「PPP」と一致するもの

Weldon Irvine - ele-king

 21世紀になって、20世紀にはあまり語られなかった歴史に脚光が当たっている。音楽においても、ときの商業主義やジャーナリズムには乗れなかったものの、それを知るミュージシャンたちからは発見/リスペクトされ続けていた作品やアーティストが広く掘り起こされ、再評価されているのは周知の通りである。
 ウェルドン・アーヴィンの名前を知らない人でも、彼の曲を知らない人はまずいないだろう。もっとも有名な曲のひとつ “I Love You” を大胆にルーピングした曲を、シーンに登場したばかりのセオ・パリッシュは “Black Music” という、最大限のリスペクトを込めたタイトルをもって発表した。それというのも、アーヴィンが作詞し、ニーナ・シモンが歌った超名曲 “To Be Young, Gifted and Black” は公民権運動の公式アンセムとまで呼ばれている曲で、この曲をカヴァーしたアーティストたるや、アリサ・フランクリン、ダニー・ハザーウェイをはじめ、カリブ海からはプリンス・バスター、ボブ・アンディ&マルーシャ・グリフィス、ザ・ヘプトーンズ……、あるいは、エルトン・ジョンまでが手がけているという、つまり、ポップ史および社会運動史においても決定的な曲である。セオはその意味もわかったうえで、アーヴィンの “I Love You” を “Black Music” と呼んだのだろう。
 もっともウェルドン・アーヴィンに関しては、ア・トライブ・コールド・クエストの 人気曲のひとつ、“Award Tour” におけるサンプリング・ソース(We Gettin' Down)としてのほうが有名だろうか。Q-Tipはのちにリリックのなかでもアーヴィンの功績を讃えているが、ほかにアーヴィン崇拝者として知られているラッパーと言えば、コンシャス・ラップの代表格、モス・デフとタリブ・クエリの二人である。アーヴィンは彼らの名作『Black Star』(1998)収録の “Astronomy ” において鍵盤を弾いているばかりか、モス・デフのソロ作 “Umi Says” でもフィーチャーされており、タリブ・クエリも負けじとソロ作“Too Late” でキーボードを弾いてもらっているうえに “Where Do We Go(私たちが行くところ)” という曲の副題を “ウェルドン・アーヴィンに捧ぐ” としている。
 もちろん、ここでマッドリブのことを忘れるわけにはいかないだろう。アーヴィンの死後、彼はイエスタデイズ・ニュー・クインテット名義でトリビュート作『Suite For Weldon Irvine』(2003)を発表、その翌年にはモンク・ヒューズ名義でカヴァー・アルバム『A Tribute To Brother Weldon』までリリースしたほどだった。
 まだまだ例はある。ドラムンベースのファンなら、LTJブケムの〈Good Looking〉からのBig Budのアルバム『Late Night Blues』(2000)でフィーチャーされていることを憶えているだろうし、テクノ・ファンならアズ・ワンことカーク・ディジョージオがそれこそ“I Love You” をカヴァーしていることを思い出して欲しい(東京のクラブでよくかかったなぁ)。また、竹村延和のスピリチュアル・ヴァイブスが1993年の時点でいちはやくアーヴィンの “De Ja Vu” をカヴァーしているのは、もう、さすがというか。
 いずれにせよ、多くの音楽ファンが、どこかでウェルドン・アーヴィンと出会っているはず。映画『サマー・オブ・ソウル』において、ニーナ・シモンが “To Be Young, Gifted and Black” を歌っている最後の感動的な場面も記憶に新しい。
 そう、ウェルドン・アーヴィンこそがニーナ・シモンの黄金期における音楽の重要パートナーだった。とはいえ彼の活動領域は、ジャズ、ファンク、リズム&ブルース、ゴスペルなど広範囲にわたるもので、アーヴィンは生涯を通じて、500曲以上のいろんな楽曲で、演奏、作詞、作曲などに関わっている。
 ソロ・アーティストとしては70年代以降、いくつもの名盤/人気作をリリースしているが、なかでも『Liberated Brother』(1972)、『Time Capsule』(1973)、『In Harmony』(1974)の3枚は、黒人音楽ファンおよびディガーたちからこの時期のジャズ・ファンクの金字塔に認定されている。2002年、なんと銃によって自害してしまったウェルドン・アーヴィンだが、しかし彼の輝かしいレガシーは年々輝きを増し、最近ではイハラカンタロウもカヴァーしたように、新しいリスナーを絶えず呼び込んでもいるのだ。
 
 ブラック・ミュージックにおけるいわば知る人ぞ知る至宝、ウェルドン・アーヴィンの諸作の権利を 〈Pヴァイン〉が遺族から収得した。今後、アーヴィン作品のリイシューをがんがんに展開します。まずは2月15日に、「CAPSULE ep」の10インチ・アナログ盤をリリース(同時期にはTシャツも販売)。どうぞ注目してください。

 
 
 

Waajeed - ele-king

 Waajeed(ワージード)といえば、デトロイト・ヒップホップを代表するプロデューサーのひとりで、J Dillaとともにスラム・ヴィレッジのメンバーであり、PPP(Platinum Pied Pipers)としての作品も知られている。ワージードが、来る11月、ベルリンの〈トレゾア〉からソロ・アルバム『Memoirs of Hi-Tech Jazz』をリリース。まずはアルバムに先駆けて、シングル曲“Motor City Madness”が発表された。ヒップホップとテクノとジャズがブレンドされた素晴らしい曲だ



以下、資料より抜粋。

『Memoirs of Hi-Tech Jazz』は、デトロイトや世界中の黒人居住区における抑圧的なヘゲモニーに対する革命的な取り組みからインスピレーションを得た、レジスタンスを想起させるサウンドスコアである。このアルバムを抗議運動と並行してプレイすることはできるが、音楽は、抑圧の視線の外側に存在する平凡な瞬間により適している。暴力や不正義がまかり通っているが、それは私たちによっての唯一の物語ではない。私たちは、私たちを抑圧するモノどもよりも遙かに多くのものだ。このアルバムは、黒人の余暇と遊びを称えるもので、枯渇する現実にもかかわらず持続する平凡な喜びを表現している。


Waajeed
Memoirs of Hi-Tech Jazz

Tresor


interview with Kojoe - ele-king


KOJOE - here
Pヴァイン

RapHip-Hop

Amazon Tower HMV iTunes

 Keep on movin’、動きつづけることで存在を証明していく。曲をつくりウェブにアップし、CDやレコードというフィジカルを制作し、ライヴをこなす。とにかく動きつづけていないとあっという間に忘れられてしまう。特にいまのヒップホップの世界は目まぐるしい。そんなシビアな世界でKojoeはエネルギッシュに動き、自身の表現を更新しつづけてきたアーティストのひとりだ。そして、今年の11月に最新作『here』を完成させた。

 Kojoeについて少し説明しておきたい。彼はラッパーであると同時にシンガーであり、ビートもつくる。プロデューサーでもある。そんな彼は10代のころにNYクイーンズにわたり、2007年にアジア人としてはじめてNYのインディ・レーベル〈ローカス〉と契約を交わしている。2009年に帰国後は日本を拠点に活動を展開してきた。SEEDAとともに参加した、5lack(当時はS.L.A.C.K.)『我時想う愛』収録の“東京23時”で彼をはじめて知った人も多いかもしれないが、タリブ・クウェリやスタイルズ・P、レイクウォンらとの共演曲も発表している。その後、『MIXED IDENTITIES 2.0』、『51st State』といったソロ・アルバムをリリースする一方で、OLIVE OILAaron Choulaiとの共作も制作してきた。

 日本語ラップとブラック・ミュージックとしてのヒップホップをいかに折衷するか。『here』には、そんな問いへのKojoeなりの現在の答えがあると僕は感じた。日本とアメリカというふたつのホームに引き裂かれていたアイデンティティを統合した結果が『here』ではないか、というのはあくまでも僕の解釈だが、多彩なゲストで構成された全18曲にはハードコアでソウルフルでエモーショナルなKojoeの多面的な魅力があふれている。

 このインタヴューは、Kojoeがホストを務める番組「Joe’s Kitchen」(〈Abema TV / FRESH!〉で毎週木曜に放送)の放送後に、その日のゲストであるPUNPEE、GAPPER、WATTERらが見守るなか、彼のスタジオ〈J STUDIO〉でおこなわれた。Kojoeはすでに2時間しゃべりっぱなしだ。だが、まだまだいける。Keep on movin’、彼の体力を舐めてはいけない。




俺は俺のようにしか歌えないという気持ちで良い意味で力抜いてる。本気なんだけど本気出してないから本気が出せた、みたいな。それを今回見つけた。


『blacknote』(2014年)リリースのときのAmebreakのインタヴューで次のように語っていましたね。「例えば向こうのヤツに聴かせて『スゲェ良い』って言われるような、ブラック・ミュージックとして認められるようなモノが、逆に日本では全然分かってくれなかったりとか、そういうフラストレーションはスゲェあるよね」。僕なりに要約すると、日本語ラップとブラック・ミュージックとしてのヒップホップのあいだで葛藤していた、ということかなと思います。そして、日本に移り住んでから数年間の経験を経て、『here』でKojoeさんなりのいまの答えを見つけたのかなという感想を持ちました。

Kojoe(以下、K):作っているときにそれをねらったり意識していたわけではなくて、それよりも意識したことのひとつは、俺の経験や葛藤を歌ったり、メッセージを訴えることはいままでやってきたから、このアルバムではこういう曲をこういう面子でやったら聴く人が喜ぶだろうなとかブチ上がるだろうなとか、いたずらを仕掛ける子供のような視点で作ったね。だから、日本語ラップとブラック・ミュージックの両方を良いバランスに混ぜてみようとかは考えていなかった。いま言われて逆にうれしいっていうか、そういう風に受け取られるんだって実感してきてる。

ゲストのラッパーやシンガーも多いですよね。たとえば“Prodigy”というフックなしのマイクリレーの曲がありますけど、このラッパーたち(OMSB, PETZ, YUKSTA-ILL, SOCKS, Miles Word, BES)のマイクリレーは他では聴けないですよね。

K:うん。TR-808でビートを鳴らして、ベースも強いトラップはやっぱり魅力があって人の心をつかむと思う。いまのヒップホップの流行のひとつのトラップを俺も好きだし、そういうモノと90年代のサンプリング・ヒップホップを合わせたらかっこいいんじゃないかって思ってこの曲を作った。BPMも90ぐらいだから、ブーム・バップが得意なラッパーはいつも通りフロウすればいいしね。MilesとかYUKSTA-ILL、BESくんとか、こういうビートで歌わなさそうなラッパーと、いまのトラップでもラップするPETZやSOCKSにマイクリレーしてもらったら面白いと思った。混ざらなさそうで、結果的に混ざったよね。

それと、これだけ充実した、制作/録音環境が整った〈J STUDIO〉ができたのも、ゲストが多数参加する『here』を作る上で大きそうですね。多くのラッパーがここで録音しましたか?

