「Nothing」と一致するもの

Prrrr... hello!! hello!?... - ele-king

 世界レベルで語られているTOKYOストリート・アイコンSk8ightTingを中心にT.Feltwell、Y.Hishiyamaらで奏でるアパレル・ブランド〈C.E〉と、セレクト・ショップの代表格のひとつ〈ユナイテッドアローズ〉が展開する人気ライン〈BEAUTY&YOUTH〉がオーガナイズするフリー・エントランスなパーティが大阪・心斎橋のONZIEMEにて8/30(金)開催される。

 原宿の格好いいレコ屋さんBIG LOVEからアルバムもリリースし、ele-kingにも何度も登場いただいているSapphire Slowsや、〈C.E〉からはスケシンさんトビーさんがDJとして参加(『ele-king vol.10』の特集を万が一読まれていない方はぜひ読んでファンタジー感アップして出かけましょう!!)。そしてグラフィック・デザイナーとしても広く認知される石黒慶太こと1-DRINKさんに、先日の〈TOTAL FREEDOM〉来日公演でもVJをかましていたBECONクルー(個人的に熱視線ちう)と、TOKYOストリート~ベースメントに乱反射するミラーボールの光が心斎橋に降り注ぐこと必至! 一方で地元大阪からはMobbinHoodのオーガナイズやノイズ・ビート・ダウン・バンドshe luv itにも参加するCE$がDJとして参加する。その存在感からてっきり首都圏にて活動していると思われても不思議ではないCE$とのシンクロニシティを、われわれは必ずや目撃することができるだろう。8月に終わりを告げる最終金曜日、大阪心斎橋。エントランス・フリーでもあるこのパーティはExpress Yourself、21st的に記すとExtreme Yourself、なのだ。


■DIAL: HELP!

LIVE:
Sapphire Slows (100% SILK/Not Not Fun Records/BIG LOVE)

DJ:
Sk8ightTing (C.E)
Toby Feltwell (C.E)
CE$ (she luv it/MobbinHood)
1-DRINK
POOTEE (BACON)

VJ:
BACON

DATE:
2013/08/30/FRI/8:00 PM~

ENTRANCE:
FREE (1 drink purchase required)

PLACE:
ONZIEME
Mido-suji Bldg. 11F 1-4-5 Nishishinsaibashi Chuo-Ku Osaka 542-0086
☎06-6243-0089
https://www.onzi-eme.com/




Luke Wyatt - ele-king

〈PPU〉のスリーヴ・デザインや映像作家として人気のルーク・ワイアットがこれまで使ってきたトーン・ホーク名義のセカンド・アルバムを自身のレーベルから、そして、本人名義のデビュー・アルバムをニック・ナイスリーのレーベルからほぼ同時にリリース。いずれもクラウトロックを基本としたもので、非常にフレッシュな感性を縦横に展開している。リーヌ・ヘルやエメラルズのようにノイズ・ドローンを起源に持つ世代とは明らかに咀嚼の仕方が異なり、ヴェイパーウェイヴのような抜け殻モードでもない。クラウトロック・リヴァイヴァルからコニー・プランク的な人工性を抽出し、しっかりと現在のシーンに定位置を見定めている。

 イーノ&クラスターにクラウス・ディンガーが加わったような『ティーン・ホーク』はこれまでの集大成といえるだろう。シャキシャキとしたパッセージで穏やかなメロディを引き立てるあたりは往年のクラウトロック・マナーそのままにも関わらず、ノスタルジーに回収されてしまう余地は与えず、全体的にシャープでさわやかな感性がキープされる。小刻みに反復されるドローンにも類まれなる抒情性が持ち込まれ、それほど音数は多くないのにイメージの広がりも圧倒的。これが本当にアメリカ人の音楽なのかと思うほど人間不在の自然観が伝わってくる。素晴らしい。

 一転して、メビウス&プランクを思わせる『10・フォー・エッジ・テック』はインダストリアルな要素も上手く取り入れた新機軸。これはフィンランドの海運業者から依頼を受けてつくったものだそうで、タグボートが氷を砕いていくときのBGMだかなんだかに使われるものらしい(ホントかなー)。強迫的なメトロノミック・ビートや全体として与えるシャープでさわやかな感触には変わりがなく、ダンス・ミュージックは意図していないのかもしれないけれど、妙なスウィング感まであって、この暑いのについつい体が動いてしまう(......ゲロゲロ)。

"スリー"

 ミニマルとしても目新しいし(とくに"ナイン")、アンディ・ストットとプラスティックマンが合体したような"シックス"が氷を一気に掻き砕くかと思えば、スーサイドを思わせる"フォー"はそれをじわじわと溶かし、ビート・ダウンした"セヴン"もじつにいい。単にダイナミックなだけではなく、相反するような音響効果を仕掛けることで、激しさのなかにも優しさを持たせてしまうところがこの人のセンスなんだろう。いや、もう、降参です。ルーク・ワイアットという人は、けっこう控えめに言ってもクラウトロックの新たなフォーマットを生み出してしまったのではないだろうか。考えてみればOPNに驚いたのがもう3年前。USアンダーグラウンドはとどまるところを知らず、2013年にはアレックス・グレイ、マシュー・セイジ、そして、このルーク・ワイアットをフロントラインに浮上させてきた。

John Frusciante - ele-king

"はみ出る"ための試行錯誤 文:小野田雄

 ジョン・フルシアンテは、そのキャリアを通じて、「独自の音」を追求し続けてきたアーティストだ。レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(以下RHCP)のギタリストとして、そして、ソロ・アーティストとして、はっきりとその「独自の音」を感知できるのは、ギター・サウンドだろう。使用するギターやアンプ、エフェクターの種類やそのプレイ・スタイル、ソングライティグなどの試行錯誤を通じて、一聴した万人に彼の音であることを認識させるサウンド・キャラクターを確立したという一点において、彼の目的はすでに達成されたといえる。

 また、一見すると混沌としているように感じられる作品も彼のなかではチャレンジングなテーマが設けられていて、一時離脱したRHCPに復帰を果たす1999年以降は、ロックの発想やアプローチから離れ、エレクトロニック・ミュージックの発想や制作スタイル、レコーディングにおけるエンジニアリングやプロダクションの知識・経験を自分のものにしようという試行錯誤が重ねられてゆく。たとえば、2004年から2005年にかけてリリースされた6枚の作品は、その直前に制作され、莫大な費用と時間が費やされた『シャドウズ・コライド・ウィズ・ピープル(Shadows Collide With People)』とは真逆のアプローチで、RHCPの活動がはじまるまでの6ヶ月間という短期間に、60年代、70年代のアナログ・レコーディングの技術を用いて6枚の作品を録音するというコンセプトで作られたものだ。それぞれの作品も、アコースティックな『カーテンズ(Curtains)』は60年代後期に作られた8トラック/1インチのテープ・レコーダー、『ザ・ウィル・トゥ・デス(The Will To Death)』と『インサイド・オブ・エンプティネス(Inside Of Emptiness)』は16トラック/2インチのテープ・レコーダーによる録音。また、フガジのイアン・マッケイによるプロデュース、〈ディスコード(Dischord)〉御用達であるインナー・イヤー・スタジオのエンジニア、ドン・ジエンタラの仕事を学ぶために『DC EP』を制作し、『ア・スフィア・イン・ザ・ハート・オブ・サイレンス(A Sphere In The Heart Of Silence)』は、後にジョンの後釜としてRHCPに加入するジョシュ・クリングホッファーとの共同作業で、シンセサイザーやアナログ機器を用いた実験を繰り広げたりと、作品ごとのテーマが設定されていたことは、アメリカの『TAPE OP』誌のインタヴュー記事において、本人と当該作のエンジニアであるライアン・ヒューイットの口から語られている。

 そうしたジョンのアナログ・レコーディング経験を総括した作品が、スタジオそのものをひとつの楽器として捉えて制作された2009年のアルバム『ジ・エンピリアン(The Empyrean)』だ。48トラックのアナログ・レコーダー2台を用いて録音したこの作品は、テープの切り貼りやシンセサイザーをはじめとするアナログ機材で音を加工しながら、現代的なエレクトロニック・ミュージックのサイケデリックな音響やサウンド・テクスチャーの発想を活かしたサイケデリック・ロックを高い完成度で結実させた傑作といえる一枚。そして、この作品でアナログ・レコーディングでの学習に区切りが付いたからこそ、その後の彼はセルフ・エンジニアリングによるデジタル・レコーディングへと劇的な転換を図ったのだろう。昨年リリースされたEP『レター・レファー(Letur-Lefr)』とアルバム『PBX・ファニキュラー・インタグリオ・ゾーン(PBX Funicular Intaglio Zone)』、そして、今回のEP『アウトサイズ(Outsides)』は彼がエレクトロニック・ミュージックやDTMの手法や発想を修得する過程で生み出された習作だ。

 エイフェックス・ツインやオウテカのプロセッシングからインスピレーションを得たり、アシッド・ハウスやドラムンベースの荒削りな部分を補うように耳を傾けてみたり、はたまた、ブレイクコアを代表するアーティストであるヴェネチアン・スネアズことアーロン・ファンクとのセッションを数百時間以上重ねたりすることで刺激された創作意欲は恐ろしい速さで彼にとっての未知なる領域を開拓している。サンプラーやドラムマシン、シーケンサーを複数台同時に走らせ、エレクトロニカ・アーティスト御用達のトラッカー・ソフト、Renoiseを駆使しながら、ロック・バンドの曲作りやレコーディングとは異なるエレクトロニック・ミュージックの発想や制作アプローチを無邪気に学ぶ彼は、しかも、既存の音楽フォーマットに当てはまる、あるいはリスナーを意識した整然とした作品を作るつもりは全くないようだ。というよりも、『レター・レファー』以降の作品から感じられる収まりの悪さは、むしろ、積極的にはみ出してゆくことで何かを得ようという彼の意志の現れと考えるべきだろう。

 本作『アウトサイズ』を幕開ける10分超の長尺曲"Same"にしても、形式的にはブレイクビーツとギターソロを組み合わせた楽曲であるが、彼が曲中で延々と弾きまくるギターはロックのクリシェや手癖から脱却した奏法を模索するべく運指の実験をしているように聞こえるし、リズム・トラックもギターに寄り添うように細かくパターンを変化させており、彼なりの意図があって、制作に相当な時間と労力をかけている。そして、2曲めの"ブレシアックBreathiac"と3曲めの"シェルフ(Shelf)"はともにオーケストラのサンプル・フレーズを用いた連作と思われる楽曲。ドラム・マシーンやイクレディブル・ボンゴ・バンド"アパッチ(Apache)"ほかのドラム・サンプル、アシッド・シークエンス、デルタ・ブルースを思わせるギターや歌の断片などをヒップホップでいうところのメガミックス形式で繋いでおり、彼の意識はサウンドスケープの移ろいに注がれているように思われる。そして、これら3曲ではプリセットを安易に用いるのではなく、モジュラー・シンセサイザーなどを通すことで丁寧に加工されていて、冒頭で述べた通り、この作品においても彼は一聴してジョン・フルシアンテのものであることがわかる独自のサウンド・キャラクターを追求していることは明かだ。

