「PAN」と一致するもの

NHK yx koyxeи - ele-king

 電子音楽の創造的なダンスホールにようこそ。コーヘイ・マツナガ(aka NHK yx koyxeи)が、マーク・フェルを引き連れて日本ツアーをやります。かつてはSND名義の作品でエレクトロニカを追い求める玄人なリスナーからさんざん支持されたフェルですが、ここ3~4年はエディションズ・メゴからのソロ作品によって、(感覚派の多い今日の電子音楽界にあって、良い意味で)理屈っぽく、どう考えても頭でっかちで、ロジカルに、そしてユニークなミニマル・サウンドを創出している。彼の最新のプロジェクト、Sensate Focusも好調なようで、今回のライヴPAは見逃せない。
 コーヘイ・マツナガも、PAN(ベルリンのもっともいけてるレーベル)からのダンス3部作の3枚目『Dance Classics Vol. III』も無事リリースされ、好評を博している。また、関西のほうでは、MadeggやAOKI takamasaも出演する! 


●2月25日@Dommune (web stream 21pm~midnight)
NHK Special.8
Mark Fell
Christophe Charles
Interviewer
Minoru Hatanaka (ICC)
live: Miclodiet、 Yuki Aoe
dj: Susumu Kakuda、 NHK fm

●3月1日@Soup 東京
-soup 7th anniversary "wasted"-
Sensate Focus
NHK yx Koyxen
CoH
Miclodiet
Nobuki Nishiyama
DJ Spinkles (aka Terre Thaemlitz)

https://ochiaisoup.tumblr.com
https://sludge-tapes.com

●3月2日@ACDC gallery 大阪
Sensate Focus
NHK yx Koyxen
shotahirama
lycoriscoris
DUCEREY ADA NEXINO
Madegg
And Vice Versa
hyAhar
Eadonmm

https://www.acdc-japan.com
https://idlemoments-jp.com

●3月5日@Metro 京都
-"night cruising" Red Bull Music Academy-
Mark Fell
NHK yx Koyxen
Sub-tle
Marihiro Hara
AOKI takamasa
Tatsuya Shimada(night cruising)
https://www.metro.ne.jp
https://www.nightcruising.jp

●3月7日@CMVC 大分
Mark Fell
NHK yx Koyxen
in
AOKI takamasa

https://twitter.com/cmvc_hita

●3月8日@DEF 金沢
Sensate Focus
NHK yx Koyxen
DJ NOBU (Future Terror/Bitta)
DJ Susumu Kakuda
Haruka Nitta

(石川県金沢市片町2-5-6 AYAビル2F)

●3月9日@Soup 東京
-soup 7th anniversary "wasted"-
Mark Fell
Kouhei Matsunaga
Painjerk
Christophe Charles
AOKI takamasa
NHK fm

https://ochiaisoup.tumblr.com
https://sludge-tapes.com



CHAINE INFINIE PLUS

Tower HMV Amazon

 フリー・モラル・エージェンツが拠点とするロング・ビーチにはサブライムがいたが、レッド・ホット・チリ・ペッパーズやレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンなどLAをはじめとして西海岸にホットな拠点を持っていたいわゆる“ミクスチャー・ロック”には、メタルとヒップホップなどジャンル上のミクスチャーという側面とともに、エスニシティやカルチャーにおけるミクスチャーという側面がある。ザ・マーズ・ヴォルタなどをここにストレートに分類するのはためらわれるものの、中心のひとりオマー・ロドリゲス・ロペスがプエルトリカンであり、ラテン・ミュージックを血液としながら、一方でチリ・ペッパーズのフリーやジョン・フルシアンテらを迎え、オルタナのマーケットでシリアスにプログレッシヴ・メタルを展開してきたことを鑑みれば、彼らもまた十分に「ミクスチャー」的な要素のひとつを肥大化させた存在と考えることができるかもしれない。

 フリー・モラル・エージェンツは、そのオマーや相方のセドリック・ビクスラー・ザヴァラ、そしてフルシアンテらとともにマーズ・ヴォルタの黄金期を支え、デ・ファクトやロング・ビーチ・ダブ・オールスターズ等でもオマー、セドリックとともに活動してきた鍵盤奏者、アイキー・オーウェンスが率いるセッション・グループだ。彼はメンバーの多くが黒人であることにもプライドを持っていると述べるが、そこにリプリゼントされているのはブラック・ミュージックというよりも、やはりもっと“ミクスチャー”なものである。若く瑞々しい問題提起があるわけではないが、熟達したテクニックとミュージシャンシップによって音楽的な芳香を放つ彼らは、ニュー・メタルやラウド・ロックの筋骨隆々としたイメージとはかけ離れながらも、そうした音の周辺から生まれ、それをダンス・ミュージックやクラブ・カルチャーに結びつける存在としてじつに堂々たる存在感がある。ジャズロックの煙たさと艶やかさ、サイケデリックなセッション、這うようにして迫ってくるグルーヴが、夜の鷹のように鋭く魅了する。アルバム後半にゴシックなシンセ・ポップまで開陳するリーチの長さは、鍵盤奏者としてのオーウェンスの幅でもあるだろう。過去のシングル「ノース・イズ・レッド」(2010年)ではトニー・アレンにリミックスを依頼しているが、本作ではLAビート・シーンの俊英としてその登場がいまだ鮮やかに記憶されるハドソン・モホークが登場し、ミュータントなミックスを生んでもいる。
フル・アルバムとしては4年ぶりとなる本作は、そうしたセッション・バンドが録音物への注意と興味も深めた結果として、とても充実した盤となった。こだわりのアナログ録音も、曲によってはとても意外に感じられるだろう。

LAに住むと、エレクトロニック・ミュージックに囲まれていると感じるよ。LAビート・シーンの大ファンだし、僕らにしてもLAのロック・シーンよりLAビート・シーンで認められている。

フリー・モラル・エージェンツにおいては、あなたはバンド・マスターのような役割を果たしているのですか? あなたのバンドなのか、それとも独立したミュージシャン同士のセッションがコンセプトなのか、どちらでしょう?

アイキー:俺がフリー・モラル・エージェンツの創立者なんだ。ラインナップが固まってから、本当にバンドになったんだ。いまでも、俺が作品のプロデュースを担当して、全体の作品の美学や方向性を決めているよ。

ヴォーカルもそうですが、アンサンブルや楽曲自体から、あなたがかつて活動されてきたマーズ・ヴォルタ等のバンドが持つストイシズムとは異なった豊満さを感じます。あなたがフリー・モラル・エージェンツにおいて目指すものはどんなことでしょう?

アイキー:メンディー(・イチカワ)と出会った日から、このバンドのリード・シンガーになってもらいたいと思った。彼女のヴォーカル・サウンドを意識して、このバンドのサウンドを決めているんだ。

あなたがたにはLAのアンダーグラウンド・カルチャーへの愛を感じますし、地元に根づいた活動をされていると思いますが、それがハドソン・モホークなどのアブストラクトなダンス・ミュージックに結びつくのが素晴らしいと思います。彼にリミックスを依頼したことにはどのような意図があるのでしょうか?

アイキー:俺らは全員、エレクトロニック・ミュージックのファンなんだ。とくにLAに住むと、エレクトロニック・ミュージックに囲まれていると感じるよ。LAビート・シーンの大ファンだし、僕らにしてもLAのロック・シーンよりLAビート・シーンで認められている。

あなたがたの魅力はライヴやセッションにおいて真価が発揮されるのではないかと思いますが、アルバム制作にはどのような意味がありますか?

アイキー:年齢を重ねるにつれ、レコーディングの重要性が増している。俺がレコーディングした作品こそ、後世に残していく作品なんだ。俺らの作品は、グループそして個人的に俺らの経験を反映しているんだ。最近は、自分がどのようなアートを残していくのかをとても意識している。

制作する音楽のなかに、あなたの血としてのルーツやアイデンティティはどのくらい意識されているのですか?

アイキー:黒人であることは、フリー・モラル・エージェンツにおける俺のアプローチに多大な影響を与えてる。まず、このメンバーを選んだことが、このバンドにおいて不可欠だった。黒人のインテリジェンス、センス、音楽性の交差点は、俺たちの音楽において極めて重要なんだ。このバンドのメンバーのほとんどが黒人だということだけじゃなくて、黒人男性としての俺たちの生き方も重要なんだ。

”Requiem”には具体的な対象がありますか? とても印象的なブラス・アンサンブルですが、どこか無国籍的で、よるべない魂に捧げられるかのようなはかなさを感じました。

アイキー:この曲は、バルセロナに住んでいるまだ生きている女性に捧げられた曲なんだよ。

2010年のシングル「ノース・イズ・レッド」にはトニー・アレンのリミックスが収録されていますが、これはあなたがたがどのような音楽に経緯を払い、意識をしているのかをよく物語っていると思います。どのような経緯でこの話が決まったのでしょうか。また、彼のあなたがたへの反応をどのように感じましたか?

アイキー:トニー・アレンにはまだ実際に会ったことはないんだ。彼のレーベルに連絡をしたら、親切にも彼はリミックスを引き受けてくれた。ライヴをやるとき、俺たちは彼のヴァージョンを演奏しているんだ。彼のヴァージョンの方が熟成したサウンドで、簡潔なんだ。彼はこの曲を次のレヴェルにまで進化させてくれた。

このメンバーを選んだことが、このバンドにおいて不可欠だった。黒人のインテリジェンス、センス、音楽性の交差点は、俺たちの音楽において極めて重要なんだ。このバンドのメンバーのほとんどが黒人だということだけじゃなくて、黒人男性としての俺たちの生き方も重要なんだ。

「フリー・モラル」を掲げるのはなぜでしょう? 自由を倫理として掲げているのか、倫理からの自由を謳っているのか。また、それはあなたの芸術に対する姿勢ということになりますか?

アイキー:「Free moral agency(自由道徳的選択)」というのは、神学/哲学的な概念であって、人間には自由意志があることを意味している。アーティスト、家族の一員、友だち、恋人、労働者として、自分たちが正しいと思うことに基づいて行動することができる。人間同士の絆を強くしたり、人に親切にしたり、どの音符を使いたいかなどを選択することができる。俺たちは毎日このような決断をしている。成功をすることもあれば、失敗することもあるけど、毎回選択は自分たちがしているんだ。どういう選択をするかによって、優れたアーティスト、息子、兄弟、人間になることができる。

一方でKORGのファンでもあるそうですね。KORGとあなたの音楽との関わりについておうかがいしてもいいですか?

アイキー:KORG CX3 Organがいちばんのお気に入りだし、メインで使用してるキーボードなんだ。micro KORGとmicro XLも気に入ってる。この作品『チェーン・アンフィニ』では、JUNO60とエフェクトをかけたWurlitzerを多用している。1980年代半ばのYAMAHA PSRや70年代のエレクトロニック・チェンバロも多用してる。

アートワークについてはこだわりがありますか? マーズ・ヴォルタやロング・ビーチ・ダブ・オールスターズなどには、ヴィジュアル自体が音やそれが体現するカルチャーの一部というようなところがありますが、フリー・モラル・エージェンツのアートワークについてのコンセプトはどんなものなのでしょう?

アイキー:今作のアートワークを手がけたのは、マティース・イバラという地元のミュージシャン兼アーティストなんだ。彼のアートのスタイルは、今作のサウンドを反映しているんだ。この作品のサウンドは、前作に比べると無駄をそぎ落としたミニマルなサウンドなんだ。このアートワークもそうだけど、間近で見ないとクリアに見ることができないんだ。このアートワークが好きなのは、人の反応が好きか嫌いか二手にはっきりわかれるからなんだ。あと、ロングビーチの最近のグラフィティを反映したスタイルでもあるんだ。

ロング・ビーチでは最近何がおもしろいですか?

