「ZE」と一致するもの

Gr◯un土 (Chill Mountain / 御山EDIT) - ele-king

○S△K△生まれ古墳郡育ち。
今年10祭の誕生日を迎える大阪奥河内発のSoundCampParty (CHILL MOUNTAIN)主謀者。
全国各地大小様々なCLUB、BAR、CAFE、野外PARTY、はたまたTV塔展望台など DJをツールにレコードと供に年100回以上巡業するOSAKA UTORI世代DJ。
大阪十三に四年間存在した幻しのDJ喫茶ChillMountainHutteを運営&プロデュース。

楽曲制作も行い
“御山△EDIT a.k.aTHE△EDIT”名義でUK.MAGICWAND(UK)からの2枚の12inch.
ROTATING SOULS(US)からの1枚の12inch.
absolute timeとのスプリット12INCH(ChillMountainEp).
7枚のMIXCD.
FEELBACKRECからの計3枚のコンピCDにオリジナル楽曲を提供(ドイツのケーブルTVで使用放送される).
昨年ChillMountainRecより関西奇才19組大集合となるコンピCD(ChillMountainClassics)をプロデュースするなど活動、仕掛け、発想は多義にわたる。
只今チルアウト&アンビエント&ニューエイジに焦点をあてたNEW MIX(Koyabient)を発売中。
今年のCHILL MOUNTAINは9月20日~23日の4日間、河内長野荒滝キャンプ場にて開催。


1
Late Night Tuff Guy - Edits - Razor N Tape (US)

2
Damiand Von Erckert - Giant Pandas And Other Nice Things In Life - AVA

3
Africaine 808 - Lagos, Newyork - Golf Channel

4
John Wizards - Muizenberg - Planet MU Records LTD

5
Clap! Clap! - Tambacounda EP - Black Acre

6
Men In Burka - Techno Allah - Robot Elephant Records

7
Butric - UP - Sei Es Drum

8
Passavanti - Afro Boogie Super Hombre (Full) - Sunlightsquare

9
Chill Mountain Classics - V.A - Chill Mountain Rec(JPN)

10
The△Edit - Magic Wand Vol.5 - Magic Wand

Alexis Taylor - ele-king

 いやあ、高い。イギリスのポンドがどんどん高くなってきている。たとえば、昨年から人気が急上昇している〈ザ・トリロジー・テープス〉の12インチ・シングルは、もはやLP1枚分の価格になってしまった。〈リーボック〉と〈パレス〉のコラボ・スニーカーの映像でも強靭なノイズを添えていたリゼット(Rezzet)の新作EPが発売されるようだが、レーベル直販だと送料込で3000円とな……。日本のレコード・ショップがある程度安く仕入れてくれればいいのだが、日本に入ってこないレコードだってある。こうなるとアマゾンの利用は避けられない……。なんて、こんな風にお困りの方は少なくないのでは? 他ならぬ本作『アウェイト・バーバリアンズ』もそうだ。7インチ付きの限定盤は結局、ずいぶんな高値で通販することになった。

 昨年の夏はアバウト・グループで『ビトゥウィーン・ザ・ウォールズ』をリリースしたアレクシス・テイラーことアレ様。どうやらホット・チップとしての活動はまだしばらくないようだ。
 昨年のソロEP『ナイム・フロム・ザ・ハーフウェイ・ライン』のレヴューでもふれたが、デモ・テープ趣味というか、絵のアウトラインまで描いて色は塗らないアレ様のセンスが本作にももれなく反映されている。一部のストリングスを除いてすべてアレ様が楽器を演奏している、だけでなく、録音もプロデュースもアレ様自身の手による、まさに純然たるソロ作だ。全編にわたってビートはほとんどなく、ピアノの独走にちかい楽曲さえある。『ビトゥウィーン・ザ・ウォールズ』で垣間見られたフォーク趣味も、バンジョーの音色でより際立っている。キーボード/アコースティック・ギター/ドラムなど、ひじょうに簡素な伴奏にのせて、さながらボニー・プリンス・ビリーのように粛々と弾き語る。

 それにしても、相変わらずアレ様の音楽は親密的な空気をもっていて、ドアを閉めきったスタジオ=すなわちアレ様の音楽部屋で新作のデモ演奏をきいているかのようだ。その密室感=近さを息苦しいと感じたり、苦手におもう人もいるだろう。しかし、アレ様はそんなことは気にしていないのだ。彼は彼の制作意欲に基づいて音楽をつくっていくだけ。たとえピッチフォークでの点数が低かろうが、僕がまわりくどくレヴューを書いたところで、アレ様にはなんの意味もなさない。と、わざわざ書きたくなるほど、ひとりの男の完結した世界が、たしかな強度をもって本作には真空パックされている。ダンスフロアを裏切ってにわかにフォークに逃げた、というわけではないことは、そもそもホット・チップ自体が当初はフォークのスタイルではじまっていたことを考えれば納得のいくところだ。

 エルヴィスにディランにホイットニーにプリンス──ポップ・ミュージックの先人たちの名を歌うアレ様の姿からうかがえるのは、自分の趣味をあきらかにして誰かと共有したい欲求。「いつだって他人の音楽のことを考えているし、つねに音楽を聴いていることで、自らにインスピレーションを与えている」と語るほど、とても純粋にいち音楽ファンであり、そうした謙虚ながらノーブルな態度を表明することで、彼と音楽との関係性に……いや、彼とリスナーの間に、だろうか、ふかい喜びと同時に疑念が生まれる。つまり、アレ様がこれから先どれだけ音楽をつくっていったとしても、じつは彼はエルヴィスやディランやホイットニーやプリンスのただのファンでしかないのではないか、というアレ様ファンとしてのコンプレックスのような疑念だ。自らの才能をアピールしたりすることなく、参照先をいつでも語る謙虚さは、ファンに歴史を顧みることを促すという意味ではすばらしい。しかし歌詞になってでてくるとどうだろうか、ソロ作はいつもデモ・テープみたいだし……。なんておもってしまうのも事実。参照先を免罪符としているのでは、という疑念がなくもないのだ。もちろん、アレ様のことだからそんなつもりはないのだろうが。つまり、アレ様ファンは、彼を最高だと手放しでいえるような、完成されたアルバムをいまだに欲している。僕が最高だと言いたいのは、エルヴィスやディランやホイットニーやプリンスではなく、アレ様なのだから。
 本作を聴いていて、驚くような音の瞬間はないかもしれない。が、ひとりの人間を深追い/深読みして音楽を聴くのが趣味のひとには、ぜひ聴いてみてほしいアルバムだ。

■参照記事
Alexis Taylor: | Consequence of Sound:
https://consequenceofsound.net/2014/06/alexis-taylor-no-more-barriers/

interview with Ike Yard - ele-king

ダーク・アンビエントがもっとも盛んなのは、これといった特定の場所というよりも、おそらく僕たちの脳内だ。「ダークネスに対する大衆の欲望を甘く見るな」という台詞は、2012年のUKで話題になった。

 アイク・ヤードは、今日のゴシック/インダストリアル・リヴァイヴァルにおいて、人気レーベルの〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉あたりを中心に再評価されているベテラン、NYを拠点とするステュワート・アーガブライトのプロジェクトで、彼は他にもヒップホップ・プロジェクトのデスコメット・クルー、ダーク・アンビエント/インダストリアルのブラック・レイン、退廃的なシンセポップのドミナトリックス……などでの活動でも知られている。ちなみにデスコメット・クルーにはアフロ・フューチャリズムの先駆者、故ラメルジーも関わっていた。

 アイク・ヤードの復活はタイミングも良かった。ブリアルとコード9という、コンセプト的にも音響的にも今日のゴシック/インダストリアル・リヴァイヴァルないしはウィッチ・ハウスにもインスピレーションを与えたUKダブステップからの暗黒郷の使者が、『ピッチフォーク』がべた褒めしたお陰だろうか、ジャンルを越えた幅広いシーンで注目を集めた時期と重なった。世代的にも若い頃は(日本でいうサンリオ文庫世代)、J.G.バラードやフィリップ・K・ディック、ウィリアム・S・バロウズらの小説から影響を受けているアイク・ヤードにとって、時代は巡ってきたのである。


Ike Yard
Remixed [ボーナストラック4曲(DLコード)付き]

melting bot / Desire Records

IndustrialMinimalTechnoNoiseExperimental

Amazon iTunes

 先日リリースされた『Remixed』は、この1〜2年で、〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉から12インチとして発表されたリミックス・ヴァージョンを中心に収録したもので、リミキサー陣にはいま旬な人たちばかりがいる──テクノの側からも大々的に再評価されているレジス(Regis)、〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉からはトロピック・オブ・キャンサー、〈トライアングル〉とヤング・エコーを往復するヴェッセル……、インダストリアル・ミニマルのパウェル、〈ヘッスル・オーディオ〉のバンドシェル、フレンチ・ダーク・エレクトロのアルノー・レボティーニ(ブラック・ストロボ)も参加。さらに日本盤では、コールド・ネーム、ジェシー・ルインズ、hanaliなど、日本人プロデューサーのリミックスがダウンロードできるカードが付いている。
 
 7月18日から3日間にわたって新潟県マウンテンパーク津南にて繰り広げられる野外フェスティヴァル「rural 2014」にて来日ライヴを披露するアイク・ヤードが話してくれた。

初めてレイム(Raime)を聴いて好きになったときに〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉に音源を送った。すぐに仲良くなって2010年にロンドンで会ったよ。実はまだいろいろリリースのプランがあって、いま進んでいるところだ。

80年代初頭のポストパンク時代に活動をしていたアイク・ヤードが、2010年『Nord』で復活した理由を教えてください。

ステュワート・アーガブライト:2010年の『Nord』は、2006年の再発『コレクション!1980-82 』からの自然な流れで、またやれるんじゃないかと思って再結成した。アイク・ヤードは2003年と2004年にあったデスコメット・クルーの再発と再結成に続いたカタチだ。
 両方に言えることだけど、再結成してどうなるかはまったくわからなかったし、再結成すること自体がまったく予想していなかった。幸運にもまた連絡を取り合ってこうやって作品を作れているし、やるたびにどんどん良くなっているよ。

『Nord』が出てからというもの、アイク・ヤード的なものへの共感はますます顕在化しています。昨今では、ディストピアをコンセプトにするエレクトロニック・ミュージックはさらに広がって、アイク・ヤードが本格的に再評価されました。

SA:そうだね。アイク・ヤードのサウンドは世代をまたいで広がり続けている。いま聴いてもユニークだし、グループとしての音の相互作用、サンプルなしの完全なライヴもできる。1982年には4つのシンセサイザーからひとつに絞った。再結成したときはコンピュータ、デジタルとアナログ機材を組み合わせた。『Nord』は再結成後の最初の1年をかけて作ったんだけど、ミックスでは日本での旅やヨーロッパで受けたインスピレーションが反映されている。

ブラック・レイン名義の作品も2年ほど前に〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉から再発されました。

SA:初めてレイム(Raime)を聴いて好きになったときに〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉に音源を送った。すぐに仲良くなって2010年にロンドンで会ったよ。実はまだいろいろリリースのプランがあって、いま進んでいるところだ。

今回の『Remixed』は、〈Desire Records〉と〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉との共同リリースになっていますが、このアイデアも〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉からだったのでしょうか?

