「IO」と一致するもの

 ライヴ会場を救おうというUKの#saveourvenuesは、すでにドネーションが100万ポンド(約1億4千万円)に達したそうだ。これは、アマゾン・ミュージック、ベガーズ・グループ、ソニー、キリマジェロ・ライヴ、DHPなどといった企業からの寄付が大きい。さらに現ロンドン市長サディク・カーンの緊急文化援助基金より、45万ポンド(約6300万円)が追加される見込。
 #saveourvenuesを主宰するMVT(The Music Venue Trust)は、当初、営業できない全国のヴェニューを救うには最低100万ポンド必要だと公表してこのキャンペーンを開始した。ベガーズ・グループ社長のマーティン・ミルズは即「私たちが生き残るにはこれらの場所が必要だ」として「このキャンペーンを完全に支持する」と意思表示している。欧州アマゾン・ミュージックの責任者も「UKのライヴ事業は特別で、UK音楽文化の重要な要素だ」とし、UKの音楽コミュニティのサポートに手応えを感じているようだ。

 これを日本に当てはめて考えると、#saveourspaceに東京都知事がぼんと6千万の援助金、およびいくつかの儲かってる企業もぼんとお金を出して、とにかく音楽は重要な文化なのだから全国のヴェニューを救おうと、そういうムーヴメントが起きているという洗煉された話です(金なら無利子で貸すという冷たい話じゃありません)。

出典(https://completemusicupdate.com/article/mvts-saveourvenues-secures-1-million-in-donations-but-more-needs-to-be-done/

R.I.P. Tony Allen - ele-king

文:増村和彦

 誰よりもオリジナリティを湛えたドラミングで僕たちを踊らせて、何よりも僕たちを解放に導いてくれたトニー・アレンがいなくなってしまった。

 「一部のドラマーは、ソフトに演奏するという意味を知らない、彼らの辞書にないんだ」彼は2016年にそう言った。「私のドラムは派手に盛り上げることだってできる。が、しかしもっと繊細に叩くことだってできる。その音は、まるで川がながれるように聞こえるだろう」

 あらためてソフトに演奏するということに思いを馳せる。
 
 “アフロビート”の向こう側に見える“アフロなビート“の醍醐味のひとつは、ひとりひとりが叩き出すリズムはシンプルながら、それらが絡み合ったとき形成される大きなうねり。ダイナミック且つロジカルで、究極の共同分担作業。もうひとつは、うねり続けることによって得られる高揚感。いつの間にか思考が薄れ、渦のなかにただいるかのような感覚。繰り返しに気持ちよさを感じる経験は演奏しなくても誰しもきっとあると思う。そして、そのビートは多くの場合ダンスと密接な関係を持つ。
 トニーは、ドラムという楽器でこれをひとりでやってしまった。右手、左手、右足、左足にそれぞれドラマーを湛え、それらは絡み合ってタイトにうねる。そして、そのビートは踊らすこと以外のためにはないと語る。トニーが抜けたあとのアフリカ70に、複数のドラマーが必要だったという伝説も頷ける。
 “アフロビート”には大いに“アフロなビート“の影響があると思いたい。その上で“アフロビート”たらしめたのは、もう散々伝えられている通りジャズの影響だった。トニーは、バップ・ドラミングとりわけアート・ブレイキーのドラミングを聴いて、ひとりではなく、まるで複数人で叩いているように聞こえたそうだ。あなたのドラムを初めて聴いた時、全く同じことを思ったよ!
 たしかに、フレーズがバップまんまなところがあるというのはわからないでもないが、そんなことではなくて、キック・スネアもフレージングの一部にしていくバップのアイデアと、“アフロなビート“感覚の融合が、“アフロビート”を生み出す原動力になったのではないか。トニーのドラムは、いつも同じ匂いがしながらも、よく聴くとフレーズの多様さに溢れている。トニーが叩いていると一聴しただけでわかるのに、全く同じフレーズというものがない。覚えたフレーズを使うのではなくて、自在に四肢でフレージングさせていく。しかも、踊らせることを忘れることなく、複雑なことをやっているようで、その実はシンプルだ。これは本当にすごいことだ。あなたのドラムを初めて聴いた時、頭にスネアがバシッとくるだけで面食らったよ!
 もっともジャズに近いけど絶妙に所謂スイングはしないニクいハット、変幻自在で流れるようなスネアワーク、タイトなベードラ、嵐のようなフィルとそのあとのスネア頭一発、どれもしびれ上がるけど、どうやらそれらを操っている部分があることに段々気づいてきた。おでことおへそが、みぞおちの辺りで繋がっている感じ、第三のチャクラとかスポットとかいろいろな呼び方があるのだろうが、そういえば、ブレイキーも、ケニー・クラークも、バップドラムをさらに進化させたエルヴィン・ジョーンズもそこで叩いているような気がしませんか。常にリラックスしながら、たとえ音が小さくても太鼓がとても気持ちよく響き、フィルの瞬間風速は凄まじく、いつまでも止まらないかのようなビートで踊らせてくれる。

