「R」と一致するもの

DJ Doppelgenger - ele-king

 「高校生の時に初めて会ったけど当時からめちゃくちゃコスリが上手くて埼玉ではかなり名の知れたDJだったなー。俺らがサンプラー叩いてライブやってた時はスクラッチで参加してもらってたし、JAR-BEATのコンピやキリコのハクレンでもコスってもらった。破天荒な奴で......」と書かれているフラグメントのKussyのブログを発見。DJドッペルゲンガーは、15歳のときに見た「さんぴんキャンプ」を契機に、日本のヒップホップを好きになって、DJになっている。20歳になってからはバックパックを背負って世界旅行。そして、4~5年前、ゴス・トラッドを通じてダブステップを知って、すっかりベース・ミュージックに魅せられてしまったようだ。先月、彼はデビュー・アルバム『パラダイム・シフト』を自主制作でリリースしたばかり。
 さて、DJクラッシュ~ゴス・トラッドという流れのなかで登場したDJが、いったいどんな音を作るのかは興味深い話である。それは90年代から2010年代へと繋がるホットラインとも言える。もっとも、DJクラッシュの全盛期とはくらべものにならないくらい時代はハードだが、DJドッペルゲンガーのアルバムには、彼なりの時代との向き合い方が刻まれている。真面目な、良いアルバムである。

 ダブステップへと向かった理由が、その音の強度、破壊力だったと言うだけあって、ダイナミックな音が展開されている。と同時に、ベッドルームで作ったというよりも旅して作ったという感覚がリズミックな音に出ている。ダブステップ......とは言うものの、ビートはポリリズミックで、メロディからは東南アジア、ときにはカリブ海も感じるが、ある種の無国籍なフィーリングが全体を貫いている。そうした漂泊している感覚は、このアルバムの魅力となっている。
 まあ、破壊力......とはいえ、全体的に荒々しく、ハードなわけではなく、繊細な曲もちらほらある。"bashon island"を聴いているとアシッド・ハウスを聴きながらミクロネシアの島々の上をボートで走っているような気分になる。"core"のようなアンビエントにも可能性を感じるが、他方では、1曲目の"in the world"なんかはゴス・トラッドへのオマージュかとも思えるほど似たものを感じる。

 DJドッペルゲンガーは、大宮を拠点に日本全国を横断している。「自分がダブステップDJをやりはじめて4年ぐらいなんですけど、それだけでも全然変わってきてますよ」と、彼はここ数年の日本のシーンについてこう語る。「その当時、ダブステップのパーティなんて〈Drum&Bass Sessions〉か〈Back to chill〉ぐらいしかなかったですし、DJも全然少なかった。いまでは小さい規模でもダブステップのパーティが各地で出あるし、リスナーも増えてますし、シーンは確実に認知されてきていると思います。地方もどんどん盛り上がってきてますし、地方でも自分で曲を作ってそれを中心にDJ、パーティしているカッコいいクルーが出てきたりで、これから先もっと面白いシーンができてくると思います」
 地元の大宮では彼は、2年以上、〈MAMMOTH DUB(マンモスダブ)〉という名のパーティを継続中。「東京から電車で30分、近いですけど東京とは全然違うんですよ」と、彼は地元の魅力について言う。「良い意味で地方的っていうか、パーティを楽しもうっていう特別意識と、地元ならではの結束がリンクして、それが良いグルーヴを作るんですよね。制約やルールもないからいいですね。勝手にTシャツ作ってきたり、ステッカー作ったり、デコ作ったり、ブログ作ったり、みんなが参加しながら楽しくひとつのパーティを作っていくってスタイルが......」
 以下、彼の6月までのスケジュール。お、6/9は〈ラジシャン〉だね!
 
 5月19日(土) MAFALi cafe (沖縄)
 5月25日(金) The Dark Room (福岡)
 5月26日(土) Cheerz (小倉)
 5月27日(日) 2110 (熊本)
 6月2日(土)  JUNGAL(富山)
 6月9日(土)  Rajishan(静岡)
 6月15日(金) JIGSOW(熊谷)
 6月30日(土) 444 quad(大宮)

Chart by JET SET 2012.05.14 - ele-king

Shop Chart


1

Hungry Ghost

Hungry Ghost (I Am A Series Of) Strange Loops (International Feel) »COMMENT GET MUSIC
Daniele Baldelli、加えてデトロイト3 ChairsクルーMarcellus Pittmanによるリミックスを収録した前作「Illuminations」もカルト・ヒットとなった、Gatto Fritto & Howard Jacobsの才人コンビHungry Ghostが"International Feel"に再戦。

2

Stupid Human

Stupid Human Toni Rock / Clean Up Your Act (Stupid Human) »COMMENT GET MUSIC
過去4作いずれもカルト・ヒットを記録しているUk発のミステリアス・ユニット、Stupid Human手掛けるリエディット・シリーズ第5弾。引き続きDjユーズに再構築された強力作をカップリング!!

3

Bjork

Bjork Biophelia Remix Series 3 - El Guybcho & Hudson Mohawke Remix (One Little Indian) »COMMENT GET MUSIC
強力過ぎる人選でお届けする『Biophilia』リミックス・カット12"第3弾は、説明不要の人気者2組、El GuybchoとHudson Mohawkeによるリミックスを搭載した大本命盤です!!

