「!K7」と一致するもの

Gabby & Lopez - ele-king

 ギャビー&ロペスの音楽は、それ自体が多幸感に溢れているわけではないのだが、聴いている人をほんわかとした気持ちにさせる。間違ってもアッパーではないし、いまどきのドリーミーな感じでもないが、気持を楽にしてくれる。ポスト・ロックのアンビエンスのなかで、たとえば〈スリル・ジョッキー〉のような洗練されたアブストラクト・サウンドへと向かったとしても、他では代用が効かない、ギャビー&ロペスにしか出せない感覚がある。彼らの音楽には一種の慎ましさ、物静かであることの快楽がある。森俊二が〈メジャー・フォース〉という日本で最初のヒップホップのインディ・レーベル出身というのが嘘のようだ。

 ギャビー&ロペスは、森俊二と石井マサユキというふたりのベテラン・ギタリストによるプロジェクトで、本作『トワイライト・フォー・ナインス・ストリート』は、2006年の『ニッキーズ・ドリーム』以来6年振りにリリースされる3枚目のアルバムとなる。このアルバムには、はからずともマーク・マッガイアとの共通点を見出すことができる。ギター・サウンドの追求、波乗り好きなこと、ムードを醸し出すアンビエント的な音楽性、とくに"Reflection "のディレイ・サウンドなどは......しかし、ギャビー&ロペスには、日本の音楽に特有の繊細さがある。さざ波のようなかすかな揺れ動きにこそ、彼らは美しさを見出している。ギターのいち音いち音に細心の注意が払われ、エレクトロニクスの注ぎ方にも深い配慮がなされている。そして、2本のギターの交錯する響きこそが、このプロジェクトの肝にある。

 "Birdcall Lulu"や"She Likes Motor Cycle"はファンにとってはキラーな曲のひとつだ。ふたつのギターの音符は水飴のように溶け、静けさのなかで音が躍動している。ベースがうなる"Half Step Ahead "では、マニュエル・ゲッチング流のディレイに加え、ジェフ・パーカーのポスト・バップめいた質感を思い出す。
 アルバム・タイトルになった"Twilight For 9th Street"はアンビエントというよりも、彼ら流のバラードで、アルバムのなかでもっとも感傷的な曲だが、演奏される2本のギターの弦の振動が織りなす音響の美しさは将来への不安を一時期的にせよ、確実に取りのぞいでくれるだろう。すでにいろんな名カヴァーが存在するボブ・ディランの"Just Like A Woman"を彼らもカヴァーしている。

 『トワイライト・フォー・ナインス・ストリート』は、何か偉そうなことを言っているわけではないが、我々にとっては大切な音楽のひとつだ。過去の2枚と比較すると、ギターの演奏もほどよく抑制されている。ドラムパートは控えめに演奏され、2本のギターの音色の甘美さが前面に出ている。UMA UMAの叙情にも接近しているように思えた。いずれにせよ、間違いなく、彼らの最高作。

DBS presents - ele-king

 良くも悪くも、日本でもブローステップが幅を効かせるようになった現在、あるいはまた、ポスト・ダブステップが目立つようになったこのとき、カウンターな立場からそれら新しいメインストリームに食い込むかのように、ドラムンベースとダブステップが熱を帯びてきている。今回のDBSは、そのUKの興奮を伝えるべく、ドラムンベースの王様、ゴールディー、そしてダブステップのオリジナル世代のDJ、ヤングスタのふたりを呼ぶ。
 6月の梅雨のなか、ぶっ倒れるまで踊りたいヤツはここに来い!

2012. 06. 16 (SAT) @ UNIT
feat. GOLDIE
YOUNGSTA + MC TOAST
with: ENA, DJ TAKAKI
vj/laser: SO IN THE HOUSE
B3/SALOON: STITCH、TETSUJI TANAKA、DJ MIYU、DOPPELGENGER、DUBTRO、dj noa(Jar-Beat Record)
live painting: The Spilt Ink

open/start 23:30
adv.3,500yen door. 4,000yen

Supported by STUSSY

info. 03.5459.8630 UNIT
https://www.unit-tokyo.com

★ドラム&ベースの帝王、ゴールディーとUKダブステップNo.1DJ、ヤングスタが激突! ゴールディーは先頃、自ら主宰するMetalheadzより記念すべき通算100リリースに新曲"Freedom"を発表、壮大かつ破壊力を放つ"Freedom"は圧倒的な存在感を示す。そしてRINSE FM、FWDの重鎮にしてUK/DUBSTEP界No.1DJに選ばれたヤングスタがMCトーストを引き連れ3年振りに来日決定! UKリアル・アンダーグラウンドのサウンズ&ヴァイブスがここにある!

Ticket outlets:
PIA (0570-02-9999/P-code: 170-812 )、 LAWSON (L-code: 78429 )
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
clubberia : https://www.clubberia.com/store/

渋谷/disk union CLUB MUSIC SHOP (3476-2627)、TECHNIQUE (5458-4143)、GANBAN (3477-5701)
代官山/UNIT(5459-8630)、Bonjour Records (5458-6020)
原宿/GLOCAL RECORDS (090-3807-2073)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)、JET SET TOKYO (5452-2262)、
disk union CLUB MUSIC SHOP(5738-2971)
新宿/disk union CLUB MUSIC SHOP (5919-2422)、Dub Store Record Mart (3364-5251)
吉祥寺/Jar-Beat Record (0422-42-4877)、disk union (0422-20-8062)
町田/disk union (042-720-7240)
千葉/disk union (043-224-6372)

UNIT
Za HOUSE BLD. 1-34-17 EBISU-NISHI, SHIBUYA-KU, TOKYO
tel.03-5459-8630
www.unit-tokyo.com


★GOLDIE JAPAN TOUR 2012
6/15(金) 広島SACRED SPIRITS CAFE JAMAICA (問)082-240-0505
6/17(日) 福岡Kieth Flack(問)092-762-7733

★YOUNGSTA + MC TOAST JAPAN TOUR 2012
6/15(金)大阪CIRCUS

GOLDIE (aka RUFIGE KRU, Metalheadz, UK)
"KING OF DRUM & BASS"、ゴールディー。80年代にUK屈指のグラフィティ・アーティストとして名を馳せ、92年にファビオ&グルーヴライダーのDJ MIXに触発され、4ヒーローのレーベル、ReinforcedからRUFIGE KRU名義でリリースを開始、ダークコアと呼ばれたハードコア・ブレイクビーツの新潮流を築く。94年にはレーベル、Metalheadzを始動、ドラム&ベース革命を遂行する。自身は95年にFFRRから1st.アルバム『TIMELESS』を発表、ドラム&ベースの金字塔となる。98年の2nd.アルバム『SATURNZ RETURN』はKRSワン、ノエル・ギャラガーらをゲストに迎え、ヒップホップ、ロックとのクロスオーヴァーを示す。その後はレーベル運営、DJ活動、俳優業に多忙を極め、リリースが遠のくが、07年、RUFIGE KRU名義による9年ぶりのオリジナル・アルバム『MALICE IN WONDERLAND』をMetalheadzから発表、シーンの最前線に復帰。以来ゴールディーの創作活動は加速し、08年に長年構想されてきた自伝的映画のサウンドトラックとなるアルバム『SINE TEMPUS』をMetalheadzのウェブ限定で発表。09年にはRUFIGE KRU名義のアルバム『MEMOIRS OF AN AFTERLIFE』をリリース、また音楽とシンクロして近年目覚ましい活動を示すアートの分野でも個展を開催する等、英国が生んだ現代希有のアーティストとして精力的な活動を続けている。音楽活動20周年となる2012年、Metalheadzの通算100リリースに新曲"Freedom"を発表、壮大かつ破壊力を放つ"Freedom"はMetalheadz、ゴールディー渾身の作品である。
https://www.goldie.co.uk/
https://www.metalheadz.co.uk/
https://www.facebook.com/Goldie
https://twitter.com/MRGOLDIE

YOUNGSTA (TEMPA, RinseFM,UK)
沸騰するダブステップ・シーンで"Master of the decks"の異名を持つDJ、ヤングスタ。12才からDJをはじめ、13才でロンドンのガラージ専門ラジオ局、Freak FMに出演し、若くしてアンダーグラウンド・シーンに頭角を現す。その後、ガラージからダブステップへのサウンドの変遷とともに歩み、DJハッチャとともにシーンのパイオニアDJとなる。'05年にはダブステップのトップ・レーベル、TEMPAからMIX CD『DUBSTEP ALLSTARS:VOL.2』をリリース、またDMZからローファーの"Twisup"のリミックスを発表。翌'06年には『DUBSTEP ALLSTARS:VOL.4』をハッチャとともに手掛け、まさにダブステップ台頭の起爆剤となる。'10年にはセヴン、SP:MC、クリプティック・マインズとのコラボレーションを発表、'11年には最新MIX CD『RINSE:14』を手掛ける。シーンを代表する放送局RINSE FM、パーティー、FWD>>にレギュラー出演し、'11年dubstep forumアワードでベストDJとベスト・ラジオショーの2冠に選ばれた。
https://www.tempa.co.uk/
https://www.facebook.com/Youngsta

LET'S DANCE - ele-king

 ナイト・クラビングは、世界のほぼすべての都市における人びとの愉しみであるばかりか、音楽文化の重要な拠点でもある(本サイトの読者にはその詳細は説明するまでもないでしょう)。しかし、日本では風営法によって、夜、音楽でダンスすることが規制されている。これは戦後、ダンスホールが売春目的で使用されていたことに起因する法律なのだが、それは今日、音楽目的のクラブにおいても適応されうる文言として残っている。黙認することもできるが、ご存じように、ここ数年は大阪のクラブ摘発が続いている。その現状と風営法については、木津毅が「大阪の夜にはダンスがない」にて書いているので、そちらをご参照いただきたい。そして、こうした事態を受けて、いま現在、風営法の改正に向けての『Let's Dance署名』という素晴らしい動きがはじまっている。

