「Low」と一致するもの

Sonoko Inoue - ele-king

 昨年リリースされたアルバム『ほころび』が話題を呼び、第17回CDショップ大賞2025入賞を果たしたシンガー・ソングライターの井上園子。その最新ライヴ映像が公開されている。
 今月3日、青山の「月見ル君想フ」でおこなわれたパフォーマンスで、ギターに長尾豪大(ModernOld)、ベースに大澤逸人、ドラムにgnkosaiを迎えたバンド編成での演奏だ。弾き語りスタイルが印象的だったアルバムとはうってかわり、「ブルーグラスであれば何でも好き」と主張する彼女のまた新たな一面を垣間見させてくれる映像といえよう。
 3月から4月には大阪・京都・兵庫、愛媛、神奈川~東京での公演が控えているので、お近くの方はぜひ。3月19日には『ほころび』のLPもリリースされます。

2月のジャズ - ele-king

Moses Yoofee Trio
MYT

Leiter / 森の響

 アメリカやイギリスに比べてシーンは大きくはないが、ドイツは昔からジャズが盛んな国である。そんなドイツのベルリンから登場したのがモーゼス・ユーフィー・トリオである。モーゼス・ユーフィー・ヴェスター(ピアノ)、ノア・ファーブリンガー(ドラムス)、ロマン・クローブ(ベース)からなるトリオで、2020年に結成して、2023年にミニ・アルバムの『Ocean』をリリース。モーゼスはアフロ・バンドのジェンバ・グルーヴの『Susuma』(2022年)に参加するなど、ジャズに限らないフィールドで活動してきた。ノアはインディ・ロック・バンドのフィベルに参加し、ヒップホップ寄りのミクスチャーなソロ・アルバムを出していて、ロマンはジャズ~ヒップホップ系トラックメイカーのS・フィデリティによるプロジェクトに参加するなど、3名とも伝統的なジャズと何か別の音楽的要素を融合する方向性を持つ。『Ocean』はそんな3人の持ち味が出た作品で、ジャズ、ヒップホップ、ロック、クラブ・サウンドなどが結びついた世界を見せた。3人というコンパクトでシンプルな編成ながら、極めて緊密で濃度の高い演奏を見せ、タイプとしてはロバート・グラスパー・トリオからゴーゴー・ペンギンバッドバッドノットグッドなどへと繋がるサウンドと言える。ノアのヒップホップを咀嚼しながらも極めて自由度の高いドラミングに見られるように、即興演奏の要素もとても強い。そして、アコースティックとエレクトリックの結びつきも強固で、人力ドラムンベースや人力ダブステップ調のナンバーもある。

 2024年にドイツ・ジャズ・プライズのライヴ・アクト・オブ・ザ・イヤーを獲得した彼らは、同年4月にシュトゥットガルト郊外の田園地帯にあるスタジオに入り、10日間かけてレコーディングをおこなった。そして完成したのが、彼らにとって初のフル・アルバムとなる『MYT』である。“Into You” はJ・ディラ的なズレ感のあるヒップホップ・ビートを軸に、メロウネスに富むピアノやスペイシーなSEがフィーチャーされる、MYTらしさを象徴するナンバー。“Ridgewalk” はブロークンビーツとドラムンベースを掛け合わせたようなビートを持ち、ベース・ギターがデジタルなフレーズを奏でるエレクトロ・ジャズ。クラブ・サウンドとも親密なMYTの側面を示している。“Green Light” はアフロビートを咀嚼したようなリズムで、女性MCをフィーチャーして南ロンドンのエズラ・コレクティヴあたりに通じるジャズとR&Bが融合した世界。“Bond”はリリカルなピアノ・ソロに始まり、人力ドラムンベースへと展開していく。南ロンドン勢で比較すればアシュリー・ヘンリーに近いタイプの美しい作品だ。“Push” もクラブ・サウンド寄りのジャズ・ファンクで、アコースティックな演奏ながらデジタルな質感を生み出す点はゴーゴー・ペンギンのアプローチに近い。一方、“Show Me How” はサンプリングも交えたサウンドで、彼らが標榜するアコースティックとエレクトロニックの融合を強力に推進している。


James Brandon Lewis
Apple Cores

Anti

 ニューヨークを拠点に活動するジェイムズ・ブランドン・ルイスは、カリフォルニア芸術大学でチャーリー・ヘイデンやワダダ・レオ・スミスに師事し、ハワード大学にも学んでファイン・アートの修士を獲得したというサックス奏者。2012年からニューヨークに移り住み、デイヴ・ダグラス、ジュシュア・レッドマン、アルアン・オルティス、チャド・テイラー、ブラッド・ジョーンズ、ハンク・ロバーツ、トニー・マラビー、マリリン・クリスペルらと共演してきた。ニューヨークにおいてはマーク・リボー、キップ・ハンラハン、アート・リンゼイらの流れを汲んだ位置にある人物と言え、フリー・ジャズからラテン、ファンク、ヒップホップ、ゴスペルなどのミクスチャー感覚を持つ。自身のトリオやカルテットはじめ、クリフス、オリエンテーション・オブ・ウィなど様々なバンドでも活動するが、2020年代に入ってからはチャド・テイラー、ウィリアム・パーカーらとレッド・リリー・クインテットを結成し、ブルースやゴスペル、ブラス・バンドなどの要素を打ち出した『Jesup Wagon』(2021年)やマヘリア・ジャクソンに捧げた『For Mahalia, With Love』(2023年)をリリースし、特に『Jesup Wagon』はジャズ・レジェンドのソニー・ロリンズからも高く評価されたことが知られる。2024年にはワシントンDCの伝説的パンク・バンドであるフガジのメンバーが結成したザ・メスセティックスと共演し、〈インパルス〉からアグレッシヴなジャズ・ロック・アルバムをリリースしたことも話題となった。

 そんなジェイムズ・ブランドン・ルイスの新作『Apple Cores』は、盟友のドラマーであるチャド・テイラーと、同じく共演経験のあるベーシストのジュシュ・ワーナーによるトリオ・セッション録音。オーネット・コールマンの “Broken Shadows” を除いてオリジナル曲が収められていて、“Five Spots To Caravan” はドン・チェリーとオーネットが1959年に演奏をおこなったニューヨークのライヴ・ハウスであるファイヴ・スポッツにちなんだもの。キャラバンもオーネットの故郷であるテキサスのキャラバン・オブ・ドリームス・パフォーミング・アーツ・センターにちなんでいる。“Remember Brooklyn & Moki” のモキとはドン・チェリーの妻で画家/アーティストであるモキのことで、チェリーに対するインスピレーションがさまざま感じられる。アルバム・タイトルは詩人のアミリ・バラカによるコラムから名づけられており、ジェイムズ・ブランドン・ルイスが影響を受けた先人たちへのオマージュが綴られた作品と言える。“Prince Eugene” はチャド・テイラーがジンバブエの民俗楽器であるムビラを演奏し、ジュシュ・ワーナーがレゲエ/ダブのベース・ラインを奏で、ジェイムズ・ブランドン・ルイスのテナー・サックスが悠久のグルーヴを生み出していく。


Glebe
Gaudí

Daggio

 グリーブはイギリスの新しいジャズ・ユニットで、リーズ音楽院でギタリストのキーラン・ギュンターとピアニストのクリス・ブランドが出会ったことからはじまった。卒業後に本格的に活動をはじめ、パット・メセニーから多大な影響を受けてデビュー・アルバムとなる『Gaudí』をリリースした。演奏はふたりのほかにサックス奏者のドム・プジー、ドラマーのフィリッポ・ガリ、ベーシストのジャック・タスティンが参加。さらに楽曲ごとにソプラノ・サックスとフルートのトム・スミス、ヴォーカリストのタラ・ミントン、クレア・ウィーラー、フランチェスカ・コンフォルティーニがゲスト参加する。アルバム・タイトルはスペインの建築家のガウディを指しているが、彼の故郷であるカタロニア地方の美しい景色を連想させるアルバムだ。

 アルバム全体としては、パット・メセニーとライル・メイズによるパット・メセニー・グループの初期作品を思わせるもので、特に10分を超す “Ruby” はタラ・ミントンのワードレス・ヴォーカルをフィーチャーして天上へと誘う、まるで聖歌のような作品。ミルトン・ナシメントに代表されるブラジルのミナス音楽が持つ教会音楽的な雰囲気もあり、パット・メセニーと交流の深いギタリストのトニーニョ・オルタを彷彿とさせる楽曲だ。“L’lseran” もミナス風の楽曲で、ソプラノ・サックスの澄んだ音色がミナスを代表するサックス奏者だったニヴァルド・オルネラスを想起させる。