アイキー:いまのロングビーチの音楽シーンは本当に最高だよ。ブラインド・ジョン・ポープやデニス・ロビショーのようなアヴァンギャルド・フォーク・アーティストもいるし、ワイルド・パック・オブ・カナリーズみたいにノイズとドゥワップを融合させているバンドもいる。ダフト・パンクをさらにダーティでヘヴィにしたファットバーフのようなアーティストもいれば、素晴らしいソウル・シーンもある。フリー・モラル・エージェンツのベーシストであるデニスは、〈グッドフット〉というクラブ・イヴェントを運営していて、地元の連中はみんな教会のように通っているよ。決まったサウンドがないから素晴らしいシーンなんだ。それぞれのアーティストが個性を持っているんだよ。

会場限定発売!
toe / collections of colonies of bees ジャパン・ツアー2014 記念Tシャツ完成!
*各会場のみでの販売になります。数に限りあり!お早目にどうぞー!

まずtoe と collections of colonies of bees (以下コロちゃん)のカップリング・ジャパン・ツアーは2009年に行なわれ、更に言うとコロちゃんの全身バンドであるpeleは02年に来日しtoeと共演。更に更に「toe//pele」、そして「toe//collections of colonies of bees」名義でスプリット・シングルもリリース。そしてコロちゃんの最新アルバム『SET』の解説をtoeの山嵜廣和氏が執筆していて……と、この二バンドは本当に仲良し。そしてお互いをリスペクトし合っている訳です。そんな友情が本当に眩しいカップリング・ジャパン・ツアーが再びみなさんの前で始まってしまいます。繰り広げられる抱擁の嵐にみなさんも号泣するに違いない!ハンカチ持ってお越しください。

【toe】

 もはや説明不要。日本が世界に誇る最高のインストゥルメンタル・バンド。2000年に結成され、そのアグレッシヴかつエモーショナルかつダイナミックかつ繊細なサウンドで世界中のファンを虜に。昨年行われたアメリカ・ツアーはもちろんソールドアウトを連発。
https://www.toe.st/


【collections of colonies of bees】

 今なおポストロックのスタンダードとして君臨しているミルウォーキーの伝説的バンド、peleのサイド・プロジェクトとしてスタート。pele解散後に本格的始動し、これまでに6枚のアルバムを発表、更に二度の来日も。pele直系のポップでシャープなロック・テイストと、エレクトロ~ミニマル・アプローチ、そしてシューゲイズなエッセンスまでもがマッチしたインストゥルメンタル・サウンドは唯一無比。ちなみに主要メンバーはBon IverとのプロジェクトVolcano Choirでも大回転中。
https://www.collectionsofcoloniesofbees.net/




ライヴとの連動シリーズ、「Beckon You !!」 スタート!!!!
作品を購入→ライヴに行ったら会場でキャッシュ・バックしちゃいます!!


注目のアーティストを中心に作品とライヴを連動させちゃうのがこの「Beckon You !!(来て来て〜おいでおいで〜の意)」シリーズ。
1/22リリース、collections of colonies of beesの最新アルバム『SET』貼付のステッカーを公演当日にお持ち下さい。その場で500円をキャッシュバック致します。もちろん前売り券でも当日券でもオッケーです!


ele-king presents
toe / collections of colonies of bees Japan Tour 2014

3/4(火) 渋谷TSUTAYA O-nest (03-3462-4420)
adv 4,500yen door 5,000yen (without drink)
open 18:00 start 19:00
*2014.2.11~チケット発売
チケットぴあ(Pコード:P:223-557)
ローソンチケット(Lコード:70044)
e+

3/5(水) 名古屋APOLLO BASE (052-261-5308)
adv 4,500yen door 5,000yen (without drink)
open 19:00 start 19:30
*チケット発売中
チケットぴあ(Pコード:P:223-442)
ローソンチケット(Lコード:46308)
e+

3/6(木) 心斎橋Music Club JANUS (06-6214-7255)
adv 4,500yen door 5,000yen (without drink)
open 18:00 start 19:00
*チケット発売中
チケットぴあ(Pコード:P:223-509)
ローソンチケット(Lコード:52170)
e+


*各公演のチケット予約は希望公演前日までevent@ele-king.netでも受け付けております。お名前・電話番号・希望枚数をメールにてお知らせください。当日、会場受付にて予約(前売り)料金でのご精算/ご入場とさせていただきます。


主催・制作:ele-king / P-VINE RECORDS
協力:シブヤテレビジョン ジェイルハウス スペースシャワーネットワーク 
TOTAL INFO:ele-king / P-VINE RECORDS 03- 5784-1256
event@ele-king.net
www.ele-king.net


toe、collections of colonies of beesも出演!!

Booked!
https://booked.jpn.com/index.html

3/8(土)新木場STUDIO COAST(03-5534-2525)
toe / cero / mouse on the keys / ROTH BART BARON / NINGEN OK /
collections of colonies of bees(US) / ペトロールズ / LAGITAGIDA /
YOLZ IN THE SKY / グッドラックヘイワ / Climb The Mind / VIDEOTAPEMUSIC /
STUTS / THE OTOGIBANASHI’S / DJみそしるとMCごはん / Slow Beach
……and more

*こちらの公演は「Beckon You !!」対象外となります。

日本先行発売!!
コレクションズ・オブ・コロニーズ・オブ・ビーズ 『セット』


PCD-20291
定価2,000yen(without tax)
Release:2014.1.22
解説:山嵜廣和(toe)


1. G(F)
2. E(G)
3. B(G)
4. C(G)
5. D(F)
6. F(G)

ピークが終わらない! - ele-king

 ピークが終わらない! いまもっとも勢いのあるDJ/プロデューサーのひとり、Seihoが〈ラッキー・ミー〉のオベイ・シティとジャパン・ツアーを開始する。〈ラッキー・ミー〉といえば、ハドソン・モホークや彼の別プロジェクトTNGHT、マシーンドラムなどの作品をリリースし、〈ワープ〉や〈プラネット・ミュー〉に近接するセンスでシーンを掘削するグラスゴーのアンダーグラウンド・ダンス・レーベル。Seihoとの相性もばっちりだ。
 2月7日の大阪公演を皮切りに、福岡、名古屋をまわり、最終日は10日@代官山〈Unit〉。自身のレーベルを運営し、順調にリリースも行い、各地を飛び回って夜を彩るSeiho、その活躍は今年も止まらない。彼あるところに音の祭あり。Seihoの移動式祝祭日に飛び込もう。

■詳細
https://www.perfect-touch.us/seiho-obey-city/
https://2-5-d.jp/news/12146/

■Seiho + Obey City / Way Cool Winter Japan Tour 2014

東京公演
日時:2014年2月10日(祝前日)23:00-
場所:Unit
数量限定前売りチケット:https://peatix.com/event/28151/view
出演:
Obey City
Seiho
DJ WILDPARTY
Metome
PARKGOLF
The Wedding Mistakes
SEXY808
Pa’s Lam System
Hercelot

-Sound Clash-
LEF!!!CREW!!!
HyperJuice
TREKKIE TRAX


UKAWA'S TAGS FACTORY - ele-king

 みんな大好きDOMMUNE宇川直宏の「セレブリティー1000人の偽サイン展」、そう、「偽サイン」です。覚えていらっしゃる方も多いことでしょう。宇川直宏いわく「降霊術」によってセレブを自らに「憑依」させてサインを描くという、その1周回ったいかがわしさ、オリジナルを超えた偽物のリアリティといいますか、当たり前の価値観をカオスの海に放り投げながら笑っているといいますか、とにかく、5年前の500人の偽サイン展から、宇川は、日々偽サインを忘れることなく、その数ついに1000人に到達したのであります。
 そう、先週から山本現代において、その完結編として「UKAWA'S TAGS FACTORY(完結編)~宇川直宏によるセレブリティー1000人の偽サイン展」がはじまっています。2月22日まで開催しているので、ぜひ、観に行きましょう。あまりの「うまさ」(いろいろな意味で)に驚くはず。そして、その1000人の人選には、宇川直宏らしさが思い切り出ています。開催中には、トークショーも予定されているそうで、楽しみです。
 なお、開催中には、「FREE DOMMUNE ZERO」にて話題となった「夏目漱石/THE UNIVERSE」も展示されます。


■~2月22日 @山本現代?宇川直宏 個展【2NECROMANCYS】

=「UKAWA'S TAGS FACTORY(完結編)~宇川直宏によるセレブリティー1000人の偽サイン展」
&「夏目漱石/THE UNIVERSE(re-turns)」with やくしまるえつこ(朗読)!


https://www.yamamotogendai.org/japanese/exhibition/index.html

interview with Phoenix - ele-king

 たぶん、これを読んでいる人はビートルズ以前のフランスの音楽、シャンソンが世界の人びとを魅了した音楽だったということを知らないだろう。
 エディッド・ピアフはビヨンセのように誰からも愛され、ジャック・ブレルはフランク・シナトラのような偉大なシンガーだった。
 ビートルズの初めてのフランス公演は、シルヴィ・ヴァルタンの前座としてだった。この公演中にビートルズは自分たちの曲がアメリカで初のナンバー・ワンになったことを告げられた。それは、エンターテインメントの世界の音楽がロックへと変わった瞬間であり、ロックの本質を本当に理解しているアメリカ、イギリスだけが世界の音楽を牛耳っていくはじまりだった。
 アメリカ、イギリス以外の国の音楽が世界の隅に追いやられていったのは、それらの国のエンターテインメント界が旧来のままだったことがいちばんの理由だと思うが、ミッシェル・ポルナレフのようなロック世代の大スターも出てきはしたが、しかし、それまでは世界の音楽をリードしていたフランスの音楽が他の国のチャートに顔を出さなくなったのは不思議で仕方がなかった。ジャズの終わりを看取った国、アフリカン・ミュージックを発信してきた国にしてはフランスの音楽の低落ぶりは不思議で、だから、フレンチ・ハウス、テクノが世界的に評価されたとき、さすが、フランスだと思った。フランス音楽の低迷は言葉の問題だったのかと思っていたら、ついにフェニックスがグラミー賞をとり世界的に認められた。なぜ、フェニックスが世界的に認められたのか、訊いてみた。今月行われた来日公演の楽屋にて、答えてくれたのはギターのローラン・ブランコウィッツとベースのデック・ダーシーだ。

僕たちはいいプレイヤーじゃない、でもいいリスナーだと思っている。僕たちが目指しているのはアメリカのゴールデン・エラと呼ばれた時代の音楽だ。75年とか、MIDIが使われる前の音楽だ。(ローラン・ブランコウィッツ)

グラミー賞をとったことは驚きましたか?

ローラン:僕らはどんな賞ももらったことがなかったから、驚いたよ。初めてもらった賞が、権威ある賞だったから、嬉しかった。でも、長いこと賞ももらわずにやってきたけど、それはそれでよかったよ。

デック:新しい経験で、いままで感じたことない感覚だったね。

ローラン:いい経験だったと思う。

なぜ、グラミー賞をとれたと思いますか?

ローラン:なぜ? 成功はいろいろなものの積み重ねだよね。いろんなひとたちがいいね、と言ってくれるようになって、成功をしたんだと思う。

僕がなぜこんな質問をしたかというと、昔のフランスの音楽って、普通に世界レベルの音楽だったじゃないですか。それがビートルズ以降、ただの地域の音楽になってしまったと思うのです。そんななかであなたたちは久々に世界に認められたフランスのアーティストだと思うのですが、それはなぜかなということを訊きたかったのです。

デック:いい質問だね。

ローラン:ミッシェル・ポルナレフは日本でもポピュラーだったの?

はい、ビートルズより人気がありましたよ。

ローラン、デック:へー。

僕の両親の時代ですけどね。

ローラン:(ふたりでフランス語で相談しながら)なぜ、そんなことになってしまったかはまったくわからないんだけどね。僕らふたりの見解だとフランスの音楽産業のせいだと思う。フランスの音楽業界は間違った道を歩いてしまったんだ。これがフランスの音楽業界が衰退した理由の一つだと思う。僕らの世代は旧来の音楽産業とは関係ないところでやっている。だから僕らは成功したと思う。僕らの世代は自分たちのベッドルームでレコードを作っている。だからそういう古いフランスのシステムの影響を全く受けずにすんだ。

それは僕も同じことを考えていて、びっくりしました。

ローラン:フランスの音楽シーンの復活にはテクノジーの進歩もとっても重要だ。僕たちはテクノジーで古いシステムから解放され、自由を手にしたんだ。

なるほど、だから、フランスのシーンはまずハウスやテクノから成功していったのですね。フレンチ・ハウスやテクノの人たちとの共通点を感じますか?