SA:レジス(Regis)のエディットが入っている最初のEP「Regis / Monoton Versions 」は〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉との共同リリースで、その後は〈Desire Records〉からだ。
 レジスとの作業は完璧でお互い上手く意見を出し合えた。スタジオを一晩借りて、そこにカール(・レジス)が来て、ずっと遊んでいるような感じだった。3枚のEPにあるリミックス・ヴァージョンを1枚にするのは、とても意味があったと思う。他のリミックスも良かった。新しい発見がたくさんあった。レジスが"Loss"をリマスターしたときは、新しいリミックスかと思うくらい、まったく違った響きがあったよ。
 2012年のブラック・レインでの初めてのヨーロッパ・ツアーは、スイスのルツェルンでレイム、ベルリンでダルハウス、ロンドンでの〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉のショーケースはレイム、レジス、プルーリエントのドム、ラッセル・ハスウェル、トーマス・コナー、ブラック・レインと勢揃いの最高のナイトだった。

ちなみに、2006年には、あなたは〈ソウル・ジャズ〉の『New York Noise Vol.3』の編集を担当していますよね。

SA:〈ソウル・ジャズ〉は素晴らしいレーベルだ。ニューヨーカーとしてあの仕事はとても意味があった。まずは欲しいトラックのリストを上げて、何曲かは難しかったから他を探したり、もっと面白くなうように工夫した。ボリス・ポリスバンドを探していたら、ブラック・レインのオリジナル・メンバーがいたホールの向かいに住んでいたことがわかったが、そのときはすでに亡くなっていた。あのコンピの選曲は、当時の幅広いニューヨーク・サウンドをリスナーに提示している。

UKのダブステップのDJ/プロデューサーのコード9は、かつて、「アイク・ヤードこそ最初のダブステップ・バンドだ」と言ってましたが、ご存じでしたか?

SA:もちろん。コード9はニューヨークの東南にある小さなクラブに彼のショーを見に行ったときにコンタクトをとった。そのときにいろいろやりとりしたんだが、彼の発言は、どこかで「アイク・ヤードは20年前にダブステップをやっていた」から「アイク・ヤードは最初のダブステップ・バンド」に変わっていた。『Öst』のEPの引用はそうなっている。自分としては、当時の4人のグループがダブステップ的なライヴをできたんじゃないかってことで彼の言葉を解釈してる。

コード9やブリアルを聴いた感想を教えてください。

SA:ふたつとも好きだ。とくにコード9 & スペース・エイプの最初のリリースが気に入っている。最初のブリアルに関しては、聴き逃すは難しいんじゃないかな。ものすごくバズっていたからね。

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レジスはタフだ。彼はまた上昇している。ニーチェが呼ぶ「超人」のように働いている。自分は、テクノと密接な関係にある。やっている音楽はミニマル・ミュージックでもある。

ダブステップ以降のアンダーグラウンドの動きと、あなたはどのようにして接触を持ったのですか?

SA:アイク・ヤードのリミックスが出たときに、シーンからフレッシュなサウンドとして受け取ってもらえたことが大きい。あと、ここ数年のインダストリアル・テクノ・リヴァイヴァルと偶然にも繋がった。僕たちのほかとは違った音、リズム、ビートが面白かったんだろう。

ヴェッセルも作品を出している〈トライアングル〉、ないしは〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉など、新世代のどんなところにあなたは共感を覚えますか?

SA:新しいリリースはチェックしている。いま誰が面白いのかもね。彼らは知っているし、彼らのやっていることをリスペクトしてる。エヴィアン・クライストを出している〈トライアングル〉のロビンから連絡が来て、レッドブル・アカデミーのスタジオでエヴィアンと1日中セッションしたこともある。
 〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉はブラック・レインの『Dark Pool』のリリース後にとても仲良くなった。パウェルはブラック・レインの最初のライヴで一緒になって友だちになった。トーマス・コナーとファクションもいた。〈RVNG Intl.〉のマットのリリース『FRKWYS』の第5弾にもコラボレーションで参加したよ。

『Remixed』のリミキサーの選定はあなたがやったのですか? 

SA:だいたいの部分は僕がやったね。リミックスのアイデアは〈Desire Records〉と企画して、好きなアーティストを並べて決めた。

リミキサーのメンツは、みな顔見知りなのですか?

SA:ほとんど会ったことがある。ない人はEメールでやりとりしている。日本のリミキサー陣はまだ話したことはない。あとイントラ・ムロスとレボティ二。ブラック・ストロボはとても好きだ。2003年のDJヘルの再発で、ドミナトリックス(Dominatrix)の「The Dominatrix Sleeps Tonight」では本当に良いリミックスをしてくれた。

レジスやパウェル、アルノー・レボティーニ(ブラック・ストロボ)のような……、クラブ・カルチャーから来ている音楽のどんなところが好きですか?

SA:時間があるときはできるだけ多くのアーティストを聴くようにしている。クラブの世界は、いま起きている新しいことがアーティストやDJのあいだで回転しているんだ。実際、同じように聴こえるものばかりだし、面白いと思えるモノはたいしてないんだが……。そう考えると、次々と押し寄せる流行の波のなかで生き抜いているレジスはタフだ。彼はまた上昇している。ニーチェが呼ぶ「超人」のように働いている。
 僕は、テクノと密接な関係にある。やっている音楽はミニマル・ミュージックでもある。他のアーティストを見つけるのも、コラボレーションするのも楽しい。新曲でヴォーカルを何曲か録って、アイク・ヤードのマイケルと僕とでザ・セイタン・クリエーチャーと“Sparkle"を共作した。そのときのサミュエル・ケリッジのリミックスはキラーだよ。〈Styles Upon Styles〉からリリースされている。音楽もビートもすごいと思ったから、JBLAのEPもリリースした。自分まわりの友だちと2012年にブリュッセルでジャムして作ったやつで(〈Desire Records〉から現在リリース)、〈L.I.E.S.〉のボス、ロン・モアリとスヴェンガリーゴーストとベーカーのリミックスもある! 最後に収録されているオルファン・スウォーズとのコラボでは、彼らが曲を作って僕が詞を書いた。クラブ・ミュージックと完全に呼べるものは、来年には発表できると思うよ。

とくに印象に残っているギグについて教えてください。

SA:6月にグローバル・ビーツ・フェスティヴァルで見たDrakha Brakha (ウクライナ語で「押す引く」)は良すぎるくらい良かった。キエフのアーティストで、エスノなヴォーカルやヴァイブレーション、オーガニックなサウンド、チェロ、パーカッションが入っている。彼らは自分たちの音楽を「エスノ・カオス」と呼んでいた。
 毎年夏に都市型のフリー・フェスティヴァルがあるが、自分にとってはとても良い経験だ。いつでも発見がある。レジス、ファクトリー・フロア、ヴェッセル、スヴェンガリーゴースト、シャドーラスト、ピート・スワンソン、ヴェロニカ・ヴァシカ……なんかとのクラブ・ナイトを僕もやりたい。

ダーク・アンビエント、インダストリアル・サウンドがもっとも盛り上がっている都市はどこでしょう?

SA:ダーク・アンビエントは、これまでにも多くの秀作がある。アイク・ヤードの4人目のメンバーでもあるフレッド(アイク・ヤードのリミックスEP第2弾でもレコンビナントとして参加)の曲は素晴らしく、『Strom Of Drone』というコンピレーションに収録されいたと思う。
 ドリフトしているドローンが好きだ。たとえば、アトム・ハートの、『Cool Memories』に収録されている曲、トーマス・コナーの『Gobi』と『Nunatak』、プルーリエント、シェイプド・ノイズ、クセナキス、大田高充の作品には深い味わいがある。
 ウィリアム・ギブソンの『ニューロマンサー』に触発されたブラック・レインの『Night City Tokyo』(1994)は、自分たちがイメージする浮遊した世界観をより正確に鮮明に描いていると思う。つまり、ダーク・アンビエントがもっとも盛んなのは、これといった特定の場所というよりも、おそらく僕たちの脳内だ。「ダークネスに対する大衆の欲望を甘く見るな」という台詞は、2012年のUKで話題になった。

東欧には行かれましたか? 

SA:おそらく東ヨーロッパは次のアルバムのタイミングで回るだろう。母親がウクライナのカルパティア人なんだ。コサックがあったところだ。で、僕の父親はドイツ人。母親方が石炭採鉱のファミリーで、ウェスト・ヴァージニアにいて、沿岸部に移り住んでいった。ウクライナ、キエフ、プラハ、ブタペスト、イスタンブールは是非行ってみたい。

日本流通盤には、コールド・ネーム、ジェシー・ルインズ、hanaliなど、日本人プロデューサーのリミックスがダウンロードできます。とくにあなたが気に入ったのは誰のリミックスですか?

SA:コールド・ネームしかまだ聴けてないけど、とても気にっている。

こう何10年もあなたがディストピア・コンセプトにこだわっている理由はなんでしょう?

SA:「ダーク」と考えらている事象を掘り下げるなら、あの頃はストリートが「ダーク」だったかもしれない。1978年のニューヨークは人種問題で荒れていた。その影響もあってダークだったと言えるけど、実際はそんなにダークではなかった。
 1981年にアイク・ヤードのメンバーに「もし電源が落ちて真っ暗になっても、僕たちはそこでも演奏し続ける方法を見つけよう」と伝えた。そのとき得た回答は、自分がロマンティックになることだった。
 自分たちには陰陽がある。暗闇の光を常に持っている。もっともダークだったストリートにおけるそのセンスは、やがて世渡り上手でいるための有効な手段となった。僕は、近未来のディストピアのなかで前向きに生きることを夢見ていなたわけではなかった。シド・ミードは、未来とは、1984年までの『時計仕掛けのオレンジ』、『ブレードランナー』、『エイリアン』、『ターミネーター』と同じように、世界をエンタテイメント化していると認識していた。
 ジョージ・ブッシュの政権に突入したとき、どのように彼がイラク戦争をはじめるか、その口実にアメリカの関心は高まった。彼の親父はサダム・フセインからの脅しを受けていた。が、当時のディストピアは、時代に反応したものではなかった。ヒストリー・チャンネルは『ザ・ダーク・エイジ』や『バーバリアンズ』といったシリーズをはじめたが、母親のウクライナと父親のドイツの血が入っている僕にとって、自分たちがバーバリアンであると信じていた。バーバリアンから来ているオリジナルのゴスに関して言えば、僕にドイツ人の血が流れているか定かではないけど、ドイツにいるときその何かを感じたことはある。自然環境、場所、そしてミステリーの狭間でね。
 2005年から2009年にかけてのディストピアについても言おう。ブラック・レインのベーシストのボーンズと再結成前のスワンズのノーマン・ウェストバーグは、ペイガニズム、アミニズム、ブーディカといったイングランド教、ドルイド教、その他クリスチャンにさせようとするすべての勢力に反した歌詞を根幹とした。新しい「ローマ」がどこで、それが誰であるかを見つけなければならない。そしてそれがいつ崩壊するのかも。

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1981年にアイク・ヤードのメンバーに「もしも電源が落ちて真っ暗になっても、僕たちはそこでも演奏し続ける方法を見つけよう」と伝えた。そのとき得た回答は、自分がロマンティックになることだった。

80年代初頭、あなたはニューヨークとベルリンを往復しましたが、あれから30年後の現在、ニューヨークとベルリンはどのように変わったのでしょうか?