 実は、1990年代末に、港区のクラブが同じように片っ端から摘発されたことがあった。そのときも、もっとも被害を受けていたクラブを中心に、なんとか風営法を改正できないかとクラブのスタッフの努力や呼びかけで関係者が集まってミーティングを開き、当時の『ele-king』でもその問題を取り扱ったりもしたが、結局、うまくいかなかった。その苦い思いを抱いている人は僕と同世代では少なくないだろう。そういう意味では、今回はチャンスでもある。
 署名とは、自筆で書かなければ、議会には持っていけない。多少、面倒かもしれないが、クラブ・カルチャーの将来のためですよ! 『Let's Dance署名』のサイトからPDFをプリントアウトして、署名して、郵送しましょう。(野田努)

interview with Grimes - ele-king


Grimes
Visions

4AD/ホステス

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 キャリアのはじめからドローンやアンビエントを志向していたという女性アーティストなど、いまやめずしくないのかもしれない。グルーパーLAヴァンパイアズはもちろんのこと、ローレル・ヘイローのようなIDM、ジュリアナ・バーウィックジュリア・ホルタ―などクラシカルな音楽の素養をオリジナルなフォームに転換する才媛たち、高い方法意識をもった女性アーティストの名はいまいくらでも挙がる。アンダーグラウンド史上空前の女子繚乱の季節がおとずれているのかもしれない。ことに宅録女子という未掘の類型がそのカギとなるだろう。エレクトロニック・ミュージックにおいても、ガレージ・ポップにおいても、そうした女性たちの数や影響力はすでにはかりしれない値を示しはじめている。
 
 今回取材したグライムスはそうしたアーティストたちのなかで群を抜いてポップな存在だ。きりっとそろえた前髪に印象的なメイクとまなざし、DIYないでたちにはモードな雰囲気がただよい、ある種のジャンル的な敷居の高さを解除するにはじゅうぶんなファッション性をそなえている。それでいて音はするどくインディ・シーンの先端をとらえ、活動拠点はモントリオールの手弁当なアート・スペースである。
 〈ヒッポス・イン・タンクス〉や〈ノー・ペイン・イン・ポップ〉といったリリース元も、野の才能を見繕って時代性を生みだしていくことに長けたレーベルだ。彼女はファッションとしてではなく、むろんのこと彼女のなかのミューズのためにひたむきに音楽活動をつづけてきた。それがいま、育まれつつある宅録女子カルチャー、そしてあまねくエレクトロニック・ミュージック・シーンのポップ・アイコンとして、おおきな輝きを放ちはじめたのである。

 超ゴス少女だったというグライムスのなかに同居する死や不快のモチーフと宗教音楽体験、中世芸術への思慕。そうしたものがドローンにはじまり、ダブステップやウィッチ・ハウス、あるいはクリスティーナ・アギレラを通過して、彼女ならではのドリーミーなエレクトロニック・ポップを形成してきた様子がこれらの回答のなかにはよく示されている。
 そしてまた、飢えても好きなことをやりたいという奔放であるようで実直な強い意志、恋愛をめぐるかなりプライヴェートなことがらについてもこだわりなく述べる態度、音楽や自分の志向性への深く熱心な考察など、彼女の人間としての魅力までもがじゅうぶんにつたわってくるだろう。グライムスことクレール・ブーシェ、彼女こそ現代のポップアイコンである。

このアルバムの前までは私は何も持っていなかったから。家賃も払えず、住所不定で、学校も退学して仕事も辞めた。恋愛も辛い関係で上手くいっていなかった。それでも信じて音楽活動を続けるしかなかった。

あなたが音楽制作に向かうことになったきっかけを教えてください。

クレア:友だちがみんな音楽をやっていたの。私はそれまでバレエにどっぷり浸かっていた経験から音楽がとにかく大好きで、自分でも作りたいと思っていたんだけど、やり方がわからなかったの。で、友だちが具体的な作り方や録音方法を教えてくれたのがきっかけで、自分でじょじょに掘り下げていったの。

はじめはベッドルームでディスコ・ミュージックをつくっていたとうかがいましたが?

クレア:むしろ、実験的なドローン音楽ね。最初の頃は。

〈アルブツス〉というコミュニティはどういう経緯で知ったのですか。またそこはとてもDIYなムードで運営されているということですが、あなた自身はそこでどのような活動をされていたのでしょう?

クレア:〈アルブツス〉は実は高校のときの親友が運営しているの。だから13歳くらいからの付き合いになるわ。カナダって主要都市は物価がすごく高くて、私がこの5年くらい住んでいるモントリオールは逆にすごく安いの。だから多くのアーティストがモントリオールに引っ越すようになって、いまではカナダにおけるアートの中心都市になっているわ。そうやって私も仲間とモントリオールに引っ越して、みんなでライヴ会場をはじめたの。すごくDIYなノリのね。チャージはどんなにとっても5ドルまでとかね。
 常に人でいっぱいで、なかで煙草も吸えるし、お酒も持ち込めて、毎晩いくつもバンドが出演するの。ものすごい盛り上がりだったんだけど、結局警察によって閉鎖させられたわ。でも、そこを拠点に音楽活動をしていた仲間がたくさんいて、そこを運営していていま私のマネージャーをしている彼がレーベルを立ち上げることにしたの。というのも、そこでライヴを定期的にやるだけで、モントリオール以外に活動を広げられずにいるバンドがたくさんいたから。そういうバンドをもっと国外に売り出していこうと彼は思ったの。そうやってはじまったのが〈アルブツス〉レーベルよ。

あなたのトライバルで儀式めいた雰囲気やゾンビのモチーフはどこからきたものですか。またそれはあなたのセルフ・イメージにつながるものですか?

クレア:なんとなくそれもあるんじゃないかしら。私は「死」にすごく惹かれるし、「不快なもの」にもすごく惹かれるの。若い頃にはマリリン・マンソンやトゥールをすごく聴いたわ。高校では超ゴスだったし。メタルのアートワークが大好きで、あと中世の芸術がすごく好きだった。マカーブレ(死をテーマにした西洋の中世芸術)とか。
 私がやっていることの本質は、受け手にとってわかりやすい要素を最低限入れること。ポップ・ミュージックの要素だったり、前髪をたらした可愛らしい女の子のイメージとか。そういう人が共感しやすい要素を取り入れつつ、それとは対照的な不快、或は不気味なものと組み合わせてバランスをとるの。つまり、私の音楽の不気味な声や音やアートワークというのは、わかり易い要素を伴わせることで、人の潜在意識に入り込み易くなる、という。よりショッキングでなくなる。「気味が悪いから見たくない」という壁を取り除くことができる。ふたつを同時に提示することでともに正当化できるの。
 また逆の見方をすると、私はハードコアといったすごくノイジーなシーンにずっといたわけで、そこではむしろポップ・ミュージックをやるほうが過激だと思われていた。だからグライムスとしてダークなモチーフを持ち続けることで、そっちのコミュニティにも支持されたいという思いもある。ポップ過ぎるものを彼らはクールだと思わない。このふたつの対照的な要素の融合とバランスを突き詰めたいの。

『ヴィジョンズ』や『ガイディ・プライムス』のアートワークのドクロやゾンビにはリボンや花がついていますし、"ヴァネッサ"のミュージック・ヴィデオなどをみていても、女性が飾るということへの批評を感じます。ドクロやゾンビやおどろおどろしいペインティングは、女性の美について両義的な意味をあらわしたものだと考えてよいでしょうか?

クレア:どうかしら。昔からそういうダークなものにただ惹かれるの。でも何を美しいと思うかは人それぞれで違って当然だと思うわ。

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好きじゃない仕事をするくらいなら、空腹や寒さにも耐えるほうがましだって思っていた。信念のためだったら、快適な生活を犠牲にしてもいいと思うの。9時5時の仕事をするくらいなら暖房費が払えなくて凍えたほうがましだって思うの。

最近はアナログ志向のアーティストが増えてきたように感じます。あなた自身もJUNOを使用されているようですが、イクイップメントについてはどのように考えていますか。

クレア:私はデジタル機材のほうが選択肢の自由があるから好き。JUNOは超融通が効く機材だわ。あれ一台でなんだってできる。ヒップホップの曲だって作れるし、IDMのトラックだって作れる。とにかく操作しやすいし、デジタルだから無限に何でもできる。もちろんアナログでも同じことはできるけど、私は昔からデジタル思考で、無駄が省けたほうがいい。だから楽なやり方があるだったらそっちを選ぶわ。
 それとあと、できた曲に改良を加えることが多いから、デジタルだと簡単に手を加えることができる。いちど録音したらそれで終わりってわけじゃない。曲が出来た後で、「全部変えたい」って思うことがしょっちゅうあって、全部始めからレコーディングし直す代わりに、必要な箇所だけ手を加えればいい、という効率性は私にとって重要なの。

あなたのヴォーカル・スタイルに影響を与えたものがあれば教えてください。また、音域を広げる練習を積んだというのは独学によるものですか?

クレア:独学だけど、影響を受けた部分も大きいわ。たとえばいまは次の作品の曲を作っていて、アーサー・ラッセルのヴォーカルにすごく影響を受けているわ。今作に関してはアウトキャストやダンジョン・ファミリーやマライア・キャリーあたりにすごくはまっていたわ。もちろん彼らのほうが私よりもずっと歌はうまいんだけど、自分の声を鍛えるのに、彼らの曲に合わせて歌ったし、プロダクション面でも影響を受けているわ。

"sagrad npekpachbin"や"ワールド・プリンセス"、"ノウ・ザ・ウェイ"などでは声とハーモニーの音楽的な可能性が意識されています。あなたには聖歌隊などの経験があるのですか? そうでなければこうした曲はどういうものにインスピレーションを得て作られたものですか?