ローラン:そうだね。音楽がぜんぜん違っても、ほとんど同じ機材を使っているよね。サンプラーなど。そして、何より同じような古いレコード(音楽)を愛している。ハウスの人たちも、ヒップホップの人たちも、当時の最高のギター、ドラム・サウンドを一日中聴いている。僕らもそうだ。そして、それらからまったく新しい音楽を作ろうとしている。それがいまのカルチャーだ。これが共通点だよね。僕らはもっとソングライティングに力を入れているというのが違う部分かな。そうしようとしているんじゃなく、僕らはそういうのが好きというくらいなんだけどね。これがフェニックスだね。

おー、僕はフェニックスというのは、70年代のアメリカン・ロック、映画『ヴァージン・スーサイド』に使われたような当時のアメリカの郊外のキッズが聴きそうなスウィートなアメリカン・ロックを、現代のヨーロッパの若者たちに置き換えたようなサウンドを目指しているのかと思っていました。

ローラン:僕たちはいいプレイヤーじゃない、でもいいリスナーだと思っている。僕たちが目指しているのはアメリカのゴールデン・エラと呼ばれた時代の音楽だ。75年とか、MIDIが使われる前の音楽だ。

産業ロックになる前の音楽ですね。

ローラン:アメリカのいろんなジャンルの音楽の天才が集まって、素晴らしい機材とたくさんのお金を使って作っていたような時代の音楽を、ベッドルームで、正確に言うと、狭い地下室で、安い機材で、サウンド・エンジニアの知識もなく、スティーリー・ダンのような音楽を作ろうとしていたんだ。

うわっ、スティーリー・ダンですか、感動しました。前作『ウォルフガング・アマデウス・フェニックス』が商業的に成功したので、『バンクラプト!』はスティーリー・ダンのようなお金をかけた制作もできたと思うのですが、前作と変わらない感じがしますね。

デック:たしかに同じようなプロダクションだね。でも、僕たちがやっていることは新しい音楽を作ること、同じようなプロダクションでも、やり方はとってもランダムだね。

ローラン:僕らはみんなを驚かせたいんだ。リスナーに誰か違う音楽を聴いているような感覚を与えたいと思っている。今回は、ランダムにやりながらそれをどういうふうに完成させるかというプロセスを理解できたね。

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ヌーヴェルヴァーグも僕たちも、アメリカとコネクトしていたが、距離があった。だから僕たちはアメリカの音楽にファンタジーや妄想を感じながら、大きくなった。リアルよりもね。

フェニックスというとおしゃれで、時代の空気を読み取って、マーケット戦略もばっちりみたいなバンドだと思っていたのですが、まったくそんな感じじゃないんですね。

ローラン:そうだよ。『ウォルフガング・アマデウス・フェニックス』は成功したアルバムになったけど、完成したとき、すごく変なアルバムを作ったと思った。少しの人にしか気に入られないんじゃないかと思ったよ。だけど、たくさんの人が気に入ってくれた。だからマーケットなんか気にしなくっていいと思って、『バンクラプト!』は『ウォルフガング・アマデウス・フェニックス』と同じアティチュードで作ったんだ。僕らが思うにフェニックスを好きな人は驚かされるのが好きで、ラジオでかからないような曲を聴くのが好きなんだろうな感じる。だから、そういう方法論で作っていくんだ。普通はファンに寄り添っていくとダメになると思うけど、いまのフェニックスとファンの関係はいい関係だね。

ロック黄金時代のバンドとファンの関係のようですね。

ローラン:僕らがフェニックスをはじめた頃は僕らのような音楽を好きな人たちは少数派だったけど、いまはいい耳を持った人たちが増えているよね。フェニックスをはじめた頃の音楽シーンは酷かったけど、いまはどんどんよくなっていっているよね。

フェニックスを含むフランスの新しい音楽全般についてうかがったのですが、僕はフランスの音楽はイギリスやアメリカの音楽と比べると、エレガントで、スウィート──というのは偏見のようにとられるかもしれないですが──あたたかさやノスタルジーを感じるんですが、なぜでしょうか?

ローラン、デック:うーん、いい質問だね(難しい質問だね)。

あっ、すいません、フェニックスは自分たちのことはフランスぽくないと思っているんですか?

ローラン:そんなことないよ。僕たちも君が思うようなことを思っているよ。音楽でこうだというのは難しいね。フランス映画にたとえて話すと、フランス映画もまた音楽のように、アメリカ映画と違うよね。フランス人はいろんな感情をミックスするのがいいと思うのかもしれない。フランス映画はコメディだと思っていると、突然悲しいシーンが出てきたりするよね。フランス映画はそういうことができる。

ゴダールやトリフォーのように。

ローラン:そう。完全なる自由だよね。

デック:突然、話が脱線したり。

「これは映画ですよ」と観客に話しかけたり。

ローラン、デック:そう、そう。

ヌーヴェルヴァーグもアメリカの映画に影響されて、独自な映画になりました。あなたたちの音楽もまさにそのような感じですね。

デック:そのとおり。ヌーヴェルヴァーグも僕たちも、アメリカとコネクトしていたが、距離があった。だから僕たちはアメリカの音楽にファンタジーや妄想を感じながら、大きくなった。リアルよりもね。

日本人といっしょですね。フェニックスが日本で人気があるのは、同じ感覚を持っているからでしょうね。

ローラン:そしてもう一つ、ヌーヴェルヴァーグと僕たちが似ているところは、ヌーヴェルバーグも僕たちもハリウッドのような機材を持っていないけど、エレガントな姿勢を保っていたことだね。何か違うかなと思ったら、マスター(先人)の作品を見て、作り直せるところ。ヌーヴェルヴァーグと僕たちは似ていると思うけど、僕が好きなのは初期の作品だよ。アヴァンギャルドよりも、クラシックなときのほうがいいと思う。アヴァンギャルドな部分は古くさい感じがするね。

フランス映画もヌーヴェルヴァーグ以降、落ち込んでいたのが、80年代に『ディーバ』『サブウェイ』『ベティ・ブルー』で盛り返しましたよね。いまのフランスの音楽シーンはそのときと同じような熱気を感じるんですが、どうでしょうか?

ローラン:えーっと、言いにくいんだけど、僕には『ディーバ』や『サヴウェイ』のような映画はヌーヴェルヴァーグの上澄みだけで作ったような映画のような気がするんだよ。音楽で言うとMIDI以降というか。

あー、すいません。なるほど。でもフェニックスのことがよくわかりました。『サブウェイ』などの映画にはヌーヴェルヴァーグがリスペクトしたアメリカ映画への熱いリスペクトがないですよね。フェニックスはとってもフランスのバンドかもしれないけど、そこにはアメリカ音楽の黄金時代への憧れと尊敬の熱い血が燃えていますよね。

ローラン、デック:そのとおり。

フェニックス / バンクラプト! (ワーナーミュージックジャパン)
Phoenix / Bankrupt!

【最強盤】
2013年4月リリースの同作にボーナス・ディスクを付けた、来日記念盤的作品。
ディスク1にはアルバム『バンクラプト!』全曲を収録。ディスク2は『バンクラプト?』と題し、オリジナル盤収録楽曲のリミックス楽曲やデモ音源、ライヴ・ヴァージョンといった別ヴァージョンをオリジナルの曲順通りに配置。

タワー HMV Review

【通常盤】

タワー HMV

はじまる前からヒストリー。 - ele-king

 楽しくて、ダンサブルで、爆弾みたいなカタコトのライヴを見たとき、「これはトラブル・ファンクの再来か」と思ったが、しかし、カタコトのカセットテープ「今夜は墓場でヒップホップ」や配信のみのEP「MARYOKU EP」を聴くと、「これはビースティー・ボーイズの『チェック・ユア・ヘッド』だ」と思った。ラップあり、ローファイ・ロックあり、ファンクあり、パンクあり、弾き語りあり、涙も笑いもなんでもあり、彼らが言うように、「これは玩具箱」ではないか。
 カタコトには、すでに"まだ夏じゃない"という秋を歌った名曲があり、"魔力"という『楽しい夕に』の頃のRCサクセションのようなアシッドな名曲がある。たとえ惑星が地球に衝突しようと、カタコトこそ、今年の日本のブラテストホープ、ナンバー・ワンであることは間違いない。 ――野田努(ele-king)

 ジャンルは未定! でもいちおうヒップホップということで! MCとバンドとアートがフリーキーに結びつくブライテスト・ホープにしてダークホース、「カタコト」のデビュー・アルバムが今月ついにリリースされる。

 曲名やアートワークだけでも十分に伝わってくるだろう。彼らが何を好み、何に影響を受け、何をよしとしているのか。そして何かがはじまろうとしているということが……! すでにライヴを目撃している人がどのくらいいるのかはわからないが、あのバチバチと放電しているような空気感を目の当たりにすれば、まだ手垢のついていないものに触れるあの期待感を知れば、このアルバムを聴かないという選択肢は生まれないはずだ。

 はちゃめちゃフリーキーなヒップホップ・バンド、カタコトのデビュー・アルバムが2月19日にリリース! ラップをイケてるバンド・サウンドに乗せてご提供!

 これは和製ビースティー・ボーイズか? 2MC、ギター、ベース、ドラムから成るヒップホップ・バンド「カタコト」のデビュー・アルバムにしてベスト版『HISTORY OF K.T.』が2月19日にリリースされます。

 ラップにローファイ・ロック、ファンク、パンク、メタル……とさまざまな音楽性を巻き込んだ、遊び心たっぷり痛快愉快なミクスチャー・サウンド。ポップなのにアグレッシヴ、ファンキーでかつフリーキー、生音とラップのアガる組み合わせに、聴けばたちまち心踊る、100%フレッシュなごった煮チューンが詰まった堂々のデビュー・アルバムの登場です。ele-kingブライテストホープ賞も楽々かっさらう要注目バンド「カタコト」、そのポテンシャルは未知数、ご期待ください。

■PROFILE:
カタコトってなンだ!? メンバーは、 RESQUE-D(MC)、MARUCOM(Guitar)、YANOSHIT(MC)、KKC(Bass)、 FISH EYE(Drum)という映画グーニーズさながらの好奇心旺盛な謎の5人組。パーティ感を前面に出したフリーキーかつファ ンキーな楽曲群はもちろん、アコースティック・ギターに歌心が沁みる曲やピアノを大胆にフィーチャーしたスタンダードなポップスまで、バリエーション豊かで、そのポテンシャルは無限大!得体の知れないツイートや、サイトに 散りばめられた奇妙なアートワーク、メンバーそれぞれのバンド外での意外な活躍……ナゾは多いが、異端こそがポップ、色物だと思ったら大損こくのは必至です。 2014 年、カタコトが異形のマスターピースを世に放つ。今宵もバンドは気の向くまま、新たな計画を企んでる。

カタコトHP: https://katakoto.info/
カタコトTwitter: https://twitter.com/katakoto5
カタコトsoundcloud: https://soundcloud.com/katakoto

カタコト / HISTORY OF K.T.
PCD-22373
定価:¥2,200+税

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トラックリスト
1.「扉を開けてしまった男」
2.Man In Da Mirror
3.HELLO KATY
4.ハーフ&ハーフ
5.「リスからの手紙」
6.からあげのうた
7.Starship Troopers
8.夏じゃない(チルドルームサマー)
9.「殺人鬼のヒットソング」
10.Gooonys
11.デス!プルーフ
12.リュックサックパワーズ feat.VIDEOTAPEMUSIC
13.Super Natural Communication
14.G.C.P
15.「悪魔はどっちだ?」
16.ピアノ教室の悪魔
17.魔力


