、DIY精神は、確実に次世代へと繋がっている。
 ザ・ポップ・グループは、今年インディ・バンドの祭典のSXSWでもプレイする。


曲目表(photos by Greg Cristman)

 「RIP DIY」は、「あの時は良かった」という懐古的なものではない。それぞれのDIYの時代を強調することで、過去のDIYと現在のDIYの間のライン(あやふやだが)を効果的に引く。そして、その記録を、次世代に繋げる、次世代にタイマツを手渡すようなものである。

 著者は最近、パリセーズ、グッド・ワーク・ギャラリー、ボヘミアン・グローヴなどのDIY会場に顔を出している。全てJライン沿いにあるブシュウィックのスペースである。ウィリアムスバーグに、このような場所が少なくなったのは事実だが、アーティスト、ミュージシャンは「RIP DIY」と同じバイブを持つスペースをあちらこちらに作り出している。

 新しいDIY会場は、今までと同じヴァイブの場所、新しいコンセプトから、DIYを卒業する人、やり続ける人、新しい人、やりたい人が集まり、その時代のコミュニティが生まれ、進化していく。
 「RIP DIY」は、DO DIYのリマインダーなのだろう。

Yabby You - ele-king

 昨年、ロンドンに数ヶ月滞在した友人が帰国すると、開口一番、「とにかく、やったらヤビー・ユーがかかっていたんだよね。ラフトレードに行っても、オネスト・ジョンに行っても!」と言った。
 へー、ヤビー・ユー、しかし、なぜいまヤビー・ユー? 

 ヤビー・ユー、または本名ヴィヴィアン・ジャクソンの名前で知られる男は、レゲエのルーツ・アーティストとして、世界のレゲエ・ファンから尊敬されている。
 ジーザス・ドレッドという彼の異名が物語るように、ヤビー・ユーは、キリスト教とラスタが混じった独自の宗教観を持った人だった。彼のグループの名前はプロフェッツ(預言者)というが、ヤビー・ユーの言葉は、リー・ペリー並みの異様なスピリチュアリズムに満ちている
 また、彼のバックで演奏しているのがルーツ・レゲエの最重要ミュージシャンばかりで、しかもまた彼のミキシングの多くがダブの巨匠キング・タビーが手掛けていることも、のちのヤビー・ユー再評価にひと役買っているのだろう。『King Tubby's Prophecies Of Dub 』(1976年)はリアルタイムでは500枚しかプレスされなかったが、その後、何度も何度も、本当に何度も再発されている。

 しかしなぜ……、2010年に彼が他界した後も、たしかに彼の編集盤は出ている……が、いまこそ、たしかにヤビー・ユーなのだ。
 この終末的なムードからか、誰かがラジオでかけたことがきっかけなのか、ロンドンではヤビー・ユーがかかりまくっている。そんな西からの風が日本にも届くかのように、昨年末はロンドンの〈Pressure Sounds〉がダブの観点からの編集盤をリリース。そして、今年に入ってからもヤビー・ユーのBOXがリリースされた。

 『ドレッドの預言~奇妙で不思議なヤビー・ユーの物語』は3枚組で代表曲+未発表曲という決定版。ブックレットには著名なレゲエ評論家、デヴィッド・カッツによる、一冊の読み物とも言えるほど長く詳しい解説もある。このブックレットのために手に入れてもいいほどの内容だ。ファンにはマストのBOX セットです。

ヤビー・ユー
ドレッドの預言
~奇妙で不思議なヤビー・ユーの物語

Pヴァイン

Amazon

ヤビー・ユー&ザ・プロフェッツ
Deeper Roots Part 2
(More Dubs & Rarities)

Pressure Sounds/ビート

Amazon


DISQ CLASH - ele-king

 いや、ホント、すごいですね。何がって、あなた、90年代ハウス/テクノが熱いんです。ジェイミーXXだってプラスティックマンの「スパスティック」をかけて、ベンUFOがDJヘルの「マイ・ディフィニション・オブ・ハウス」をオールタイムの1位に挙げ、ジョイ・ベルトラムとジェフ・ミルズと初期URがミックスされている現在、ジャパニーズ・テクノのベテラン3人、Chester Beatty、DJ Shufflemaster、DJ YAMAが新プロジェクト、DISQ CLASHを結成しました。周知のように、ジャパニーズ・ハウス/ジャパニーズ・テクノは、いま旬です。

 3人は、昨年、クラブでならし運転をしながら、スタジオ・セッションをはじめました。そして、彼らのスタジオ・セッションには、ゲットー・シカゴ・ハウスの伝説=DJ FUNKも参加。こうして、DISQ CLASHの「Turbo Clash featuring DJ FUNK」が完成しました!
 この曲が、すでに海外で話題となって、4月中旬に、Tiga主宰の〈Turbo Recordings〉からリリースされます。3ヴァージョン入りです。超クールなシカゴ系のハウスなので、ぜひ聴いてもらいたいです。
 また、彼らは4月28日の「WIRED CLASH 」@ageHaにも出演します。

