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Home >  Interviews > interview with Co La - ノイズのユーモア、ノイジーなヒューマニティ

interview with Co La

interview with Co La

ノイズのユーモア、ノイジーなヒューマニティ

──コ・ラ、インタヴュー

質問・文:橋元優歩 、翻訳:髙橋勇人    photo by Andrew Strausser   Nov 10,2015 UP

Co La
No No

Pヴァイン

ElectronicNoiseExperimental

Tower HMV Amazon iTunes

 コ・ラとは、まあ「コーラ」のことなのだけれども、そのネーミングから発せられるある種傍若無人な批評性とは別に、「ー」が「・」になることで生じてしまっているこのなんともいえない吃音、休符、そしてその真空にも似た半拍に吸い寄せられてくる多大なノイズこそが、この奇態なアーティストの本尊にしてコアなのではないかと、彼の音楽を聴くたびに思わせられる。

 彼ことコ・ラ、ことマシュー・パピッチは、現エレクトロニック・ミュージック・シーンを牽引するもっとも柔軟な知性、OPN(ワンオートリックスポイントネヴァー)主宰の〈ソフトウェア〉を象徴するプロデューサーである。プロデューサーというべきか、アーティストというべきか、ミュージシャンというべきか、そうした呼称の遠近法の中になかばペテン的に存立している彼の音は、ときにアートに近接し、ときにフロアでひとを躍らせ、そして幸せなことにポップ・ミュージックとしてもわれわれのヘッドホンやステレオを賑わせてくれる。このもってまわった言い方にピンとこなければ、ともかくもこの10月にリリースされた新譜『ノー・ノー』を再生してみてほしい。

 雑音に騒音、音楽のような何かに音楽らしい輪郭を与えているのはビートのみで、それとて一定不変の安心を約束してくれない。どこか執拗でせわしなく、あまのじゃくで、ときに攻撃的ですらあるコンポジションに、われわれはたとえばクリス・バーデンが好きだと述べる、あるいはかつてパンクやハードコアに心を奪われたのだというパピッチのひとつの精神を見出すだろう。「コーラ」から長音を奪ってしまう感覚は、まさにこのあたりに由来するようにも感じられる。

 しかし、彼にはまたもう一つ重要な背景がある。2000年代半ばのボルチモアの実験主義者たちの極北、ポニーテイルやエクスタティック・サンシャイン──前者はポストロックやマスロックの文脈でも解釈されるカラフルでノイジーなアート・ロック・バンド、そしてより深いサイケデリアを展開する後者こそはパピッチとポニーテイルのダスティン・ウォングによるギター・デュオ・ユニットである。テリー・ライリーやあるいはマニュエル・ゲッチングなどを彷彿とさせながら2本のギターが螺旋を描いて楽しげにもつれ合うエクスタティック・サンシャインの音楽がコ・ラのスタート地点に存在することは、彼の根元にポジティヴなエクスペリメンタリズムが存在することを証すものでもあるだろう。

 ということで、ギターをエイブルトンに持ち替えたパピッチの、騒音と愛嬌が半ばするエレクトロニック・プロジェクト、その第2章に耳を傾けてみよう。耳というよりも五感で受け止めることを、この「ノー・ノー」という雑音たちは望んでいるのかもしれないけれども。

■Co La / コ・ラ
ボルチモアのエクスペリメンタル・デュオ、エクスタティック・サンシャインの片割れ、マシュー・パピッチによるエレクトロニック・プロジェクト。2011年に米アンダーグラウンド・テープ・レーベル〈NNA〉よりデビュー作『デイドリーム・リピーター』をリリースし注目を集める。後にOPN主宰の〈ソフトフェア〉より『ムーディ・クープ』(2013)『ノー・ノー』(2015)を発表、エレクトロニック・ミュージックのフロンティアを掘削するプロデューサーの一人として活躍を期待される。

言語化される前のことばや、新生児が発する音、咳やあくび、泣き声といったフィジカルで制御不可能な音に興味があったね。

あなたの音楽は、一定のビートはあるものの、さまざまなサンプリング・マテリアルがめまぐるしく切り替わって、ある感情や情緒が持続し展開するのを意識的に避けているような印象があります。こうした編集は快楽的に追求されたものなのでしょうか?
それともコンセプチュアルに目指されたものなのでしょうか?

コ・ラ(Co La、以下CL):加速感やスピード、直線感に僕は快楽を見いだせる。いまの興味はダイナミズム、ムード、感情移入や混乱状態といったところかな。自分の音楽が目指すところは前進だね。もちろんそこには調査も含まれるけど停滞はしない。

今回用いられている音声には、くしゃみや赤ん坊の泣き声、叫び声などヒューマンなノイズが多いですね。これは意識的にディレクションされているのですか? それともあなた自身に起こった何がしかの変化によるものなのでしょうか?

CL:作曲において声という基本的な要素を使用しつつも、歌わずにある種の拡張されたテクニックを用いている。制作の段階では言語化される前のことばや、新生児が発する音、咳やあくび、泣き声といったフィジカルで制御不可能な音に興味があったね。

以前『レスト・イン・パラダイス(Rest In Paradise)』(2011)を「家具の音楽」(musique d'ameublement)として語っておられましたが、あなたにとって作曲行為は空間デザインに近いものなのですか?

CL:建築は自分の作曲のある部分には適切な類似点だと思う。でも、アンビエンスの概念はよく「家具の音楽」と同意義とされることがあるけれど、『ノー・ノー』はそれとはかけ離れたものだよ。

コ・ラでの取り組みは、方法論としてはエクスタティック・サンシャインの真逆にあるように感じられます。というのは、ESには多少即興的な要素もあるのではないかと思うからです。コ・ラにおいては即興性を意識することはありますか?