友川カズキ - ele-king

 復讐バーボン。私は酒場の暗がりでひとり杯を傾ける男の内面にうずまくものを思わせるタイトルにシビれながら、しかしそこに70年代的なデカダンスを見てシビれているなら、ゴールデン街で昔話に花を咲かせながらトグロまくオヤジたちと同じではないかと思ったが、友川カズキの歌を聴いて我に返った。

「花ではない 黄色が拡がってる
永遠とは 刹那のことである

とっくの昔に明日は終わった
静かならざる狂おしい夕暮れに

したたかにあおっているのは
しあさっての復讐の
復讐のバーボンのロック」(“復讐バーボン”)

 すでに終わっている「明日」のさらに先の「しあさって」のために呷るバーボンのロックは、過去の仇を討つ復讐という言葉の指向性にもかかわらず虚無に向いている。友川カズキの詩は現代詩的な方法意識をことさら表に出しはしないけれども保守的ではなく、言葉はイメージで色彩豊かに結合していくが、つねにぼくぼくとしている。そんなことはとっくのとうにわかっていたつもりだった。ところが新作を聴くたびに目がさめるのは、私のモノ忘れがひどいのもあるにちがいないが、友川カズキの言葉は歌になることでさらに凄絶さを増す。アコースティック・ギターをかかえ膝をそろえイスに坐り、ツバキを飛び散らしながら文末を食いちぎるように鋭くカブリを振る歌いぶりから一転、朗々と歌い上げる友川カズキの姿をこのアルバムを聴きながら思いだす。同時にあの舞台の上の人を食ったユーモアも。その落差に人は狂気のようなものを目のあたりにした気になり目を逸らし、その実、耳はそばだてるから歌の余韻は残る。いや、余韻などと余裕綽々とはしてはいられないおそるべき残響である。
 このアルバムにもそれがある。いままで以上に、といってもいい。『青いアイスピック』(PSF)から3年ぶり、スタジオ盤としては通算21枚目のアルバムである『復讐バーボン』は“順三郎畏怖”のアコースティック・ギターの大きなストロークからはじまる。順三郎とは戦前からモダニズム~シュルレアリスムの旗手であった西脇順三郎のことで、この曲は西脇の詩を元に友川が歌にした。友川カズキといえば、4作目『俺の裡で鳴り止まない詩』でとりあげ、後にアルバム1枚まるまる使った中原中也(『中原中也作品集』)を思いださないわけにはいかないが、友川は詩人(実作者)であるとともに一遍上人から山頭火から葛西善蔵から住宅顕信から、他者の言葉(と存在)に触発される人でもある。受け手でもあるのだ。それも流行に右顧左眄しない。『復讐バーボン』でも西脇順三郎のほかにもソニーロリンズ(“兄のレコード”)、ジャンポール(“『気狂いピエロ』は終わった”)、新吉高橋(“ダダの日”)など、人名がちらほらある。もっとも引用で何かをほのめかそうとは友川は狙ってはいない。詩に迷いこんだ他者が詩を異化するのを丸抱えしながら存在するから、ディランでもスプリングスティーンでもなく、朝靄をぬって走る滝澤正光様に私は――競輪はズブの素人ではあるけれども――胸を撃たれるのである。
 資質という、わかったようないい方をしていいかわからないが、その側面では友川カズキの音楽は変わりようがない。変わりようがないことは代わり映えしないのではなく変わらないものが不意を突いて眼前に突き出してくる。『復讐バーボン』がとくにそうなっているのは演奏のすばらしさもあるだろう。頭脳警察/シノラマの石塚俊明、パスカルズの永畑雅人、金井太郎、坂本弘道、松井亜由美といったレギュラー陣にNRQ/前野健太とDAVID BOWIEたちの吉田悠樹(二胡)、さらに2009年の友川のドキュメンタリー映画『花々の過失』で共演したギャスパー・クラウス(チェロ)を加えた演奏陣は、曲ごとに組み合わせを変えながら歌を支えるだけでなく、このアルバムでは歌をひっぱっているところもある。資料には「完全一発録りの前例を破り、初めてスタジオ・リハーサルを行った」とある。これってわざわざ特記することなんだろうかと聴く前は思ったが、特記すべきでした。これまでは歌に対して演奏は即興(的)だったので、反応が事後的―といっても、譜面に記せないほどのものなのだが、そしてそれは一部のブルースマンのやり方と同じともいえるのだが―になることもあったが、『復讐バーボン』では事前に音を合わせることで音は不即不離になっている。もちろん緊張感がないわけではない。“わかば”の坂本弘道とギャスパー・クラウスの二台のチェロによるメロディと軋み、“馬の耳に万車券”の即興空間、あるいは“夜遊び”の後奏において私は友川バラッド(ワルツ)とでも呼ぶべき一連の三拍子系の曲の大陸的な音楽性―これはまた縄文的な三上寛とは好対照だと思うが、それについては別稿をもうけたい―がすんなり腑に落ちた。
 そして『復讐バーボン』は1977年の3作目『千羽鶴を口に咬えた日々』に収録した“家出青年”の36年ぶりの盤上の再演で終わる。歌詞の一部を書き換えているとはいえ、この歌に歌われる「家出青年」の内面は36年前のこととは思えない。彼は「蒲団に潜る時『このままでええや』」と思い、「蒲団を蹴る時『このままじゃダメだ』」と思う。その煩悶は時代とは関係なく、ある世代にかぎらずとも、誰もが思いあたる節の嵌りこむ穴であるだろう。友川カズキはセルフ・カヴァーで、生きるに手いっぱいの青年の夜更けに頭をもたげる悩みと、「原発だろうと何だろうと/イヤなモノはイヤだと声を成せばいい」という問題意識を重ね合わせ、歌をなまなましくよみがえらせる。というより「『次世代のため』なぞと言うから滑稽になっちまう/『負の遺産』なぞと括るからたいがいになっちまう」と、過去と未来、以前と以後を峻別したがる人たちと、それにすらとりあわぬ人たちのおためごかしに、友川カズキは再生することで生まれる音楽のなかから、過去でも未来でも以前でも以後でもない現在から叫ぶのである。それでさえ「歌は平気でウソをつく」(“『気狂いピエロ』は終わった”)かもしれないけども。虚構がそうやって真理をつかまえることはいうまでもない。

interview with 快速東京 - ele-king


Punk Heavy Metal

快速東京
ウィーアーザワールド

felicity

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 「僕たちは悪者だから」と一ノ瀬雄太は取材の最後にぽつりと言った。
 快速東京は悪者ではない。が、そう言いたくなる気持ちもわからなくもない。彼らは、いまの日本では確実に少数派だろう。涙もろく、猫も杓子も「がんばれ」のこのご時世、快速東京の切り込み方は例外に思える。「ムダじゃん、ムダじゃん、いいじゃん」とか、「あー、ムダじゃん、絶望なんて」とか、ニヒルな言葉を撃ちまくる。いまどき、こんなパンク・ソングなんて誰が聴こうか。
 快速東京は浮いている。ふざけているし、ナンセンスを面白がるような、ある種プリティ・ヴェイカントな感性が、真面目腐った日本で素直に受け入れられるとも思えない。思えば、セックス・ピストルズも出て来たときはアレルギー反応を示した人が多かった。時代は変われど、世のなかに何となく生まれるもやっとした情緒にあらがう小さな存在の扱いとは、だいたいそんなものでしょう。が、こういう人たちが切り拓くところには、いつの日か心地良い風が吹くものでもある。

 2013年の1年を通して、個人的にもっと数多く見たライヴが、快速東京だった。レーベルの担当者よりも多く見た自信がある。彼らが演奏するライヴ会場に行けば若い子たちが踊っている。そして、筆者よりじじいなストーンズやキッスの10倍の速さで福田哲丸が踊っている。ミック・ジャガーとマイケル・ジャクソンを高速で動かしたような面白い踊りだが、いつぶっ倒れてもおかしくない運動量で、ときにそれは「面白い」以上の迫力を見せる。
 哲丸が自らの音楽を「娯楽」とエクスキューズするわりには、その規模はまだ小さい。大きければいいってものではないのだが、彼らは規模の大きなバンドを好んでいる。筆者なんぞは、彼らが尊敬するキッスにもメタリカにも関心を持たない人間であるのだが(ブラック・サバスだけは別)、快速東京の「いま」には共感するところがある。

 この若いパンク・バンドは、大人の憂鬱をよそに、「いまを生きる」ことを強調する。LIVE NOW DIE LATER──いまを楽しもう。快速東京にとって3枚目となる『ウィーアーザワールド』が1月15日に発売された。音楽的にはいままでの路線と大きな変更はないが、表現の幅は少しばかり広がり、ゲストにはラップ・グループのコチトラ・ハグレティック・エムシーズも参加している。彼らの基本にあるのはパンクとメタルで、アメリカ系の乾いた質感を特徴としているわけだが、そのサウンドは哲丸の、叙情性のいっさいを排除した簡潔な言葉表現と良く合っている。ダメじゃん、と思えるからこそ楽になれる、前に進める、そういうやり方で彼らは時代に挑んでいる。

 以下のインタヴューからは、その歴史性を失ってからのロックの現在が読み取れるかもしれない。彼らが実は2000年代の東京のハードコアに影響を受けていたこともわかる。これはリアルな話だ。筆者でさえもその時代はハードコアのライヴハウスに足を運んだものだ。彼らがまだ10代の頃、西荻のライヴハウスで会っていたかもしれない……取材には、ギターの一ノ瀬雄太、ヴォーカルと踊りの福田哲丸、ベースの藤原一真が参加してくれた。

「“ムダ”。暗いよね、これ」(哲丸)
「暗い」(一ノ瀬)
「実はさ、これ、希望なんだけどね」(哲丸)

なんでもいいワケじゃないぜ
どうでもいいだけなのだ
ムダじゃん ムダじゃん いいじゃん
 “ムダ”

先日のクアトロのワンマンが大盛況だったんだってね。良かったという評判しか聞いてないんだけど。

一ノ瀬:ほー。

あんなにたくさんのお客さんがいるのがすごかったと、行った方々が言っててね。自分たちでも、ようやく快速東京が受け入れられてきた実感はありますか?

一ノ瀬:クアトロでワンマンをやると決めて、直前になってゲスト枠を増やすとか、そういうことをしなくて良かったなとか(笑)。

哲丸:人が増えてるなーとは思うけど。でも、増えてるからどうのとは思わない。

冷静だねー。

哲丸:増えてんなー! ぐらい(笑)。

1年ちょい前に快速東京と知り合って、それ以来、何回もライヴを見させてもらって、つくづく思ったのは、日本の音楽文化というか、シーンのなかでは、ホントに、似たものがいない。良い悪いの話じゃないんだけど、浮いているよ。

哲丸:へへへへ!

ある種逆風のなかで活動しているっていうかさ。いまの日本のシーンで、快速みたいなことをやってオーディエンスを増やしていくのって、すごいよ。この面白さを理解してもらうのが、こんなに大変だったとはねー。

哲丸:ハハハハ!

一ノ瀬:キリンのCMはそこを逆手に取って、コレを見たら気になる人も増えるだろうと思ってやってるんだけど、クアトロのワンマンも、それまで普通にワンマンやるとチケット売り切れるんで、キャパを少し広くしていかないとお客さんに悪いなって気持ちでやったから。クアトロでやりたいって思ってやったわけじゃなく、クアトロでやらないと入れない人に悪いなって気持ちでやったんですよ。

哲丸:やったらできたみたいなね。

そういうスタンスだと思うし、作年末の踊ってばかりの国との「東京ダンス」じゃないけど、まずは楽しんでもらいたいってことをやっていると思うんだけど、それがストレートに伝わらないという、変な状況もあるでしょう。

哲丸:それでもやりゃあいいじゃんってスタンス。

クアトロのライヴでの哲丸君のダンスはどうだったの?