4

Georgia Anne Muldrow & Madlib

Georgia Anne Muldrow & Madlib Seeds (Someothaship Connect) »COMMENT GET MUSIC
世界が注目するLaミュージック・シーンから、あらゆるシーンから強い眼差しをあびるGeorgia Anne Muldrowともはや説明不要のMadlibによるソウル・プロジェクト。待望すぎるアルバムが完成!

5

Mmoths

Mmoths S.t. (Sqe Music) »COMMENT GET MUSIC
既に話題沸騰中のアイルランド出身チルウェイヴ~ウィッチハウス新星、Mmoths。Keep Shelly In Athensとの超名曲「Heart」も収録したデビュー・シングル!!

6

Modeselektor With Thom Yorke

Modeselektor With Thom Yorke This (Monkeytown) »COMMENT GET MUSIC
ジャーマン・エレクトロ/ベース最強デュオModeselektorとThom Yorkeによる電撃コラボ7"第2弾。'11年の傑作『Monkeytown』収録の人気トラックのラジオ・エディットA1も収録です~!!

7

Damu The Fudgemunk

Damu The Fudgemunk Bright Side Remix (Redefinition) »COMMENT GET MUSIC
2010年リリースながらもキャリア屈指のクラシックとして認知され、Dj Kiyo氏のミックスにも収録された"Bright Side Remix"が10"仕様で登場! 収録lpも今や入手困難の為これは嬉しすぎます!

8

Mouse On Mars / Prefuse 73

Mouse On Mars / Prefuse 73 Miami / Death By Barber (Monkeytown) »COMMENT GET MUSIC
6年振りの新作アルバム『Parastrophics』が当店ヒット中のMouse On Marsと、6月リリース予定レーベル・コンピにも参加予定のPrefuse 73による超強力スプリット7"が到着です!!

9

Harmonious Thelonious

Harmonious Thelonious Ting Tong Tp (Asafa) »COMMENT GET MUSIC
前作『Drums Of Steel』は即完売、アメリカの前衛ミニマリストとアフリカン・リズムからの影響を公言するレフトフィールド・ミニマリストによる待望の第2弾12"が登場です!!

10

Gizelle Smith

Gizelle Smith Jonny (Mocambo) »COMMENT GET MUSIC
Gizelle SmithがMocamboから最高の新曲をリリース。大ヒット曲"Working Woman"を超える大感動の哀愁込み上げグルーヴィー・ソウルです!!

Shop Chart


1

J.M.F.G.

J.M.F.G. #2 J.M.F.G. / FRA / 2012/5/9 »COMMENT GET MUSIC

2

Los Miticos Del Ritmo

Los Miticos Del Ritmo Los Miticos Del Ritmo Soundway / UK / 2012/5/11 »COMMENT GET MUSIC
QUANTIC指揮の元、現地凄腕ミュージシャンからなる"QUANTICと神話の打楽器隊"、待望のフル・アルバム!伝統的な演奏形態を踏襲し つつも豊潤な音楽観と洗練のアレンジでアップデートした2012年型ハイブリッド・クンビア極上盤◎

3

Vedomir

Vedomir Vedomir Dekmantel / NL / 2012/5/9 »COMMENT GET MUSIC
圧倒的リリース量とそのクオリティから一躍ハウス・シーンの最前線へ躍り出たウクライナの天才VAKULAによる別名義プロジェクト VEDOMIR、ヴォリューミーな2LPフルアルバム!

4

Unknown

Unknown Black Boxx EP Ferrispark / US / 2012/5/9 »COMMENT GET MUSIC
首領SCOTT FERGUSONを中心にKDJ/THEOの流れからポスト・ビートダウン的アプローチの作品まで多彩なラインナップでリリース展開されるデトロイトの良質<FERRISPARK>から、00年代初頭の初期レーベル作品を彷彿とさせる黒光スモーキー・ディープハウスが詰まったノーインフォ/謎の4 トラックスEPが到着。

5

Kelenkye Band

Kelenkye Band Jungle Funk Cultures Of Soul / US / 2012/5/9 »COMMENT GET MUSIC
推薦盤!快挙!ド級のアフリカン・レアグルーヴ古典"JUNGLE MUSIC"で有名なKELENKYE BANDの未発表音源(!!)が発掘&音盤化!内容はやはり最高スギル2枚組7"。

6

Koko Edits

Koko Edits Stay With Me / Burning Up Basic Fingers / GER / 2012/5/8 »COMMENT GET MUSIC
好調リリースの続く<G.A.M.M.>傘下のディスコ・エディット専科<BASIC FINGERS>第8弾!賞味期限無し定番的に使えるため、是非とも持っておきたい一枚!

7

Joaquin Joe Claussell

Joaquin Joe Claussell Unofficial Edits And Overdubs Disc One Of Four Sacred Rhythm Music / US / 2012/5/3 »COMMENT GET MUSIC
LTD.400pcs!!一連の「UNOFFICIAL EDITS AND OVERDUBS」シリーズも遂に最終章!先日の2CDアルバムから12"用にさらにリエディットし全4部作にてアナログ・リリース!こちら第1弾。

8

Joaquin Joe Claussell

Joaquin Joe Claussell Unofficial Edits And Overdubs Disc Two Of Four Sacred Rhythm Music / US / 2012/5/3 »COMMENT GET MUSIC
LTD.400pcs!!一連の「UNOFFICIAL EDITS AND OVERDUBS」シリーズも遂に最終章!先日の2CDアルバムから12"用にさらにリエディットし全4部作にてアナログ・リリース!こちら第2弾。