K:それはいろいろだね。ただ、このスタジオができたのはデカいよ。1月から作りはじめて3月ぐらいに完成した。それからAaronとの自主制作のやつ(ピアニスト/作曲家/ビート・メイカーのAaron Choulaiとの共作『ERY DAY FLO』)をスタジオのテストランも兼ねて作って、「ここで録れるな」と確認した。で、今回のアルバムを作りはじめた。ここに常に人が集まるようになったから、作っている途中で俺以外の人の耳に聴かせて反応を見たりできるようになった。いろんなヤツに「これどう?」って聴かせて感想をきいたりしてた。それもけっこう大事だった。

18曲と曲数も多いですし、ヴァリエーションも豊富ですよね。ハードコアな“KING SONG”からはじまり、“Prodigy”のようなマイクリレーがあり、またKojoeさんがラップだけじゃなく歌も歌う“PPP”のようなソウルフルな曲も際立っています。

K:良い意味で力を抜けた結果だと思う。運動するときも力が入っている状態だと動きって鈍いじゃん。それと似てるんじゃないかな。『51st State』に入ってる“無性に”みたいな曲は「歌手にも負けねぇぐらいに歌いてぇ!」という気持ちで歌い上げていた。もちろん今回もそういう情熱がないわけじゃない。ただ俺は当然、アンダーソン・パックやBJ・ザ・シカゴ・キッド、ダニー・ハサウェイのようには歌えない。だから、たとえば“PPP”とか“Cross Color”とかのソウルフルな曲も、俺は俺のようにしか歌えないという気持ちで良い意味で力抜いてる。本気なんだけど本気出してないから本気が出せた、みたいな。それを今回見つけた。そういう力の抜き方でヒントをもらったのはそれこそ(インタヴューの場にいたPUNPEEに視線をやりながら)PUNPEEや5lackだよね。あいつらには、「わざと力抜くのかっこよくないすか?」みたいな感じがあるじゃん。PSGとかも歌のメロディがすっげぇイケてるけど、いい感じに力が抜けてる。それが逆に研ぎ澄まされて、すごいソウルフルに聴こえる。

そうですね。わかります。

K:ある程度スキルを求めて動いたヤツにしかたぶんできないことなんだろうけどさ。俺も自分にたいしてそうやって楽しみな、みたいな気持ちになれたんだろうね。

Kojoe“Cross Color feat. Daichi Yamamoto”

俺がどの土地にいて、どこに立っていようと、音楽でつながっている場所が俺の居場所だって気づいた。音が居場所なんだって。だから、『here』というタイトルになったんだよね。

そういう力の抜き方によってソウルフルに歌うというのをPUNPEEや5lackから受け取ったのは面白いですね。ラッパー、シンガーという側面だけでなく、ビート・メイカー、プロデューサーとしてのKojoeさんの個性がより際立っているようにも感じました。

K:そこはちょっと意識したかもしれない。ただ、曲順に関してはそこまで深く考えず、ここ以外は置く場所はないっていうところに曲を入れていった。序盤はゲストのラッパーがたくさんいて、スピットしまくってるラップを並べて、途中で女性について歌う“Mayaku”とか“PPP”なんかを持ってくる。そうやってセクションを分けて、最後は自分について歌って終わる。そういう構成になってるね。ビート・メイキングは、ニューヨークにいた17年前ぐらいにMPC2000XLを手に入れてはじめた。ちゃんとしたビート・メイカーみたいにコンスタントに作り続けてきたわけじゃないけど、ずっと好きだったからいままでに3、400曲ぐらいは作ってると思う。前の嫁がラッパーだったからさ。

アパニー・Bですよね。

K:うん。彼女がプレミアとか俺の超憧れのいろんなビート・メイカーからビートをもらってて。そういうビートを横で聴いていたから自分のビートがダサ過ぎると思ってたね。でもこのスタジオを作ったときに、2000年ぐらいから作っていた自分のビートのCDがいっぱい出てきて久々に聴き直したら、「あれ?! けっこうイケてんじゃん!」って。2周ぐらいしてMPCで作ってたイナたいビートがすごいいいなあって。いちばん最後のRITTOとやってる“Everything”で11、2年前ぐらいに作ったビートを使ってる。

レゲエ・シンガーのAKANEと今年大躍進したラッパーのAwichを客演にむかえた“BoSS RuN DeM”(12月11日に5lack, RUDEBWOY FACE ,kZmが参加したリミックスがYouTubeにアップされた)もKojoeさんがビートを作ってますよね。この曲は突き抜けていますね。かなりの自信作なんじゃないですか?

K:超好きだね。ヒップホップよりヒップホップで、トラップよりトラップで、レゲエよりレゲエで、いろんなジャンルの人が「おわ~!」とブチ上がってくれるんじゃないかな。クラブのソファで女にセクシーな格好をさせて、男が彼女たちをはべらかしてる、みたいなMVは日本のヒップホップにも多いよね。でも俺は強い女のほうが色気があると思うし、そういう強い女性を見せたかった。“ボスって”、頭張ってやってる男と女を両方鼓舞するような歌にしたかった。「みんなボスれー!」って。そういうコンセプトはできていて俺が先にサビも録っていた。で、俺がいまいちばんイケてる女性で、俺が一緒に曲をやりたいと思うAKANEちゃんとAwichに声をかけた。イケイケなAKANEちゃんを見られたし、Awichもすごいハマってくれた。

Kojoe“BoSS RuN DeM Feat. AKANE, Awich”

Kojoe“BoSS RuN DeM -Remix- Feat.5lack, RUDEBWOY FACE, kZm”

[[SplitPage]]


世界でも日本人の英語のラップがかっこいいって言われる時代が絶対来るってことなんだよね。たとえばジャマイカのパトワみたいに日本人の発音の英語がかっこいいって50年後ぐらいにはなると思う。









KOJOE - here


Pヴァイン

RapHip-Hop



Amazon
Tower
HMV
iTunes

このアルバムで大フィーチャーされていると言えば、18曲中6曲のビートを作っているillmoreですね。どういう方ですか?

K:こいつはもともと大分の人間で、OLIVEくんがすごい薦めてくれたビート・メイカーなんだ。〈OILWORKS〉のイベントか何かでいっしょの現場になって、ビートが超ヤバかった。他の若いビート・メイカーもいたけど、illmoreは突出していた。超真面目なくせにドープな音も作るし、耳がすごく良くて器用でどんなタイプの曲でも作れちゃう。EDMもトラップもブーム・バップも作るし、超オシャレなジャジーな曲も作れる。ゴリゴリの“KING SONG”みたいなビートも作れるからさ。あと、ベースの乗せ方が上手い。BUPPONとやってる“Road”のネタはMFドゥームも使ってるから(MFドゥームとマッドリブが組んだマッドヴィレインのある曲と同ネタ)、そこってビート・メイカーにとって勝負どころじゃん。他のビート・メイカーと同じネタ使っているからにはフリップしたり工夫しないといけない。その上でこのビートはすげぇ良かった。

“Cross Color”に参加しているDaichi Yamamotoさんはどういう方ですか?

K:京都生まれのジャマイカ人のお母さんと日本人のお父さんがいて京都で育ったヤツで、大学のあいだ3年半から4年ぐらいUKに行ってたんだけど、最近また日本に戻ってきた。いまAaronともいろいろ作ってるし、JJJとやったり、水面下でいろんなヤツとつながってるね。


フックアップの意識はあったりしますか?

