ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Jlin - Akoma | ジェイリン
  2. Bingo Fury - Bats Feet For A Widow | ビンゴ・フューリー
  3. Ben Frost - Scope Neglect | ベン・フロスト
  4. 『成功したオタク』 -
  5. まだ名前のない、日本のポスト・クラウド・ラップの現在地 -
  6. interview with Mount Kimbie ロック・バンドになったマウント・キンビーが踏み出す新たな一歩
  7. interview with Martin Terefe (London Brew) 『ビッチェズ・ブリュー』50周年を祝福するセッション | シャバカ・ハッチングス、ヌバイア・ガルシアら12名による白熱の再解釈
  8. Jlin - Black Origami
  9. 忌野清志郎 - Memphis
  10. Loraine James / Whatever The Weather ──ロレイン・ジェイムズの再来日が決定、東京2公演をausと蓮沼執太がサポート
  11. interview with Kaoru Sato 甦る、伝説のエレクトロ・ノイズ・インダストリアル  | 佐藤薫
  12. exclusive JEFF MILLS ✖︎ JUN TOGAWA 「スパイラルというものに僕は関心があるんです。地球が回っているように、太陽系も回っているし、銀河系も回っているし……」  | 対談:ジェフ・ミルズ × 戸川純「THE TRIP -Enter The Black Hole- 」
  13. Kim Gordon - The Collective | キム・ゴードン
  14. Savan - Antes del Amanecer | サヴァン
  15. ソルトバーン -
  16. Speed Dealer Moms ──ジョン・フルシアンテとヴェネチアン・スネアズによるコラボ・プロジェクトが再始動
  17. interview with Keiji Haino 灰野敬二 インタヴュー抜粋シリーズ 第1回  | 「エレクトリック・ピュアランドと水谷孝」そして「ダムハウス」について
  18. interview with Chip Wickham いかにも英国的なモダン・ジャズの労作 | サックス/フルート奏者チップ・ウィッカム、インタヴュー
  19. みんなのきもち ――アンビエントに特化したデイタイム・レイヴ〈Sommer Edition Vol.3〉が年始に開催
  20. CAN ──だれもが待ちわびていただろう黄金時代、ダモ鈴木在籍時のライヴ盤がついに登場

Home >  Reviews >  Album Reviews > Luke Wyatt- Teen Hawk

Luke Wyatt

Luke Wyatt

Teen Hawk

Emotional Response

Amazon iTunes

E王

DroneElectronicKrautrockMinimal

Torn Hawk

Torn Hawk

10 For Edge Tek

Valcrond Video

E王

三田 格   Aug 19,2013 UP

〈PPU〉のスリーヴ・デザインや映像作家として人気のルーク・ワイアットがこれまで使ってきたトーン・ホーク名義のセカンド・アルバムを自身のレーベルから、そして、本人名義のデビュー・アルバムをニック・ナイスリーのレーベルからほぼ同時にリリース。いずれもクラウトロックを基本としたもので、非常にフレッシュな感性を縦横に展開している。リーヌ・ヘルやエメラルズのようにノイズ・ドローンを起源に持つ世代とは明らかに咀嚼の仕方が異なり、ヴェイパーウェイヴのような抜け殻モードでもない。クラウトロック・リヴァイヴァルからコニー・プランク的な人工性を抽出し、しっかりと現在のシーンに定位置を見定めている。

 イーノ&クラスターにクラウス・ディンガーが加わったような『ティーン・ホーク』はこれまでの集大成といえるだろう。シャキシャキとしたパッセージで穏やかなメロディを引き立てるあたりは往年のクラウトロック・マナーそのままにも関わらず、ノスタルジーに回収されてしまう余地は与えず、全体的にシャープでさわやかな感性がキープされる。小刻みに反復されるドローンにも類まれなる抒情性が持ち込まれ、それほど音数は多くないのにイメージの広がりも圧倒的。これが本当にアメリカ人の音楽なのかと思うほど人間不在の自然観が伝わってくる。素晴らしい。

 一転して、メビウス&プランクを思わせる『10・フォー・エッジ・テック』はインダストリアルな要素も上手く取り入れた新機軸。これはフィンランドの海運業者から依頼を受けてつくったものだそうで、タグボートが氷を砕いていくときのBGMだかなんだかに使われるものらしい(ホントかなー)。強迫的なメトロノミック・ビートや全体として与えるシャープでさわやかな感触には変わりがなく、ダンス・ミュージックは意図していないのかもしれないけれど、妙なスウィング感まであって、この暑いのについつい体が動いてしまう(......ゲロゲロ)。

"スリー"

 ミニマルとしても目新しいし(とくに"ナイン")、アンディ・ストットとプラスティックマンが合体したような"シックス"が氷を一気に掻き砕くかと思えば、スーサイドを思わせる"フォー"はそれをじわじわと溶かし、ビート・ダウンした"セヴン"もじつにいい。単にダイナミックなだけではなく、相反するような音響効果を仕掛けることで、激しさのなかにも優しさを持たせてしまうところがこの人のセンスなんだろう。いや、もう、降参です。ルーク・ワイアットという人は、けっこう控えめに言ってもクラウトロックの新たなフォーマットを生み出してしまったのではないだろうか。考えてみればOPNに驚いたのがもう3年前。USアンダーグラウンドはとどまるところを知らず、2013年にはアレックス・グレイ、マシュー・セイジ、そして、このルーク・ワイアットをフロントラインに浮上させてきた。

三田 格