Marshall Allen
New Dawn

Week-End

 昨年末にサン・ラー・アーケストラの新作『Lights On A Satellite』を紹介した際に触れたが、バンド・リーダーであるマーシャル・アレンの個人名で初のソロ・アルバムとなる『New Dawn』がリリースされた。メンバーはアーケストラのアレンジャーを務めるノエル・スコットほか、セシル・ブルックス、マイケル・レイなど、ほぼアーケストラのメンバーが務めており、アーケストラのスピン・オフ的な作品とも言える。それ以外ではオーネット・コールマンとの活動で知られ、1980年代にファンクやR&Bを取り入れたコスメティックというバンドで一世を風靡したベーシストのジャマラディーン・タクマと、時代時代によってパンク、ニューウェイヴ、ヒップホップ、ブリストル・サウンド、ジャズなど縦横無尽にコミットしてきたシンガーのネナ・チェリーがフィーチャーされている。ネナ・チェリーはドン・チェリーの娘ということで、マーシャル・アレンとは何らかの接点があったのだろう。

 そのネナ・チェリーが歌うタイトル曲の “New Dawn” は、ストリングスなどをフィーチャーしたムーディーなバラードで、この曲に代表されるように1950年代のムード音楽と古典的なスタイルのジャズの雰囲気をまとっている。“African Sunset” もスペイシーなSEを織り交ぜながらも、スタイルとしては1950年代のエキゾティック音楽やイージー・リスニング。アヴァンギャルドなイメージが先行するサン・ラー・アーケストラだが、実際のところ根底にはこうしたオールド・ジャズやムード音楽などがあったということを改めて示している。途中で即興的なサックス・ソロが登場する “Sonny’s Dance” はサン・ラーのことを指しているのだろうか。また、サン・ラーの代表曲である “Angels And Demons At Play” もやっているが、これがかなりダビーな解釈で興味深い。そうしたなかで、アフロ・キューバン的な風味に富む “Boma” が異彩を放つ。サン・ラーにはあまりないタイプの楽曲で、ギターとストリングスによって緊迫感のあるムードを盛り立てていく。

interview with Allysha Joy - ele-king

 オーストラリアのナーム(先住民アボリジニ名でメルボルンを指す)で、ハイエイタス・カイヨーテと並ぶ現在のソウル・ジャズ・コレクティヴのひとつに30/70がある。そのフロント・ウーマンとして知られるのが、アリーシャ・ジョイだ。ジャズとクラブ・サウンドのニュアンスを掛け合わせたハイレベルな生演奏に、アリーシャ独特のハスキーな歌声で情感を乗せ、“ソウル” として昇華したことで、30/70は瞬く間に豪州の現行ネオ・ソウル・バンドとして存在感を高めた。30/70 のリリースがロンドンのレーベル、〈Rhythm Section International〉だったことで、アリーシャは早くからUKシーンと結びつき、ナームの現行ソウル・ジャズ・シーンを紹介するコンピレーション『Sunny Side Up』(〈Brownswood Recordings〉/2019)でも、自身の曲の提供とともに地元アーティストを世界に紹介する重要な役割を果たした。さらに自らのサポートで、UKジャズ・バンド、ココロコのオーストラリア・ツアーを仕切り、ブライアン・ジャクソンの来豪ツアーではDJとして会場を沸かすなど、様々な才能を発揮しながら自国と世界のアーティストをつなげてきた。2023年には、UKジャズのイベント《Church of Sound》の日本版としておこなわれた《Temple of Sound》の一員としても来日している。

 アリーシャはヴォーカルだけでなく、柔らかなエレピで紡ぐ曲づくりと、詩的センスやメッセージ性にも定評があり、2018年にはソロ名義で、〈Gondwana Records〉から『Acadie : Raw』でデビュー。その後2022年にセルフ・プロデュースのセカンド・アルバム『Torn : Tonic』をリリースし、We Out Hereやモントルー・ジャズ・フェスティバル、ロンドンのジャズ・カフェなど、ヨーロッパとイギリス全土を回り、スナーキー・パピー、PJモートンら時代を象徴するアーティストとライヴ共演するなど、世界的に活動の場を広げている。

 2024年にリリースされた最新サード・アルバム『The Making of Silk』は、これまでの経験を振り返りながら、セルフケアを通じて人との関係性の新たな理解について描かれた作品だ。インスピレーション源となったのは、ベル・フックス、メアリー・オリヴァー、礒田湖龍斎、ハーフィズといった時代も国も越えた世界中の作家、芸術家。例を挙げると、収録の “Dropping Keys” は、イラン(ペルシア)を中心にイスラム世界の人々に愛される14世紀の詩人、ハーフィズの同名の詩から影響を受けたものだが、「Dropping Keys=鍵を落とす」は、気づきを与える、というエンパワーの本質をついた詩で、同曲には、社会が私たちを閉じ込めた檻から自分自身を解き放つ鍵を見つけたら、その鍵を次の人に渡そう、より多くの鍵を落としていこう、というメッセージが込められている。

 アリーシャとのインタヴューで、私が印象に残ったのは「safe」という言葉。本作のコンセプト──セルフケアと人との関係性──を紐解けるような言葉だった。そして来日公演の最初にアリーシャは、オーストラリア先住民の人びとに敬意を表し、共に音楽ができることは恵みであり、それをシェアできるこの場に感謝します、と伝えていた。それを聞いて、インタヴューの言葉がより一層深く心に響いた。

教会では、音楽をすることをコレクティヴとしての在り方だと捉えているんです。私はそのことをずっと信じて大切にしてきました。

『The Making of Silk』をはじめ、あなたの音楽は様々な芸術や文化からインスピレーションを受けていると思うのですが、作品づくりはどんなふうにスタートしていくのですか?

アリーシャ・ジョイ(Allysha Joy、以下AJ):作品づくりにはたいていはじまりがなくて。私は日々の活動のなかで、クリエイティヴなマインドを保とうと努めているからね。ある種の文学を読んだり、詩を書いたり、あるいは違う視点で世界を見たり。だから私の音楽の多くは、詩としてはじまったり、ただ演奏することからはじまったりします。今日は曲をつくろう、みたいな感じで音楽づくりに真剣に取り組むことはないんです。誰かと一緒に作曲するようなときでも、多くの場合はそのずっと前から持っているアイディアの種が自分のなかに浮かんでいたりする。それは自分の納得のいくやり方ですね。

最初のアイディアが生まれてから、次のプロセスとしてメンバーの選択や作品づくりはどう進めていますか?

AJ:自分の意図を理解してくれて、安心できる、そして私のアイディアを表現するだけでなく、彼らも同じように良いアイディアを持っていて、そのプロセスをナビゲートするのを手伝ってくれると人とだけ私は一緒に演奏しています。私たちがやることはすべて共同作業で、つねにお互いに学び合っている。私が書いた音楽であっても、ミュージシャン個人としても納得のいくように新たな解釈ができるようにしたいと私はいつも思っています。なぜなら私がミュージシャンを選んだ理由は、彼らが親友だからというだけでなく、インスピレーションを与えてくれて、アーティストとして素晴らしいと思うから。だからこそ彼らに演奏してほしいし、音楽でも自分自身を表現してほしい。

ところで、10代はどんな音楽を聞いていたんですか?