K:そういうのはない。俺、フックアップは絶対しないもん。瞬発的に良いタイミングに出くわしてノリが良かったからやっちゃうっていうのはあるとしてもヤバいと思うヤツとしかやりたくない。illmoreは仕事がすごいできてビートが超かっこよかったし、Daichi Yamamotoもそう。俺はイケてりゃ何でもいいかなって思う。

なるほど。ところで、『here』っていうアルバムのタイトルに込められた想いについても語ってもらえますか。

K:俺はガキのころからずっと転校とか多かった。で、10代でニューヨークのクイーンズに行ったから俺の人生でクイーンズがいちばん長くいた場所なんだ。だからニューヨークのクイーンズが地元っていう感覚もあったけど、こっちに戻ってきて7年ぐらい経つから、もちろんいままで自分がいた場所はレペゼンしていきたいけど、クイーンズをレペゼンするのもちょっとナンセンスだなって思うところがあった。居場所を探していたのもあったし、日本に戻ってきて『MIXED IDENTITIES 2.0』(2012年)を出したときは、「ここはけっきょくアメリカじゃねぇかよ!」って文句を言ってみたりもしていた。

自分のアイデンティティについての葛藤みたいのがあったということなんですね。

K:うん。そうだろうね。無意識に苛立ちがあったのかもしれない。そういうのが落ち着いてきたから、『here』というタイトルにした。俺がどの土地にいて、どこに立っていようと、音楽でつながっている場所が俺の居場所だって気づいた。音が居場所なんだって。だから、『here』というタイトルになったんだよね。

やっぱりそれは、5lackやOLIVE OIL、Aaron、このアルバムに参加しているラッパーやビート・メイカー、アーティストたちとの出会いも大きかったのかなって感じます。

K:デカい、デカい。面白いヤツは世の中にはいっぱいいるけれど、そいつの音楽をリスペクトできて、さらに人間も面白いヤツとなると少なくなるよね。俺は運良く素晴らしいアーティストたちに出会って、そういう人間が周りにいてくれるから、多少、自分が開けた部分は絶対あるよね。

最初の僕の感想に戻してしまうんですけど、Kojoeさんが日本のラップ、ヒップホップとニューヨーク、クイーンズで体験してきたブラック・ミュージックとしてのヒップホップのあいだで産み落とした作品なのかなという気がします。

K:俺が10年以上前から言っているのは、世界でも日本人の英語のラップがかっこいいって言われる時代が絶対来るってことなんだよね。たとえばジャマイカのパトワみたいに日本人の発音の英語がかっこいいって50年後ぐらいにはなると思う。日本人の発音のままフロウやリズムに関してはケンドリックだったり、(ブルーノ・)マーズだったり、レイクウォンみたいにできるようになっていく時代が来ると思う。いつになるかわかんないけど、最近の10代とか20代前半のヤツのほうがやっぱ敏感で、昔の日本語ラップみたいにこうじゃなくちゃいけないみたいなのがなくなってきて、日本語と英語が混ざったりしててもオッケーみたいな世代がやっぱり出て来てるから。そういうヤツらが逆に俺の音楽を聴いて、「ヤベェ!」って思ってくれたら面白いと思ってる。若いヤツの耳も脳みそも進化してるよね。受け皿が広いというか、柔軟というかさ。いずれにせよ、世界中のヤツらが日本のヒップホップがヤベェっていう時代はいつになるかわからないけど来ると思うよ。

『here』はとにかくオープンな、開けたアルバムだなって今日の話を聞いてさらに感じましたね。

マサトさん(KojoeのA&R/JAZZY SPORT):この作品はKojoeくんが日本のシーンにたいしてフラットでいられる環境で作れたのがいちばんデカいと僕は思います。日本に帰ってきてから数年は周りからの“英語を使う日本人のラッパー”という先入観も強かっただろうし、いろんな意味でコンプレックスもあったと思う。ここ数年は徐々に変わってきてるけど、日本語だけじゃないとサポートされない土壌が日本にはあったと思うので。それがいろんなアーティストとの出会いを通じてKojoeくんがフラットになってきたのがやっぱり大きい。

なるほど。それは僕も感じました。今後の予定はどうですか?

K:うん。とりあえず、来年1月13日の安比高原でやる〈APPI JAZZY SPORT〉でのライヴを皮切りに、1月後半、2月ぐらいからがっつりツアーをはじめようと思ってる。来年はツアー以外でもできるだけライヴはやっていこうと思ってるね。こんな感じで大丈夫?

はい、番組のあとで疲れてるでしょうし、ばっちりです。

K:俺の体力ディスってんの?

いや、ははは。それ、使わせてもらいます(笑)。今後のライヴ、楽しみにしてます!


[イベント情報]

J presents 『bla9 marke2 #4』
日程:12/29 (Fri)
会場:中野heavysick ZERO
OPEN:23:00
¥2,000+1D
W.F ¥1,500+1D
24:00まで ¥1,000+1D


SUMMIT Presents. AVALANCHE 8
日程:12/30 (Sat)
会場:代官山UNIT
OPEN:23:30 / START:23:30
ADV ¥3,000
Diagonal & AVALANCHE 8通し券 ¥4,800
DOOR ¥3,500


interview with All We Are - ele-king


All We Are
All We Are

Double Six / ホステス

Indie RockElectronicSynth-Pop

Tower HMV Amazon

 ジアゼパム(催眠鎮静薬)を飲んだビー・ジーズ、というような表現も見かけた。オール・ウィ・アーを名のる彼らは、ライやインクのようなオルタナR&Bのフィーリングを──スムースでヒプノティックなヴァイヴを宿した、リヴァプールのアート・ファンク・トリオだ。

 可能なかぎりソフトな、壊れそうに繊細な音やヴォーカリゼーションは、どこか潔癖的な印象を誘い、当時彼ら自身も比較されたようにチルウェイヴの面影を残している。けっして、マニアックで、テクニカルで、ソウルへの造詣が深い、というタイプの人たちではない。しかし、こんなに穏やかながら、ジャムを楽しんでいる感触がつたわってくる。それはそうだ、彼らは3人とも教育を受けたギタリストだったにもかかわらず、バンドをやりたいがためにパート替えまでして、イチから楽器を習得しているのだから。それぞれリヴァプールにやってきて音楽を学び、いっしょにバンドをやりたいがためにかの地に残った、その気持ちのようなものが透けてくる。

 オール・ウィ・アーは、そんな「ささやかな」バンドだ。〈ドミノ〉傘下のレーベルと契約したとか、あるいは、クールなR&Bマナーだというようなことにかかわらず、それはあたたかみあるスモール・ミュージックであり、親密な場所で鳴っていてほしいと感じさせる音楽である。

 しかし、その優しさと親密さにはもう少しディテールがある。彼らがそれぞれ国籍もバラバラで、帰属する場所を持たないバンドだということだ。以下につづくように、それは「どこにもビロングできない」と語られることもあれば、「ノマディック」だとポジティヴなニュアンスとともに表現されることもある。アイルランド、ノルウェー、ブラジル、故国もまた外国のような感覚になってしまっている彼らにとって、自分たちの居場所は、自分たちの居る場所──ここ、だ。オール・ウィ・アーは、「ここ」をあたためるために優しく、また、同じように「ここ」を持つ人々への繊細な共感と想像力をめぐらせて鳴っている。

 彼らの「ここ」が音楽のかたちをしていることを喜びながら、それではこの素敵なトリオをご紹介しよう。今年6月中旬、彼らはフィーリングを同じくする日本の若きバンドThe fin.の招きで来日していた。

■All We Are / オール・ウィ・アー
リチャード・オフリン(Dr, Vo/アイルランド)、グロ・イックリン(B, Vo/ノルウェイ)、ルイス・サントス(G, Vo/ブラジル)からなる3人組。リバプールの大学で出会い、ヒップホップとソウルが好きという共通点をきっかけにバンドを結成。シングルで注目を集め、2014年に〈ドミノ〉傘下〈ダブル・シックス〉と契約。2015年にデビュー・アルバム『オール・ウィー・アー』をリリースした。

ここにいたるまでにわりと時間はかかっていて。……だっていっしょにバンドをやりたいがために楽器を練習したからね(笑)。(リチャード)

3人は音楽の学校で出会ったんですよね。しかも3人ともギタリスト。ギター・トリオという選択肢もあったんでしょうか(笑)?

リチャード・オフリン(以下リチャード):ははは、次の作品はそうしようか! でも3人の中じゃルイスがいちばん上手かったのは間違いないね。グロはどっちかというとソング・ライティングのためにギターを使うという感じだったかな。学校を出てからもみんなリヴァプールに残りたいって気持ちがあって、そうするためにはもっと幅を広げてバンドのかたちを整えなきゃいけなかった。だからグロはベースに転向して学んで、僕はドラムを学んで、ルイスはそのままギターで……ってなったんだ。

その編成に落ち着いたのは、セッション性を優先したからではない?

グロ・イックリン(以下グロ):あたしたちみんな、ソングライターを自認してるんだ。リチャードもあたしも歌を歌うから、いずれ楽器プラス歌っていう編成のものはやることになるかなと思っていたんだけど、ともかくもいっしょにやりたいならこのかたちしかなかった。そのために必要な楽器を習ったの。

では、きっと曲や音楽性のイメージも頭の中にすでにあったんですね。

リチャード:すごくオーガニックなかたちでいまのバンドができあがっていったんだけど、ここにいたるまでにわりと時間はかかっていて。……だっていっしょにバンドをやりたいがために楽器を練習したからね(笑)。楽器がうまくなるにつれてできる音楽も変わっていったし、いっしょに音楽をつくる過程でも変わっていった。だからあらかじめ考えていたことはとくになくて、ほんとに自然にいまのかたちになったんだ。強いていうなら、人を踊らせたいってことだったかな。グルーヴのあるもの。でもどうやったら人を踊らせられるのかはわからなかったんだけどね。いまもそれは模索中。

ファースト・アルバムは、ここまでにいたる自分たちの人生が──だから、とても長い期間が──反映された作品でもあるから、そう考えると、自分たちのやりたかったこと、言いたかったこと、募った思いなんかが、校舎ってものと反響しあってできた部分はあると思う。(ルイス)

へえ! ダンス・ミュージックを目指していたとすれば、ずいぶんおだやかですよね。ファーストの『オール・ウィ・アー』(2015)は廃校の校舎で録音したということなんですけれども、それはプロダクションへのこだわりからですか? それとも何か思い入れのある場所だった?

リチャード:廃校の校舎っていうのは、このアルバムをつくるために使った場所ではあるんだけど、録音はちゃんとしたスタジオでやったんだ。ダン・キャリーといっしょに、ロンドンでね。

ヒプノティックなムードとか、出来過ぎてないプロダクションとかが、ちょっと廃校の校舎のイメージと重なったので、そういう雰囲気のようなものは大切にされているのかなと思いました。

リチャード:じつは、僕の住居なんだよね、その校舎は(笑)。ノスタルジックなあの場所の雰囲気はこのアルバムによく出ていると思うよ。あの校舎の後ろは、昔は幼稚園だったんだ。だからちっちゃなトイレとかシンクがあったり、庭にも古いおもちゃが転がっていたりした。それに170年くらい建っている古いビルだから、ビルそのものが持っているいろんな人の思い出や郷愁なんかが沁みついている部分もあると思う。

ルイス・サントス(以下ルイス):ただ、今回のファースト・アルバムは、ここまでにいたる自分たちの人生が──だから、とても長い期間が──反映された作品でもあるから、そう考えると、この校舎ではないけど、自分たちの過ごした学校とか、自分たちのやりたかったこと、言いたかったこと、募った思いなんかが、校舎ってものと反響しあってできた部分はあると思う。学生時代ってもの自体への郷愁みたいなものがね。

あらためて振り返ってみると、それぞれの国の音楽ってすごく特徴があって。その共通項として、悲しみみたいなものを感じるかな。あたしたちのつくっている曲にもそういうサッドネスは表れていて、それが郷愁につながるのかもしれない。(グロ)

ここまでの人生がまとまって反映されているというお話でしたけれども、3人は出身国もバラバラですよね。そのへんは、お互いの人生がどのように交叉している作品になるのでしょうか?

