ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 忌野清志郎さん
  2. Columns 高橋康浩著『忌野清志郎さん』発刊に寄せて
  3. R.I.P. Brian Wilson 追悼:ブライアン・ウィルソン
  4. Columns 対抗文化の本
  5. Autechre ──オウテカの来日公演が決定、2026年2月に東京と大阪にて
  6. GoGo Penguin - Necessary Fictions | ゴーゴー・ペンギン
  7. interview with Rafael Toral いま、美しさを取り戻すとき | ラファエル・トラル、来日直前インタヴュー
  8. dazegxd ──ハイパーポップとクラブ・ミュージックを接続するNYのプロデューサーが来日
  9. PHYGITAL VINYL ──プレス工場の見学ができるイベントが開催、スマホで再生可能なレコードの製造体験プログラム
  10. R.I.P.:Sly Stone 追悼:スライ・ストーン
  11. Tanz Tanz Berlin #3:FESTIVAL WITH AN ATTITUDE ―― 'FUSION 2011'体験記
  12. These New Puritans - Crooked Wing | ジーズ・ニュー・ピューリタンズ
  13. interview with caroline いま、これほどロマンティックに聞こえる音楽はほかにない | キャロライン、インタヴュー
  14. Rafael Toral - Spectral Evolution | ラファエル・トラル
  15. Columns The Beach Boys いまあらたにビーチ・ボーイズを聴くこと
  16. Ches Smith - Clone Row | チェス・スミス
  17. Bon Iver - SABLE, fABLE | ボン・イヴェール、ジャスティン・ヴァーノン
  18. world’s end girlfriend ──無料でダウンロード可能の新曲をリリース、ただしあるルールを守らないと……
  19. Columns The TIMERS『35周年祝賀記念品』に寄せて
  20. 完成度の低い人生あるいは映画を観るヒマ 第三回 アロンソ・ルイスパラシオス監督『ラ・コシーナ/厨房』

Home >  Reviews >  Album Reviews > Session Victim- Needledrop

Session Victim

DowntempoHouse

Session Victim

Needledrop

Night Time Stories

Amazon

Midori Aoyama   May 01,2020 UP

 レコード屋のセールス文句では「若き日のナイトメアズ・オン・ワックスやDJシャドウを連想させる」と表現され、RAでは「ドイツ人のデュオがダウンテンポへ、これは果たして成功か?」という見出しで語られるが、どんな表現をされようが超マイペースな彼らには関係のないことだ。昨年クルアンビンとリオン・ブリッジズのアルバム『Texas Sun』のリリースも好調なレーベル〈Night Time Stories〉(〈LateNightTales〉の姉妹レーベルでもある)から、ハウス・プロデューサー、セッション・ヴィクティムの最新アルバム『Needledrop』がリリースされた。

 ドイツ人プロデューサーのハウケ・フリーアとマティアス・レーリングのふたりはどちらも大のレコード・ディガーで、DJプレイもヴァイナル・オンリー。アーティストからのプロモ音源もレコードでなければほとんど受け取らない程の徹底ぶり。リリースの大半もいわゆる「ヴァイナル・オンリー」が大半を占め、過去に発表したアルバム3枚はジンプスター主宰のレーベル、〈Delusions Of Grandeur〉からのみ(アルバムはデジタルもリリース)という、とてつもなく限定的な活動を展開するが、エネルギッシュなライヴ・パフォーマンスと、独特なサンプリング・センスと生音を融合させたプロダクションが人気を集め、ハウス/ディスコ・シーンでは安定の位置を確立。今回は一気に舵を切り全編に渡りスローなジャムを展開している。

 11曲中10曲がインスト・トラックで、唯一のヴォーカル曲には98年にリリースされたエールのファースト・アルバム『Moon Safari』にも参加したベス・ハーシュをフィーチャー。“Made Me Fly (Ft. Beth Hirsch)” としてアルバムのリード・トラックに。なるほど、ハウス方面に限らず、エールを聴いていたようなリスナーにとってもどこか共感が持てるような角度をこのアルバムは潜めているかもしれない。というよりも元々彼らの聴いてきた音楽的なバックグラウンドや趣味嗜好がより反映されたアルバムになっているのかもと感じさせてくれる。

 個人的なオススメは6曲目の “Waller and Pierce” と9曲目の “Cold Chills”。ライヴでもベースを担当するマティアス・レーリングのレイドバックなベースラインと絶妙な雰囲気で重なる音のレイヤーは繰り返し聴いても飽きが来ない。アルバムとはいえ全編通して聴いても約30分程度。一周した後に「もう終わり?」と思いながらもう一度頭から針を落とす。(レコードはグリーンカラーのクリアヴァイナル。もちろんCDやデジタル、ストリーミングだってなんでも構わない。)

 トラックのタイトルには「Bad Weather」「Pain」「No Sky」「Cold」など決して明るくポジティヴなメッセージが込められているとは思えないが、楽しいだけが人生じゃない、あえて暗いムード、落ち着いた雰囲気のときに選んでほしい1枚な気がする。

Midori Aoyama

RELATED

Ash Walker- Aquamarine Night Time Stories / ビート

Reviews iTunes

Khruangbin- 全てが君に微笑む Night Time Stories/ビート

Reviews Amazon

KhruangbinKhruangbin - Hasta El CieloNight Time Stories/ビート

Reviews Amazon