 ただ、問題なのは、筆者のように楽器演奏や機材に明るくないリスナーにとって、それぞれの楽曲で彼が設定したテーマや意図が把握しづらい点にある。さらにリスナーを意識して作品制作を行うこともなく、また、表立ってインタヴューに応えるつもりもない彼の現在のスタンスを考えると、「『レター・レファー』以降の作品は仰々しいオナニーである」という批判は致し方ないだろう。しかし、その一方で制作意図が掴めず、どうにもすっきりしない部分を想像し、補いながら楽しむことができれば、この作品には尽きない魅力があるだろうし、アナログ・レコーディングでの試行錯誤を経て、完成度の高い『ジ・エンピリアン』にたどり着いたように、この先、新たな高みが彼を待っているとしたら、『レター・レファー』以降の習作はその過程を読み解くヒントになるのではないだろうか。そんな推理を働かせつつ、ジョン・フルシアンテの音楽世界は依然としてミステリアスなままだ。


文:小野田雄

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静かな狂気、そしてブルース 文:天野龍太郎

 ジョン・フルシアンテが昨年リリースしたEP『レター・レファー』とそれに続くフル・アルバム『PBX・ファニキュラー・インタグリオ・ゾーン』は、アナログ・シンセの温かくも物悲しい響き、ドラム・マシンないしサンプリングによるせわしないブレイクビーツ、美しいコーラス・ワークで彩られたヴォーカル、そしてロック・ギターの過去と未来をいびつに接ぎ合わせたような変幻自在のギター・サウンドによって構成された異形の作品であった。
 ジョンの最新EP『アウトサイズ』のサウンドは、その延長線上にある。とはいえ、音楽のカタチはより抽象的になり、音と音との間には隙間が生まれてルーズな感覚が滑り込み、エクスペリメンタルな方法論はいちだんと深化している。なにより『アウトサイズ』にはジョンのヴォーカルがほとんどない。『PBX』において中心のひとつを占めていたヴォーカリゼーションはすっかり鳴りを潜め、最終曲"シェルフ"の最後の1分間になってやっと添え物のような歌声が聴けるほどだ。それゆえに、酩酊するわけでも逃避するわけでもなく、ただただ前を見据えるかのような静かな狂気がこのEPには凝集しているように思える。

 10分にも及ぶ"セイム"は、バタバタと落ち着かないドラム・パターン上で途切れることのないギター・ソロが演奏される楽曲で、まさにそういった平静さを保った狂気によって駆動しているかのような異様な緊張感を纏っている。『ジ・エンピリアン』(2009)の"イナフ・オブ・ミー"のソロを拡張したかのようなギター・プレイは、ただひたすらにずるずると引きずって蛇行するようなトーンの軌跡を聴き手に突きつけている。曲が進むにつれモジュレーションによる音の揺らぎが次第にキツくなっていき、ギター・サウンドの変調が頂点に達すると、永遠に続くかに思われた奇妙なギター・ソロはあっけなく幕を閉じる。
 オフィシャル・サイトに掲載されたジョン・フルシアンテ自身による説明によれば、"セイム"は「わたしのプレイを聴いてそれに反応しながらも、同時にわたしが応えられるような確実なアンカーを、通常なら存在する時間差なしに提供してくれる」理想のドラマーによる演奏とギターとの相互作用によるインプロヴィゼーションである。現実的には不可能なこの演奏を実現するため、リピートする2小節のビートに対してギターを演奏したのち、ギター・ソロに対応するようにビートをチョップした、と彼は書いている。それはつまり、『PBX』において掲げた「マシンの知能と人間の知能が刺激し合って、その相互作用によって生まれる音楽」へのさらなる漸近を目指す実験のひとつなのだろう。
 そうなるとこの『アウトサイズ』という作品がなぜ「歌っていない」のか、ひとつ仮説が立てられる。つまり、あまりにも人間的な歌というものを禁欲的なまでに排除することによって、マシンと人間とをより近くへと引き合わせ、その境界を曖昧化しようと試みているのではないのだろうか。

 2曲目の"ブレシアック"は3分にも満たない小曲で、サンプリングとプログラミングによるビートが継ぎ接ぎされた本作中最もアブストラクトな曲だ。次の"シェルフ"はよりファンキーではあるが同様にせわしなくビート・パターンが変化し、両曲ともにフリー・ジャズのドラムを素材としたビートが多く聴こえてくる。『PBX』における大きなトピックだったドラムン・ベースの導入は、この"ブレシアック"や"シェルフ"、あるいは『PBX』収録の"サム(Sam)"のフリー・ジャズ風のビートと突きあわせて聴くとそれほど唐突には聴こえない。おそらくジョンのなかではフリー・ジャズのビートとドラムン・ベースは一本の線で繋がっているのだろう。その間隙を埋めるのが、ファンクであり、アシッド・ハウスであり、ヒップホップのビートなのである。

 しかしながら『アウトサイズ』を一聴して直感したのは、これはジョンにとってのブルースである、ということだった。それはやはり"セイム"の長大なギター・ソロに依るところが大きい。歌はなくとも......やはりギターが泣いているように聴こえるのだ。それは"シェルフ"の中間部のソロも同様である。キリキリとした鋭利なトーンではあるが、そこにはブルージーな哀感が潜んでいる(「驚いたことにブルース・ギターがうまくハマったんだ」と彼は認めている)。
 ジョン・フルシアンテ自身が「プログレッシヴ・シンセ・ポップ」と呼ぼうが、「現代音楽のわたしのヴァージョン」と説明しようが、この『アウトサイズ』というEPは、いびつな形ではあるがブルースというひとつの軸で貫かれている。そう思えてならない。


文:天野龍太郎


SEIHOU
Abstraktsex

DAY TRIPPER

Interview Amazon

 勢いが止まらない! そして夏休みは終らない! 先月インタヴューにてele-kingにも登場してもらったSeihoのセカンド・アルバム、『ABSTRAKTSEX』リリース・パーティーがすごいぞ。ゲストにはUltrademonが参加! Seapunkがモニターを飛び出す! 迎えうつゲスト勢も、tomadからAvec Avecら盟友がズラリと一同に会した豪華な布陣。いま彼らのまわりに何が起こっているのか、目撃するチャンスは今日&明日。今年最高の「陸の海」へと、さあ、繰り出そう!


いよいよ今週! トロピカルなモチーフでファッションのトレンドにもなった10年代のネット/ユース・カルチャーを象徴する #Seapunk のオリジネーター Ultrademonが遂に日本へ初上陸!東京公演では新世代ビートメーカーの旗手Seihoのセカンド・アルバム『ABSTRAKTSEX』のリリパにゲスト出演!!

【Ultrademon Japan Tour 2013】

■8.16 (FRI) @ Circus Osaka with idlemoments
OPEN/START 18:00
ADV 1,500 yen / Door 2,000 yen (+1drink)

LINE UP:
Ultrademon
gigandect
Avec Avec
Terror Fingers (okadada+keita kawakami)
SEKITOVA
eadonmm
doopiio
kibayasi
Alice
?
VJ:
Tatsuya Fujimoto

FOOD:
カレー屋台村山ねこ

more info: https://idlemoments-jp.com

■8.17 (SAT) @ UNIT with Seiho ABSTRAKTSEX Release Party
OPEN/START 23:00 | ADV 3,000yen / DOOR 3,500yen

LINE UP:
[UNIT]
Seiho
Ultrademon
LUVRAW & BTB + Mr.MELODY
RLP
Taquwami
terror fingers (okadada & Keita Kawakami)
tomad
eadonmm

VJ:
ネオカンサイ
Kazuya Ito as toi whakairo

[SALOON]
Licaxxx
Redcompass
Mismi
Hercelot
FRUITY
andrew/Eiji Ando

more info: https://www.unit-tokyo.com


 新世代のラッパーたちよる9つのインタヴューを収録した、巻紗葉『街のものがたり』(ele-king books)が、このたびスタートする音楽トーク・イヴェント・シリーズ〈Songs in The Bookshelf [本棚の音楽]〉第一回で取り上げられることになりました! 当日は著者・巻紗葉(ロールシャッハ)も参加。切れ味するどいゲスト・スピーカー、三田格&矢野利裕両氏との会話のなかで、きっとこの本の新たな魅力が発見されるはずです!

ジュンク堂書店池袋本店で今週末から開催の「編集者が選ぶ本フェア」にはele-kingからも野田・橋元師弟コンビが選書に参加していますが、このフェアはもともと「(写真メインのものではなく)テキストを主体とした批評色の強い音楽雑誌やカルチャー書が売れている」という書店の現場での実感がもとになっています。

そんな状況を鑑みてele-kingにも時折寄稿している音楽書編集者の大久保が、音楽書の新刊を取り上げるイヴェントを立ち上げることになりました。単に本を紹介するだけでなく、本の中で扱われている音源を聴き、また関連する他の書籍なども取り上げながら、著者や識者を招いてお話を聞き、内容を掘り下げつつ、音楽を言葉で語ることの意味、音楽書の面白さと可能性に迫っていきたいと思っています。

第一回として取り上げるのはele-king booksより『街のものがたり』。ここに登場するラッパーたちはそれぞれに強い主張と思慮深さを併せ持った面々が並んでいます。そして黒子として彼らの言葉を引き出すことに徹したこの謎めいた著者は何を思ったのか。

ゲスト・スピーカーとしては矢野利裕さんと三田格さんをお招きしました。今年大谷能生氏・速水健朗氏とともにジャニーズについて考察した『ジャニ研!』を世に問うたのも記憶に新しい矢野さんは、独自に様々なラップ・ミュージックを継続的にチェックしてきたこともあり、また違った日本語ラップ観を持っているはずです。
三田さんはそこまでディープに最近の日本語ラップを追っておられないかもしれませんが、むしろこの本はそういう人にこそ読んでほしい本でもあるし、また日本におけるクラブ・ミュージックの受容をずっと見てきた方ならではの視点があるでしょう。

当日はほかにもここ最近のヒップホップ/日本語ラップ関連書を取り上げて紹介します。会場は壇上と客席の距離がとても近い店なので、来場の方もお気軽にご意見・ご質問いただければと思います。

■Songs in The Bookshelf [本棚の音楽]#1
「文化系のための"日本語"ラップ入門」
『街のものがたり ―新世代ラッパーたちの証言―』をめぐって

https://boutreview.shop-pro.jp/?pid=62135018

[出演] 巻紗葉、矢野利裕、三田格、大久保潤
[日時] 2013年8月19日(月) 開場・19:00 開始・19:30
[会場] Live Wire Biri-Biri酒場 新宿
     東京都新宿区新宿5丁目11-23 八千代ビル2F
    ・都営新宿線「新宿3丁目」駅 C6~8出口から徒歩5分
    ・丸ノ内線・副都心線「新宿3丁目」駅 B2出口から徒歩8分
    ・JR線「新宿」駅 東口から徒歩12分
[料金] 1500円 (当日券500円up)

※終演後に出演者を交えてのフリーフード&フリードリンクの懇親会を開催します。参加費は2800円です(当日参加は3000円)。懇親会参加者には、入場時にウェルカムの1ドリンクをプレゼント。参加希望の方はオプションの「懇親会」の項目を「参加する」に変更してお申し込みください。参加費も一緒にお支払いただきます。
※懇親会に参加されない方は、当日別途ドリンクチャージ1000円(2ドリンク)をお買い上げください。
※領収書をご希望の方は、オプションの「領収書」の項目を「発行する」に変更してお申し込みください。当日会場で発行いたします。
※ご注文者には整理番号をメールでご連絡します。
 お申し込み時に住所をご記入いただきますが、チケットの送付はいたしません。
 当日会場受付にて、名前、電話番号、整理番号をお伝えいただければ入場できます。
※満席の場合は、立ち見をお願いいたします。
※お支払い後のキャンセルは一切受け付けませんのでご注意ください。
※銀行振り込み決済の締め切りは8/16(金)午後3時、カード決済の締め切りは当日午前0時です。