クレア:中世の音楽をよく聴くのと、宗教音楽もよく聴くわ。私自身は信仰心が強いわけではないけど、子どもの頃は家庭がカソリックだったからカソリック・スクールに行ったし、毎日教会に通わされたわ。だから聖歌合唱に接する機会は本当に多かった。そういう合唱音楽は私にとって何か霊的なものだったり、漠然とした全知全能な存在を連想させるし、子どもの頃に経験したものとして懐かしいものでもある。それに、合唱音楽には独特のパワーを感じるの。
 私は信仰心が厚いわけでは決してないけど、キリストが十字架に張り付けになった陰惨なモチーフを表現した偶像や絵画に覆われた様式美を極めた巨大な建造物の中に立って、大きな窓、ステンドグラス、高い天井に囲われ、その巨大な空間の自然な音響の中で、2~300人の子供が合唱するのって、本当にパワフルだし、鮮烈なイメージとして私の脳裏に焼き付いているわ。5歳の時の思い出が。当時はまだ神を信じていて、歌いながら全知全能の神の存在を常に感じてたし、その存在に怯え、とにかく劇的な体験だった。私にとって芸術や音楽触れた最初の経験でもあったし、私の子供時代の大きな部分を占めているわ。

ジュリアナ・バーウィックやグルーパーは聴いたことがありますか。

クレア:彼女たちの音楽はすごく好きよ。グルーパーとは一緒にライヴもやったことがあるわ。

彼女たちはウーマン・リブとはまったくべつのやり方で女性の強さや繊細さを表現したアーティストだと思います。あなたの音楽にも共通したものを感じますが、どうでしょう?

クレア:たしかに彼女たちのフェミニスト精神というのは、彼女たちの存在そのものだったり、彼女たちが自分のやりたいことを貫いていることに集約されていて、決して押し付けがましくない、というのはいいやり方だとは思うわ。というのも、政治的なメッセージをあからさまに作品の中で主張するのは人をしらけさせるだけだと思うの。だからフェミニズムのいちばんいい取り上げ方というのは、必要な時には自分を貫くけど、過度に主張し過ぎないことだと思う。そうした過度な主張がこれまでフェミニズムに悪いイメージを与えてきたから。

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ダンス・ミュージックは何か深い部分で人間くさいものに訴える音楽で、ポップ・ミュージックをみんなバカにしがちだけど、実はポップ・ミュージックって極めて人間くさいものだからこそ多くの人に受け入れられるものなんだと思うの。

ハルファザ』の曲の大部分の歌詞は、まとまった意味を構成することを意図的に避けているようにも感じますが、歌詞はあなたにとって音以上に重要なものですか?

クレア:前作よりも今作のほうがテーマがあって、歌詞にも重点を置いているわ。『ハルファザ』はほとんど歌詞を書かなかったも同然だったから。今作『ヴィジョンズ』では歌詞を書いたけど、それでも曖昧なものにとどめている。というのも、私にとって音楽はものすごく感情的なもので、そこに込めた思いを言葉で赤裸々に人に伝えるのは難しいの。

『ヴィジョンズ』の歌詞は2人称が多く用いられていて、すれ違いや孤独を生むラヴ・ストーリーが暗示されているように思われますが、どうでしょうか。「私の心はどこにもない」("ジェネシス")「ひとりで生きるのはやめられない」("エイト")「ああすべては部屋の中」("アンティオコス")などは、「愛してほしい」("シンフォニア")といいながらも孤独を避けられないものとしているようで印象的でした。

クレア:このアルバムを作っていたあいだ、いろいろなことを経験したわ。たとえば、私がミュージシャンとして成功することを歓迎しない相手と数年恋愛関係だったとか。応援してくれるどころか、逆に対抗してこようとするから、結局別れることにした、という。あと、年がら年中ツアーに出ていたから、いきなり側にいられなくなったというのもあって。長いあいだ好きでずっと付き合ってきた人との関係を続けるのか、それともすべて捨てて自分の道を進むのか、という選択に直面して、結果的には後者を選んだわけで、それが最良の選択だったと頭でわかっていても、気持ちはすごく複雑だった。
 とくにこのアルバムの前までは私は何も持っていなかったから。家賃も払えず、住所不定で、学校も退学して仕事も辞めた。恋愛も辛い関係で上手くいっていなかった。それでも信じて音楽活動を続けるしかなかった。これで成功しなかったら大変なことになっていたわ。それだけ大きな賭けだった。でも、一か八か賭けるなら今しかないとわかっていた。

『ヴィジョンズ』は引きこもっていたときに構想した作品だとうかがいましたが、どのようなことがあったのでしょうか。また、タイトルはその閉塞した場所からみえたヴィジョンということなのでしょうか?

クレア:私の作品への取り組み方を象徴している言葉だと思っている。今作は自分にとって初めてのきちんとしたアート作品だと思っている。アートというのは私にとって常に非論理的で抽象的なもので、現実から離れて言葉では説明できないものの気まぐれで存在するもので、異常なまで感情的なものなの。
 大学在学中にヒルデガルド・フォン・ビンゲンについての論文を書いたことがあって、彼女は間違いなく統合失調症だったと思うんだけど、中世の女性作曲家で、当時はまだ女性が音楽を作曲することが受け入れられていなかった。でも実は、独創的すぎるという芸術的観点から軽視されたのではなく、神に対する冒涜だと思われたからだったの。彼女は実際法王と会って話をして中世ヨーロッパでもっとも話題になった作曲家となったの。彼女は自分が神から幻視体験(ヴィジョンズ)を受けていると主張していて、自分が作る音楽、文章全ては神の指示によるものだと言うの。私はこの話にすごく興味を持ったの。果たして彼女は心からこれを信じていたのかって。実はめちゃくちゃ賢い人で自分の芸術作品を世に伝えるにあたって創作の神秘についてそう語ったのか、それとも心底そうだと信じていたのか。だからこそ頭のイカれた天才だったと思うの。
 私も自分の作品を作る上で同じことを考えてみたの。いったいどこまでが私自身が考案したもので、どこからが私を超越したものの真実で生々しい表現なのかって。実際、曲がどうやってできたのか覚えていないことだってある。何時間も、例えば14時間、15時間、ずっと制作にのめり込んで、はっと気付くと曲が出来ていて、それがどうやってできたのか言葉では説明できないっていう。

サウンドからすれば『ヴィジョンズ』は『ハルファザ』や『ガイディ・プライムス』よりもポップになっている印象があります。また引きこもっていたとはいえそれが暗鬱な調子ではなくドリーミーな曲調で表現されていることが心に残りました。そうしたポップさや明るさのあるドリーム感は意識して生まれてきたものでしょうか?

クレア:どこまでが意識的かはわからないけど、アルバムを作っている最中に思ったのは......。私が強く惹かれる、つまり別世界に連れてかれるっていう音楽が2通りあって、その一つが合唱宗教音楽で、もう一つがポップ・ミュージックなの。聞いていて凄く気持ち良くて心の琴線に触れて思わず震えてしまうっていう。おかしな話なんだけど、私をそうさせる音楽って例えばクリスティーナ・アギレラだったりするの。「もう完璧!」って、つぼにはまるの。その歌詞のせいでも、真意のせいでもなく、ただ聴いてピンとくるものがあるの。
 ダンス・ミュージックは何か深い部分で人間くさいものに訴える音楽で、ポップ・ミュージックをみんなバカにしがちだけど、実はポップ・ミュージックって極めて人間くさいものだからこそ多くの人に受け入れられるものなんだと思うの。人間の基本にあるものに訴えるからみんなが共感できる。それって素晴らしいことだと思うし、自分の音楽でも大切にしたい部分なの。音楽を作っている時に一番大事なのは、楽しんで作ること。私がポップ・ミュージックを作る理由は、その楽しさを極めた音楽を作りたいから。

ウォッシュト・アウトのリミックスは『ヴィジョンズ』の制作時と重なりますか?

クレア:あれはアルバムよりもずっと前よ。1年半くらい前かしら。

ビートのない音楽をつくることに興味はありますか? 『ヴィジョンズ』はダンス・ミュージックとして洗練されたものであると同時にアンビエント・ミュージックへと展開していくような可能性も含んだ作品だと思いますが?

クレア:考えたことは何度もあるけど、もっと歳をとってからやろうと思っているわ。そもそもドラムなしのヴォーカル・ミュージックを作るには歌をもっと鍛えないといけないし。50ものヴォーカル・パートを重ねようと思ったら、ドラムのビートなしでタイミングを合わせるのはレコーディングのオーヴァーダブにしてもライヴでも難しい技術的を要するわ。でも興味はある。純粋な和声音楽もよく聴いているわ。でも、グライムスとしての今の活動を考えると、そういうアルバムを作ってもライヴで再現できないだろうから、作るならツアーをしなくなってからじゃないかしら。或は別プロジェクトとか。いまはレーベルと契約したばかりだし、よく考えて、その時の自分が出すべき作品を出していきたい。そしていつか音楽で生計を立てる心配をしなくてよくなったら、自分をより解放した作品を出してもいいと思っている。

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私はハードコアのノイジーなシーンにずっといたわけで、そこではポップ・ミュージックをやるほうが過激だと思われていた。だからグライムスとしてダークなモチーフを持ち続けることで、そっちのコミュニティにも支持されたいという思いもある。

パンダベアからの影響を語っておられますが、彼の音楽には明るさと暗さのどちらを感じますか? また彼の音楽を現実逃避的とする意見をどう思われますか?

クレア:私がパンダベアをはじめアニマル・コレクティヴの音楽に惹かれる理由は、もの凄くメランコリックでありながら昂揚感もあるというところで、私の音楽にもそういう部分がたくさんあると思うの。ものすごくダークで韻鬱だったかと思うと、ものすごく恍惚として、そのふたつが共存している。アニマル・コレクティヴのそういう部分にいつも惹かれていたの。明るいだけでも暗いだけでもなく、その両方が凝縮されていて、生々しく感情に訴えてくる。
 パンダベアからは技術的な部分でもすごく影響を受けているわ。彼が使うテクニックを私もよく使う。音楽を作り始めた頃、アニマル・コレクティヴとパンダベアに完全にのめり込んでいたから。彼らのループの使い方とか、彼らの機材の使い方とか。自分もアニマル・コレクティヴと同じ機材を使って音楽の作り方のノウハウを覚えていったの。

あなた自身が「ゴス・ポップ」と発言されていたこともありますが、〈4AD〉からリリースされてどのように感じますか? 〈4AD〉の音楽にはむかしからシンパシーがあったのですか?