 ソフトに演奏するって、こんなことらなんじゃないかなって思いながら書いていたけど、きっとそれだけじゃないですよね。「川のように流れていく(flowing like a river)」ドラム、わかる気もするけど、まだわかっていないことのほうが多い。でも、これからも多くの気づきを与えてくれそうな感じがするのも楽しみで、ずっと聴き続けたくなります。
 60年代フェラ・クティと出会った頃すでに“アフロビート”ドラミングのスタイルを確立していたみたいだけど、フェラ・アンド・アフリカ70の映像を見ると結構ガシガシやっているのも見受けました。“アフロビート”は集団戦。強烈なクティの個性だけを聴く音楽ではなくて、数え切れないほどステージにいるもの全員が合わさって“アフロビート”だ。そしてそれをひとつにまとめあげたのが、トニー・アレンの発信と説得力の塊のようなドラミング。フェラ・クティとトニー・アレンが“アフロビート”を創り出した。
 トニーズベストに挙げる人も多いだろう、トニー・アレン・ウィズ・アフリカ70は、勢いとリラックスが同居して、まさに油の乗った様がかっこいい。"Jealousy"の鍵盤は何度聴いても気持ちよいです。その直後のトニー・アレン・アンド・ザ・アフロ・メッセンジャーズは、めちゃくちゃ渋い。『No Discrimination』というタイトルからしてもっとも勇気を与えてくれる作品のひとつだ。
 円熟味は増し続け、ジャンルを越えた様々なコラボレーションは、僕たちを解放へ向かわせてくれる。オネスト・ジョンズが熱心に再評価し続けたこともあり、南ロンドン勢の生きた影響を感じられる作品たちも興味深い。「でもさ、実はみんな同じものじゃない? ハウスにジャズ云々、いろいろとジャンルはあるものの、要は同じ。誰もがあらゆるものを分け隔てなく聴いている、と。ほんと、ソウルフルな音楽か、リズミックな音楽かどうかってことがすべてなんだしさ」カマール・ウィリアムスのこの言葉は、そのままトニーの軌跡にも当てはまるだろう。
 最近のジャズに還ってきたかのような作品群では信じられないほど四肢の動きが小さいまま、踊らせるのも見受けました。文字通り「to play soft」の極意が最高まで達したかのようなドラミング。

 「ベストであること。それは他の誰かと同じことすることではない。ベストであることとはつまり、他の誰かがそこから学べる、それまでなかった何かを創造し、残すことである」

 たしかに、あなたはいままでもこれからもあまりに大切なものを生み出して、変遷を辿れば辿るほどに、ボクたちに多くの気づきを与えてくれている。
 
 “I wanted to be one of the best — that was my wish,“
 たしかに、あなたは間違いなく最高中の最高だ!

文:小川充

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文:小川充

 ワン・アンド・オンリーという言葉がこれほどふさわしいミュージシャンもいないだろう。アフロ・ビートの創始者であるドラマーのトニー・アレンが4月30日にパリのポンピドゥー病院で亡くなった。先日亡くなったカメルーン出身のマヌ・ディバンゴもそうだが、多くのアフリカ系ミュージシャンにとってパリは活動しやすい町のひとつで、ナイジェリア生まれのトニー・アレンも1980年代半ば以降はパリに居住していた。マヌ・ディバンゴの死因はCOVID-19によるもので、トニー・アレンの死因は今のところ公表されていないので何とも言えないが、現在の状況下ではその可能性も否定できない。
 1940年8月12日生まれのトニーは享年79歳だったが、つい先日もヒュー・マセケラとの共演アルバム『リジョイス』が発表されたばかりで(録音自体は2010年に行われたセッションが基となる)、現役で活躍していた印象が強いだけにこの死はあまりにも唐突である。

 今でこそトニー・アレンはフェラ・クティの盟友で、フェラと一緒にアフロ・ビートを生み出したパイオニアとして語られるが、その評価が定まってきたのは比較的近年のことだ。
 1970年代はフェラ・クティ率いるアフリカ70の一員として、『シャカラ』(1972年)、『エクスペンシヴ・シット』(1975年)、『ゾンビ』(1977年)などフェラの全てのアルバムに参加していたが、当時の欧米や日本ではフェラ・クティ自体がマイナーな存在で、トニー・アレンにまで認識が及んでいなかったというのが実情だ。これまでフェラ・クティはいろいろなタイミングで再評価されてきたが、ちょうど彼が死去した1997年前後のことを振り返ると、当時はジョー・クラウゼルやマスターズ・アット・ワークなどによるアフロ・ハウスが盛況で、そのルーツであるフェラの音楽にもクラブ・ミュージック方面からスポットが当てられていた。彼の息子のフェミ・クティの作品もそうした流れでDJプレイされたり、リミックスされるなどしていたが、同時にフェラ・クティのレコードもいろいろと再発され、さらにトニー・アレンの初リーダー作である『ジェラシー』(1975年)を筆頭に、『プログレス』(1977年)、『ノー・アコモデイション・フォー・ラゴス』(1979年)、ジ・アフロ・メッセンジャースを率いての『ノー・ディスクリミネーション』(1979年)が立て続けにリイシューされた。1999年のことだが、これらは世界で初めてのリイシューで(全てアナログ盤でリイシュー)、企画元であるPヴァイン(ブルース・インターアクションズ)には感謝しかない。それまでナイジェリア盤でしか聴くことができなかった音源なので、私を含めたほとんどの人にとってトニー・アレンの存在を知った瞬間ではないだろうか。『ノー・ディスクリミネーション』を除く3作は全てアフリカ70と録音したもので、フェラ・クティもエレピやサックスで参加していたのだが、フェラ・クティというカリスマがフロントに立たなくてもアフロ・ビートは成立していて、すなわちアフロ・ビートの核はトニーであることを証明していたわけだ。
 フェラ・クティは1980年代に入ると新しいバンドのエジプト80を結成するが、トニー・アレンはそこには参加せず、ソロ・ミュージシャンとして新たなステップを踏み出していく。ナイジェリアを離れてロンドン、パリと移り住み、より広い世界を視野に入れて活動をするようになる。