AJ:ジャズを聴いて育ちました。エラ・フィッツジェラルドやビリー・ホリデイなどのトラディショナルなジャズをたくさん聴いていた。そこから、ソウルクエリアンズの音楽──ディアンジェロ、エリカ・バドゥや、ジル・スコット、ギル・スコット・ヘロンブライアン・ジャクソンの音楽も学びました。あとジョージア・アン・マルドロウも、女性プロデューサーとしても素晴らしくて大好きになった。ミシェル・ンデゲオチェロはずっと大好きなアーティストのひとり。彼女の音楽をたくさん聴いて育ったし、いまも変わらず聴いています。

教会でも歌っていたんですよね。

AJ:そう。よく覚えていることがあってね、私がとても幼かった頃、教会で一緒に歌っていた女性がいたんです。彼女はとてもゴスペルっぽい声をしていてとても憧れていたシンガーだったんです。私は小さい頃から教会に通っていたから、言葉が話せるようになるとすぐに教会で歌うようになったんだけど、10歳のときにそのシンガーと一緒に歌うことができた。それが本当に嬉しくて思い出に残っているんです。子どもの頃って、有名人が誰とかよくわからなかったりするものだけど、自分にとってはその人が有名人だったんですよね。教会では、歌うには若すぎるとか、技量が足りないとかそんな制限は一切なくて、というか、そんな考え自体が存在しません。教会では、音楽をすることをコレクティヴとしての在り方だと捉えているんです。私はそのことをずっと信じて大切にしてきました。

なるほど。その経験が、あなたの音楽のアプローチに影響を与えている気がします。

AJ:そう、間違いなく! ちょうど昨日ライヴ前に「緊張する?」って聞かれたけど、全く緊張しません。それは、私の音楽やアートのアプローチがコレクティヴとしての癒しの表現に基づいているから。私にとっての音楽は、パフォーマンスというよりも表現であって、みんなと一緒に経験することなんです。私は教会で音楽が心の高揚や癒しの源になっていることを目の当たりにしてきたし、教会は安心してそれを感じられる場所だったんです。

たくさんのDJやダンス・ミュージック・シーンの人たちとつながりました。デトロイト・ハウス・シーンのスコット・グルーヴスや、マーセラス・ピットマン、シンガー・ソングライターのkeiyaA、マーク・ド・クライヴ=ロウも。

教会での経験から、デビューまでどんなステップを踏んでいったのですか?

AJ:教会や家で歌うだけでなくて、詩を書くようになりました。私の最初につくった作品は、自分の書いた詩を30/70のメンバーたちのところに持ち込んで発表したものでした。私には何の能力もなかったから、その後独学でピアノとプロダクションを学んだ。初めは自分で表現する手段がなかったから、詩を音楽にするためには誰かとコラボする必要があったし、30/70がその場をつくってくれたんです。

なるほど。30/70とともに歩んできたんですね。

AJ:私の音楽の旅は、30/70のドラマー、ジギー・ツァイトガイストとの出会いからはじまったようなもの。彼は私の恩師で、私のすべての作品で演奏していて、彼を通してたくさんの人と出会いました。今日(1月18日のブルーノートでの公演)のベースのマット・ヘイズ、キーボードのフィン・リーズの2人も30/70のメンバー。あとハイエイタス・カイヨーテのドラマー、ペリン・モスと一緒にアルバムをつくる機会もあったし、ハイエイタス・カイヨーテは、30/70のアルバムをつくるのにも協力していて、私たちのコミュニティの大きな部分を占めています。今夜はナームのトランペッター、オードリー・パウンも出演するし、私たちはいまもとても仲が良くてお互いにサポートし合っている。本当に素晴らしいことだよね。ナームは小さなシーンだけど、一種の大きなグループで、みんなお互いを知っていて本当に協力的です。

最初のソロのリリースのきっかけは?

AJ:〈Northside Records〉のクリス・ギルという人がいるんだけど。彼は私の初めての7インチ・レコードをリリースしてくれた。2曲入りのね。彼と初めて会ったのはいつだったか覚えていないけど、彼はナームでソウルやジャズを演っているアーティスト全員をサポートしてくれている。そしていろんな意味で「Uncle」という存在で本当に素晴らしい人。ずっとずっと私たちと一緒に音楽を愛している人なんです。

それがいまは、ワールドツアー真っ最中ですよね。

AJ:そう。去年初めてバンドと一緒にアメリカ・ツアーをしました。デトロイトに行って、ニューヨークに戻ってきたんだけど、新たな観点でアメリカに興味を持つようになりました。様々な課題がある環境のなかで、人びとがどうやって生き抜いているのか、どうやってクリエイティヴなことを続けているのか改めて考えるようになった。そんな環境のなかでアメリカは素晴らしい芸術をつくり続けている。私にとっては感動的なことです。

アメリカではどんな人とつながりましたか?

AJ:たくさんのDJやダンス・ミュージック・シーンの人たちとつながりました。デトロイト・ハウス・シーンのスコット・グルーヴスや、マーセラス・ピットマン、あと女性プロデューサーでシンガー・ソングライターのkeiyaA、マーク・ド・クライヴ=ロウもだね。

現在はネットを通してアーティストとつながることができますが、ソーシャル・メディアとはどんな付き合い方をしていますか?

AJ:大好きでもあり、嫌いでもある。世界の反対側にいる人ともつながることができるのは本当に素晴らしいことだけど、精神的に良くないことでもあるとも思う。つながるよりつながりが切れしまうこともあるし。自分にとってポジティヴな使い方を学び続けていくのが大事だよね。でも、私はこうして音楽を通じて旅ができている。それってとても幸運なことで、つねに自分に言い聞かせているんです。なかには自分のいる場所から離れられない人もいるし、旅をシェアすることだけでも意味があるかも。例えばこの東京がどんなところかを見ることで、誰かが喜びを感じるかもしれない。

いまの音楽シーンは、男性の体を前提につくられていて、自分の体は男性よりもっと休む時間が必要だったり、もっと精神的にも肉体的にも、安全を感じることが必要な場面がある。

あなたは全て自分自身のマネジメントで活動をしていますよね。そのハードなスケジュールをどうやってコントロールしていますか?

AJ:大事なコントロール方法は、私の場合、瞑想とヨガと自然療法。自分の体の神経系の部分を意識するように努力しています。でも正直に言うと体のことは本当に難しい。ツアーの肉体的なストレスで、生理周期の乱れに悩まされることがあって生理が止まることもあります。それはすごく体に悪いことで、でもそんな現実があることを伝えておきます。でもシーンのなかでこの話題を話すアーティストはほとんどいないし、ピルを使わずいつもの周期を考えながら、どうやってコントロールするか、こういう問題を誰も話していないんです。

そんな現実があるとは、ほとんど私たちは知ることがなかったです。

AJ:これは、女性やノンバイナリーの人たちについて考えて、同じ空間で活動するという心構えがまず前提にある話だけど、私がいちばん苦労しているのは、自分の体のケア。いまの音楽シーンは、男性の体を前提につくられていて、自分の体は男性よりもっと休む時間が必要だったり、もっと精神的にも肉体的にも、安全を感じることが必要な場面がある。自分のニーズを理解して、男性のニーズと違うことをちゃんと話す、そして会話を育むことを心がけています。私も学びながらやってきたことだけど、実際いま、女性やノンバイナリーの人たちもこのニーズの違いに気づきはじめている段階に来ていると思う。だからこそためらわず会話を育むこと。そういう会話をすることで、私自身も男性とは違うアートの形を提供できていることは確かなので。

前作の『Torn : Tonic』でも、全て女性のリミキサーを起用していましたよね。音楽シーン全体の、女性やノンバイナリーの人たちの活躍について、あなたはどんな考えを持っていますか。

AJ:何より話すことが助けになると思います。実際、女性やノンバイナリーの人びとがプロデュースする音楽は、全体の 10% にも満たないと私は知っていたから、私は全く遠慮することなく自分の音楽を突き進んでいます。私の場合、プロデュースをはじめたのは、音楽を通して自分自身を表現したいと思ったから。自分の音楽は男性のつくったものとは同じようには聞こえないだろうし、同じにしたいとも思わない。自分らしくない何かになろうとするのではなく、自分にとって本当に重要だと思えることをすることが、自分を自由に表現することになると思う。世界的にそんな人びとの声や表現がもっと増えることがとても重要だと思います。男性の靴を埋めようとして生きているわけではないのだから。うまく言葉で説明するのは難しいけどね。

次の予定について教えてください。

AJ:次に出すアルバムはほとんどレコーディングが終わっていて、いま最終の仕上げをしているところ。幸運なことに、5月にロンドンのアビー・ロード・スタジオでレコーディングができたんです。じつは『The Making of Silk』と似たようなテーマがたくさんあります。思いやりや愛、そして世界のなかで自分自身を理解するというテーマかな。


interview with Squid - ele-king

 私自身は2010年代後半から隆盛を極めていったサウス・ロンドン周辺のインディ・シーンを筆頭としたUKバーニングに心底興奮し、その音楽の熱をリアルタイムで伝えようと活動したインディ・ロックDJだ。2018年にフォンテインズD.C.の “Hurricane Laughter” を初めてDJでかけたときに当時は認知度が低い中でも生まれたフロアの熱々とした反応は、これから凄いことが起きそうな予感を確信に変えてくれたが、そんな私にとっても、2021年は景色が大きく変わった特別な年だったように思う。頭角を現すアーティストの積極的な折衷性によりサウンド・ヴァリエーションが格段に増え、ポスト・パンクだけのシーンだと捉えることは完全にナンセンスとなり、この界隈の音楽にアクセスする人も多方面から増えたと実感したタイミングだ。そして、この年の希望の象徴として、並べて語られていたのがブラック・カントリー、ニュー・ロードブラック・ミディ、そしてスクイッドだ。この3組はもちろんそれぞれに特徴は違えど、ジャズやクラシック、民族音楽なども含めた積極的な折衷性という共通項を持ち、この年のチャート・アクションでも結果を残した。しかし、ブラック・カントリー、ニュー・ロードは2022年にフロントマンが脱退し、ブラック・ミディは2024年に解散した。それはひとつの転機のようにも感じられたが、しかしスクイッドは留まることのない創作意欲で、自由で実験的なアプローチを保ちながら、新たな音楽の地平を切り拓く。彼らは自身を「イギリスの音楽シーンの一部ではない」と語り、2021年のメンバーのままで進化を続けている。