クレア:〈4AD〉は昔から好きなレーベルだったわ。今回契約したのも何かすごくしっくりきたから。彼らはメジャーじゃないからインディならではの創作の自由があるし、でも彼らの場合はインディーでも大きな組織があるから、より多くの人に自分の音楽を届けることができる。たとえば注目されたアーティストが出てきても、〈ベガーズ〉傘下ということで、膨大な注文にも対応ができる。小さなレーベルでは対応し切れない。〈アルブツス〉から〈4AD〉に今回移った最大の理由がそれ。
 〈アルブツス〉ではすべてのメール注文に対して手作業ですべて対応していた。手書きで購入者の住所を書いて、CDを入れて、郵便局に持っていって発送する、という。それでは手に負えなくなってしまって、より大きなレーベルが必要だったの。で、実際彼らは私の自由にやらせてくれるし、レーベルの歴史も素晴らしい。過去の名作もそうだけど、見事に再生を果たしたのも素晴らしいと思う。新しい〈4AD〉はピュリティ・リングやグライムスもいて正にいまの音楽を発信していて、長い歴史ありながら先進的なレーベルであり続けるのはすごくカッコいいと思う。

モントリオールの音楽シーンについて教えてください。いちばん盛んなのはエレクトロニック・ミュージックですか? また、あなたのようにアートとクロスするようなパフォーマーや、ひとりで個性的な表現を追求するアーティストはたくさんいるのでか?

クレア:モントリオールはすごくエレクトロニック・ミュージックが盛んで、パフォーマンスを売りにしているアーティストもすごく多いわ。斬新で先進的なものはロフト・シーンから出てきているわ。敷居やジャンル分けのないライヴで、だいたい真夜中過ぎに始まって、みんな酔っぱらって、ものすごく盛り上がるの。みんな人と違うことをやるんだけど、不思議なことにすごくポップでもあるの。エレクトロニック・ミュージックだったりダンス・ミュージックももちろん盛んなんだけど、ノイズ・ミュージックの伝統もあって、その両者を組み合わせる人が多いわ。グライムスもそう。つねに新しい音色を追求するし、私に音楽を教えてくれたミュージシャンたちもみんな自分でエフェクターを作ったり、電気回路を歪めたり、楽器を発明したりしていたわ。だからポップ・ミュージックなんだけど、他の要素と融合させて実験的でもあるの。

社会生活のなかでグレたり不良になったりしたことはないのですか? ご自分のことは優等生と不良ではどちらだと思いますか。

クレア:優等生では絶対にないわね。高校2、3年と大学1、2年はちゃんと勉強して成績も良かったんだけど、その前までは成績も悪かったし素行も悪かったわ。いつも親に反抗していて、家を追い出されてたわ。でも大学に行きたいと思ってそこから持ち直したの。で、大学に無事入って、2年くらい真面目に勉強したんだけど......。
 なんか、自分が好きじゃないことをやらなきゃいけないのが無理なのよね。音楽をはじめてからも、成功する前の2年くらい、好きじゃない仕事をするくらいなら、空腹や寒さにも耐えるほうがましだって思っていた。信念のためだったら、快適な生活を犠牲にしてもいいと思うの。9時5時の仕事をするくらいなら暖房費が払えなくて凍えたほうがましだって思うの。学校も同じで、途中から私の創造性を掻き立てるものが何もないと感じたし、特に共感できる人も大学にはいなかった。学校に行けることはぜいたくだし、素晴らしいことだと思うんだけど、そこまでありがたさを感じることができなかった。いつかまた戻りたいとは思うけど、100%確信した時じゃないと駄目だと思っているわ。

音源をカセットテープでリリースするのはなぜですか?

クレア:昔はそれがいちばん安かったからよ。最近でも続けているのは、カセットテープというフォーマットが気に入っているから。ほら、簡単に飛ばしたりとかできないでしょ。最近はみんな落ち着きのない音楽の聴き方をするから曲が埋もれてしまいやすい。聴いて15秒でピンと来なかっ聴き続けないといけない。そこがいいの。

ディオンとのEPをリリースしている〈ヒッポス・イン・タンクス〉はあなたにとってどのようなレーベルですか?

クレア: 〈ヒッポス・イン・タンクス〉は大好きよ。いまいちばん好きなバンドのゲートキーパーも〈ヒッポス・イン・タンクス〉に所属しているわ。ディオンは数年前に彼らと契約したんだと思うけど、彼はすごく仲のいい友だちで、昔からずっと一緒にテープを出そうって話してたの。カナダだとDIY的に2組のアーティストが片面ずつ担当してスプリット・テープを作って出すってよくあるのよね。で、彼とは私がまともに音楽を作るようになる前からいつか一緒にやろうって話をしてたの。で、彼と「じゃあ、やろうっか」ってことになって、〈ヒッポス・イン・タンクス〉が「ぜひリリースしたい」って言ってくれて、気付いたら予算とか組まれていて、すっかり大事になっていたの。冗談かと最初思ったわ(笑)。

バンドやグループを結成してアルバム制作をしたいとは思いますか?

クレア:いいえ。

ずっとひとりでやっていこうと思っている?

クレア:ええ、そうよ。

次のアルバムについて考えておられるイメージがあれば教えてください。

クレア:いまもうレコーディングしているところよ

今作『ヴィジョンズ』とはまったく違うものですか。

クレア:違うけど、似てる部分もある。ポップ色はきちんと残したいと思っているわ。グライムスは私にとってポップ・プロジェクトだからこれからもポップ・ミュージックを作っていくつもりよ。よりハイ・ファイなものにしたいと思っているの。プロダクションをしっかりしたものにしたい。新しいヴォーカル・インターフェイスを入手したばかりだから、超クリアで手前にヴォーカルを持ってきたいと思っている。オーヴァーダブを減らして、ストレートなヴォーカルを前面に持ってくるイメージよ。そして凄くミニマルなもの。インダストリアル・ミュージックにいますごくハマっているの。だから、ヘヴィなドラムスとヴォーカルを中心としたものを考えているわ。

※6月29日発売予定の『ele-king vol.6』は宅録女子特集!

エレクトロニック・レディランド~テクノ女性上位時代~
グライムスが表紙を飾ります! ジュリアナ・バーウィックにローレル・ヘイロー、マリア・ミネルヴァ、スリープ∞オーヴァーなどなど気鋭の女子インタヴューをヴォリューミーに盛り込み、喪女音楽を模索する対談、女子と音楽をめぐるコラム、関連ディスク・ガイドなどなど、インディ・シーンの先端を走る女性たちの姿を浮き彫りにする、エレクトロニック・ミュージック・ファン~インディ・ロック・ファン必携の内容!!

Traxman - ele-king

 8歳といえば、日本では小学2年生だ。シカゴのトラックスマンは、小2か小3のときにDJをはじめているという。早熟というには度が過ぎているように思えるが、ブラック・コミュニティではそれだけDJの地位が高いのも事実だ。子供にとっても憧れの存在。うちの子供はいま7歳だけれど、家に2台のターンテーブルとミキサーがあっても、はっきり言ってまだDJという存在すらよくわかっていない。この文化に触れさせるため、メタモルフォーゼに連れて行ったりとか、自分なりに努力はしているが、これは僕の教育の問題ばかりでもないだろう。日本社会全体として、まだDJの地位が欧米にくらべて低いのだ。
 たとえばデトロイト・テクノの連中は、毎年8月に、デトロイト川に浮かぶベルアイルという島で、子供のためのフェスティヴァルを開いている。デリック・メイ、UR、ムーディーマン、ホアン・アトキンス、テレンス・パーカー......ビッグネームたちがみんなで協力しあっている。今年ですでに7回目で、小学生たちにDJカルチャーとテクノ/ハウス・ミュージックの面白さを伝えているのだ(入場料もたしか1500円ぐらい)。8歳の子供がローランドのシンセサイザーに興味を持って、ラップトップと同時にターンテーブルとミキサーを操れたとしても不思議ではない。

 トラックスマンにとっての最初のアルバムは、ベテランDJだけあって、『フライト・ミュージック』にくらべて洗練――この言葉ほどフットワークに似合わないものはないけれど、敢えて言えば――洗練されているように聴こえる。おそらくは本能的に生まれたであろうフットワーク/ジュークのリズム・パターンを対象化し、咀嚼しているのだ。曲によってはメロウなサックスやソウル・ヴォーカルまでミックスされている。それが違和感なくまとまっている。
 日本盤のライナーにはトラックスマンのインタヴューが載っている。面白いのは、彼がフランキー・ナックルズやロン・ハーディの時代のことを知っていることだ。たしかに『ダ・マインド・オブ・トラックスマン』には、ディスコからハウスへの時代の記憶がある。そして、フットワーク/ジュークの高速ハイハットやスネアからはずっと遠い昔のジャズのドラミングの記憶を喚起させる。そういう意味でこのアルバムは、殺気立つフットワーク/ジュークの攻撃性、DJダイヤモンドの『フライト・ミュージック』における破壊的な展開とは別の方向性を見出している。マッドリブめいたループ使いもあるし、ジェフ・ミルズのようなストリングスもある。ゲットー・ハウスならでのファンクネスがあり、伝統的なブラック・ミュージックとしての光沢がある......また、何よりもここには控えめながら性的衝動がある。そう、ディスコ/ハウスの記憶どころではない、現在進行形の衝動である。エロティシズム......、これもまたゲットー・ハウスからフットワークに受け継がれた重要な遺伝子だ。
 もちろん『ダ・マインド・オブ・トラックスマン』はフットワークのアルバムだ。ループするソウル・ヴォーカルの向こう側で、メロウなジャズのサックスの傍らで、激しい倍速のマシン・ビートが、分解されて鳴っている。アルバムのところどころで、盟友DJラシャドほど露骨ではないにせよ、性へのほとばしりも顔を出す。8歳が聴くにはまだまだ早いが、あと5年も経てば毎日聴いているはずだ。

HYPERDUB EPISODE 1 - ele-king

 歴史は繰り返す......ではないけれど、90年代後半のブロークン・ビーツが出てきた頃に似てきているのが現状。ダブステップがメインストリームになって、ブローステップが出てきた途端にアンダーグラウンド回帰がはじまっている。〈ハイパーダブ〉からキング・ブリットの作品が出ていることはその象徴のように思える。かつて、ブロークン・ビーツを先導した4ヒーローのふたりも復活している。
 しかし、そのいっぽうで、ハイプ・ウィリアムスとロレール・ヘイローといった、おそらくこれまでの多くの〈ハイパーダブ〉のファンが聴いてこなかったであろう、(インディ・ダンス/チルウェイヴ系のリスナーが追っていた)〈ヒッポス・イン・タンクス〉のアーティストを引っ張ってきているのが、最近のこのレーベルの興味深い動向だと言える。
 マンネリズムに陥っているダブステップにおいて、コード9はどんな手を打ってくるのだろう。ハウスとグライムをたくさんかけるのだろうか......。そしてジュークとか......。ハイプ・ウィリアムスはいったいどんなライヴをやるのだろう......、しかしサブウーファーを追加するくらいだから、とくにキング・ミダス・サウンドあたりは、相当な低音を出すつもりなんでしょう、いずれにしても、興味は尽きないですね!