9

Joaquin Joe Claussell

Joaquin Joe Claussell Unofficial Edits And Overdubs Disc Three Of Four Sacred Rhythm Music / US / 2012/5/3 »COMMENT GET MUSIC
LTD.400pcs!!一連の「UNOFFICIAL EDITS AND OVERDUBS」シリーズも遂に最終章!先日の2CDアルバムから12"用にさらにリエディットし全4部作にてアナログ・リリース!こちら第3弾。

10

Insideman a.k.a. Q-Bo

Insideman a.k.a. Q-Bo Back In The Dayz (G-Luv Classics Vol.1) Blacksmoker / JPN / 2012/5/10 »COMMENT GET MUSIC
東高円寺の音楽酒場GRASSROOTSの主Qさんニュー・ミックスはまさかのGラップ縛り!from <BLACKSMOKER>★特典で<BLACK SMOKER>からのリリースを予定している、狂気に満ちた妖しいG-LUV謎の一族総本山、D.M.F. (DA MASK FAMILY PRODUCTIONS)のスペシャルSAMPLER CD付き!★

interview with Kyte - ele-king


Kyte
Love to be Lost

Hostess

Amazon

 日本が世界に先んじて見つけだした才能として知る方も多いだろう。シガー・ロスやビョーク、レディオヘッドなどと比較されながら、情感豊かでスケール感のあるポスト・ロックを追求してきたバンドである。なんといっても美しいテナー・ヴォイスと轟音ギターの、ときに過剰ですらあるエモーションが彼らの個性だ。そしてまたアイスランドのミュージシャンたちを引き合いに出されるように、どこかつめたく清新なたたずまいを持つところもカイトらしさである。燃える雪というような形容矛盾をふところふかく抱え込んだような、熱くつめたい感情表現。じっくりとテンションを高めてゆき、そのピークでエモーションを解放するドラマチックな曲展開は、サントラとしても好まれ、アメリカの人気ドラマ『ソプラノズ』や、国内映画『余命一か月の花嫁』での楽曲使用も記憶に新しいところである。
 さて、"サンライト"や"プラネット"といった名曲を生んだデビュー作『カイト』、日本先行でリリースされたセカンド・アルバム『サイエンス・フォー・リヴィング』、そのUK盤制作時に内容をリニューアルした(どんどん生まれてきたという新曲に再レコーディングしたテイクを加えている)裏セカンドともいうべき『デッド・ウェイヴス』ときて、昨年リリースされたのがリミックス集であることを考えると、カイトはその第一章を終えたかにもみえる。シーンの先端とはいかないが、ポスト・ロックやシューゲイザーのまじわる地点で自分たちの表現をみつめ、親密なファンを育ててきた彼らに、いま新しく登場する『ハーフ・アローン』の制作やその音世界の原風景について訊ねてみた。
 さっきコンビニで買ったというグミをおずおずとすすめてくれたおだやかな雰囲気の3人には、彼らの音楽のとおり正直な人柄がにじんでいる、と思った。

いろいろなところへ行ってみて不思議な気持ちだね。世界をまわってみて、よっぽど自分の故郷よりもいい場所とかいい環境、おもしろい場所がいっぱいあったよ。あきらかにね。

『サイエンス・フォー・リヴィング』と『デッド・ウェイヴス』とは、制作上の経緯から考えても双子のような作品で、ふたつあわせて完全なセカンド・アルバムということになるかと思います。今回の3作目とも4作目とも呼べる『ハーフ・アローン』までに、たくさんの曲が生まれましたね。リミックス集もリリースして、ひと区切りついたところでの今作ということになるのではないかと思いますが、どうでしょう? どのような気持ちで取り組んだ作品だったのでしょうか?

ニック・ムーン(ヴォーカル): そうだね、いまはすごくわくわくしてるよ。この作品ができたことにはすごくよろこんでる。ちょっと期間があいたぶん、すごくフレッシュな気持ちでのぞむことができたんだ。あいてる期間にいろいろ考えることもできた。ああいうことをやりたいとか。すごくよかったなと思ってるよ。

実際に大きく変わったなと感じている部分はありますか?

トム・ロウ(ギター/キーボード):精神的な部分ですごく変わったところがあると思う。あとは長い期間をかけて制作しただけに、生まれ変わったっていうような気持ちもあるかな。これまでは長い時間をかけて制作したことがなかったから、そのへんも精神的な変化と関係してるのかもしれない。

なるほど。ちょっと乱暴な質問なんですが、カイトの音楽って明るいものだと思いますか? それとも暗いものだと思いますか? いいかえれば、他者に訴えるような音楽か、自分のなかにもぐりこんでいくような音楽か、どのように感じているでしょう?

ニック:いい質問だね(笑)。

トム:音楽的にはすごくハッピーだなと思うし、自分もハッピーな気持ちだと思う......

ニック:そうだね。

トム:だけどすごく不思議なのが、それにのせるニックのリリックはかなしいものが多いんだよね。そういうところが、僕たちの音楽のメランコリックな部分を生んでいるのかなとは思うよ。

ああ、たしかにそうですね。明るさのなかにつめたいかなしみみたいなものがありますよね。どうしてそのような対照が生まれるのでしょう?

ニック:おれは(自分の詞が暗いとは)思わないよ。

ははっ!