 そんなスクイッドが3rdアルバム『Cowards』を2025年2月にリリースした。1曲目の “Crispy Skin” を聴けば、眠りから目を開いた瞬間の、眩い太陽を猛烈に覚えるような「アカルイ」音の風景に出会う。これまでの2作品では、火薬庫を積んだ緻密な演奏がもたらす緊張感や迫力に圧倒されるような印象が強かったが、キーボードのアーサーが「前作よりもずっとカラフルで鮮やかなレコード」と説明するように、おとぎ話の世界にリスナーを迷い込ませるような物語性や幻想さをまとった印象が強いサウンドになったように感じる。それは、作品全編を通してストリングスが前面に出たことやローザ・ブルック、トニー・ニョク、クラリッサ・コネリーによるコーラスが加わったことも大きく影響していると思うが、ときに煌びやかでときに壮大でときにエキゾチックな彼らの新しい音がリスナーを心地よくその世界に迎え入れているようだ。一方で、この作品で歌われているテーマは「悪」だという。

 「悪」とは、ときに境界が曖昧な言葉ともなる。今日の世界で起きている「正義」を大義名分とした暴力は言うまでもなく、身近なもの、自分自身についてはどうだろうか? 狂気に満ちた世界で、自分自身はどのように生きていけるのか。「アカルイ」音の中で繰り広げられる「悪」への考察。「何が人間を悪人たらしめるのか」という視点があったとギターのルイは言う。音楽版『ミッドサマー』とも言いたくなるほど、青空に包まれるような聴き心地の中で、人肉を日常的に食べる人間、友好的な殺人犯観光客、現代社会に紛れ込んだクロマニヨン人、14階の高層階から飛び降りるアンディ・ウォーホルのフォロワーなどに出会うだろう。ぜひ、短編小説を読み解くように、社会や自分自身の状況について当てはめるように聴くのをオススメしたい。

人間は、しばしば大きな悪の権化に囲まれているように理解されがちだけど、僕たちが面白いと感じたのは小さな悪という考え方なんだ。

今作『Cowards』の作品テーマが「悪」ということで、全体的に人間の根源的な邪悪性であったり、悪なる心に抗えない虚しさや自分自身への憤りみたいなものが描かれた一貫性のある作品だと感じました。こうしたテーマでアルバムを制作しようとしたきっかけは何だったのでしょうか?

ルイス・ボアレス(Louis Borlase、以下LB):このアルバムでは、悪がスペクトラムであるというアイディアについて考えることに興味があったんだ。僕たちはいままで、場所に特化したようなレコードを作ってきたから。でも今回は、(悪がスペクトラムであるというアイディアを)興味深い視点だと感じた。人間、そして、何が人間を悪人たらしめるのか、そして悪人になるためにどのような決断を下さなければならないのかというアイディアが、面白い視点だと感じたんだ。悪をスペクトラムとして捉える考え方は興味深い。なぜなら、いまこの瞬間を生きるのに、日々の生活の中である程度の悪を経験することなしに生きることは不可能だからだ。人間は、しばしば大きな悪の権化に囲まれているように理解されがちだけど、僕たちが面白いと感じたのは小さな悪という考え方なんだ。そのほとんどは、オリー(・ジャッジ/ヴォーカル、ドラムス)や僕たちが読んだ本やフィクションを通して探求している。この種のストーリー・ラインを読むと、悩まされたり、しばしば緊張したり、不気味だったりするんだ。僕たちをうろたえさせるような何か、尻込みさせるような何か……人生で起こっていることは、僕たちが自分自身でそれを背負うか背負わないかのような形で、ただ何とかしてこれらに対処するということ。ある意味では、そのような悪に対して僕たちがつねに考えていたようなやり方で、対応していくということなんだ。 

アーサー・レッドベター(Arthur Leadbetter、以下AL):それは重要なことだ。でも、このレコードを書きはじめるときに、何か意図して書きはじめたわけではないということも言っておきたい。内容やテーマや形式は、書いていく過程で明らかになっていくものだからね。

いまアーサーが答えてくれたのと関連のある質問になりますが、そうしたテーマに反して、サウンドは全体的にポップさや優美さを感じました。サウンドについて、方向性として決めていたものは何かあったのでしょうか? 「悪」というテーマが先にあったのか? サウンドが先にあって、リリックを作っていく中でテーマが「悪」となったのか。

AL:何から最初に手をつけるかはをはっきりさせるのは、おそらく難しいことだと思う。僕たちは、特に議論をすることなく、わりと本能的に、ごく自然に、一緒に音楽を生み出していると言っていいと思う。顔を合わせて、アイディアを出し合って、音楽を創り上げるという作曲のプロセスを通して、誰が歌詞を担当したとしても、音楽と並行して歌詞を書くことで、そのふたつ(歌詞と音楽)が互いに影響し合うんだ。どちらが先ということはない。もちろん、ときにはどちらかが転換することもあるけど、それは自然なプロセスであり、定義づけることはできないんだ。

LB:(大いに同意する)そうだね。『Cowards』では、アルバム全体を通して歌詞のテーマをより深く理解することに僕たちはとても重きを置いていたように思う。たぶん無意識のうちに、音楽が歌詞の暗さや気難しさ、歌詞の意味するすべての要素にマッチしていないように感じていたんだと思う。その代わりに、前作よりもずっとカラフルで鮮やかなレコードを作るという、逆の方向に進んでいることに気づいたんだ。

“Crispy Skin” はカニバリズムについて歌った曲ということで、暴力に対する感覚の麻痺を示したような楽曲だと解釈しています。現在世界で起きている様々な暴力や戦争にも結び付いてきそうですが、この楽曲のテーマとなったアイディアはどこから生まれたのでしょうか?

LB:“Crispy Skin” は『Tender Is The Flesh』という小説〔編注:アルゼンチンの作家アグスティナ・バズテリカの代表作、2017年〕がもとになっているんだけど、その小説では、他の人間を食べて生きていくというカニバリズムが当たり前の、ディストピアの世界が描かれているんだ。この曲の歌詞の要素は、架空のインスピレーションのようなものだと思う。この曲は、無関心というアイディアと、悪に対してそれを非難したり反応したりしないことがいかに簡単なことかというアイディアを見ているようなものなんだ。自分の周りの悪行について、無関心でいることの方がずっと簡単だ、ということなんだけど、より広義な問題は、どうすればその地点に到達できるのか、人生の中で何が起きなければならないのか、その前にどのような意思決定プロセスを経なければならないのかということだ。僕たちは暴力に対して無感覚になっている。この曲は本に基づいてはいるんだけど、このテーマが歌詞のインスピレーションという点で、このアルバムのキーになっているんだ。

8曲目の “Showtime!” について、途中瞑想的なムードがはじまったと思えば、ファミコンのようなゲーム・サウンドだったり、今作でキーになっているストリングスの音だったり、変わった音も含めていろんな音が入り混じり、転調して激しくフィナーレに向かっていく感じがこれぞスクイッドと言いたくなるような真骨頂さ、スクイッド的サウンドを凝縮させたような特に面白い楽曲だと思いました。この楽曲について、制作でのエピソードがあれば教えてください。

AL:曲の前半もしくは3分の1はすぐにでき上がった。この曲はマーゲイト(イギリス南東部の海辺の町)で書いたんだけど、それ以前に僕らが書いた他の曲とはまったくフィーリングが違っていた。僕たちは、この曲の急激な変化を実験しはじめたんだ。それは本当にスタジオでしか作れないものになった。どこで音楽がストップするのか。 テンポをコントロールするのはひとりだ 。僕たちは、プロデューサーがコントロールできるテンポ・クロックを使って、すべてライヴでやったんだけど、曲が進むにつれて、他の人を巻き込んでテンポをコントロールする必要があったんだ。そう、曲がシフトしていくとき、かなりはっきりしたバンドのグルーヴと曲が、突然、完全にバラバラになってしまうんだ。それまで演奏していた楽器、ティンパニがバラバラになり、テンポは完全に遅くなって、曲はまったく新しいものに進化する。これは僕たちが好んで使う手法で、多様な音楽的影響に対する僕たちの幅広い共通の魅力を反映していると思う。

僕らは、自分たちがシーンの一部だとはまったく思っていない。

ポジ(Pozi)のローザ・ブルックが「additional voices」としてクレジットされていることに驚きました。他にも、トニー・ジョク(Tony Njoku)やクラリッサ・コネリーらがコーラス参加していますが、彼らの参加にはどういった経緯があったでしょうか?