 

東京 2012/6/8(FRI) 代官山UNIT
HYPERDUB EPISODE 1
featuring
KODE9 | KING MIDAS SOUND
DVA | HYPE WILLIAMS(Dean Blunt and Inga Copeland)
QUARTA 330 | AO INOUE | DJ KENSEI and much more

OPEN/START 23:00 前売TICKET¥3,800
※20歳未満入場不可。入場時にIDチェック有り。
必ず写真付き身分証をご持参ください。
You must be 20 and over with photo ID.

INFO: BEATINK 03 5768 1277

大阪 2012/6/9(SAT) CONPASS
OPEN/START tbc 前売TICKET¥tbc
INFO: tbc 協力: ZETTAI-MU (https://www.zettai-mu.net)

企画制作:BEATINK
INFO: BEATINK:03-5768-1277[www.beatink.com]

田我流 - ele-king

枯死していく風景のなかで 文:竹内正太郎

田我流
B級映画のように2

Mary Joy Recordings

AmazoniTunes

 序盤からオーヴァー・ペース気味のライヴ・パフォーマンス、だが一向に止まらないラップ、次から次へと吐き出される言葉、語られる思い、求めてやまないオーディエンス、 DJが落とす雷か発破音のようなビート......5月4日27時、私は渋谷〈Glad〉にいた。終盤、バースが丸ごと吹っ飛ぶほどの充実した消耗の中で、ますます発熱していくフロアをふと見渡すと、前列の方にいた、メガネをかけた同世代くらいの女性が目を引いた。凡庸な観察をすれば......彼女は、およそヒップホップを聴くタイプの女性には見えなかった(客観的に言って、筆者もそうだろう)。しかし、男性陣のフィジカルなモッシュのすぐ後ろで自由に、口元に微笑みを浮かべながら、いかにも伸び伸びと踊る彼女は、ヒップホップのビートと、パワフルなラップを切実に欲していたように見えた。言わば彼女は、会場全体のノリや、ラッパーの意図的な煽りとは無関係のレベルで、ただ自分自身のために、自らの人生のために踊っていたのだと思う。本人が喜ぶ形容ではないかもしれないが、その踊りはとても......そう、とても美しかった(誰が彼女からダンスを奪うのか?)。

 インディペンデント・ヒップホップ・イヴェント、〈INNOVATION)〉のオーガナイズ。無料での入場条件が事前に告知・ツイートされ、実質フリー・パーティのようになったイヴェントだ、何が彼女をあの会場に呼んだのかはわからない。だがやはり、田我流その人が呼んだのだと思う。「いま日本語ラップでこんなに盛り上がるライヴってねーんじゃねえの?」――ヤング・Gがそう煽るように、会場内は強固な空気が支配していた。だがそれは、映画『サウダーヂ』(富田克也監督)で田我流らが演じたアーミー・ヴィレッジが少しずつ巻き込まれたような、誰かを排除するための強固さではない。「ここにいる全員が原発反対ってことはないと思うし、それでいいと思う」――彼は震災後のディスコミュニケーションに、言わばより大きな寛容さをもって対峙しようとしていた。「未来なんかねえ(No-Future)」というパンク・ロックの逆説的な態度があるが、田我流は未来の変化を切望し、そのために言葉の最短距離を選ぶ。 SNSが包囲する諸縁に尽くすことで、個人的な幸福をある程度は堅守できるような時代にあっても、放置した未来がいまより悪くなるというのなら、彼はただまっすぐに声を上げるのだ。

下らねーシーンより目の前の危機
国は民を守らねー悪魔は無慈悲
今なら見える何を成すべきか
今なら見えるだろ? 何が必要か
"Resurrection"

 音楽的には、本作『 B級映画のように2』は総合度の高い作品である。ヤング・Gの作曲とプロデュースは、トラックとしてはサンプリング・ベースからバンド演奏まで、そして趣向としてはサウス・アレンジから中南米情緒まで、というように、本作にオムニバス作品ほどのふり幅を与えている。だが、前作『作品集 JUST』(2008 )と本作を重ね、透かして見てみると、そこにはやはり、主題という点でも大きな膨らみが見受けられる。ごく抽象的に言えば、富田が『サウダーヂ』で点描し、忌野清志郎がかつて歌ったバラバラ、言わば剥き出しのディスコミュニケーションと、田我流には向き合う準備があるのだ。

 さて、こういう典型の物言いをすると、反発や失笑があるだろうが、言わせてもらう。田我流は基本的には地方都市のレプリゼンターである。山梨県旧一宮町という、実に「見えにくい」場所の告発者として、彼はそもそもマイクを握っている。例えば、市町村合併、 TSUTAYA、BOOK-OFF 、ドン・キホーテ、乱立するショッピング・モール、大量の車を吸い込むパチンコ屋、閉ざされるシャッター、客よりもキャッチが多い夜の繁華街、何をするでもなく駅前にたむろするヤンキー......現在の渋谷を細かく因数分解したような繁栄の断片が、いま地方都市にはなし崩しにばら撒かれている。シネマテークたかさき( https://takasaki-cc.jp/)で『サウダーヂ』を観た後、私は人通りのない夜の高崎市が醸す映画世界との既視感で完全にバッド・トリップしていた(目の前をチープな単車が騒音をまき散らして走り去る......)。田我流はいち生活者として、そうした類型的な地方都市の退屈さを否定しないが、『サウダーヂ』での主演(あるいは 3.11の経験)は、その個人的な回路から、その背後に潜むより大きな社会圏へと接触していくための経験だったと言える。

 そして、この『 B級映画のように2』は、田我流というラッパーの二律背反するモチベーションを反映した複雑な作品でもある(それはブックレットの巻頭言としても綴られている)。 stillichimiyaを逆フィーチャーした"やべ~勢いですげー盛り上がる"を、仮に表題どおりの乱痴気騒ぎとするなら、インダストリアル・ロック調の"ロンリー"の深刻さは同一人物とは思えないほどの距離を跨いでいる(実際、田我流は声色をかなり使い分けるラッパーでもある)。現在分裂中のSIMI LAB から3人が参加した"ハッピーゲーム"はサラリーマン社会の緩やかな風刺。アルバム冒頭の"パニックゲーム"は、もはやナイーブな正義がいっさい成り立たないという、映画『ダークナイト』(2008)が抱え込んだ帝国の苦悩を楽曲内に移植しつつ、ヒップホップの戦闘性の中で愉快犯を気取るが、 ECD と組んだプロテスト・ラップ" Straight outta 138"ではその戦闘性を外に向けている。敗戦の象徴、世界戦争のアイコン、そうした核を平和的/科学的に克服しようとする二十世紀的(成長願望的)な想像力に対して、ハッキリとその有効期限切れを宣告する。某昭和歌謡曲からバトンを一方的に受け取る"あの鐘を鳴らすのは、、俺"は、分厚いシンセが高揚するヒップホップのチャンピオン・ソングだが、さらに深く掘り下げていくと、物語は"夜に唄えば"の内省に行き当たる。ひとりのヒーローとデカい愛ではなく、無数の小さな愛、その孤独な誠実さを想って、アルバムは終幕する。

これ以上は嘘はいらない 捨てよう
手探りで別の道をさ 探そう
きっと何かが変わりだす そっと
きっと何かが変わりだす そっと
"夜に唄えば"

 3.11後の「急速に失われていく社会」と、 3.11以前から「緩やかに失われていた社会」が互いに浸食し合っていく、 2012年というこの微妙なポイントで、実際的、物理的、行政的な復興の他に、希望はどのようにして回復しうるのか? そう、緩慢かつ急速に枯死していくこの風景のなかで――。田我流が立ち上げた問題意識はたぶん、そのようなものだと思う。結局のところ、アートは問題提起性以上のものを提出できるのだろうか? 教育に対する具体的な言及があるとはいえ、本作も基本的には問題提起役に徹している、それこそ爆弾魔のように。「たまに思うよこの世は地獄で」"夜に唄えば"、田我流はだが、そこをどうにかして破りたがっているように見える。彼が操守に生きるというのなら、それは長い戦いになるだろう。ボーナス・トラック"教訓・"(加川良、 1971)のカヴァーは、希望を語ろうとすれば摩耗することがあまりにもわかり切った時代に、それでもストラグルすることを選んだ人たちに対する彼の優しさだろうか。

 ここでいちど、冷静にピンを打つなら、ほぼすべてのMCで反射的・爆発的に盛り上がるあの夜のライヴの非日常的な一体感には、少しばかり危うさを感じたのも事実だ。そこでは、このアルバムの抱える複雑な感情が、良くも悪くも吹っ飛ばされていたように思たのだ。やや欄外になるが、すでに17万再生を超えている"ゆれる( EVISBEATS feat. 田我流)"のミュージック・ヴィデオ、その4分43秒過ぎが秀逸だ。ゼロ年代、前野健太が「だれかのいとなみ/ぼくはしらない」"だれかの"と歌った、断絶された他者への想像力を、彼らは再び強く掻き立てている。日本語ラップという文化圏の外側、その圏外に暮らす人たちとの終わらない対話にこそ、田我流の目指す未来はあるのだと思う。私が期待するのはその一点だ。例えば、地方の片隅から都市のざわめきに耳を傾けること。異なる物語を生きる人びとに、届くかわからない手紙を出し続けること。繋がりの時代におけるディスコミュニケーションに、より大きな寛容さで挑み続けること。田我流の表情を見ていると、何だか前向きな予感さえしてしまう。これは何かの達成ではないが、少なくとも何かの始点、辛抱強い再出発だ。そう、多義的な作品集『 B級映画のように2』は、決定的に変化したはずの、だが驚くほど変わらないこの時代に、どこかにいるハズの仲間(それは地球の裏側にしかいないかもしれない)を探して強くもがいている。底知れぬ分断、バラバラ、あるいは泥の河の底で――。


