ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with Larry Heard 社会にはつねに問題がある、だから私は音楽に美を吹き込む | ラリー・ハード、来日直前インタヴュー
  2. Columns ♯5:いまブルース・スプリングスティーンを聴く
  3. The Jesus And Mary Chain - Glasgow Eyes | ジーザス・アンド・メリー・チェイン
  4. interview with Shabaka シャバカ・ハッチングス、フルートと尺八に活路を開く
  5. interview with Martin Terefe (London Brew) 『ビッチェズ・ブリュー』50周年を祝福するセッション | シャバカ・ハッチングス、ヌバイア・ガルシアら12名による白熱の再解釈
  6. claire rousay ──近年のアンビエントにおける注目株のひとり、クレア・ラウジーの新作は〈スリル・ジョッキー〉から
  7. interview with Keiji Haino 灰野敬二 インタヴュー抜粋シリーズ 第2回
  8. Beyoncé - Cowboy Carter | ビヨンセ
  9. 壊れかけのテープレコーダーズ - 楽園から遠く離れて | HALF-BROKEN TAPERECORDS
  10. Larry Heard ——シカゴ・ディープ・ハウスの伝説、ラリー・ハード13年ぶりに来日
  11. Free Soul ──コンピ・シリーズ30周年を記念し30種類のTシャツが発売
  12. Jlin - Akoma | ジェイリン
  13. Jeff Mills ——ジェフ・ミルズと戸川純が共演、コズミック・オペラ『THE TRIP』公演決定
  14. Bingo Fury - Bats Feet For A Widow | ビンゴ・フューリー
  15. まだ名前のない、日本のポスト・クラウド・ラップの現在地 -
  16. tofubeats ──ハウスに振り切ったEP「NOBODY」がリリース
  17. Jeff Mills × Jun Togawa ──ジェフ・ミルズと戸川純によるコラボ曲がリリース
  18. R.I.P. Amp Fiddler 追悼:アンプ・フィドラー
  19. interview with Keiji Haino 灰野敬二 インタヴュー抜粋シリーズ 第1回  | 「エレクトリック・ピュアランドと水谷孝」そして「ダムハウス」について
  20. Rafael Toral - Spectral Evolution | ラファエル・トラル

Home >  Regulars >  編集後記 > 編集後記(2019年12月30日/小林拓音)

編集後記

編集後記

編集後記(2019年12月30日/小林拓音)

小林拓音 Dec 31,2019 UP

 2019年が暮れようとしている。今年もいろんな出来事が起こり、いろんな音楽が世に生み落とされた。政治や社会の分野では相変わらずうんざりさせられることばかり起こったけれど、音楽の分野、とりわけアンダーグラウンドはけっこう充実していたのではないかと思う。
 日々フィジカルでもデジタルでも、山のように新しい音源がリリースされている。それこそ一生かかっても聴ききれない量の音源が、毎日毎日生み落とされつづけている。細分化も極限まで進んでいるが、とはいえやはりトレンドのようなものは浮かび上がってくる。近年で言えばそれはニューエイジであり、穏やかで静かなソウルであり、あるいはシティ・ポップ・リヴァイヴァルだった。他方で2019年、クラブ・ミュージックの文脈では、ベリアルやフローティング・ポインツに代表されるように、テクノの復興が目を引いたけれど、時代がひとまわりしたのだろう、さまざまなジャンルに忍び込んだダブがふたたび新鮮な響きを放ちはじめてもいる(年末号参照)。あるいはポリティカルな怒りをアートにまで昇華したムーア・マザーや、シティ・ポップの流れに反旗をひるがえしたウール&ザ・パンツのように、現行のトレンドに対抗的な気運も胎動している。80年代末~90年代初頭、ぼくはリアルタイムではないけれど、バブルに浮かれまくっていたと伝え聞く日本において、その狂騒にはけっして与しない表現をつづけていたこだま和文やじゃがたらが、まさにいま再活性化しているのも、来るべき時代のひとつの符号だろう。
 年明け早々にはブレグジットが控えている。アメリカでは大統領選があり、日本ではオリンピックが開催される。完全にイヤな予感しかしないけれど、年末年始くらいは楽観的に過ごそうと思う。来年はきっと、音楽の風向きが大きく変わる。いち音楽メディアとしては、そのときそのときの流行を敏感にキャッチしつつも、ただそれに追従するのではなく、オルタナティヴな動きをしっかりと紹介できる媒体でありたいと思う。そして、音楽ファンが音楽だけに閉じこもってしまわないような、他の領域の動向も案内できるメディアをつくっていきたいと思う。
 ちなみにわたしたちはそのアティテュードを、ウェブだけでなく紙の本でも模索しつづけている。2019年、ele-king books は29冊の本を刊行した。まだ一度も手にとったことがないという方は、まずは立ち読みでもいい、ぜひ書店で現物に触れてみてほしい。どの本も時流を見すえながらも、独自の視点やアティテュードを呈示するものに仕上がっていると、そう自負している。2020年も刺戟的な本をたくさん予定しているので、楽しみに待っていてください。
 それではみなさん、良いお年を。(小林拓音)

COLUMNS