 これらリイシューが出た頃のトニー・アレンは60歳くらいだったが、そこから一気に再評価の波が広がり、当時はフランスの〈コメット〉というクラブ系レーベルから『ブラック・ヴォイシズ』(1999年)という久々の新作も出した。
 このアルバムはドクトール・Lというプロデューサーと組み、ブロークンビーツやニュー・ジャズとトニーのドラムを交えたものとなっているが、この手のクラブ系サウンドの中においてもトニーの存在感は抜群だった。
 さらに『ブラック・ヴォイシズ』を発展させる形でドクトール・Lらフランスの若手アーティストたちと組んだサイコ・オン・ダ・バスは、アフロ・ビートにフューチャー・ジャズ、ブロークンビーツやエクスペリメンタルなトリップ・ホップなどを融合したようなプロジェクトで、60歳ものトニーがよくこんな新しく実験的なことをやるなという印象を持ったものだ。
 フェラ・クティの息子のフェミ・クティやシェウン・クティは父の遺志を継ぐ正統的なアフロ・ビートをやっているが、彼らよりずっと年長のトニー・アレンのほうが音楽的には柔軟で、アフロ・ビートのオリジネイターという根っこはありながらも、今の新しい音楽や異ジャンルのミュージシャンとも積極的に交信していた。
 ジ・アレンコ・ブラザーフッド・アンサンブルというリミックス・プロジェクト的な企画では、トニー・アレンの生ドラムを介してザ・シネマティク・オーケストラ、カーク・ディジョージオ、ヨアキムなどの作品をリワークしていて、ミュージシャンでありながらリミキサーでもあるという現在の音楽シーンに見事に対応する姿も見せる。
 2002年の『ホーム・クッキング』ではブラーのデーモン・アルバーンやラッパーのタイたちと共演し、そこからデーモンとの交流が深まっていく。そしてデーモンのほかザ・クラッシュのポール・シムノン、サイモン・トングと組んだザ・グッド・ザ・バッド・アンド・ザ・クイーン、デーモンやレッチリのフリーと組んだロケット・ジュース・アンド・ザ・ムーンも始まった。ロケット・ジュース・アンド・ザ・ムーンの同名アルバム(2012年)にはサンダーキャットやエリカ・バドゥも参加して、オルタナ・ロックにアフロ・ビート、ヒップホップやエクスペリメンタルなファンクが混然一体となったまさにミクスチャーな音楽をやっている。
 2014年のソロ・アルバム『フィルム・オブ・ライフ』にはデーモンのほかにマヌ・ディバンゴも参加していて、こちらは比較的オーソドックスなアフロ・ビートをやりつつも、ダブやファンクの要素も混ぜたり、マリの音楽、グナワなどモロッコ音楽やエチオピアン・ジャズなどさらに広範なアフリカ音楽〜ワールド・ミュージックに取り組んでいた。