トム:明るさと暗さのなかで深みを増すというか、ニックの詞がいろんなレイヤーをつけてくれるという気がしていて、なんか、聴く人の受けとり方を変えてくれるようなものになるって思う。自分の作った曲に対して、ニックがどんな詞をつけるのかっていう関係性もおもしろいし、そういうところでいろんな階層が生まれてるかな。

レイヤーがつくというのはほんとにそのとおりですね。同時に最初の作品からこの新譜まで一貫して、すごく壮大でドラマチックなエモーションがありますが、これにはなにかヴィジュアル的なイメージがあったりするのですか?

トム:壮大さっていうのは僕たちもすごく意識していて、壮大なものにしたいなと思って音楽を作ってるよ。でもシンプルに自分の好きな音が見つかれば、それをループして重ねたりもする。でも、最終的には大きなものにしたいと感じているよ。

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日本に来ていつもいちばんびっくりするのは、みんなとても真剣に演奏を聴いてくれることなんだ。イギリスだと2~3人が真剣に聴いてて、あとの2~30人はうしろで飲んでるって感じだね。


Kyte
Love to be Lost

Hostess

Amazon

あまり比較するのもよくないとは思うのですが、カイトはシガー・ロスやビョークと比べられることがありますね。われわれ日本人が彼らのようなアイスランドのアーティストのなかに幻想するものが、カイトにはあると思うんです。あなたがたの故郷のレスタシャーにはアイスランドと通じるような雰囲気があるのですか?

トム:どっちかっていうと、レスタシャーが僕らの音楽に影響しているというよりは、そこから遠く離れたいっていう気持ちが表れてるかな。故郷はすごく好きなんだけど、現実逃避的な気持ちでそこから出たい、なにか違うものを求めたいっていう感じがあるよ。

どこかに行きたい、逃げたいというような気持ちは、こうしたツアーなんかで物理的に世界を移動することで解消されたりするものですか? ぴったりくるような場所はみつけられます?

トム:いろいろなところへ行ってみて不思議な気持ちだね。世界をまわってみて、よっぽど自分の故郷よりもいい場所とかいい環境、おもしろい場所がいっぱいあったよ。あきらかにね。でも帰ってみるとやっぱり故郷のよさだったり、そこに家族がいたり友だちがいたりして、大切な場所だっていう思いが強くなるよ。ほんとに不思議な気持ちだね。

現実逃避的な気持ちでいることと、音楽が壮大になっていくこととはなにか関連がありますか?

ニック:うん。

(笑)

トム:そうだね。あると思うよ。ただ説明するのが難しいな......。曲を書くごとに気持ちも変わってくるし。

そうなんですねー......。では、ピアノとかグロッケンは今作で重要な役割をはたしていますけど、曲づくりはピアノからはじまるんですか?

トム:いや、だいたいギターで作りはじめるんだ。コードをギターで作って、それをプログラムしてコンピューターに取り込んで、作りこんでくっていうことが多いよ。けど今回はニックがピアノをたくさん弾いてくれて。

"セプテンバー・フィフス"っていう曲がありますね。それは何があった日なんでしょう? とても印象的なピアノのアルペジオと、ストリングスの悲壮なテーマで、時間をかけてゆっくりゆっくり緊張を高めていく曲ですよね? だからこの日っていうのはよっぽどのことがあった日なのかなって思ったんです。あるいは忘れられないインパクトが刻まれたとか。

トム:9月5日にその曲を書いたんだよ。

(一同笑)

ははっ。ええー残念。

トム:はははっ。

歌詞もないし、他の曲と色合いも違うので、このアルバムのなかだとやっぱり注目せざるを得ない曲かなって思ったんですよ。

トム:その曲ができあがってみて、ほんとに曲というよりも、楽譜っていうか......。気持ち的にもほんとにほかの曲と違うものだったから、逆に、タイトルをつけるよりもその日の日付でとどめておいたほうがいいかなって感じで、日付をタイトルにしたんだよね。

たとえばこの曲はすごく特徴的なものではありましたが、基本的には、音のテクスチャー、ソング・ライティング、実際のパフォーマンスのなかでは、なにがいちばん大事なものだと感じていますか?

トム:ええと......コードのシークエンスで、自分が感じるもの、感情が大切だね。それはほかの人でもそうだと思っているし、重要なことだと思う。

なるほど。では故郷のレスタシャーについて教えてください。どんなところで、どんな音楽シーンを持っているのでしょう?

ニック:じつは地元では数回しかライヴをやったことがなくて、東京のほうが多いくらいだよ。地元の音楽シーンにはまったく属してないね。すごくちっちゃな町なので、ミュージシャン同士のつながりがほんとに強くて、残念ながらそのつながりのなかに僕らは入りこめていないんだ。地元でみんなが聴いているのはロックだったりハード・ロックだったり、あんまりそこから大きなアーティストって生まれてなくて、カサビアンくらいかな。

カサビアンが同郷なんですね。

ニック:そうそう。でも彼らも地元のシーンのつながりのなかにはいなくて、突然出てきてメジャー・レーベルに属したって感じなんだよね。

へえー。そういうみなさんは初めて音楽をもっと広いところにむけて発信しようとしたとき、どこで演奏したわけですか? ロンドンとかに出ていくんですか?

ニック:デビュー当時はよくロンドンに出ていってたね。近い町でノッティンガムとかバーミンガムとか、そういうところにいったり、ブリストルとかブライトンとかマンチェスターとか、地元ではないところでいろいろ活動してたよ。他のバンドとかも、ツアーをするときには、うちの地元にはとまらないで、近所の街に行くんだよね。

日本は、カイトという存在を見つけるのが早かったなと思うんですけど、日本のリスナーと自分たちの音楽性との間になにか相性のようなものは感じますか?

