Home > Interviews > interview with YOLZ IN THE SKY - 誰が聴くねん?
Q:友だちがほしいなとは思わないんですか?
A:まったく思わないですね。喋りかけてくれたら話すんですけど。
■話題を変えましょう。柴田さんが音楽で一番気持ちよくなくところって、どんなところなんですか?
柴田:やっぱり自分がやりたい理想があって、それができたときがベストですかね。
■機材は何を使われているんですか?
柴田:昔はいろんな機材を買っていろいろ試していましたね。
■最初の楽器は何だったんですか?
柴田:ギターですね。
■そこからエレクトロニクスへいったんですね。転換期は何だったんですか?
柴田:転換期はまさにこのアルバム(『DESINTEGRATION』)を作ったあとです。最初はギターだったんですが、ぼくの世代ってギターの機材にこだわって、ヴィンテージとかを集めてるやつってそこまでいなかったんですよ。だからそこで真新しさを求めることもできたわけです。でもいまってそうじゃない。これはぼくが勝手に思っているんですけど、ギターという表現方法に行き詰まっているからみんな機材の方向に目が向いているように見えるんです。新しく出てくる機材も変なものが増えていったので、ぼく自身はそこに興味がなくなっていったんですよ。ギターやアナログ機材でニュアンスを表現するよさもあるんですけど、数字でピッタリ表現するんだったらパソコンとかで自分で作るしかなくなってしまうんです。
■パソコンを使いだしたのはいつからなんですか?
柴田:ちょうどこのあと(『DESINTEGRATION』リリース後)ですね。
■じゃあ新作がその変化のあとなんですね。音的には完全にそうですもんね。
柴田:そうなんですよ。機材に関しては自分でプログラミングしてやってます。C言語から作っていったりとか。ひとが作った機材よりも、自分でこうしたいという方向に興味が移っていったんです。
■プログラミングは誰かに習っていたんですか?
柴田:独学ですね。自然のなりゆきで勉強も進んだというか。トラックは基本的にぼくが作ってます。
■エレクトロニクス・ミュージックをやっていて、C言語というのはまだ少数派でしょうね。
柴田:大変なのはたしかですよ。ノイローゼになるかもしれないです。でもギターはけっこう好きで、まだその可能性を模索しています。今回もビート以外は基本的にギターで作っているんですよ。
■ゴート(goat)とは繋がりはないんですか?
柴田:喋ったことはあります。
■オウガ・ユー・アスホールとの接点はないんですか?
柴田:対バンをしたことはありますけど、接点というところまではないです。
■日本のバンドで共感しているひとたちはいますか?
柴田:あんまりつるまないので、音楽友だちがいないんですよ。
■友だちがほしいなとは思わないんですか?
柴田:まったく思わないですね。喋りかけてくれたら話すんですけど。
■相当なへそ曲がりですね。その感じが音にも出ているというか。
柴田:そうかもしれないですね。
■ヨルズ・イン・ザ・スカイはどこにカタルシスを感じているんですか?
柴田:考えたこともないな……。基本的に飽き性なんですよ。自分で面白いと思ったことにしか興味がいかないんです。これをやったら受けるちゃうか、みたいなことは一切考えないですね。世間的に流行っている作り方があったとしたら、それは絶対にやらないです。
■じゃあいまも世の中なんて気にしないで今日もストラヴィンスキーを。
柴田:単純に好きですからね。もちろんそれだけじゃないですけど。
■どういうひとがファンなのか気になりますね。
柴田:ハードコアっぽいアルバム出したときのファンは、今回みたいな音を求めてはいないですよね。もちろんずっと好きでいてくれるひともいるんですけど、聴くひとも移り変わっているので、そこでどなっているかはまったくわからないです。
■PCを取り入れてギター・サウンドを押し広げたりとか、今回のアルバムを作る上での重要なポイントがいくつか出ました。それに加えて、さっきも言ったように、ぼくはダンス・ミュージックっぽくなっていると感じたんですが……
柴田:ちょっとずつそうなっている感じはあります。それは何かを軸に作っているからかもしれないですね。やっぱりギターなので、基本はドラムありきで考えるんです。最初はスタジオへ行ってあわせるとか。その名残でドラムが主体のノリで作っていることが影響しているのかもしれないですね。とくにダンス・ミュージックを意識しているわけではないんですよ。
■過去の作品も抽象的なデザインで、曲のタイトルもアブストラクトなものが多いといいます。新作も……何で『ホテル』というタイトルなんですか?
柴田:よくホテルに泊まっているからです。
■ほぉ、ラブホテルに。
柴田:いや……。
■ホテルの清潔感というか、無菌室的な感じでしょう? そういうのはサウンドにも出ていますけど。
柴田:ラブホテルばかりに行っているわけじゃないです。
■柴田さんのなかには自分のサウンドに対して映像的なものがあるんですか?
柴田:映像はないんですけど、イメージはあります。無菌室的な感じとおしゃっていましたが、音楽の博士が誰とも喋らずにやっているようなイメージがありましたけどね(笑)。
■昔の作品だと歌詞カードがついていますけど、メッセージみたいなものをヴォーカリストの萩原さんはもっていらっしゃるんですか?
柴田:あんまりもっていないみたいですよ。
■歌詞に関してはおまかせなんですか?
柴田:ぼく、歌詞を知らないんですよ。ぼくが曲を作ったらそれを相手に丸投げするんです。それでヴォーカルが歌詞と歌をつけてくれる。
■シュールな世界ですよね。ヴィジュアルにしても、シュールレアリズムですよ。ジャケのインナーには爆弾があって電球がある。これはいったいなんだろう……で、ここに共通を見出せっていわれてもね(苦笑)。
柴田:そこに数式はないですね。最近は音楽の「楽」が「学」になっているんです。ずっとこういう音ばっかりを考えていますからね。ノイローゼになりそうになる。
■メンバーのなかで、柴田さんの作業が一番多いんですよね?
柴田:そうですね。ずっと部屋に閉じこもってます。人とも喋らないですからね。
■精神のバランスを失いながらやるんですね。
柴田:それはあんまりないですね。どっちかっていうといつも躁状態なんですよ。うつにはまったくならないんです。
■サウンドがうつじゃないから。
柴田:悩みごともないんです。今日の飯どうしようかとか、小さい悩みはありますよ。
■大きな悩みを抱えている音楽には思えないです。
柴田:だからメッセージを発したくもないというか。
■ぼくなんか悩みだらけですけど……。しかし困ったなぁ。読者にヨルズ・イン・ザ・スカイを紹介したくていろんな質問を投げているんですけど、ますますわけがわからなくなってきました。
柴田:すいません。
取材:野田努(2015年12月16日)