 意外なところではベーシック・チャンネルのモーリッツ・フォン・オズワルド率いるトリオにも参加し、『サウンディング・ラインズ』(2015年)でダブ・テクノやミニマルにも対応した演奏を行っている。トニーが〈オネスト・ジョンズ〉からリリースした2005年のアルバム『ラゴス・ノー・シェイキング』のミックス及びマスタリングをモーリッツが手掛け、その後もトニーの作品をリミックスするなどした縁から繋がった共演なのだが、当時は「どれだけ間口が広いんだ」と驚かされた。しかし、そうしたところでもアフロ・ビートの痕跡はしっかりと残していて、まさにワン・アンド・オンリーなミュージシャンである。
 ほかにもジンジャー・ベイカー、ジミー・テナー、セオ・パリッシュ、ジェフ・ミルズ、リカルド・ヴィラロボス、セローン、トム・アンド・ジョイ、アワ・バンド、ニュー・クール・コレクティヴ、ニコル・ウィリス、メタ・メタ、ニュー・ギニアなど様々なアーティストと共演やコラボを行ってきたトニー・アレンだが、自身のソロ活動としてはバック・トゥ・ルーツな方向性が近年は目立っていた。
 もともとアート・ブレイキーやマックス・ローチなどアメリカのジャズ・ドラマーに影響を受けてドラムを始め、その後フェラ・クティと出会ってクーラ・ロビトスを結成。最初はジャズやアフリカのハイ・ライフが混ざり合った演奏をしていたが、アメリカにツアーをした際にジェイムズ・ブラウンやスライのファンクの洗礼を受け、それからナイジェリアのラゴスに戻ったふたりはアフリカ70を結成し、アフリカン・リズムにファンク・ビートを融合したアフロ・ビートが生まれた、というのがトニー・アレンの初期のキャリアである。
 そうしたドラムを始めたきっかけとなったジャズのビ・バップやハード・バップ、アフロ・キューバン・ジャズや大らかなハイ・ライフの世界に戻ったアルバムが2017年の『ザ・ソース』で、これはフランスの〈ブルー・ノート〉から出ている。
 同じく〈ブルー・ノート〉からはアート・ブレイキー・アンド・ザ・ジャズ・メッセンジャーズのカヴァーEPも出していて、“チュニジアの夜”や“モーニン”といった往年の名曲を演奏していた。その一方で、昨年リリースされたヌビアン・ツイストの『ジャングル・ラン』にも客演するなど、まだまだ現役バリバリで活躍していた。そしてモーゼス・ボイドやエズラ・コレクティヴなど、トニーの影響を受けた新しいミュージシャンやバンドの活躍が注目を集め、さらなる再評価の波が訪れていた矢先だけに、彼の死は本当に残念でならない。

文:小川充

Sun Araw - ele-king

 逃げ場所はどこにもない。パンデミックによってスウェーデンを除く世界中の国々でSTAY HOMEの日々が続くなか、初夏のように晴れた日の昼から穀物の発酵で生成された揮発性の液体を飲んでサン・アロウを聴く。おつである。
 『ロック経典』という新作だが、彼の出世作『On Patrol』から早10年。ぼさぼさの髪に髭、キャップにギターにTシャツにデニムといういかにもインディな出で立ちの、ロサンジェルスのサン・アロウことキャメロン・ストローンズ、この男がこれまでやってきている音楽は、じつは本来であれば松村正人氏が評価すべきエクスペリメンタル・ミュージックである。
 ところが、おお、なんということだろうか、氏は気に止めていないようなのだ……が、ele-kingではサン・アロウ関連の諸作をこれまで何回もreviewしてきている。キャメロン・ストローンズは、10年前のロスのインディ・シーンにおけるドローンやらダブやらの、どさくさのなかから出現した(ように日本からは見えた)。〈サイケデリック〉というのが彼の作品を語るさいの世界共通キーワードではあるが、その趣向はラヴよりもリー・ペリーに近く、ライヒよりもテリー・ライリーに、ドアーズよりもビーフハートに、ラリーズよりもボアダムスに近い──のだった。
 サン・アロウはどうしてもユーモアを隠せない人だ。レゲエの伝説コンゴスとのコラボ、ニューエイジの伝説ララージとのコラボでも型にはまらずヘンなところに着地する。CANみたいだ。
 新作は本当にCANみたいになっているので驚いた。CANの掲げた「民俗学的偽造シリーズ」ほどの豊富なヴァリエーションはないかもしれないけれど、ユーモアとワールド・ミュージックと実験という観点で言えば両者には近しい感覚がある。試しにCANの名盤とさえ言える未発表曲集『Unlimited Edition』とサン・アロウの『ロック経典』を交互に聴いているのだが、1974年と2020年の作品は時空を越えて繋がっていることが確認できる。聴いている人間が酩酊しているだけのことかもしれないが……

 先日は偉大という言葉さえも白々しいほど偉大なドラマー、トニー・アレンが永眠したが、『ロック経典』もまたアフロビートの恩恵を受けている。また、パーカッショニスト(Jon Leland)とシンセサイザー奏者(Marc Riordan)を有する生演奏(ライヴ)が、『ロック経典』がサン・アロウのカタログのなかの特筆すべき1枚である理由になっていることは疑いようがない。
 『ロック経典』には10分ほどの曲が4曲収録されている。1曲目の“Roomboe”はリズムの間合いが素晴らしいスペース・ファンク・ロックで、親指ピアノに導かれてはじまる2曲目“78 Sutra”では絶妙なポリリズムを展開しながら……顔はシラフだがその内側は宇宙大のトリップをしていますと言わんばかりのオーガニックなグルーヴを創出する。
 3曲目“Catalina”も出だしのリズムが格好いいんだよなぁ。キャメロン・ストローンズのギターの特徴がよく出ているというか、とてもレゲエとは呼べないが、もっともレゲエからの影響を感じさせる曲がこれである。そして今作で最高の曲が4曲目の Arrambe”。じつを言うとぼくは最初にこの曲が好きになったのだった。本作中、はっきりとした反復するメロディがある曲なのだが、これはもう、近年の数多あるクラウトロック解釈のなかでも最高の出来に挙げられよう。後半おとずれる恍惚感はすさまじしく、顔はシラフだがその内側はもはや時空を越えてしまっているようである。
 『ロック経典』はアンビエントではない。リズミックな作品で、ちょっと可笑しいヘンな音が好きでこのGW中に家でヒマしているようだったら、ぜひ聴いてみてください。で、タイトルの意味? わからんです。