■街のものがたり
著者:巻紗葉
判型:四六判/256ページ
価格:税抜き1900円
発売日:2013年6月28日
ISBN:978-4-907276-01-0

Amazonご購入ページ


FUSHIMING 1st 12"EP "HEAVY MOON EP"が、HOLE AND HOLLANDから7月24日に発売されます。
ALTZ氏、KZA氏、INNER SCIENCE氏、SANDNORM氏がすでにプレイしています。コメントもALTZ氏、高木壮太氏、KZA氏、箭内健一氏から頂いてますので下記ホーランドのWEBにてCHECKしてみて下さい。

https://www.hole-and-holland.com
https://soundcloud.com/hole-and-holland
https://www.jetsetrecords.net/FUSHIMING-HEAVY-MOON-EP/p/724004639262

最近頻度の高い12インチシングルを選びました。


1
Thompson Twins - In The Name Love 12"Dance Extension - Arista

2
Venus Dodson - Where Are We Headed - WB/RFC

3
Sebastien Tellier - Broadway - Lucky Number Music

4
Azymuth - Ta Nessa Ainda Bicho_(Zed Bias 4×4 Remix) - Far Out

5
Blackjoy - Moustache - Yellow

6
Popnoname - Surrounded By Weather Remixes B1 - Italic

7
Torch Song - Prepare To Energize12" - I.R.S

8
Trussel - Gone For The Weekend - Elektra

9
Fernando - Endless Disco - Redux

10
Rharaohs - Island Time 12" - Spinning Wheel

MAMAZU (HOLE AND HOLLAND) - ele-king

ANDROMEDA / DELTA THREE / SUPER X
BLACK SHEEPのCOGEEとCosmic Orgasm Zeal Unit『COZU』や NU PARTY『DELTA THREE』も始動しました。次のSUPER XではFUSHIMINGのHEAVY MOON EPと関西御山発CampingPartyTribe ChillMountainによるChillMountain Classics の W RELEASE PARTYでお届けします!MIXCD"BREATH"も是非チェックしてみてください。
https://soundcloud.com/mamazu
https://mamazu.tumblr.com/
https://twitter.com/_Mamazu_
https://www.hole-and-holland.com/

DJ SCHEDULE
7/29 ふぞろいのbeatたち @ 恵比寿BATICA
8/07 TRAVESSIA @ 神宮前BONOBO
8/10 FRUE -Space is the Place- @ 代官山UNIT
8/16 SUPER X @ 渋谷SECO
8/17 BEACH WHISTLE @ 三浦
8/24 THIRD CULTURE @ 静岡EIGHT&TEN
8/31 11th ANNIVERSARY @ 中野HEAVYSICK ZERO
9/7~8 PARAMOUNT @ 山梨さがさわキャンプ場
9/21~23 CHILL MOUNTAIN @ 大阪荒滝キャンプ場


1
UNKNOWN - BENGA BENGA - PORRIDGE BULLET

2
Sir Victor Uwaifo - Guitar-Boy Superstar - Soundway

3
COTTAM - Ire Works - SOUND OF SPEED

4
Ata Kak - Daa Nyinaa - AFRCAN SHAKEDOWN

5
FUSHIMING - HEAVY MOON EP - HOLE AND HOLLAND

6
DELTA THREE - δδδ - COREHEAD

7
HOUSEMEISTER - CHEERLEADERS - allyoucanbeat

8
The Glitz - Woven - Voltage Musique

9
Stephan Bodzin - Bremen-Ost - Herzblut

10
Collective Machine - El Amor - Moan

Valerie June - ele-king

 昼休みに行くカフェの大将に「今かかってるやつ、誰の曲ですか?」と思わず質問してしまったのは、昨年のAlt-J以来のことだ。
 「ヴァレリー・ジューンの"You Can't Be Told"」と大将は言った。
 「最初に聞いたとき、タランティーノが『レザボア・ドッグズ』の女性版を撮るとしたら、冒頭シーンで"Little Green Bag"の代わりにこの曲を使って欲しいと思った」と笑いながら。
 こんな曲を歌う女の子は、どんなヴィジュアルをしているんだろう。と想像してみた。男たちのバンドをバックに従えて歌う、ロネッツ風のレトロな装いの女子の姿が浮かんだ。だから、メデューサみたいなドレッドロックの髪でギターを抱えて立っているヴァレリーを見た時には、「お。」と思った。
 彼女はジェイク・バグのご指名を受け、彼のUKツアーのサポートをしている。米国テネシー州の出身ながら、契約しているレーベルはニュー・オーダーやダブ・ピストルズのサンデイ・ベストだ。アイルランドのザ・ストライプスも「ヴァレリー・ジューンにはソウルがある」とツイートしていた。このメンフィス在住のブルーズィーな歌姫には、確かにUK、ジェイク・バグ、ザ・ストライプスといったキーワードで括れる何かがある。

             ***********

 英国では、いまだにポスト・エイミー・ワインハウスみたいなことがよく語られる。
 ダフィーやアデルもその流れで出てきた人たちだったが、アデルがバカ売れしたのは、エイミー効果というより、ダスティー・スプリングフィールド効果だったと思っている。英国に住むまで知らなかったが、ダスティーは国民的ディーヴァであり、いわばイングランドの美空ひばりである(もう一人の国民的歌手であるトム・ジョーンズを見てもわかる通り、英国人は黒っぽいノリで歌える白人が大好きだ)。
 で、ダフィーが第二のダスティーになれなかったのは、彼女に社会的偏見を持たれるエレメントが無かったせいだろう。一方、アデルにはあった。ダスティーがレズビアンであったように、アデルはオーヴァーウェイトという、現代の若人にとっては性的指向よりも深刻な十字架を背負っていた。アデルが痩せていたら、彼女は、平均サイズ14号(日本では15号)の英国の女性たちにあそこまで支持されることはなかっただろう。

 ヴァレリー・ジューンは、太っているわけでもないし、白人でもない。ジェイク・バグやザ・ストライプスのような「恐るべき子供たち」でもない(若く見えるが31歳だ)し、UKの人間ですらない。が、iTuneのUKストアでは、三田格さんが坊主頭問題を論じておられたローラ・マヴーラの『シング・トゥ・ザ・ムーン』と並んで、今年上半期のベスト・アルバム10に入っている。ローラ・マヴーラもポスト・エイミー議論で名前が挙がる人だが、彼女はエイミーから酒やドラッグや男(=セックス)といった夜の部分がすっかり抜けて、エコロジー派でオーガニック志向の学校の先生(実際、彼女は中学校の先生だった)になったような、昼間の明るい光を感じさせる。そしてヴァレリーも、エイミーのような夜の歌手ではない。が、こちらは昼間というより、早朝のひんやりと冷たく厳しい光が似合う。

 マザーになるなんて向いてない
 ワイフになるのもまだ向いてない
 男みたいに働いているからさ
 あたしは一生働いてきたからさ

 テーブルの上にはディナーもない
 冷蔵庫には食べ物も入ってない
 仕事に行くよ 後で帰ってくるから
 仕事に行くよ 帰ってくるって言ってるだろう
 男みたいに働いているんだ
 あたしは一生働いてきたんだ

 犬よ あたしは器量良しの女なんだよ
 犬よ あたしは器量良しの姉ちゃんなんだ
 もしもあんたがあたしに何かをくれるっていうなら
 このバカでかい世界のものを何でもっていうのなら
 犬よ そろそろ出て来てもいいだろう
 金持ちの爺さんが Workin' Woman Blues

 最初に聴いたとき、作詞は林芙美子かと思った。最近、早朝シフトの通勤バスのなかで聴いているのは彼女の歌だ。諦念まみれの静かな気合が入る。
 昔ながらのカントリー&ブルーズの歌詞が、ここではきっちり現代にトランスレイトされている。この楽曲を聴いて共感できるのは地べた労働者の女性だけではなく、ミドルクラスの働く女性たちでもあろう。セレブ歌姫たちが「キャリアも男も子供も、女が全てを手にするのは可能なのよ」という夢を売るこのご時世に、「あたしゃ食うだけで精一杯」と歌うディーヴァなんて、まるで『裸の王様』に出てくる「でも王様、素っ裸じゃん」と指摘する正直な子供みたいで、実に爽快ではないか。

              ******

 バンジョーの弾き手でもある彼女の音楽は、フォーク、ブルーズ、ゴスペル、ソウル、ブルーグラスといった言葉で表現される生粋のレトロ・サウンドだが、本人がそれに夢中になっている風でも、「これが新しいんだよ」とはしゃいでいる風でもなく、実に淡々と、まるで自分の世代の音楽であるかのように平常な体温で演奏しているところが、ジェイク・バグやザ・ストライプスといった人々との共通点だろう。
 彼らの音楽には、レトロというより、ヴィンテージという言葉が似合う。ヤング・ヴィンテージとでも呼ぶべきだろうか。若いくせに、妙に渋く、等身大で成熟しているのだ。
 これは不思議な現象だと思う。

interview with John Frusciante - ele-king

俺にとってロック・ギターのソロを演奏することや、優れたロック・ソングを書くことは、考えなくてもできることなんだ。


John Frusciante
Outsides

RUSH!×AWDR/LR2

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 ジョン・フルシアンテは、ご存知のとおり、90年代の音楽シーンをいわゆる「ミクスチャー」と呼ばれた強烈なファンク・ロック・スタイルで風靡し、いまなお支持の衰えないモンスター・バンド、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのギタリストだった男である。欠員を埋める形で中途から加入したフルシアンテは、しかし、バンドに叙情的でエモーショナルな「歌」の力を呼び込み、名ギタリストであるとともに名ソングライターとしての力量を遺憾なく発揮した。この時期からのファンも多いだろうし、バンドを出てソロになってからは多様なミュージシャンたちと関わりながら精力的にアルバム・リリースを重ねており、その求道的なまでの音楽活動に心酔する方も多いのではないだろうか。

 ギタリストとして卓越した技術とセンスを持つ彼に、あくまでギターを弾いてほしいというのは多数の意見であるだろうけれども、昨年リリースされた2枚の作品は、そうした期待からは大きく逸れる、しかし尊敬を持って受け入れられた異色作だった。 『レター・レファー(Letur-Lefr)』と『PBXファニキュラー・インタグリオ・ゾーン(PBX Funicular Intaglio Zone)』。何が異色かといえばこれまでは部分的な実験として取り込まれていたエレクトロニクスを全面的にフィーチャーし、シンセ・ポップやドラムン・ベースに彩られたアルバムだったという点だ。彼がギターをサンプラーやシーケンサーに持ち替えてやろうとしたことは何だったのか? 

 今週発売となる新作『アウトサイズ』発売に際してバルーチャ・ハシム氏が行ったインタヴューから、その点についてほぼ完全な答えを知ることができる。以下、その一部抜粋をお届けしよう。インタヴュー(というか、ほとんどフルシアンテの一人語りである)自体は3万字超の長編となり、また今回の国内盤特典の目玉ともなるため抜粋での公開になるが、RZAやウータン・クラン・ファミリーの若手たちも交えて作られたあのアルバムの次の展開を楽しむ上で、是非とも読んでおきたい内容である。
 ギター・ソロを全面的にフィーチャーしたという10分超の大曲"セイム(Same)"が、こうしたプロセスと逡巡との上に完成したものだと知ると、一層理解が深まるだろう。

エイフェックス・ツインの『アナロード』シリーズは、エレクトロニックな楽器を使ってファンクを進化させていると実感した。

バルーチャ・ハシム:『The Empyrean』のリリース後、『Letur - Lefr』からエレクトロニック・ミュージックを大幅に取り入れるようになりましたが、その理由は?