LB:トニーとローザと出会ったのは、僕が “Cro-Magnon Man” の歌詞を書いていたときだったと思う。ヴァース・コーラスを取り入れた歌詞のアプローチを模索してみたかったんだ。 というのも、僕らのスタイルは、どこか物語的で、直線的だったから、いつもやっていることとは違うことをやってみたかった。 僕や他のバンド・メンバーが歌う代わりに、他の人間のコーラスを取り上げるというアイディアはとてもエキサイティングだと感じた。バッキング・ヴォーカリストたちを取り入れてそこを誇張させ、彼らにリードを取らせるんだ。トニーとローザはふたりとも僕たちの親友で、彼らが一緒に歌うとき、ふたりの声が異なる声質でもって全く違うヴォーカルの音色へと導き、ヘッドヴォイスで歌うファルセットのヴァージョンを探求することができるんだ。そして、この白人らしいアンドロジナス(androgynous)な声の語りというアイディアは、この曲にとてもふさわしいと感じた。ふたりのことを知っている僕たちにとっては、明らかだけど、レコードを聴いただけでは、誰が中心になって歌っているのか想像がつかない。そう、クリアに歌っているのは誰かを見分けるのは本当に難しいんだ。彼らが参加してくれたのは素晴らしかったし、この種のヴォーカル・マイクロ・アンサンブルのアイディアは、レコード全体でかなり多く使われているんだ。でもクラリッサの場合は、かなり違っていた。というのも、アントン(・ピアソン/ギター)がアルバム最後の曲 “Well Met” の前半の歌詞を書いていたんだけど、誰の声を使うべきなのか、正確にはわからなかった。何人かの人に相談して、アルバムに参加させるのにふさわしい声の持ち主を友人たちから推薦してもらっていたんだ。でも、誰かがクラリッサを推薦してくれて、やっと決まったんだ。僕たちはすでにクラリッサのアルバムの大ファンで、これはパーフェクトだった。クラリッサのヴォーカルは僕たち男性であるバンド・メンバーの誰の声よりもずっと低いから、ヴォーカルと性別を想定したある種のフリー・スライディング・スケールのようなものかな。でも、その上にトニーとローザの声が重なっているから、クラリッサのヴォーカルが強調されていて、本当に素晴らしかった。

音源制作と比べるとライヴでは制約もあって、少し違うサウンドにもなってくるかと思います。私自身は過去2回の来日ライヴはどちらも鑑賞していて、非常に楽しませてもらいましたが、ライヴ演奏ではどういった意識をもっていますか?

AL:僕らのライヴ・パフォーマンスへのアプローチは、まず曲を覚えて、実際に演奏できるようにする。“Showtime!” について説明したような感じなんだけど、スタジオで使うテクニックには、ライヴではできないものがたくさんあるんだ。それはまず、曲との関係を再構築しようとすることなんだ。何年も前に作ったものをもう一度研究するんだ。今回の場合は曲を書いてからすでに2年が過ぎようとしている。つまり、古い友人、あるいは知っていたけれども疎遠になってしまった友人との友情を再構築するようなものだね。最初は、やらなきゃいけないことを目の前にしてかなり緊張するけど、曲が再びそこにあるとわかると、すべてがごく自然に感じられるし、実はあっという間なんだ。

通訳:たしかに、スクイッドのライヴでは、ステージであまりにも多くのことが起きていて、レコードを聴くのとはまた違った体験ができるのが醍醐味だと思います。まさにテクニックそのものですよね。

昨年のラ・ルート・デュ・ロック(La Route du Rock、フランスのフェス)ではヴァイアグラ・ボーイズ(Viagra Boys)の “Sports” をカヴァーしていてびっくりしました。過去2回の来日公演ではカヴァー演奏はなかったと記憶していますが、そういったカヴァー演奏もたまにおこなっているのでしょうか?

LB:ヴァイアグラ・ボーイズはあのフェスティヴァルに出るはずだったんだけど、皆体調を崩してしまっていたんだ。前日に電話がかかってきて、フランスのラ・ルート・デュ・ロック・フェスティヴァルでヴァイアグラ・ボーイズの代役をやらないかって言われた。僕らはちょうど小規模ツアーからイギリスに帰国するところで、これはやるべきだと思った。僕らの最初のツアーは、ヴァイアグラ・ボーイズのツアーでのサポート・アクトだったからね。それに、ラ・ルート・デュ・ロックは素晴らしいフェスティヴァルだと知っていたし、僕らにとってはいいことでしかなかったから、即答でやるって言ったんだ。でもヴァイアグラ・ボーイズに会えなくてがっかりしている人も多いから、彼らの最も有名な曲をカヴァーしよう、そうすればちょっと面白いんじゃないかと思ったんだ。それで、うまくいくようなやり方を一生懸命考えたんだけど、実際にやってみたら、すごく面白くて、ちょっと馬鹿げた感じもよかった。

スクイッドが様々なジャンルでの音楽的アイディアを高いレヴェルで実験的に次々と接続している様に、個人的にはレディオヘッドっぽさを感じるのですが、そうした比較は本人たちにとって妥当なものでしょうか?

LB:レディオヘッドとの関係はすべて大きなインスピレーションだと思う。バンド内でもレディオヘッドのアルバムに憧れを抱いている人もいれば、レディオヘッドの音楽性を高く評価している人もいる。 皆何らかの形で通ってきているし、その音楽性には感謝している。でも、それは大きなことではないんだ。もっと本質的なことだと思う。インストゥルメンタルを深く追求する手段みたいなものを、僕たちはしばしば共有しているといえるかな。

AL:(レディオヘッドから)影響を受けないのは難しいし、僕らのような音楽を書く上で、ある意味レディオヘッドと比較されないのも難しいと思う。僕はバンドとしてレディオヘッドを聴いたことはないけれど、『Amnesiac』──これがいちばん有名なアルバムではないよね?(とルイに確認する)──を聴いてみたりはしたよ。以前、レディオヘッドは驚異的なバンドで、芸術的なロック、実験的なロックの側面を持ちながら、少し親しみやすいものにしていると人びとが言うのを聞いたことがある。だから、その範囲内で何かをやることになれば、間違いなく彼らのやったことの借りを返すことになると思う。合ってるかな?

LB:うん、的を射ていると思う。レディオヘッドの影響を受けないのは難しい。90年代に登場した彼らは、素晴らしく新しいバンドだったと思う。実験的な試みをはじめただけでなく、トム・ヨークのゴージャスな歌声は、特に彼が物語を語り、あのような曲を書いているときは、恋に落ちないわけがない。でも、どちらかというと、その探求し続けようとする姿勢が、最大のインスピレーションなのかもしれない。彼らが『OK Computer』で達成した現状を受け入れることなく、制作を続行し、『Kid A』を作りあげたことは、とても大胆なことだと思う。それに、そこには影響を受けたものすべてが展示してあるんだ。それはバンドとして重要なことだと思う。

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あるバンドが突然成功したと聞いたとき、僕はいつも最初に思うのは、ああ、彼らは大丈夫かな、ということ。

ブラック・ミディが解散し、イギリスの音楽シーンにおける変わり目みたいなもの──人それぞれ感じ方はあると思うのですが、私個人としては、アンダーグラウンドからではなくウェット・レッグやザ・ラスト・ディナー・パーティのようなよくも悪くも資本からのプッシュを全面に受けたアーティストの台頭、ポスト・パンク的なサウンドの飽和感、バー・イタリアのようなドリーミーで退廃的なサウンドの流行など──も多少感じる昨今ですが、スクイッド自身としては現在のイギリスの音楽シーンをどのように見て、今後どのようにありたいと考えていますか?