哲丸:いやね、正月明けで、怠惰な生活がたたってか、カラダが重たくて(笑)。

いつものキレがなかった(笑)。

一ノ瀬:僕らは演奏しているから、哲丸の動きはよく見えてないんですよね。映像を見ると、「動いてるな、この人」って思うんだけど。

哲丸:(動くしか)やることないからね。

で、新作『ウィーアーザワールド』、すごく良いアルバムだと思ったし、この表現は快速にしかできないと思うんだけど、ただね、今回のひとつの関心としては、いろんなことが出来たと思うんだよ。

哲丸:そうだね。

3枚目だし、音楽性をどうするかって言ったときに、いろんな選択肢があったじゃないですか。

哲丸:流行っていたんだよな。

一ノ瀬:そうそう。

何が?

一ノ瀬:来日ラッシュがあったんですよ。ブラック・サバス、メタリカ、キッスと。けっこうメンバー全員行って。

ハハハハ、その流れすごいね。

一ノ瀬:オレ、去年ブラック・サバス死ぬほど聴いたし、まあ昔のアルバムだけど。

ああ、たしかに昨年もTシャツ着てたもんね。

一ノ瀬:ホントにそれだけ(笑)。

いや、でもスタジオ録音なわけだし。仮にブラック・サバスだとしてもスタジオ録音だからこそできることを追求するとか、いろんな選択肢はあったと思うんですよ。でも、大雑把に言って、ライヴ演奏とそう大差ない作品に仕上がったよね。

哲丸:ライヴのことしか考えていないからだよ。

ああ。

哲丸:曲作りの段階でライヴのことしか考えていないから。

一ノ瀬:そうそうそうそう。

哲丸:短くて速くて、明るくてポップで、軽快な曲はいっぱいあるから、あのセットリストに足りないモノを、なんとなく考えながらやった。

なるほど。あくまでライヴありきの楽曲なんだね。

一ノ瀬:他の楽器を入れるっていう発想は一回も出なかったすね。

哲丸:そうだね。

一ノ瀬:ギター的には、ライヴではできないことやっているところがあるんですよ。2本録ってそれぞれ違うことやってるっていう。

それは初めて?

一ノ瀬:やってたかな。ギターに関しては。

哲丸:やってたけど、今回のほうが激しいわな。

一ノ瀬:そうね。

哲丸君と一ノ瀬君ふたりの友情関係は大丈夫だったの?

一ノ瀬:いや、もう、最初から一回も仲良くないから。

ハハハハ!

哲丸:いや、変わらないよ。ずっと一緒。

一ノ瀬:永遠に仲悪いから。

ハハハハ、面白いな-(笑)。本当に仲悪いからね。なのに、しっかり作品作れるからすごいよ。

哲丸:そこは櫻木さん(※レーベルのボス)の仕事だから。

一ノ瀬:オレらはね、ワイワイやってればいいから。

仲良しで「良いね」「良いね」なんて言い合ってるようじゃダメでしょう。喧嘩ぐらいしなきゃ良い物なんてできないよね。偉大なバンドはみんなメンバー仲悪いじゃん。

哲丸:今回はね、来日があったことが大きかったかも。

一ノ瀬:大きいよ。

哲丸:険悪な関係でも、キッスが来たら一緒に行くとか(笑)。

一ノ瀬:そう。

哲丸:ブラック・サバスが来て、雄太だけ行って、その感想を聞いて「良いなー」って思うとか。

一ノ瀬:こいつ、来日アーティストに高い金払って見に行くって発想なかったから。

哲丸:でもキッスは行かないと。

一ノ瀬:オレはガキの頃にオヤジにストーンズとか連れて行かれてるから、そういう発想があるんだよ。

哲丸:こういう、仲が悪くても好きなモノが一緒だから、好きなモノの話はできるじゃないですか。

一ノ瀬:いやでもね、見方が違う。

哲丸:ホントに見方が違う。

一ノ瀬:感想の話とかすると揉めるもんな。

哲丸:へへへへ!

一ノ瀬:面倒くさい!

哲丸君はホントに面倒くさいよ。

哲丸:いいんだよ!

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オレらがバラードを作ることはないってことだけはわかっているんですけど。「やらない」ことははっきりしているんだけど、「やりたいこと」はわりとほんわかしていて。


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快速東京
ウィーアーザワールド

felicity

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リリースが予定よりも遅れたじゃない。それは何でだったの?

一ノ瀬:あれはね、googleのキャンペーン・ソングとかあったからだもんな。

哲丸:いろいろやってたから。

キリンのCMもね。

一ノ瀬:ああいうのがあったり、いろいろあったから、レコーディングを遅らせてもいいかという話になったんです。

哲丸君は昔から歌詞を書くのが早いと評判だけどさ。

哲丸:オレ、遅かった。今回は遅かった。

一ノ瀬:なんか、最後の最後まで、ごにょごにょやってたよな。

哲丸:書き方を変えたんですよ。みんなちょっと変えたように、オレもちょっと変えたいと思った。オレは楽器持ってないから、変えられるのは歌詞の書き方だけだって。

歌い方も変わったよね。

哲丸:ホント?

一ノ瀬:メロディが出現しているんですよね。

あと、歌い方がよりパンキッシュになった。

一ノ瀬:ほー。

哲丸:へー。

それない?

一真:ジョニー・ロットン風味になった。

ねえ?

一ノ瀬:それもねー、さも考えているようだけど、実は考えていないから。全然そんなことない。

哲丸:ハハハハ。

でもオレは、今回のアルバムでアンガー(怒り)をより強く感じたんですよ。

一ノ瀬:そこはね、オレは哲丸も大人になったなと思ったところがあったんだけど、でも、ちょっと説教臭いんじゃない?

えー、全然説教臭くないよ。むしろ、快速東京は、情緒とか、詩情とか、日本人が好きなウェットな感情をホントに取り入れないじゃない。

哲丸:入れないね。

それを売りにしないというか、そこが素晴らしいと思うんだよ。

哲丸:娯楽だから。

一ノ瀬:その解釈はすごいね。たしかにそうかも! そういうものは全然オレらにはないですね。

娯楽って言ってもね、ビジネスを考えれば、しんみりした音楽のほうが売れるわけだよ。

哲丸:そこを考えてないから。

わかってて逆らっているのか、はなっからそれがないのか。

哲丸:はなっからないんだと思う。

そうなんだ。

哲丸:音楽をやる理由がそこにない。

一ノ瀬:だけどね、意外とオジー・オズボーンやメタリカは詩情を出しているときもある。キッスにはないけどね。

オジー・オズボーンはなんかわかる。

一ノ瀬:子供が生まれたときに優しい曲を書いているんですよ。けっこう、可愛いヤツなんですよ。

哲丸:生まれたらオレだって書くかもよ。

一ノ瀬:ブラック・サバスで最初あんなダークなアルバムを作ったのも、当時ゾンビ映画を作っていて、ただそれだけだっていうね。

あの人たちは工場の町の労働者階級に生まれ育ったから、その環境に影響されたとも言ってるけどね。

哲丸:それはわかる。そこへいくとオレたちは、まあまあ幸せな家庭に育っているから、そんなヤツらが「生活が-」とか歌っても説得力ないじゃん。

そうは言うけど、哲丸君の言葉には何か訴えるものがあると思うよ。今回も“ハラヘリ”とか“ダラダラ”とか“ムダ”とかさ、良い歌詞がいっぱいあって、さらに言葉の力も強まっていると思ったけど。

哲丸:お、“ハラヘリ”っていま言ったよ(笑)。

一ノ瀬:すげー、“ハラヘリ”に言及した(笑)。

面白いよ、あれ。

哲丸:だよねー。ほらー、ハハハハ!

一ノ瀬:やっぱ虚無感みたいなもの(笑)?

哲丸君がいちばん気に入っている歌詞はどれ?

哲丸:いや、別に、歌詞はぜんぶよく書けているでしょう。今回は、たくさん書いて、削って作っているの。このことは、原爆オナニーズのタイロウさんとの対談が関係しているんだけど、ま、それはいいとして、歌詞かぁ。

一ノ瀬:気に入ってる曲は何よ?

哲丸:オレは“ヤダ”とか好きだよ。

一ノ瀬:“ゴハン”がいいって言うのは?

哲丸:“ゴハン”は、曲における歌詞という意味では、いちばんハマったなと思ってる。僕のなかのパンクというぼんやりしたもののなかに、“ゴハン”という曲はばっちりハマった。書いて、「わー、パンクだ、これ」と思った。

一ノ瀬君は?

哲丸:知らないだろ、歌詞なんて。

一ノ瀬:いや、こないだも久しぶりに聴いたけどさ。オレはやっぱ“メタルマン”がね。

哲丸:ハハハハ。

“メタルマン”と“あくまくん”が好きなんだ。

一ノ瀬:ていうか、“メタルマン”はオレの曲で、オレが種を撒き、「お前ら触るなー」って育てているわけですけど。で、“メタルマン2”の歌詞を書いたとき、哲丸もやっとオレが言ってることがわかってきたなと思って。それは、歌詞の内容じゃなく、アクセントの置き方とか、そういうところで、他の曲は、オレが思っていたアクセントとは違っているところがいっぱいあるわけ。だけど、“メタルマン”は、アクセントが良い感じで入っている。

哲丸:一真はどれが好き?

一ノ瀬+哲丸:思い出して!

一真:……。

ここに歌詞カードあるよ。

一真:……。

もっとも哲丸らしいなと思うのはどれ?

一真:……。

“ダラダラ”なんか哲丸節って感じじゃない?

一ノ瀬:これは説教臭さがないですよね。

哲丸:あれは時間がかかってない歌詞だね。

一ノ瀬:“アトム”なんかは哲丸にしては……。

哲丸:いや、あれはいろいろあんだよ。

ポリティカルだしね。

哲丸:ハハハハ。

一ノ瀬:そういうことは出さないほうが、あんときは格好いいと思っていたんだけど……

一真:“ムダ”。

哲丸:“ムダ”。暗いよね、これ。

一ノ瀬:暗い。

哲丸:実はさ、これ、希望なんだけどね。

一ノ瀬:とにかく、哲丸の変化は感じてましたね。

哲丸:いいじゃん。

一ノ瀬:難しいことを言うようになったとは思いましたね。

一真:「じゃん」って言い方が哲丸らしいよね。

哲丸:ハハハハ!

一ノ瀬:腹立つよね。

え、なんで(笑)?

一ノ瀬:うーん!

哲丸:ハハハハ!

一ノ瀬:まあ、歌詞はこいつの聖域だから、よほど迷っているときぐらいしか、オレらにも相談しないし、せいぜい「どっちが1番がいい」ぐらいだよね。

哲丸:そうそう。

音楽的な主導権は一ノ瀬君なの?

一ノ瀬:いや、それは全員。

哲丸:「このあとどうしたら格好いいかな」とか、「キッスだったらこんなにドラムを細かくしないよ」とか。

一ノ瀬:意外とみんなで話しているんですよ。オレが主導権を握ったのは“メタルマン2”ぐらいで、あとはみんなで話し合ってやってますね。誰かが主導権握って、ひとりの頭で作れば、スタジオ代1/4で済みますよ。必ず、音を出して、確認するんですよ。オレがギターを弾いて、それをみんなで聴いて、そこからリズムを考えてって。時間がかかるんです。

哲丸:意外と建設的だよね。

一ノ瀬:全員が「いい」ってなると、「ヨシ!」ってね。

しかし、今回は3作目だしさ、何か仕掛けてくるかなという期待もあったんだけどね。変化球とかさ。

哲丸:やらんね。

一ノ瀬:オレら、そんなにクレバーじゃなかったんでしょう。

いや、賢さっていうか、バンドの信念みたいなものがあるのかな?

一ノ瀬:実は、信念もそんなないし……いや、オレらがバラードを作ることはないってことだけはわかっているんですけど。「やらない」ことははっきりしているんだけど、「やりたいこと」はわりとほんわかしていて。将司がおそいリズムを叩きたいと言ったのも意外だったし、あいつがキッスを聴き出したりとか。メタリカも遅い曲あるし。みんながステージに上がってやりたいことをやる、で、一真だけが一段上から見下ろしているっていうね。

哲丸:(一真が)いちばん冷静な判断をするからね。

一真君もキッスやメタリカが好きなの?

一真:好きですけど……。

哲丸:ハハハハ。

強制されたの?