DISQ CLASH
TURBO CLASH

Turbo Recordings / Twin turbo

>>DISQ CLASH Oldschool DJ Mix
>>Facebook


ザ・なつやすみバンド - ele-king

 いったん演奏が鳴り止み、あたりがしんと静まり返ったその数秒後、静寂のなかをおそるおそる、ありったけの勇気を振り絞ってフェードインしてくるピアノと、闇夜に光が灯るように鳴らされるスティールパンの一片の調べ。それだけでもうこらえきれないものがあった。楽隊風の表題曲“パラード”を聴いていると、相米慎二が湯本香樹実の小説を映画化した『夏の庭』や、是枝裕和の傑作『奇跡』にて活写された、愛や欲望を知るよりも先に「死」を知ってしまった少年たちの戸惑いや、壊れゆく家族という制度のなかにあって、けっして望んだわけではない自らの「生」のかたちを受け入れていったこどもたちの、あのみずみずしい姿が目に浮かぶようだ。
 そう、MC.sirafuの素朴な言葉によって綴られたリリック――“パラード”や“鳥は舞いおりた”はとくにすばらしい――がすべてを語っているように、優れたポップ・ミュージックは、そこに出会いと別れが、生と死が、あるいは涙と希望があるのなら、その両方を肯定しなければならないのだが、もちろん、そんなことは恐れを知らないこどもにしかできやしないし、そのことを誰よりも理解しているのがこのバンドなのだ(彼女らの2012年のファースト・アルバム『TNB!』は、“なつやすみ(終)”という曲ではじまっていた)。ザ・なつやすみバンドの貴重さとは、つまり、そういうものなのだと思う。

 いま思い返してみても、『TNB!』は真の処女作と呼ぶべきものだった。それはまさしく「こどもたちの音楽」であり、欲望を知ってしまう前の音楽だけが触れることのできる何かに、間違いなく触れてしまっていたのだから。そのことに対して本人たちがどこまで意識的だったのかはわからないが、結果として相当数のリスナーを獲得し、好むと好まざるとにかかわらずある種の欲望を発見してしまったなつやすみバンドは、もし『TNB!』の世界観を待つ人のためにもういちど「こどもたちの音楽」を作ろうとするのならば、『TNB!』に自覚のないまま宿ってしまった奇跡を今度は意識的に/技術的に反復する必要があったはずであり、その困難さはザ・バーズの『ミスター・タンブリン・マン』がニ度は作られなかったことや、ボン・イヴェールが『フォー・エマ・フォーエヴァー・アゴー』の世界を二度と再現できないことと同様である。
 そして、いくつかのシングルが発表されはしたものの、アルバムというサイズでのリリースが噂としてさえ伝わってこなかったこの3年のあいだに、彼女らがけっして未熟さを保存することを目指しているわけではないことを知る機会があった。2013年の9月、群馬県みどり市にある小平の里キャンプ場という場所になつやすみバンドはやって来たのだが、筆者はその日の彼女らのパフォーマンスの素晴らしさを証言するためにならどのような証言台にも立つだろう。ステージに屋根はあるものの、あたりはどしゃ降り、観客は極めてまばら、しかも、このバンドのイメージする音をおよそ再現しているとは言い難いPAとの連携という、おそらくは最悪に近いコンディションのなかで、それでも彼女たちはその身をポップ・ミュージックに捧げていたのだ。筆者はあの姿を言い表すのに、「愛」もしくは「プロフェッショナリズム」以外の言葉を知らない。2014年の苗場で観た片想いと並び、それは忘れがたい夏の思い出となった。

 実際、ついに完成したセカンド・アルバム『パラード』での彼女らは、ビクターのVマークが背表紙に付いている以外は、装丁面も含めて僕たちの知っているなつやすみバンドのままであるものの、それが意識的に、プロフェッショナリズムの賜物としてそこに存在しているという点で、これまでとは少しばかり次元が違う。メロディの媚態や、感情をべたつかせた歌詞の羅列によってではなく、自分たちの作品を理想主義的とも言える純粋さで届けること。前作『TNB!』が8月32日のための音楽だったとすれば、『パラード』は9月1日をいちど引き受けた後の大人たちが作った「こどもたちの音楽」と言うべきだろう。
 もっとも顕著なのが楽曲ひとつひとつの構成力であり、ポップスの定型のなかで中川理沙の声に身を任せておけばすべてが許された『TNB!』の頃とは鳴っている音の要素こそ近いものの、この3年でまったく別のバンドのような進化を遂げている。アルバムを勢いづけるロック・ナンバーひとつをとっても、豊かなストリングスとささやかなファンファーレで幕を開け、組曲的な展開を経てパンクのように疾走する“パラード”は、前作収録の“悲しみは僕をこえて”の素直さとは異質だし、“ラプソディー”における多重コーラスと室内楽的なアレンジ、凝った転調、しかもそれらがポップスとして集約されている手応えには、ダーティー・プロジェクターズ(!)の名前すら思い浮かべた。
 あるいは、これが発表された時にはいささか突拍子もないアイディアにも思われた、さながらなつやすみバンド流の“One More Time”とでもいうべきハウス・ナンバー“スーパーサマーウィークエンダー”も、アルバムの中でしっかりと自分の居場所を見つけている。そして、アルバムはカントリー・テイストな“鳥は舞いおりた”などのなだらかな時間帯を経て、〈TOKYO ACOUSTIC SESSION〉でのセッションとしても公開されていた“ファンファーレ”にたどり着く。なつやすみバンドの歌のなかで一人称を引き受けてきた「僕」が、歌い手である中川その人の姿と重なって見えるような仕掛けになっており、小沢健二の“天使たちのシーン”さながらの淡々としたリズムが彼女の背中をそっと後押しいているのだ。この曲で『パラード』を聴き終えた誰しもが、人知れず「たしかに受け取ったよ」とつぶやくに違いない。ささやかながらも感動的なエンディングである。