文:竹内正太郎

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ティス・イズ・ア・レベル・ミュージック 文:中里 友

田我流
B級映画のように2

Mary Joy Recordings

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無理っていっそ言っちまいな
もうダメって認めて行くぜ、一から
"Straight out 138"

 昨年夏に公開されてから実に長いあいだロングランを続けている映画『サウダーヂ』。東京はGWの渋谷オーディトリウムでのアンコール上映最終回をもって一応の終了を迎えた......のだが、この回は早々に完売、遅れて観に行った僕は2時間半強、立ち見するハメに......(7月より再度上映する予定)。知らない人のために簡単に記しておくと、『サウダーヂ』は、富田克也監督によって、地方都市・山梨県甲府市を舞台に生活を送る日雇い労働者や移民を描いた作品で、登場人物は皆ここではないどこかに叶わない夢を託し、心の郷愁を求めている。

 そんな『サウダーヂ』でもひときわ存在感のある演技が素晴らしかった、田我流の『B級映画のように2』について。率直に言うと、僕は震災以降というタームの日本語ラップ作品のなかでは、今作は重要なコンセプトを持った作品だと思う。映画主演を経たことは彼に大きなインスピレーションを与えたらしく、トレーラーやらタイトルもそのものズバリで、物語性のある作品構造を持ち、同時に批評的ともいえる。B級という考え方やセンスもヒップホップと親和性は高く、これも重要なポイントと言えるかもしれない。

 コンセプトは何かと言えば、「自分殺し」だ。社会や周囲との対立や屹立を描くとともに、自分の弱さ――それまで国にお任せ、無関心で突き通していたのが3.11以降、初めて命が危険に晒されることによって露わになった自分たちの愚鈍さ、無力感のようでもあって......これは彼のインタヴューでも確認できるのだけど、彼は本作をつくることで、なかばセラピーのような浄化作用を自身にもたらしたようだ。
 本作のちょうど中間に並ぶ楽曲は、後半にかけて展開されるカタルシスを生むための重要な役目を果たしている。グロテスクな描写が印象的な"ロンリー"、実際に「自分殺し」を決行する"Resurrection(復活)"、そして"愛のテーマ"だ。これらの並びは、ある種の苦難を経験したからこそ表現できる内容だ。
 例えば"Straight out 138"。自身をアナーキストと称し、かつて「言う事聞くよなヤツらじゃないぞ」とラップしていたECDが、具体的な目的を持った反原発デモを継続中の現在では「言う事聞かせる番だ、オレたちが」とラップしていることにも言える(2月20日に行われた経産省前原発再稼働抗議で、ECDはこのバースをラップした)。「自分殺し」とは何なのか。言い換えて言うならば、まずは「自分を認めること」なのだということを田我流は強調し、繰り返す。冒頭の一節もそのなかのひとつだ。

 こうしたテーマを説得力をもって聴かせるのは難しい。たんに言葉を乗せるだけでは説教じみてしまうし、メタファーもときとしてメッセージを薄めてしまう。そこを『サウダーヂ』で天野猛という微妙な役柄を演じきった彼が、自らを自作自演し、エモーショナルにまとめあげたところに、彼のアーティストとしての地力を感じる。
 同時に、彼はレベル・ミュージックとしてのヒップホップの可能性を3.11から1年を経たいま、再提起している(この部分においてはTHA BLUE HERBの最新作にも同じことを感じ得たのだけど)。今作において言うならば、"Resurrection"を経たからこそ、"あの鐘を鳴らすのは、、俺"は感動的なクライマックスとなっている。貧しさのなかから生まれて隆盛を極めたヒップホップ・カルチャーと自分を重ね合わせながら、「ヒップホップにはやっぱ栄光が似合う」と高らかに歌うラインに泣けてくるのも、その曲が表現している葛藤があったからこそだ。

 本作にはひとつ仕掛けがある。それは隠しトラックとして収録されている加川良の代表曲なプロテスト・ソング"教訓I"のカヴァーだ。これはボーナストラックながら、田我流という表現者の本質を掴むキモだと思っていて、あくまで現実から目をそむけずに理想を掲げる本編を補完するかのように、「死んで神と言われるよりも/生きてバカと呼ばれましょうヨネ/きれいごと ならべられた時も/この命 捨てないようにネ/青くなって しりごみなさい/にげなさい かくれなさい」と、逃避もひとつの手段だとしっかり意見し、バランスをとっている。楽曲と彼の歌声とが素晴らしくマッチしていて、ブルージーで味わい深い曲に仕上がっている。
 賞味50分、カオスを経てネガポジ逆転、自分自身に戻るという流れをもった本作は、ひとつのストーリーテリングとしても素晴らしく、社会的関心を高めることの契機としても、僕は評価したい。大きな岐路に立たされている僕たちが聴くべき、エモーショナルで、清々しく、美しいアルバムだ。


文:中里 友

Neu! - ele-king

 「NEU!――その大文字と感嘆符、アート・ポップ・スローガン。労苦や障害を破壊するかのようだ。2、3分後、退屈なセットが歌い出す。唐突に何かがクリックする。目的地を持たない旅。実にファンタスティックなダンスビート、上機嫌な音、純粋に脈打つ推進力、エゴのない悦びの表現、激しく、本能的で、身体的な経験かつトリップ。これがノイ!体験。これを知ったあとでは、伝統的な歌の構造は......平凡で、つまり不要!」
 2009年にUKで出版された『クラウトロック』において、ノイ!はこのように紹介されている。宇川直宏は文章中に、メールでも原稿でも対談でも「!」を多用するが、その源流はノイ!だろう。ノイ!が「ノイ」だったら、やはり寂しい。「ノイ!」は「「ノイ!」なのだ!!!!!!!

 クラウス・ディンガーが東京にやって来たとき、僕はステージを見ながら、「ああ、この人は本当にヒッピーで、純粋なロックンローラーなのだ」と思ったものだった。本作に収録されている"ドライヴ(グルントフンケン)"を聴けばわかるように、ノイ!はもともとはシンプルなロックのバンドだ。バンドのトレードマークであるミニマル・ビートは、ディンガーいわく「自動車を運転しているような気持ち」「どんどん進んでいくような気持ち」を表していることから、モータリック・サウンドと呼ばれているが、この気持ちよさの恩恵に授かっているロック・バンドはいまでは世界中にいる。我が国ではオウガ・ユー・アスホールがそうだ。
 実を言えば僕は、中学生のときにジョン・ライドンがファンだからということで、初めてノイ!のファーストを聴いたものの、これのどこが良いのか最初は理解できなかった。迫力あるセックス・ピストルズのデビュー・アルバム、迫力満点のベースと残酷なギターのPIL、あるいはザ・フォールのニヒルな展開......といったノイ!の子供たちの音楽のほうが親身になれた。ノイ!の「エゴのない悦びの表現」その「上機嫌」な音、その「推進力」を充分に感じ取るには、いろんな意味において、まだ未熟で、狭量で、若すぎたのだ。
 だから1970年代初頭、ドイツのロックを"クラウトロック"とバカにしたイギリスのジャーナリストの気持ちがわかる。グラムやハード・ロックやプログレ全盛の時代においてこのペラペラとした軽さ、なかば間の抜けた空間は、アングロサクソンの高慢で保守的な耳にとっては嘲笑の対象だったのだ。いまとなっては立場は逆転している。コニー・プランクとともに彼らが作ったファーストから『ノイ!75』までの3枚は、今日のインディ・ロックやテクノおける大きな影響、すなわちクラシックな作品として広く認識されている。

 ノイ!とは、ふたりの男の喧嘩の物語だ。セカンドをリリース後にいったん別れ、レコード会社との契約上、もう1枚作らなければならなかったため、ふたたび一緒にやることになったクラウス・ディンガーとミヒャエル・ローターは、パンクの青写真となった1975年の『ノイ!75』の録音途中で結局、喧嘩別れしている。そして、10年後の1985年10月、またしても一緒にドュッセルドルフのスタジオに入って録緒をはじめている。が、1986年になってもそれは完成しなかった。ふたりの仲はまたしても険悪になり、レコード会社もその事態に関心を寄せず、プロジェクトは消えた......。
 1995年、クラウス・ディンガーが〈キャプテン・トリップ〉を通じてリリースした『ノイ!4』はそのときのセッションの記録だが、のちにミヒャエル・ローターが所有していたマスターテープをエディットし、選曲したものが『ノイ!86』。何曲かは『ノイ!4』と重なっているが、こちらはミヒャエル・ローター主導でリリースされたという点がミソである。
 ローターはそもそも、アンビエントな方向性への関心が深まって、ディンガーから離れて、1973年、クラスターのふたりと一緒にハルモニアを結成している。ハルモニアの素晴らしい2枚のアルバム、そして『ノイ!75』のA面の3曲とそれ以降のソロ作品を聴けばわかるように、この頃の彼は穏やかさ、メロウな感性に向かっている。
 しかし、ローターが2010年に監修した1986年の録音物は、紛れもなくディンガーとローターふたりのノイ!だ。上機嫌なモータリック・サウンドは走り、ところどころでディンガーの野性味もよく出ている。"クレイジー"はパンク・ソングの"ヒーロー"(『75』収録)の再現のようだし、"ドライヴ"は歴史的名曲"ハロガロ"(ファーストの1曲目)の発展型だ。"エラノイツァン"のようなアンビエントもある。
 そのいっぽうで、"ウェイヴ・マザー"のような陽気なジョイ・ディヴィジョンに聴こえる曲もある。"デンツィン"や"ラ・ボンバ(ストップ・アパルトヘイト・ワールドワイド!)"のようなシンセ・ポップは笑えたが、"ユーフォリア"にいたってはほとんどニュー・オーダーじゃないかという......当時のニューウェイヴを強く意識している。
 美しくも幸福な"ノーヴェンバー"を経て、そして『ノイ!86』は、"KD"の豪快な酔っぱらいっぷりで終わる......"KD"とは当然クラウス・ディンガーのことだろうが(彼は2008年に死んでいる)、彼はそういう人だった。大酒をかっくらって、ギターを抱え、「バーバールッバー!」をわめいている人だったのだ。結局、それがノイ!の最後のメッセージとなった。
 あらためて言えば、ノイ!とは水と油が同居した奇跡的なバンドだった、そうした奇跡的な、必然とも偶然とも取れる混乱こそ、強度のある音楽を生む、セックス・ピストルズのように。僕はいまでも"ハロガロ"を聴くと気持ちが舞い上がる。