一真:いやいや、そういうわけじゃないですけど。高校のときに聴いてたけど、最近は聴かないですね。

だってさ、世代的にはおかしいでしょ。キッスはオレが小学校のときだったし、メタリカだって80年代からいるバンドだし。

一ノ瀬:メタリカやストーンズを好きなのって、僕らよりも下が多くて。
意外なんだけど。

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東京のリアルってハードコアだったんですよ。哲丸もやっぱそうだし。東京人はみんな聴いていたんだよな、ハードコア。


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快速東京
ウィーアーザワールド

felicity

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ずっと思っていたんですけど、快速東京のお客さんは本当に若いじゃない。若い人が多いよね。

一ノ瀬:オレらの世代は、せいぜいニルヴァーナとか。もうちょっとリアルタイム感があったんですよ。90年代の音楽だったりとか。でも、いまの子たちは、ネットのせいなのか、マジで時間がフラットなんですよ。2000年以前はぜんぶ一緒くたに考えているから。

哲丸:「昔の音楽」みたいな。音楽の時間軸がない。

一ノ瀬:アナログ・レコーディングもエフェクトのひとつぐらいにしか考えてないから、悪い音でも素直に聴けてしまっているんだよね。オレらよろ上になると、80年代以前は古くさくて聴けないみたい人もいるんだけど、(中尾)憲太郎さんとかそうだよ。うちのプロデューサーです。ナンバー・ガールのベースやっていた。「オレらのときは、ニルヴァーナより昔の音は古くさくて聴けなかったけどね」って言ってたよね。リアルタイム感があるんですよ。

哲丸:ロックにまだ時間軸があったときだよね。

一ノ瀬:いまではもう歴史になってるから。いまロックが生まれている実感がない。

まあ、言い方変えれば、ブラック・サバスと競り合わなければならないわけだ。

一ノ瀬:そうそう。新しいものを目指すとロックから離れなければならないという、この矛盾を抱えながらやっている。最近メジャー・レーベルがやっているのは、みんな、裏打ちの速いリズムで、そこに日本人ぽいメロディが乗るっていう。それってでも、日本にしかないから、新しいんですよ、サビでハモっちゃたりして。

ちょっとエモな感じ?

一ノ瀬:90年代のエモの影響は大きいですよ。でも、イギリスなんかは、アークティック・モンキーズみたいに、ちゃんとブルースの影響が残っているところが面白いなーと思いますね。

哲丸:日本にはロックがなかったからさ。

一ノ瀬:メロディがさ。

哲丸:歌謡曲みたいになっちゃうんですよ。

一ノ瀬:アメリカ人がロックやると、そうはならない。

哲丸:生活にロックがある感じがするんだよね。

一ノ瀬:生まれ育ったところのメロディが違うんだよね。

みんな、同世代のなかでも浮いてたでしょ?

一ノ瀬:どこで?

学校とかで。

一ノ瀬:多摩美時代には、テクノ好きばかりだったね。

マジで?

一ノ瀬:ホント、そうすよ。オレの入ったときは、『トレインスポッティング』世代が多くて、みんな“ボーン・スリッピー”から入ったみたいな。
週末はアゲハに行くみたいな(笑)。そんなヤツばっかりで、オレなんかが「ギター弾いてるんだよね」って言うと、みんなピンと来ないっていうか。やっとテクノ・ブームが終わりつつあるよ。東京人からすると、東京のリアルってテクノじゃないんだよね。オレが高校のときは、みんなバンドだった。銀杏ボーイズも人気あったけど、東京のハードコア・バンドに詳しいヤツ、いっぱいいたもん。で、大学に入ったら、田舎もんがいっぱい来て、「東京はテクノだね」って。

それ何年の話?

一ノ瀬:8年前ぐらい?

『トレインスポッティング』って1996年の映画だよ、多摩美のその子らが時代錯誤だっただけでしょう。

一ノ瀬:そうそう、田舎もんなんですよ。

“ボーン・スリッピー”なんてもうかなり昔だよ(※1995年)。テクノのDJ、いまさらそんなものかけないから。

一ノ瀬:だから音楽好きじゃないヤツらが、テクノとかって言いだして、アゲハ行ってって、そんな感じだったんですよ。

それはダサ過ぎるよー。

一ノ瀬:ですよね。まあ、それはとにかく、東京のリアルってハードコアだったんですよ。哲丸もやっぱそうだし。東京人はみんな聴いていたんだよな、ハードコア。

オレでさえSFPを聴いていたからね、2000年代の東京がハードコアだっていうのは理解できる。みんなはどんなハードコアを聴いていたの?

哲丸:僕はレス・ザン・TVですよ。僕は、どしゃーと社会的なことを歌うのは耳が痛いってなってしまうんですけど、レス・ザン・TVの面白さは、客がみんな爆笑しているんですよ。だからあの人たちがやっている音楽にはユーモアがある。だけど、「それがどんな音楽か」と訊かれれば、ハードコアとかパンクとしか答えようがない。その現象が、僕にはハードコアだと。

一ノ瀬:ポリティカルなヤツらって、ハードコアにいなかったよね。

哲丸:いなかった。

一ノ瀬:BREAKfASTの“VOTE!!”が出たときは、すごかった。革命を感じたね。そこを歌ってしまうんだ! って思った。

哲丸:あれはすごかった。面白かったもん。

へー、ちょっと意外。でもさ、BREAKfAST聴いている子なんて、同世代で言ったらかなりの少数派でしょう。

一ノ瀬:そりゃそうですよ。

哲丸:みんな、くるりとかさ、ナンバー・ガールとか、アジカンとか。

一ノ瀬:ハイスタの残り香のあるようなのとか、そういうのはいたけど、オレがクラプトンのライヴに行くことを理解できる友だちはいなかったです。

哲丸:オレもひとりでレス・ザンのライヴに行っていたから。

一ノ瀬:そういえば、高校のときもメタリカ聴いてたヤツなんかいなかったなー。

だから一ノ瀬君が高校生のときなんか、メタリカのピークは過ぎていたでしょ。

一ノ瀬:そうっすね。

哲丸:オレらの世代だと、まわりは、洋楽自体をもうあんま聴いてなかったもんな。

一ノ瀬:グリーンデイぐらいじゃない。オフ・スプリングとかね。

哲丸:ああ、そういうのはいたね。

一ノ瀬:そこを入口に深いほうに行くヤツはいたよ。

哲丸:オレのまわりにはいなかったな。

いまの、ハードコアが背景にあるのは面白い話だと思ったんだけど、快速東京のライヴでもみんな笑ってるじゃん。

哲丸:やっぱそうじゃなきゃ、意味ないもん。

一ノ瀬:楽しむことがいちばん大切なのに……、楽しくないライヴ多いよね。

哲丸:ライヴを聴いて、次朝起きて曲を思い出して、そして思いを深めてとか、止めて欲しい。オレらのライヴが終わったら、それはそれまで。オレらの話なんかしなくていい。

一ノ瀬:そこは見に来た人が勝手に考えることだろ。

哲丸:ぜんぜんそうなんだけど、僕がやりたいのはそういうこと。

余韻を残すようなことはしたくないだよね。

哲丸:その瞬間に「イエー!」で。

ユーモアとか反抗心とか、いろんなもんが吐き出ているんだけど、スカッと終わる。

哲丸:娯楽だから。

一ノ瀬:エンターメインメントだから。

ところが日本のロックって、なんかちょっとトラウマがないとっていう。

一ノ瀬:そうそう。

哲丸:あれなんでなの?

一ノ瀬:演歌だからね。不倫のカルチャーでしょ。

哲丸:やべー(笑)。

なにそれ?

一ノ瀬:不倫の歌って多いじゃないですか。でもオレ、“孫”とか売れたときに晴れやかなものを感じて、演歌も進化してんなーと思ったことがある。

哲丸:氷川きよしもいいよな。♪やだねってら、やだね~。

一ノ瀬:あれ、ロックだよ。ジェロも良いよね。でも、“天城越え”とか言われると「ちょっとなー」って。

“天城越え”、いい曲じゃん(笑)。

哲丸:良い曲なんだよ(笑)。でもなー。

一ノ瀬:「越えられてもなー」って(笑)。

ハハハハ。

一ノ瀬:オレら、わりと真面目に音楽聴いてるんですよ。演歌だってちゃんと聴いてる。

そうだよね、“天城越え”なんか君らの世代は知らないものね。

一ノ瀬:アイドル文化の歌詞には最近は違和感を感じね。「みんな元気を出しましょー」とか。なんか、気持ち悪いんだよね。アイドル・カルチャーこそ本来はエンターテインメントであるはずなのに。

哲丸:ありゃ-、また別モノだからな。

銀杏ボーイズの峯田君が、アイドルよりもこっち(ロック)のほうが格好いいよってことは言いたいみたいな話をしてて。たしかに、オレも正月帰省して同世代のヤツらと会ったりして、同世代のいいオヤジがアイドルに夢中になっている様を見ると、ちょっとマズいかもって思っちゃうよね(笑)。

一ノ瀬:合法ロリっていうか、海外ではNGじゃないですか。レディ・ガガがあれを批判的にやってるってことを気づけてないこともすごくダサいし。アンチテーゼってことが理解できてないんじゃないのかなって思いますね。

哲丸:お国柄かな。

一ノ瀬:励ましソングもいいけど、実際に励ますとき、励ましの言葉じゃない表現もあるじゃないですか。「元気出せよ」じゃなくて、「ふざけんなよ、おまえ」っていうのも励ましだったりするわけですよ。そういうことが理解できなくなっちゃったんですよ。

哲丸:みんな疲れちゃってんだよ。

一ノ瀬:疲れかぁ?

哲丸:だって、満員電車に乗ると、隣のサラリーマンのイヤホンの音がもれてくるわけですよ。そうするとさ、西野カナとか、慰めている曲を聴いているわけですよ。「がんばって」とか。「大丈夫だよ」とか。「なんとかなるよ」とか。そういうのばっか聴いてる。みんな、余裕がないですよ。ロックは、余裕がないとできないと思っているから。

心の余裕だよね。

哲丸:そう、心の余裕。

一ノ瀬:金銭的な余裕がまったくないのも問題ですけどね。

哲丸:余裕がないんだよ。

一ノ瀬:オレ、そこだけじゃないと思うけどな。そこもあるんだけど、やっぱアンチテーゼを理解できないってことも大きいと思うよ。たとえば会田誠の絵を見てさ、あれはただのロリ好きのおじさんって本気で思っちゃってるじゃない。

哲丸:思ってるね。

一ノ瀬:でも違うじゃん。あれはアンチテーゼじゃん。そこが理解できないのよ。その裏側に何があるのかってことを。

哲丸:だから、考える余裕がない。

一ノ瀬:ま、それもそうか。

哲丸:見たまんま理解しちゃってるから。

一ノ瀬:宮崎駿の作品でさえ批判があるのに、なんでアイドルにはそれがないのかって。

別にその人の趣味だったらどうでも良いけど、2~3年前までロックについて書いていたような、偏差値高そうな連中まで本気で論じちゃったりとかね(笑)。

一ノ瀬:昔のちゃんとしたアイドルとはまた別モノだからね。海外にもアイドルいるけど、歌うまいし、曲も自分で書いたりしているし。でも、日本では、なんかおっさんに踊らされてるっていうか。小学生や中学生の女の子は憧れらるからなりたいと思うじゃないですか。

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会田誠はそのあたりうまいよね。アンチテーゼをうまく出せていると思う。直接的な言い方はしないけど、めちゃくちゃ批判しているっていうね。


Punk Heavy Metal

快速東京
ウィーアーザワールド

felicity

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踊ってばかりの国もそういうところがあるけど、哲丸君の歌詞にはトゲがあって、でも、いまの日本ではそのトゲを見ないようにするっていう風向きが強いよね。

哲丸:ハハハハ。

一ノ瀬:会田誠はそのあたりうまいよね。アンチテーゼをうまく出せていると思う。直接的な言い方はしないけど、めちゃくちゃ批判しているっていうね。

傷つけ合うのが恐いみたいな空気感があると思うんだけど、快速東京は良いよ、ふたりが仲良く喧嘩しててさ。

一ノ瀬:銀杏ボーイズみたいに(売れている)数字もあって、知らない人はいないような存在でさえも、なんかメインストリームからははじかれるっていうか。アイドルって、結局、無害で、いっさいの苦情が来ないような、綺麗なことしか歌えないようなカルチャーになってしまっているわけですよ。あの子たちもすげーがんばって、だんだん人気も出てって、それで会場も大きくなっていって、ももクロじゃないけど、日産スタジアムでどかーんって。それを記録して、見せて……で、それって、キッスとどこが違うだ? って言われれば、「同じじゃん」とも思うんだけど(笑)、でも、それを気持ち悪いって言う人間がひとりもいない状況は絶対に良くないよね。

哲丸:まあ、アイドル自身は悪くないからな。

一ノ瀬:でも、人生のいちばん大切なときに勉強しないでさぁ、どうするんだろうなぁって思うよ。

日本のロック・バンドにがんばって欲しいよ、マジで。

一ノ瀬:がんばったほうがいいすよね。まあ、オレの読みでは、もうすぐロック・ブームが来るので。

どこに根拠があるの(笑)?