 最後に、本作には収録されなかったシングル曲、“サマーゾンビー”について少しだけ触れておこう。この曲は、周知のようにG・A・ロメロの映画『ゾンビ』の設定(街に突然現れたゾンビから逃れるために、生存者たちがショッピングモールに立てこもるというもの)を引用しているのだが、あの短冊シングルは、いま思えば郊外型ポップスの先駆けだったのだろうか。となれば、筆者は彼女たちに「全国イオンモール・ツアー」を期待せずにはいられない。今回のメジャー・デビューでクラムボンや空気公団、リトルテンポのファンにもなつやすみバンドの音楽がくまなく行き渡ることを祈りつつ、地方都市に生きるこどもたちが、愛や欲望を知るよりも先になつやすみバンドの音楽を知る、そんな世界があってもいいと思うから。それくらいのささやかな未来を欲望する権利くらいは、僕たちにもまだ許されているだろう。

DBS presents “Spring Funky Bass”は今週末! - ele-king

 UKブラック・ミュージックのストリート部門で活躍するスウィンドルとロスカが今週末に来日する。
 グライムとジャズ、ソウル、ファンクを繋げたスウィンドルの果たした功績はやはり大きい。2012年のフロア・ヒットとなった“Do The Jazz”と、翌年のアルバム『Long Live The Jazz』では(ともにリリース元は〈Deep Medi Musik〉)、卓越した鍵盤のテクニックとメロディとリズムのセンスを見せた。
 ロスカはリンスFMの看板DJとしてだけではなく、プロデューサーとしても好調で、今年に入り〈Tectonic〉テクノ色が強くなった「Hyperion EP」をリリース。UKファンキーの可能性を押し広げていく姿勢がシーンをリードしている。ちなみに、彼がロンドンで主宰するパーティ〈Roska Presents〉には、本誌で取り上げたピンチやジョーカーたちも出演してきた。細分化が進むUKベース・シーンを繋げる存在としても、ロスカからまだまだ目が離せない。
 東京公演にはPart2Style Sound、Prettybwoy、Hyper Juiceといった日本のベース・シーンの第一線でプレイするメンツが出演する。

DBS presents " SPRING FUNKY BASS!!! "

3.21 (SAT) @ UNIT x SALOON
UNIT:
SWINDLE
ROSKA
PART2STYLE SOUND
DJ RS
HYPER JUICE

Live Painting:
The Spilt Ink

SALOON:
DJ DON
DJ MIYU
PRETTYBWOY
ZUKAROHI
ANDREW

open/start 23:30

adv.3,150 yen / door 3,500 yen

info. 03.5459.8630 UNIT
www.unit-tokyo.com
https://www.dbs-tokyo.com

<UNIT>
Za HOUSE BLD. 1-34-17 EBISU-NISHI, SHIBUYA-KU, TOKYO
tel.03-5459-8630
www.unit-tokyo.com

SWINDLE (Butterz / Deep Medi Musik / Brownswood, UK)
13年に"MALA IN CUBA LIVE"のキーボード奏者としてDBSで来日、単独DJセットでフロアーを狂喜させたスウィンドルはグライム/ダブステップ・シーンのマエストロ。幼少からピアノ等の楽器を習得、レゲエ、ジャズ、ソウルから影響を受ける。16才の頃からスタジオワークに着手し、インストゥルメンタルのMIX CDを制作。07年にグライムMCをフィーチャーした『THE 140 MIXTAPE』はトップ・ラジオDJから支持され、注目を集める。そしてSO SOLID CREWのASHER Dの傘下で数々のプロダクションを手掛けた後、09年に自己のSwindle Productionsからインストアルバム『CURRICULUM VITAE』を発表。その後もPlanet Mu、Rwina、Butterz等からUKG、グライム、ダブステップ、エレクトロニカ等を自在に行き交う個性的なトラックを連発、12年にはMALAのDeep Mediから"Do The Jazz"、"Forest Funk"を発表、ジャジーかつディープ&ファンキーなサウンドで評価を決定づける。そして13年の新作『LONG LIVE THE JAZZ』(Deep Medi)は話題を独占し、フュージョン界の巨匠、LONNIE LISTON SMITHとの共演、自身のライヴ・パフォーマンスも大反響を呼ぶ。最新シングル"Walter's Call"(deep medi/Brownswood)でジャズ/ファンク/ダブ・ベースの真骨頂を発揮したスウィンドル、必見の再来日!