ジョン・フルシアンテ:俺は、レコードから音楽を学ぶことに人生のほぼ全てを費やしてきた。過去30年間、何よりもそれに時間をかけてきた。そうすることで、いろいろなジャンルの音楽について学ぶことができた。
 レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(以下RHCP)に最後に戻った期間中も、シンセ・ポップ、90年代のレイヴ・ミュージック、ヒップホップ、コンピューターなどを使ったエレクトロニック・ミュージックを聴きながらギターをプレイしていたんだ。そういう音楽を流しながらギターを演奏していくうちに、サンプルやエレクトロニック楽器の使い方が、ギター・プレイとは全く違うアプローチだということが分かった。ギター・プレイヤーは、エレクトロニック・ミュージックのプロデューサーとは違う考え方で曲作りをしているし、そういう音符の組み合わせ方をしない。俺にとってロック・ギターのソロを演奏することや、優れたロック・ソングを書くことは、考えなくてもできることなんだ。チャレンジでなくなってしまった。

 でも過去30年間のエレクトロニック・ミュージックの歴史からは新たなリズム、フレーズ、一小節の分解方法が誕生していて、どれも俺にとって未知の世界だった。俺は熟練したギタリストであったにもかかわらず、オウテカ、ヴェネチアン・スネアズ、エイフェックス・ツインの思考プロセスが理解できなかった。ギターで彼らの曲を再現できても、同じような音楽を自分で作り出すことができなかった。彼らのような音符の組み合わせ方が俺にとって理解不能だった。エイフェックス・ツインの『アナロード(Analord)』シリーズがリリースされたとき、俺にとってはビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』と同じくらい画期的な作品に思えた。これまで自分にとって未知の世界だった新しい音楽的試みが可能だと気が付かされた。俺にとっては新しいタイプのファンク・ミュージックだったんだよ。

 60年代と70年代にファンク・ミュージックが発展して、80年代から90年代はあまりファンクは進化しなかったけど、エイフェックス・ツインの『アナロード』シリーズは、エレクトロニックな楽器を使ってファンクを進化させていると実感した。ファンクの伝統を受け継ぎながらも、それを非伝統的な方法で進化させていた。だから303や202(訳注:RolandのTB-303やMC-202 Microcomposerは80年代に発表され、アシッドハウスの定番機材だった)のような機材を買うまでは、そういう楽器が存在していることすら知らなかった。シンセを使っていろいろな実験をしていたんだけど、シンセのプロにエレクトロニック・ミュージックを作るためにどの楽器を買えばいいか尋ねると、Nord Leadなどの使いやすいシンセを薦められた。買ってみたけど、あまりその楽器にインスパイアされなかった。でも202のようなアナログ・シンセサイザーの存在を知って、数値でプログラミングしてみたとき、とてもエキサイティングだったんだ。俺のメロディ・センスを202で活かすには、自分のメロディに対するアプローチを完全に考え直さないといけないと思った。
俺は202の使い方に慣れてなかったから、いままで思いついたこともないようなメロディを生み出せることがわかった。ミュージシャンとして、俺は同じパターンを繰り返していることに気がつかされたんだ。RHCPのツアーに出たときに、ホテルで退屈しのぎをするためにドラムマシンとシンセを持っていったんだけど、いつもと同じようにヴァースとコーラスの構成に基づいた曲を作ってしまった。そういうパターンから抜け出して、テクスチャー重視のメロディをもっと作りたかった。

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俺は202の使い方に慣れてなかったから、いままで思いついたこともないようなメロディを生み出せることがわかった。ミュージシャンとして、俺は同じパターンを繰り返していることに気がつかされた。

 ポップ・ミュージックとエレクトロニック・ミュージックを比べると、ポップ・ミュージックはモーツァルトに近くて、エレクトロニック・ミュージックはベートーベンに近いんだ。ひとつの焦点となる音楽的要素が前面にあって、その他の要素がその土台になっているのではなく、さまざまな要素が同時に絡み合っているんだ。つまり、焦点となる要素が同時にいくつもあるんだ。エレクトロニック・ミュージックでは、多くの場合ドラムが焦点となっているけど、ロックではヴォーカルが中心的要素なんだ。だからエレクトロニック・ミュージックのなかで自己表現をするには、メロディをまったく違う方法でアプローチしないといけない。
子供の頃に俺はジャズを演奏しはじめた。当時俺はジャズを理解していなかったけど、だからこそ学んでみたかった。俺の考え方と違う音楽だったから、習ってみたかったんだ。そこからジョン・コルトレーン、マイルス・デイヴィスなどの音楽を研究するようになった。そして新たな考え方を学ぶことができた。俺は人生において、そのプロセスを続けているんだ。エレクトロニック・ミュージックの世界に踏み入れることで、新たなアプローチを学べると思った。いろいろな機材に囲まれて、それぞれをプログラミングして、ひとつの機材の再生ボタンを押して、すべての機材が同期されて演奏されることは、俺にとって新鮮だった。とても自由な感覚だったし、自分が全体像のいち要素でしかないという感覚から離れることができた。自分ひとりで全体像を作り出せることがわかった。ただのプレイヤーなのではなく、コンポーザーになることができたんだ。

 バンドの一員としてギターを演奏することは制限が多い。バンドのギタリストとして曲を書くときは、青写真を提供しているだけなんだ。エレクトロニック・ミュージックを作るときは、伝統的なソングライティングとは一切関係ないクリエイティヴ・プロセスに取り組むことができる。そして、抽象的な概念からスタートして曲を作り上げることができる。しかも、自分がそれを全てコントロールし、音そのものを直接的に扱える。楽器のピッチを変えて演奏するだけではなく、音色そのものを変えたり、音色のハーモニーを作り出すことができる。
バンドでは、自分が楽器で演奏したピッチに対して、他のミュージシャンがハーモニーを作り出してくれることを願うしかない。バンドで演奏するときは、ドラマーに合わせて演奏するしかないけど、エレクトロニック・ミュージックではとても緻密にリズムをコントロールすることができる。バンドでは、ドラマーを観察して演奏しないといけないし、ドラマーがスピードを上げたら自分も演奏のスピードを上げて、ドラマーがスピードを落としたらこっちもスピードを落とさないといけない。ドラマーはバンド内でとても権力をもつようになるんだけど、ドラマーは曲を書くわけじゃないから、そこまで音楽的権力をもつのはおかしいと思うんだ。

 ひとりでエレクトロニック・ミュージックを作る場合、自分がドラマーでもあり、全てのパーツを作れるし、音色を加工することができる。エンジニアが自分の理想のサウンドを作ってくれるかどうかという心配もなくなる。エレクトロニック・ミュージックを作ることは、俺にとって音楽的に自由であることを意味しているんだ。そしてさらに言うなら、ロック・ミュージックは本質的にエレクトロニック・ミュージックなんだ。
多くのジャンルのカテゴリーは、現実において理論的な意味をもっていない。たとえば、オルタナティヴ・ロックというジャンルはおかしいよ。ただのロックなんだ。なぜそんな名前をつけたかは理解ができない(笑)。ロックのロジカルな進化の形だっただけなんだ。オルタナティヴ・ロックは、それ以前のロックに対するオルタナティヴ(別の可能性)だったわけだけど、どのタイプの音楽だって、過去の音楽に対するオルタナティヴなんだ(笑)。

エレクトロニック・ミュージックを作ることは、俺にとって音楽的に自由であることを意味しているんだ

 エレクトロニック・ミュージックとロックを全く別のものとして捉えている人もいるけど、回路基盤を作っている人たちがいなければ、ロック・ミュージックは存在しない。ロック・ミュージックは、アンプ、ピックアップ、レコーディング機材、サウンドシステムがなければ存在しないわけだから、エレクトロニクスに依存しているんだ。長年エレクトロニック・ミュージックを作って、エレクトロニック・ミュージックを研究した結果、全く違うアプローチでロック・ミュージックを聴けるようになったんだ。最近はロック・ミュージックを聞くと、エンジニアの手法やレコーディングされたルームの特質も聴くようになった。楽器の本来の音とそれをどうやってアンプに通したかなども聴くようになったんだ。そういう意味で、ロック・ミュージックはエレクトロニック・ミュージックとひとつなんだ。俺のなかのロックの側面が、徐々にエレクトロニック・ミュージックな側面と統合されているんだ。

 たとえば『PBX』にはロック・ソングが入っているけど、抽象的なエレクトロニック・ミュージックやジャングルのようなアプローチでプロデュースしている。そういう手法で曲を作れるなんて想像もしていなかった。エレクトロニック・ミュージックの作り方を学んでいるときは、そういうことも考えていなかった。いまは、ひとつのジャンルのなかで作業しているという感覚が一切ない。あらゆるスタイルの音楽を組み合わせられるし、自分のなかのどの音楽的要素も自由に取り入れられる。20年前の自分の音楽的要素も、10年前の自分の音楽的要素も取り入れられる。俺と音楽の間に隔たりがないんだ。

 オーケストラやロック・バンドでは、音楽とミュージシャンの間に何らかの壁が必ずある。たとえば、作曲家が作品を作曲しても、指揮者がいて、オーケストラがあって、自分の望みを叶える状況的な問題もあるかもしれない。エレクトロニック・ミュージックでは、作曲家が完全に解放される。自分の頭のなかで聞こえた音を実現する上で、他者に依存する必要が全くなくなるからなんだ。それにリアルタイムで曲を作りながら聴くことができる。バンドのために曲を書いてから見せる必要がないし、バンドが実際に演奏してどういうサウンドに仕上がるか待つ必要もない。クリエイトする行為と、リスニングの行為が同時に起きるから、それは俺にとって最高の自由を意味するんだ。俺がエレクトロニック・ミュージックを作るのは、最も自由な音楽だし、音楽を作る最も完全なアプローチだからなんだよ。

本リリースにあわせて収録曲"シェルフ"の歌詞をプリントしたTシャツも販売されるようだ。これまでにもジョン・フルシアンテ関連のアイテムを扱ってきたサイトであり、今回のTシャツもこのAnatato Watashino Delivery限定商品。他での販売予定はないという。

 https://www.anatato-watashino-deli.com/

interview with Buffalo Daughter - ele-king


Buffalo Daughter
ReDiscoVer. Best, Re-recordings and Remixes of Buffalo Daughter

U/M/A/A

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 僕が1994年にele-kingを作ろうと思った動機には、テクノやダンス・カルチャーにハマったことも大きいが、それ以上に「こういう音楽もあるんだ」ということを主張したかったというのがある。多くのメディアは売れているものを中心に扱う。しかし、わずか100人しか聴かないような音楽にも賞賛に値する、素晴らしいものはある。少数派の意見にも耳を傾けよ。僕は変わり者が好きだ。そう主張したいだけで、ポップとアンダーグラウンドのどちらが優れているかなどを競いたいわけではない。
 バッファロー・ドーターは20年前から今日にいたるまで、アウトサイダーとして存在し続けている。TR303と「アシッド・トラックス」に寄せる多大な愛情が、変わり者をこよなく愛するというこのバンドの性格を物語っているだろう。つまり、バンドの音楽には、クラウトロックにも似た、ロックに対する独自な解釈が加えられているわけだが、その独自なものとは、コーネリアスやスマーフ男組、インセンスのように、さまざまな音楽に感化された創造中枢によって吐き出される。
 この記事は、バッファロー・ドーターの結成20周年を記念してリリースされるベスト盤『ReDiscoVer. Best, Re-recordings and Remixes of Buffalo Daughter』のために企てられたものだが、結局、たんなる雑談のようなものになってしまった。アルバムの内容についてはバンドのホームページ(https://www.buffalodaughter.com)を参照して欲しい。こんな記事を書いておいて恐縮だが、魅力的なリズムと綺麗なハーモニーとユニークなアイデアをもったバッファロー・ドーターの音楽にひとりでも多くの人が興味を抱いてくれたら幸いである。