AL:一般的に言うと、ザ・ラスト・ディナー・パーティやイングリッシュ・ティーチャーのようなバンドが台頭してきて、彼らのようなバンドがうまくいっているのを見るのは素晴らしいことだと思う。でも、僕たちは、メンバーが様々な影響を受けているバンドだから、イギリスの音楽シーンという考え方は、ある意味、僕たちの活動とは全く別のもののように思えるんだ。

LB:僕らは、自分たちがシーンの一部だとはまったく思っていない。

AL:僕たちは、バンドというグループのように見られるという基本的な意味でのシーンには属していない。僕たちはまた、音楽の広い展望や物事がどのように変化していくかをあまり気にしていないんだ。もちろんUKの音楽、UKのバンド・ミュージックのようなものは、明らかに意識してきたから、それに気づいていないわけではないし、興味がないわけでもない。そうではなくて、僕が言いたいのは、バンドとして、クリエイティヴなコラボレーションとして、それは僕たちの議論には出てこないということなんだ。ある意味その戸口に立ってそこに留まることはとても重要で、それは僕たちの創作活動にとってとても貴重なことだと思う。ライティング・ルームには、自分たちの持っているものをすべて持ち込んで、リハーサルに臨む。でも、クリエイティヴなコラボレーションとしては、それはまったく議論に入らないんだ。

LB:僕もそう思う。だからユーチューブで誰かが、話題のバンドやレーベルのプロジェクトとして、その彼らの音楽を理解することなく紹介しているヴィデオを見るたびに、彼らのことが心配になるんだ。 というのも、多くのバンドを見ていて、1曲がヒットしたアーティストが大成功を収め、熱心なファンを獲得したと思ったら、次の瞬間には名前すら出てこないこともある。彼らは燃え尽き症候群のような問題を抱えていて、異常なレヴェルの不安やセルフイメージの問題、自信のなさを抱えている。つねにそのようなリスクにさらされているんだ。たしかに僕らも何らかの問題を抱えているけど、でも、レーベルの面では、大丈夫。だって自分たちのやりたいことができない環境でバンドが育つことはできないんだから。でも、一発屋になることを推奨され、それで毎晩のように観客を動員しているバンドにとっては、いいことではない。レコード業界全体が、過重労働や強制的な労働を強いることによって、精神衛生上の問題を抱えることになることを、人びとが認識することが重要だと思う。

AL:うん、とてもいい意見だ。あるバンドが突然成功したと聞いたとき、僕はいつも最初に思うのは、ああ、彼らは大丈夫かな、ということだから。

先行曲 “Crispy Skin” のミュージック・ヴィデオは伊藤高志の実験短編映画『ZONE』(1995)をフィーチャーすることとなりました。このコラボレーションにはどういった経緯があったでしょうか?

LB:なぜあの作品をミュージック・ヴィデオに使ったのかを理解するには、アルバムが完成し、ミキシングとプロデュースが終わった後まで遡る。僕たちはこのアルバムが何なのか、どういう意味を持つのか、お互いに話し合って考えたことがなかった。僕たち5人の間で何度も出てきたのは、収録曲はほとんど短編小説のようなもので、悪と臆病というテーマの世界を探っているが、彼らは皆、まったく異なる場所や人々を探求している、という理解だった。だから、すでに存在するスプライト(Sprite、小鬼、ゴブリン)的な意味のヴィデオを、僕らの曲のひとつに再利用するのは楽しいアイディアだと思ったんだ。そしてあのヴィデオには、“Crispy Skin” の歌詞の世界観やテンションにマッチするような、ヴィジュアルにおける偶然の一致がたくさんあるんだ。幸運なことに、僕たちはライセンスを取得し、編集することを許可された。このフィルムは、じつはオリジナルではもっと長いんだ。曲や歌詞を書くことで、すでに存在するものから意味をつむぎ出しているようで、いい反映だと感じたんだ。いままでやったことのなかったことだけど、既存のアートワークをヴィデオという形でライセンスして、1曲目に使うのがいいと感じたんだ。

通訳:まだ生まれてもいないあなたたちが、1995年の作品をどうやって見つけたのでしょう?

LB:いや、生まれてたって(笑)。それは、アルバムのヴィジュアル・ワールドを実現するために、僕たちがどのような段階を踏んでいるかということに尽きるね。チーム全体からどれほどの助けを得られることが多いか。素晴らしいマネージャーもいるし、レーベルもいつも助けてくれるし、周りのみんなが映像の世界を実現するのを助けてくれる。“Crispy Skin” のヴィデオに起用するいくつかの候補はあったんだ。 ただ、同じ世界に属しているようには感じられなかったし、音楽を共鳴させるものでもなかった。しかし最終的に、この特別なフィルムは、本当にただぴったりだと感じたんだ。

カニバリズム自体は恐ろしい価値観でこのリリックも恐ろしい状況が描かれていますが、そういった状況に置かれたときに、誰しもがそれに順応してしまう危うさを感じますか?

AL:それはないと思う。特定の状況下で一般的に人びとがカニバリズムに走る傾向があるかどうかという質問には答えられないけど。もし、人びとが自分でそう思い込むのであれば、それはまったく問題ないと思うけど、そう思う人の方が少ないんじゃないかな。ただこの曲はカニバリズムを実際に経験したというよりも、本が主な参考文献になっているんだ。

LB:うん、この曲はカニバリズムというよりも、もっと無気力についての曲なんだと思う。僕たちが生きている社会での人間関係を通して、僕たちはどの時点で無気力になってしまうのだろう? 自分が知らない人の悪行を目にしたとき、あるいは、自分の人生を難しくしている友人や職場の人がいたりしたとき、誰にでも、そこで困難に直面したり、自分の置かれた状況に制度化されてしまうような転機のようなものがあって、人生には真正面から取り組むべきことが必ずあると思う。そしてそれはときどき、自分を内側から蝕んでいる。でも多くの場合、それらにアプローチしないほうがずっと簡単なんだ。オリーがこの曲で考えているのは、僕たちを臆病にするのは何なのか、ということだと思う。いちばん簡単なことをやらないことなのか? いちばん難しいことに取り組まないことなのか? 僕たちは皆、ときに少し無気力になる傾向があるような気がする。それが問題なんだ。

通訳:このアルバムには自問自答する要素がたくさんあると思います。ここではあえて答えを出さずに、自分で考えるのですよね。

LB:うん、そうなんだ。

『O Monolith』がリリースされた日に『Cowards』のレコーディングを終えたから、いかなるレヴューやプレスの人たちが何を言おうと、自分たちが作りたいもの以外に何も関係なかったし、自分たちが次に何をするのかとすることとは切り離すことができた。

2ndアルバムの『O Monolith』は1stアルバム『Bright Green Field』のリリースから2週間後の2021年のツアー中にスタートしたと前作のプレスリリースで見ました。今作も2022年の11月から2023年4月までの6ヶ月間、『O Monolith』がリリースされる前に制作がはじまったということで、その創作意欲に驚きました。創作意欲を絶えず掻き立てるものはなんなのでしょうか?

AL:アルバムを作るには長い時間がかかる。ときにクリエイティヴになることにも。つまりタイムラインなんだ。このアルバムにかんしては早く完成させることが効果的だった。だから、できるだけ早く作曲を終えて、できるだけ早くレコーディングをしたんだ。というのも、『O Monolith』がリリースされたらツアーに出るだろうし、ツアーに出たら曲を作るのはとても難しいから。純粋に時間管理の問題なんだ。『O Monolith』がリリースされるまであと数ヶ月ある。曲を書こう。クリエイティヴになろう、そして仕上げよう。より時間をかければもっといい仕事ができるんだ。

LB:それに、『O Monolith』の評価に左右されないで進めることができたのは、本当にいい感じだった。というのも、『O Monolith』がリリースされた日に『Cowards』のレコーディングを終えたから。だから、このアルバムについて語る人たちや、いかなるレヴューやプレスの人たちが何を言おうと、自分たちが作りたいもの以外に何も関係なかったし、自分たちが次に何をするのかとすることとは切り離すことができた。ある意味、守ることができたのは本当にいいことだと思った。

AL:まさにその通り。

通訳:やはりレヴューや評価は気になるもので、次の作品にも影響するものなのですか? どちらかというと、これが自分の音楽だ! レヴューなんか気にしない! というアティチュードなのかと……。

LB:それは議論の余地がある。どのように受け止められ、そこからどう進むかについては、人それぞれ異なる問題を抱えていると思う。でも、最終的にこのプロジェクトでよかったと思うのは、僕たち全員が、過去のプロジェクトから、もっと作りたい、もっと探求したいと思う要素を持っていたことだと思う。 そして、やらなければならないとわかっていたこともあったし、本当に変えたいと感じていたこともあった。『Cowards』の曲作りでは、本当にシンプルで凝縮された素晴らしい曲作りを感じられるようなアイディアをいくつか作ろうというところからはじめたんだ。そしてそれは、今回の作品の大きな足がかりになったんだ。

Oneohtrix Point Never - ele-king

 ザ・ウィークエンドが初めて主演を務める映画『Hurry Up Tomorrow』が全米で5月16日に公開される。そのサウンドトラックを(ウィークエンドとともに)手がけているのがワンオートリックス・ポイント・ネヴァーことダニエル・ロパティンなのだけれど、このタイミングでOPNの公式ショップがリニューアルされている(https://opn.terrible.group/)。なかでも人気のシャツ2種──最新作『Again』モティーフの1枚と、ヴェイパーウェイヴ時代の「Ecco」をあしらった1枚──は日本のbeatink.comでも発売されるとのこと。詳細は下記より。

ONEOHTRIX POINT NEVER

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの公式ショップがリニューアル
新たなアーティストグッズの販売がスタート
人気のサッカーシャツ2種はbeatink.comでも予約開始
17曲に参加したザ・ウィークエンドの最新アルバムは10ヶ国以上で1位を記録!