SA:83年の春にベルリンに来たとき、デヴィッド・ボウイとブライアン・イーノによる『ロウ』や『ヒーローズ』の匂いが漂っていた。その2枚は自分にとってとてつもない大きな作品だったから、ワクワクしていたものさ。
 アイク・ヤードのその当時の友だちはマラリア!で、彼女たちは78年に自分が組んだザ・フュータンツのメンバー、マーティン・フィッシャーの友だちでもあった。マラリア!とは、リエゾン・ダンジェルーズ (ベアテ・バルテルはマラリア!の古き友人)と一緒に79年にニューヨークに来たときに出会ったんだ。
 クロイツベルクではリエゾン・ダンジェルーズのクリスロ・ハースのスタジオで何週間か泊まったこともあったよ。まだ彼が使っていたオーバーハイムのシンセサイザーは自分のラックに残っている。
 当時のベルリンは、ブリクサとアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンが全盛期でね。初めて行ったときは幸運にも友だちがいろいろ案内してくれた。マラリア!のスーザン・クーンケがドレスデン・ストリートにあるスタジオで泊まらせてくれたり、ある日みんなで泳ぎに出かけようてなったときにイギー・ポップの彼女、エスターがすぐ上に住んでいることがわかったり……。78年から89年のナイト・クラビングは日記として出したいくらい良いストーリーがたくさんある。 そのときの古き良き西ベルリンは好きだった。いまのベルリンも好きだけどね。 83年以来、何回かニューヨークとベルリンを行き来してる。アイク・ヤードは8月25日にベルリンのコントートでライヴの予定があるよ。
 ニューヨークももちろん変わった。人生において80年代初期の「超」と言える文化的な爆発の一端は、いまでも人種問題に大きな跡を残してる。いまでも面白いやつらが来たり出たりしてるし、これまでもそうだった。女性はとくにすごい……まあ、これもいつだってそうか。音楽もどんどん目まぐるしく展開されて前に進む。
 〈L.I.E.S.〉をやっているロン・モアリは、近所のレコード屋によくいた。リチャード・ヘルとは向かいの14番地の道ばたで偶然会ったりする。
 しかし、ときが経つと、近所に誰がいるとか、状況がわからなくなってくるものだ。友だちも引っ越したり、家族を持ったりする。僕はイースト・ヴィレッジの北部にあるナイスなアパートに住んでいる。隔離されていて、とても静かだから仕事がしやすい。2012年のツアーではヨーロッパの20都市くらい回って、そのときはいろんな場所に住んだり、仕事もしてるが、ニューヨークがずっと僕の拠点だ。

最近のあなたにインスピレーションを与えた小説、映画などがあったら教えてください。

SA:以前も話したけど、僕のルーツは、J.G.バラード、P.K.ディック、ウィリアム・ギブソンだ。ワシントンDC郊外の高校に在籍していた多感な少年時代には、ウィリアム・バロウズの影響も大きかった。あとスタンリー・キューブリックだな。ドミナトリックスをやっていた頃の話だけど、1984年にワーナーにで会ったルビー・メリヤに「ソルジャー役で映画に出てみないか」と誘われたことがあった。フューチャリスティックな映画だったら良かったが、現代の戦争映画で自分が役を演じているという姿が想像つかなかった。が、しかし、その後、彼女は『フルメタル・ジャケット』のキャスティングをしていたってことがわかった(笑)。
 日本の映画では怪談モノが好きだし、黒澤明、今村昌平、若松孝二、鉄男、石井岳龍、森本晃司、大友克洋、アキラ、ネオ・トーキョー、川尻善昭『走る男』……なんかも好きだ。いまはK.W.ジーターとパオロ・バチガルピが気に入っている。
 ブラック・レインのアルバムでは、ふたつのサイエンス・フィクションが元になっていて、K.W.ジーター(P.K.ディックの弟子で、スター・トレックも含む多くの続編小説を生んだ作家)の『ブレード・ランナー2 :エッジ・オブ・ヒューマン』(1996)の小説。もうひとつはパオロ・バチガルピの『ザ・ウィンド・アップ・ガール』(2010)からのエミコの世界に出て来る新人類。
 いまちょうど著者のエヴァン・カルダー・ウィリアムスと、「今」を多次元のリアリティと様々な渦巻く陰謀を論じる新しい本と音楽のプロジェクトを書いている。
 もうひとつの本も進行中で、2000年頃から10年以上かけてロンドンのカルチャー・サイト、ディセンサスを取り入れてる。このスタイルの情報に基づいた書き方は、イニス・モード(意味を探さしたり、断定しないで大まかにスキャニングする)とジョン・ブラナー(『Stand On Zanzibar』、『Shockwave Rider』、『The Sheep Look Up』)に呼ばれている。ブラナーの『Stand On...』は、とくにウィリアム・ギブソンに影響を与えているようにも見えるね。

アイク・ヤードないしはあなた自身の今後の活動について話してください。

SA:早くアイク・ヤードの新しいEPを終わらせたい。新しい4曲はいまの自分たちを表している。そしてアルバムを終わらせること。『Nord』以降はメンバーが離ればなれで、みんな忙しいからなかなか進まなかった。
 次のアルバムは『Rejoy』と呼んでいる。日本の広告、日本語、英語を混ぜ合わせた言語で、アイク・ヤードにとっての新境地だ。ある楽曲では過去に作った歌詞も使われている。ケニーや僕のヴォーカルだけではなく、いろんなヴォーカルとも作業してる。アイク・ヤードのモードを変えてくれるかもしれない。
 また、新しいアルバムでは、ふたりの女性ヴォーカルがいる。日本のライヴの後、3人目ともレコーディングをする。そのなかのひとりは、エリカ・ベレという92年のブードゥー・プロジェクトで一緒になった人だ(日本ではヴィデオ・ドラッグ・シリーズの一部『ヴィデオ・ブードゥー』として知られている)。エリカは、昔はマドンナとも共演しているし、元々はダンサーだった。最初のリハーサルはマイケル・ギラ (スワンズ)と一緒でビックリしたね。
 新しいアルバムができた後は(EPは上手くいけば今年の終わりに〈Desire Records〉から、アルバムは来年以降)、「Night After Night」の再発にリミックスを付けて出そうかと思っている。ライヴ・アルバムもやりたい。
 あとは初期のブラック・レイン、ドミナトリックス、デスコメット・クルーのリリースも考えたい。サウンドトラックのコンピレーションも出るかもしれない。新しいテクノロジーを使いながら、新しいバンドも次のイヴェント、ホリゾンでやろうかとも思ってる。いまは何よりも日本でのライヴが楽しみだ。


※野外フェスティヴァル「rural 2014」にてアイク・ヤード、待望の初来日ライヴ! (レジスも同時出演!)

■rural 2014

7月19日(土)午前10時開場/正午開演
7月21日(月・祝日)正午終演/午後3時閉場 [2泊3日]
※7月18日(金)午後9時開場/午後10時開演 から前夜祭開催(入場料 2,000円 別途必要)

【会場】
マウンテンパーク津南(住所:新潟県津南町上郷上田甲1745-1)
https://www.manpaku.com/page_tour/index.html

【料金】
前売 3日通し券 12,000円
*販売期間:2014年5月16日(金)〜7月18日(金)
*オンライン販売:clubberia / Resident Advisor / disk union 及び rural website ( https://www.rural-jp.com/tickets/
*店頭販売:disk union(渋谷/新宿/下北沢/町田/吉祥寺/柏/千葉)/ テクニーク
*規定枚数に達しましたら当日券(15,000円)の販売はございません。

駐車料金(1台)2,000円
*当日エントランスでお支払いただきます。

テント料金(1張)2,000円
*当日エントランスでお支払いただきます。タープにもテント代金が必要になります。

前夜祭入場料(1人)2,000円
*当日エントランスでお支払いただきます。前夜祭だけのご参加はできません。



【出演】
〈OPEN AIR STAGE〉
Abdulla Rashim(Prologue/Northern Electronics/ARR) [LIVE]
AOKI takamasa(Raster-Noton/op.disc) [LIVE]
Benjamin Fehr(catenaccio records) [DJ]
Black Rain(ブラッケスト・エヴァー・ブラック) [LIVE]
Claudio PRC(Prologue) [DJ]
DJ NOBU(Future Terror/Bitta) [DJ]
DJ Skirt(Horizontal Ground/Semantica) [DJ]
Gonno(WC/Merkur/International Feel) [DJ]
Hubble(Sleep is commercial/Archipel) [LIVE]
Ike Yard(Desire) [LIVE]
Plaster(Stroboscopic Artefacts/Touchin'Bass/Kvitnu) [LIVE&DJ]
Positive Centre (Our Circula Sound) [LIVE]
REGIS(Downwards/Jealous God) [LIVE]
Samuel Kerridge(Downwards/Horizontal Ground) [LIVE]
Shawn O'Sullivan(Avian/L.I.E.S/The Corner) [DJ]

〈INDOOR STAGE〉
Abdulla Rashim(Prologue/Northern Electronics/ARR) [DJ]
AIDA(Copernicus/Factory) [DJ]
Ametsub [DJ]
asyl cahier(LSI Dream/FOULE) [DJ]
BOB ROGUE(Wiggle Room/Real Grooves) [LIVE]
BRUNA(VETA/A1S) [DJ]
Chris SSG(mnml ssg) [DJ]
circus(FANG/torus) [DJ]
David Dicembre(RA Japan) [DJ]
DJ YAZI(Black Terror/Twin Peaks) [DJ]
ENA(7even/Samurai Horo) [DJ]
GATE(from Nagoya) [LIVE]
Haruka(Future Terror/Twin Peaks) [DJ]
Kakiuchi(invisible/tanze) [DJ]
KOBA(form.) [DJ]
KO UMEHARA(-kikyu-) [DJ]
Matsusaka Daisuke(off-Tone) [DJ]
Naoki(addictedloop/from Niigata) [DJ]
NEHAN(FANG) [DJ]
'NOV' [DJ]
OCCA(SYNC/from Sapporo) [DJ]
OZMZO aka Sammy [DJ]
Qmico(olso/FOULE) [DJ]
raudica [LIVE]
sali (Nocturne/FOULE) [DJ]
SECO aka hiro3254(addictedloop) [DJ]
shimano(manosu) [DJ]
TAKAHASHI(VETA) [DJ]
Tasoko(from Okinawa) [DJ]
Tatsuoki(Broad/FBWC) [DJ]
TEANT(m.o.p.h delight/illU PHOTO) [DJ]
Wata Igarashi(DRONE) [Live&DJ Hybrid set]

< PRE PARTY >
Hubble (Sleep is commercial/Archipel) [DJ]
Benjamin Fehr (catenaccio records) [DJ]
kohei (tresur) [DJ]
KO-JAX [DJ]
NAO (addictedloop) [DJ]
YOSHIKI (op.disc/HiBRiDa) [DJ]

〈ruralとは…?〉
2009年にはじまった「rural」は、アーティストを選び抜く審美眼と自由な雰囲気作りによって、コアな音楽好きの間で徐々に認知度を上げ、2011年&2012年には「クラベリア」にて2年連続でフェスTOP20にランクイン。これまでにBasic Channel / Rhythm & Sound の Mark Ernestusをはじめ、DJ Pete aka Substance、Cio D'Or、Hubble、Milton Bradley、Brando Lupi、NESS、RØDHÅD、Claudio PRC、Cezar、Dino Sabatini、Sleeparchive、TR-101、Vladislav Delayなどテクノ、ミニマル、ダブ界のアンダーグラウンドなアーティストを来日させ、毎年来場者から賞賛を集めている野外パーティです。小規模・少人数でイベントを開催させることで、そのアンダーグラウンド・ポリシーを守り続けています。
https://www.rural-jp.com

TETSUJI TANAKA - ele-king

★祝!代官山UNIT10周年!記念すべき一夜はドラム&ベースのベスト・クラブナイト、Hospitalityを主宰するHospital Recordsの首領、ロンドン・エレクトリシティが今一押しの新鋭、ETHERWOOD(エザウッド)を引き連れて来日! 
2013年のベスト・ニューカマーDJ、ベスト・ニューカマー・プロデューサーの二冠に輝き、最も注目すべきアーティストである。ソウルフルかつエモーショナルミな極上のサウンドスケープがいよいよ体感できる!

