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Home >  Interviews > interview with Co La - サックスよりもドライヤーなんだ

interview with Co La

interview with Co La

サックスよりもドライヤーなんだ

――来日直前! コ・ラ、インタヴュー

橋元優歩    Jul 31,2013 UP

Co La
Moody Coup

Software / melting bot

Amazon iTunes

 対面インタヴューならば食い下がったのだが、あいにくのメール・インタヴューだ。コ・ラは自らの音楽についてこう解題した――「慌ただしいレストランでウェイターがグラスを落としたときと同じ印象や効果を音楽にしたくて」。今作の彼の音を見事に説明するイメージである。と同時に、これはたとえばジャム・シティやキングダムといったアーティストにもまったくよく当てはまるフィーリングだと思う。金属的で、神経の緊張を断続的に強いてくるようなサウンド・コラージュ。なぜわざわざそんなストレスフルな音に執着するのか、そして、インダストリアルという言葉に新しい表情を与えるようなそうした音が、複数のアーティストから同時に生まれてきているのはどうしてなのか、そのあたりを訊くことができたらよかった。なにせ、まだ名前のないムーヴメントなのだ。

 とくにジャム・シティやキングダムを擁する〈フェイド・トゥ・マインド〉は、こうした音像に視覚イメージを与えて意味づけ、ダンス・ミュージック・シーンに鮮やかなインパクトを生みつつある(ジャケでもロゴでも、レーベルとして一貫したスタイルを感じるだろう)。本作をリリースする〈ソフトウェア〉も、エッジイで批評性に富んだエレクトロニック・ミュージックを送り出すことに関してはもはや名門の域だ。主宰フォード&ロパーティンのレトロ・フューチャリスティックで硬質なサイバー趣味には、前者と同じようにツンケンした、金属っぽいサウンド・デザインが埋め込まれている。そして、以下、コ・ラ自身の口からも前者へのシンパシーが語られるように、毛色の異なる両者が、インダストリアル・ノイズの今日性を模索するようにして邂逅する様子には、どうしたってシーンの「次」を感じざるをえない。

 前作『デイドリーム・リピーター』が「家具の音楽」なら、今作でコ・ラはそれを置くべき場所を作った。ガラスを引っ掻くパンダ・ベア、というのがコ・ラことマシュー・パピッチの新作『ムーディー・クープ』の印象である。パンダ・ベアのまどろみと多幸感の島で、なぜかわざわざガラスを割りまくって引っ掻いている、それをなぜかと問い返すなかにいまのモードのひとつのかたちが見えてくるだろう。

 前作のタイトルは『デイドリーム・リピーター』だが、パンダ・ベアやアニマル・コレクティヴにはじまる2000年代のサイケデリックの成果が、2010年をまたぐ頃にドリーム・ポップの複合的な盛り上がりへと帰結し、シーンの内向化を促したとするならば、今作でのパピッチはその源流を角のあるもので傷つけながら、自分の居やすい空間へと改変しようとしているように見える。けっしてそこに穴を開けて風通しをよくし、外に出ようと促すのではない。あくまでベッドルーマーとしてデイドリーム・リピートする前提で、でも、気が散って落ち着かないようなドリーム空間があってもいいだろうというのが『ムーディー・クープ』ではないだろうか。ディストピアがユートピアの一種なのか、ユートピアがディストピアの一種なのかがわからなくなるような世界が立ち上がってくる。彼のような変種の存在は、この10年のUSのサイケデリック・ミュージックがいかに多様性持つものであるかをよく物語る。

 「耳障りでストレスフル」とは書いたが、あくまで品のあるダンス・アルバムだ。エキゾチックな表情やジャジーなフレーズも多数サンプリングしながら、聴く音としても洒落た仕上げを施している。前作から大きな飛躍を遂げ、かなり個性的な作品になったと思う。『ムーディーな一撃』......このタイトルのクールな矜持が、そのまま本作の魅力である。

ドライヤーや車の衝突音の方がサックスのソロよりも惹かれる。音楽がリズムで構築されるとき、日常にある偶然の音が入ってくる、それが未来の音楽を示していると僕は考えているんだ。

『デイドリーム・リピーター』について、コンセプトとしては「家具の音楽」(サティ)に通じるものだという説明をしておられましたが、実際に家具にするにはノイジーな仕掛けに満ちていると思います。今作はとくにそう感じました。あなたのめまぐるしいサンプリングやコラージュが持つ哲学について教えてください。

パピッチ:ジョン・ケージのような感覚かな。そういった音には常に興味があって、とくにいわゆる音楽じゃないものだね。ドライヤーや車の衝突音の方がサックスのソロよりも惹かれる。音楽がリズムで構築されるとき、日常にある偶然の音が入ってくる、それが未来の音楽を示していると僕は考えているんだ。背景や壁紙でなく、開いた窓のスクリーンような......空気ではない、「音」をフィルターしているつもりだよ。

金属的で鋭角的、あたりのキツめなプロダクションには、たとえばジャム・シティ(Jam City)などに共通するところがあると感じます。こうした音づくりはとくに今作から顕著になったものだと思いますが、どんなことを意識されていたのでしょう?

パピッチ:慌ただしいレストランでウェイターがグラスを落としたときと同じ印象や効果を音楽にしたくて、そのフィーリングを引き延ばして動的に表現にしたらそうなったんだ。

〈ナイト・スラッグス(Night Slugs)〉などのレーベルと交流があったりはしますか? 彼らもあなたも現代におけるインダストリアル・ミュージックのひとつのフロンティアと呼べるように思います。

パピッチ:全然ないけど好きだよ。DJをやるときはいつもKingdom(Fade To Mind)みたいな感じになるね。

ただテクニカルというわけではなく、硬質なマテリアルから多彩な感情表現を引き出しているのも素晴らしいと思います。あなたの音楽にとってエモーションはどのくらい重要なものでしょう?

パピッチ:新しい音楽を作るときはとくに重要だね。コンセプトやフィーリングでなく、そのときに聴いて影響を受けた音楽に近いところからスタートする。聴いている音楽からループをざっくり探して、くっつけて、エモーショナルなポイントを見つけ、そういった音そのものから得たアイデアを、曲作りのパワーにしているんだ。

取材:橋元優歩(2013年7月31日)

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