現代の音楽シーンにおいて最も重要なプロデューサーの一人として活躍を見せるワンオートリックス・ポイント・ネヴァーのオンライン・ショップがリニューアル・オープンし、新たなアーティストグッズの販売がスタートした。2024年のAgain USツアーおよびNYCポップアップのみで発売され、即完売したサッカーシャツは、Againデザインの長袖と新デザインのEccoヴァージョンも登場。デザインを手がけたのは前回と同じくFull Kit。サッカーシャツにはEMCミニピンバッチが対1封入される。beatink.comでも本日より予約開始 (3月下旬より順次発送予定)。


Again Soccer Tee
¥17,800円+tax
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=14722


Ecco Soccer Tee
¥17,800円+tax
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=14723

公式オンライン・ショップ
https://opn.terrible.group/

最近では、グラミー賞でのパフォーマンスも話題を集めたザ・ウィークエンドの最新アルバム『Hurry Up Tomorrow』にプロデューサー、コンポーザー、パフォーマーとして計17曲に参加。同アルバムはアメリカ、イギリス、カナダを含め、10ヶ国以上で1位となるなど大ヒットを記録している。またザ・ウィークエンドが初主演を務める映画『Hurry Up Tomorrow(原題)』の公開も話題となっており、ジェナ・オルテガ、バリー・コーガンら豪華俳優陣が集う本作のスコアを、ザ・ウィークエンド (エイベル・テスファイ) とワンオートリックス・ポイント・ネヴァー (ダニエル・ロパティン) が担当することも明らかとなっている。

Hurry Up Tomorrow (2025) Official Trailer

https://www.youtube.com/watch?v=e2PsmMlSP5s

sugar plant - ele-king

 90年代日本のアンダーグラウンド・シーンにおける最重要バンドのひとつ、シュガー・プラントがデビュー30周年を祝ってのライヴをおこなう。対バンは、大阪のLABCRY。サイケデリックかつドリーミーなひと晩になることは請け合いです。

KiliKiliVilla presents sugar plant x LABCRY

新代田FEVER
4月12日
出演:sugar plant、LABCRY
open 17:30 start 18:00
前売 4,000円 当日 4,500円
チケットは19日よりe+にて発売
https://eplus.jp/sf/detail/4275820001-P0030001

sugar plant
1993年に結成、インディー・バンドとして活動を開始。95年に1stアルバム『hiding place』を日米同時リリースし、以後すべての音源は海外でもリリースされている。同年には初のアメリカ・ツアーを行い、翌1996年にはアメリカでレコーディングした曲を含むミニ・アルバム『cage of the sun』をリリースし、同年アメリカでレコーディングと二度目のツアーを行う。そこでレコーディングされた『After After Hours』ではクラブ・カルチャーからの影響を反映した斬新なサウンドでインディー・ファンだけでなくポスト・ロックや音響派など幅広いシーンから支持され、アメリカのカレッジ・チャートで大きな評判となる。次作『trance mellow』ではよりディープなスタイルを追求しクラブ・シーンでも評判となり、この頃から野外レイヴやクラブ・イベントでのライブが増える。1998年リリースの『happy』は前作の『trance mellow』との2枚組でアメリカ発売となり、3度目のUSツアーを行う。2000年エンジニアにDry & Heavy、Little Tempoの内田直之をむかえたアルバム『dryfruit』をリリース。2002年には松本大洋原作の映画『ピンポン』のサントラに「rise」が収録され話題となる。以後、マイペースにライブ活動を継続し2018年ついに18年ぶりのアルバム『headlights』が発売された。


LABCRY
1995年大阪は難波ベアーズにて三沢洋紀を中心に結成。最初はソロ・ユニットとしてのスタートだったが、98年のセカンドアルバムより今のメンバーが集まり、現在の6人編成になる。2005年までに5枚のオリジナルアルバムを発表して活動休止するも、2022年に5枚のアルバムが一挙アナログレコードで再発。それをきっかけに2023年大阪難波ベアーズと東京O-NESTで再結成ライヴを行い、そのまま活動再開となった。現在メンバーは横浜、東京、大阪、京都、岡山、三重と日本各地に住んでいる。ただいま22年ぶりの6枚目のオリジナルアルバムを制作中。

LABCRY are
Hiroki Misawa : Vocal, Guitar
NANA : Guitar, Chorus
Kosuke Shimizu : Bass
GONDHARA (a.k.a Gonzo Murakami) : FREQ-ALPHA-GAMMA-WAVES Kensaku Miyaji : Keyboards
Akihiko Saito : Drums, Chorus

Chihei Hatakeyama - ele-king

 ユーラシア大陸からアメリカ大陸、オーストラリア大陸まで、多くのファンを持つ日本のアンビエント・マスター、畠山地平の新作『Lucid Dreams』がロンドンの〈First Terrace Records〉からリリースされました。マルチ楽器奏者のNailah Hunter、日本のシンガソングライターsatomi magaeらが参加したこのアルバムは、地平のミニマリズムへの追求がまさにドリーミーに結実した内容になっています。地平はこの作品について以下のように発言しています。
「ここ2年ほど、季節の変わり目などに不眠症に悩まされており、そういうときは眠りたいということしか考えられません。しかし、その状態で浅い眠りを繰り返すと、夢を見ているのか見ていないのかわからない、夢を見ていると自覚している『明晰夢』という状態になることがあります。このアルバムは、その浅い眠りの状態にインスピレーションを受けたという側面があります」
「そういう思いで、このアルバムのテーマは、夢の中での時間感覚、現実の時間の流れとは違って突然変わる状況、驚きや懐かしさ、そういった夢の状態を描いたアルバムを作りたかったのです」
 たしかに聴いているとまどろんでくるのです。うとうとしましょう。

Chihei Hatakeyama
Lucid Dreams

First Terrace Records.

Tracklist
A1. Overflowing
A2. Dance Of The Ghosts (feat. Cucina Povera)
A3. Three Dice
A4. End Of Summer
A5. Frozen Flowers
A6. Luftschiff
B1. Wind From Mountains (feat. Nailah Hunter)
B2. Tide
B3. End Of Summer II
B4. Rabbit Stairs
B5. Lucid Dreams

Mark Pritchard & Thom Yorke - ele-king

 近年はザ・スマイルでの活動や日本を含むツアー、ソロ・リリースなどで話題を集めるトム・ヨークと、90年代初頭よりテクノ、アンビエントからベース・ミュージックまで幅広く手がけ活動を続けている電子音楽家、マーク・プリチャード。ふたりのコラボレーション・シングル “Back In The Game” がサプライズ・リリースされている。

 本作 “Back In The Game” はトム・ヨークのソロ・ツアー《Everything》の初日となるニュージーランド公演で初めて演奏され、その後オーストラリア、日本、シンガポールでも披露された。2016年に〈Warp〉からリリースされたマーク・プリチャードのアルバム『Under The Sun』に収録された “Beautiful People” に続く、2度目のコラボ楽曲だ。

 マーク・プリチャードは本作において、世界初のオーディオ・デジタル・エフェクト機器のひとつである名機「H910ハーモナイザー」を用いてトム・ヨークのヴォーカルにデジタル・エフェクトを加えるなど、伝統と革新を両立するかのような趣向を凝らしているとのこと。