CL:たしかに音楽はまったくちがうよね。でも、じつはエクスタティック・サンシャインの音楽は練って作られたもので、入念にリハーサルもした。それに僕たちは大した即興演奏ができるわけでもない。コ・ラにおいては即興をあまり意識してはいないかな。でも〈パン〉でやっているリフテッドのプロジェクトでは、もっと自由に探求をしているよ。

書かれていないルールっていうのかな。僕は曲を作ることによってその領域を探索していた気がする。

「ノー・ノー(No No)」というのは、否定を表すというよりはオノマトペのようなものでしょうか? タイトルの由来について教えてください。

CL:オノマトペの要素は興味深いよね。僕はダダイズムの自動筆記とかコンクリート・ポエトリーのファンだよ。「ノー・ノー」は何か禁止されたものを表す口語的な言い方なんだ。書かれていないルールっていうのかな。僕は曲を作ることによってその領域を探索していた気がする。疑念や困惑を抱きはじめるのに十分なくらいに、一定の形式をわずかに保ちつつも、そこから外れた音を使ってね。

地元ではパンク・シーンが強固だったようですね。ミスフィッツやラモーンズがお好きだったというエピソードは少し意外でもあります。そういった音楽はあなたにどんな影響をもたらしたと思いますか?

CL:『ノー・ノー』に取り掛かる前に、自分が高校生だったときのレコード・コレクションを聴き返していたんだよね。パワー・バイオレンス、スラッシュ、グラインド・コアとかだよ。音の面でそれらを参照するのではなくて、その音楽の持つ、ときにユーモアに溢れていて、ときに戦略的なイデオロギーを思い出したかった。『ノー・ノー』は攻撃的なコ・ラのアルバムでそれを定義するために、ある点においては自分の昔の感心と向き合ったりしたね。

パワー・バイオレンス、スラッシュ、グラインド・コア。音の面でそれらを参照するのではなくて、その音楽の持つ、ときにユーモアに溢れていて、ときに戦略的なイデオロギーを思い出したかった。

また、クリス・バーデンに惹かれてアート・スクールに進まれたそうですね。あなたが指摘する、不条理、科学、暴力、そしてヒューモアという要素は、まさにコ・ラにおいても実践し模索されているように思います。彼の「作品」としてもっとも衝撃を受けたものについて、あるいはクリス・バーデンとあなたの音楽観・芸術観について教えてください。

CL:クリス・バーデンは僕のインスピレーションのひとつで、とくに彼の思考のスタイルに注目しているよ。成功した芸術作品は自身のロジックと、それを支えるために実例と主張を兼ね備えていなきゃダメだ、と個人的には思っている。マテリアルとコンセプトの連帯と、一時的にミクロなマニフェストも必要になってくる。僕はバーデンの「ショック」にはそんなに興味はないんだけど、次々と強烈さ、眩しさ、粉砕、そして奇妙さといった状況を作り出す彼の能力にはとても感心があるよ

〈ソフトウェア〉は現在のあなたのホームと呼び得る場所ですか? また、〈ソフトウェア〉はなにかと息苦しい時代に遊び心やジョークを表現し発信できている限られたレーベルだと思いますが、客観的な視点から期待していることはありますか?

CL:うん。〈ソフトウェア〉はホームだね。彼らはとても献身的だし、わずかなコンセプトでも理解してくれる。ダニエル(OPN)のキュレーションは素晴らしいと思うよ。彼は特異さと共感の間のバランスを取るのがとても上手だね。あとユーモアもある。

僕には情報的なノイズをツールとして、また有益だと捉える傾向がある。“スクイージー”や“ガッシュ”といった、かなり負荷が掛かっていて複雑に展開してく曲にそれは表れているね。

あなたのノイズ観についての質問ですが、本作中であなたがもっとも「ノイジー」だと感じる曲はどれですか? 理由についても教えてください。

CL:僕には情報的なノイズをツールとして、また有益だと捉える傾向がある。“スクイージー”や“ガッシュ”といった、かなり負荷が掛かっていて複雑に展開してく曲にそれは表れているね。だからこれらの曲は、不安や困惑を生み出しているという意味では「ノイジー」だといえる。『ノー・ノー』の大部分は困惑の要素と透明な瞬間のバランスを保っているよ。僕はガラクタのようなアクチュアルなノイズとディストーションを、けっこう象徴的に使っている。それらは不調和を表象しているけれど。必ずしもストレスを感じさせたり疑問を投げかけたりするものではないんだ。

歌を紡ぐことやギターでフレージングするというアプローチはいまのところあまり興味はないですか?

CL:しばらくの間、ギターには興味がないんだよね。エクスタティック・サンシャインのときからギターはとってあるけど、正直に言うと、一年はギター・ケースを開けていない。

今年よく聴いた音楽や素晴らしいと感じた作品について、とくにジャンルに関わりなく教えてください。

CL:今年はグライムをたくさん聴いたな。マーロ、シャープ・ヴェインズ、ミスター・ミッチとか大好きだよ。それからヴォイシズ・フロム・ザ・レイクはほぼ毎日聴いている。他によく聴いているのはフォーク(Phork)、モーション・グラフィックス、ジェレミー・ハイマン、マックスDとかだね。


質問・文:橋元優歩 、翻訳:髙橋勇人(2015年11月10日)

Profile

髙橋勇人(たかはし はやと)髙橋勇人(たかはし はやと)
1990年、静岡県浜松市生まれ。ロンドン在住。音楽ライター。電子音楽や思想について『ele-king』や『現代思想』などに寄稿。

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