一ノ瀬:いや、もう流れがきてますよ。僕の世代では、モーニング娘が下火になったときに、銀杏が出てきている。だから、AKBがそうなったときに(ロックが)出てきますよ。まあ、これだけアイドルの時代が続いてるんだから、そろそろ下火になっていくでしょう。

今日は、せっかく一真君がいるんだし、彼の話を聞こうよ。

一ノ瀬:いいね!

一真君から見て、いまバンドはどう?

一真:どうって?

この1年で、どう飛躍したのか、どう変化したのか、どう……。

一真:どう変化?

なんか感想あるでしょう?

一真:あんま変わってないですね。最初からこんな感じですよ。

バンドにとってベースは重要だよね。

一ノ瀬+哲丸:ハハハハハ!

一真:ホントは、もっとうまく演奏したいんですけど、できないんで……。

一ノ瀬:いいよ、ルート弾きが似合っている人もあんまいないから。

哲丸:一真はそこにいるだけで格好いいんだよ。

一ノ瀬:ここにめちゃくちゃうまいヤツが来ても面白くないから。

哲丸:そんなじゃ、やる気なくなっちゃうよ。

一ノ瀬:オレ、絶対にソロ弾かないよ。

一真:ホントはね、フーみたいなベースを弾きたいんですけど。

一ノ瀬+哲丸:おいおい!

哲丸:すごいの出すね-(笑)。

志は高いほうがいいでしょ。いずれベースソロが聴けそうだね。

一ノ瀬:ルート音のベースソロね。♪だらだだ~。

哲丸:格好いい~、格好良いね。

今回の『ウィーアーザワールド』は、資料には「東京から世界へ」って書いてあるけど、本気で世界進出を意識しているの?

一ノ瀬:前作が『ロックインジャパン』だったから、今回は「ワールド」ってことで広くなるのと。

ハハハハ、「ジャパン」の次に「アジア」とか、それはなかったの?

一ノ瀬:たまたま“ウィ・アー・ザ・ワールドを聴いたんですよ。「これだ!」って。で、後付けの意味としてはだんだん広くなっている。意味ありげなね。オレらがそれを言ったら、マイケル・ジャクソンの“ウィ・アー・ザ・ワールドとは別の意味を持てるだろうって。『ロックインジャパン』のときも、オレらが同じ言葉を使えば、あのフェスとは別の意味を受け取る人もいるはずだと。発言者によって意味が変わって聞こえる有名な単語。

オレは深読みしちゃって。

哲丸:それはしてくれたほうが良いね。

一ノ瀬:深読みしやすいタイトルだからね。

「オレたちが世界だ、おまえたちに見えてない世界がここにある」っていう風に。

一ノ瀬:あ、それ良いね。

哲丸:そうしよ。

一ノ瀬:良いタイトルだな。

哲丸:それで決まりだな。

ところで今回のデザインは何? 不評だった、カッターで切らないと開かない仕様をまたしても踏襲しているけど。

一ノ瀬:いや、これは意志持ってやっているんだから! 中古対策なんで
す。BOOK OFFに持っていっても、ジャケが破けているから、値段が下がるはずでしょ。

売るなと。

一ノ瀬:そう。あとは自分で開ける感動だよね。一回PCに取り込んでもう開かれないCDじゃなくて、友だちにデータ送るんじゃなくて、モノとしてこのCDを貸してやって欲しい。

デザインは一ノ瀬君の聖域になっているの?

一ノ瀬:いや、ベースはオレが考えているんですけど、歌詞カードは前作の倍の大きさにしたいってい意見があって。

歌詞カードの文字もでかいしね(笑)。

一ノ瀬:だから重いんだよ。

哲丸:重いCDっていいじゃん。モノ感があって良いよ。

一ノ瀬:オレは紙のケースが良かったんだけど、意外なことに哲丸がプラケースが良いって。

哲丸:オレはデジパックでも良かったけど、雄太のアイデアがデジパックでなければいけないほどのものじゃなかったから、じゃあ、プラでいいんじゃない? って。

細かい話だけど、『ウィーアーザワールド』のこの書体は?

一ノ瀬:ハハハハ、それは勘亭流っていういちばんダサい書体で、そのダサい書体をどう使うのかっていうのが自分のテーマとしてあって。

哲丸:これだけはオレも一発で良いなって思ったね。

一ノ瀬:説明しちゃうと、段ボールに「取り扱い注意」ってステッカーが貼ってあるイメージなんです。

いちいち理由があるんだね。

哲丸:ハハハハ。

一ノ瀬:そう、ぜんぶ理由があってやっているから。

(了)

#1 Cherry Brown - ele-king

■サウス×アイドル×アニメ=Cherry Brown

「彼女ですか? いるわけないじゃないですか! 僕、人見知りだから初対面の人と会話ができないんですよ(笑)。『なに話したらいいんだろう?』ってなっちゃう」

 Cherry Brownは大きな目を見開いて笑いながらそう話した。彼は正直な人間だ。

「どのジャンルだから聴かないとか、そういう壁みたいなのは薄れちゃいましたね。もともとはサウスのヒップホップが大好きだったけど、『らき★すた』がきっかけでアニメにハマって。時期は高校を卒業したばかりの3月で、とくにすることもなくいつものようにネットを観てたんですよ。ちょうどその頃、ネットで『らき★すた』のオープニング曲の「もってけ! セーラーふく」がヤバいって話題になっていたんです。それで興味を持って観たら、一発でやられちゃって(笑)」


“もってけ! セーラーふく”

「アイドルだって、昔は大っ嫌いだったんですよ。モーニング娘。とかがラップっぽい曲とかやってるのとかも“ダサー”って思ってたし。 偏見がなくなったいちばんのキッカケはPerfumeにハマったこと。『チョコレイト・ディスコ』ですね。当時通ってた音楽の専門学校で仲良くなったさつき が てんこもりが僕に教えてくれたんですよ。あの曲が良すぎて、それまでアイドル・ソングに対して持っていた偏見や壁みたいなものがなくなってしまった。そしたらどんどんいろんな曲が自分の中に入ってきて。ももクロもZになる前までが好きでした。あの頃のほうが単純に曲が良かった。しおりん(玉井詩織)に関しては別ですけど(笑)。ずっと好きです」

「好きなものからの影響って自然に出てきちゃうんですよ。“サウスとアイドルを混ぜてやったら(表現したら)クールだろう”とかそういう意図はぜんぜんなくて、自分の中にあるものを表現したら自然とこういう形になっていきましたね。僕がヒップホップのトラックメイカーだからといって、アニメやアイドルが好きなのを隠してサウスのトラックしか作らないのは、それこそ不自然だと思います」

 この考え方は彼のリリックにも表れている。

NΣΣT“All That I Can Do feat. Cherry Brown”

NΣΣT“All That I Can Do feat. Cherry Brown”抜粋

まぁぶっちゃけると好きな子がいるんだ
正確にはいた そう、今は違うさ
久々だった本当あんな夢中になったのは
いつも気づいたら想ってた君を脳内でうつしてた
キモいのはわかってるけどメールがない時迷いながらもツイッター覗き見
どうしようもなかった本当に 超考えてたよ付き合ってもないのに
でも特に何も変わらず過ぎてた半年 1歩近づくと5歩は離れるの繰り返し
いいかげんそういう君にしたようんざり


チェリー・ブラウン
エスケーピズム

ビクターエンタテインメント

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 この曲について彼はブログで「聴けばわかると思うんだけど歌詞がストレートすぎるというか・・・剥き出しというかwww これはなーーって思ったんでお蔵入りしてたんだよね」と綴った。

 ヒップホップは「お題」に対してどれだけ面白い/カッコいいことを言えるかを競うコンペティションのような側面がある。実体験をもとにしていれば、他のラッパーが言えないディティールをリリックに入れ込むことができる。それは説得力のある強いラインにつながる。つまりラッパーにとっては自身の「リアル」をどう定義するかが、非常に重要であると言えるだろう。

 以前AKLOはこんな発言をしていた。「日本のヒップホップシーンには不良で面白いやつはいっぱいいるけど、もうその枠は供給過多なんですよね(笑)。USのヒップホップシーンはそれこそいろんなキャラクターがいっぱいいるんですよ」。

 AKLOの言う通り現在の日本のヒップホップ・シーンには不良が多く、彼らの主張の多くは「ラップでのし上がる」というものだ。しかし、それはUSヒップホップのリアルであって、日本ではなかなか受け入れがたい考え方のような気がする。

 たとえば、アメリカでは街角のギャングから億万長者になったJAY-Zや、冴えない音楽オタクから一躍ヒップ・スターとなってしまったPharrellのようなアーティストが実在している。しかし日本にはまだそういった例が存在しないだけに、若者が「ラップで人生の一発逆転を狙う」と言っても説得力に欠ける気がするのだ。それこそ、「なんで日本人がヒップホップなんて」という、もうB-BOYなら耳にたこができるくらい言われてきた常套句を聞かされるのがオチだ。

 日本のロック・シーンにさまざまなアーティストがいるように、ヒップホップにだっていろんなアーティストがいるべきだ。MSCやANARCHYのようなギャングスタ・ラッパーも、5lackのようなマイペースなのに繊細なラッパーも、AKLOのようなUSヒップホップを意識的にトレースしたようなラッパーも、THA BLUE HERBのようなストイックなラッパーも。もっともっと、ラッパーの数だけリアルがあっていい。そしてそのすべてが正解なのだ。その数が増えれば、USヒップホップとは違う、日本のヒップホップの形がもっと見えてくる。

 Cherry Brownの存在は、ある意味で日本のヒップホップ・シーンが到達した“幅”の突端でもある。

DUPER GINGER“Dubwise Madness feat. Cherry Brown”

DUPER GINGER“Dubwise Madness feat. Cherry Brown”抜粋

週末 外には出ず 今夜もひとり家でチル
モニター通して聞こえてるみんなの声 まただぜ
どこか遊びに行けばよかったとひとりつぶやいて
わけわかんねえこと考えて 勝手にひとりで落ち込んで
(中略)
とくになんもすることないから 自分の部屋ベッドの上座ってる
お酒はチビチビ飲んでる そして適当な場所トリップ遠足

「この曲は普通に実話です(笑)。僕がこんなに引っ込み思案になった原因ですか? うーん……。女の子との関係性をうまく築けないという部分が、(僕の引っ込み思案の)根っこにあるかもしれません。小学生の頃はお調子者で「ちんこ、まんこ」とか言ってみんなを笑わせてました。でも、女子に対する積極性みたいなものはなかったんですよ。それを思春期にこじらせちゃって。積極性がないというよりも、むしろ引っ込み思案な人間になってしまった。そうなってしまう直接のきっかけや明確なトラウマみたいなものはないんだけど、小学生の高学年くらいからは女の子の視線も自分を嘲笑しているように感じてしまったし、そういう子たちの笑い声も自分に向けられているような気になってしまってました。まあ、いま考えれば被害妄想が激しかっただけだと思うんですけどね」