Session Victim - ele-king

 レコード屋のセールス文句では「若き日のナイトメアズ・オン・ワックスやDJシャドウを連想させる」と表現され、RAでは「ドイツ人のデュオがダウンテンポへ、これは果たして成功か?」という見出しで語られるが、どんな表現をされようが超マイペースな彼らには関係のないことだ。昨年クルアンビンとリオン・ブリッジズのアルバム『Texas Sun』のリリースも好調なレーベル〈Night Time Stories〉(〈LateNightTales〉の姉妹レーベルでもある)から、ハウス・プロデューサー、セッション・ヴィクティムの最新アルバム『Needledrop』がリリースされた。

 ドイツ人プロデューサーのハウケ・フリーアとマティアス・レーリングのふたりはどちらも大のレコード・ディガーで、DJプレイもヴァイナル・オンリー。アーティストからのプロモ音源もレコードでなければほとんど受け取らない程の徹底ぶり。リリースの大半もいわゆる「ヴァイナル・オンリー」が大半を占め、過去に発表したアルバム3枚はジンプスター主宰のレーベル、〈Delusions Of Grandeur〉からのみ(アルバムはデジタルもリリース)という、とてつもなく限定的な活動を展開するが、エネルギッシュなライヴ・パフォーマンスと、独特なサンプリング・センスと生音を融合させたプロダクションが人気を集め、ハウス/ディスコ・シーンでは安定の位置を確立。今回は一気に舵を切り全編に渡りスローなジャムを展開している。

 11曲中10曲がインスト・トラックで、唯一のヴォーカル曲には98年にリリースされたエールのファースト・アルバム『Moon Safari』にも参加したベス・ハーシュをフィーチャー。“Made Me Fly (Ft. Beth Hirsch)” としてアルバムのリード・トラックに。なるほど、ハウス方面に限らず、エールを聴いていたようなリスナーにとってもどこか共感が持てるような角度をこのアルバムは潜めているかもしれない。というよりも元々彼らの聴いてきた音楽的なバックグラウンドや趣味嗜好がより反映されたアルバムになっているのかもと感じさせてくれる。

 個人的なオススメは6曲目の “Waller and Pierce” と9曲目の “Cold Chills”。ライヴでもベースを担当するマティアス・レーリングのレイドバックなベースラインと絶妙な雰囲気で重なる音のレイヤーは繰り返し聴いても飽きが来ない。アルバムとはいえ全編通して聴いても約30分程度。一周した後に「もう終わり?」と思いながらもう一度頭から針を落とす。(レコードはグリーンカラーのクリアヴァイナル。もちろんCDやデジタル、ストリーミングだってなんでも構わない。)

 トラックのタイトルには「Bad Weather」「Pain」「No Sky」「Cold」など決して明るくポジティヴなメッセージが込められているとは思えないが、楽しいだけが人生じゃない、あえて暗いムード、落ち着いた雰囲気のときに選んでほしい1枚な気がする。

Have a Nice Day! presents Internet SCUM PARK - ele-king

 まさに今日にぴったりなタイトルのニュー・シングル「トンネルを抜けると」を5月6日にリリースする東京のバンド、Have a Nice Day! (通称ハバナイ!)が、その翌々日、5月8日にリリース・パーティを開催する。とはいえもちろんこの状況下だ、会場はオンラインである。まもなく新作の発売を控える COM.A曽我部恵一、KΣITO も出演。チケットは1000円ぽっきりとのことなので、ぜひ参加しよう。

Have a Nice Day! presents Internet SCUM PARK

2020年5月8日(金)
会場:インターネット
open 24:00
start 24:30
※オールナイト公演

チケット:¥1,000

チケット購入は Have a Nice Day! ホームページにてご確認ください
https://habanai.zaiko.io/_item/325864

出演者
Have a Nice Day!
COM.A
曽我部恵一
KΣITO

Clear Soul Forces - ele-king

 2012年リリースのアルバム『Detroit Revolution(s)』によってデビューし、これまで 2nd 『Gold PP7s』、3rd 『Fab Five』を経て、昨年(2019年)には4年ぶりのアルバム『Still』をリリースした、デトロイトを拠点とする4人組のヒップホップ・グループ、Clear Soul Forces。ゴールデンエイジとも呼ばれる90年代のヒップホップから強い影響を受けた、いわゆるブーンバップ・ヒップホップの流れにあり、アメリカ国内だけでなく、ヨーロッパにも根強いファンを持っている彼らであるが、今回リリースされたこのアルバム『ForcesWithYou』をもって、グループとしての活動に終止符を打つという。