UNIT 10th ANNIVERSARY
DBS presents "HOSPITAL+MED SCHOOL"

2014.07.12 (SAT) @ UNIT
feat. LONDON ELEKTRICITY (Hospital, UK)
ETHERWOOD (Hospital/Med School,UK) with: TETSUJI TANAKA , DJ MIYU vj/laser: SO IN THE HOUSE Painting : The Spilt Ink. 
HOSPITAL SHOP Sweets Shop : **Little Oven** 
open/start 23:30 adv.3,300yen door 3,700yen
https://www.dbs-tokyo.com/top.html

<TETSUJI TANAKA DJ SCHEDULE>
7/10 dommune Hospital Podcast
7/12 dbs presents HOSPITAL x MED SCHOOL @UNIT
7/17 OUR SIGNAL@AIR
7/20 INFINITY SENSE @AOYAMA 0
7/26 (day) amaimono night @mogra
7/26 (night) Thuggin Bass @bar granma Mito

8/1 block.party @asia +「encode」リリースパーティー
8/9 (day)@豊洲MAGIC BEACH
8/23 TBA
8/29 @大阪TBA
8/30 @amate-raxi

9/4 TBA
9/5 TBA
9/14 (day) Russeluno 14 STRINGS @津カントリークラブ三重
9/14 (Night) @UNIT
9/20 TBA
9/26 エキサイトシリーズ @R-LOUNGE
9/27 Thuggin Bass「encode」リリースパーティー@bar granma Mito

<RELEASE INFORMATION>
自身が所属するelenic productinsから
TT & NAVE名義の1stアルバムがリリースされます。8/1(FRI)block.party@asiaでリリース・パーティーライブと先行販売予定。
↓アルバム特設サイト
https://tt-nave-elenic.crossgroove.jp.net/

↓今後の各種スケジュールやDJ BOOKING、制作などこちらまで。
https://elenic-productions.crossgroove.jp.net/

<RADIO出演>
今年4月で4年目に突入した日本唯一のドラムンベース専門ラジオ番組"block.fm Localize!!"
毎週水曜日22:30~24:00にてレギュラー・オンエア!!
DRUM & BASS SHOW BY TETSUJI TANAKA & CARDZ
https://block.fm/program/localize/
https://twitter.com/TETSUJI_TANAKA

TETSUJI TANAKA HOSPITAL ALL TIME TOP 10 CHART


1
LONDON ELEKTRICITY / Rewind

2
PETER NICE TRIO / Harp Of Gold

3
LONDON ELEKTRICITY / Remember The Future

4
LENNY FONTANA presents BLACK SUN / Spread Love
(NU:TONE REMIX)

5
HIGH CONTRAST / Basement Tracks

6
DANNY BYRD / Soul Function

7
LOGISTICS / Together

8
CARLITO + ADDICTION / The Ride

9
SONIC / All I Wanna Do

10
CONCORD DAWN / You Don’t Have To Run

vol.12 『Transistor』 - ele-king

 

 みなさまご無沙汰しております、NaBaBaです。久しぶりの更新ですが、今回は最近遊んだインディーズ・ゲームをご紹介したいと思います。その名も『Transistor』です。

 『Transistor』は今年の5月にリリースされた〈Super Giant Games〉開発のアクションRPG。2011年に処女作『Bastion』をリリースして以来の2作目という、新興のインディーズ・スタジオですが、作品の完成度の高さからすでに今世代の代表的なスタジオの一つと目されていると言えるでしょう。


今回ご紹介する『Transistor』と、スタジオの前作『bastion』のトレイラー。

 古くからのゲーマーなら、ゲーム・デザインやアート・スタイルから『聖剣伝説』等ピクセルドット時代の日本の名作RPGを想起されるかと思います。そうした日本の作品からの影響については彼ら自身認めるところでありますが、実際のところ彼らの作品はドットの代わりにデジタルペイントで画面を構築しており、より繊細且つ高解像度になっています。そこからは、オリジナリティと同時に日本の黄金期のゲームへのリスペクト、そして日本の感性に追いつき、追い越してしまいそうなものを感じます。

 
〈Super Giant Games〉の作品のアートワークは美しく繊細で、どこか懐かしい。とくにわれわれ日本人にとっては。

 往年の日本へのリスペクトは多くのインディーズ・デベロッパーが持っていて、とりわけ2Dプラットフォーマーへの影響は計り知れないものがあるでしょう。たとえば2010年の傑作アクション・ゲーム『Super Meat Boy』は、作中のショート・ムービーにさまざまな日本作品へのオマージュを入れることで、その敬意を明らかにしていましたし、最近発売された『Broforce』は見るからに『魂斗羅』シリーズの影響を感じさせるなど、明示・非明示を問わず、彼らの作品のなかにはいまなお日本の過去のゲームの面影がしのばれます。


初っ端から『ストリートファイターII』へのオマージュたっぷりな『Super Meat Boy』。いろいろなBroが登場する『Broforce』は、往年のハリウッド映画とともに、『魂斗羅 』シリーズの影響も強く感じさせる。

 しかし一方で、両者の間にはなかなか埋められない溝もありました。それは日本のアニメチックな表現スタイルで、この点について肉薄するようなものは欧米からは長らく出てきていませんでした。しかし近年のインディーズ作品からはわずかながらその境界を超えるものが出てきはじめており、その一つが先の『Bastion』であり、またはアメリカの〈カートゥーン〉と日本の『ヴァンパイア』シリーズのキャラクター・デザインを組み合わせたかのようなアートワークの『Skullgirls』、そして今回ご紹介する『Transistor』です。

Skullgirlsからは、『ヴァンパイア』シリーズをはじめ、〈カプコン〉黄金時代のキャラクター・デザインのエッセンスを感じる。

■Jen Zee氏によるアートワークは圧巻の一言

 『Transistor』の魅力は先ほども述べたように世界観、とくに日本的感性をも感じさせるアートワークにあります。ゲームの舞台はCloudBankと呼ばれる近未来都市で、歌手をしていた主人公のRedが陰謀に巻き込まれつつ、その過程で手に入れた謎の剣Transistorを使って戦っていくというのが大まかなストーリー。

 前作『Bastion』は優れているとはいえ、穿った見方をすれば日本の『聖剣伝説』等の作品の延長線上にある世界観だと言えなくもなかったのですが、本作はサイバーパンクにアール・ヌーヴォー様式を交えた、よりオリジナリティの高い世界観になっています。

 
時おりイベント・シーンで挿入されるイラストも美しく、オリジナリティがある。

『Bastion』と『Transistor』のアート・ディレクションは、いずれもJen Zeeという方がほぼひとりで手掛けており、彼女のアジア系アメリカ人という出自は、欧米産のゲームでありながらも日本的感性に通ずる、繊細でアニメチックなデザインのアートワークにつながっていると断言できるように思います。

 彼女のイラストは〈Deviant Art〉の氏のページ(https://jenzee.deviantart.com/)でも見ることができます。しかし、同じくイラストを生業としている僕の身から憚りなく言わせていただくと、このページで見られる彼女のイラスト一枚一枚はそれだけでは圧倒的というほどではない。もっと優れたイラストの描き手はまだまだいるというのが実状でしょう。

 しかしゲームのアート・ディレクションという観点で彼女の業績を見た場合、およそ匹敵し得る仕事を成した人などほとんどいないのではないでしょうか。前述したように『Bastion』にせよ『Transistor』にせよ、キャラクター・デザイン、背景デザイン、個々のゲーム用のアセット作成、各種イラストに一挙に携わっているのは驚異的です。

 そんな、一人の絵描きによる完全に統一された世界観の強さが、『Transisotr』にはあるのです。

■RPGではお馴染みのシステムに一捻り加えたゲーム性

 〈Super Giant Games〉はアートだけのスタジオではありません。肝心のゲーム・デザインの方でもその完成度はたしかなもの。ジャンルとしてはアクションRPGの部類に入りますが、前作『Bastion』がオーソドックスなアクションRPG的なシステムだったのに対し、今回の『Transistor』はそこにも工夫を加え、さらなる進化、オリジナリティを獲得しています。

 本作の戦闘はアクションRPGの呼び名どおり、基本的にはリアルタイムで進行し、プレイヤーはその中で攻撃したり回避したりといったことをするわけですが、「Turn()」と呼ばれる作中のシステムを使うとそれが一変するのです。

 Turn()を発動すると時間が静止したような状態になり、プレイヤーはその状態から次の行動を予約する事ができます。1回のTurn()でできることの上限は各行動のコストにより制限され、予約した行動は基本的に間髪を入れず一方的に実行できる。

 要するにRPGのターンシステムとほとんど同じなのですが、任意のタイミングで発動させることが可能で、また、一度用いると使ったコストの分だけクールダウンが必要となります。そのため、アクションRPG的な面とターン性RPG的な面をそのときどきの事情を見ながら使い分けていく戦略性、またTurn()を使ったときの一方的に敵を蹂躙できる爽快感が本作のおもしろさの一つとなっているのです。

Turn()の仕様は動画で確認するのが一番わかりやすい。

 もう一つおもしろいのが「Functions」という独自の成長要素。基本的にはレベルアップ時に手に入るFunctions、これはいわばいろいろな効果を持ったカードのようなもので、それを武器であるTransistorに直接組み込むか、組み込んだFunctionsへのさらなるアップグレードとして使うか、自分自身に組み込むかによって効果がまったく異なってきます。

 正直なところ、このシステムはかなり複雑。僕も理解するのに暫く時間がかかり、完全に使いこなせたのは2周め以降でした。そこが1つの欠点でもあるのですが、逆に、理解できればこれほど自由度が高くて奥深いものもない。それぞれFncutionsの差別化がうまくいっており、組み合わせの実験ができる機会もあるので、毎回異なるカスタマイズにするもよし、一つの方向性を洗練させるもよしで、人によって千差万別のプレイスタイルが生みだせるでしょう。

 
Functionsの種類は16種×それぞれ3つの特性を考えると組み合わせ方は膨大だ

 1周8時間前後のプレイ時間で、登場する敵の種類もそう多いものではありません。しかし敵ごとの差別化がこれまたしっかりできていることと、このFunctionsの組み合わせの自由度、Turn()の戦略性のおかげで、中弛みもなく一貫して楽しく遊ぶことができました。むしろ前述する複雑さもあって、ゲームとしての本番は2周めからとも言え、2周めは同じFunctionsの2枚めが手に入るので、同一Functionsの掛け合わせによるさらなる自由度と深みが待っています。


■『Transistor』の音楽

 海外の大作ゲームにおいて、音楽がどんどん映画音楽と同じ方向性を突き詰めつつあるのに比べ、インディーズの方はもっと扱う曲の幅が広く、また、同じくインディの音楽アーティストと組むことも多いと言えます。

 『Transisntor』もその例に忠実で、ブルックリンのインディ・バンドControl Groupのメンバー、Darren Korb 氏が手がけたサウンドトラックがなかなか魅力的な出来です。主人公Redの職業が歌手ということもあり、たびたびヴォーカル入りの曲が挿入されたり、Turn()発動中は曲にハミングが挿入されたりといった作りこみも繊細でいい。

 またヴォイスアクトも、登場キャラクターは少ないですが、どれも良質で楽曲と同じく繊細さを感じさせるのが気に入っています。

 なお、サウンドトラックは単体で販売されている他、Youtubeでも公式で無料配信されているので、興味のある方は聴いてみるとよいでしょう。



■まとめ

 インディーズの勢いは止まる気配がありません。それはまさに破竹の勢いで、数はもちろん質的にも素晴らしいものが増えてきています。従来のコンシューマ・ゲームが大作化と少数化の一途をたどっているのとは対照的で、業界全体の勢力図はつねに変動していますが、多様性という点ではいまがもっとも熱い時期と言えるのではないでしょうか。

 この『Transistor』も間違いなく本年を代表するインディーズ・ゲームの1本として数えられましょう。これがわずか12人のスタッフによって作られたというのだから驚きだし、また記事中何度も触れたように、そのできあがった作品が日本的センスに肉薄しているのも驚きであります。

 pixivやDeviant Art、いまはなきCG Hub等のイラストSNSを見ていると、外人でありながら日本的感性を感じさせる、または日本らしさと欧米らしさの良いとこ取りのようなスタイルのアーティストをよく見かけます。そんな彼らのほとんどがJen Zee氏と同じく中国系、あるいは韓国系の出自であるというのは特筆すべき点であり、きっと今後も彼らのそうしたセンスを掛け合わせたインディーズ・ゲームが登場してくることでしょう。

 こうした世界の動きに対して、日本のゲーム・デベロッパー、またはイラストレーターが従来のコンシューマ、インディーズともに出遅れているのは残念なことではありますが、それはおき、ひとまずは海外ゲーム市場のこの盛り上がりを素直に喜びたいと思います。

DBS presents PINCH Birthday Bash!!! - ele-king

 この日ユニットに集まった人びとは、ピンチが2台のターンテーブルの前に立っていた150分間に一体何を期待していたのだろう。やはり、彼がシーンの立役者として関わったダブステップか? それとも、彼の新しいレーベル〈コールド・レコーディング〉で鳴らされる、テクノやUKガラージがベース・ミュージックと混ざり合った音だったのだろうか? ピンチがフットワークを流したら面白いな、なんて想像力を働かせていた人もいたのかもしれない。
 実際に会場で流された音楽は、それら全てだった。
 
