ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. WWW Xで悪魔の沼ついに沼納め
  2. DERRICK MAY×KEN ISHII ——デリック・メイが恵比寿リキッドルームに登場
  3. lilbesh ramko - Ramko Helvetica | リルベッシュ・ラムコ
  4. Bullion - Nearly | ブリオン
  5. YOSHIROTTEN ──エレクトロニック・ミュージックと共に宇宙と交信しよう。ヨシロットンの展覧会『彼方との交信 — BEYOND EARTH』が今週末より開催
  6. DJ Clent ──ゲットー・ハウス~フットワークの伝説、DJクレントが急遽来日
  7. DJが描く日本のヒップホップ、DJ YAS著『ジャパニーズ・ヒップホップ第二世代——あるDJの証言』刊行のお知らせ
  8. Moodymann ──ムーディーマンの来日公演が決定、今年は東京と京都をツアー
  9. Columns 10月のジャズ Jazz in October 2026
  10. GENTA TANAKA ──ソウルやヒップホップへの想いをデッサン画で表現、釧路のアーティストによる個展が神泉JULY TREEにて開催
  11. ゲーセン波乱万丈の100年史
  12. ジャパニーズ・ヒップホップ第二世代──あるDJの証言
  13. Smith & Mighty ——ブリストル・サウンドのオリジネイター、スミス&マイティが久しぶりにアナログ盤をリリース
  14. interview with Adrian Sherwood and Nightmares On Wax UKダブ・“トーク”・セッション | ――エイドリアン・シャーウッド×ナイトメアズ・オン・ワックス特別対談
  15. heykazmaの融解日記 Vol.11:♩.。.:*・神無月 ♩.。.:*・わっしょいブルベリ〜
  16. Eden Aurelius - Entre Nous / emer ft. Ugnė Uma - You and Me | エデン・オーレリウス、エメル、ウグネ・ウマ
  17. Columns Introduction to P-VINE CLASSICS 50
  18. Helen - Linda's Head | ヘレン
  19. Arab Strap - Half-Told Tales | アラブ・ストラップ

Home >  Reviews >  Album Reviews > Georgia Anne Muldrow- Overload

Georgia Anne Muldrow

Hip HopSoul

Georgia Anne Muldrow

Overload

Brainfeeder / ビート

Tower HMV Amazon iTunes

大前至   Dec 12,2018 UP

 ジャズ・ギタリストの父を持ち、さらにマッドリブと同じくオックスナード出身で、デクレイムというラッパー名で90年代からアンダーグラウンド・シーンにて活躍してきたダドリー・パーキンスが実の夫という、実に濃厚なファミリー・ツリーを持つジョージア・アン・マルドロウ。自身も2006年リリースのアルバム『Olesi: Fragments Of An Earth』で〈ストーンズ・スロウ〉からデビューを果たし、以降、〈ユビキティ〉、〈メロー・ミュージック・グループ〉といった名門インディ・レーベルや自主レーベルから、ソロあるいはダドリー・パーキンス/デクレイムとの共作という形で、これまで実に10枚以上のアルバムをリリースしている。
 自ら歌とラップ、さらにプロデュースも手がけ、ソウル、ファンク、ジャズ、ヒップホップがミックスされたオーガニックなスタイルはデビュー以降一貫しており、LAアンダーグラウンド・シーンの中で常に高い評価を得てきたジョージア。そんな彼女の実力は、エリカ・バドゥ、モス・デフ、プラチナム・パイド・パイパーズ、サーラーといった名だたるアーティストの作品にゲスト参加していることでも、証明されている。ただ一方で、マッドリブが全曲プロデュースを手がけた『Seeds』や、ジョージア・アン・マルドロウ&ダドリー・パーキンス名義でのアルバム『Lighthouse』(余談だが、この作品のアルバム・カヴァーは日本人アーティストの青山トキオ氏が担当)、アイルランドのプロデューサー、クリス・キーズがプロデュースを手がけた前作『A Thoughtiverse Unmarred』など、一部で話題を呼んだ作品はいくつかあるものの、確固たる代表作がこれまでなかったというのも事実である。そんな彼女にとって、〈ブレインフィーダー〉移籍第一弾となるこの『Overload』は、ようやく代表作と呼べることになるであろう作品になるに違いない。
 エグゼクティヴ・プロデューサーとしてフライング・ロータスとダドリー・パーキンスに加えて、アロー・ブラックの名前がクレジットされていることは少々意外でもあるが、それだけの期待が本作およびジョージア自身に込められているということだろう。そして、おそらく彼らがエグゼクティヴ・プロデューサーを務めたことで、ジョージア自身の他に、共にアンダーグラウンドからメジャーまで幅広く手がけているDJカリルやマイク&キーズ、さらにオランダからムードというプロデューサーが起用されるなど、音楽面での広がりが試みられている。とはいえ、本作においても彼女の軸はこれまで同様に、一切ブレていない。例えば、マイク&キーズがトラックを手がけたタイトル曲“Overload”は本作のリード曲でもあるが、フューチャーソウルにも通じる華やかさや透明感を伴いながら、力強い存在感を放つヴォーカルが曲全体を支配し、見事なグルーヴが描き出されている。本作にはダドリー・パーキンスを除いて、際立ったゲスト・アーティストが参加しているわけでもなければ、派手なダンス・チューンが仕込まれているわけでもない。しかし、彼女自身のデビュー作から変わらない圧倒的なヴォーカル力が柱となって、ときおりサラッと挟み込まれる、いい意味での“今っぽさ”が絶妙なスパイスとなって、アルバム全体をより洗練させたものに仕上げている。
 アーティスト同士の人間関係が非常にタイトなLAのシーンの中で、ジョージアが〈ブレインフィーダー〉と繋がるのはごく自然なことではあるが、LAビート・シーンを牽引する〈ブレインフィーダー〉にとって、彼女のソウルフルなサウンドは多少異色にも感じる人も少なくないだろう。今回の成功をきっかけに、〈ブレインフィーダー〉が今後、さらに様々なタイプのアーティストを吸収していくことになれば、LAの音楽シーンがよりエキサイティングなものになっていくに違いない。

大前至