ライヴをやってたんですけど、まずまったくお客さんの反応がないんですよ。ポカーンとして見てるみたいな。自分たちとしてはすっごく楽しいことをやってるんだけど(笑)、どうしてかなっていうのはずっとあったんだけど。「ウケないね、やっぱり」みたいな。

ベスト盤っていうと、古典的な意味ではシングルの編集盤ですよね。あるいは昨今だと、たとえばオリジナル盤ができなかった場合に契約上出されたりであるとか、時代によってベスト盤の意味合いも違ってきてると思うんですけど、今回バッファロー・ドーターがベスト盤っていうときに何をもってベストとしているのか、まず教えてください。

シュガー吉永:ベスト盤っていうからあれなんですけど、記念盤ですよ、20周年の。わたしたち的には。でもなぜベスト盤っていう話になってたかっていうと、ニックが言い出したんだけど。これの選曲をしてくれたひとが、「俺が選曲するよ」って言ってくれて、で、「ベストな選曲をする」って言ってたからベスト盤って呼んでますけど、最終的なわたしたちの気分的には20周年記念盤。

じゃあ、その選曲の基準っていうのは、そのニックさんに丸投げで。それはそのひとの耳を信用しているっていう?

吉永:そうですね。

それはどういう意味で信用してる?

吉永:信用してるっていうほど大げさなものでもなかったのがひとつあって。だってどんな形でも選ぶひとによって違うから。わたしたちが選んでも違う選曲になったし、とにかくいろんなパターンの選曲があると思ったなかでニックさんがいいなと思ったのは、日本人が選曲するよりも日本人じゃないひとが選曲するのがいいんじゃないかというのがまずひとつあったんだけど。それを誰がやる? っていうときに、ニックさんが「俺がやる」って手を挙げてくれたのが大きい(笑)

なるほど。ニックさんっていうのはどういう方なんですが?

吉永:ニックさんはBBCのレディオ3とかでDJやってるんですけど、選曲家の方で。

レディオ3ってクラシック専門じゃなかったでしたっけ? 

吉永:ニックさんの番組はインターFMでやってますよ。いい感じですよ。

たとえばどんな傾向の方なのかとか......。

吉永:......それはちょっとググっていただいて(笑)。

(笑)

吉永:ニックさんはとにかく音楽の幅が広い。で、元々iTunesの立ち上げのときに関わってるひとだったり。

弘石(U/M/A/A):野田さん、会ったことあると思います。ニック・ラスコムっていう、日本の先端の音楽をUKで紹介する番組やレーベルをやってた方です。

日本の音楽事情に詳しい方なんですね。なるほど。日本人じゃなくて外国人に頼んだっていうのは何か大きい理由があってのことですか?

吉永:それは世界発売したいと思って、日本人観点で選ぶよりは、そういうほうが面白いかなと思って。

なるほど、やはり世界観点というのはこだわりがあるんですね。

吉永:こだわりっていうか、最初のスタートが日本だけだと受けないから、海外でも出せばそれなりの数になるんじゃない、っていうのがあるから。日本だけで大成功できるバンドだなって思ってたらそんな必要はなかったんだけど。っていうことですよね(笑)。

20周年に対してはどんな想いがあるんでしょう? 

吉永:20周年でベスト出そうよって言ったのは、そもそもは大野なんです。

大野由美子:わたしが参加したことのあるほかのバンドで、20周年だからベスト盤出しますよっていうのを聞いて。「あ、20年でベスト盤出すんだ」って思って(笑)。「あー、いい区切りになるんだな」と。そこはゴージャスに3枚組かなんかでやってて。「へー、これ出すの大変だったんだろうな」と思ってて、で、「うちに置き換えたらすっごい大変そう」とか思って(笑)。でも、うちは前のアルバムとかも全然手に入らないものばっかりなので、そう考えたら全部を出すきっかけを作れるかもしれないと思ったんですよね。ベスト盤を出すと言うよりは、揃えて聴ける状況にはしたいなって。それまでちょっとずつ権利のことで動いてたから、余計にそう思ったんだと思いますけどね。

バッファロー・ドーターが20周年っていうのがなんか、妙な違和感があるというか(笑)。あんまり20年経った気がしないような感じがするんですけど。

吉永:それはだから、大野が気がついたんです。みんな気がついてなくて。それも友だちのバンドで20周年を祝っていたひとがいたから、「あ、そう言えばわたしたちも来年そうだわ」と思ったらしい。

大野:それだけなんですよ。たぶん、それがなかったら気づかないで2013年始まってたかもしれない。

山本ムーグ:なんか、バンドのなかにいると台風の目みたいなもんで、中心は無風なんですよ。20周年とか10周年とか、周りがわりと大騒ぎするんですけど、10周年のときなんかはあんまり何も感じてなくて、結局大したことやってないんですよ。で、今回も心から「20年経ったからここで楔を打っとかないと!」っていうのはぜんぜんなくて。たしかに周りの方は「20周年だから何かやっといたほうがいいよー」って感じで。感覚的にはそんな感じだと思います。

なるほどね。ちなみにニックさんの選曲についてはメンバーからは何のリクエストもなかったんですか?

吉永:最初見たときに、「あ、こういう選曲かー」っていうのはあったんですよ、正直。3人ともに。というのは最近自分たちでもあんまり聴いてない曲とか、ライヴではまったくやってない曲ばっかりで。

大野:ばっかりとは言わないけど(笑)。

吉永:ばっかりですよ! "A11 A10ne"とか"Cyclic"とかは最近のアルバムの曲だからまあやってますけど、ほかの曲は全然やってないじゃないですか。やってる曲挙げてくださいよ。

大野:"Dr. Mooooooooog"だけかなあ。

吉永:その3曲以外はやってないわけなんですよね。だからおおーと思って。で、「じゃあ聴いてみるか」って、並べて聴いたら完璧だったんですよ。その選曲術が。さすがと言わざるを得ないんですけど。これは素晴らしいと思って。だからそのまま素直に受け入れたんですけど、そのときは"LI303VE"が入ってなくって。最初のやつ。で、その曲だけ20周年記念という気分のわたしたちとしては、最初にできた曲なのでそれは入れたいなーって話をしたら、「あ、忘れてた忘れてた」って言ってそこに入れてくれたんですけど。

シュガーさんが日本で売れないからパイを集めるために世界で出すしかなかったってさっきおっしゃいましたけど、そのバンドの考え方というか、見切りのつけ方というのは、いまのお話だとすごく早い段階で決まってたってことですよね。20年間やっているなかで、サウンド的な実験をしながら日本語のことはあんまりやってないじゃないですか。

吉永:まあ初期はありますけど。

でも、あまりやってないっていうのはその辺に関係しているのかなって思うんですけど。自分たちのなかで、世界のほうがやりやすいって見通しがあったんですか? それとも、日本では限界があるからっていう?

吉永:いや、自分たちのなかで変な自信があったのが、わたしたちが好きな音楽が......たとえばルシャス・ジャクソンとかすごく好きだったんですけど、そのときに妙な親近感があって。このひとたちと私たちってまったく同じ感覚でやってると思ったんですよ。変な話だけど。そんな風に思う音楽がほかにもいろいろあって、で、そうやって自分たちの音楽を作っていて。ライヴをやってたんですけど、まずまったくお客さんの反応がないんですよ。ポカーンとして見てるみたいな。自分たちとしてはすっごく楽しいことをやってるんだけど(笑)、どうしてかなっていうのはずっとあったんだけど。「ウケないね、やっぱり」みたいな。日本では。でもこんな感覚をルシャスたちも持ってるし、ほかのバンドも持ってるから。それが好きだ! っていうひとは数少ないかもしれないけど、各都市に絶対にいるに違いないと思って。あとは足し算だなと思って。その世界中の少ない人数を合わせれば、10ずつ集めて10都市あれば100なんだから。

(笑)なるほど。

吉永:っていう、変な確信はあった。こういうのが好きなひとは少ないけど絶対にいるんだからと思って。

日本でそういう考え方ができるバンドって当時はまだいなかったですからね。

大野:あとはそう、お客さんに外国人がだんだん多くなってきてたっていうのもあったのね。前やってたバンドは日本人しか来ないし、わたしたちも普通に日本語で日本のロックをやってるみたいな感じでしたけど、行き詰まりを感じてなくなったわけで。で、次新しいことを始めたら、なんか知らないけどやるたびに外国人が増えてる気がすると思って。日本人だけって思わないで全世界のひとってことを考えたら、そんな悩まなくたっていいんじゃないって。

おお、前向きですね。この20年で時代も環境も変わって、音楽だけでなくいろいろ変わったと思うんですけど、この20年間で一番意識している自分たちの変化ってありますか?

大野:それぞれあると思うんだけど、このバンドをやってて思ったのは、好きでやっててアメリカ・ツアーなんかもやるようになったんだけど、じつはすごくつらかったっていうのがあって。あんなにつらい想いをしたのは人生で初めてだったから。あれを乗り越えられたから、いまはわりとどんなことでも大丈夫だなと思えるようになったっていうか。

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うちはアルバムとアルバムの間隔が長いじゃないですか。だって20年もやってんのに、6枚しか出てないってさ(笑)。でも意図してそうやってるわけじゃなくて、やっぱり完成形が見えるまでに時間かかるものがあったりとか、あと誰かがバッファロー・ドーターやる気分じゃなかったりとかね。

なるほど......はははは。どうですか、ムーグさんは。変わらない部分ももちろんあると思うんですけど、この20年で変わった部分はものすごく変わったと思うんですね。それこそ音楽のリリースの仕方にしてもそうだし、メディアに関してもそうだし。変化ってものを感じるようなところっていうのは。