トム:そうだよね。

スコット・ヒスロップ(ドラム):それはどこよりも感じるよね。

ニック:日本に来ていつもいちばんびっくりするのは、みんなとても真剣に演奏を聴いてくれることなんだ。イギリスだと2~3人が真剣に聴いてて、あとの2~30人はうしろで飲んでるって感じだね。

ひどいですね(笑)。なにか日本と合うところがあるとすれば、それは風土とかってことなんでしょうか?

スコット:ちょっとしたポップ感のあるコーラスだったり、なにかを描写するような音楽が日本のリスナーに受けてるんじゃないかなって思うよ。

カイトの過大なエモーションというのは、ヘッドフォンで聴くのとライヴで大きな音を共有するのとでは、よりライヴのほうで伝わるものなのかなと思うのですが、今後もそのような音作りは変わりませんか? なにか次の展開についてヴィジョンがあれば教えてください。

スコット:じつはいままでの作品は作ることに没頭してしまって、あとでどうやってライヴをやるのかということをまったく考えてなかったんだよね。けど今作はライヴを意識して、ライヴをどうやってやっていくかということをすごく考えた作品なんだ。今後もそうやってどうやってライヴをいかしていくかっていう音作りをしていこうと思ってるよ。

Tam Tam - ele-king

 一聴してよく制御されたダブ・サウンド、という印象。快楽のポイントを衝くエフェクト、そして揺さぶりをかけるベース、とダブの基本をきっちり抑えている。20代前半のバンドと喧伝されているが、たしかに年齢を思うと完成度が高い。そして、ひょっとしたら渋い? 女性ヴォーカルに強力なバック・バンド、という編成からポスト・パンク世代のニュー・エイジ・ステッパーズを想起させる。もう30年も前のバンドだが、Tam Tamのルーツがその辺にあることは容易に想像がつく。いま、20代前半の子がどんな音楽を聴いてるのか詳しく知らないが、このバンドのメンバーは他の同級生から浮いていたに違いない。きっと、授業中に音楽誌を隠し読みしているようなタイプだ。

 そう、Tam Tamは〈On-U〉、あるいはダブステップまで脈々と流れるブリストル・サウンドの魔力を体感している人なら好きになる音だ。レゲエとロックの混血、さらにはエレクトロニック・ミュージックまで呑み込んでしまうサウンドの生命力は強く、世紀をまたぎ、また遠い東京という地で装いも新たに登場した......というと話がでか過ぎるか。このアルバムはどちらかというとロックと親和性が強く、ゆえに聴きやすくキャッチー。黒田さとみの伸びやかで美しく、ときに力強いヴォーカルはスターのオーラを早くも漂わせている。決してセル・アウトを意識しているわけではない、ただ自分たちに気持ちのよい音を追求した良質なポップ。まずは、そんな評価ができると思う。

 本作はファースト・フル・アルバムでリトルテンポのHAKASE-SAN(exフィッシュマンズ)をプロデューサーに迎えている。昨年、自主流通で発表したミニ・アルバム『Come Dung Basie』がレゲエやスカのルーツに忠実だったのにくらべ、今作はもっと色彩ゆたかで、軽やかにジャンルを横断している。ダブというフォーマットのうえでマッド・サイエンティストのごとく実験しているよう。でも彼らの場合、サイエンティストというよりはプロフェッサー(!)=博士だ。やはり優等生然としている感は否めない。良くいえばサウンドに対して誠実であり貪欲ということ。バック・バンドの3人が揃ってメガネ男子なのも、何かを物語っている。僕個人はそんな姿勢に親近感を持っている。弱肉強食の時代にメガネ男子は大変なのだ!

 アルバム冒頭はヴォーカル黒田の北海道厚岸の音頭を素材にシャッフルした"Akkeshi Dub"からはじまる。ここから前半は"Dry Ride"のようなステッパーズ・リディムあり、ダンスホールに接近したものありとベースの疾走感が際立つナンバーが続く。アルバム中盤ルーツ・レゲエを奏でたあと、黒田のヴォーカルが引き立つラヴァーズ・チューン"Stop The Alarm"ではトロピカル・フルーツのような濃厚な甘さが空間を支配する。一転、インストに呟くようなリーディングが乗っかる8曲目から、ファンクが加味された曲があったり、"Train"はまさにブリストル・サウンドで、マッシヴ・アタックから現在のダブステップまでを彷彿とさせるナンバー。後半は深く、ポーティスヘッドやサイレント・ポエッツのような暗さを持っている。黒田の歌声は「叫び」にはならず呪文のように囁いている。繊細なニュアンスや謎を残し、アルバムは終焉へと向かう。

 洗練していてスタイリッシュで、率直にいってすごく格好いい。紛れもないダブ・ミュージックだが、その範疇をときに乗り越えてしまう振幅があり飽きさせない。でもね......ひとつだけ注文したくなる。Tam Tamにそれを求めるべきではないかもしれないが敢えて言わせてもらおう。レゲエ=レベル・ミュージックであって欲しいと思う人間にとって、「レベル」は何処にあるのだ、とあら捜しをしたくなる。アリ・アップは「拝金主義者が消え去る(フェイド・アウェイ)」と歌っていたし、原発事故以降、デモを渡り歩く筆者にとってサウンド・デモで謳うリクル・マイの誠実なプロテストに純粋に感動していたので、どうしても、そこがね......と。