Interview with shonen knife - ele-king


少年ナイフ
Pop Tune

Pヴァイン

Amazon iTunes

 昨年、結成30年を迎えた少年ナイフの新作『ポップ・チューン』は、タイトルどおりのポップなアルバム。これだけではなにも言ってないか......。
 どんなに浮き足立った時代にもどん底にも思える暗い時代にも、少年ナイフはいつも目の前にある現実を歌ってきた。それはいまも変わらない。おいしいもの、おかしいこと、つらいこと、ふしぎなことーーソングライターのなおこの体験や目にとまったものが、彼女独特のイマジネーションを加えて、それが少年ナイフのチューンになる。
 かわいいものはただかわいいのではなく、つらいことはただつらいのではなく、おいしいものは......これだってただおいしいってだけじゃなくなる。「私たちの音楽で楽しんでほしい」と少年ナイフは言う。覚えやすいメロディとシンプルな言葉、むずかしいことなんてなにも言っていないのに、なおこの視線にはすごく醒めたところがあって、そのクールさが少年ナイフを少年ナイフたらしめ、そのロックンロールに巻き込んでゆく。
 「ロマンは苦手」となおこは言う。以前のインタヴューで訊いた「命がどうしたってことにロックを感じない」という言葉は、大震災後のいまも変わらず少年ナイフの作品を支えている。へそ曲がりだけど偏屈でもシニカルでもない。そんなのは彼女たちにとっては平凡すぎて「ロックじゃない」んだろう。
 新作を聴くたびにそうなるのだけど、今回もまた、少年ナイフ的「世界の見方」に笑って楽しんでドキッとして、それから(文字どおり)ハングリーでロックなーーなんというか、「暮らしの基本」のようなところに立ち返らせられてしまった。
 では、インタヴューをお楽しみください!

実体験を歌にすることが多かったんですね。想像をふくらませて、想像の世界でおおきくして。ロマンじゃないんです。ロマンは苦手なので(笑)。現実主義なんで、そういう現実から少しふくらませていくんです。(りつこ)

りつこさんとえみさんは今度のアルバムは少年ナイフとしては何作め?

りつこ:わたしは今回が3枚めです。加入してからアルバムとしては4作品めです。オリジナルとしては。

えみ:わたしはひとつ前の『大阪ラモーンズ』からですが、オリジナルとしては今回が初めてです。ライヴは一昨年からですね。4月でまる2年になりました。

なおこ:だけどもう昔からいる感じです。もう10年はいる感じ(笑)。

りつこ:わたしは何年めだったかな。数えてないんですけど......。

なおこ:5年め。

りつこ:ああ、5年めです。今回の『ポップ・チューン』では、少年ナイフというものがどういうものかということをはっきりと言えるようになったと思っていて、自分の自然体でやれました。やっぱり入ったばかりの頃は「少年ナイフ」という名前にかまえていたところもあったし、いろいろ慣れない部分もあったけど、やっとここにきて少年ナイフというものを楽しめるようになりました。もともとファンだったので、責任感というわけじゃないですけど、自分のせいで悪くなったらイヤだとか、そういうのもあるじゃないですか。そういうのからはじまって、いまになって、今回の作品はほんと、いいものができたと自負しております。

なおこ:ははは。

えみ:わたしももともと少年ナイフに憧れて、少年ナイフに入ったんで、背中に大きな看板背負ってるという気持ちはあったんですけど、でももっといいバンドにするという気持ちもあったし、今回のアルバムにはそういうのが出せたと思います。

なおこさんから見ていまの少年ナイフはどうですか?

なおこ:もう最高にいい状態だと思います。最初のオリジナル・メンバーのときは原初的な狂気もはらんでいたかなとも思うし、そのあとに参加してくれたメンバーやサポートの人たちもそれぞれの持ち味があって、そのときは面白かったけど、いまのメンバーというのはすごく、りつこさんもさっき言ったけど、自然に合わせて、そうしたらそれがすごく相性のいい演奏になると言うか、そういうことが自然にできるメンバーなので、いまのメンバーはいまの少年ナイフとして最高じゃないかと思います。

去年、たくさんのライヴをこのメンバーで回ったということですが、その時のことを聞かせてください。

なおこ:去年は日本でもたくさんやったし、北米とヨーロッパ・ツアーと2回大きなツアーをやりました。やっぱり1回大きなツアーに行くと、それでバンドのグルーヴができるというか、まとまりが出てくる。えみさんが入ってからも海外のツアーを4回、一昨年には中国や台湾にも行ったし、去年は1ヶ月以上のツアーを2回もできたんで、それがバンドにとってすごくよかったですね。

えみ:年間80本くらいはやってると思いますよ。

りつこ:国内でもそこそこやってて、海外には1回行けば30本くらいはやりますから。

少年ナイフとしてはそんなにハードにやる年ばかりではなかったですよね。

なおこ:ははは。そうなんですよ。4月に大阪の難波ベアーズっていうライヴハウスで少年ナイフ結成30周年記念イヴェントをやって、1部がライヴ、2部がトークだったんですけど、そのトークショーのために昔の資料を調べて日記とかを見てたら、1年目は10数本、2年目3年目になったら年間24回ライヴやった、というときもあれば、年に4回しかしなかったこともあった。海外ツアーに関しても、1989年に初めてアメリカに行って1回だけライヴをやって、2回目は91年にアメリカの4都市で、同じ年にニルヴァーナの前座でイギリスに行った。そのあたりから急に増えたけど、98年から2002年はぜんぜん海外は行かなかったりして......。ものすごくたくさんやってる年とやってない年があるんだなあと......。ただ、えみちゃんが加入してからは一昨年も去年もアメリカ・ツアーやヨーロッパ・ツアーがあるから、ものすごく密度が濃いと思います。

りつこ:えみちゃんが加入して間もない頃に750回だったんですよ、たしか。ほら、高知で712回目だって言ってませんでしたっけ?

なおこ:そうだ。高知で。

りつこ:そこからでもずいぶんやってるから、もう800回になってるかもしれない。

えみ:ええ、わたしも200回はかるく超えてる気がします、あれよあれよという間に。

りつこ:ここ数年でめっちゃライヴ増えたね。

ツアーの思い出と言えば?

なおこ:そうですねえ。やっぱり食べ物がおいしかった。スペインの食べ物がおいしかったなあとか。

えみ:よく食べて、私は前回のアメリカ・ツアーで5キロ太りました。

りつこ:ははは。今回は太らへんと言いながら途中で崩壊していくんですよ。

えみ:ピザ7切れ食べました。

りつこ:ちょっとえみちゃんやりすぎよ、って言って。

ははは。やっぱりお腹すくんだ。

えみ:すきますねえ。

体力いるわけで。

えみ:ええ、やっぱりいるんでしょうね。いるということにしておきましょう(笑)。

りつこ:ははは。そう言っときましょ。

なおこ:でも車ばっかりですから、歩かないんですけどね。

えみ:そうなんですよね。

なおこ:あと、おととし中国に初めて行ってすごく面白かった。

中国のどこですか?

なおこ:北京と上海と、台湾の台北の3本で大きめのライヴハウスでやったんですけど、「わあ!」となりましたよ。しかもお客さんが若かったんです。北京は中国人でしたが、上海は白人のお客さんばっかりで、ここはどこなんだろうって感じでした。もちろん初めて行くし、お客さんがどんな感じかまったく分からなかったんですけど、ステージに上がった途端、びっくりした。しかもみんなナイフを待ってたっぽい感じだったし。ナイフは中国でCDのリリースはないのにどうやって手に入れるのかはわからないんですよ。

りつこ:ここがいちばん印象的、というのはないんですけど、どこの国に行ってもナイフを待っててくれるお客さんがいるというのがつねにありましたね。

むかしと変わった印象はありますか? わたしは92年に初めてニューヨークで拝見したんですが、楽しそう、というか、すごく笑ってるお客さんが多かったですね。

なおこ:そうですか。いまもおんなじですね。お客さんけっこうにこにこして笑ってくれてる人が多い。それは日本でも外国でも。それでこっちも元気を与えられて。

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北京と上海と、台湾の台北の3本で大きめのライヴハウスでやったんですけど、「わあ!」となりましたよ。しかもお客さんが若かったんです。北京は中国人でしたが、上海は白人のお客さんばっかりで、ここはどこなんだろうって感じでした。(なおこ)


少年ナイフ
Pop Tune

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30周年ということであらためて感じたことはありましたか?

なおこ:そうですねえ。いままでぜんぜんうしろを振り返ったりしなかったんですけど、かといって未来を考えてああしようどうしようということもなくて、とにかく目先のこと目先のことしか見てなくて、なんにも反省もしないし、なまけものなのか計画性もなくやってきたんで、だから30年っていう感覚はないんです。「いま」が積み重なるばっかりで。それで「いま」がつみ重なるとだんだん過去が消去されていく。上書き上書きになってる状態。

いつも新鮮な気持ちで。

なおこ:ええ。そうしてます。

今作はどんな作品ですか?