グロ:それぞれとても音楽的な家庭に育っているから、楽器もちっちゃい頃からやっていたし、音楽にも馴染んでいたんだよね。でもあらためて振り返ってみると、それぞれの国の音楽ってすごく特徴があって。ノルウェーはフォーク・ミュージックがすごく充実していて、リチャードのアイルランドはチューンと呼ばれる歌のない曲がいっぱいあるし、ブラジルはもちろん音楽の豊かな国。その共通項としては、悲しみみたいなものをあたしは感じるかな。あたしたちのつくっている曲にもそういうサッドネスは表れていて、それが郷愁につながるのかもしれない。

リチャード:アイルランド、ノルウェー、ブラジル、それぞれの音楽には「yearning」──憧れとか強い思慕っていうものがすごくあると思う。僕らのファースト・アルバムについては、そういうところはすごくあると思うよ。

それぞれの国にはもっとベタな伝統音楽のイメージがありますよね。ブラジルならサンバとか(笑)。みなさんの場合はそういうトラディショナルとはちがって、もっとモダンなところで音楽が溶け合っているのが素敵だと思います。

リチャード:それぞれの音楽のエッセンス、本質みたいなものを取り込んでいるんだ。きっとね。スタイルそのものを寄せ集めるのではなくて、さっきも言っていたような思い焦がれる気持ちとか、ノスタルジーとかっていうものは、音楽が持っているスピリットだと思う。それは僕らの深いところで融合しているんじゃないかな。

ルイス:ただ、それを「わかりやすいかたちではやりたくない」って決めているわけではないんだ。自然とこういうかたちになったというだけでね。僕らの国はそれぞれにちがうんだけど、お互い人間としてわかりあってみると、共通することがとっても多い。そういうところも自然に溶け合った音楽になっていると思う。

リヴァプールのバンドとして認知されたんだなってことが、僕たちにとってはすごく大きいことだった。でも本来の自分たちの出身地ではない。かといって故国に戻ると、そこの人間でもなくなっている……。そういう意味ではノマディックな存在なのかもしれない。居場所は「ここ」。「いま、ここ」だよ。(リチャード)

なるほど。みなさんの認識として、いまのホームとしてはリヴァプールということでいいんですよね?

リチャード、グロ、ルイス:そうだよ。

ルイス:リヴァプールに残ることにしたのは、自分たちにとって特別な場所だったから。音楽のコミュニティにおいても、やっぱり自分たちはここの一員だなって思えるところなんだ。昨年(2015年)、「ベスト・リヴァプール・アクト」っていう賞をもらったんだけど、リヴァプールのバンドとして認知されたんだなってことが、僕たちにとってはすごく大きいことだった。といって、出身もバラバラだし、どこにもビロングできていない感じもまたつねにあるんだ。国を離れてリヴァプールに来て、そこが居場所だとは思ってるんだけど、本来の自分たちの出身地ではない。かといって故国に戻ると、そこの人間でもなくなっている……。どこにも帰属しきれていない僕たちというのが拭いがたくあるから、そこはもしかしたら特徴かもしれないね。そういう意味ではノマディックな存在なのかもしれない。居場所は「ここ」。「いま、ここ」だよ。

すごくよくわかります。みなさんはこう呼ばれるのが嫌かもしれないですが、シーンに登場した当時はよくチルウェイヴに比較されていましたね。チルウェイヴもまた、地域性に拠らないムーヴメントでした。世界中のベッドルームやドリーミーな空間を拠点としたというか。音楽的な比較とは別に、あなた方のノマドなありかたというのは、それに並行するものではありますね。

デビュー・アルバム『All We Are』収録の“Utmost Good”MV

リチャード:それはおもしろいね。僕たちがいろんな国から集まっていて、それぞれの国の音楽の影響を取り込めるということは間違いないんだけど、以前以上にリヴァプールでの生活も長くなっていて、リヴァプールにかぎらず北イングランドの音楽の伝統も身体として理解しはじめていると思う。次のレコードでは、そのひとつの成果が反映されると思うよ。というか、じつはセカンドのレコーディングがもうほとんど終わっているんだけど、音楽としてはよりハードに、よりファストになってるよ! だからもう「チル」ではないんだ(笑)。だけど、それはたぶん、リヴァプールで──北イングランドで生活した時間が長くなってきたからだね。

ルイス:ファーストの頃は、ただ自分たちが言いたかったことをそのまま表現しただけだったんだけど、たぶんいまは表現したいことも変わってきて、伝えたいエネルギーも変化している。好きなものも変わったかな。そういう成長が自然に表れてくるのが次のアルバムだと思うんだ。だから、リチャードの言葉に加えるなら、よりエネルギッシュで、ちょっとダークなところがあって、前作のハートはそのままに──ポジティヴなメッセージは変わらずに、それとはちょっと違う部分が表現されるアルバムになると思うよ。
いま振り返ると、最初に指摘されたように、たしかに僕らのダンス・ミュージックは穏やかなんだよね。でもいまはまた変化しているんだ。

(次の作品は)ポストパンクのムーヴメントに触発されている部分があるんだ。あの時期の音楽は、じつはつらい時代を経て生まれてきたものでもあるんだよね。政治的にも、経済的にも。それはいまの時代にも連なってくる問題だと思うんだ。(リチャード)

それは楽しみです。自作に参照されるかもしれない「北イングランドの伝統音楽」というのは、起源の古いもののことでしょうか? それとも60年代くらいからのポップ・ミュージックを含む新しめの音楽のことですか? それから、あなた方は、いわゆるレコードおたくというか、音源を掘る欲求を制作にフィードバックさせるタイプではない?

リチャード:最初の質問だけど、むしろ80年代くらいからのことかもしれない(笑)。ポストパンクのムーヴメントに触発されている部分があるんだ。あの時期の音楽は、じつはつらい時代を経て生まれてきたものでもあるんだよね。政治的にも、経済的にも。政府のやり方を見ていても、それはいまの時代にも連なってくる問題だと思うんだ。もちろんポリティカルな作品になるという意味ではまったくないんだけど、バンドで言うならば、ニュー・オーダーとかジョイ・ディヴィジョン、初期のU2とか。あとはもちろんいまのエレクトロニック・ミュージックもたくさん聴いているから、そういう要素も多分に入ってくると思う。時代的にはそのあたりのことだね。

グロ:二つめの質問は、そうね、あたしはスポティファイをよく使ってるけど。簡単にいろいろ調べられるし。でも、やっぱりヴァイナルも大好き。手に取って開く、あの感覚は何ものにも代えられないものがあるなって思う。ひとつのアートだよね、あれは。

ファーストの中に“フィール・セイフ”っていう曲があるんだけど、あれはリール・トゥ・リールのテープ

ルイス:すごく面倒くさいんだけど、アナログ・レコードをオープンリールのテープに録って聴いたりしてたよ。オープンリールは普通はなかなか家にあるものじゃないと思うけど、たまたま父親が持っていたんだ。そっちで聴いたほうが音がいいって言うから、わざわざ音源を移してね。時間はかかるし、聴くたびにメンテナンスが必要なんだけど、楽しいし、音もいいし、そういうこともまた愛着を生んでいくというか。よくアナログ・レコードの音には温かみがあると言うけれど、そういうことと似ているんだろうね。

あなたたちの音にもそのウォームな感じは反映されていると思いますよ。

ルイス:ファーストの中に“フィール・セイフ”っていう曲があるんだけど、あれはリール・トゥ・リールのテープ
で録っているんだ。

リチャード:僕の場合もほぼオンラインだね。この間までアップル・ミュージックをやっていたんだけど、またスポティファイに戻ろうと思ってるよ。ただ、ヴァイナルの音は僕も大好きだよ。袋を開けて、かけて、ひっくり返して……って手間が、音楽に意味合いを感じさせてくれる気がする。MP3だ、ストリーミングだ、って、音楽が軽んじられているというか、使い捨てにされているいまの時代だからこそ、そうやって手間をかけるというのは音楽にとっても大事なことのような気がするよ。

All We Are - Feel Safe (Official Video)

きっと最終的には人間が勝つって思っているよ。一度辛いめに遭っている国だから、そこからどう切り抜けるかということは身体でわかっているんじゃないかって。(ルイス)

そうですね。先の質問で、みなさんはジョイ・ディヴィジョンやポストパンクが出てきた社会的な背景について興味を持ちながら音楽を制作していると答えてくれましたね。それは、要はサッチャリズムというか、貧困や格差についてのいまの状況を作り出した根本を考察することで、何か現在の状況に対して働きかけられると考えたんですか?