 ジャー・ライト、エナに続いたピンチのステージは、テクノの轟音とともにはじまった。そこに重低音が混ざるわけでもなく、リズム・パターンが激しく変化するわけでもなく、ストイックな四つ打が会場を包み込んでいく。
 ピンチがロンドンでダブステップの重低音を体感し、それをブリストルへ持ち帰り自身のパーティを始めるまで、彼はミニマルやダブ・テクノのDJだったのだ。ここ1年でのピンチのセットのメインにはテクノがあるわけだが、自分自身のルーツに何があるかを理解しないうちは、新しいことなんぞ何もできない、と彼は証明しているようにも見える。
 〈コールド・レコーディングス〉から出たばかりの彼の新曲“ダウン”はまさにテクノと重低音、つまりピンチ過去と現在が混ざり合った曲だ。
 先日発売された同レーベルの初となるコンピレーション『CO.LD [Compilation 1] 』は、去年の4月からレコードでのみのリリースをまとめたものになっており、参加しているエルモノ、バツ、イプマン、エイカーという新進気鋭のプロデューサーたちは、自分たちを形作っているジャンルの音を現在のイギリスのシーンに置ける文脈のなかで鳴らしている。
 例えば、イプマンはダブステップの名門レーベル〈テンパ〉や〈ブラック・ボックス〉からのリリースで知られていたが、〈コールド・レコーディング〉から出た彼の曲“ヴェントリクル”では、テクノの要素が前面に押し出されており、意外な一面を知ったリスナーたちを大きく驚かせることになった(イプマンがレーベルのために作ったミックスではベン・クロックが流れていた)。
 「アシッド・ハウス、ハードコア、ジャングル、UKガラージ、ダブステップ以降へと長年続く伝統からインスピレーションを受けた、進化し続ける英国のハードコア連続体の新たなムーヴメントのための出口」が〈コールド〉のコンセプトだが、ピンチ自身と彼が選んだプロデューサーたちは、伝統から学ぶスペシャリストである。このコンピを聴くことによって、それぞれのプロデューサーたちの影響源だけではなく、彼らの目線を通してイギリスのクラブ・ミュージックの歴史までわかってしまうのだ。 

Pinch-Down-Cold Recordings


Ipman Cold Mix


 開始から30分ほどして、流れに最初の変化が訪れる。ピンチは若手のグライムのプロデューサーであるウェンによるディジー・ラスカルのリミックス“ストリングス・ホウ”をフロアに流し込んできた(彼のミックスの技術はずば抜けて高く、色の違う水が徐々に混じっていくようなイメージが浮かぶ。手元にはピッチを合わせてくれたり、曲の波形を可視化してくれるデジタル機器は一切無く、レコードのみだ)。今年に入りアコードをはじめ、多くのDJにサポートされてきたアンセムはオーディエンスたちにリワインドを要求させたが、「まだ早いよ!」といわんばかりにピンチは4つ打へと戻っていく。

Dizzee Rascal-Strings Hoe-Keysound Recordings


 ちなみに、この日流れていたテクノも面白いチョイスだった。「うおー! これDJリチャードの〈ホワイト・マテリアル〉から出たやつだ!」という情報に富んだ叫び声が聞えてきたのだが、DJリチャードはジョーイ・アンダーソンやレヴォン・ヴィンセントと並ぶ、アメリカ東海岸のアンダーグラウンド・シーンにおけるスターだ。彼らが作る曲はときに過剰なまでのダブ処理が施され、リズムにもヴァリエーションがあるため、ベース・ミュージックのシーンでもたびたび耳にすることがある(ペヴァラリストのセットにはしばらくレヴォン・ヴィンセントの“レヴス/コスト”があった)。
 おそらく、アメリカで育った彼らも、スコットランド生まれブリストル育ちのピンチと同じようにベーシック・チャンネルのうつろに響くミニマル・テクノを聴いてきたのだろう。国境を越え、似たルーツを持ち違った土壌で生きるプレイヤーたちが重なり合う現場には驚きと喜びがつきものだが、この夜はまさにそんな瞬間の連続だった。

DJ Richard-Leech2-White Material


 とうとう、この日最初のリワインドがやってくる。ピンチがマムダンスとともに〈テクトニック〉からリリースした“ターボ・ミッツィ”が流れるとフロアが大きく揺れ、DJはレコードを勢いよく、そして丁寧に巻き戻す。だが、直ぐに頭から曲は始まらない。ピンチは拳で自分の胸を叩いて、フロアに敬意を示す。するとイントロのシンセサイザーがじわじわとフロアに流れ始めた。気がつくと、フロアはオーディエンスではなくパーティの熱気を作り上げるDJの「共犯者」で埋め尽くされていたのだった。

Mumdance&Pinch-Turbo Mitzi-Tectonic Recordings


「Yes, I’m」という声ネタとハンド・クラップが鳴り始めた瞬間、フロアの熱気はさらに上がる。それは、ブリストルのニュー・スクールの優等生であるカーン&ニークの“パーシー”を、ふたりが成長する土壌を作り上げたピンチが流すという、感動的な場面でもあった。世代から世代へと時代は嫌でも変わっていくものだが、この日34歳の誕生日だったピンチはその変化を楽しんでいるようだった。
 ラストのダブステップからジャングル、フットワークという流れにいたるまで、フロアをDJはロックし続けた。曲が鳴り止むとピンチはフロアへ合掌し、オーディエンスとゴス・トラッドに拍手の中で150分間のロング・セットは幕を閉じた。

Kahn&Neek-Percy-Bandulu

TechnoGrimeBass Music

V.A.
CO.LD [Compilation 1] 

Cold Recordings/ビート

Amazon HMV Tower

 目下、海外では「YouTubeからインディ・ミュージックがいなくなる?」という議論が起きている。
 YouTubeがサブスクリプション(定額制)サービスをはじめるという話は、ご存じの方も多いだろう。サービス開始にあたって、YouTubeは、メジャーよりも悪い条件での契約( The Worldwide Independent Network (WIN)によれば『フェアは言えない条件』)をインディ・レーベルに強いているというのだ。そして、新しい契約に合意しないインディ・レーベルは、コンテンツを取り下げられてしまう状況にあるという。
 このところ、ほとんどの海外(音楽)メディア──『ガーディアン』から『ピッチフォーク』がそのことを話題にしている。有料化自体を反対する『GIZMODO』のようなメディアもある。
 こうした動きに対して、XLをはじめとするインディ・レーベルは反対の動きを見せ、アメリカのインディ・レーベル連合A2IMは米連邦取引委員会に抗議、契約の不当性を問うているという。また、レディオヘッドのエド・オブライエンは、今回の衝突のもっとも危惧すべきこととして、『ビルボード』に以下のようなコメントを寄せている。「インディ・アーティストとレーベルは、音楽の未来の最先端にいる。彼らを規制することは、インターネットをスーパースターとビッグ・ビジネスのために構築するという危険を孕んでいる」
 たとえば、日本では洋楽が売れなくなった……などとこの10年よく言われる。たしかに旧来の産業構造においては売れなくなったのだろうが、これはインターネットの普及によって消費のされ方が大ヒット依存型から脱却したに過ぎないのではないか、ということを本サイトをやっていると感じる。たとえば、アジカンを好きなマサやんがアルカを聴く──前者はともかく後者のような実験的な音楽は、ネット普及前の世界では、それなりにマニアックな店に行かなければ聴けなかったが、いまでは簡単にアクセスすることができる。ひと昔前なら「売れないから」という理由で店から閉め出された多様性は、この10年、より身近なところに来ている……はずだった。
 何にせよ、インディ・ミュージックのファンにとって、今後の動向が気になるところだろう。(野田)

Clipping - ele-king

 気が抜けているわけでもなく、何かがみなぎっているわけでもない。緊張感はあるけれど、極限まで張り詰めてはいない。いい意味で隙があり、LA風のラフさに溢れている。いまにも倒れそうなのに、パンチだけはスルドいボクサーという感じだろうか。

 キャンプテン・エイハブとしてスラッシュ・ディスコ(?)のようなアルバムを4枚残し、スキリレックスにもヴォーカルで参加していたジョナサン・スナイプスは、マシュー・サリヴァン(『アンビエント・ディフィニティヴ』P246)とネックレイシングというノイズ・ユニットを組んでいたウイリアム・ハトスンと新たにヒップホップ・スタイルのクリッピングを09年に結成し、昨年、キューブリック・マニアを激怒させた『ルーム237』のサウンドトラックをケアテイカーらと共に手掛けた後、MCにデヴィード・ディッグスを得てデビュー・アルバム『ミッドシティ』を配信でリリース。これがハーシュ・ノイズとラップだけで構成されたような内容にもかかわらず、5ヵ月後には〈サブ・ポップ〉との契約が決まったという。

 ハーシュ・ノイズだけというのは言い過ぎだけど、ノイズないしは接触音だけでヒップホップ・ビートを構成し切ってしまうセンスはかなり耳新しいものがあり、仮りにカニエ・ウエストを(テクノでいえば)エイフェックス世代の代表格だとすると、クリッピングはアルヴァ・ノト世代ともいうべき世代の台頭と見なすことができる。徹底的にミニマルで、過剰なほどコンセプチュアル、照り返しのようなものとしてフィジカルは捉えられ、叙情性もあらかたカットされている(『マッドシティ』の“アウトロ”は空耳アワーで「テーマ、何? テーマ、何?」というループに聴こえてしまう)。しかもアナログ盤はフラッシュ音(=クリッピン・ノイズ)を使ったジョン・ケージのカヴァー“ウイリアムズ・ミックス”(59)で終わるほど、アカデミックとの境界も侵食していく(国内盤のボーナス・トラックには意表をついたようなパンク・ナンバーなども)。

 映像センスも同じくでデス・グリップスと共演しても……

 シャバズ・パレセズに続いて〈サブ・ポップ〉からは(『スター・ウォーズ』サーガを無視して)2番目のヒップホップ・アルバムとなる『 CLPPNG 』は……そう、気が抜けているわけでもなく、何かがみなぎっているわけでもない。文字通り、初期衝動は驚くほどの洗練へと向かい、ファンキーだとかグルーヴィーだと言い切れるような仕上がりでもないのに、ヒップホップの文脈には見事に落とし込まれた感がある(キング・Tやギャングスタ・ブーの客演もそれを物語っている)。ヒップホップとして変わったことをやったのではなく、変わったことをやっていたらヒップホップになったという感じに思えてしまうというか。そう、どう考えても『イーザス』よりもイーザンす。

 ノイズの霧を取り払っても、そこには同じものが残っていた。『CLPPNG』の完成度をひと言で表すなら、そういうことになるだろう。ノイズどころか“ドミノーズ”には子どもたちの合唱までフィーチャーされ、トランスを批評的に扱っているような際どいチャレンジもある。シンプルな割りに録音には8ヶ月もかかっているので、おそらくは試行錯誤に明け暮れたアウトテイクスが山と存在しているのだろう。歌詞は主にLAのやさぐれた日常を扱っているようで、先行シングルはコック・ピストル・クリーをフィーチャーした「ワーク・ワーク」。

interview with Yoshida Yohei group - ele-king


吉田ヨウヘイgroup
Smart Citizen

Pヴァイン

RockJazzExperimental

Tower HMV Amazon iTunes

 喉に痛みをおぼえ医者にかかったところ逆流性食道炎のおそれがあるといわれたとき私は若さをうしなった。デュラスの『愛人(ラマン)』の「わたし」が十八歳で年老いたのに較べれば上出来といえるかいえないかわからないがともあれ、好青年が好中年になったと嘯いていたのが名実ともに中高年になったのである。さいきんライヴハウスにとんとご沙汰しているのはそのせいかもしれないと疑ったのであるが、ライヴハウスに行かなければ若手のバンドをまっさきに発見する機会もよろこびもない。