ROSKA (Roska Kicks & Snares / Rinse, Tectonic, UK)
トライバルハウス、ディープハウス、UKガラージ等のエッセンスを重低音でハイブリッドしたベースミュージックの新機軸"UKファンキー" の革新者、ロスカ。08年に自己のRoska Kicks & Snaresから"Elevated Level EP"、"The Climate Change EP"をリリース。彼のトラックはSKREAM、ZINC、DIPLO、KODE9を始め錚々たるDJのサポートを受け、一躍脚光を浴びる。09年にはシーンを牽引するRinse FMのレジデントに抜擢され、そのフレッシュでロウなダブ音源でUKファンキーの台頭をリードする。10年にはRinse Recordingsと契約し、キラートラックとなった"Wonderful Day"、"Love 2 Nite"を収録したアルバム『ROSKA』をドロップ。BBC Radio 1のEssential Mixにも登場し、その存在を確固たるものとする。11年にSCUBAのHotflushからのEP、PINCHとの共作発表、Rinseのミックスの監修等を経て、12年は更なる飛躍を遂げ、Rinseからアルバム『ROSKA 2』を発表、ハウスを基調にグライム、ダブステップ、ガラージを独自のスタイルで昇華する。その後は世界各地でのDJ、ラジオショーで多忙を極める中、TectonicからPINCHとの共作"Shoulda Rolla"、Rinseから"Shocking EP"をリリースし、Roska の快進撃はとどまる事を知らない。Tectonicから先頃リリースされた最新作"Hyperion EP"では新境地も伺え、来日プレイの期待は高まるばかり!


Joy Orbison - ele-king

 この5年、ずぅーーーっと評価され、そして、フロアでもヒット作を出していたジョイ・オービソンの初来日が決まった。UKのドラムンベースが「ポスト」期に入ったときに脚光を浴びたオービソンは、最近は、流行のジョイ・ベルトラム風の作品によってフロアヒットを飛ばしている。寡作でありながら、出るEPが必ず話題作になっているほどの大器だ。
 そして、オービソンと一緒にレーベル〈Hinge Finger〉を主宰するのがウィル・バンクヘッド、言うまでもないでしょう、〈The Trilogy Tapes〉で知られる男である。
 ファッション・ブランド〈C.E〉がお送りする4月のパーティは、この協力UKタッグに加えて、DJノブも登場。
 前売りは3月21日(土)より。当日には開催を記念したC.EのTシャツも販売するそうです。

The Trilogy Tapes, Hinge Finger & C.E presents
Joy Orbison & Will Bankhead

2015/04/24(Fri)
@ Daikanyama UNIT & SALOON

[UNIT]
Joy Orbison(Hinge Finger)
Will Bankhead(The Trilogy Tapes / Hinge Finger)
DJ Nobu(Future Terror / Bitta)

[SALOON]
Uncontact-Tribe(C.E)
Toby Feltwell(C.E)
1-Drink
and more

Open/Start 23:30
Early bird 2,000yen(Resident Advisor only) / Adv. 3,000yen / Door 3,500yen

Ticket Outlets: LAWSON / diskunion 渋谷 Club Music Shop / diskunion 新宿 Club Music Shop / diskunion 下北沢 Club Music Shop / diskunion 吉祥寺 / JET SET TOKYO / TECHNIQUE / DISC SHOP ZERO / Clubberia / Resident Advisor / UNIT / min-nano / have a good time

※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため顔写真付きの公的身分証明書をご持参願います。(Over 20's Only. Photo I.D. Required.)

More Information : Daikanyama UNIT
03-5459-8630 www.unit-tokyo.com https://goo.gl/maps/0eMrY


2015/04/28(Tue)
@CLUB CIRCUS

Joy Orbison(Hinge Finger)
Will Bankhead(The Trilogy Tapes / Hinge Finger)
and more

Open/Start TBA
Door TBA

※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため顔写真付きの公的身分証明書をご持参願います。(Over 20's Only. Photo I.D. Required.)

More Information : CLUB CIRCUS
06-6241-3822 https://circus-osaka.com

■Joy Orbison
2009年にHot Flush から〈Hyph Mngo〉をリリースしデビューを飾ったのち、〈The Shrew Would Have Cushioned The Blow(Aus Music)〉や〈Ellipsis(Hinge Finger)〉、Boddikaとの共作による〈Swims(Swamp81)〉など精巧かつ念密に構築された楽曲を次々とリリースし続ける傍ら、Lana Del ReyやFour Tet、José Jamesといったアーティストのリミックスを手がけている。ハウスや2ステップ、ジャングル、テクノ、ダブステップ、これらの要素が融合し生まれた〈ガラージハウス〉とはJoy Orbisonの作り出した“音”だと言っても過言ではないだろう。レーベル〈Hinge Finger〉 をThe Trilogy TapesのWill Bankheadと共に立ち上げるなど異質かつ独自な動きを行う中、最近ではBBC RADIO 1の人気プログラムである〈Essential Mix〉に登場するなど、トラックメーカー/プロデューサーとしてはもちろんDJとしても高い人気を誇っている。
https://soundcloud.com/joy-orbison
https://www.residentadvisor.net/dj/joyorbison

■Will Bankhead
メイン・ヴィジュアル・ディレクターを〈Mo’Wax〉で務めたのち、〈PARK WALK〉や〈ANSWER〉といったアパレル・レーベルを経て、〈The Trilogy Tapes(TTT)〉を立ち上げた。現在、前述したTTTやJoy Orbisonとのレーベル〈Hinge Finger〉の運営に加え、〈Honest Jon's Records〉や〈Palace Skateboards〉などのデザインを手がけている。2014年10月には、渋谷ヒカリエで行われた〈C.E〉のプレゼンテーションのアフターパーティでDJを行うため、Anthony NaplesとRezzettと共に来日した。
https://www.thetrilogytapes.com