 でも、本人たちはそんなこと百も承知のうえだろう。何の運命の悪戯か正真正銘「ジュネ」と読む名前を授かり、URやザ・ブルー・ハーブを愛するベースの小林樹音が作詞した"Inside The Walls"ではチェルノブイリで石棺され、いまも原子炉に埋もれる「壁のなか」の遺体のことを描き出しているという......。歌詞を読んでもそれは伝わらないかもしれない。そっと忍ばしているという感じ。たしかに、被害が明白で、世論の大勢がいまや異を唱える原発問題を表現するのは難しい。レベル・ミュージックとして、あまりにありふれた表現に陥る可能性はあるし、反原発の表現は、それでよいのかもしれない。"Inside The Walls"は熟慮し現れた表現なのではないか。より抽象的に表現することで広義に解釈できるというような。「レベル・ミュージック」などとTam Tamにいらぬ責任を負わせるよりも、いまはサウンド・プロフェッサーとしてさらなる進化を期待させる音にひたすらヤラれ、そして聴き惚れていればよいのかもしれない。自分たちの鳴らしている音楽が一体どんな出自を持っているのか、それが嫌でも突きつけられる日がくるだろう。
 ちなみにベースの小林樹音はJitteryJackal名義で〈術ノ穴〉のコンピレーションにも参加しポスト・ダブステップ風味の曲を提供している。Tam Tamのダークサイドのような感じで印象的だ。また、アルバムに先攻して〈JET SET〉とコラボし制作された"Dry Ride"のEPも発売されている。

DJ DYE (THA BLUE HERB / Oplusd.) - ele-king

春アルバム


1
Aphex Twin - Drukqs - Rhino/Wea

2
Moog - The Electric Eclectics of Dick Hyman - ABC Records

3
Heatsic - Intersex - Pan

4
Donato Dozzy - K - Further Records

5
Marumari - The Wolves Hollow - Carpark

6
Stewart Walker - Stabiles - Force Inc.

7
Billy Cobham - Crosswinds - Atlantic Recording

8
Moodymann - Forevernevermore - Peacefrog Records

9
Apparat - The Devil's Walk - Mute

10
Maino - Day After Tommorow - Atlantic Recording

P-RUFF (radloop) - ele-king

Smoky Beats 7" 10選 (2012.5.8)


1
Benjamin Herman - Haze - Benjamin Herman

2
Anthony Valadez - B-side for philly - Record Breakin

3
Black Monk - Northern Lights - Poo Bah Records

4
Mike Slott - Knock Knock - All City

5
Baptman - GROO - Melting Pot Music

6
C&C Edits - Bonbar - Point

7
Bushmind - Wakers Chant - Lazy Woman

8
Kissey Asplund - Move Me - Record Breakin

9
OBAH - Four Women - Bstrd Boots

10
Electric Conversation - Melodie - Futuristica Music

satol (cold dark / madberlin) - ele-king

cold dark : https://www.colddark.info/
madberlin : https://madberlin.com/
soundcloud : https://soundcloud.com/colddarkmadberlin
beatport : https://www.beatport.com/artist/satol/140790

be dead gone


1
Nujabes - Blessing It - Hydeout Production & Tribe

2
Uyama Hiroto - Stratus - Hydeout Production & Tribe

3
Dj Krush - Kemuri - Mo Wax

4
The Blue Herb - 時代は変わる - THA BLUE HERB RECORDINGS

5
Goth Trad - Sublimation - Deep Medi Musik

6
FaltyDL - Regret - Hotflush Recordings

7
Satol - Biocritical - Cold Dark

8
Satol - Impressionable - Cold Dark

9
Satol - You Know Where - Cold Dark

10
Satol - Isla De Pascua - Cold Dark

The New House - ele-king

 先にはっきりと説明しておくと、本作はパンダ・ベア『パーソン・ピッチ』/アニマル・コレクティヴ『フィールズ』にそ  っ  く  り な 作 品である。ほんとうにそっくりだ。リズム、ハーモニー、ヴォーカリゼーション、クセのあるループ、あたたかいリヴァーブ......ユーチューブには英語で「なぜこれがアニコレじゃないのか?」という感想も書き込まれている。ニュー・ハウスなる東京の5人組、そのアニコレ「的」といった次元を超えてアニコレなファースト・アルバム『バーニング・シップ・フラクタル』を心愉しく聴いた。彼らの方法をめぐっては諸論あってしかるべきところだが、すくなくともこんなフィーリングを日本の音楽のなかに聴けるのはうれしい。いや、結局のところ日本の音楽ではなかったという点にかぎりない惜しさを感じるのだが、ぜひとも大切に蒸留してこれを日本の音楽として精製していただきたいと思う。日本のインディ・ロックの息苦しさから、あるいはなぜかしら一種のエリーティズムに誤解されてしまう日本の「洋楽」受容文化からわれわれを解放してくれるものが、そこにはただよっているのだから。パンダ・ベアからチルウェイヴへとベッドルームを介して流れこむ、あのあかるくアルカイックな、新しいフィーリングが。

 ところで、なぜこれほど堂々とパンダ・ベアでアニコレな音楽をやるのかという疑問をめぐって、筆者には勝手な想像になるニュー・ハウス物語ができあがっている。それは非常に有名なある句を連想したことにはじまる。