山本:社会状況とかメディアのあり方とかっていうのは本当にすごく変わったと思うんですけれども、僕が改めて思うのは、音楽の力を再認識してますね。アナログ・レコードがCDになったり、CDがデジタル配信になったりとか、またアナログがそれと同時に復活したりUSBでリリースしたりとか、容れもの自体は変わるんですけど、やっぱり音楽の力っていうのは変わってないって思ってるんですよ。消費のされ方で軽く扱われる音楽もたしかに多いとは思うんですけど、誠実に作ってそこに込めるものを込めた音楽っていうのはメディアがどうあろうともやっぱり僕は伝わると思うんですよ。だからそれはたんにメディアの技術革新であって。
 いっぽう社会状況を見ると、昔平和で好景気だったなと思うんですよ。それがどんどん戦争がほんとに現実的になってきて、しかも地震もあったし放射能問題もほんとリアルに迫ってきてて、平和な時期は終わったんだろうなと思うんですけれども。そこでも音楽の重要性って出てきてて、なんかみんなすごくミュージシャンの発言を聞きたがるじゃないですか。ミュージシャンが何か発言すると、すごくメディアも取り上げるじゃないですか。斉藤和義(さんが「あれはぜんぶ嘘だった」っていうのを素朴な気持ちで上げたら、まあ賛否両論ありましたけど、ものすごく拡散して、結局はそれが支持されてると思うんですけれども。あとは国内だと、忌野清志郎さんのかつてのタイマーズなんかがすごく再評価されて、伝説のミュージシャンみたいになってるじゃないですか。あと教授なんかもすごく精力的に動かれてて、そこに下の世代がいっしょに何かをしたりとか。その一番上にはオノヨーコさんがいらっしゃると思うんですけど。僕らはたまたまハリウッド・ボウルでやったときに、「ぜんぶ繋がったな」と思って。ヨーコさんがいらっしゃって、YMOや小山田くんもいてて、僕らとチボ・マットがいて。だからメディアが変わっても音楽は変わらないし、世のなかがこれだけ危機的状況だと音楽の意味っていうのがすごく問われてるから、そこでちゃんと作っていればやっぱり音楽ってすごく評価されると思ってるし、自分たちもそこはすごく真剣に作ってますね。

なるほど。

山本:だからそれは、年を経て音楽に携わって良かったと思ってるし、自分はいい音楽を作ってきたっていうちょっと誇りみたいなものを感じてますね。

僕はそこまで前向きな気持ちになれないんですよね。たとえばいまは売れるものが売れる時代だって言われるんですね。90年代は売れないものも売れたんですよ。でもいまは売れるものしか売れない。だから売れるとみんな買うんですよ。というのがひとつある。音楽の力はあるんだろうけど、録音された商業音楽にもあるのかどうか。

山本:たとえばダンス・ミュージックって、ある意味消費されることを前提に作ってるじゃないですか。

はい。

山本:リニューアルがダンス・ミュージックの命っていうか、たとえば2年前のダンス・ミュージックをありがたがって聴くひとって少ないと思うし、つねに先端先端をリニューアルしていくことがダンス・ミュージックの使命だと思うんですよ。ここ数年はね。そういうものが消費されて、そこに音楽の力を感じないのは僕もそうなんですけど。それは僕も音楽本来の力じゃなくて、あれはああいうものなんですよ。ただやっぱり、いわゆるダンス・ミュージックと言われているなかでも、僕はリッチー・ホウティンなんかは――。

ムーグさんが、ホントに好きですね。

山本:やっぱりすごく深く見てて。曲のタイトルでもすごく共感できるところがあるんですよ。PVでタルコフスキーの映画をサンプリングして作っているやつがあるんですけど。

へえー。

山本:彼はすごくしっかりしたメッセージを持ってると思うし、それはいまの時代にちゃんと発信していると思ってるんですけど。まあ、リッチー・ホウティンがすごく面白かったのは数年前なんですけど。いまも、たとえば昨日シュガーで聴かせてもらったボーズ・オブ・カナダの新作なんかはいまの時代に対して、寡黙ですけどちゃんとメッセージしているんですよ。

まあそうですね。

山本:それは言葉で言わないで、音に込めてるんですよね。それがやっぱり音楽の力だと思うんですけど。あとウェブの使い方もすごくスマートで機能的だと思うし、ボーズ・オブ・カナダが僕はすごくいいと思いますね。まだ買ってないですから言えないんですけど、ウェブはざっと見て、すっごいわかりやすいなと思ったし。

なるほど。

山本:あとやっぱり、ダフト・パンクの新作とかも、まあいろいろあるんですけど、僕はダフト・パンクはすごく力を持ってるひとたちだと思いますね。彼らはメッセージはあんまり出さないけど、どっちかって言うとこう――。

僕はあれが売れるのは悔しくてしょうがなかったですけどね。

(一同笑)

なんかね......、ファレル使ってナイル・ロジャース使って、お金かけてディスコ・クラシックやって、まあいいんですけど(笑)。

山本:彼らはメッセージというか、ファンなんですよね。音楽の楽しさなんですよ。それはそれでひとつのあり方だと思って。......いいですよ、それで。

(一同笑)

山本:ただ僕はルーツとしては、世代的にパンク直撃だったんですよ。76年。それこそピストルズ超ハマって、で、ニューヨーク・パンクも好きでしたけど、最初はやっぱりロンドン・パンクがあったので。ハウスのときになってKLFとかコールド・カットにすごくハマったんですよ。そこはやっぱりイギリス人ならではのパンク・スピリットを感じたし。とくにKLFは超ハマってて、いまでも大好きですけど。ダフト・パンクはそれに比べると、やっぱりフランス人だし、あんなにポリティカルじゃないですけど。やっぱりブリティッシュ・パンク、ロンドン・パンクが好きですね、精神的には。

KLFといえば、ビル・ドラモンドの本を8月末に出しますよ

山本:ほんとに? うわ、楽しみ!

翻訳はほぼ終わってるんですけど。すっごい面白いですよ。

山本:でしょうね。

すっごい面白いけど、売れんのかなーと思って(笑)。

山本:でもそれは出す意味はすごくあると思いますよ。彼は『ザ・マニュアル』っていうのも出しましたよね。あれも僕はすごく好きで。

僕も大好きです(笑)。

山本:だってKLFっていちいち言うことが格好良くて。

その本はビルが自分で書いているので、どちらかと言えば格好悪い話が多いですけどね。KLFが作品を最後に出したのは......は「ファック・ザ・ミレニアム」が最後だよね? 弘石くん。

弘石(U/M/A/A株式会社代表):90年代後半に、2K 名義でリリースしたんですよね。

山本:ヒロシくんって呼ばれてるんだ?(笑)

いやいや、弘石くんです!

(一同笑)

お金を燃やしたりね。

山本:ちょっと現代美術なんかもあるし。

ていうかね、ビル・ドラモンドって、思っていた以上にアートのひとでしたね。あとね、ビルの一番の影響。「このバンドに比べたらローリング・ストーンズなんて酒場のハコ・バンドにすぎない」って言うぐらい大好きなバンドがあって、それがレジデンツなんですよね。

山本:すごいですね!

そうなんですよ。で、エコー・アンド・ザ・バニーメンのツアー中に、マネージャーだから付き添っていかなきゃいけないのに、リヴァプールにレジデンツが来るって言ってライヴを観に行ってるんですよ。83年ぐらいに。良い話でしょ!

吉永:へえー。

山本:......今度、飲みましょ。

そうしましょう。

(一同笑)

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いまのマイブラの受け方っていうのは明らかに、暗い時代のなかで切ないけど......でもすごくフィットするんですよ。マイブラのあの感じが。フィッシュマンズの受け取られ方とちょっと似てるっていうか。

いや、ダフト・パンクはよくできてるなと思うんです。クオリティ的にもマーケティング的にも。とくに最近はダンス・カルチャー自体が専門化しすぎちゃっているんで、やっぱり途中から入るとついて行けないところもあるんですよ。アシッド・ハウスなんかは知らないひとがぱっと聴いても、とりあえず衝撃を受ければ入っていけたけど。でもいまはすごく細かく、たとえばルーマニア・ミニマルとか、ルーマニア人に罪はないですけど、ポスト・ダブステップとかそうだけど、それを取り囲むマニアのサークルがあって、あちこちで小宇宙化が進みすぎちゃってるし、EDMみたいな下世話なモノも多いから、ダフト・パンクが高価なディスコを打ち出してくると、そっちをみんな聴くのは自然だと思いますよ。スターダストとか、彼らは元々ディスコ愛が強かったし。ただ、日本で、売れるものしか売れないっていう状況はよくないと思っていて。90年代の日本の良さって、売れないものも売れたっていうところでしょう? そういう意味では、ムーグさんほど楽観的にはなれないところもあるんですよ。

山本:なるほど。ダフト・パンクの意見は僕説得されたんで......認めます。

ははははは。

山本:そんなに素晴らしくはないです、たしかに。ボーズ・オブ・カナダに比べたら、なんか軽い感じはします。

大野:(笑)

そうですね、ボーズ・オブ・カナダはディープですね。

吉永:ボーズ・オブ・カナダはさ、ハラカミくんがけちょんけちょんに言ってたじゃない? あれはなんでなの?

やっぱり、悔しいからじゃないですか。あんな評価されて。

吉永:(笑)それだけ? なんかね、「楽曲の作り方が安易だ」って怒ってたよ。

そうなんですよ。ボーズ・オブ・カナダの楽曲の作り方の基本はヒップホップだから、シンプルなんですよ。

山本:さあ、みんなで話し合いましょう(笑)。

(一同笑)

吉永:いやわたしさ、ボーズ・オブ・カナダが昔からすっごい好きで聴いてたんだけど。

いや、僕も大好き。

吉永:で、ハラカミくんとも仲良かったからいろいろやり取りしてたんだけど、彼はボロクソだったのよ。何でだろうって。

ははははは。やっぱ、同じフィールドにいたから、良い意味でライヴァル心があったんだよ。

吉永:でもね、怒ってたよ。「あんな安易な作り方で」みたいな。だからそれこそ、いまのダフト・パンクの「あんなもんが売れて」って話と同じような――。

いや違う違う、ダフト・パンクはプロフェッショナルな、よくマーケティングされたところでやってるなと思うんだけど、ボーズ・オブ・カナダは初期の頃は、ガレージ・パンクに近い。作りがラフで、日本人が得意とするような緻密さみたいなものはあんまりないんだよね。もっとざっくりしてる。

吉永:でもわたしそこが好きだったからな。ヒップホップ臭がものすごくするよね。

弘石:僕は90年代、ソニーに在籍して〈ワープ〉の担当してたから、彼らやエイフェックス、プラッドなんかの話をインタヴューでよく聞いてたんですけど、彼らって基本的にテクノ同様に、ヒップホップの影響をすごく受けてて。でも「黒人としてラップ表現するんではなくて、アティチュードとして白人のヒップホップを創ってる」っていうような発言してたんですよ。〈ワープ〉の社長も初期は、ロブとスティーヴ、二人で運営していて、彼らもすごくヒップホップのファンだったし。ビースティ・ボーイズの大ファンでしたね。

オウテカだってマントロニクスだもんね。

弘石: 初期の〈ワープ〉はテクノのレーベルをやってるつもりではなくて、サンプリングが自由だった頃の、ヒップホップの遊び心のようなものからスタートしていったんではないでしょうか。そういう意味ではヒップホップのグルーヴ感っていうのが彼らにはあったんじゃないですか。ヴィンテージ・シンセとかレコーディング方法にもすごくこだわってるんですよね、ボーズ・オブ・カナダは。

ビートメイカーに近いよね。もうループ一発で作るから、ハラカミくんとはスタイルが違う。どっちが良い悪いじゃなくて。

吉永:そうだよね。ハラカミくんは、自分で一から作ってるもんね。

山本:ヒロシの意見絶対入れてくださいね。

(一同笑)

話を戻すと、バッファロー・ドーターの『ニュー・ロック』の時代に切り拓かれたものが、ある意味ではまた元に戻ってしまったところもあるのかなって気がしないでもないんですよね。音的にも、レイドバック感のほうが強いし。