 グループのメンバーでもあるメイン・プロデューサーである Ilajide に加えて、7曲目 “Watch Ya Mouth” にもクレジットされている Radio Galaxy が2曲プロデュースを手がける本作だが、Clear Soul Forces のトラックの肝となっているのは、やはりビート(=ドラム)の部分だ。以前、筆者が彼らのアルバム『Fab Five』のライナーノーツを書いた際に、Ilajide のサウンドに関して「A Tribe Called Quest の後期の作品などにも繋がるような、’90年代後半の空気を強く感じる」と表現したのだが、シンプルでありながらも非常に練られたドラムの音色とパターンに、シンセを多用したシンプルな上ネタ、そしてベースのコンビネーションによって極上のファンクネスが生み出されている。同じくデトロイト出身である故 J Dilla からの強い影響を受けているのは、彼らの過去のインタヴューなどからも明らかであるが、さらに4MCによる巧みなマイクリレーが乗ることで Clear Soul Forces にしか出しえないグルーヴが完成している。

 アルバムの幕開けを飾るバトル・チューン “Gimme the Mic” やオリエンタルな雰囲気漂うキャッチーな “Chinese Funk”、PVも公開されているリード曲の “Chip$” など、アルバムの軸となっている曲はいくつかあるが、全体的にはミディアム・テンポが貫かれ、一定のトーンで進んでいくのが実に心地良い。全体のテンションもアゲすぎたり、また極端にレイドバックしたりということもなく、個々のフロウの変化でコントラストをつけながら、彼らの好きなゲームやSF、アニメの世界観が見え隠れし、それと同時にヒップホップへの愛というものがストレートに感じ取れる。

 すでに個々にソロでの作品リリースや客演などを展開しており、今後はソロ活動がますます盛んになっていくであろう彼らであるが、いずれまたリユニオンを果たして、4人での新作を出してくれそうな気がしてならない。そんな思いの残る、まだまだ何かが続きそうな Clear Soul Forces のファイナル・アルバムである。

Oscar Jerome - ele-king

 オスカー・ジェロームといえば、編集部イチオシのアフロ・ジャズ・バンド、Kokorokoのメンバーでもあり、ジョー・アモン・ジョーンズの諸作に参加しているシーンきってのギタリスト。UKジャズのマニフェストとなった『We Out Here』にも名を連ねている。いわばジャイルス・ピーターソンの秘蔵っ子で、トム・ミッシュの「ネクスト」などとも日本では言われているらしい。というのも、ジェロームのソロ作品にはシンガー・ソングライターとしての彼の資質が大きくフィーチャーされているからだ。
 もっともジェロームへの評価の高さは、彼の思わずうっとりしてしまう音楽性とバランスを取るように描かれているその深い歌詞にもあるようだ。先日発表された彼の新曲“Your Saint”は、難民たちが直面している貧困に触発された曲で、先進国の偽善的態度を告発している。
 待望のデビュー・アルバム『Breathe Deep』は7月10日〈Caroline International Japan〉からリリース。これは楽しみ~。


VirtuaRAW - ele-king

 これはすごい試みだ。沖縄のクルー「赤土」の呼びかけによる企画、50組以上の出演するオンライン・フェスティヴァルが5月3日から5月6日にかけて開催される。その名も「VirtuaRAW」。北海道から沖縄まで、全国15のクラブやライヴハウスが協働した取り組みで、合計40時間にもおよぶ配信を決行する。一度チケットを購入すれば、開催中いつでも閲覧可能とのこと。出演者などの詳細は下記を(すごいメンツです)。危機に瀕しているクラブやライヴハウス、アーティストたちによるすばらしい連帯、果敢なチャレンジを応援しよう。

VirtuaRAW (バーチャロー)
~ 40時間配信!音楽フェスティバル ~

日時:
2020/5/3 (日) 13:00 〜 5/6 (水) 5:00

視聴(チケット)料金:
[前売] ¥567- [当日] ¥1,000-

★チケット購入・イベント詳細はこちらから★
https://akazuchi.zaiko.io/_item/325705

北は北海道から南は沖縄まで、全国15会場のクラブやライブハウスが連動し、50組以上の豪華出演者を迎えて40時間に及ぶライブ配信を行います。

現在日本全国のクラブやライブハウスが自粛により存続の危機に直面している状況の中、それに直結するアーティストやクリエーターも窮地に追い込まれています。

また、音楽に関わらずさまざまな業種や人々が危機に直面している中でも創造的なモノを共有し、皆んなで協力してバトンを繋ぎ、家に居る時間はみんなで楽しんでほしい、という思いから「VirtuaRAW」と題して、オンライン音楽フェスティバルを3日間に渡って初開催いたします。

各地に居るアーティストが配信という形で集結する事が可能となり、視聴者もチケットを一度購入すれば開催中はいつでも閲覧可能となっています。

離れていても、きっと音楽やカルチャーを共感できる事を信じ、未知なる未来へのチャレンジへと一歩足を踏み出すため、今回の初開催にとどまらず、今後も開催していく予定です。

[会場一覧]

北海道旭川 / Club Brooklyn
東京 / Dommune
東京中野 / heavysick ZERO
東京町田 / FLAVA
神奈川江の島 / OPPA-LA
山梨 / 一宮町特殊対策本部
名古屋 / TRANSIT
京都 / OCTAVE KYOTO
大阪 / TRIANGLE
岡山 / 三宅商店
山口 / のむの
福岡 / Kieth Flack
沖縄 / output
沖縄 / 熱血社交場
石垣 / GRAND SLAM