■DJ NOBU(FUTURE TERROR / Bitta)
FUTURE TERROR、Bitta主宰/DJ。NOBUの活動のスタンスをひとことで示すなら、"アンダーグラウンド"――その一貫性は今や誰もが認めるところである。とはいえそれは決して1つのDJスタイルへの固執を意味しない。非凡にして千変万化、ブッキングされるギグのカラーやコンセプトによって自在にアプローチを変え、 自身のアンダーグラウンドなリアリティをキープしつつも常に変化を続けるのがNOBUのDJの特長であり、その片鱗は、 [Dream Into Dream]〈tearbridge〉, [ON]〈Musicmine〉, [No Way Back] 〈Lastrum〉, [Creep Into The Shadows]〈Underground Gallery〉など、過去リリースしたミックス CDからもうかがい知る事が出来る。近年は抽象性の高いテクノ系の楽曲を中心に、オーセンティックなフロアー・トラック、複雑なテクスチャーを持つ最新アヴァ ン・エレクトロニック・ミュージック、はたまた年代不詳のテクノ/ハウス・トラックからオブスキュアな近代電子音楽など、さまざまな特性を持つクセの強い楽曲群を垣根無くプレイ。それらを、抜群の構成力で同一線上に結びつける。そのDJプレイによってフロアに投影される世界観は、これまで競演してきた海外アーティストも含め様々なDJやアーティストらから数多くの称賛や共感の意を寄せられている。最近ではテクノの聖地〈Berghain〉を中心に定期的にヨーロッパ・ツアーを行っているほか、台湾のクルーSMOKE MACHINEとも連携・共振し、そのネットワークをアジアにまで拡げ、シーンのネクストを模索し続けている。
https://futureterror.net
https://www.residentadvisor.net/dj/djnobu

■Uncontact-Tribe
イラストレーター・グラフィックデザイナー。2011年にToby Feltwell、Yutaka.Hとストリートウエアブランド〈C.E〉を立ち上げた。www.cavempt.com

■Toby Feltwell
英国生まれ。96年よりMo'Wax RecordsにてA&Rを担当。
その後XL Recordingsでレーベル を立ち上げ、Dizzee Rascalをサイン。
03年よりNIGO®の相談役としてA Bathing Ape®やBillionaire Boys Club/Ice Creamなどに携わる。
05年には英国事務弁護士の資格を取得後、東京へ移住。
11年、Sk8ightTing、Yutaka.Hと共にストリートウエアブランドC.Eを立ち上げる。
https://www.cavempt.com/

■1-Drink
TECHNO、HOUSE、BASS、DISCOの境界を彷徨いながら現在にいたる。 DJユニット"JAYPEG"を経て現在は個人活動中。 ときどき街の片隅をにぎわせている。
https://soundcloud.com/1-drink


Bob Dylan - ele-king

 クリント・イーストウッドと同い年、84歳のジャン=リュック・ゴダールによる3D映画『さらば、愛の言葉よ』を観て笑ってしまったのは僕だけではないはずだ。あるショットでカメラがパンすると、べつのショットがかぶさったままシークエンスが進行する……箇所で吹き出したのはつまり、「何これ?」という驚きと喜びによるものだった。誰もがこう思わずにいられない……「こんな3D映画観たことない」。半世紀前も新しい映画を撮っていたはずの映画の「神」が、ひとの予想を遥かに超えて奇抜に新しいことをやっているという事実はそれだけで心躍らされるものがある。その観たことのない奇妙なショットはしかし同時に、エイゼンシュタインのモンタージュを遠景で連想させる気もした。

 もう2本映画の話をしたい。ディランをモチーフとしたコーエン兄弟『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』とトッド・ヘインズ『アイム・ノット・ゼア』である。前者に関してももうオチを書いてしまってもいいだろうか? あれは、ディラン登場のほんの少し前の時代のフォーク・シンガーが「あばよ」と告げることで歴史上に小さな点を刻んで退場する映画で、結局のところそこで登場するディランそのひとの存在を逆照射して終わっていた。そして後者は、ディランの生きた時代をいったんバラし、別の人格として提示することでそのキャリアの振れ幅の広さを示していたが、その2本はどちらもボブ・ディランという巨大で、そして掴みどころのないミュージシャンの功績、存在、歴史的意義……といったものを、どうにかしてまとめようとしていたように思う。

 だが、この通算36枚めのアルバム『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』はどうだろう。功績をまとめるなんてどこ吹く風、誰もが予想できない内容だったのではないか……フランク・シナトラのレパートリーのカヴァー集というのは。「なぜ?」というのは前作『テンペスト』のシェイクスピアにも感じたことだが、本作ではそれが上回る。なぜディランだけが、いまなお誰よりも自由なのだろうか?