船焼き捨てし
船長は


泳ぐかな 高柳重信

 『バーニング・シップ・フラクタル』というタイトルでただちにこの句を思い浮かべた。初句7音の斬り込むような韻律は、焼ける船のすがたを直線のような抽象性をもって鮮やかにとらえるが、よくみればそれはフラクタルで無限的な輪郭を持って燃え上がるのではなかったか......そしてそのばっちりと印象的な像からすこし目をそらすと、むこうには船長が泳いで逃げていく姿。筆者はこの「泳ぐかな」が好きだ。ここで壮絶ながらもどこか滑稽なニュアンスが生まれる。2行あけが船と船長との距離をあらわしているようにみえてくると、あなただって笑うだろう。やがて船長は視界のなかで小さくなっていくはずだ。うける。そこにダメ押しで「かな」とくる。口語であえて訳せば「泳ぐのであるなあ」「泳ぐことよ」「泳ぐのである」だ。うける。大真面目で、シニカルな、しかし冗談のような詠嘆でもって句は結ばれる。いわゆる前衛俳句を代表する、非常に有名な一句である。昭和24年あたりの作品、重信は26歳だ。

 無論ニュー・ハウスが重信の句を念頭にこのタイトルをつけたとは思わない。だが音を聴くにつけ、この連想はなかなかしっくりくるものではないかという思いを深くした。『バーニング・シップ・フラクタル』は「泳ぐかな」の音楽だ。自分で火を放った船から全力クロールで逃げる、逃げる姿が遠方へと消えてゆく。燃やした船とはなにか?

 それは現在のUSインディ・ミュージックだ。ことにパンダ・ベアからチルウェイヴにいたる一大ストリームである。自らにもシーンにもいまもっとも大きな影響をおよぼす対象に、火を放ちたいと彼らは思わなかっただろうか。火を放ってわーっとか言いながら騒ぎ、遊び、それが焼け朽ちていくのを眺めたいとは思わなかっただろうか。あの屈託ないまでにそのまんまパンダ・ベアな音を鳴らすモチヴェーションとしては、筆者にはそれ以外説明がつかないように思われる。

 だがその放火がいたずらレヴェルに終わりかつまったく悪びれる様子がないところがニュー・ハウスの可愛らしさだ。"スモール・ワールド"のけろりとしたたたずまいはどうだろう。"ウォーター・カーシズ"や"ファイアワークス"など『フィールズ』以降のアニコレ名曲にはつきものといえる中抜き3連符のリズムに南国的なコーラスが独特の節回しで唱和し、ループする。これは楽しいにちがいない。"ヒー・ハウルズ"のながい冒頭も遊び心がある。

 木や草や生き物たちのおびただしい息づかいを感じさせる、これまたアニコレ一流のサイケデリックなハーモニーが模倣され、曲名に掛けられたユーモアがたちあがってくる。そして燃やして騒いであとはどうしたものか、逃げちゃえとばかり「泳ぐことよ」、泳いだのである。ちょうど曲名が"ポンド(Ⅰ)"だ。音がやみ、あとに波のたゆたいばかりがのこされたとき、われわれはこの真面目なようでいたずらのようでもある、切実だが可愛げのある、一種のおかしみと愛嬌を思い、破顔するだろう。ここには愛情や敬意とともに彼らなりの引導を渡すべく、おもいきりバーニングさせたパンダ・ベア/アニマル・コレクティヴがある。

 終盤を飾る数曲はその意味では重要かもしれない。"コラージュ・オブ・シーズン"のアンビエントはアニコレよりも淡くかそけき情感をたたえている。和音の色が信号のように一定間隔で置き換わり、小さくカタカタと弦の音が響いてくる中盤からはじっと耳をそばだててしまう。"スパイラル・クラウド"もパンダ・ベア的な歌唱スタイルではあるが、トラック自体にオリジナルな感覚があって、非常になだらかな、繊細な起伏をふくんだ展開をみせる。この淡さこそは筆者が日本のチルウェイヴのなかに期待したいもっとも大きな要素だ。こうした網目の細かい織布のような音で、あらゆる歴史や文化を乾燥させ砕いたあとのような、われわれの顆粒状のエモーションをすくいあげてほしいのである。

Summer of Hate in Osaka - ele-king

 大阪で20年以上生活してきたが、この数年で街がもっとも大きく変わったように感じる。ついこのあいだまで、都市部のどこに行っても工事中の箇所ばかりで迷路のように入り組んで歩きにくいことこの上なかったのだが、気がつけば新しいデパートやショッピングモールが次々に完成していた。小奇麗に整備された(しかしまだ工事中の場所も多く、これからも改装が続けられるのだろう)JRの大阪駅の周辺は、いまでは「OSAKA STATION CITY」と呼ぶらしい。