[出演者 (A to Z)] ※追加出演者発表あり

■LIVE
赤土・伊東篤宏・孫GONG・鶴岡龍 a.k.a. LUVRAW・三宅洋平・B.I.G.JOE・BUPPON・Campanella・CHOUJI・cro-magnon・DAIA・DLiP RECORDS・electro charge・FUJIYAMA SOUND・HIDADDY・HIDENKA a.k.a. TENGOKUPLANWORLD・HI-JET・HI-KING TAKASE・I-VAN・ifax!・J-REXXX・K-BOMB・KOJOE・KOYANMUSIC & THE MICKEYROCK GALAXY・KURANAKA a.k.a.1945 feat. Daichi Yamamoto. Ume・LibeRty Doggs・MADJAG・MAHINA APPLE & MANTIS・MONO SAFARI・m-al・NORMANDIE GANG BAND・OBRIGARRD・OLIVE OIL & POPY OIL・OMSB & Hi`Spec・OZworld a.k.a. R`kuma・RICCHO・RITTO・RHIME手裏剣・SHINGO★西成・SMOKIN`IN THE BOYS ROOM・stillichimiya・Tha Jointz・U-DOU & PLATY・Zoologicalpeak

■DJ
光・BIG-K・Daichi・HI-C・K.DA.B・SINKICHI・SYUNSUKE・POWBOYZ・YASS fr POWER PLAYERZ・UCHIDA ・VELVET PASS ・4号棟

[INFOMATION]
Instagram @virtuaraw
Twitter @RealVirtua
Facebook https://www.facebook.com/events/2871947506225903/

ハッシュタグ
#VirtuaRAW #バーチャロウ #オンラインフェス #生配信

主催:AKAZUCHI

Mahito The People - ele-king

 コロナ禍を受け、各地でさまざまなアイディアが試行錯誤されるなか、マヒトゥ・ザ・ピーポーによる無観客ライヴの配信が決定した。これは、もともと5月14日に WALL&WALL で予定されていた大友良英との公演の中止を踏まえての試みで、同日20時より開催される。CANDLE JUNE によるろうそくに囲まれて、弾き語りのパフォーマンスが披露される模様。配信サイトはこちら


マヒトゥ・ザ・ピーポー 配信ライブ開催のお知らせ

5月14日(木)、表参道 WALL&WALL で開催予定の「にじのほし15『one×one』大友良英×マヒトゥ・ザ・ピーポー」公演は、新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、残念ながら一旦中止とさせていただきます。払戻の対応に関しての詳細は販売サイト Peatix より個別にご案内いたします。

これを受けて、同会場よりマヒトゥ・ザ・ピーポーによる無観客の電子チケット制ライブ配信を開催することになりました。
会場には日本のキャンドルアーティストの第一人者、CANDLE JUNE によるキャンドルの炎を囲んだ弾き語りライヴをお届けします。
普段のバンドサイドでの烈しさに内包された繊細さが顕になる、うたの世界とキャンドルの静かに燃え上がる美しいコラボレーションにご期待ください。

[ライブ詳細]
にじのほし16
Mahito The People × CANDLE JUNE "one" live streaming

出演:マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)
装飾:CANDLE JUNE (キャンドル)
2020年5月14日(木)
配信開始20:00より
TICKET:¥1,000
配信サイト:https://nijinohoshi14.zaiko.io/_item/325805

チケット販売開始/終了日時:2020年4月23日20時~2020年5月17日21時
配信アーカイブ公開終了日時:2020年5月17日21時

※当日は会場の表参道 WALL&WALL にはお入り頂けません。
* 配信のURLは購入した ZAIKO アカウントのみで閲覧可能です。
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R.I.P. Mike Huckaby - ele-king