 21世紀、アメリカのインディ・ロック・ミュージックに心惹かれてきた僕のような人間にとって、それはボブ・ディランと出会い直し続けるような体験でもあった。とくにゼロ年代中盤ごろから次々に現れたアコースティック・ギターを握って弾き語るようなシンガーたちには、祖父のような存在としてのディランが重なって見えるような気がした。ディランがいたから、ディランがいるから俺たちが歌える、というような安心感を彼らは抱いているように見えた。だから僕は『アイム・ノット・ゼア』のサウンドトラックが大好きで、そこでディランの子どもたちや孫たちが父/祖父の歌を敬意と愛情をこめつつ歌っていることは、アメリカのもっとも美しい歴史の流れに思えたのだ。

 けれどもディラン本人はそうした若い世代からのエールもさらっと交わすように、自分の現在の立ち位置も無視するように、飄々と意表をついてみせる。祖父だなんて思うことは許さない。いや、許さないというのは言葉が合っていない……気にしない。関係ない。俺はやりたいことをやる。そんな感じだ。「なぜフランク・シナトラ?」というのは、たぶん僕たちがどれだけ考えても本当のところはわからない……もう50年ほど、そんな風にリスナーを煙に巻き続けてきたひとなのだから。

 けれども『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』はいたずらに聴き手を混乱させるアルバムではなく、それ以上に現在ボブ・ディランを聴くことの喜びを与えてくれる作品である。まず彼自身の深い声による心のこもった歌が聴け、そして一発録りだというラフだが熱のある演奏によって、ロックンロール以前の古い古いポップ・ミュージックが生々しいものとして眼前に立ちあがってくる。TMTが思わず「オカルト」と評するのも頷ける……誰もが忘れてしまったいにしえの魂がここで蘇っているからだ。「フランク・シナトラ レパートリー」で検索すればリストは出てくるだろうし、シャレたカフェでかかるようなスタンダードのカヴァー・ソングならどこでも聴けるだろうが、ここでは、そうしたものが葬ったものにこそ息が吹きかけられている。

 一貫してスロウでムーディーな曲調は最近では『モダン・タイムス』に収録された、いくつかの美しいバラッドを想起させる。たとえば“ワーキングマンズ・ブルーズ #”2”では労働者の生が歌われていたが、ここでは昔むかし大衆が共感したような、人びとの苦難と悲しみが歌われている。何度も聴いたはずの有名なシャンソン“枯葉”の情感にはあらためて引き込まれ、“フル・ムーン・アンド・エンプティ・アームズ”では歌詞のテーマとなっている戦争が生み出した孤独の情景を思い浮かべずにはいられない。ペダル・スティールの甘い響きはそれ自体、豊かではなかった時代のアメリカにおける人びとのささやかな喜びを浮かび上がらせるようだ。終曲となる“ザット・ラッキー・オールド・サン”はひときわ染み入るメロウさに包まれた歌で、そこではまたしても労働者の過酷な日々と、それゆえの祈りが捧げられている。

 ボブ・ディランはフランク・シナトラが歌った歌の向こう側に、その人びとを見ている。歴史に名前を刻むこともなく、生きて生きて生きて、死んでいった市井の人びとを。すべてが上書き更新されていく時代にあって、それは忘れ去られていたがゆえにある新鮮さを伴って響いているように聞こえる。僕たちは若きディランのいた60年代も70年代も本当に追体験することはけっして敵わないが、いまもディランの歌は僕たちが知らなかった風景を見せてくれる。

John Butcher - ele-king

 ジョン・ブッチャーは英国のサックス奏者であり、フリー・インプロヴァイザーである。むろん、そんな説明など、まったく無用だろう。数々の奏法を生み出し、演奏と聴覚の拡張をする彼の名は、われわれ音楽ファンの記憶に深く刻まれているのだから。
 彼こそデレク・ベイリー、エヴァン・パーカーなどのフリー・インプロヴィゼーションの第一世代と90年代以降の音響派シーンを結びつける最重要人物である。昨年にリリースされたロードリ・デイヴィスとの競演盤『ラウティング・リン』も記憶に新しい(クリス・ワトソンが録音を担当)。

 本盤は、そんなジョン・ブッチャーのサックス・ソロ・アルバムである。リリースは日本の〈ウチミズ・レコード〉からで、ジョン・ブッチャーの2013年日本ソロ・ツアーから大阪島之内教会と埼玉・深谷エッグファームでの演奏を収録している。曲は全3曲。それぞれ“Enrai”、“Uchimizu”、“Hamon”という日本語が付けられている。本盤に封入された横井一江のライナーによると、レーベル・オーナーである寺内久が提出した日本の季語などの「夏」を連想させる言葉の中から選んだ曲名だという(このライナーもさすがとしか言いようがない素晴らしいテクスト。本作の空気感を落ち着いた文体で描いている)。アルバムを聴くとわかるが、言葉の響きがそのまま音/音楽に繋がっているような印象なのである。
 録音はチューバ奏者である高岡大祐。高岡の録音は、ジョン・ブッチャーの音によって生まれるその場の空気の振動や空間性を見事に捉えている。フリー・インプロヴァイズの録音であり、同時に、民族音楽の現地録音を聴いているような生々しさや空間性を感じるのだ。