 吉田ヨウヘイgroupをはじめて知ったときも、最初私はジャズのコンボだと思った。〈ピットイン〉の昼の部から叩きあげていこうというような。はたしてそれは彼らの多様な音楽的要素の一部をとればあたらずいえども遠からずであった。バンドをはじめるにあたりラウンジ・リザーズ――この名前を聴いたのはずいぶんひさしぶりだった。というのも、過去10年、いや20年か、主流派から前衛にいたるジャズの古典(原理)回帰によってもっともあおりを食ったのはロフト・ジャズの折衷主義だったと私は思うからである――を模範にしたというだけあって、複数の因子を同居させ異化効果をうみながらそれに違和感をおぼえさせない手腕は、インディ・シーンのなかでも頭ひとつ抜けている。ロックでありジャズであり、ラウンジと室内楽の質感をもち、リーダーであり作詞作曲を一手にひきうける吉田ヨウヘイの歌唱は飾らないものだが女声コーラスが過ぎることでそれは色彩感を増す。そして和製ダーティ・プロジェクターズの異名をとるにいたったファースト『From Now On』につづく『Smart Citizen』は軋みと滲みぶくみのピアノ曲 “窓からは光が差してきた”ではじまり、フルートの前奏が吹き抜ける“ブルーヴァード”の巧緻な組織性を経て、どことなく和的な“アワーミュージック”、エキゾチックなリフレインの“新世界”など9曲を一気に駆け抜けていく。西田修大のギターはいたるところで利いており榎庸介のサックスをはじめ管は曲に厚みをもたらし、盟友・森は生きているの面々を招いた編曲/プロデュースは凝っている。サティとかキンクリとかイースタン・ユース(!)とか、かつて親しんだ音楽を彼の背後に聴くのは加齢のせいばかりとはいえないが、吉田ヨウヘイgroupの音楽は私の胃酸のように逆流性でもなく、音楽の遺産のように過去に縛られていないが、たんに未来を指向しているというほどの自我も幸福感も感傷もない。ただいまがあり音楽があるだろう。

■吉田ヨウヘイgroup
 2012年に結成、ヴォーカル&ギター、アルト・サックスを担当する吉田ヨウヘイをリーダーとするグループ。ギター、ベース、ドラムのほか、テナー・サックス、キーボード、フルート、ファゴットを兼任するメンバーを含む総勢8名の大所帯バンド。2013年に初の全国流通盤CD『From Now On』をリリース、最新作は『Smart Citizen』。吉田ヨウヘイ、西田修大、榎庸介、星力斗、池田若菜、内藤彩、高橋“TJ”恭平、reddamが参加。

とっくにやられていてもいいはずの音楽なのにフォーマットが固定化しているせいでやられていないというイメージ。それを掘りだそうという感じです。 (吉田ヨウヘイ)

私ははじめてお会いするので、バンドのなりたちから教えてください。

吉田:僕は2年前まで会社員だったんです。そのときはギターの西田くんとだけいっしょだったんですけど、音楽を真剣にやりたいと思って会社を辞めたんです。

それは思い切りましたね!

吉田:会社にも「音楽をやります」といって辞めたんです。

どんなお仕事をされていたんですか?

吉田:出版社で記者をやっていました、IT系のビジネス誌でした。

会社勤めしながらバンドをつづける選択肢はなかったんですか?

吉田:ホントに忙しいので、たとえば日曜日を空けてその日に何ヶ月前から予定を入れても、その日にトラブルの類があると仕事を優先しないとマズいので、両立するには向かない仕事でした。

西田さんは昔からの知り合い?

西田修大:僕が大学1年のころに吉田さんは大学院の2年生だったんです。そのときからかわいがってもらっていたんですけど、いっしょにバンドをやろうという話になったのは僕が大学4年のときです。

吉田ヨウヘイgroupがいまのかたちになってきたのはいつくらいですか?

吉田:メンバーは僕が会社を辞めてからひとりひとり誘っていったんです。サックスの榎も途中で入ったんですけど、僕と彼は同じ先生にサックスを習っていて、サックスがもうひとりほしいと思っていたところで仲良くなったので、声をかけたんです。

吉田さんはサックスを習いにいったということはジャズから音楽に入ったんですか?

吉田:もとはロックです。ジャズは途中からで、ちょうどONJQが出はじめた時期に好きになって、サックスをはじめたいと思ったんです。

ONJQというと10年以上前ですね。

吉田:リアルタイムではなかったので聴いたのは7~8年前で、それから2~3年してサックスをはじめたんですね。

榎さんがサックスをはじめられたのはどういうきっかけだったんです?

榎庸介:音楽を意識的に聴きはじめたのはロックからで、そこから年代をたどってビートルズにいって、ザ・フーにいってブルースにいって、最終的にジャズにいきついて演奏したいと思ったんです。ジャズをやるならフロントでサックスを吹いて、ばりばりアドリブをとりたいと思って。サックスをはじめて、大学のジャズ研でやっているうちに「やっぱり誰かに習わないとダメだ」と思って、いまの先生に習いにいったんです。

そこで吉田さんに出会った。

吉田:習いはじめたのは同じ時期で、入って3ヶ月くらいで発表会があって、榎とはそこで会ったんです。そこでしか生徒同士が会う機会はないんですね。

吉田さんはギターは以前からされていたんですよね?

吉田:ギターは中学校からずっとやっていました。

ギターとサックスはまったくちがう楽器ですよね。あまり兼任することはないと思うんですが、なぜサックスだったんですか?

吉田:ONJQを聴いたのと、ラウンジ・リザーズの3枚め(『ヴォイス・オブ・チャンク(Voice Of Chunk)』)にマーク・リボーが参加しているんですけど、それを聴いてびっくりしたんです。ジョン・ルーリーはサックス奏者ですけど、ギタリスト的な感性でサックスを操っている音楽だと思ったんです。

そうかもしれない。

吉田:バンドをやるにあたり、新しいことをやるためにはギターの新しい方法というか道筋を見つけなければいけないと思ったんですけど――

新しい方法というのは、ベイリー的な、あるいはフレッド・フリス的な、ギターという楽器をめぐる方法論の更新ということですか?

吉田:そうです。でもギタリストの感性でサックスを使ったら新しいものが見えてくるんじゃないかと思って、ラウンジ・リザーズの3枚めの音楽性を基本に考えたということと、ONJQが好きになったので、だったらサックスをがんばれるんじゃないかなということですね。

では吉田さんはギターによる作曲とサックスによる作曲、器楽ごとに作曲の方法がちがうと考えていたということですか?

吉田:そうです。ロックにはギタリストが多いしギタリスト的な感性でつくられている音楽だと、ギターをやっているからこそ思うことが多かったんです。サックス奏者のひとがロックをやろうとするのとギター奏者がサックスを演奏してロックをやるのとでは、けっこうちがうだろうなという思いがありました。

いろんな楽器を入れることで音楽の可能性の幅を広げていきたかった?

吉田:サックスとかフルートとか管でロックをやるだけでも、聴いたことがない音楽をつくるためのハードルは下がると思いました。可能性を広げるというより、とっくにやられていてもいいはずの音楽なのにフォーマットが固定化しているせいでやられていないというイメージ。それを掘りだそうという感じです。

とはいえ大所帯になるとバンドの機動力は鈍りますよね。せっかく会社辞めて動きやすくなったのに、メンバー全員に電話して予定を立てるのは大変だったんじゃないですか?

吉田:最初はぜんぜんうまくいかなかったですけど。でもけっこうまじめなひとがそろったというか、時間をともにするうちに仲良くなったというか、そういった感じだったんですね。

ほかのメンバーの方もたまたま知り会ったんですか?

吉田:ドラムの高橋(‘TJ’恭平)くんだけは以前に対バンして、憧れて声をかけたという経緯でして。事情はそれぞれちがうんですけど、ひとりひとり知り合って誘いました。

いまのメンバーにおちついたのは――

吉田:全員がそろったのは今年の1月、レコーディングの2週間前ですね。

吉田ヨウヘイgroupとリーダー名を冠したバンド名にしたのはジャズ的な習わしですか。

吉田:それもあったんですけど、仮でつけたのがそのまま残ったのが大きいです。仕事を辞めるタイミングでそれまでやっていたバンドもやめて、このバンドをたちあげたので、とりあえず名乗っておいて時期が来たら変えようと思っていたんですけど。

西田:もともとはソロでしたから。イメージ的には吉田さんがソロをやるっていうの(で)に俺がギターを弾きにいく、という感じに近かったです。

おふたりともほかのバンドにも参加しているんですか?

榎:固定して活動してるバンドはないんですけど、話が来たらやるかという感じで片足つっこんでいるバンドはいくつかあります。

西田さんは?

西田:俺はこのバンドだけですね。あとよしむらひらくのサポートをずっとやっています。

ラウンジ・リザーズの話がありましたけど、彼らのような音楽をやろうと思っていたわけではないですよね?

吉田:でもそんな感じでしたよ。

西田:あったね。

彼らは80年代のロフト・ジャズのバンドで、いまの20代にはうけなさそうな気がするんですが。

吉田:3枚めが好きなのはめずらしいかもしれませんが、ファースト(『ザ・ラウンジ・リザーズ』)なんかだと菊地(成孔)さんをはじめ、ディスクガイドでよく紹介されていることもあって、わりと知られてると思います。ファーストはけっこうジャズだと思うので、僕らはあそこまでのものは想定していなかったですが、3枚めのジャズかロックかどっちかわからない感は想定していました。

ほかになにか参考にしたレコードなりミュージシャンなり、あげていただけますか。

吉田:僕はダーティ・プロジェクターズがすごく好きなんですよ。ザ・ナショナルとかベイルートとか、ブルックリンのバンドには好きなのが多いですね。

西田:僕はバトルズ、レッチリ、レッド・ツェッペリンですね。

名前を聞くだけでオナカいっぱいというか食い合わせが悪そうですが。

西田:好きな音楽はいっぱいあるんですけど、とくにそれらが好きなのはアンサンブルがいけているところです。

レッチリもそうなんですね。

西田:はい。あのアンサンブルはやはりノリのおもしろさだと思うんです。ジョン・フルシアンテはハネていないけどチャド(・スミス)はハネているとか。単純な熱量と、完成度以前に個々人のプレイヤーが熟達していることで、雑に聴こえるはずのアンサンブルが悪い方向にふれないところが好きですね。

原稿を読み上げるような説明でしたね(笑)。

西田:(笑)そういうことをごちゃごちゃ考えるタイプなんですよ。

榎さんは?

榎:僕は菊地さんから好きで、そこからマイルス・デイヴィスに入っていった感じです。マイルスのいろんなスタイルのバンドをちゃんと自分の色でできる、バンドごとにキャラクターはころころ変えるんだけど芯がとおっている、パーソナリティをちゃんと出せるところが好きです。

どの時期のマイルスがお好きですか?

榎:全部好きなんですよね(笑)。

『カインド・オブ・ブルー』でも『ドゥ・バップ』でも?

榎:『バース・オブ・クール』から『ドゥ・バップ』まで好きです。逆に時期ごとにちがう気がしないんですよね。

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自分が思っているミクロな問題は生活環境が変わっても解決しないし、大きい話でも、PM2.5や異常気象は都市レベルで環境が改善されても避けられない。それでも都市が開発されて、そのなかには幸せなひとや不幸なひとがいっぱいいる。 (吉田ヨウヘイ)


吉田ヨウヘイgroup
Smart Citizen

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『Smart Citizen』はヴォーカルとコーラス、アレンジ、ギターのリフレインのつくり方などもおもしろかったです。

西田:“ブールヴァード”ですか?

“ブールヴァード”もそうですし“新世界”も。あとファゴットとフルートとサックスなどの管の使い方もおもしろかったです。アレンジの主導権は吉田さんですか?

吉田:“アワーミュージック”の管楽器のパートをフルートの子がつくったりだとか、いくつかメンバーに託したところもありますが、基本的に9割方、僕が考えています。

ホーンも含め譜面を書くんですか?