 COVID-19によってまたひとりの音楽家がこの世を去った。同じくデトロイトのエレクトロニック・ミュージックのコミュニティのひとり、デラーノ・スミスが治療費を募ったというが、彼のエージェントの発表によればマイク・ハッカビーは4月24日に永眠してしまった。25日は世界中のディープ・ハウス・ファンの多くがこの悲報に涙したことだろう。
 マイク・ハッカビーはデトロイトのダンス・シーンに1988年から関わっていたDJであり、プロデューサーであり、ディープ・ハウスのリジェンドである。近年はワールドワイドに活躍し、日本でもプレイしている。
 マイク・ハッカビーの名前が日本で知られるきっかけとなったのは、ごくごく初期のムーディーマンとセオ・パリッシュだった。96年〜97年ぐらいのことで、現在DJチーム“悪魔の沼”のメンバーであるドクター西村がこのあたりのあやしげな音源、つまりデトロイトのハウス・シーンの作品を片っ端から輸入していたのである。リック・ウェイドが主宰する〈Harmonie Park〉の12インチはそうしたなかに紛れていたわけだが、少数しか入ってこないので、たまたま手に入れることができた1枚は当時としてはとても貴重だった。いったいどんな連中なのか素性もわからずに、ぼくはマイク・ハッカビーの「Deep Transportation Vol. 2」を買った。90年代後半、〈Harmonie Park〉や〈M3〉といったレーベルは、アンダーグラウンドのなかのアンダーグラウンドであり、ミステリアスそのものだった。それは別の世界への扉のように思えたものだった。
 そしてたしかに別の世界があった。「Deep Transportation Vol. 2」にはハッカビーの初期の代表曲である“Love Filter”が収録されているが、野太いキックが特徴のこの曲は80年代初頭のディスコ/ファンクからのサンプリングで成り立っている。あるいは、デビュー・シングル「Vol. 1」におけるディープな反復による“Luv Time”においてもそうだ。ストイックでダークなループのうえに切り刻まれたディスコ・サンプルが一見脈絡なくミックスされる。ディスコの突然変異というか、派手さはないが気がつくとハマっているような、そうしたグルーヴ感がハッカビーのトレードマークだった。それは未来志向のデトロイト・テクノにはなかった感性であり、手法だった。前衛ジャズのファンでもあったというから、ほとんど即興的に作っていたのかもしれない。
 のちにぼくはハッカビーがデトロイトの郊外にあるレコード店〈レコード・タイム〉のダンス・コーナーを10年以上担当していたことを知って、その豊富な音楽の知識がどこかから来たのかを少し理解した気になった。〈レコード・タイム〉にはいちど行ったことがある(それも無謀なことにバスで)。渋谷のタワーレコードの2フロアほどある全ジャンルを扱う大型のレコード店で、地元の好みに根付いた品揃えだった。ケニー・ディクソン・ジュニアは子どもの頃から常連だったと店のスタッフが話してくれたように、そこはデトロイトにおけるディスコ/ファンクをネタにしたディープ・ハウスの重要拠点だった。ハッカビーがRoland Kingなる変名でリリースした〈M3〉は、〈レコード・タイム〉が主宰したレーベルである。
 ハッカビーは2002年からは自身のレーベル〈Deep Transportation〉(および〈S Y N T H〉)から作品を出しているが、他方ではデトロイト・ハウス好きで知られるパリの〈Funky Chocolate〉からカルト的人気曲“The Jazz Republic”が再発され、UKの〈Third Ear〉やベルリンの〈Tresor〉といったデトロイト好きのレーベルからもシングルをリリースしている。また、〈Tresor〉からはハッカビーにしては異色と言えるテクノなミックスCD(サージョン、ジェフ・ミルズ、ドレクシア、ロブ・フッド、バム・バム等々)を発表している。リミキサーとしてはモデル500やノーム・タリー、PoleやVladislav Delay、ジャザノヴァやDeepChordなど一流どころを手がけている。アルバムに関しては、12インチ2枚組のベスト盤があるのみで、最後まで12インチ・シングル主義を貫いた人だった。ちなみにハッカービーはカイル・ホールの先生役でもあった。
 ぼくはいちどだけデトロイトで会ったことがあるが、クラブでもレコード店でもなく、おそらくケヴィン・サンダーソン率いる野球チームの試合においてだった。ほんの一瞬の挨拶だったので、どんな人柄だったかまではまったく知るよしもないのだが、その試合ではベンチスタートだったマイク・バンクスをはじめ、こんなところでもみんな繋がっているんだなと思ったことを憶えている。趣味や方向性こそ多少違えど、みんなリスペクトし合っている仲間なのだ。デリック・メイはハッカビーの死について長いコメントを寄せている。子どもの頃ハッカビーからミキサーを借りていっしょに演奏したときのことを述懐しつつ、「彼は想像しうるかぎりの最高に素敵な人だった。とても寂しい」と。〈レコード・タイム〉の経営者によれば、「彼はとにかく音楽が大好きで、それを誰かと共有することも大好きな人だった」というが、ほかにも彼の死に、たとえばヴァンクーバーの〈ゴーストリー・インターナショナル〉は「先生であり、師であり、マスターであり、DJであり、プロデューサーであり、デトロイト・ミュージックの崇高なる部分の一部だった」と敬意を表し、UKのディスクロージャーはツイッターでこう述べている。「どうか安からに。あなたの音楽はいつまでもぼくたちのインスピレーションであり続けます」
 マイク・ハッカビー、デトロイト・ディープ・ハウスのリジェンド──ご冥福を祈ります。
 


Mike Huckaby Best 5

1. Mike Huckaby ‎– Deep Transportation Vol. 1 〈Harmonie Park〉(1995)
2. Roland King ‎– The Versatility E.P. 〈M3〉(1997)
3. DeepChord ‎– Electromagnetic Dowsing (Remixed By Mike Huckaby) 〈S Y N T H〉(2006)
4. Sun Ra ‎– The Mike Huckaby Reel-To-Reel Edits Vol. 1 〈Kindred Spirits〉(2011)
5. Mike Huckaby ‎– The Tresor EP 〈Tresor〉(2012)

Selected By M87 a.k.a everywhereman
(私が最後にマイク・ハッカビーのDJプレイを聴いたのは、2016年5月メモリアルデイの早朝、デトロイトmarble barでの野外パーティにて、DJ Harveyで盛り上がった後でした。ハッカビーからバトンタッチしたAnthony Shakirのプレイ中にブラックガールから「Dance with me?」と声を掛けられて一緒に踊ったことは人生最高の思い出です)

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