 また、ヴィジュアル・アーティストのジョナサン・ザワダによるMVもリリースに合わせ同時公開されている。ジョナサン・ザワダはアナログとデジタル技術を融合させた多面的なアプローチで知られ、マーク・プリチャードとは10年以上にわたってコラボレーションを続けている。

 はたして今回の両者のコラボレーションはどのような形へと発展していくのだろうか。今後もチェックしておきたい。

Artist: Mark Pritchard & Thom Yorke
Title: Back In The Game
Label: Warp / ビート
Format: Digital
Stream:https://markpritchard.ffm.to/backinthegame
Release Date: 2025.03.26

DJ Python - ele-king

 過去には〈Sustain-Release〉の東京編のサテライト開催を手掛け、2023年には野外レイヴを開催するなど、ニューヨーク/東京発、異なる地のダンス・ミュージックの架け橋を担うパーティー・シリーズ〈PACIFIC MODE〉。2025年からはライヴにフォーカスした新シリーズを開始し、初回となる2月25日(火)にはデンマーク出身、ロンドン拠点のヴィオラ奏者アストリッド・ゾンネと石橋英子を迎えるという。

 そして3月11日(火)に渋谷・WWWで開催されるシリーズ第2弾には、ディープ・ハウスのダイナミクスとラテンのリズムを折衷するかのような多くの顔を持つDJパイソンが、ライヴ・セットで登場。待望の新作リリースを引っ提げ、約2年ぶりの来日となる。迎えるは〈BOILER ROOM TOKYO〉と〈ishinoko〉を股にかけ、ハイパーポップからミニマル、アンビエントまでを枠組みを超越して自在に紡ぐ2000年生まれの音楽家・E.O.U。ほか、追加アクトも予定されているようだ。チケットはLivePocketにて販売中。

 なお、DJパイソンは3月15日(土)に渋谷・ENTERにて開催される同シリーズのクラブ・ナイトにも出演。共演には〈悪魔の沼〉よりDr.Nishimuraが同ヴェニューに初登場するほか、食品まつり a.k.a foodman、suimin、YELLOWUHURU(FLATTOP)、Chanaz(PAL.Sounds)、DJ Healthyといった日本各地の実力者たちを迎える。3月14日(金)には大阪・BAR INCにも出演するようだ。いずれも見逃せない。

PACIFIC MODE
LIVE:DJ Python / E.O.U / and more…

日程:2025年3月11日(火)
会場:渋谷WWW
時間:OPEN 18:00 / START 19:00
料金:U23:¥2,500 / ADV:¥4,000 / DOOR:¥4,500
チケット:https://t.livepocket.jp/e/pacificmode

※U23チケット:23歳以下の方が対象のチケットになります。当日受付にて年齢の確認出来る写真付きのIDをご提示下さい。ご提示がない場合は通常前売り価格との差額を頂戴いたします。
more infomation:https://www-shibuya.jp/schedule/018753.php

Bon Iver - ele-king

 前作『i, i』から早6年。ウィスコンシンのシンガーソングライター、ジャスティン・ヴァーノンによるプロジェクト、あるいはライターの木津毅が心の底から愛しているボン・イヴェールがひさびさにアルバムをリリースする。昨秋発表されたEP「SABLE,」の延長にあたるそれは『SABLE, fABLE(漆黒、寓話)』と題され、ヴァーノンの新たな一歩を刻んだ1枚に仕上がっているようだ。4月11日、おなじみの〈Jagjaguwar〉から発売。新曲 “Everything Is Peaceful Love” が2月14日の24時に公開されるようなので、まずはそれを待機しておきたい。

ボン・イヴェール、6年ぶりとなるニュー・アルバム『SABLE, fABLE(セイブル、フェイブル)』を2025年4月11日、Jagjaguwarよりリリース。

2月14日(日本時間:2月15日 0:00)、シングル/ビデオ「Everything Is Peaceful Love」を公開。

Justin Vernonはページをめくり、Bon Iverの次の章、エピローグを始める。4月11日にJagjaguwarからリリースされる『SABLE, fABLE』は、このプロジェクトにとって6年ぶりのアルバムであり、瑞々しく輝くポップ・ミュージックに乗せたラヴストーリーが収録される。昨年秋にリリースされた3曲入りのEP『SABLE,』EPから始まるこのアルバムは、1人が2人になり、闇がサーモン色の美しさに変わり、悲しみが抑えきれない喜びに変わる、9曲からなる新たなサガ(物語)へとシームレスに展開していく。『SABLE,』が、長い間過去を決定づけていた痛みとの決別という希薄で孤独なものであったのに対し、『fABLE』は、パートナー、新しい思い出、おそらくは家族といった、光と目的と可能性に満ちた活気ある未来を見つめている。
4月11日のリリースに先駆けて、Bon Iverは今年のバレンタインデーに「Everything Is Peaceful Love」で正式に『fABLE』時代に突入する。このシングルは、HBOの『How To with John Wilson』の映像作家、John Wilsonが撮影/編集したミュージック・ビデオとともにリリースされる。
Justin VernonとJim-E Stackによってプロデュースされた『SABLE, fABLE』は、主にウィスコンシン州にあるVernonのApril Baseでレコーディングされた。このアルバムのコンセプトは、2.22.22(2022年2月2日)にStackがDanielle Haimを連れてApril Baseに到着したときに生まれた。雪に覆われた数日間、VernonとHaimの声は「If Only I Could Wait 」で交錯した。このデュエットは、「新しい愛の輝きの外では、自分自身の最高のバージョンになる強さを持っていない」という重要な視点を持ったデュエット曲である。
もし『SABLE,』がプロローグなら、『fABLE』は本である。しかし、ひとつになった『SABLE, fABLE』はアルバムであり、おとぎ話ではない。夢中になること、そしてそれがこれらの曲にもたらす強烈な明晰さ、集中力、正直さ、祝福には、紛れもない癒しがあるのかもしれない。「Everything Is Peaceful Love」は、恋に落ちる相手に出会って幸福感に打ちひしがれる男の肖像である。しかし、『SABLE,』の影はまだ迫っており、リセットして再出発しようと努力しても、古い感情が戻ってくることがある。
寓話のように、各トラックは教訓を植え付ける。『fABLE』は、他者や恋人と関わるときに必要とされる無私のリズム、つまり、より良くなるためのペースを見つけるための忍耐強いコミットメント、そして一体感について歌っている。『i,i』や『22, A Million』でJustin Vernonの声を守っていた、回避的で濃密な音の層はもうない。『SABLE, fABLE』は、真実を剥き出しにしたキャンバスなのだ。
Justin Vernonは2月21日、ピーボディ賞(アメリカのテレビやラジオ、ウェブサイトなどの放送作品に贈られる賞)を受賞した放送作家で、ナショナル・ヒューマニティーズ・メダリスト、そしてニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー作家であるKrista Tippett(The On Being Project)との多方面にわたる対談で、『SABLE, fABLE』についてさらに語る予定だ。ニューヨークのブルックリンで開催されるOn Air Festの最後を飾るこの対談で、2人は音楽、癒し、その他の中心的な問題について語り合う。また、インタビューの音声はKCRWのインターネット・ラジオ放送でライブ・ストリーミングされる。

01. THINGS BEHIND THINGS BEHIND THINGS
02. S P E Y S I D E
03. AWARDS SEASON
04. Short Story
05. Everything Is Peaceful Love
06. Walk Home
07. Day One (feat. Dijon and Flock of Dimes)
08. From
09. I'll Be There
10. If Only I Could Wait (feat. Danielle Haim)
11. There's A Rhythmn
12. Au Revoir

【BON IVER/ボン・イヴェール】
ウィスコンシン州出身のシンガー・ソング・ライター、Justin Vernonのソロ・プロジェクトとして始まったBon Iverは、2008年にデビュー・アルバム『For Emma, Forever Ago』をリリース。世界中の音楽メディア、批評家、アーティストから絶大な指示を獲得した。また、同年のEP『Blood Bank』収録曲「Woods」は、後にKanye Westにサンプリングされ話題となる。2011年のセカンド・アルバム『Bon Iver, Bon Iver』はPitchforkで9.5/10点を獲得し、全米2位/全英4位を記録。2012年には、第54回グラミーでは最優秀新人賞と最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム賞を受賞した。2016年のサード・アルバム『22, A Millian』は、全米/全英チャートで2位を記録し、世界各国のチャートで軒並み上位にランクイン。2019年には目下の最新作『i,i』をリリースした。その独創的でユニークなアプローチや表現は、作品を出す毎にメインストリームにまで影響を与える。

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