リチャード:そうだね。前提として、僕らはけっしてポリティカルなバンドではないんだ。だけど、当然ながら周囲の状況やものから影響を受ける。これもまたミュージシャンにとっては当然のことだと思う。その中で自分たちが現状に対して何かできることがあるとすれば、それは何なのか──僕らがつくり演奏する音楽にはけっこうへヴィなものもあるけど、その一方でとても楽しい、喜びを感じさせるものでもある。そのことがひとつのカタルシスとなって、僕らだけじゃなくて聴いているひとにも同じ感覚を味わってもらえて、それが何かにつながっていけばいいなと思うよ。直接的なかたちで、政治的な状況に何か介入できるとは思っていないけれどもね。けど、ヒューマンなレベルでポジティヴなものを発信していければ、って感じてるんだ。それが変化につながっていくかもしれない。僕らにはそういうやり方しかわからないな。

なるほど。ルイスさんとグロさんにとっては、UKはひとつの外国でもあるわけで、おふたりにとってはUK国内の問題はどんなふうに感じられているんですか? それからおふたりにとってはポスト・パンクの体験はどんなものなんでしょう?

グロ:うん、変化はリアルに感じているんだよね。友だちを見ていても社会保障を受けられなくなっていく人、住むところを追われる人、それから街もゴミが散らかったままになっていたりとか、そういう部分にも政治的に荒んだ状況がよく表れてる。リヴァプールに住んでいるけど、そこを含む北イングランドの街の雰囲気の変化は、悲しいことだなって思う。

ルイス:ずいぶん変わったよな、って僕も思う。怒りと恐怖が人々の間にあるなって感じるよ。投書住みはじめた頃はぜんぜんちがってたんだ。

グロ:そう、当時はまだハッピーな、楽しい雰囲気があったと思う。

ルイス:とはいっても、この国は素晴らしいっていう思いも変わらないんだ。きっと最終的には人間が勝つって思っているよ。一度辛いめに遭っている国だから、そこからどう切り抜けるかということは身体でわかっているんじゃないかって。

(The fin.は)演奏しながら自分たちだけの世界や空気をつくっていく感じも僕らと近いかもしれない。(リチャード)

ブリット・グリットってやつでしょうか。一方で、ノマディックなバンドであるというキャラクターも持っている。とってもおもしろいと思います。さて、今回の来日はThe fin. (ザ・フィン)に招かれてですよね。The fin. もひとつの音楽的ノマドかもしれませんが、彼らのことはご存知でしたか?

リチャード:楽しくやらせてもらってるよ(笑)。彼らの音楽はBBCのラジオでも流れてたんだ。それで、聴いたこと自体はあったんだよね。EPを手に入れて聴いてみたりもしたな。昨日は仙台(2016年6月16日/仙台CLUB SHAFT)だったんだけど、だんだんお互いのことがわかって、仲良くなってきたところだよ。最初に東京で遊んだけど、それも楽しかったな。

へえ、東京ではどこで遊んだんですか?

リチャード:新宿だよ。なんとか横丁みたいな場所。……「ゴールデン街」って言うんだ?

あはは、飲んだんですね。

ルイス:何時間もいたね。とっても気が合ったよ。着いたのが遅かったこともあって、レコード屋とかは行けなかったけど。

音楽的な部分で気の合うところはどんなところでしょう?

リチャード:ユーモアのセンスが似てるかな。いつか機会があったら、曲をつくったりしていけたらいいよね。音楽的にも似ているところは感じるよね。

グロ:そうだね。シンガー(Yuto Uchino)のメロディ感覚はすごいと思う。素晴らしくセンスがあると思うな。

リチャード:演奏しながら自分たちだけの世界や空気をつくっていく感じも僕らと近いかもしれない。

音楽もそれ自体が言葉だもんね。(ルイス)

なるほど、それではお時間になってしまいました。新しいアルバムはいつごろ出るんです? ヒプノティックじゃないオール・ウィ・アー、楽しみにしています。

リチャード:来年の頭に、って思ってるよ。何事もなければね。

ルイス:僕からもひとつ訊いていい? 僕らの、どこにも属さない感覚についてすごくわかってくれたよね。それは、あなたもそう感じている人のひとりだってこと?

ああ、うわ、質問されてみると難しいですね。そうですね……この国を出たことはなく、またこの国を愛してもいるんですが。国籍以前に、日常のいろんなレベルで、何かに属しているという感覚が薄いのかもしれないですね。

ルイス:仲間になれるかも(笑)。

うれしいです。このネット時代、そう言ってくれる人とか、共感のある仲間を見つけることも容易ですしね。だから、強いていうなら私もベッドルームの帰属民ですね(笑)。

ルイス:それはいいね(笑)。音楽もそれ自体が言葉だもんね。僕たちの音楽に共感してくれる人がいるのは本当にうれしいよ。

 ……というのは、現場の人にはいまさらの言葉らしいのですが、ワタクシ野田は、このところ、尊敬する赤塚不二夫先生の生誕80周年(9月14日)に合わせた出版物のために、60代後半から70代にかけての大先輩方の貴重なお話しを聴いてまわり、それを原稿にまとめているのです。それは、この国の70年代サブカルチャーの重要な局面の話です。
 で、その最中に、隣の隣の席にいる橋元が、「ワイキキ・ビート(平均年齢21)はすごいっすよ!」とか、「ワイキキ・ビートがわからないようじゃ、マズいっすよ!」とか、しゃらくさいことを言いやがるわけですよ、これが。
 ぼくは洋楽ファンだけれど、なにもかもが舶来趣味というのには大いに抵抗があります。若いスターが日本のシーンから登場することは、健全だと思います。ところが、ことインディ・ロック・シーンにおいてここ数年気になっていたのは、やれピッチフォークで紹介されたとか、いわゆる「本場のお墨付き」ばかりを気にする向きが目に付くことです。それこそマズいです。相倉久人さんの1950年代の秋吉敏子さんへの厳しさを復習しましょう。
 欧米と日本との差は、耳の差と言うよりも、(世代や商業性やいろいろ越えた)包容力の差です。そんなわけで、ぼくも橋元に負けじと、90年代生まれの子たちの音を聴いてみました。そのなかで、「格好いい」と思ったバンドをここではふたつ紹介しましょう。


RIKI HIDAKA & jan
Double Happpiness In Lonesome China

STEREO RECORDS

D.A.N.
D.A.N. EP

P-VINE

Amazon

 まず、広島のSTEREO RECORDSから気合いの12インチ・レコードでリリースされたRIKI HIDAKA & jan『Double Happpiness In Lonesome China』。若いふたりの才能の結晶といいますか、これ、とんでもなくサイケデリックな世界が展開されます。表向きにはゆるくて恍惚としたギター・サウンドなのですが、曲のなかには底知れぬトリップが待っているのです。とにかく、素晴らしい名盤が誕生しました。ライヴ見たいです。

 もうひとつ、今回紹介したいのは、D.A.Nというバンドです。人気イラストレーターにしてカタコトのリーダー、ドラゴンくんがPVを作っていますが、彼らの音は……本当にモダンです。敢えてたとえるなら、チルウェイヴとジェイミーXXの溝を埋めるバンドです。こちらもまだシングル「D.A.N. EP」を出したばかりですが、そうとう期待が持てそうな人たちです。

 冒頭にて報告した仕事のなかで、高名なジャズ・ピアニストの山下洋輔さんにもお会いできました。山下さんの最初のエッセイ集にはこんな言葉があります。「ジャズの現場で、音を発する側に参加している者がそこで聴いてもらいたいのは『音』であって、どんな言葉でもない」(『風雲ジャズ帖』)
 若き日本のインディ・ロックも、もはや「言葉(意味)」よりも音なのかもしれないなと、ぼくは思ったのです。いや、あるいはスタイルのみあれば他いらないとでも言うのでしょうか、橋元さん。うん、それもひとつの更新のされ方ですよね。あるいは、そこからほかに何か導き出せるのでしょうか……注目したいと思います。

Booty Tune presents DJ PAYPAL Japan Tour 2k15 - ele-king

 シカゴのジュークは、瞬く間に世界的な音楽になった。UK、日本、そしてUSからベルリンへ。とくに DJラシャド以降は、「DJラシャド以降」という言い方が通用するほど、シーンは世界規模で拡張しているのだ。その中心には、シカゴのTEKLIFE がある。
 いや、しかし、DJ Paypalというネーミングが最高ですね。Paypalこそまさしく悪魔的なシステムです。深夜酔っぱらって、いつの間にかレコードやCDを買っていたなんてことはザラです。現代消費社会の象徴です。それをDJネームにするとは……なんて不遜な人でしょうか。
 しかも、この人のDJは、そうとうにポップなようです。
 これは期待するかありません。7月19日(東京)〜20日(大阪)です。みんなでこの謎のDJを冷やかしつつ、彼のハッピー・ジュークを楽しみましょう。

 世界を沸かす覆面ジューク DJ、ついに来日!
 ついに謎のジューク DJ が来日を果たす!  ジューク好きの間で密かに話題になりはじめた 2012年の活動開始から、この3年でまたたく間にシーンの中心に躍り出た、正体不明の覆面トラックメーカーDJ Paypal。その人を食ったDJ ネームゆえ、出演時はいつもTシャツを頭から被り、その素顔を見せることは決してない。最近、ネット決済会社の本家 Paypal から名称の未許可使用のクレームを受け、フェイスブックでも強制的に名前を変えさせられるほど、知名度も アップ中。
 大ネタを惜しげもなく使いまくる、老若男女問わず踊らせるアッパーかつポップなディスコ・スタイルは、北欧の Slick Shoota とともに現行パーティ・ジュー クのひとつの到達点と言える。自身のレーベル〈MallMusic〉からリリースされたファースト・シングル「Why」に収録された“Over”がクラブ・ヒット。さらに、新世代ベースを牽引するレーベル〈LuckyMe〉からもシングルをリリー スし、Machinedrum、Ikonikaらの著名アーティストたちのサポートを受けながら、UKベースやドラムンベースなど、ジューク・シーンに留まらない幅広い活躍を見せ続けている。2014 年からは現在のジューク・シーンの中心とも言える、シカゴ最大派閥の TEKLIFE クルーにも所属。UK の老舗レーベル〈Hyperdub〉の10周年コンピレーションにもその名を連ねた。
 今回の来日公演は Booty Tune が主宰となり、東京の大阪の 2 箇所で公演。日本勢の出演者陣もジューク・シーンをはじめ、タイトな顔ぶれがそろう。会場は、 日本フットワーク・ダンス・シーンの総本山「Battle Train Tokyo」の恵比寿KATA と大阪 Circus。全日本のジューク・ファンが待ち望んだ、ヨーロッパ最強のジューク・アーティストの来日公演。アッパーでハッピーなジュークに乗っ て、Let Me See Yo Footwork!!!