なおこ:今回のアルバムはポップな感じにしたいと思っていたんです。前のアルバムは『大阪ラモーンズ』でちょっとパンクで、その前の『フリータイム』というアルバムもパンキッシュな曲が多かったんで、今度はポップな感じにしたかった。なんでポップかというと、メンバーみんなポップな音楽が好きで、いちばん好きなジャンルとか音楽がポップだったんです。たとえばポール・マッカートニーみたいな世界とか。バンドによってはハードコアが好きな人のバンドの中心はハードコアになるように、少年ナイフの中心はポップだなあと思って、つぎは30周年やし、少年ナイフもはじまりはポップやと思うし。

なおこさんはふだんの生活の中で少しずつ書きとめていると以前うかがいましたが。

なおこ:そうですね。ふだんからネタ帳に例えば単語だけ書きとめたりしてて、いざ曲を書こうという時に、それを歌詞にしつつ曲をつけていったりするんですが、まあ1ヶ月に1曲ずつでも地道に作っていけばあわてなくてすむけど、わたしはそうでなくてレコーディングのスタジオを予約した段階であわてて曲を書くんです。今回も3月からスタジオで、曲は1月に書きはじめました。

そういう日常生活のなかで作られる少年ナイフの曲はかなり具体的なエピソードがもとになっているんですよね。今回はどんなエピソードがあったのか教えていただけますか?

なおこ:はい。1曲目は"ウェルカム・トゥ・ザ・ロック・クラブ"で、日本だとライヴハウスっていうけど、アメリカとかだとクラブ。この曲はライヴでお客さんに楽しんでほしいなあと思う曲で、どっちかというとアメリカのライヴ会場をイメージしてできた曲ですね。ツアーのことを思い出して......。

日本のライヴハウスとなにが違うんですか?

なおこ:アメリカは地方の町にでも何軒かロック・クラブがあって、人があんまり住んでないようなところでも、夜な夜な人が集まってきて、横にレストランやバーが併設してあるから、そこでゆっくり飲みながら、ビリヤードの台が置いてあるのでそういうのもやりながら、で、時間になるとライヴがはじまるので今度はそこに見にいって、という具合に、そこで半日遊べるような施設が多くて、それがすごい楽しい。日本はわりと土地がせまいからバーとステージもひとつの部屋のなかに限られてるし、ライヴが終わったら「もう出て行ってください」みたいな感じだけど、アメリカだとライヴが終わっても好きなだけ飲んで飲んでという感じなんです。レストランもあるからお腹いっぱいになってからライヴを見たり。やっぱり土地があるから、あとよく飲む人が多いというのもあるのかも。

でも車で来てるんですよね。

えみ:うん、そうですね(笑)。

なおこ:ああ、そうだね。そのへんがどうなってるのかは、わたしたちにはわからない。来てる人の年も幅広い。日本ってだいたい30代か40代かな。

少年ナイフはわりと広いですよね。

りつこ:広いです。日本でも広いですけど、海外はもっと広い気がします。

なおこ:それこそ親子三代みたいなね。おばあちゃん、息子、孫って。

それは楽しそうな場所ですね。そういう場所で『ポップ・チューン』とつながるんですね。

なおこ:ええ。音楽を楽しもうと。で、ちょっと最後のところに「政治家もいらないし、心配もいらない」って、ちょっとそういうのも入れといて。

そこ、少年ナイフらしい言いかたですよね。最後の2曲にも、この1年のいろいろな日本の困難な事態や気分に対しての歌かなあと感じたんですが......。

なおこ:最後の曲を作ったのは2年くらい前なんです。

あ、そうなんですか。

なおこ:ええ、だからほんとに関係ないんですけど(笑)。スポーツで金メダルをとろうって。

ああ、金メダルってどういう意味だろうなあと思ってたんですけど、ストレートな意味なんですね(笑)。

なおこ:自分もテニスをするので、うまくなれたらいいなあと思って書いたんです。

じゃあ最後から2曲目の"サンシャイン"は? わたしは寒そうな避難所の光景を思い出したりしたんですが。

なおこ:無意識のうちにそういう影響はあるかもしれないですけど、日本で大震災があったからどうのっていうようなことはとくにないです。聴く人がいろいろ感じてくれたら嬉しいなあと思いますけど。地震があったことに、少年ナイフとして曲をとおしてなにかしなければ、ということは考えないです。個人的に募金したりというのはありますけど。

すごくあったかくて、でもクールでもあって、大きなできごとのなかでも日常生活から離れずにいるというようなところが少年ナイフらしいと感じたんです。

なおこ:やれることは、音楽を演奏して、それが誰かが楽しくなってくれたらうれしいなあと思って。

この"サンシャイン"はりつこさんが歌ってるんですよね。

りつこ:たぶんわたしは、自分は雨女だと思ってて、なおこさんがあたし向けに曲を作ってくれたときに、そういう歌になったんだなあと思いました。だから歌ってるときはそういうことはなにも考えませんでした。ただ私はビートルズのような雰囲気の曲やなあと思って。このアルバムのなかであったかい色あいを出せたらいいなあと思って歌いました。

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日本で大震災があったからどうのっていうようなことはとくにないです。いろいろ感じてくれたら嬉しいなあと思いますけど。地震があったことに、少年ナイフとして曲をとおしてなにかしなければ、ということは考えないです。個人的に募金したりというのはありますけど。(なおこ)


少年ナイフ
Pop Tune

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なるほど。ところでえみさんもヴォーカルを担当している曲がありますね。

えみ:ええ。"サイケデリック・ライフ"(笑)。

なおこ:あははは。

えみ:なんで笑うんですか(笑)。

なおこ:ははははは。歌詞はギャグで書いたもんで。えみさんは、サイケな服とかいつも着てはるから、ばっちりだよねと思って。ペパーミント・ティーも飲んでるし。

えみ:瞑想もするし。はははは。

りつこ:ボヘミアンチックな服で。

ああ、ちょっと不思議な歌詞なんですけど、事実そのままということなんですね(笑)。話が最後の曲に飛んでしまったんで、"大阪ロックシティ"にもどりたいのですか......。

なおこ:これはロビン西さんが原作の『ソウル・フラワー・トレイン』という映画の主題歌を少年ナイフにやってほしいということで、面白そうだから作ったんです。舞台が大阪だからこういう歌に。自分ら通天閣とか大阪城とか好きだから、アメリカやヨーロッパでもリリースがあるし、外国の人にも大阪の魅力を知ってほしいと思って。

わたしはつぎの曲が頭にこびりついてしまったんです。「食べ放題のレストラン」なんですが。

三人:(ざわめく)

なおこ:これは、去年、アメリカ・ツアーに行ったときに車で移動中に昼ご飯の時間になったので「ここが美味しいよ」と連れていってもらった店のことです。ゴールデン・コーラルという店なんですが、そこに行ったら、チョコレート・ファウンテンもあるし、ミートローフみたいな巨大なハンバーグもあったね。
りつこ・えみ:あったあった。

えみ:食べ過ぎました(笑)。

なおこ:日本ではいま食べ放題がたくさんあるけど、アメリカで食べ放題といったらラスベガスのバフェみたいなとこしかなくて、「こういう店もあるんだ」と感動してばくばく食べて。

えみ:おいしかったね。

なおこ:それで作った。食べ放題にいくときは、先にお皿を持って順番に取っていくよりも、まず全体を見渡してから選ぼうということを言いたかった。

美味しいんですか?

なおこ:ええ、おいしいですよ。

アメリカのレストランって......。

三人:あー(笑)。

なおこ:ヨーロッパは好きですよ(笑)。

どこが好きですか?

りつこ:スペインが...。

なおこ:スペインのごはんは好きです。

えみ:ヨーロッパはどこ行ってもおいしいです。

なおこ:おいしくないことの方が少ない。でもわたしが行ってた最初のころのイギリスは、たとえばサンドイッチにマヨネーズがかかってなくて、パサパサのパンにハムが挟んであるだけで、イギリスに行くときはいつもマヨネーズを持っていってたくらいなのに、最近、ちゃんと味がつけてあって、日本のコンビニのサンドまではいかないけど、まあおいしいです。

りつこ:チーズとかバターとかパンはおいしいですよ。

手をかけなければ...

なおこ:2、30年前のイギリスだと、スパゲティは柔らかく茹でてあって、缶詰のミートソースをかけたみたいのしかなかったのに、最近は日本のイタリアンで食べるようなものがパブで出てきたりとか、フィッシュ・アンド・チップスの店なんかも......。

やっぱり食べ物の歌は重要ですね。そしてアルバムではさっきの"サイケデリック・ライフ"から"ミスターJ""ゴースト・トレイン"とちょっと不思議な曲へとつづいていくんですが。

なおこ:"ゴースト・トレイン"というのは、家の近所を電車が走ってて、最終電車が行ったあと、回送列車が車内灯をつけずに走ってくるんですね。先頭のライトだけついててあとは真っ暗なのでおばけの列車みたいなんです。それにインスパイアされました。"ミスターJ"は、地下鉄の駅のベンチにいつもおじいさんが座ってはって、携帯をいじったりしてるんです。ほんとにいっつもいるの。

ああ、実在の人なんだ。一日中、そこに座っているんですか。(笑)全曲に渡ってありがとうございました。少年ナイフの曲って、こうやって種あかしを聞いても、それに影響されずに聴けるのでつい聞きたくなってしまうんです。

三人:ははははは。

なおこさんがインスパイアされたというもとの体験がとても楽しいし、おもしろいんですよね。ささいなできごとなんだけど、それがこんな歌になるんだって。

りつこ:いっしょに体験していることが、歌になって出てくるときに、すごく感動します。

えみ:ほんとにそうですね。

りつこ:「あの時の歌」というのは聞いてないけど、そこにいた人間ならわかる。「ああ、チョコレート・ファウンテンおいしいゆうてはったなあ、おいしいおいしいって食べてはったなあ」って。そういうのが、聞かなくてもわかる。

ああ、なるほど。だから、そこにいなかった人も、そこでの話を聞いてから歌を聞くともっと楽しくなるんですね。

なおこ:昔から、実体験を歌にすることが多かったんですね。想像をふくらませて、想像の世界でおおきくして。

ロマンじゃないんですよね。

なおこ:ああ、ロマンじゃないんです。ロマンは苦手なので(笑)。現実主義なんで、そういう現実から少しふくらませていくんです。

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Los Miticos Del Ritmo Los Miticos Del Ritmo Soundway / UK / 2012/5/11 »COMMENT GET MUSIC
QUANTIC指揮の元、現地凄腕ミュージシャンからなる"QUANTICと神話の打楽器隊"、待望のフル・アルバム!伝統的な演奏形態を踏襲し つつも豊潤な音楽観と洗練のアレンジでアップデートした2012年型ハイブリッド・クンビア極上盤◎
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