 大阪でクラブの摘発が大々的にはじまったのは、「歩きにくい」と感じていた最中の2010年の末のことだ。西心斎橋の繁華街、通称アメリカ村のクラブが摘発されたことを報じる新聞にはお決まりの騒音や犯罪、ドラッグの問題(単にイメージでしかないものも当然あるだろう)が取り沙汰されていたが、摘発の理由はそのどれでもなく風営法違反であった。はじめの摘発はまさにイヴェントの最中におこなわれ、見せしめのようにしか感じられなかったのが僕としては率直なところだ。
 風俗営業許可において、「客にダンスさせる行為」は3号もしくは4号の営業許可が必要となるが、いずれもダンスフロア面積が66m2以上必要であり(つまり小箱のクラブはこの時点で許可が取れない)、また、これを取得すると24時までの営業となる。そうではなく、バーや居酒屋のように深夜営業の許可を取ると、今度は深夜にダンスをさせるという営業行為ができなくなってしまう。いずれにしても、深夜のクラブ営業......24時以降酒を販売してダンスさせることは法律上規制されることとなってしまう。現行のクラブ・カルチャーと噛み合っていないのは明白だが、事実として法が改正されていない以上、深夜に酒を出して客を踊らせているクラブはいつ摘発されてもおかしくない、ということがその時点で改めて示されたのであった。実際、その摘発をきっかけに次々とクラブが警察に摘発されたり、厳重注意されたりすることが続いた。
 以来、大阪では深夜営業を自粛するクラブが相次ぎ、さらには自主的に営業を中止する店も現れた。当然クラブ・イヴェント自体が減り、大物のDJが海外から来日しても24時でクローズせざるを得なくなり、大阪のクラブ・カルチャーは瀕死も同然となった......。それでも、大阪のDJたちやオーガナイザーたちは涙ぐましくも法に抵触しないように夕方から日付が変わる前ぐらいに終わるイヴェントを地道に続けていたし、さらにはそれまでのクラブ営業の問題点(治安や騒音、ゴミなど)を反省し、より地域と共存できる営業をするべきだという意見も多く挙がっていた。「法改正はすぐに実現しなくても、現行でできることもある」、と。今年のはじめ友人のDJが(もちろん夕方に)開催しているイヴェントに足を運び、ダンス・ミュージックのイヴェントをこの状況下で開いている彼の努力を讃えると、彼は「まあ細々とやるしかないよなあ」と言いつつ、若い世代がやっているエレクトロニック・ミュージックのイヴェントが面白いことを教えてくれた。こんな街でもまだダンス・ミュージックは鳴っているのだとそのときは感じたのだが......NOONの摘発が起こったのはその矢先だった。

 今年の4月5日、老舗のクラブ/カフェであるNOONが21時50分ごろに「客を踊らせていた」事実で警察が押し入り、摘発された。この日のイヴェントは23時過ぎに終わる予定であり、深夜帯でないにもかかわらず、だ。釈然としないが、「より厳密に風営法を摘要した」結果だというのが警察の言い分だそうだ。こうなってくると、もはや営業形態の問題の範疇を超えているように思われてくる。現在のクラブを片っ端から公権力が潰そうとしているように感じられても仕方ないのではないか......。
 「公共圏」がテーマであった紙ele-king5号のミタイタルトライアングルにおいて、三田格が言うように「特殊なところから一般的なところに応用範囲が広がっていくのは目に見えている」こと、まさにそれが起きている。しかしなぜ、そうまでしてクラブを取り締まらなければならないのか? その背景には、クラブが薬物や犯罪の温床であるというような短絡的なイメージの蔓延や、大阪でのここ数年の政治体制の変化や、都市部の再開発など、さまざまな要素が複雑に絡み合っていることだろう。その不透明な不気味さのなか、大阪の夜からはダンス・ミュージックは鳴り止んでしまった。東京や福岡でのクラブ摘発のニュースも記憶に新しいが、いつどこで、大阪で起こったことがはじまってもおかしくはない。そのDJの友人がイヴェントをやっていたクラブが閉店するという話をその後耳にしたが、悔しさはあってももはや驚きはなかった。LCDサウンドシステムがかつて歌ったことを自分の街で経験するとは思っていなかった。が、いまはまさに、大阪は俺を落ち込ませる......そんな気分だ。

 それにしてもあらためて思い知らされて愕然とするのは、クラブ・カルチャーがこの国では文化としてきちんと認められていないという事実だ。経済とは別のところにある価値観は簡単に無視されてしまう。
 個人的なことを書くと、僕自身も大阪のクラブで踊った経験は何度もある。たしかにケンカや酷い酔っ払いを目撃して嫌な思いをしたこともあるが、それ以上にたくさんの音楽やひととの出会いがあった。なかでも最高だったのは、20歳のときに観たオウテカのライヴで、フロントはなんとLFOという豪華さだった。オウテカが登場すると照明はすべて落とされ、真っ暗闇のなか、ビートと金属音が入り乱れ、カオティックに狂ったファンクネスに身体を無理矢理動かされた。そこには本当に純粋に音しかなかった。もちろんあんな強烈な体験は、いまの大阪では絶対にできない。
 ただ、オウテカの名前を出したのは昔を懐かしむためではなくて、彼らがかつてクリミナル・ジャスティスが禁じた「反復的ビート」に対抗して「アンチEP」を出したことに何かしらのヒントがあるのではないかと思うからだ。「俺たちの音に反復的ビートはない」という皮肉めいた反抗心の根底にはもちろん、明確な意思表示がある(※)。
 もういちど大阪の夜のフロアで踊るために、わたしたちにできることはあるだろうか? この気味の悪い夜の静けさの背後にある状況について、関係者や詳しい方々に話を聞きつつ、引き続き考えていきたいと思っている。

(参照:風俗営業許可申請ネットワーク https://www.e-fuei.net/102.html

(※)「反復するビート(Repetitive Beats)」を禁止する法律、クリミナル・ジャスティスに対して、オウテカが『アンチEP』になら、アンドリュー・ウェザオールはRetribution (仕返し)という名義で、堂々と「Repetitive Beats」という題名のシングルを発表した。ドラム・クラブが"キル・ザ・ビル・ミックス"、プライマル・スクリームが"ノー・ユア・ライツ・ミックス"、ウェザオールは"ウェイストランド・イングランド・ミックス(不毛の英国ミックス)"などを手がけている。

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