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山本:うん、うん。たしかにその通りだと思うんですけど。20年前はちょうど恵まれてたっていうか、オルタナティヴの後押しみたいなものがあったんですよね。バッファローの音楽ってすごく説明しづらかったんですけど、なんとなくざっくりオルタナティヴっていう感じで。まあレーベルもいろいろできてきてたし、なんかちょっとわかりやすかったっていうか。しかも海外と日本がオルタナティヴで繋がってた。『米国音楽』がまさにそういう感じだったんですけど。
 いまはたしかに、そういう後押しの感じはあんまないんですけど。ただ僕が個人的に思うのは、バンドでツアーして海外行ってアメリカ・ツアーっていうのが若者の夢だったんだけども、いまってたぶん直接肉体的に行かなくても、それこそウェブ上でどんどん繋がっていくじゃないですか。〈U/M/A/A〉が抱えているアーティストとかって、基本的にデスクトップで作ったものをニコニコ動画とかに上げて、それが評価されてメジャーになったみたいな。たぶんそれは次に海外に出て行くと思うんですよ。それも最初はネット上で出て行くだろうし、それはすでに出てると思うんですよ。で、そうなると向こうの要望が強まるから、きゃりーぱみゅぱみゅとかが海外に行くように、デスクトップで音楽を作っている若いミュージシャンもたぶん海外に実際に行って、何かしら演奏するっていう流れは僕らの時代にはなかったですね。

たしかにラップトップ・ミュージックは活性化してるんですけど、ネットの世界もけっこう狭いサークルに陥りやすいというか、逆にそっちの幻想が膨らんで、バッファロー・ドーターみたいなライヴ感がいまひとつ欠けているというか。

山本:僕らの時代ではギター、ベース、ドラムでバンドをはじめるっていうのが普通のやり方だったんですけど、もしかしたらいまってラップトップではじめるほうがスタンダードになりつつあるのかなっていうところもあって。実際ガレージ・バンドでひとりで作ってるところからはじまった女の子のバンドとか知ってるんですけども、とりあえず簡単にできるじゃないですか、手っ取り早く。で、それで1回形を作って評価された後に、今度は必ずそういうひとってライヴ対応しなくちゃいけなくなるんで。そこで敢えてドラム入れてみるとか、生の要素を入れてみるとか。たとえばマウス・オン・マーズとか、テクノのアーティストってそういう風なやり方しますよね。打ち込みで作ったものを生ドラムでやったりとか。国内だとデ・デ・マウスとか、逆にデータから生へっていう。だからいまラップトップで作ってる子も、そういうこと絶対やり出すと思うんですよね。必要に駆られて。そこはすごく期待してますね。

時代の変化に対応するための具体的な展開ってありますか?

山本:なんかね、対応していこうとか時代に追いつこうとかってあんまり意識してなくて、自分たちもたんに音楽ファンで、「最近どういう風に音楽買ってる?」みたいな。シュガーはけっこうデジタルで買ってたりもするし。だったら自分たちもこういう形で出しても自然だよね、みたいな。

吉永:でもなんかね、うちはアルバムとアルバムの間隔が長いじゃないですか。だって20年もやってんのに、6枚しか出てないってさ(笑)。でも意図してそうやってるわけじゃなくて、やっぱり完成形が見えるまでに時間かかるものがあったりとか、あと誰かがバッファロー・ドーターやる気分じゃなかったりとかね。そういうのもあるから、それは必然的にそうなってるんだけど。でもいまは簡単じゃないですか。それこそサウンドクラウドに今日作った曲をぱっとアップするとかね。あれはなんか、面白いなってちょっと思ってる部分もあって。わたしたちは腰が重かったんだけど、そういう発し方っていうのは、ちょっとやりたいなっていうのがあるんですけどね。

ほう。

吉永:だから由美子といっしょにふたりで普段から何か作ったりしてるんです。なんだけど、それを完成形にしてバッファローのアルバムに入れるにしては、なんかちょっとバランスも違うし、みたいな楽曲もあったりするんですよね。そういうのとかを、何かそういうメディアを使って「Today's Menu」じゃないけど、そんな感じでぱっと出せるようなスタンスっていうのは楽しいなと思って。いままでは自分たちで作ったものは自分たちでしか聴いてないけど、それに対する反応なんかを聞けたら楽しいしなー、とかね。バッファローを全然知らないひとがそれを聴いてくれたりしたら楽しいかなー、とか。っていうのはありますけど。

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やっぱ端っこなんじゃないですか。ついこのあいだまで日本のメジャーのバンドのお手伝いをしてたんだけど、まったく違うもんね。ほんとにうちって極端なところにいるんだなってよくわかった。

なるほどね。さっきアメリカ・ツアーとおっしゃいましたけど、バッファロー・ドーターにとってはアメリカが一番近かった外国ですよね、きっと。

吉永:そうですね。

僕は、いろんな国の音楽シーンがあるなかで、アメリカがこの10年とくに面白く変わったなっていう印象があるんですよね。1周回ってしまったというか、いちどレコード屋さんが全部なくなって、そしてまたいまできはじめている状況もあるし。

山本:え、またできてるんですか?

インディでやってる若い世代がアナログ志向になってるんで。

山本:ああー。

インディ文化、DIY文化は、いまのアメリカはすごいですよ。生まれたときには家にCDしかなかった世代がメインなんですけど、彼らの活動の象徴が、ヴァイナル、カセット、ライヴ活動で。配信はあるけどCDは作らなかったり。

山本:カセットってダウンロード・カードは入ってるんですか?

入ってるのと入ってないのとありますね。入ってないのが多かなー。

山本:じゃあ敢えてカセットで聴けっていう。

録音音楽の形態はカセットとアナログ盤に帰結するという、結局は20世紀のものなんですよ。

山本:下北に「ワルシャワ」があった頃すごくカセットを推してて。

そうそう。

山本:「ワルシャワ」なくなっちゃったんでしたっけ?

なくなっちゃったんですよー。

山本:あそこでサン・アローを推してて。サン・アロー僕すっごく好きなんですよ。

ははははは。だからサン・アローみたいなものが日本では売れないんですよ。アメリカだとSXSWの大きいホールが満員になるぐらい人気があるんですけど。これは海外のアーティストやDJからもよく言われますよ。海外から日本を見ても、この10年っていうのはすごく温度差を感じているんですね、インディでもクラブでも。

山本:たしかにいまの日本の音楽シーンって海外に対して閉ざしてますよね。

たとえばいま日本で売れる洋楽って、ニュー・オーダーとかさ。

山本:ああ、オヤジが買ってるんですか。

そう(笑)。

吉永:オヤジが買ってるって(笑)。

プライマル・スクリームとかマイブラとか。だからきっと僕の世代が頑張って買ってるんですよ(笑)。

吉永:でもそれはファンだから買うんでしょ? 20年前からファンだから。

その世代のものは相変わらず売れるんですよ。でも、ひとつ例を挙げれば、いまUSでは、もうインディとは呼べないくらいすごく売れているヴァンパイア・ウィークエンドみたいなバンドがいるんですけど、日本でもまあ健闘はしているほうですけど、ニュー・オーダーとかあの世代には敵わないっていうね。

一同:......。

ほら、だんだん後ろ向きな気持ちになってきたでしょう(笑)?

一同:はははははは!

山本:いや、メディアのひとはたいていネガティヴなんですよ。

吉永:なんでヴァンパイア・ウィークエンドは日本で売れないの?

いやいや売れてますよ。売れてますけど、アメリカとの温度差はハンパないですよ。

吉永:アメリカでは大スターだよね。もうだって、サタデー・ナイト・ライヴとか出てるよ?

(スタッフの方含め、全員で議論が盛り上がる)

だから80年代末から90年代初頭のやつが売れるんだよね、大概。

山本:明らかにオヤジが買ってるじゃん。

そう(笑)。

吉永:だから若いひとたちが買わないってことだよね。

いや、若いひともオヤジのロックは買うの(笑)。『ラヴレス』が出た頃より、オヤジになったケヴィン・シールズをみんな買うんですよ。

山本:いや、あれはオヤジになったケヴィン・シールズじゃないですよ。シューゲイザーのあの切なさがこの不況の時代にマッチするんですよ。

それもあると思いますよ。

山本:いや、「それも」じゃなくてそれですよ。

一同:はははははは!

吉永:その言い方でいうと、だからヴァンパイア・ウィークエンドが売れないんじゃない? マッチしてないんじゃない?

山本:マイブラに関しては僕は語りますよ。

なんでですか?(笑)

山本:いや、僕IKEBANAってバンドをちょっと前までやってたんですけど、それはパートナーだった子がマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのことがすごく好きで、彼女からいろいろオルグされて、フジロックもマイブラだけを観に行きましたし。

(笑)すごいですね。ムーグさんをオルグするって大変だよね。

山本:あとデヴィッド・バーンがこの間来たときに聞いたんですけど、デヴィッド・バーンはマイブラが好きなんですよね。それが面白くて。

マイブラが悪いわけじゃないんですよ(笑)。

大野:アダム・ヤウクも好きだったよ、マイブラ。

山本:でもいまのマイブラの受け方っていうのは明らかに、暗い時代のなかで切ないけど......でもすごくフィットするんですよ。マイブラのあの感じが。フィッシュマンズの受け取られ方とちょっと似てるっていうか。

フィッシュマンズやマイブラみたいにリアルタイムよりもファンを増やしていくようなタイプのバンドっていますよね。マイブラが売れることに関しても、評価が定まっているクラシックっていうか、ロックって、再結成だとか、再発だとか、そんなのばっかでしょ。あと、ムーグさんが言ったように、日本の音楽シーンって、政治的になっていますよね。それはそれで良い面もありますが、音楽っていうのはそれだけではないって僕は思っていて。たとえば、90年代の日本では売れないものも売れたという言い方をしたのは、多様性があったということなんですよね。

山本:そうですね。

とくにアメリカは多様性が際立っているんですけど、いまの日本の音楽には多様性が見えないっていうか。それって危険なことだなって思うんで。ヘイトじゃないけどね、自分と違うものを否定してしまうことになりかねないじゃないですか。だからいまの若い子たちに90年代の自慢をして、バッファロー・ドーター20周年を盛り上げるっていうのはどうかなって(笑)。

吉永:(笑)

山本:自慢するっていうのはなんか......(笑)。

寒かったすね(笑)。でも90年代の音って、いま若い子にも売れてるから。その線で行けばバッファロー・ドーターの20周年記念盤は売れますよ。

山本:ああー、じゃあそういう風にして売っていこうか。あの、任せます。

はははは。いや、わからないですけど。

山本:でもたしかに、さらに遡ればパンクの後のニューウェイヴもそうだったんですけど、いったん焼け野原になったあとにすごくいろんなものが出てきて、自由でしたよね、あの頃って。

そうですよね。

山本:それがオルタナティヴの頃もちょっとあって。それこそ「シスコ」のラウド店に行くと、知らないものがどんどん入れ替わっていくっていう楽しさがあって。いろいろなものに対して自分たちも受け入れられるっていう、そういう自由さはありましたよね。

あ、わかった。バッファロー・ドーターはあれだ、レッド・クレイオラになればいいんだ。

山本:知らないよ(笑)。

初期〈ラフ・トレード〉の精神的な支柱ですよ。

山本:メディアのそういう見方に対して、僕らは「そうじゃないです」とか「そうです」とかって言わない、っていうかそれはメディアを持っている方の署名で原稿書かれているわけですから、僕はその解釈の仕方は自由だと思うんですけれども、個人的には、かなりピンと来てないです(笑)。

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自分で聴いたことのない音楽を作りたいっていうか。ときどき歩いていると、すっごいやかましい音楽とか音とか鳴らしてる車があるとすっごいムカつくんですよ。ああいう公害な音楽は絶対に作らないとか。


Buffalo Daughter
ReDiscoVer. Best, Re-recordings and Remixes of Buffalo Daughter

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シュガーさんのエネルギーの源って何なんですか?