【東京】
Still Pimpin' feat.DJ Paypal
会場:KATA + Time Out Cafe & Diner [LIQUIDROOM 2F]
日程:7 月 19 日(日/祝前日)22:00~
出演:DJ Paypal (TEKLIFE, LuckyMe/Berlin, Germany)、D.J.Kuroki Kouichi、Guchon、TEDDMAN、D.J.APRIL(Booty Tune)、Dx (Soi Productions)、SUBMERSE、Boogie Mann (SHINKARON)、食品まつり aka Foodman、Kent Alexander(PPP/Бh○§†)、Frankie Dollar & Datwun (House Not House)、Dubstronica(GORGE.IN)、 Samurai08、コレ兄(珍盤亭)料金:Door Only ¥2,500 (With Flyer ¥2,000)

【大阪】
SOMETHINN vol.12
会場:CIRCUS
日程:7 月 20 日(月/祝日)19:00~
出演:DJ Paypal (TEKLIFE, LuckyMe /Berlin, Germany)、D.J.Fulltono (Booty Tune)、Keita Kawakami (Dress Down)、Hiroki Yamamura(Booty Tune)、AZUpubschool (Maltine Records / Sequel One Records)etc...
料金:TBA

■DJ Paypal(TEKLIFE, LuckyMe / Berlin, Germany)
アメリカ出身、ベルリン在住、本名不詳の謎の覆面トラックメーカー。DJ Spinn と故 DJ Rashad によって結成された世界的クルー「TEKLIFE」のメンバー。2012 年頃から徐々に頭角を現し始め、その後 Machinedrum、Jimmy Edger、Ikonika、Daedelus らからの熱烈なサポートを受け、そのキッチュな 名前に違わぬプロップスと実績を積み上げてきた。イーブンキック主体のサン プリングジュークを得意とし、アッパーかつポップなトラックメイキングで、 Juke/Footwork の枠を超え、多くの DJ に愛されている。これまでも前出の アーティストのほか、同じ TEKLIFE の盟友、DJ Earl や DJ Taye、DJ Rashad らのほか、Nick Hook や Sophie などともコラボ、リミックスワーク などを手がけている。
※20 歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため、顔写真付きの公的身分証明書をご持参ください。(You must be 20 and over with photo ID.)


入江陽レコ発にジンタナやOMSBも! - ele-king

 洗練されたソウルとおどろくべき表現力で“歌謡曲”を更新するシンガー、入江陽。JINTANA & EMERALDS、OMSB……ジャンルも個性も異なれど、彼の傑作アルバム『仕事』のレコ発イヴェントを急角度で祝福する、すばらしい顔ぶれが報じられた。ソウルとサイケとヒップホップがしなやかに香ぐわしく交差する夜をWWWで、ともに。

6月29日(月)に渋谷WWWにて開催される入江陽『仕事』レコ発に追加ゲスト発表!
入江陽バンド編成、OMSB [DJ SET]に加えて、横浜のネオ・ドゥーワップ・バンドJINTANA & EMERALDSが出演決定です!


仕事
入江陽

Pヴァイン

Tower HMV Amazon iTunes

ヒップ・ホップ以降のソウル感を感じさせる歌謡曲シンガー入江陽のセカンド・アルバム『仕事』のレコ発が6月29日(月)、WWWにて行われる。この日の入江陽のライヴは大谷能生やYasei Collectiveの別所和洋含む特別バンド編成で行われ、OMSB[DJ SET]の出演も決定している。

そしてこの日、追加で横浜発アーバン&メロウ集団PPPことPAN PACIFIC PLAYA所属のスティールギタリスト : JINTANA率いる6人組ネオ・ドゥーワップバンド、JINTANA&EMERALDSの出演が決定した!

世代もジャンルもクロスオーバーして芳醇なニオイたつこの3組が登場するのはまさに奇跡。忘れられない一夜を保証します。
チケット各プレイガイドにて発売中です!

■入江陽 “仕事” Album Special Release Party
2015年6月29日(月)@渋谷WWW
OPEN 19:00 / START 19:30
ADV ¥2,800 / DOOR ¥3,300(別途1ドリンク代)
出演:
入江陽バンド
・入江陽(vocal,keyboards)
・大谷能生(sax,pc,etc)
・別所和洋(keyboards) from Yasei Collective
・小杉岳(guitar) from てんやわんや
・吉良憲一(contrabass)
・藤巻鉄郎(drums)

JINTANA & EMERALDS
OMSB [DJ SET]

TICKET:
ローソンチケット[L:72333]
チケットぴあ[P:266-155]
e+

◎入江陽 プロフィール
1987年生まれ。東京都新宿区大久保出身。 シンガーソングライター、映画音楽家。
学生時代はジャズ研究会でピアノを、管弦楽団でオーボエを演奏する一方、学外ではパンクバンドやフリージャズなどの演奏にも参加、混沌とした作曲/演奏活動を展開する。
その後、試行錯誤の末、突如歌いだす。歌に関しては、ディアンジェロと井上陽水に強い影響を受けその向こうを目指す。
2013年10月シンガーソングライターとしての1stアルバム「水」をリリース。
2015年1月、音楽家/批評家の大谷能生氏プロデュースで2ndアルバム「仕事」をリリース。
映画音楽家としては、『マリアの乳房』(瀬々敬久監督)『青二才』『モーニングセット、牛乳、ハル』(サトウトシキ監督)『Sweet Sickness』(西村晋也監督)他の音楽を制作。
https://irieyo.com/

◎JINTANA & EMERALDS プロフィール
横浜発アーバン&メロウ集団PPPことPAN PACIFIC PLAYA所属のスティールギタリスト : JINTANA率いる6人組ネオ・ドゥーワップバンド、JINTANA&EMERALDS。リーダーのJINTANA、同じくPPP所属、最近ではあらゆる所で引っ張りだこのギタリスト : Kashif a.k.a. STRINGSBURN、媚薬系シンガー : 一十三十一、女優としても活躍するMAMI、黒木メイサなど幅広くダンスミュージックのプロデュースをするカミカオルという3人の歌姫達に加えミキサーにはTRAKS BOYSの半身としても知られる実力派DJ、CRYSTAL。フィル・スペクターが現代のダンスフロアに降り立ったようなネオ・アシッド・ドゥーワップ・ウォールオブサウンドで、いつしか気分は50年代の西海岸へ...そこはエメラルド色の海。エメラルド色に輝く街。エメラルドシティに暮らす若者たちの織りなす、ドリーミーでブリージンなひとときをお届けします。
https://www.jintanaandemeralds.com/

◎OMSB プロフィール
Mr. "All Bad" Jordan a.k.a. OMSB
SIMI LABでMC/Producer/無職/特攻隊長(ブッコミ)として活動。
2012年10月26日、ソロアーティストとしてのファーストアルバム「Mr. "All Bad" Jordan」を発表。
2014年3月には、自身も所属するグループSIMI LABとしてのセカンドアルバム「Page 2 : Mind Over Matter」をリリース。
兼ねてからフリーダウンロード企画でBeat Tapeを多数発表し、2014年11月にはBLACKSMOKER RECORDSよりインストビート作品集「OMBS」も発表。
その他、KOHH, ZORN, Campanella, PRIMAL等、様々なアーティストへの楽曲提供・客演参加もしている。
https://www.summit2011.net/


フットワークを愛するひとたちへ - ele-king

 いやー、去年末の〈Hyperdub〉ショウ・ケースはすごかった。メインフロアはもちろんですが、セカンドフロアで行われていたWeezyたちによるKata Footwork Clubのダンス・バトルがハンパではなかった。D.J.FulltonoやTrekkie TraxのDJプレイに合わせて、ダンサーたちが激烈フットワークをかましているのを見ていた僕は楽し過ぎて思わず足を踏み出してしまい、危うくバトルがはじまりそうに……。

 そんなスリルを味わったことがある方とフッットワークを心から愛する方へ。今週金曜と来週月曜は彼らのホームであるLIQUIDROOMの2階へ集合しませんか? ダンサーであると同時に優れたプロデューサーでもあるWeezyあらためWeezyTheEra。15日の金曜日は彼のファースト・アルバム『THE FLOOR IS YOURS』のリリース・パーティが開催されます。EXS、sauce81、D.J.Aprilといった彼に馴染み深いDJたちも駆けつけます。もちろんフッチワークをしてもいい……、ハズ。

 そして週明け18日月曜日には、フットワーク・シーンのパイオニアTraxman主催の〈Tekk DJ'z〉に所属すDJ Innesがメルボルンから、Violet Systemsがシカゴから来日します。金曜と同様にD.J.AprilとWeezyTheEraやFruityたちも参加決定。もちろんKata Footwork Clubも集合! 今回もお馴染みのフットワークのレッスンがあるので、これでいきなりバトルに突入してしまっても大丈夫ですね。入場料も金曜日が1000円、月曜日が1500円ととてもお得なので、Let me see your footwork!

2015.5.15 friday
SHINKARON presents WeezyTheEra "THE FLOOR IS YOURS" Release Party!!!