 アルバムに耳を澄ます。音の肌理をなぞるように聴く。音の奔流と空間に没入する。そして、その「間」にある深い沈黙も聴く。すると、ジョン・ブッチャーの生成する音の変化が、少しずつ聴こえてくる。最初は彼の肉体性と演奏が直結しているように聴こるはずだ。呼吸器官から口腔がサックスという装置によって拡張していくさまが手にとるようにわかるとでもいうべきか。ブレスですらも生々しく捉えられた録音がじつに見事である。さらに聴き込んでいくと、その録音は、より広い空間の響きを捉えているように思えてくる。音が生まれ出る空間を感じられれば、今度は、ジョン・ブッチャーの肉体と音は不意に離れていくだろう。旋律が生成したかと思えば、次の瞬間、音の素数へと分解され、結晶のように宙にひらひらと舞う。そうかと思えば、その結晶が、さらに強い意志で明確な音へとトランス・フォームし、予想もつかない新しい「音楽」が生まれ出る……。
 そう、このアルバムの聴取体験は、肉体/空間と音楽/音響の、ふたつの両極を「演奏」という音の線に乗って行き来する稀有な体験なのだ。私たち聴き手の「記憶」へと作用する音である。
 1曲め“Enrai”は、記憶の襞を解きほぐすかのように、深く震動する音の持続からはじまる。サウンドは変化し、その響きは、ときにひとつであり、ときにふたつに変化する。またあるときは地を這うように響き、あるときは軽やかに空を舞う。ジョン・ブッチャーの息吹を生々しく感じたかと思えば、まったく予想できない天空の音を生成していく。26分に及ぶ演奏は一瞬たりとも集中力を欠くことはない。なんという演奏か。なんという音か。そして、演奏の終わり近く、あたかも遠雷のように響く音の衝撃。
 アルバムの演奏に耳を澄ましていると、その音のタペストリーは、同時にサイレンスも深く際立たせていることにも気がつく。音と間。静寂と炸裂。息吹と咆哮。2曲め“Uchimizu”、3曲め“Hamon”と続けて聴くことで、われわれはジョン・ブッチャーがその瞬間に生み出す音と沈黙の連鎖を体感することになる。
 音と沈黙。それはまるで夏の日の記憶に刻まれた、突然の雷のように、私たちのノスタルジアを強く刺激する。英国人であるジョン・ブッチャーのフリー・インプロヴィゼーションによるサウンドが、なぜ私たちの記憶=ノスタルジアを刺激するのか。まったく不思議であるが、同時に、まったく不思議ではない。なぜなら響きは記憶に作用するからだ。メロディよりもリズムよりも、もっと深く、より繊細に、深層に。私たちの音の記憶は、響きのテクスチャーの中に幾層にも折り畳まれているものだ。音の記憶とは鮮明である。同時に曖昧でもある。多様で複雑ですらある。それは芳香=空気の記憶に似ている。つまり本作の演奏は香りのように記憶に作用するのだ。

 フリー・インプロヴィゼーションの技法のかぎりを尽くして、しかし、単なる技法を越え、天空を駆けるような、もしくは空気のような響きの「音楽」が奏でられている。彼のソロ・サックスの音もまた、ひとつの音であり、ふたつの音でもある。本盤においては、演奏者も聴き手も集中という軸を共有することで、より深い鎮静へと導かれるだろう。その響きの揺れと変化に聴覚を全開にすること。ジョン・ブッチャーの音響は、そのことを具体的に示す。そう、「ひとつ」の中に無限の千のプラトーが存在しているのだ。それはひとつの音の中(=複数の音の中に)に、繊細な多層性を聴き取る行為でもある。このサックス・ソロ・アルバムは、そんな豊かな音楽体験を約束してくれる素晴らしい作品だ。演奏、録音、アートワーク、ライナー、すべてにこだわりぬいた傑作である。

Run Dust - ele-king

 春の息吹が刻一刻とそのおとずれを著けくしている今日この頃、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。花の粉にヤラれてズビズバのメガハイでしょうか。それとも新歓コンパの学生やフレッシュ社会人の爽やさに反吐が出る? なんか毎年春が近づくたびにこんなことを言ってる気がしますが、公共スペースに溢れる爽やかさをヘッドフォンで遮断し、苦々しい思いに没入したいあなたにはコレがオススメ!

これまでグノド(Gnod)のメンバーによるレーベルである〈テスラ・テープス(Tesla Tapes)〉や〈オパール・テープス(Opal Tapes)〉など、カルトな人気を博すカセット・レーベルからのリリースが記憶に新しい、ニューヨーク在住のルーク・カルゾネッティによるラン・ダスト(Run Dust)の初ヴァイナル・アルバムが個人的にいまお気に入りのレーベルであるフランスの〈イン・パラディズム(in paradisum)〉よりリリースされる。

同曲のMVはほぼポルノなので埋め込めませんので悪しからず。

エロいあなたは直接バンドキャンプで観てください。トリッピン!


ライヴ・エレクトロニクス(電子楽器による生演奏)によって構成されるラン・ダストのサウンドはもちろんテクノのレコードとしてフロアで十分に通用するものではあるが、そのトラックのヴァリエーションの豊かさ、拘りのなさ、パンク極まるヴォーカルから想起させられる彼のバッググラウンドは確実にテクノではない。そういった意味では以前取り上げた〈トレンスマット〉のレーベル感覚に近い、ゼロ年代後半からのUSエクスペリメンタル・サウンドの旨味を捨てずに現代の電子音楽的感覚に見事に繋げている例だといえよう。

ライヴ未見であるので確実なことは言えないが、おそらくゴミのような機材をとんでもないアイデアを用いて使用し(これこそが僕がいままで見てきたUSアンダーグラウンドのアーティストの底力であると思っているのだが)、ステージを縦横無尽に走りながら叫ぶ退廃的なアクトを勝手に想像している。ノイズ/パワエレ、EBM、ミュージック・コンクレート、エクスペリメンタルをグシャグシャにして邪悪なテクノ、または暗黒ミニマル風に見事にまとめあげている。マスタリングはじつはUSローファイ・シーンの影の立役者でもあったジェイムス・プロトキンで隙無しだ。