吉田:打ち込んでそれを譜面にして渡します。

弦楽器の編曲も吉田さん?

吉田:はい。

ギター・リフのアイデアも西田さんではなく吉田さんですか?

西田:ファーストの『From Now On』のほうが自分のアレンジが多かったです。今回もアレンジしているところもありますが、ギターのリフレインを考えたのは全部吉田です。

吉田:たとえば“新世界”だと、60年代のジャズのレコードでヴィヴラフォンを早弾きしているのがあって、これをエレキでやるとおもしろいんじゃないかと、西田くんに聴かせました。こういうのつくるよって。

ある曲を聴いて気に入ったフレーズを管なりギターなりに置き換えることはよくありますか?

吉田:ファーストの曲で、ダーティ・プロジェクターズの曲でベースの裏打ちが恰好いいなと思う曲を、ハイハットの裏打ちに応用したりしたことはありますね。全部ではないけどわりとあるかもしれません。

1曲目の“窓からは光が差してきた”でピアノの背後にノイズがありますよね。それは楽音だけではなくノイズも自分たちの音楽には含むという意志のあらわれですか?

吉田:僕はジム・オルークがすごく好きなんですが、ポップスにそういったものがもっとあるべきだとはいい曲ができたのでノイズを入れてもおもしろいかなと思っただけで、絶対ノイズ的なものを入れていくぞという強い気持ちはないです。

アルバムはコンセプトをもとに構築したのでしょうか? それとも曲がたまって自然とこういったかたちをとった?

吉田:曲ができて自然とこうなりました。

なにがしかのコンセプトがあったわけではなかった?

吉田:そうですね。

『Smart Citizen』というタイトルの由来を教えてください。

吉田:さいきん、「Smart City」という言葉がよく使われているなと思っていたんです。僕はIT系の記者だったので。

“Smart City”というのはどういったものですか?

吉田:都市全体の電力使用量を機械で管理して環境配慮型の社会にしようという動きなんです。そういうことを考えているときに、ふと、教育施設などの整った、お金持ちしか住めないような都市に住んだらどうだろうと思ったことがあったんです──いま僕はお金がないので。それで“新世界”の歌詞を書いたんです。自分が思っているミクロな問題は生活環境が変わっても解決しないし、大きい話でも、PM2.5や異常気象は都市レベルで環境が改善されても避けられない。それでも都市が開発されて、そのなかには幸せなひとや不幸なひとがいっぱいいるだろうなと漠然と思ったときに、そういった都市のなかで暮らしているひとを描けば今回のアルバムは成り立つんじゃないかと思いました。一曲から発想して全部通底させた感じです。

歌詞を書くにあたりそういった前提を置いていたということですか?

吉田:いや、それも後づけです。歌詞については全部主人公がちがっているし、一人称で書いているので自然と生活のいろんな場面をきりとった歌詞になっているかなとは思っています。

恋愛の歌うんぬんではなくて日常の断片を描きたかった?

吉田:僕は歌詞をつくるのが苦手で、放っておくと誰にもなんにもつっこまれないような歌詞しか書けないんですよ(笑)。ヤバイっていわれないことだけが目的になっていることがあるんです。

どうしてそうなるの?

吉田:思いを吐露するのが得意じゃないんだと思います。曲を書くひとにはめずらしい、普通のひとなんです(笑)。西田くんとは長いことバンドをやっているので、歌詞については相談していて、どんな事象でも恋愛に絡めて危ない感じを出していこうという話なんかはけっこう前からしていました(笑)。

西田:人間の体温がない歌詞になるんですよ(笑)。だから恋愛にするとなまなましくなって――

吉田:ディテールを膨らませればさらに恋愛っぽさが増すから、もう、そうしようって(笑)。そうしないとなんで書いているのっていわれがちなんですよ。

でも、言葉でなにかを訴えかけるより情景を描くことでイメージが誘われるところに、私は好感をもちましたよ。

吉田:ありがとうございます。

そして『Smart Citizen』には、全9曲の関係のなかで浮かびあがるものもあるとも思うんです。曲順も吉田さんが決められたんですか?

吉田:僕が決めたんですけど、ライヴでやってきた曲順とけっこうちかいです。

西田:最終的にこれしかないなという感じでしたよ。

ライヴを重ねていくうちに吉田ヨウヘイgroupらしさがうまれていったということですか?

吉田:入って1年目のメンバーが多いので、それはまさにそうでした。

唐突ですが、みなさん何歳ですか?

吉田:僕がみんなより上で32で、西田が今年27。それがふたりいて、あとは23~24歳ですね。

吉田さんがお兄さん役ですね。

吉田:どちらかといえば西田がお兄さんで僕はお父さんですかね。

西田:さいきんそれがほんとうに定着してきましたね。

吉田さんのリーダー・バンドは吉田ヨウヘイgroupがはじめてですか?

吉田:過去にもありますよ。

このバンドでつづけていくという決意をもって会社を辞めたんですもんね。

吉田:でもそれはけっこうゆるいところもあって。彼とやっていたバンドがうまくいけばいいなくらいのつもりで会社に辞めるといったら、辞めるまでの期間でうまくいかなくなったんです。

どうしてうまくいなかくなったんですか?

西田:いろんな理由があるけれども、いちばんは僕と吉田さんの問題ですね。

吉田:西田くんが曲を書きはじめて、作曲もいけるかもという感じになってきたんです。プレイヤーとしては僕より彼のほうがレベルが上で、自分がバンドを仕切れなくなってきたというか、やりたいことがうまくとおらなくなって、メンバーも僕より彼の意見を聞きたいという状況にもなってきて。それだったら僕ももう一度自分のやりたいことをやりきらないといけないと思ったんです。

それがどうしてまたいっしょにやることになったんですか?

吉田:僕と彼はすごくちがうと思っていたんです。僕はフォーキーなうたものをやりたくて、西田くんは演奏力があったのでテクニカルな方向にいきたいのだとばかり思っていました。でも、僕がつくる曲で彼がギターを弾かなくなったら、それまでの自分たちの曲はお互いの影響でつくったものだという感覚が強く出てきたんです。

では吉田ヨウヘイgroupになって、西田さんは離れていた期間があったんですね。

吉田:つくってから半年経って入りました。さっきのリフの話もそうなんですが、僕がつくっている曲にしても、西田の演奏力が計算に入っているから成り立つところもあるんです。自分の創作に切り離せないところで彼とつながっていたことに気づいたので、仲違いしたこともあったんですが、もう一回やろうかという話になったんです。

西田:いまは過去最高に関係がいいですよ。

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俺のギターのスタイルは吉田とつくってきたところが大きかったというものあるんです。吉田さんの曲があって、それに要請されてのプレイがあり、逆に俺がこういったギターを弾けるからこういった曲が存在するというところもあり、それが両輪で進んできたのでいっしょにやるのが楽しいんですね。 (西田修大)


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吉田さんは西田さんを当て書きしていたところがあったということですね。

吉田:そうです。西田くんもバンドを辞めて自分で曲を書いたほうがいいと思っていたみたいですが、そういった欲がじつはあまりなかったと気づいたみたいで。ひとの曲で自分が活きるならそれもやりがいがあるんじゃないかというか。

西田:けっきょく前のバンドのころは吉田さんがリーダーで――もちろんいまもそうなんですが、僕はその次にイニシアチブをとるひと、という感じだったんです。そのころは自分がけっこうな役割を担っていると思っていたし、自覚もありました。でも吉田さんがいなくなって自分がリーダーになったときに負う責任とか、作曲にかかる負担とか、逆にそれで得られるものは、想像していたものとはちがっていました。そうした経験があった上でいまのあり方を選択をしたことで、すごく自分の自我が安定したところもあります。あとはやっぱり、俺のギターのスタイルは吉田とつくってきたところが大きかったというのもあるんです。吉田さんの曲があって、それに要請されてのプレイがあり、逆に俺がこういったギターを弾けるからこういった曲が存在するというところもあり、それが両輪で進んできたのでいっしょにやるのが楽しいんですね。

要求に応えつつ提案することでバンドの音楽性ができてきた、と。

西田:そうですね。スタイル自体がそうなんじゃないかと。

ギタリストで影響を受けたひとは?

西田:ジョン・フルシアンテ、彼は好きです。あとレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロ。でも最初に好きになったのはクラプトンとスティーヴィー・レイ・ヴォーンです。

古き良きギター・キッズですね(笑)。

西田:(笑)ギターをはじめたころはクラプトンとレイ・ヴォーンばっかり聴いていて、“クロス・ロード”をずっとコピーしてたんですけど、あるときレッチリを聴いて、すべてを端折っていっきにミクスチャーにいったんです(笑)。でも一貫しているのは、僕はギター・ヒーローだといわれているひとのギターが好きだということ。俺は目立っているひとが好きだし、いちばんやりたいのはなんといってもギターが恰好いいと思える演奏だったりもするんですね。さっきの話のように、楽器をギターに置き換えるというようなこともやっていきたいんですが。

しかし大所帯のバンドではバリバリ弾きまくるのはむずかしい気もしますね。スペースの問題がありますから。

吉田:それで参考にしようとしたのがマーク・リボーのように、ほかの楽器があっても入りこむのがうまいギタリストだったんですね。

西田:あとはネルス・クライン(ウィルコ)やジョニー・グリーンウッド(レイディオ・ヘッド)も参考にしました。

具体的にどういう点が参考になりました?

西田:いらないことをやっているところです(笑)。

吉田:西田はバンドのなかでひとりだけ飛び道具なイメージなんです。しっかり弾いているんだけど、いなくてもいいような感じでいてほしくて。

いなくなるとなにかが大きく削がれる感じ?

吉田:そうです。楽譜に表せる部分では必要ないことをしているんだけど、すごく印象を残すようなギターであってほしい。その参考になるアプローチはいつも探していますね。

『Smart Citizen』は見事にそうなっていると思いますよ。音色や空間性にも気を配った玄人好みのプレイだと思いましたが、その洗練は新人らしからぬといわれたりしませんか?

吉田:意外にそうはいわれないんですよ(笑)。

西田:ライヴをやっているときの俺たちは「荒(粗)い」という意味を含めて「若い」んだと思うんですよ。でも「音楽たのしいよね、やったろうぜ」という溌剌さは表面的にはあまりないかもしれない。

みなさんにとってライヴとスタジオは同じですか? ちがいますか?

吉田:僕はけっこう同じようなモチヴェーションで臨みます。

アルバムの曲を再現するためのライヴということですか?

吉田:スタジオとライヴがぜんぜん別だというひとがいるじゃないですか。それから較べると7割くらいは同じでいいと思っています。録音ってむずかしいなと思うんです。

吉田さんはご自分で録られたりもしていますね。

吉田:自分で録ったり、エンジニアを入れることもありますが、スタジオとライヴのちがいを考えると、ベストのライヴを録音したとしても、CDの音圧で聴いたらいいと思わないかもしれない。それを同じように感動させたり納得させるには、もっと音が必要だったりすると思うんです。ライヴ感があってそのまま録ったようだといわせるにしても、なにか足すものが要るとか。ですから、ライヴの感動をそのままスタジオで再現できればいいとは思うんだけど、そのまま録ってもうまくいかないとは思っています。

西田さんは、ギター・ヒーローとおっしゃいましたけど、ギター・ヒーローにとってはライヴこそ本領を発揮できる場だと思いますが。

西田:正直にいいますけど、俺はギター・ヒーローに憧れて自信があるところもあるんだけど、基本的に弱気なんです。ギターはライヴだからライヴになればすべてを忘れていけ、といえるかといえば、まだいえない。さっき吉田がいったように、ライヴとスタジオのどちらかに比重を置くという考え方からすると、俺らはすごいフラットだと思うんですよ。でも俺はライヴが好きで、リハーサルが好きなんです。

みんなと演奏するのが好きなんですね。

西田:そうみたいです。たとえば、ギターをジャッと弾いてドラムがパンッと入ったときに音圧が来たとか。ライヴでお客さんがもりあがってくれたら、それが意図したところでもそうでなくてもすごいしあわせだとか。このために生きているんだって思うこともあるけど、音楽的にライヴとスタジオを完全に区別するかといえばそうではないですね。

榎さんはいかがですか?