Time Out Cafe & Diner[LIQUIDROOM 2F]
19:00-23:00
door only 1,000yen(with WeezyTheEra's Mix CD)

DJs:
WeezyTheEra(SHINKARON/TH王RA/Kata Footwork Club)
EXS(NTB)
sauce81(disques corde)
D.J.April(Booty Tune)
TEDDMAN(Booty Tune)
Deemc


2015.5.18 monday evening
Battle Train Tokyo feat. Tekk DJ'z

KATA[LIQUIDROOM 2F]
open/start 19:00-23:00
door only 1,500yen

Special Guest DJs:
DJ Innes(Tekk DJ'z from Melbourne)
Violet Systems(Tekk DJ'z from Chicago)
DJs:D.J.April(Booty Tune)
Fruity(SHINKARON)
Kent Alexander(PPP/Paisley Parks/NDG)
TEDDMAN(Booty Tune)
Dance/Footwork:Kata Footwork Club[Murahkey, Re:9, Takuya, Yamato, WeezyTheEra]


▼ DJ Innes(Tekk DJ'z from Melbourne)
Traxman主宰のJuke/Footworkクルー、Tekk DJ'zに所属するオーストラリア在住のDJ。オーストラリアではGaming Cult Podcastという番組を仲間のBoomaらと配信しており、Gaming CultというレーベルとしてもDJ Deeon、DJ Clent、DJ Earl、D.J.Fulltonoらが参加したコンピレーション"Gaming Cult Trax vol.1"やBags & Works参加アーティストDJ TroubleのEP"Eye of the Circle"を発表している。また彼自身も曲を作り、その作品は前述した"Gaming Cult Trax Vol.1"やTekk DJ'zのコンピ"The Tekk DJ'z Compilation Volume 1 Part 2"で聞く事が可能。上記した作品はいずれもBandcampで購入できる。
https://soundcloud.com/djinnes
https://culttrax.bandcamp.com/album/gaming-cult-trax-vol-1

▼Violet Systems(Tekk DJ'z from Chicago)
Traxman主宰のJuke/Footworkクルー、Tekk DJ'zに所属するシカゴ在住のDJ。過去には韓国に住んでいた事もあり日本にも何度か訪れている親アジアな側面もある事から日本のJuke/Footwork愛好家達にも名が知られている。Tekk DJ'zのコンピ"The Tekk DJ'z Compilation Volume 1 Part 1"への参加の他、九州は小倉のJuke/Footwork DJ、naaaaaooooo氏監修のEP"KOKLIFE Vol.1"に参加。またSoundcloud上でも精力的に作品を発表。Bandcampにてこの夏新作EPの発表を予定している。
https://soundcloud.com/entroemcee
https://violetsystems.bandcamp.com

▽ WeezyTheEra(SHINKARON/TH王RA/Kata Footwork Club)
国内ジューク/フットワーク・シーン最初期から活動するオリジナル・ジャパニーズ・フットワーカー。その活動はアグレッシブな高速フットワーク/ダンスだけに留まらず、トラックメイク、DJもこなすオールラウンダーとして国内シーンを支え続けて来た。2014年初夏には日本トップレベルの足技を武器にフットワーク総本山シカゴやニューヨークへ渡り、現地アーティストやダンサーと交流を深め、世界最高峰のフットワーク・クルーTH王RAに電撃加入。日本のキャプテンに指名される。これまでに所属レーベルSHINKARONより「ON NUKES EP」、「ON NUKES LP」をリリースしているほか、外部レーベルのコンピレーションにトラックを複数提供。また、自身のSoundCloudでも定期的に作品を発表している。2015年4月26日に待望のデビュー・アルバム『THE FLOOR IS YOURS』をリリース。今、活躍が最も期待されるアーティスト。BTTではフットワーク・レッスンの講師も務める。
https://weezytheera.wix.com/teklife
https://soundcloud.com/rioqmt
https://weezymarket.bandcamp.com
https://instagram.com/weezytheeralife

▼ D.J.April(Booty Tune)
Hardfloorでシカゴハウスに目覚め、そんなサウンドをのらりくらりと追いかけつつ、Jukeレーベル「Booty Tune」のPR&ARをしております。
https://twitter.com/deejayapril
https://bootytune.com

▼Fruity(SHINKARON)
ジューク/フットワークDJ、トラックメイカー。SHINKARON主宰。2009年パーティー"SHINKARON"を始める。2012年より同名をレーベルとしても始動させ、自身のの他、Weezy、Boogie Mann、吉村元年やDJ Rocなど国内外様々なアーティストの作品をリリースし続けている。2014年3月に1stアルバム"LET DA MUZIK TALK"を発表した。
https://shinkaron.tokyo

王舟と彼の7インチ - ele-king

王舟のライヴ。
それはアメリカの平原を歩いているような感覚へと連れて行ってくれた。JINTANA(JINTANA&EMERALDS)

 今回は、王舟さんと同じく、オーセンティックな音楽をエッセンスとして現代の音楽をプレイしているミュージシャンという括りでレヴュアーに指名していただいたのかわかりませんが、素晴らしい音楽を紹介させてもらう機会をいただきありがとうございます。

僕が王舟さんを初めて聴いたとき、とても懐かしい感覚もありつつすごく現代的な音楽だなと感じて胸が熱くなりました。すこし前、ニューヨークに行ったときに、ライヴハウスを回っていたら、フォーク系がすごく勢いがあって、都会に住む人たちが音響などを取り入れた新しい側面からこういうカントリーサイドな音楽をやっているのか! と、とんでもなく粋だなと思ったのですが、それと同じものを王舟に感じたのです。フリートフォクシーズなど、そういった新世代フォークと共鳴して王舟さんはやられているのかわかりませんが、同時代感覚として自然にそういう響きが出てくるのかも知れません。

 さてそんな王舟さんのライヴに行ってきました。まずお客さんに可愛い女の子が多い! これはとても大事なことですね。それはさておきステージには7人のメンバー。いわゆるバンド・セットに加え、フルートや床に座って鉄琴のようなものを演奏している方もいます。そして王舟さんはというと、アコースティック・ギターを持って登場。アコギかエレキかって小さな話かもしれませんが、やっぱりアコギって家で練習するために使って、ステージではエレキっていうのが通常じゃないですか。そんな中、最初からアコギでステージに現れるというのはすごくインパクトを感じて、その姿に「アコースティック・ギターってこんなにカッコいいんだ!」と驚きました。スモークが焚かれ、霧の中からアコースティック・ギターを持ってステージに現れる王舟さんは痺れるほどカッコよく、そしてその姿は強烈な個性や方向性を伝えてくれ、時代や音楽の状況などすべてのモノに対する独立した姿勢を伝える強いメッセージのように感じて……とにかくカッコ良かった。

 そして1曲めを歌いだす王舟さん。スモークの向こうから右側だけが月明かりのようにライトに照らされ、すごく幻想的な光景に思えました。まるで、霧の向こうから王舟の声が聴こえてくるようです。最初、英語か何かで歌いはじめ、きき入っていると途中から日本語に変わり、聞いたことのあるフレーズになりました。それは“虹”でした。まるで霧の向こうから虹が現れたように、美しい瞬間でした。ある意味、日本でもっとも有名なエレクトロニックな曲がこうも美しくアコースティックな響きに、そして王舟さんの気持ちや言葉となって奏でられていることに感動。

 今回リリースされた7インチにはB面にこの“虹”が収録されており、A面はこれまた名曲“Ward”。“Ward”は聴いていると日々に対する落胆と希望が交互にやってくるような曲で、僕は聴いているととても元気が沸いてきます。独特の言語感で歌っている王舟さんが“Ward”というタイトルの曲を出すことがとても素敵で、そして途中からダイナミックになるドラムのアレンジに泣けてしまいます。
そういった素晴らしい楽曲が繰り広げられるライヴには、まるでアメリカの平原を流れる雲をみているような感覚にさせられました。雄大でありながらも叙情的であり、大袈裟に言うと人生とは何かについて自然と感じてしまうような空間。霧の向こうからさまざまなものが現れては消えて、だけど本質的なメッセージを伝えつづけてくれているような、胸が締めつけられる感覚。
 遠くに行きたいとき。何にもとらわれない旅に出たいとき。大自然に身をゆだねたいとき。人生を見つめたいとき。そんな気持ちになった日、僕は王舟のライヴを見に行きたいと思います。

■JINTANA / ジンタナ
横浜の音楽クルーPPP(Pan Pacific Playa)発、ネオ・ドゥーワップバンドJINTANA&EMERALDSのスティールギタリスト。「DESTINY」アナログ発売中。
ライヴ:
12/20@アンドレア・ドーラウJAPANツアー
12/29@和ラダイスガラージ
jintanaandemeralds.com

■JINTANA プレ・コメント

 そろそろ本格的に秋の空気になってきましたね。
 過ぎ行く夏の残り香を最後に楽しむチルアウト紀行をお届けします。
この連載を読みながらのBGMとして制作した楽曲もYoutubeにアップしましたので、ぜひ聴きながら、ゆったりと秋の美空を楽しんでくださいませ。

JINTANAプロフィール
Paisley ParksやBTBも所属するハマの音楽集団〈Pan Pacific Playa〉(PPP)のスティール・ギタリスト。同じく〈PPP〉のKashifや一十三十一、Crystal、カミカオル、あべまみとともにネオ・ドゥーワップバンドJINTANA&EMERALDSとして『Destiny』をP-VINEよりリリース。オールディーズとチルアウト・ミュージックが融合したスウィート&ドリーミーなサウンドがTiny Mix Tapeなど海外メディアも含め各地で高い評価を得る。LIVE予定は、jintana&emeraldsで12/29「和ラダイスガラージ特別篇」@六本木スーパーデラックス、ソロで11/1「FADER」@新世界。 「Destiny」アナログ盤、予約受付中⇒jintanaandemeralds.com
online shop/live schedule:::Jintanaandemeralds.com

■イビザのチルアウト/レイドバックサイド
~歴史と海とローカルフード~

 〈USHUAIA〉での鮮烈なイビザ・パーティ体験を経て、僕は放心していた。鳴り響くビートと青空から美しくグラデーションした星空、そして生命力を爆発させている若い男女。臨終のタイミングでも「アレはいいパーティだったな……ガクっ」と思い出せるような、一生の思い出に残るパーティだった。〈USHUAIA〉は、ひとつのクラブというより、常設のレイヴ会場といったほうが合っているのだろう。イビザにはそんなクラブがたくさんひしめいているのだから恐ろしい。