Lightning Bolt - ele-king

 フロアにできたひとの渦の上をへろへろの男は笑いながら運ばれ端までいって落ちては立ちあがりまたひとの波にのまれにいった。ふつうモッシュピットといえば、ステージのハードな演奏にいてもたってもいれなくなった観客のおこす癇癪みたいなものだと相場は決まっておるが舞台上に演者の姿はない。かわりに数人のお客さんがぶらぶらしている。音の聞こえるほうに目を凝らすと人垣の向こうにマイクを仕込んだ蛍光グリーンの妙なマスクをかぶった男が歌いながらドラムを叩きのめし、脇にはコンパクト・エフェクターを前にステッカーをベタベタ貼ったベースを抱えこみ赤ん坊をあやしながら折檻するように弾く男がいる。

 私が何度か足を運んだチッペンデイルとギブソン、両ブライアンによる、ロードアイランド州プロヴィデンス、神の摂理を意味する米国いち小さな州の州都からやってきた米国いちさわがしいドラムンベース・デュオのライヴはおおよそこんなふうに進み、彼らは音盤よりもライヴで本領を発揮する連中だと評価はうなぎのぼり、まんざらでもなかったのかライトニング・ボルト、来日のたびに騒々しさはひきもきらない。ところがここには厄介な問題があった。音盤は録音物だということである。脱力めされるな、読者諸兄よ。レコードの誕生とともにはじまった、一瞬ごとに消えてはなくなる音楽と現物支給とのこのあたりまえのジレンマに私は彼らの本音は知らないが彼らほど悩まされたグループはいない。現在の録音技術をもってすれば彼らの曲であってもかなりのところまで再現可能だろう。ところが最新録音機材の分解能は渾然一体となった音の粒立ちは記録できてもライトニング・ボルトの帯電する空間感まではハードディスクでは捉えられない。デジタル・サイレンスはまったくの無音なのである。磁気テープが進化すればよかったのにと両ブライアンの嘆きが聞こえてくるようだ。そうなったからといって彼らの全部を録れるとはかぎらない。それに音楽のよしあしは音質とはなんら関係ない。70年代にパンクはその境地を拓きノーウェヴが80年代に補完し90年代のローファイが脱臼した。ライトニング・ボルトはその21世紀ヴァージョンであり、1999年のセルフ・タイトル作を皮切りに、2001年の『Ride The Sky』からきっちり2年刻みで出した『ワンダフル・レインボウ(Wonderful Rainbow)』、『ハイパーマジック・マウンテン(Hypermagic Mountain)』、やや間を置いた2009年の前作『アースリー・ディライツ(Earthly Delights)』まで、彼らは一貫してインディペンデントな音楽のやり口がインディ・ミュージックと呼ばれていない時代からの流浪の民でありつづけた。その意味でライトニング・ボルトはジャンクの血脈を継ぐオルタナの嫡子でありルインズの後輩であるとともにバズーカ・ジョーのライバルでありホワイト・ストライプスの朋輩であるだけでなくタッジオの年の離れた従兄弟でもある、かもしれない。

 『ファンタジー・エンパイア(Fantasy Empire)』でもその流れは途切れない。むかしとった杵柄をそう簡単に棄てられないということか? 否。ライトニング・ボルトはこのアルバムではじめてちゃんとしたスタジオでちゃんと録った。ちゃんとというのはこれまでがちゃんとしていなかったのではなく、音盤のもつ意味をより実体に適う方向に向けようと腐心したということだ。地元の古巣〈ロード〉を離れ、彼らは今回シカゴの老舗〈スリル・ジョッキー〉と手を組んだ。前作までと聴き較べると音質は各段に向上している。私は音楽と音質は関係ないと書いてしまいましたが、音がよくなってライトニング・ボルトのやっていることが具体的によくわかるようになったのはまるで巌となったサザレ石をひとつひとつたしかめるような、音塊の粒子に手でふれるのに似た聴き応えだった。チッペンデイルのフレーズの組み立てはつまびらかになり、ギブソンのエフェクター捌きが曲のキモであるのがよくわかる。録音のやり方が変わったからといって豪壮なオーケストレーションを施しているわけもなく、カブセは一部あるものの、それもあくまでもライヴでの再現を優先に考えている。ゆえに疾走感は減退することもなく、“ザ・メタル・イースト(The Metal East)”から“スノウ・ホワイト (& The 7 Dwarves Fans)”まで、つねにスピーディにときにダビーつまるところグランジーにライトニング・ボルトは帯電域を広げつづける。偽メタルやらモーターヘッド的なダーティなリフワークやら芸の細かさにもことかかない。日本盤は “ホエア・アー・ユア・キッズ(Where Are Your Kids?)”なるサイケデリックなボートラ入りなので、貪婪なリスナーはこちらをご所望いただきたい。

 ひとつ注意しなければならないのは、音量をあげすぎると家人にスピーカーが壊れたのかと訝られるということだ。それに隣人にも迷惑がかかる。また自宅ではダイヴもモッシュも禁止である。下にお住まいの方に迷惑かかる。戸建てないしは一階にお住まいなら問題ないが、それはいずれ実現するであろう彼らの次のライヴまでとっておくことにしましょう。祈再々々々来日。

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