榎:自分は、ひとりでブースでクリックをもらって演奏するよりも、みんなでいっしょに演奏するほうが単純に楽しいですね。

ロック・バンドのなかでのサックスの位置は不安定なところもあると思うんですが、榎さんは吉田ヨウヘイgroupのなかでどのような役割を担っていると考えていますか?

榎:僕らがふつうのロック・バンドとちがうのは、曲をつくってアレンジしている吉田さんが、サックスも演奏するところだと思うんですね。そのなかで自分は西田さんの立ち位置に似たものを意識しているところはありますね。あってもなくてもいいんだけどすごく大事なもの。ほかの楽器のやるべきことをサックスに置き換える、そこにこのバンドの色があり、評価されているところでもあると思うので、もっとそういうサックスを吹けるようになっていけばバンド自体がもっとおもしろくなるんじゃないかとは思っています。

多楽器主義のバンドがさいきん多いじゃないですか。

吉田:そうですね。

そういうバンドと吉田ヨウヘイgroupを較べてどう思いますか?

吉田:これは僕が思うだけかもしれないですけど、管楽器入りのバンドの多くは管楽器を入れることで管楽器によるパーティ感とか多幸感とかをもたらそうとしていると思うんです。でも僕らは管楽器が入ってもあまりしあわせではない(笑)。狙いはけっこう真逆だと思います。

歌詞でもしあわせな状態がやがて終わるだろうというトーンが支配的ですよね。

吉田:歌詞でいうと、ファースト・アルバムを出してセカンドを録る段階になってから、バンドの調子も上向きになって聴いてくれるひとも増えてきて、もしかしたら今後もっと安定して胸を張って音楽ができるかもと思っていたんです。ファーストのときは不安が強くて、その不安定な状態を吐露するとドロドロした歌詞になるだろうと思っていました。いまはメンバー全員足並みがそろっていて自信が生まれ、でもファーストのころの不安ものこっているからこそ恥ずかしくないと思ったんです。ぎりぎり聴けるような温度感というか。不安と自信が共存した心情を吐露できるのは、いい意味でいましかないだろうから、歌詞ではそれを出しちゃおう、と。その意味では楽観的なんですけどね。

歌詞のなかにみえる街あるいは都市や家というものは吉田さんにとってどういうものですか?

吉田:舞台設定を考えるときにまず思いつくもの、ですかね。歌詞を作るためにディテールを詰めていくと話が転がっています。

自分たちは都市生活者だという自覚がある?

吉田:いや、それしか思いつかないんです。松本隆さんや松山猛さんが好きなので、語彙が豊富だったら「一張羅の涙」とか、見たこともない組み合わせのセンテンスをつくってみたいんだけど、なにも思いつかない(笑)。日常的な言葉を設定しているからそうなるんです。

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僕は元ネタがあったほうがハードルが高く感じられるんです。その曲を元にそれを越えるクオリティの曲をつくる。そういった感覚があるので、ゼロからつくらないようにしています。配分でいえば、全体の五分の一くらいを自分から出てくるものにしたい。 (吉田ヨウヘイ)


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曲を書くときって、どういう順番ですか? 詞はたいへんだとおっしゃいますが、メロディや和声進行、リズムなどの要素でどこから先に生まれるという決まりのようなものはありますか?

吉田:曲ごとにちがいます。 “ブールヴァード”であれば、あるレコードからリズムの元ネタをもってきて、その上に乗せる管楽器のパートをまたちがうレコードからもってきて、それが3つか4つたまってあるとき頭の中でバッと混ざったので、それでつくりました。

それらの音楽がつながるのはどういったときなんでしょう?

吉田:自分だったら、このマテリアルならこの時代性から切り離して自分の曲にできるって思うことがあるんです。レコードを聴いていると。このリズム・パターンとシンコペーションだったら自分のものとして吐き出せるな、とか。それが自分の頭のなかで混ざれば、ということですね。

ゼロからつくるより、なにかに対応してつくっていく?

吉田:いろいろ試したんですけど、僕は元ネタがあったほうがハードルが高く感じられるんです。その曲をもとに、それを越えるクオリティの曲をつくる。そういった感覚があるので、ゼロからつくらないようにしています。配分でいえば、全体の五分の一くらいを自分から出てくるものにしたい。

いわゆるオリジナリテイ、クリエティヴィティとは真逆の考え方ともいえますよね。

吉田:レコード屋で働いていることもあって、作曲の原動力にするための曲を聴ける時間が増えたんですよ。そうすると、パクるということを作曲の起点に置いたとしてもネタ切れの心配がない(笑)。

使える/使えないというかつてのDJのような観点で音楽を聴いているということですか?

吉田:感動する音楽で自分と関係ある、感動するけど自分とは関係ない、自分とはまったく関係ない、音楽をこの3つくらいに分けていて、聴くとすぐそのレールに乗るんですよ。

榎さんは吉田さんの考えに同意できますか?

榎:僕はそのような考え方ではないですね。でもなにかを聴いたとき、自分のいきたい方向性からの距離でそれをとりいれるかどうかは決まってくると思うんです。ここまでであれば自分の演奏にもスパイスとしてとりこめるんだけど、これ以上離れるとスパイスにすらならない。その線引きはたしかにあって、その遠さでグラデーションみたいになっているイメージはあります。

西田:たぶん俺は吉田さんとやっている期間が長くて、どこまでが自分本来の考えで、どこまで吉田さんとの作業のなかで出てきたものかわからなくなっている部分はありますね。俺も音楽を聴くときはそういうところがあるし。とくにさいきんはギターに集中しているぶん、「この曲のこのコード進行でこの洗練されぐあいでこのビートの精確さのときに、ギター・ソロがこんなふうに入ってくるとダサいけど、ファズの音色でこういったふうに入れた場合はアリだから、ジミヘンのような音色でサックスの運指を参考にして弾くんだけど、弾き方の粗さとしてはジミー・ペイジで、上に乗るものはスティーリー・ダン」――みたいなことはいつも考えますよ(笑)。

こみいっていましたがわかりやすい譬えでしたね(笑)。

西田:そういったことを吉田といつも話しているんですよ(笑)。

最初にいった、あるべきなのにいまだない音楽を掘り出す方法がそれなんでしょうか?

吉田:「素材としてロックで使われていないけどロック的な感性で聴いてもいいと思えること」をみつけることに僕は興味があって、それをレア・グルーヴやジャズからとれるとうれしいんですね。

西田:積み上げていくほうがむずかしいし、おもしろい。でもそれをさらに越えるものが真っ白な状態から出てきたら、夢のような話だとは思いますけどね。

やっているうちにそういうようなところに来ることもあるんじゃないですか。

吉田:作曲のレベルはそういうことをやっているうちに上がっているとも思うので、何枚かアルバムを経たあとに機会があれば、手法としてまっさらな状態からつくりはじめることもあるかもしれません。

メンバー同士のかねあい、バンド内の関係性の変化もあって、音楽もまた変わっていくかもしれないですもんね。

吉田:音楽のアイデアを言葉できちんと伝えることができるようになりたいと思っているんです。それが自分だから思いつくのではなくて、アイデアそのものがおもしろいからほかのひとが乗れるものであってほしい気がしています。西田とはそれが共有できる感じになってきているので、全員に浸透したらもっと楽しいですね。自分がつくるよりも各パートのひとたちが楽器の特性をふまえつつ曲にしていけたら……そこまでいきたいですね。

東京のインディ・シーンのなかで吉田ヨウヘイgroupと距離感がちかいのはやはり森は生きているですか?

吉田:仲良しだからあまりわからないですね。

ライバル関係ともいえると思いますが。

吉田:たしかに西田くんと森は生きているの岡田(拓郎)くんはすごいバチバチしているし(笑)。

西田:ほんとに(笑)。

なんで?

西田:俺は彼を尊敬しているので、「うれしいよ」という前提で聞いてほしいんですけど、互いにギタリストとして意識できる対象だと思っています。世界が狭いかもしれませんが。たとえば、俺のライヴを彼が観にくると、「今日はプレイ内容としてはアレなんだけどあそこはもうちょっとああしたほうがよかったんじゃない」と意見を言う(笑)。逆に俺が彼らのライヴを観に行って、演奏の後に会うと、「マジおまえには会いたくなかったわ」とかいわれますもんね(笑)。

■ Dum Dum Girls @ Prospect Park 6/21/2014

 6月も毎週のように、たくさんのイヴェントが開催されている。2週目はノースサイド・フェスティバル、3週目は、恒例のマーメイド・パレードがコ二ーアイランドで、メイク・ミュージックNYがNY中でおこなわれ、プロスペクト・パークでは、ダム・ダム・ガールズ、ホスピタリティ、ティーンというインディロック・ファン感激のラインナップのフリーショーが開かれたセレブレイト・ブルックリンという以前レポートした、チボ・マットと同じイヴェントである(ロケーションは違う)。

 公園内では、家族やグループによるBBQがそこかしこである。その良いにおいの間をすり抜けていくと、バンドシェル=ステージが見える。たくさんの人が芝生に寝転がったり、ピクニックをしている。

 現在夏のフェスティバルを慣行中のダム・ダム・ガールズ、コチェラサンフランシスコでは、アート作品のようなコスチュームで登場したが、ファミリーフレンドリーの今回のショーでは、よりコンサバな衣装だった。彼女たちのショーでは、いつも黒ずくめの彼女たちが白で登場したりなど、コスチュームの話題が絶えないのだ。

 ダム・ダム・ガールズのライヴは何度見ても、そして、見るたびに「なんて痛いんだろう」と思う。金髪から黒髪になったディ・ディ・ペニーが歌っているときは、彼女に何かが憑依しているようにも見えるし、歌に何かを封入して、祀り上げているようにも見える。
 今回は、新アルバム『Too True』からの曲がほとんどで、ライヴには、サードギター(男性)が入り、全体的にタイトで凝縮された演奏だった。ライヴの後半では、新作から、アルチュール・ランボーのもっとも有名な詩──「酩酊船」を歌にした“Rimbaud Eyes”を演奏すると、「End of Daze EP」に収録されたザ・スミスのもっとも有名な曲のカヴァー、“There Is a Light That Never Goes Out’”を披露した。
 そのとき、ディ・ディはギターを弾かず、ハンドマイクで歌に集中した。絶望の淵を生きる若者の心情を綴ったモリッシーの悲しい歌を、彼女は、限界の限界まで搾り出すような声で歌う。ザ・スミスの音楽がいまでもアメリカで生きていることを証明するかのように、観客の歓声は半端なかった。
 ラストソングの”Coming Down”を歌い上げたとき、オーディエンスは拍手喝采。野次もあったが、それらは一切無視で、MCもなし。それが彼女たちのスタイルだ。

 ホスピタリティ、ティーンが残念ながら見逃してしまったが、見た人に聞くと、「ティーンは見るのに面白いライヴだった」、と。
 たしかティーンは、ヒア・ウィゴー・マジックの元メンバーがやっているバンドだ。ヒア・ウィゴー・マジックといえば、最近ジョン・ウォーターズがリリースした新しい本(ヒッチハイク本?)でジョン・ウォーターズがたまたまヒッチハイクしたのがツアー中のヒア・ウィゴー・マジックで、彼らが「たったいまジョン・ウォーターズをピックアップした」ツイートしたことで、ジョン・ウォーターズがヒッチハイクしているのがばれてしまった、などなど(著者はブック・サイン会に行った)面白いネタがある。

セットリスト: ダム・ダム・ガールズ @ プロスペクトパーク
6/21/2014
Cult of Love
I Got Nothing
In the Wake of You
I Will Be
He Gets Me High
Too True to Be Good
Are You Okay?
Rest of Our Lives
Bedroom Eyes
It Only Takes One Night
Under These Hands
Rimbaud Eyes
Lord Knows
There Is a Light That Never Goes Out
(The Smiths cover)
Lost Boys & Girls Club
Coming Down

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151