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Gabby & Lopez

Gabby & Lopez

Twilight For 9th Street

AWDR/LR2

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野田 努   Jun 07,2012 UP
E王

 ギャビー&ロペスの音楽は、それ自体が多幸感に溢れているわけではないのだが、聴いている人をほんわかとした気持ちにさせる。間違ってもアッパーではないし、いまどきのドリーミーな感じでもないが、気持を楽にしてくれる。ポスト・ロックのアンビエンスのなかで、たとえば〈スリル・ジョッキー〉のような洗練されたアブストラクト・サウンドへと向かったとしても、他では代用が効かない、ギャビー&ロペスにしか出せない感覚がある。彼らの音楽には一種の慎ましさ、物静かであることの快楽がある。森俊二が〈メジャー・フォース〉という日本で最初のヒップホップのインディ・レーベル出身というのが嘘のようだ。

 ギャビー&ロペスは、森俊二と石井マサユキというふたりのベテラン・ギタリストによるプロジェクトで、本作『トワイライト・フォー・ナインス・ストリート』は、2006年の『ニッキーズ・ドリーム』以来6年振りにリリースされる3枚目のアルバムとなる。このアルバムには、はからずともマーク・マッガイアとの共通点を見出すことができる。ギター・サウンドの追求、波乗り好きなこと、ムードを醸し出すアンビエント的な音楽性、とくに"Reflection "のディレイ・サウンドなどは......しかし、ギャビー&ロペスには、日本の音楽に特有の繊細さがある。さざ波のようなかすかな揺れ動きにこそ、彼らは美しさを見出している。ギターのいち音いち音に細心の注意が払われ、エレクトロニクスの注ぎ方にも深い配慮がなされている。そして、2本のギターの交錯する響きこそが、このプロジェクトの肝にある。

 "Birdcall Lulu"や"She Likes Motor Cycle"はファンにとってはキラーな曲のひとつだ。ふたつのギターの音符は水飴のように溶け、静けさのなかで音が躍動している。ベースがうなる"Half Step Ahead "では、マニュエル・ゲッチング流のディレイに加え、ジェフ・パーカーのポスト・バップめいた質感を思い出す。
 アルバム・タイトルになった"Twilight For 9th Street"はアンビエントというよりも、彼ら流のバラードで、アルバムのなかでもっとも感傷的な曲だが、演奏される2本のギターの弦の振動が織りなす音響の美しさは将来への不安を一時期的にせよ、確実に取りのぞいでくれるだろう。すでにいろんな名カヴァーが存在するボブ・ディランの"Just Like A Woman"を彼らもカヴァーしている。

 『トワイライト・フォー・ナインス・ストリート』は、何か偉そうなことを言っているわけではないが、我々にとっては大切な音楽のひとつだ。過去の2枚と比較すると、ギターの演奏もほどよく抑制されている。ドラムパートは控えめに演奏され、2本のギターの音色の甘美さが前面に出ている。UMA UMAの叙情にも接近しているように思えた。いずれにせよ、間違いなく、彼らの最高作。

野田 努