 こういった吐露をするアーティストは多い。だが実際には、彼らは大抵モテる。彼らの弱音はただのカッコつけツールなのではないか。ステージに立つ華々しい姿に反比例するかのような弱々しい自分を見せることで異性の興味を惹こうとしているのではないか……そうだとすれば、ずるいし、うらやましい。そもそも意識的にそんなギャップを作れる時点で、もしくはそれを女性の前で開陳できる時点で、「あなたは弱くない」と言いたくなる。
 そういった疑念は、もちろんCherry Brownにも持っていた。だから訊いた。「でも、彼女いるし、モテるんでしょ?」その答えが冒頭の発言につながる。「もちろん、昔よりはマシになってきてますけどね(笑)」。やはりCherry Brownはリアルだ。

■歴史

「生まれたのは横須賀の米軍基地の中です。先輩にも基地内で生まれた人がいて、その人いわく(基地の)中で生まれた人はLA出身になるらしいんですよ、神奈川県横須賀市ではなくて。でもそういうのを除けば、僕は横須賀生まれです。物心つく前には父の仕事の関係でアメリカで暮らしていたこともあったらしい。お父さんはマリーンでした」

 横須賀といえば、SIMI LABのMARIAが思い出される。彼女は自身の幼少期をこう語る「当時は基地のなかに住んでたの。なかにも学校はあるんだけど、あたしは外の小学校に行っててさ。お父さんは基地内のアメリカの学校に行かせたかったんだけど、お母さんはあたしが基地内の学校に進学するといずれアメリカに行っちゃうと思ったみたいで、日本の学校に行かせたのね。あたし、こう見えてほとんど英語力がないの(笑)。日常会話程度。だから小学校では“あいつ外人なのに英語しゃべれない”とか言われて、友だちはできなかった。当然、基地内の子とも学校が違うから仲良くなれない。だからあたしはいつもひとりだった」。この経験は彼女の人格形成に大きな影響を及ぼし、リリックにもそれが如実に表れている。ではCherry Brownはどうだろうか?

「MARIAとは同い年なんですが、当時はまったく接点がありませんでした。僕は(お父さんが)小学校に上がるタイミングで軍を辞めちゃったから、ほとんどアメリカ人のコミュニティの中で育ってないんですよ。小学校も公立の学校だけど、人種の問題でいじめや差別をされた経験は別にそんなないかな。友だちとケンカしたときに『このガイジン』って言われるとか、そんな程度ですよ。あと、当時はサッカーやってて、結構真面目にJリーガーを目指してました」

「ヒップホップに興味を持ち出したのは、けっこう昔です。アーミーだったお父さんがギャングスタ・ラップ好きだったこともあって、家や車で普通にヒップホップが流れているような環境だったんですよ。ラップをはじめたのは中学3年の頃からかな。当時はミクスチャーロックの全盛期で、MTVでいろんなバンドのPVが流れてたんです。そういうのを観て僕もミクスチャーのバンドをやりたくなって。でもいっしょにやる人がいなかったんで、ひとりでラップを書きはじめたんです」

「中高生の頃はMTVばっかり観てましたね。サウスが好きになるキッカケとなったリュダクリスもMTVで知りましたし」

 現在25歳のCherry Brownが中学3年生の頃となると、だいたい2000年代初頭。ISDNがどうしたこうしたと言っていた時期なので、インターネットで動画を観るなんていうことは夢のまた夢。そんな時期に洋楽のPVを観るにはTVK(テレビ神奈川)などのローカル局か、MTVやスペーシャワーTVのようなCS放送に頼るしかなかった。拙著『街のものがたり』でPUNPEEもこう語っている。

「ヒップホップをちゃんと認識したのは中2~3くらいですね。スペシャ(スペースシャワーTV)のナズ特集みたいなので、「ナズ・イズ・ライク」のPVを観て“うわー!”ってなったんですよ。その頃、スペシャとかではティンバランドとやってたミッシー(・エリオット)のPVとかもかかってたから、“こういうのがヒップホップなんだ……”みたいな感じで。(中略)あの頃はいろんな音楽がストリート系みたいな感じで括られてましたよね。だから俺もヒップホップだけを強く意識して聴いていたわけじゃなくて、ベックとかブラーとかも同時に聴いてました。当時スペシャでやってた『メガロマニアックス』って番組とか、TVK(テレビ神奈川)でやってた『ミュートマ』とかでかかってる音楽はなんかイケてる感じがしてて、そういうのを聴いてました」

 彼もミクスチャー・ロックにハマってスペースシャワーTVをよく観ていたというが、彼は当時の同局が志向していたオルタナティヴ路線を自ら突き詰めていき現在のスタイルに辿り着き、Cherry BrownはMTVのカラーであるUS色に染まっていく。メディアの打ち出していた姿勢が、その後のミュージシャンたちにここまで色濃く表れるというのも興味深い。

「ライヴをやることになったのは、RICHEEさんと知り合いになったからです」

 RICHEEとはCherry Brownが所属するJACK RABBITZのメンバーで、BIG RONの実弟でもある。

「RICHEEさんはもともとウエッサイの有名人で。それで僕が高校生の頃にバイトしてた居酒屋に飲みに来たんですよ。僕は人見知りなんで、面識のない人に自分から声をかけたりはしないんですが、このときは勇気を出して「僕、ラップやってるんです」って話しかけたんですよ。そしたら、「じゃあデモテープちょうだい」と言ってくれて。」

「RICHEEさんに渡したデモは何も考えないパーティ系の「盛り上がろうよ〜」みたいなラップでした。でもそれより前のいちばん最初は社会派だったんですよ(笑)。「戦争やめろー」とか言って。でもなんか違うなって気がしてきて、今度はいろんな人をディスしまくったんです。当然それもハマらなくて、自分がハマる感じを探して、いろいろやるうちにけっこう自然といまのスタイルになったんですよ」

■Soulja BoyとLil B

 Cherry BrownはAKLOと同じくインターネットのミックステープのシーンから登場したアーティストだ。

「インターネットは高校生くらいから好きでずっとやってるんです。僕の制作環境がPCに移行するきっかけもじつはインターネット経由で。僕はメジャー・デビューする前からSoulja Boyが大好きで、彼のMyspaceプロフィールを細かくチェックしてたんです。そしたら、そこで“FL Studio”って言葉を見つけたんですよ。「なんだろうなー」と思って調べてみたらそれが作曲ソフトだということがわかったんです。当時の僕の制作環境はリズムマシーンとSP404というサンプラーだったんですけど、そこからPCで制作するようになりました」

 Soulja BoyがCherry Brownに与えた影響は、もちろん機材だけではない。Cherry BrownはSoulja Boyからインターネットを活用したセルフ・プロモーションのメソッドも学んだという。

「インターネットの使い方はかなりお手本にしています。あの人はガンガン新曲作って、すぐにネットでフリー・ダウンロードできる形で公開してって感じでしたよね。自分も当時はそういうのをすごく意識してて、もういっぱい曲を作って、どんどん発表してくしかないって思ってました。そのイズムはいまもあって、作ったら気楽にポンって上げちゃうっすね。曲ができたら、すぐにみんなに聴いてもらいたいというのもあるし」

「あとはLil Bっすね。Myspaceのプロフィールを死ぬほど作ったり(※違法アップロードを繰り返してすぐに削除されてしまうため)、自分で工夫したネットのセルフ・プロモーションだけでどんどん知名度を広めていきましたからね。彼はめっちゃ頭いいアーティストだと思います。リリックも普通にすごいですから。しかも実際は超ラップうまいのに、あえてああいうショボい感じでやったりもして。でも話題が話題を呼んでじゃないっすけど、なんかクチコミでどんどん広まって“なんだ、こいつは?”的に広まってったみたいな。」

 Cherry BrownがLil Bを意識して作った曲が“I’m 沢尻エリカ”だ。

Cherry Brown“I’m 沢尻エリカ [Prod.Lil'諭吉]”

 ブログでは「ある日歯医者の帰りにその曲(「I’m Paris Hilton」)聴いてて、パリス・・・パリス・・・日本だったらエリカ様!って思いついて。とりあえずその日のうちにちゃちゃっとトラックと1ヴァースだけ書いて数日後に最後のヴァース書いて週末にレコした感じです。まぁ面白いからって感じで作ってみた。アメリカのLil Bが作ったパリスヒルトンに対して日本からちぇりーが沢尻エリカさんでアンサーだ的な感じかなww」

 Cherry Brownは計算というより、本当にノリで楽しみながら活動しているのだろうが、Lil Bと同じく「めっちゃ頭いいアーティスト」であると言えるだろう。彼が優れているのはラップ・スキル、トラックメイキングのみならず、他の誰とも違うという点だ。日本はもちろん、世界を見渡してもCherry Brownと同じアーティストはいない。つねに自分に正直に、楽しいことを妥協なく追求した結果が、現在の彼のポジションを作り出している。

■Escapism


チェリー・ブラウン
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巻紗葉
街のものがたり―新世代ラッパーたちの証言

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 彼のメジャー・デビュー・アルバムとなった『Escapism』。“現実逃避”と題された本作は、そんな彼のパーソナリティ、サウンド、ラップ・スキルが詰め込まれている。

「もともと別のインディ・レーベルからずいぶん前にリリースする予定だったんですよ。でも結局はその話が流れちゃって。だから今回のアルバムはコツコツとブラッシュ・アップできたという部分がありますね。最近は原点回帰じゃないですけど、また二次元がアツくて。アニメとか超観てるんですよ(笑)。『Angel Beats』というアニメがあるんですけど、そのオープニング(“My Soul Your Beats”)とエンディング曲(“Brave Song”)がいいんです。とくにエンディング曲が好き。そういうのとか、あとまたサウスをすごく聴いてたりしてて。そういう気分もアルバムにはすごく反映されてますね」

 タイトルにはどんな意味があるのだろうか?

「最初のほうにも言ったけど、被害妄想が激しいところがあって。(精神的に)落ちるときはホントめっちゃくちゃ落ちるんですよ。アルバムの1曲めの“Loop”なんかは、まさにそういう曲。あぁ、またこの感じがきちゃったなぁって。そういうときにうわーって二次元とかに行っちゃうんですよ」

「確かに僕にとって音楽が現実逃避という部分はあると思います。音楽だったら普段できないことでもなんでもできちゃう。たとえば「C.H.T.」なんかは日本語ラップのシーンのことを歌っていて、僕がやっていることにああだこうだ言うやつとか、ちょっと名前が売れてきたらすり寄ってくるやつとかを全員ぶっ殺すみたいな感じなんです。こんなの実際は絶対にできないけど、音楽だったらできる。ライヴもそう。普段は人見知りで知らない人とは話せないようなやつだけど、ステージに立つとスイッチが入っちゃう」

Cherry Brown“Escapisms”抜粋

俺はムズカシイ事を考えるのはもう止めた
未来を心配するのも止めた 面倒な事は
美少女の笑顔の下に埋めた ごちゃごちゃうるさいよ俺の手は
お菓子で手一杯 好きな事を考えるので精一杯
今日からは楽しいことで目一杯

 これまた偶然なのだが、PUNPEEも以前こんなふうに話している。

「俺は何も背負いたくない。ナイトオウルみたいに世界がどうとか考えてないんですよ。好きな人といっしょに世界の終わりとかも関係なく、楽しく生きていたい無責任な男なんです。たとえば“CHRONO TRIGGER”のサビは基本的にただの言い訳なんですよ。“こんなデカい時代の一部なら この際もう開き直っちゃえばいいじゃん”とか、超カッコつけた開き直り(笑)」

 アーティストとは元来クリエイティヴのことだけを考えていれば良いのだろう。売り上げがどうした、セルフ・プロモーションがこうした、ヒップホップ・シーンがうんぬんかんぬん……。そういったことは彼らを支える人間が考えればいい。彼らはただただ絶対的な力を持った音楽を作り出すことに注力すればいい。たとえ彼らの作った曲が負から生まれたものだとしても、そこには僕らを笑顔してくれたり、スカッとさせてくれたりするエナジーが込められているのだから。

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