 さて、そんなアゴが外れた放心状態で、僕はイビザの街に出た。昨夜の経験から、僕の目には、この街のすべての人がパーティピーポーにしか見えなくなってしまっていたのだが、よくよく見ると街には穏やかな空気が流れていた。僕の滞在していたホテルもロビーで老夫婦が日向ぼっこしながらトランプをしている、というのがデフォルトの状態だ。この島の魅力はどうもパーティだけではないらしい。そこで翌日はイビザに根づくローカルな魅力を体験してみることにした。

 まずはビーチ。噂通りトップレスが多い。みんな大きなオッパイをポロリンチョして日向ぼっこを楽しんでいる。美しいビーチに並ぶ、健康的に小麦色に焼けた肌たち。うーむ。ただひとつイメージとちがったことは、その多くが60代の老夫婦であったことだ。とはいえ、みな、とても幸せそうで素敵だった。あんな老夫婦になりたいものだ。イビザはパーティ・アイランドという側面の他に、ヨーロッパの他の国々からやってきた50代、60代の方々がゆったり過ごすところ、という側面もあるようだ。

 つづいてビーチを通り過ぎ、ダルト・ビラと呼ばれる旧市街に向かった。
その一体には、岬のような形で海に面した城壁に囲まれた箇所がある。そこはローマ帝国やイスラム系の国家、そしてスペイン王国など多くの国による、さまざまに入り組んだ歴史とともにあったという。そして、そういった歴史的背景が培ってきた風土が大変貴重なものであることから、なんとイビザ島自体が世界遺産に登録されているとのことだ! なんということだ……。毎晩毎晩、僕らはアホみたいに踊りまくっているこの場所が、じつはすべて世界遺産の上での出来事だったということか。僕はブッダの手のひらで踊らされていた孫悟空のような気持ちになり、高台からイビザの蒼い海を眺めながら、感慨深く思った。これは少女漫画でよくあるパターンの、いつもめちゃくちゃ明るい男友だちが、「じつは昔は苦労して頑張っていたんだよね」っと爽やかに笑って語る横顔をみた瞬間に、ズキュン! と突然イケメンに見えはじめるというやつである。イビザ、やはりあなどれん。

 そんな感慨に耽りながら城壁の丘から降りて、僕はレストランComidas Bar San Juan(コミダ・バル・サン・ホアン)へ向かった。ここは地元の方にとても人気のある店らしく、一度行ったときはすごい行列で入れなかった店だ。イビザで行列ができるのは他では見たことなく、非常に人気店であると思われる。さて、お店の方にオススメを聞いたところ「ミートボール」と言う。咄嗟に「♪石井のお弁当くん、ミートボール~」という昔のCMソングが脳内をループしつつ、さほど期待せずに口に運んでみたら……ゥンマァ!!!!! トマトベースのスープの中におもむろに潜んでいるそいつは、一口ごとに肉汁が溢れ出し、食べ終わることが名残惜しすぎるほど愛おしい存在であった。ふぅ、イビザはローカル・フードも非常においしい街のようだ。

■カフェ・デル・マー
~音のシャワーを全身に浴びて~

 さて、僕は今回の旅の最大の目的地であるカフェ・デル・マーに向かった。アンビエント/チルアウト・サウンドの聖地として名高いこのカフェは、Sant Antoni(サン・アントニー)というビーチの波打ち際にある。僕はイビサ・タウンからバスにのり、サンアントニーへたどり着いた。(もちろんバスターミナルでかかっているBGMは派手なダンスミュージックであることは言うまでもない)。カフェ・デル・マーに向かって歩いていると、10代の白人カップルが話しかけてきた。彼らはすごくキラキラした瞳で、どのパーティに今晩行くんだい? という話題をしてきた。そしてとても重要な話のような口調で「やはりスティーブアオキは一度体験した方がいいよ! DJブースからでっかいケーキをぶん投げてくるんだ! 僕の友だちはね……ずっと口を開けて踊ってたよ!!!」などしょうもない話をしてくれた。僕らはそんな楽しいパーティ情報をひとしきり交換し、またどこかで会おうね! と言って別れた。こういう音楽愛という共通事項で繋がっているから誰とでも仲良くなれるという感覚は、すごく心地よい。

 サンアントニーの海岸はとても太陽でまぶしかった。海外沿いにはたくさんカフェ・バーが立ち並んでいて、どこからもダンス・ミュージックが流れてきている。そして一際白く輝き、帆のようにパラソルがはためく美しいカフェが目に入っていた。そう、ここが〈カフェ・デル・マー〉だった。
 太陽のきらめく水面に手の届くような距離で並べられた涼しげなテーブルとイス。そこに透明感のある心地よい音楽がスピーカーから流れ出ている。美しく流れるような書体でCAFÉ DEL MERと書いてあった。そこは、ブルーと透明と白でできた世界だ。
 僕はコロナビールを注文した。コロナなキャンペーン・ガールである身長180cmくらいの美女が白いサングラスをくれた。僕はしばしこの空間に酔いしれることにした。波の音、海に反射する太陽、透明で包み込むようなダンス・ミュージック……。

 ここは太陽と波と音が完璧に調和した空間だった。

 バーカウンター横のDJブースに目をやるとグリーンのTシャツを来たDJが楽しそうに回していた。太陽の位置がすこしずつ落ちる頃、DJはカフェの隣にあるステージに移った。そこは小さい屋外ライブハウスという感じの空間で、〈カフェデルマー〉に併設されているようだった。音に導かれるように太陽が沈んでいく。その瞬間を見届けようとたくさんの人が海岸に溢れ出した。昼から夜に変わる、毎日毎日あることなのに、その瞬間に浸り味わうだけで、なぜこんなにエクスタシーがあるのか。

 太陽が沈む瞬間、人々は歓声をあげた。まるでパーティのはじまりを祝うかのように。
〈カフェデルマー〉。何十年と培ってきた感覚の積み重ねによる強い説得力と、誰をもその世界に導く優しさをもっていた。

■旅を終えて
~永遠に四つ打ちが鳴り響く島~

 素晴らしい日々を終えて、僕はタクシーの車窓から街を眺めながら、シミジミした感慨に耽りながら空港に向かった。
 夕陽、波、二度と同じ瞬間はないという感覚。そしてそれと対話するかのようなダンス・ミュージック。それはその瞬間だけのインプロヴィゼーションを堪能させる体験だ。そして、それが一期一会の瞬間芸術であるからこそ、人生は有限であることを感じ、だからこそ「生きていることは素晴らしい!」というシンプルな気持ちにさせてくれる。

 そんな最高のチルアウトがなぜイビザで生まれたかというと、当たり前のことかもしれないが、最高のパーティーが一方にあることの対極のことがらだからだと思った。
 テンションが上がりきって絶頂へ連れていってくれるパーティがあり、その反対にクールダウンしきり、メロウで無我の境地へ連れていくチルアウトがあるのだと思った。陰と陽のように表裏一体で人生を味わわせてくれている。そしてその繰り返しがサウナ→水風呂→サウナ水風呂の永久運動のごとく、どこまでも気持ちよくさせてくれるのだ。

 そんなふうにシミジミとした気持ちも束の間、空港に着くとイミグレーションの列から、揃いのTシャツをきたバカそうな軍団が降りてきた。いちばん先頭の美女はビールジョッキ型のサングラスをかけている、薄暗い空港なのに。その愛すべきバカそうな軍団をみていると、僕はハイタッチして、「次はお前の番な! あとは任せた! グッ!」と言いたくなるような気持ちにさせられた。そういや行きに見かけた花嫁のヴェールをかぶった女子版バチェラーパーティー軍団はどうしているだろうか? そういや〈カフェ・デル・マー〉の前で見かけたとき「空港でいっしょだったね」と声かけたら「フゥ~!」と喜んでいた。
空港内には〈パチャ〉などのクラブ直営のファッション・ブティックがあり、巨大なビジョンにはさまざまなクラブのパーティ・シーンが映し出されている。そんな最後まで島を上げてのダンス・ミュージック全力投球な空気感の中で飛行機は飛びたった。

 眼下には美しい街明かりが広がる。この明かり、ひとつひとつのもとで、相変わらずダンスミュージックが鳴り響いているのだなあと思うと、旅の終わりなのに不思議と寂しくなかった。また、地球の反対側の日本に帰っても、ここでは永久に四つ打ちが繋ぎつづけられていると思うと、なんとなく安心もする。僕がどんなメンドくさい状況であろうとも、あそこではみんながずっと同じようにフゥ~! といいながら踊っているんだと。じゃあ大丈夫だと。何が大丈夫かわかりませんが。僕はそんな不思議な安心感とともに日本への帰路へとついたのでした。


終わりのご挨拶

拝啓 みなさま

 最後まで読んでいただきありがとうございました。
 その後、JINTANA&EMERALDSで夏の間はHOME SICK@京都メトロ、代官山UNIT、JIN ROCK FES、りんご音楽祭、またソロとしてOPPA-LAなど素晴らしすぎる箱やパーティでやらせていただきましたが、運営、箱のみなさま、見てくださった方々、本当にありがとうございました。
 月並みですが、海外から帰ってきて、日頃遊ばせてもらっている店やフェス、パーティにきている方々の、それぞれのセンスのよさや姿勢のカッコよさを改めて再認識し、ホントーにみんなカッコいいな! カッコよすぎる! と改めて感動しました。今後とも引きつづき、そこかしこでいっしょに遊んでくださいませっ!

PS JINTANAソロとしては、僕の尊敬する、あのヤバすぎるシンガーをフィーチャリングした楽曲を製作中です! そして、次のJINTANA&EMERALDSのライヴは12月29日「和ラダイスガラージ特別篇」@六本木スーパーデラックス(DJ: 永田一直 / 中村保夫 / CRYSTAL / CHERRYBOY VJ: 20TN! and more)です。ぜひ。

敬具


2 3