吉永:それは昔から変わらないですけど、やっぱ、自分にとって新しいものをつねに発見する。っていうか、つねに何かはあるんですけど。それがモチベーションですね、やっぱり。音楽もそうだけど。昔ほどレコード買わなくなったとはいえ、やっぱりモチベーションはいろいろあるから。

なるほど。すごくヴァイタリティを感じるんですよね。

大野:お肉食べないんだけど、一番血が濃い感じで。

はははは。行動力というか何というか。バンドのなかで役割ってどうなってるんですか?

山本:由美子さんがまず一番最初に「これをやりましょう」って言うんですよ。それは間に合わなくなるから。

はははは。それは仕切り屋ってことですか? そうじゃなくてタイム・キーパーとか。

大野:一番気にしてるひとなのかな。

ああー。じゃあ大人?

大野:全体的に見ているひと。

山本:やっぱ彼女は私生活も忙しいし。

だっていろいろと他のプロジェクトにも参加されてますしね。

大野:うん。でも好きだからやってるんだけど。でもそういう風に考えると、一番こう、クリアに自分のバンドが見えてるっていうか、自分のバンドがどういう立ち位置にいるっていうことが一番わかってるっていうか。

ああ。いまどういう立ち位置にいると思います?

大野:やっぱ端っこなんじゃないですか。

ははははは! 素晴らしいじゃないですか、端っこ。

大野:うん。ついこのあいだまで日本のメジャーのバンドのお手伝いをしてたんだけど、まったく違うもんね。ほんとにうちって極端なところにいるんだなってよくわかった。けど、彼らはわたしたちの音とかの新鮮な部分をチラッと見せるとものすごく喜ぶのね。話をしたりすると、みんなすごく聞きたがるの。うん、だから、教えていく立場にだんだんなってきたのかなって(笑)。

ああー。

大野:って思いながら手伝ってたんだけど。まったく違うところにいた。その分最初ちょっと大変だったけど、時間が経ってくるとだんだん楽しくなってきて。っていうのはありますね。

外から見てると、シュガーさんが引っ張っていって、ムーグさんが頭脳って感じなんですか? 極端に言っちゃうと。

大野:編集のひとなんだって思う。まとめるのが上手い。

山本:僕はほんとに一番最初に「これやろう」って言い出して、シュガーがそれを理解した瞬間、すっごいスピードで動くんですよ、彼女が。で、僕は最初はボーッとしてるんですよ。で、8割方見えてきたときに急に目覚めて、「これはこういう意味なんだ」ってことを勝手に位置づけるんですよ。それをもう1回ふたりに返す。だから最初に客観的に見るひとですよね。ある意味、メディアの方にちょっと近いんですよ。で、実際そういう仕事もしてましたから。

そうですよね。書かれてましたよね。

山本:「これってこういうタイトルだな」とか、ジャケットとか、実際音が上がってからじゃないですか。それに対してどういう風に見せていくかとか。そういう感じですね。で、それで僕が意味づけを提案すると、シュガーは歌詞を書くから彼女のなかにも確固たる意味があるし、由美子は由美子で自由に感覚的に感じ取ってるものがあるから、それをもう1回3人でやって、それがぎゅうっとひとつに収縮したときにはじめてアルバム・タイトルとかになっていくんですよ。

じゃあ、シュガーさんはそういうときに心臓みたいな感じ?

大野:わたしが困ったこととか相談すると、ぐわーって「じゃ、こうすればいい、こうすればいい」みたいな感じで全部(笑)、解決策をクリアに出してくれる。わたしけっこう、モヤモヤモヤッってするとけっこう困っちゃうから(笑)、訊くと解決策をクリアに出してくれたりするし。

なるほどね。今回もシュガーさんが海外との交渉なんかをされたんでしょうか。

山本:今回の選曲をニックさんと提案したのもシュガーだし。その辺はほんと信頼して任せたって感じですよ。

なるほど。シュガーさんが新しいことをやることが原動力なっているって話をされてましたけど、おふたりはどうなんですか?

大野:それはたしかにそうかも。自分で聴いたことのない音楽を作りたいっていうか。ときどき歩いていると、すっごいやかましい音楽とか音とか鳴らしてる車があるとすっごいムカつくんですよ。ああいう公害な音楽は絶対に作らないとか。

はははは。

大野:そういうのがちょっと原動力になったりする。それはあんまりいい意味じゃないけどね(笑)。っていうときもあるし、基本的には自分で聴きたい音楽を作りたいっていう。新しい形っていうかちょっとわかんないけど、聴いたことのない音楽を作りたいっていうか。いつもね。

なるほどね。ムーグさんはどうなんですか?

山本:僕はパンクとニューウェイヴをそれこそ18、9で体験して、ほんとに焼きついちゃったんですよね。で、自分にとっての一番大きい体験だったんで。ニューウェイヴの使命って、つねに新しくあるべきっていう。新しいってことが価値だったじゃないですか。あと自由っていう。それの焼きつきがあまりにも強いんで、つねにそこを求めちゃうんですよね。それが自分のなかにとっての伝統なんですけど(笑)、だから同じ音楽に留まっていくことができなくて。単純に好きですよね、新しい音楽が。ある時期は過去の音源で誰も知らなかったものに新しさを見出したこともあるし。いまは音楽じゃないんですけど、新しい文化ですごく面白いと思えるものがいくつか出てきたんで、それはすごく嬉しいですね。

たとえば?

山本:僕がいまハマってるのが、ジョン・ラフマンっていうカナダの現代美術のひとなんですけど、そのひとはインスタレーションもやるし映像も作るんですけど、映像がめちゃくちゃいいんですよ。あともうひとつは、スケーターが面白くて。
 
山本:あとロンドンにもスケーターの面白い連中がいて。なんか家の近所に歩いてたら小さいショップができてて、入ってみたらスケーターの店だったんですよ。で、そこでその〈ポーラー〉のTシャツ買って、「スケーターなのにこういうデザインなんですよ」って言われて、たしかにそういう感じなんですよ。いわゆるスケート・カルチャーって西海岸イメージだったんですけど。それが世界中に飛び火してて。あとカナダにも面白い連中がいてて。その3つをいま追っていて。あとでURL教えるんで。

デザインが面白いんですね?

山本:なんかトータルで面白いんですよ。ちょっと語りつくせないんですけど。山本:あとね、南米のブエノスアイレスかな。〈ZZK〉っていうレーベルってご存じですか? デジタル・クンビアってざっくり言われてるんですけど。そこはPVとかも面白くて。で、わりと映像主導型で物事が好きになってますね。まずYouTubeから入って。

吉永:そもそも映像だもんね。映像っていうか画像っていうか。

山本:うん、もともと静止画フリークだったんだけど、映像面白いですね、最近。あとはやっぱりアモン・トビンみたいなひとも、ライヴのセットを映像とトータルなものにしているっていうのも。で、リッチー・ホウティンもそうだったじゃないですか。LEDのコクーンっていうを作って完全シンクロして。音楽単体じゃなくて、必ず映像がついて。

そういうことをバッファローでやってみようって計画はいまあるんですか?

山本:やってみたいんですけど、なかなか大変なんで。でも今回ので、ちょっとヴィデオを作ったりして、それに関わらせてもらったりはしてますね。

ちなみに、次の新しいアルバムの構想があるという噂を聞いたんですが。

吉永:半分ちょっとぐらい。

それはいまの時点で言えることはどんな感じでしょう?

吉永:うちね、最後の最後まで言えないんですよね、なんかね。

山本:変わるからね。

吉永:最後にガッと変わるから。

なるほど。

吉永:いま言ってもたぶん変わるから(笑)。曲は変わんなくてもね。最後の仕上げが関わったりとか。前のアルバムもそうだったんだけど。だから難しいですけど。

バッファロー・ドーターってアルバムにつねにテーマがあるじゃないですか。コンセプトというか。そのコンセプトは決まってる?

吉永:それがだから、大概最後なんですよ。

ああ、最後ね。

吉永:最初はじめるときにもちろんあるんだけど、それが最後に違うものに変わったりするから。今回はじめるときはディスコって言ってはじめたんですけど、すでに気分はもう変わってきてるし、わかんないですよね、自分たちとしても。

なるほど。

吉永:でも最後にガッと変わったときは3人がすごく一致したときだから、ものすごいエネルギーでフィニッシュに向かうんですけど。いままだ漠然としている部分が少しありますよね、やっぱり。曲は具体的に上がってきてるんだけど。その最終的なまとめ方っていうか見せ方っていう部分では、ちょっとまだそこまで辿り着いてないから。

じゃあ、最終的にはどうなるかわからないけれども、入口をディスコにしたのは何でなんですか?

吉永:それは21世紀美術館でピーター・マクドナルドさんっていうイギリスのアーティストが、展示をやってたんですよ。そのときに一番大きな部屋の壁全体が彼の絵になっていて。それはかける絵じゃなくて、壁自体に絵が描いてあって。それがブロック・パーティみたいなものをテーマにしたもので。彼が子どものときにそういうものを経験したんですって。それがすごく楽しかったっていうイメージで、それを絵にしたっていうのがあって。
 で、絵だからすっごく大きな部屋なんだけど、シーンとしてるんですよ。美術館だし。それが彼としては何か違うっていうのがあったらしくって、そこに音をブチ込みたいと。で、絵を描いていたときにバッファローをよく聴きながらやってたんですって。だから「その音楽が流れてきたら嬉しい、ここで何か演奏できないか」っていうことを言われて。じゃあそれは面白いからやってみましょう、みたいな感じで。で、「どういうことをやりたいの?」って訊いたら、「ブロック・パーティで気分はディスコなんだ」って。「そういう楽しいものをやりたいんだ」って言ったから、ディスコねえー、ってそのときは思ったんですよ。だって『ウェポンズ』(『The Weapons of Math Destruction』)出した直後だったから、あのアルバムはどう考えてもディスコじゃなかったから。

ははははは。

吉永:気分はパンクだったから、あのとき。だからディスコかーって思ったんだけど、そもそもわたしたちベースとしてディスコ・ミュージック好きだから。ディスコ・ミュージックっていうかね、バンドがやるディスコ・ミュージック、ESGみたいなのが好きなわけじゃないですか。

はいはいはい。

吉永:ブロック・パーティっていうのもそうだし、ESGみたいなのいいね! って盛り上がって。

いいじゃないですか、それ。

吉永:で、曲をそれ用に作ったりして、そのときがすごく自分たちで楽しかったから。美術館でやるっていうその経験も楽しかったし、自分たちてきには。

なるほど! それが入り口だったわけですね。ちなみに完成はいつを予定されてるんですか?

山本:さっき聞いたのは来年の――。

さっき聞いたって誰に聞いたんですか(笑)?

山本:さっきシュガーに。来年の夏前にできてる、みたいな。

大野:寒い時期に発売できたらいいけど、無理かなー、わかんない(笑)

それは難しいんじゃないですか(笑)。なるほど、わかりました。じゃあそれを楽しみにしています。

山本:ありがとうございます。

 追記:この取材を終えてから、僕は山本ムーグとたまたま行ったライヴで一緒になり、そして3日連続で街中で偶然会った。早く飲みにいかねば!

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